火薬類取締法
法令番号: 法律第149号
公布年月日: 昭和25年5月4日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

従来、火薬類の取締りは銃砲火薬取締法によって内務省が所管してきたが、戦後は通商産業省に移管された。火薬類使用量の増加や時代の進展に伴い、法改正の必要性が高まり、関係各所との意見交換を経て全面改正案を作成した。主な改正点は、銃砲の取締りを分離して火薬類のみの規制とすること、新憲法下での法体系整備、行政組織の変更に伴う取締機関の明確化、技術進歩に対応した法内容の刷新である。これにより、火薬類の製造、販売、貯蔵、運搬、消費等の取扱いを適切に規制し、災害防止と公共の安全確保を図ることを目的としている。

参照した発言:
第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第25号

審議経過

第7回国会

衆議院
(昭和25年3月25日)
参議院
(昭和25年3月27日)
(昭和25年3月30日)
衆議院
(昭和25年4月4日)
(昭和25年4月5日)
(昭和25年4月7日)
(昭和25年4月12日)
参議院
(昭和25年4月13日)
衆議院
(昭和25年4月14日)
(昭和25年4月15日)
参議院
(昭和25年4月20日)
(昭和25年4月25日)
(昭和25年4月26日)
(昭和25年5月2日)
衆議院
(昭和25年5月3日)
火薬類取締法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月四日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十九号
火薬類取締法
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
事業(第三條―第二十七條)
第三章
保安(第二十八條―第四十五條)
第四章
雑則(第四十六條―第五十七條)
第五章
罰則(第五十八條―第六十二條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、火薬類の製造、販売、貯蔵、運搬、消費その他の取扱を規制することにより、火薬類による災害を防止し、公共の安全を確保することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「火薬類」とは、左に掲げる火薬、爆薬及び火工品をいう。
一 火薬
イ 黒色火薬その他硝酸塩を主とする火薬
ロ 無煙火薬その他硝酸エステルを主とする火薬
ハ その他イ又はロに掲げる火薬と同等に推進的爆発の用途に供せられる火薬であつて通商産業省令で定めるもの
二 爆薬
イ 雷こう、アジ化鉛その他の起爆薬
ロ 硝安爆薬、塩素酸カリ爆薬、カーリツトその他硝酸塩、塩素酸塩又は過塩素酸塩を主とする爆薬
ハ ニトログリセリン、ニトログリコール及び爆発の用途に供せられるその他の硝酸エステル
ニ ダイナマイトその他の硝酸エステルを主とする爆薬
ホ 爆発の用途に供せられるトリニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸、トリニトロクロルベンゼン、テトリル、トリニトロアニソール、ヘキサニトロジフエニルアミン、トリメチレントリニトロアミン、ニトロ基を三以上含むその他のニトロ化合物及びこれらを主とする爆薬
ヘ 液体酸素爆薬その他の液体爆薬
ト その他イからヘまでに掲げる爆薬と同等に破壞的爆発の用途に供せられる爆薬であつて通商産業省令で定めるもの
三 火工品
イ 工業雷管、電気雷管、猟銃雷管及び信号雷管
ロ 実包及び空包
ハ 信管及び火管
ニ 導爆線、導火線及び電気導火線
ホ 信号焔管及び信号火せん
ヘ 煙火その他前二号に掲げる火薬又は爆薬を使用した火工品(がん具用煙火を除く。)
第二章 事業
(製造の許可)
第三條 火薬類の製造(変形又は修理を含む。以下同じ。)の業を営もうとする者は、製造所ごとに、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
第四條 火薬類の製造は、前條の許可を受けた者(以下「製造業者」という。)でなければ、することができない。但し、理化学上の実験、鳥獸の捕獲若しくは駆除、射的練習又は医療の用に供するため製造する火薬類で、通商産業省令で定める数量以下のものを製造する場合は、この限りでない。
(販売営業の許可)
第五條 火薬類の販売の業を営もうとする者は、販売所ごとに、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、製造業者が、その製造した火薬類をその製造所において販売する場合は、この限りでない。
(欠格事由)
第六條 左の各号の一に該当する者には、第三條又は前條の許可を與えない。
一 第四十四條の規定により許可を取り消され、取消の日から三年を経過していない者
二 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることのなくなつた後、三年を経過していない者
三 禁治産者
四 法人又は団体であつて、その業務を行う役員のうちに前各号の一に該当する者があるもの
(許可の基準)
第七條 通商産業大臣又は都道府県知事は、第三條又は第五條の許可の申請があつた場合には、その申請を審査し、第三條の許可の申請については左の各号に適合し、第五條の許可の申請については第三号に適合していると認めるときは、許可を與えなければならない。
