中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法
法令番号: 法律第68号
公布年月日: 昭和46年5月25日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

高度経済成長に伴い雇用失業情勢は改善され、労働力不足基調となったが、中高年齢者や雇用機会の乏しい地域では、なお就職が容易でない状況が続いている。この状況に対処するため、失業対策制度のあり方について検討を行い、雇用審議会の答申を得た。中高年齢者が多年の職業経験で得た知識を活かすことが重要との観点から、失業対策事業への依存から脱却し、民間雇用での能力発揮を促進する特別措置を講ずることとした。具体的には、雇用率の設定や給付金・融資の配慮、求職手帳の発給、職業訓練の実施等を通じて中高年齢者の雇用促進を図るものである。

参照した発言:
第65回国会 衆議院 本会議 第15号

審議経過

第65回国会

衆議院
(昭和46年3月9日)
(昭和46年3月23日)
(昭和46年4月21日)
参議院
(昭和46年4月23日)
衆議院
(昭和46年4月27日)
参議院
(昭和46年5月6日)
衆議院
(昭和46年5月10日)
(昭和46年5月11日)
参議院
(昭和46年5月13日)
(昭和46年5月18日)
(昭和46年5月19日)
(昭和46年5月24日)
中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十六年五月二十五日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第六十八号
中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
中高年齢者に対する特別措置(第四条―第十一条)
第三章
中高年齢失業者等に対する特別措置(第十二条―第二十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、中高年齢者等に係る雇用及び失業の状況にかんがみ、これらの者がその能力に適合した職業につくことを促進するための特別の措置を講ずることにより、その職業の安定を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中高年齢者」とは、労働省令で定める年齢以上の者をいう。
2 この法律において「中高年齢失業者等」とは、労働省令で定める範囲の年齢の失業者その他就職が特に困難な労働省令で定める失業者をいう。
3 この法律において「特定地域」とは、中高年齢者である失業者が就職することが著しく困難である地域として労働大臣が指定する地域をいう。
(船員に対する適用除外)
第三条 この法律は、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員については、適用しない。
第二章 中高年齢者に対する特別措置
(適職の研究等)
第四条 労働大臣は、中高年齢者の能力に適合した職業、中高年齢者の労働能力の開発方法その他中高年齢者の雇用の促進に関し必要な事項について、調査、研究及び資料の整備に努めるものとする。
(求人者等に対する指導及び援助)
第五条 公共職業安定所は、中高年齢者にその能力に適合する職業を紹介するため必要があるときは、求人者に対して、年齢その他の求人の条件について指導するものとする。
2 公共職業安定所は、中高年齢者を雇用し、又は雇用しようとする者に対して、雇入れ、配置、作業の設備又は環境等中高年齢者の雇用に関する技術的事項について、必要な助言その他の援助を行なうことができる。
(職業紹介等を行なう施設の整備等)
第六条 国は、中高年齢者に対する職業紹介等を効果的に行なうために必要な施設の整備に努めなければならない。
2 国は、地方公共団体等が、中高年齢者に対し職業に関する相談に応ずる業務を行なう施設を設置する等中高年齢者の雇用を促進するための措置を講ずる場合には、必要な援助を行なうことができる。
(雇用率の設定等)
第七条 労働大臣は、政令で定めるところにより、雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第二十条の規定により中高年齢者について選定した職種に応じ、中高年齢者の雇用率を設定することができる。
2 常時労働者を使用する事業所の事業主は、前項の規定により雇用率が設定された職種の労働者の雇入れについては、常時使用する当該職種の中高年齢者である労働者の数が、常時使用する当該職種の労働者の総数に、当該職種の中高年齢者の雇用率を乗じて得た数(一人未満の端数は、切り捨てる。)以上であるように努めなければならない。
(求人の申込みの受理に関する特例)
第八条 公共職業安定所は、常時使用する前条第一項の規定により雇用率が設定された職種の中高年齢者である労働者の数が同条第二項の規定により算定した数未満である事業所の事業主が、中高年齢者でないことを条件とする当該職種に係る求人の申込みをした場合には、これを受理しないことができる。
(雇入れの要請)
第九条 労働大臣は、中高年齢者の雇用を促進するため特に必要があると認める場合には、常時百人以上の労働者を使用する事業所であつて、常時使用する第七条第一項の規定により雇用率が設定された職種の中高年齢者である労働者の数が同条第二項の規定により算定した数未満であり、かつ、その数を増加するのに著しい困難を伴わないと認められるものの事業主に対して、当該職種の中高年齢者である労働者の数が同項の規定により算定した数以上となるようにするために必要な措置をとることを要請することができる。
(事業主に対する給付金等)
第十条 国及び都道府県は、中高年齢者(労働省令で定める範囲の年齢の者に限る。)が第七条第一項の規定により雇用率が設定された職種の労働者として雇用されることを促進するための作業環境に適応させる訓練を行なう事業主に対しては、雇用対策法の規定に基づき支給する当該訓練に係る給付金の額について特別の配慮を加えるものとする。