一 製造施設の構造、位置及び設備が、通商産業省令で定める技術上の基準に適合するものであること。
二 製造の方法が、通商産業省令で定める技術上の基準に適合するものであること。
三 その他製造又は販売が、公共の安全の維持又は災害の発生の防止に支障のないものであること。
(許可の取消)
第八條 通商産業大臣又は都道府県知事は、製造業者又は第五條の許可を受けた者(以下「販売業者」という。)が、正当な理由がないのに、一年以内にその事業を開始せず、又は一年以上引き続きその事業を休止したときは、その許可を取り消すことができる。
(製造施設及び製造方法)
第九條 製造業者は、その製造施設を、その構造、位置及び設備が、第七條第一号の技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 製造業者は、第七條第二号の技術上の基準に従つて火薬類を製造しなければならない。
3 通商産業大臣は、製造業者の製造施設又は製造方法が、第七條第一号又は第二号の技術上の基準に適合していないと認めるときは、技術上の基準に適合するように製造施設を修理し、改造し、若しくは移転し、又は技術上の基準に従い火薬類を製造すべきことを命ずることができる。
(製造施設等の変更)
第十條 製造業者が、製造施設の位置、構造若しくは設備の変更の工事をし、又はその製造する火薬類の種類若しくはその製造方法を変更しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 第七條の規定は、前項の許可に準用する。
(貯蔵)
第十一條 火薬類の貯蔵は、火薬庫においてしなければならない。但し、通商産業省令で定める数量以下の火薬類については、この限りでない。
2 火薬庫においてする火薬類の貯蔵は、通商産業省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
3 都道府県知事は、火薬類の貯蔵が、前項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、貯蔵者に対し、技術上の基準に従つて火薬類を貯蔵すべきことを命ずることができる。
(火薬庫)
第十二條 火薬庫を設置し、移転し又はその構造若しくは設備を変更しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による許可の申請があつた場合において、その火薬庫の構造、位置及び設備が、通商産業省令で定める技術上の基準に適合するものであるときは、許可を與えなければならない。
第十三條 製造業者又は販売業者は、もつぱら自己の用に供する火薬庫を所有し、又は占有しなければならない。但し、土地の事情等のためやむを得ない場合において都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
第十四條 火薬庫の所有者又は占有者は、火薬庫を、その構造、位置及び設備が第十二條第二項の技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 都道府県知事は、火薬庫の構造、位置及び設備が、第十二條第二項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、火薬庫の所有者又は占有者に対し、技術上の基準に適合するように、火薬庫を修理し、改造し、又は移転すべきことを命ずることができる。
(完成検査)
第十五條 第三條、第十條又は第十二條第一項の許可を受けた者は、火薬類の製造施設若しくは火薬庫の設置若しくは移転又はその構造若しくは設備の変更の工事をした場合には、製造施設又は火薬庫につき通商産業大臣が行う完成検査を受け、これらが、第七條第一号又は第十二條第二項の技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。
(営業の廃止等)
第十六條 製造業者又は販売業者が、その営業を廃止したときは、遅滯なくその旨を通商産業大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
2 火薬庫の所有者又は占有者は、その火薬庫の用途を廃止したときは、遅滯なくその旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(讓渡又は讓受の許可)
第十七條 火薬類を讓り渡し、又は讓り受けようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当するときは、この限りでない。
一 製造業者が、火薬類を製造する目的で讓り受け、又はその製造した火薬類を讓り渡すとき。
二 販売業者が、火薬類を讓り渡し、又は讓り受けるとき。
三 狩猟法(大正七年法律第三十二号)第三條の規定による狩猟免許を受けた者又は同法第十二條第一項の規定による鳥獸を捕獲することの許可を受けた者であつて裝薬銃を使用するものが、鳥獸を捕獲する目的で通商産業省令で定める数量以下の火薬類を讓り受けるとき。
四 鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)により鉱物の試掘又は採掘をする者が、通商産業省令で定める数量以下の火薬類を護り受けるとき。
五 第二十四條第二項の許可を受けて火薬類を讓り受けるとき。
六 法令に基きその事務又は事業のために火薬類を消費する者が、その目的で火薬類を讓り受けるとき。
2 都道府県知事は、讓渡又は讓受の目的が明らかでないときその他讓渡又は讓受が、公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