第十一条 雇用促進事業団は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号)第十九条第三項第一号の業務を行なうにあたつては、事業主が中高年齢者を第七条第一項の規定により雇用率が設定された職種の労働者として雇い入れることを促進するため、貸付けの実施基準等について特別の配慮を加えるものとする。
第三章 中高年齢失業者等に対する特別措置
(中高年齢失業者等求職手帳の発給)
第十二条 公共職業安定所長は、中高年齢失業者等であつて、次の各号に該当するものに対して、その者の申請に基づき、中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)を発給する。
一 公共職業安定所に求職の申込みをしていること。
二 誠実かつ熱心に就職活動を行なう意欲を有すると認められること。
三 第十五条第一項各号に掲げる措置を受ける必要があると認められること。
四 前三号に掲げるもののほか、生活の状況その他の事項について労働大臣が中央職業安定審議会の意見をきいて定める要件に該当すること。
(手帳の有効期間)
第十三条 手帳は、労働省令で定める期間、その効力を有する。
2 公共職業安定所長は、手帳の発給を受けた者であつて、前項の手帳の有効期間を経過してもなお就職が困難であり、引き続き第十五条第一項各号に掲げる措置を実施する必要があると認められるものについて、その手帳の有効期間を労働省令で定める期間延長することができる。
3 前二項の労働省令で定める期間を定めるにあたつては、特定地域に居住する者について特別の配慮をすることができる。
(手帳の失効)
第十四条 手帳は、公共職業安定所長が当該手帳の発給を受けた者が次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、その効力を失う。
一 新たに安定した職業についたとき。
二 第十二条各号に掲げる要件のいずれかを欠くに至つたとき。
三 前二号に掲げるもののほか、労働大臣が中央職業安定審議会の意見をきいて定める要件に該当するとき。
2 前項の場合においては、公共職業安定所長は、その旨を当該手帳の発給を受けた者に通知するものとする。
(計画の作成)
第十五条 労働大臣は、手帳の発給を受けた者の就職を容易にするため、次の各号に掲げる措置が効果的に関連して実施されるための計画を作成するものとする。
一 職業指導及び職業紹介
二 公共職業訓練施設の行なう職業訓練
三 国又は地方公共団体が実施する訓練(前号に掲げるものを除く。)であつて、失業者に作業環境に適応することを容易にさせ、又は就職に必要な知識及び技能を習得させるために行なわれるもの(国又は地方公共団体の委託を受けたものが行なうものを含む。)
四 前三号に掲げるもののほか、労働省令で定めるもの
2 労働大臣は、前項の計画を作成しようとする場合には、中央職業安定審議会の意見をきかなければならない。
(公共職業安定所長の指示)
第十六条 公共職業安定所長は、手帳を発給するときは、手帳の発給を受ける者に対して、その者の知識、技能、職業経験その他の事情に応じ、当該手帳の有効期間中前条第一項の計画に準拠した同項各号に掲げる措置(以下「就職促進の措置」という。)の全部又は一部を受けることを指示するものとする。
2 公共職業安定所長は、手帳の発給を受けた者について当該手帳の有効期間を延長するときは、あらためて、その延長された有効期間中就職促進の措置の全部又は一部を受けることを指示するものとする。
3 公共職業安定所長は、前二項の指示を受けた者の就職促進の措置の効果を高めるために必要があると認めたときは、その者に対する指示を変更することができる。
(関係機関等の責務)
第十七条 職業安定機関、地方公共団体及び雇用促進事業団は、前条第一項又は第二項の指示を受けた者の就職促進の措置の円滑な実施を図るため、相互に密接に連絡し、及び協力するように努めなければならない。
2 前条第一項又は第二項の指示を受けた者は、その就職促進の措置の実施にあたる職員の指導又は指示に従うとともに、自ら進んで、すみやかに職業につくように努めなければならない。
(手当の支給)
第十八条 国及び都道府県は、第十六条第一項又は第二項の指示を受けて就職促進の措置を受ける者に対して、その就職活動を容易にし、かつ、生活の安定を図るため、手帳の有効期間中、雇用対策法の規定に基づき、手当を支給することができる。
(就職促進指導官)
第十九条 就職促進の措置としての職業指導は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第九条の二第一項の就職促進指導官に行なわせるものとする。
(報告の請求)
第二十条 公共職業安定所長は、第十六条第一項又は第二項の指示を受けて就職促進の措置を受ける者に対し、その就職活動の状況について報告を求めることができる。
(特定地域における措置)
第二十一条 労働大臣は、特定地域に居住する中高年齢失業者等について、職業紹介、職業訓練等の実施、就業の機会の増大を図るための事業の実施その他これらの者の雇用を促進するため必要な事項に関する計画を作成し、その計画に基づき必要な措置を講ずるものとする。
第二十二条 労働大臣は、特定地域における中高年齢失業者等の就職の状況等からみて必要があると認めるときは、当該特定地域において計画実施される公共事業(国自ら又は国の負担金の交付を受け、若しくは国庫の補助により地方公共団体等が計画実施する公共的な建設又は復旧の事業をいう。以下同じ。)について、その事業種別に従い、職種別又は地域別に、当該事業に使用される労働者の数とそのうちの中高年齢失業者等の数との比率(以下「失業者吸収率」という。)を定めることができる。
2 失業者吸収率の定められている公共事業を計画実施する国又は地方公共団体等(これらのものとの請負契約その他の契約に基づいて、その事業を施行する者を含む。以下「公共事業の事業主体等」という。)は、公共職業安定所の紹介により、つねに失業者吸収率に該当する数の中高年齢失業者等を雇い入れていなければならない。
3 公共事業の事業主体等は、前項の規定により雇入れを必要とする数の中高年齢失業者等を公共職業安定所の紹介により雇い入れることが困難な場合には、その困難な数の労働者を、公共職業安定所の書面による承諾を得て、直接雇い入れることができる。
(労働省令への委任)
第二十三条 この章に定めるもののほか、手帳の発給、手帳の返納その他手帳に関し必要な事項、第十六条第一項又は第二項の指示の手続に関し必要な事項及び公共事業への中高年齢失業者等の吸収に関し必要な事項は、労働省令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和四十六年十月一日から施行する。ただし、附則第五条中労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)第十三条第一項の表中央職業安定審議会の項の改正規定は、公布の日から施行する。
(緊急失業対策法の効力)
第二条 緊急失業対策法(昭和二十四年法律第八十九号)は、この法律の施行の際現に失業者であつて、この法律の施行の日前二月間に十日以上失業対策事業に使用されたもの及び労働省令で定めるこれに準ずる失業者についてのみ、その効力を有するものとする。
(職業安定法の一部改正)
第三条 職業安定法の一部を次のように改正する。
目次中「第二章の二 中高年齢失業者等に対する就職促進の措置」及び「第三章の二 中高年齢者の雇用」を削る。
第九条の次に次の一条を加える。
第九条の二 公共職業安定所に就職促進指導官を置く。
就職促進指導官は、専門的知識に基づいて、主として、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和四十六年法律第六十八号)第十六条第一項又は第二項の指示を受けた者に対し、職業指導を行なうものとする。
前二項に定めるもののほか、就職促進指導官に関し必要な事項は、労働大臣が定める。
「第二章の二 中高年齢失業者等に対する就職促進の措置」を削り、第二十六条から第三十一条までを次のように改める。
第二十六条から第三十一条まで 削除
第三章の二を削る。
第四十八条第二項を削る。
(職業安定法の一部改正に伴う経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に改正前の職業安定法第二十七条第一項の指示を受けている者であつて、第十二条の規定に該当するものについては、この法律の施行の日に、同条の申請があつたものとみなす。
2 この法律の施行の際現に改正前の職業安定法第二十七条第一項の指示を受けている者の当該指示に係る同法第二章の二に規定する措置については、なお従前の例による。ただし、これらの者が第十二条の規定により手帳の発給を受けた後においては、この限りでない。
(労働省設置法の一部改正)
第五条 労働省設置法の一部を次のように改正する。
第四条中第三十八号の四を第三十八号の五とし、第三十八号の三を第三十八号の四とし、第三十八号の二を第三十八号の三とし、第三十八号の次に次の一号を加える。
三十八の二 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和四十六年法律第六十八号)に基づいて、中高年齢失業者等の就職促進の措置に関する計画を定めること。
第十条第一項中第三号の二を第三号の三とし、第三号の次に次の一号を加える。
三の二 中高年齢失業者等の就職促進の措置に関する計画の作成に関すること。
第十条第一項第八号中「及び勤労青少年福祉法(第八条から第十条までの規定に限る。)」を「、勤労青少年福祉法(第八条から第十条までの規定に限る。)及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(職業訓練に関する部分を除く。)」に改め、同条第二項中「及び炭鉱離職者臨時措置法」を「、炭鉱離職者臨時措置法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(第二十二条の規定に限る。)」に改める。
第十三条第一項の表中央職業安定審議会の項中「及び港湾労働法」を「、港湾労働法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」に改める。
第十八条第一項中「及び勤労青少年福祉法」を「、勤労青少年福祉法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(これに基づく命令を含む。)」に改める。
(駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部改正)
第六条 駐留軍関係離職者等臨時措置法(昭和三十三年法律第百五十八号)の一部を次のように改正する。
第十条の四中「第三十条第一項」を「第九条の二第一項」に改める。
(炭鉱離職者臨時措置法の一部改正)
第七条 炭鉱離職者臨時措置法(昭和三十四年法律第百九十九号)の一部を次のように改正する。
第十五条中「第三十条第一項」を「第九条の二第一項」に改める。
(社会保険労務士法の一部改正)
第八条 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
別表第一第二十号の三の次に次の一号を加える。
二十の四 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和四十六年法律第六十八号)
(失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第九条 失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(昭和四十四年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。
第四十二条のうち社会保険労務士法別表第一の改正規定中「別表第一中」の下に「第二十号の四を第二十号の五とし、」を加える。
労働大臣 野原正勝
内閣総理大臣 佐藤栄作