3 都道府県知事が、第一項の許可をしたときは、讓渡許可証又は讓受許可証を交付しなければならない。
4 製造業者又は販売業者は、讓受人が第一項各号の一に該当することを確認した場合又は讓受人が前項の讓受許可証を呈示した場合でなければ、火薬類を讓り渡してはならない。
(行商及び屋外販売の禁止)
第十八條 何人も、火薬類の行商をし、又は露店その他屋外で火薬類を販売してはならない。
(運搬の制限)
第十九條 火薬類を運搬する場合は、次條の運搬証明書を携帶してこれをしなければならない。但し、同條但書の場合は、この限りでない。
2 火薬類の運搬は、その通路、積載方法、運搬具及び運搬方法について政令(軌道、無軌條電車、自動車及び軽車両の運搬具並びに鉄道、索道及び船舶については運輸省令)で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
(運搬届)
第二十條 火薬類を運搬しようとする場合は、その荷送人(他に運搬を委託しないで運搬する場合にあつては、その者)は、その旨を都道府県知事に届け出て、届出を証明する文書(以下「運搬証明書」という。)の交付を受けなければならない。但し、通商産業省令で定める数量以下の火薬類を運搬する場合は、この限りでない。
(所持者の範囲)
第二十一條 火薬類は、法令に基く場合又は左の各号の一に該当する場合の外、所持してはならない。
一 製造業者又は第四條但書の規定により火薬類を製造する者が、その製造した火薬類を所持するとき。
二 販売業者が、所持するとき。
三 第十七條第一項の規定により火薬類を讓り受けることができる者が、その火薬類を所持するとき。
四 第二十四條第二項の許可を受けて輸入した者が、その火薬類を所持するとき。
五 運送、貯蔵その他の取扱を委託された者が、その委託を受けた火薬類を所持するとき。
六 相続又は遺贈により火薬類の所有権を取得した者が、その火薬類を所持するとき。
七 法人の合併により火薬類の所有権を取得した者が、その火薬類を所持するとき。
八 火薬類を所持することができる者が、次條の規定に該当し、讓渡又は廃棄をしなければならない場合に、その措置をするまでの間所持するとき。
九 前各号に掲げる者の従業者が、その職務上火薬類を所持するとき。
(残火薬類の措置)
第二十二條 製造業者若しくは販売業者が、第八條若しくは第四十四條の許可の取消その他の事由により営業を廃止した場合又は火薬類を消費する目的で第十七條第一項の規定により火薬類の讓受の許可を受けた者が、その火薬類を消費し、若しくは消費することを要しなくなつた場合において、なお火薬類の残量があるときは、遅滯なくその火薬類を讓り渡し、又は廃棄しなければならない。
(取扱者の制限)
第二十三條 十八才未満の者は、火薬類の取扱をしてはならない。
2 何人も、十八才未満の者、白痴者又は精神病者に、火薬類の取扱をさせてはならない。
3 前二項の規定は、火薬類を包裝する作業等の危險の少い取扱であつて通商産業省令で定めるものについては、適用しない。
(輸出及び輸入)
第二十四條 火薬類を輸出しようとする者は、都道府県知事に届け出なければならない。
2 火薬類を輸入しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
3 都道府県知事は、輸入の目的が明らかでないときその他その輸入が公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
4 火薬類を輸入した者は、遅滯なくその旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(消費)
第二十五條 火薬類を爆発させ、又は燃燒させようとする者(以下「消費者」という。)は、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、理化学上の実験、鳥獸の捕獲若しくは駆除又は射的練習の用に供するため通商産業省令で定める数量以下の火薬類を消費する場合、法令に基きその事務又は事業のために火薬類を消費する場合、第二十七條の規定に基き火薬類を廃棄する場合及び非常災害に際し緊急の措置をとるため必要な火薬類を消費する場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、その爆発又は燃燒の目的、場所、日時、数量又は方法が不適当であると認めるときその他その爆発又は燃燒が公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
第二十六條 火薬類の爆発又は燃燒は、通商産業省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
(廃業)
第二十七條 火薬類の廃棄は、廃棄の場所、数量その他廃棄の方法について通商産業省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
2 火薬類を廃棄しようとする者は、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。但し、製造業者が火薬類の製造中に生じた火薬類の廃薬を廃棄する場合は、この限りでない。
第三章 保安
(危害予防規程)
第二十八條 製造業者は、災害の発生を防止するため、危害予防規程を定め、通商産業大臣の許可を受けなければならない。これを変更するときも同様である。
2 通商産業大臣は、危害予防規程が、第七條第一号及び第二号の技術上の基準に適合していないときその他災害の発生の防止に適当でないと認めるときは、前項の認可をしてはならない。
3 通商産業大臣は、災害の発生の防止のため必要があると認めるときは、危害予防規程の変更を命ずることができる。
4 製造業者及びその従業者は、危害予防規程を守らなければならない。
(保安教育)
第二十九條 製造業者、販売業者及び消費者は、従業者に火薬類による災害の防止に必要な教育を施さなければならない。
(作業主任者及び取扱主任者)
第三十條 製造業者は、通商産業省令で定める区分により、次條の火薬類作業主任者免状を有する者のうちから、火薬類作業主任者(以下「作業主任者」という。)を選任し、火薬類の製造作業に係る保安について監督を行わせなければならない。
2 火薬庫の所有者若しくは占有者又は通商産業省令で定める数量以上の火薬類を消費する者は、通商産業省令で定める区分により、次條の火薬類取扱主任者免状を有する者のうちから、火薬類取扱主任者(以下「取扱主任者」という。)を選任し、火薬類の貯蔵又は消費に係る保安について監督を行わせなければならない。
3 第一項又は前項の規定により、製造業者、火薬庫の所有者若しくは占有者又は前項の消費者が、作業主任者又は取扱主任者を選任したときは、その旨を通商産業大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。これを解任したときも同様である。
(作業主任者免状及び取扱主任者免状)
第三十一條 火薬類作業主任者免状は、甲種火薬類作業主任者免状、乙種火薬類作業主任者免状及び丙種火薬類作業主任者免状とする。
2 火薬類取扱主任者免状は、甲種火薬類取扱主任者免状及び乙種火薬類取扱主任者免状とする。
3 甲種火薬類作業主任者免状及び乙種火薬類作業主任者免状は、通商産業大臣の行う試験に合格した者に対し、丙種火薬類作業主任者免状、甲種火薬類取扱主任者免状及び乙種火薬類取扱主任者免状は、都道府県知事の行う試験に合格した者に対し交付する。
4 通商産業大臣又は都道府県知事は、火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状の交付を受けた者が、この法律又はこの法律に基く省令の規定に違反したときは、その火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状の返納を命ずることができる。
5 第三項の試験の課目、受験手続その他試験の実施細目並びに火薬類作業主任者免状及び火薬類取扱主任者免状の交付及び返納に関する手続的事項は、通商産業省令で定める。
(作業主任者等の義務)
第三十二條 作業主任者及び取扱主任者は、誠実にその職務を遂行しなければならない。
2 火薬類を取り扱う者は、作業主任者及び取扱主任者が、この法律又はこの法律に基く省令及び危害予防規程の実施を確保するためにする指示に従わなければならない。
(作業主任者の代理者)
第三十三條 製造業者は、通商産業省令で定める区分により、火薬類作業主任者免状を有する者のうちから、あらかじめ作業主任者の代理者を選任し、作業主任者が旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができない場合に、その職務を代行させなければならない。
2 製造業者が、前項の代理者を選任したときは、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。これを解任したときも同様である。
3 第一項の代理者は、作業主任者の職務を代行する場合は、この法律及びこの法律に基く省令の規定の適用については、これを作業主任者とみなす。
(作業主任者等の解任命令)
第三十四條 通商産業大臣は、作業主任者若しくはその代理者又は取扱主任者が、この法律又はこの法律に基く省令の規定に違反したとき又は保安上その職務を遂行させることが不適当であると認めるときは、これらの者を選任した者又はその承継人に対し、作業主任者若しくはその代理者又は取扱主任者の解任を命ずることができる。
(保安検査)
第三十五條 製造業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者は、火薬類の爆発又は発火の危險がある製造施設であつて通商産業省令で定めるもの又は火薬庫について、通商産業大臣が、毎年定期に行う保安検査を受けなければならない。
2 前項の保安検査は、その施設又は火薬庫が、第七條第一号又は第十二條第二項の技術上の基準に適合しているかどうかについて行う。
(安定度試験)
第三十六條 火薬類を輸入した者又はその製造後通商産業省令で定める期間を経過した火薬類を所有する者は、通商産業省令で定める方法により、その火薬類につき安定度試験を実施し、且つ、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。
2 通商産業大臣又は都道府県知事は、災害の防止のため必要があると認めるときは、火薬類の所有者に対し、前項の安定度試験を実施すべきことを命ずることができる。
(不良火薬類の措置)
第三十七條 火薬類の所有者は、前條の安定度試験の結果通商産業省令で定める技術上の基準に適合しない火薬類があつたときは、その火薬類を廃棄しなければならない。
(火薬類の混包等の禁止)
第三十八條 火薬類は、他の物と混包し、又は火薬類でないようにみせかけて、これを所持し、運搬し、若しくは託送してはならない。
(危險時の措置及び届出)
第三十九條 火薬庫が近隣の火災その他の事情により危險な状態となり、又は火薬類が煙若しくは異臭を発し、その他安定度に異常を呈したときは、その火薬庫又は火薬類の所有者又は占有者は、直ちに通商産業省令で定める応急の措置を講じなければならない。
2 前項の事態を発見した者は、直ちにその旨を都道府県知事、警察官又は警察吏員に届け出なければならない。
(喫煙等の制限)
第四十條 何人も、火薬類の製造所又は火薬庫においては、製造業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者の指定する場所以外の場所で、喫煙し、又は火気を取り扱つてはならない。
2 何人も、製造業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者の承諾を得ないで、発火し易い物を携帶して火薬類の製造所又は火薬庫に立ち入つてはならない。
(帳簿)
第四十一條 製造業者、販売業者及び火薬庫の所有者若しくは占有者は、帳簿を備え、火薬類の製造、販売及び出納について通商産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(報告の徴收)
第四十二條 通商産業大臣は、災害を防止し、又は公共の安全の維持をはかるため、必要があると認めるときは、製造業者、販売業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者に対し、事業に関し、報告をさせることができる。
(立入検査等)
第四十三條 通商産業大臣又は都道府県知事は、災害の防止又は公共の安全の維持のため必要があると認めるときは、その職員に、製造業者、販売業者、消費者又は火薬類を保管する者の製造所、販売所、火薬庫、消費場所又は保管場所に立ち入り、その者の帳簿書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させ、又は試験のため必要な最少限度の分量に限り火薬類を收去させることができる。
2 警察官、警察吏員又は海上保安官は、人の生命、身体又は財産に対する危害を予防するため特に必要がある場合には、火薬庫その他火薬類の保管場所又は火薬類の製造場所若しくは消費場所に立ち入り、関係者に質問することができる。
3 前二項の職員は、その身分を示す証票を携帶し、且つ、関係者の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による立入検査は、関係者の正当な業務又は行為を妨害するものであつてはならず、且つ、犯罪搜査のために認められたものと解してはならない。
(許可の取消等)
第四十四條 通商産業大臣は、製造業者又は販売業者が、左の各号の一に該当するときは、第三條若しくは第五條の許可を取り消し、又は期間を定めてその事業の停止を命ずることができる。
一 第十一條第一項、第十三條、第十八條、第二十三條第二項、第三十條第一項若しくは第二項又は第三十八條の規定に違反したとき。
二 第十條第一項、第十二條第一項又は第二十四條第二項の規定により許可を受けなければならない事項を許可を受けないでしたとき。
三 第十五條の規定による完成検査を受けないで、火薬類の製造施設又は火薬庫を使用したとき。
四 第二十四條第一項の規定による届出をしないで火薬類を輸出したとき。
五 第三十六條第一項の規定による安定度試験を実施しなかつたとき。
六 第九條第三項、第十一條第三項、第十四條第二項、第二十八條第三項、第三十四條、第三十六條第二項若しくは次條第一号の命令又は同條第二号の禁止若しくは制限に違反したとき。
七 第六條第二号から第四号までの規定に該当するに至つたとき。
八 第四十八條第一項の條件に違反したとき。
(緊急措置)
第四十五條 通商産業大臣(鉄道、軌道、索道、無軌條電車、自動車、軽車両及び船舶による運搬については、運輸大臣)は、災害の発生の防止又は公共の安全の維持のため緊急の必要があると認めるときは、左に掲げる措置をすることができる。
一 製造業者、販売業者又は消費者に対して、製造施設又は火薬庫の全部若しくは一部の使用を一時停止すべきことを命ずること。
二 製造業者、販売業者、消費者その他火薬類を取り扱う者に対して、製造、販売、貯蔵、運搬又は消費を一時禁止し、又は制限すること。
三 火薬類の所有者又は占有者に対して、火薬類の所在場所の変更又はその廃棄を命ずること。
第四章 雑則
(事故届等)
第四十六條 製造業者、販売業者、消費者その他火薬類を取り扱う者は、左の各号の場合には、遅滯なくその旨を警察官、警察吏員又は海上保安官に届け出なければならない。
一 その所有し、又は占有する火薬類について災害が発生したとき。
二 その所有し、又は占有する火薬類、讓渡許可証、讓受許可証又は運搬証明書を喪失し、又は盜取されたとき。
2 通商産業大臣又は都道府県知事は、前項第一号の場合においては、所有者又は占有者に対し、災害発生の日時、場所及び原因、火薬類の種類及び数量、被害の程度等につき報告をさせることができる。
(現状変更の禁止)
第四十七條 何人も、火薬類による爆発その他災害が発生したときは、交通の確保その他公共の利益のためやむを得ない場合を除き、通商産業大臣、都道府県知事、警察官又は警察吏員の指示なく、その現状を変更してはならない。但し、第三十九條第一項の規定による措置を講ずる場合は、この限りでない。
(許可の條件)
第四十八條 第三條、第五條、第十七條第一項、第二十四條第二項又は第二十五條第一項の許可には、條件を附することができる。
2 前項の條件は、災害の防止又は公共の安全の維持をはかるため必要な最小限度のものに限り、且つ、許可を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(手数料の納付)
第四十九條 左の表の上欄に掲げる者(国を除く。)は、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内で政令で定める額の手数料を納めなければならない。
手数料を納付すべき者
金額
一 第三條の許可の申請をする者
七千円
二 第五條の許可の申請をする者
五千円
三 第十二條第一項の許可の申請をする者
二千円
四 第十五條の完成検査を受けようとする者
一千円
五 第十七條第一項の許可の申請をする者
二百円
六 第二十條の運搬証明書の交付を受けようとする者
二百円
七 第二十四條第二項の許可の申請をする者
二千円
八 甲種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者
一千円
九 乙種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者
八百円
十 丙種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者
七百円
十一 甲種火薬類取扱主任者免状の交付を受けようとする者
六百円
十二 乙種火薬類取扱主任者免状の交付を受けようとする者
五百円
2 前項の手数料は、第三條の許可の申請を通商産業大臣に対してする者、通商産業大臣の行う第十五條の完成検査を受けようとする者並びに甲種火薬類作業主任者免状及び乙種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者の納付するものについては、国庫の、その他の者の納付するものについては、当該都道府県の收入とする。
(けい留船等の特則)
第五十條 けい留船を火薬庫に使用する場合及び船舶に常用火薬類を貯蔵する場合には、第十一條、第十二條、第十六條第二項及び第五十二條中「通商産業省令」とあるのは、「運輸省令」と、「都道府県知事」とあるのは、「海上保安庁長官(湖沼河川については、都道府県知事)」と読み替えるものとする。
2 第十五條及び第三十五條の規定は、けい留船を火薬庫に使用する場合には、適用しない。
(適用除外)
第五十一條 導火線及び電気導火線については、第十九條、第二十條、第二十五條、第二十六條、第三十條第二項及び第三十六條の規定は、適用しない。
2 信号焔管、信号火せん及び煙火については、第十七條、第十九條から第二十二條まで、第二十五條から第二十七條まで、第三十條第二項、第三十三條及び第三十六條の規定は、適用しない。
3 鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二條の鉱山においては、第十九條、第二十條、第二十五條第一項、第二十六條、第二十九條、第三十條第二項(火薬類の消費に係るものに限る。)、第四十三條第一項(火薬類の消費場所に係るものに限る。)、第四十五條第二号及び第三号(火薬類の運搬又は消費に関する災害の防止に係るものに限る。)並びに第四十七條(火薬類の運搬又は消費に関する災害の発生に係るものに限る。)の規定は、適用しない。
(通商産業大臣と国家公安委員会との関係等)
第五十二條 通商産業大臣又は都道府県知事は、第三條、第五條、第十條第一項、第十二條第一項、第十七條第一項、第二十四條第二項若しくは第二十五條第一項の許可をし、又は第十六條若しくは第二十條の届出を受理したときは、政令で定める区分により、その旨を国家公安委員会、都道府県公安委員会、市町村公安委員会若しくは特別区公安委員会又は海上保安庁長官に通報しなければならない。
2 警察官又は警察吏員は、第三十九條第二項又は第四十六條第一項の規定による届出を受理したときは、すみやかにその旨を当該都道府県知事に通報しなければならない。
(公聽会)
第五十三條 主務大臣は、第七條第一号若しくは第二号、第十一條第二項、第十二條第二項、第十九條第二項、第二十六條又は第二十七條第一項の命令を制定しようとするときは、公聽会を開き、広く一般の意見を聞かなければならない。
(聽聞)
第五十四條 行政庁は、第八條、第三十一條第四項、第三十四條又は第四十四條の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対して、相当な期間を置いて予告をした上、公開による聽聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聽聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を呈示し、意見を述べる機会を與えなければならない。
(不服の申立)
第五十五條 この法律又はこの法律に基く命令の規定による行政庁の処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、当該行政庁に不服の申立をすることができる。
(決定)
第五十六條 行政庁は、前條の不服の申立があつたときは、第五十四條の例により公開の聽聞をした後、文書をもって決定をし、その写を不服の申立をした者に送付しなければならない。
(権限の委任)
第五十七條 この法律又はこの法律に基く命令の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令の定めるところにより、都道府県知事に行わせることができる。
第五章 罰則
第五十八條 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三條の規定による許可を受けないで火薬類の製造の業を営んだ者
二 第四條の規定に違反した者
三 第五條の規定による許可を受けないで火薬類の販売の業を営んだ者
四 第二十四條第二項の規定による許可を受けないで火薬類を輸入した者
五 第四十四條の規定による事業の停止の命令に違反した者
第五十九條 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第十條第一項の規定による許可を受けないで製造施設の位置、構造若しくは設備の変更の工事をし、又はその製造する火薬類の種類若しくはその製造の方法を変更した者
二 第十一條第一項、第十三條、第十五條、第十八條、第二十一條、第二十三條第二項、第三十條第一項若しくは第二項、第三十三條第一項、第三十七條又は第三十八條の規定に違反した者
三 第十二條第一項の規定による許可を受けないで火薬庫を設置し、移転し、又はその構造若しくは設備を変更した者
四 第十七條第一項の規定に違反し、許可を受けないで火薬類を讓り渡し、又は讓り受けた者
五 第二十五條第一項の規定に違反し、許可を受けないで火薬類を爆発又は燃燒させた者
六 第二十八條第一項の規定による認可を受けないで、火薬類の製造をした者
七 第三十六條第一項の規定に違反し、安定度試験を実施しない者
八 第四十五條の規定による命令又は禁止若しくは制限に違反した者
第六十條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第九條第一項若しくは第二項、第十一條第二項、第十四條第一項、第十七條第四項、第十九條第二項、第二十二條、第二十三條第一項、第二十六條、第二十七條第一項、第四十條第一項若しくは第二項又は第四十七條の規定に違反した者
二 第十九條第一項の規定に違反し、運搬証明書を携帶しないで火薬類を運搬した者
三 虚僞の届出をして、第二十條の運搬証明書の交付を受けた者
四 第二十四條第一項の届出をしないで火薬類を輸出し、又は虚僞の届出をした者
五 第二十四條第二項の許可に係る條件に違反した者
六 第二十七條第二項の規定に違反し、届出をしないで火薬類を廃棄し、又は虚僞の届出をした者
第六十一條 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由なく第三十一條第四項の命令に違反し、火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状を返納しない者
二 第四十一條の規定による事項を帳簿に記載せず、又は虚僞の記載をした者
三 第三十六條 第一項、第四十二條又は第四十六條第二項の報告をせず、又は虚僞の報告をした者
四 第十六條第一項若しくは第二項、第二十四條第四項、第三十條第三項、第三十三條第二項又は第四十六條第一項の届出をせず、又は虚僞の届出をした者
五 第三十五條第一項、第四十三條第一項若しくは第二項の規定による検査若しくは收去を拒み、妨げ若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚僞の陳述をした者
(両罰規定)
第六十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前四條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律施行の期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
(他の法令の改廃)
2 銃砲火薬類取締法(明治四十三年法律第五十三号、以下「旧法」という。)は、廃止する。
3 通商産業省設置法(昭和二十四年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
第四條第一項第二十九号中「銃砲火薬類」を「火薬類」に改める。
(経過規定)
4 旧法に基いてした命令、処分、許可、認可、検査その他の措置で、この法律に各相当する規定のあるものは、この法律に基いてしたものとみなす。
5 旧法に基いて交付された火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状は、それぞれこの法律の規定による火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状とみなす。
6 旧法に基いて交付された讓渡許可証、讓受許可証又は運搬許可証は、それぞれこの法律の規定による讓渡許可証、讓受許可証又は運搬証明書とみなす。
7 この法律施行の際、旧法第三條の許可を受けて火薬類の製造の業を営む者は、この法律施行の日から三箇月以内に第二十八條第一項の規定により危害予防規程を定め、通商産業大臣に認可を申請しなければならない。
8 第五十九條第七号の規定は、前項の者が、第二十八條第一項の規定により通商産業大臣の認可を受けるまでの間は、適用しない。
9 旧法第十四條第四号及びこれに基く命令の規定で火薬類製造所に関するものは、附則第七項の者が、第二十八條第一項の規定による通商産業大臣の認可を受けるまでの間は、附則第二項の規定にかかわらず、その者について、なおその効力を有する。
10 附則第七項の規定に違反し、認可を申請しない者は、五万円以下の罰金に処する。
11 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 吉田茂
通商産業大臣 高瀬莊太郎
運輸大臣 大屋晋三
火薬類取締法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月四日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十九号
火薬類取締法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
事業(第三条―第二十七条)
第三章
保安(第二十八条―第四十五条)
第四章
雑則(第四十六条―第五十七条)
第五章
罰則(第五十八条―第六十二条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、火薬類の製造、販売、貯蔵、運搬、消費その他の取扱を規制することにより、火薬類による災害を防止し、公共の安全を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「火薬類」とは、左に掲げる火薬、爆薬及び火工品をいう。
一 火薬
イ 黒色火薬その他硝酸塩を主とする火薬
ロ 無煙火薬その他硝酸エステルを主とする火薬
ハ その他イ又はロに掲げる火薬と同等に推進的爆発の用途に供せられる火薬であつて通商産業省令で定めるもの
二 爆薬
イ 雷こう、アジ化鉛その他の起爆薬
ロ 硝安爆薬、塩素酸カリ爆薬、カーリツトその他硝酸塩、塩素酸塩又は過塩素酸塩を主とする爆薬
ハ ニトログリセリン、ニトログリコール及び爆発の用途に供せられるその他の硝酸エステル
ニ ダイナマイトその他の硝酸エステルを主とする爆薬
ホ 爆発の用途に供せられるトリニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸、トリニトロクロルベンゼン、テトリル、トリニトロアニソール、ヘキサニトロジフエニルアミン、トリメチレントリニトロアミン、ニトロ基を三以上含むその他のニトロ化合物及びこれらを主とする爆薬
ヘ 液体酸素爆薬その他の液体爆薬
ト その他イからヘまでに掲げる爆薬と同等に破壊的爆発の用途に供せられる爆薬であつて通商産業省令で定めるもの
三 火工品
イ 工業雷管、電気雷管、猟銃雷管及び信号雷管
ロ 実包及び空包
ハ 信管及び火管
ニ 導爆線、導火線及び電気導火線
ホ 信号焔管及び信号火せん
ヘ 煙火その他前二号に掲げる火薬又は爆薬を使用した火工品(がん具用煙火を除く。)
第二章 事業
(製造の許可)
第三条 火薬類の製造(変形又は修理を含む。以下同じ。)の業を営もうとする者は、製造所ごとに、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
第四条 火薬類の製造は、前条の許可を受けた者(以下「製造業者」という。)でなければ、することができない。但し、理化学上の実験、鳥獣の捕獲若しくは駆除、射的練習又は医療の用に供するため製造する火薬類で、通商産業省令で定める数量以下のものを製造する場合は、この限りでない。
(販売営業の許可)
第五条 火薬類の販売の業を営もうとする者は、販売所ごとに、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、製造業者が、その製造した火薬類をその製造所において販売する場合は、この限りでない。
(欠格事由)
第六条 左の各号の一に該当する者には、第三条又は前条の許可を与えない。
一 第四十四条の規定により許可を取り消され、取消の日から三年を経過していない者
二 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることのなくなつた後、三年を経過していない者
三 禁治産者
四 法人又は団体であつて、その業務を行う役員のうちに前各号の一に該当する者があるもの
(許可の基準)
第七条 通商産業大臣又は都道府県知事は、第三条又は第五条の許可の申請があつた場合には、その申請を審査し、第三条の許可の申請については左の各号に適合し、第五条の許可の申請については第三号に適合していると認めるときは、許可を与えなければならない。
一 製造施設の構造、位置及び設備が、通商産業省令で定める技術上の基準に適合するものであること。
二 製造の方法が、通商産業省令で定める技術上の基準に適合するものであること。
三 その他製造又は販売が、公共の安全の維持又は災害の発生の防止に支障のないものであること。
(許可の取消)
第八条 通商産業大臣又は都道府県知事は、製造業者又は第五条の許可を受けた者(以下「販売業者」という。)が、正当な理由がないのに、一年以内にその事業を開始せず、又は一年以上引き続きその事業を休止したときは、その許可を取り消すことができる。
(製造施設及び製造方法)
第九条 製造業者は、その製造施設を、その構造、位置及び設備が、第七条第一号の技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 製造業者は、第七条第二号の技術上の基準に従つて火薬類を製造しなければならない。
3 通商産業大臣は、製造業者の製造施設又は製造方法が、第七条第一号又は第二号の技術上の基準に適合していないと認めるときは、技術上の基準に適合するように製造施設を修理し、改造し、若しくは移転し、又は技術上の基準に従い火薬類を製造すべきことを命ずることができる。
(製造施設等の変更)
第十条 製造業者が、製造施設の位置、構造若しくは設備の変更の工事をし、又はその製造する火薬類の種類若しくはその製造方法を変更しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 第七条の規定は、前項の許可に準用する。
(貯蔵)
第十一条 火薬類の貯蔵は、火薬庫においてしなければならない。但し、通商産業省令で定める数量以下の火薬類については、この限りでない。
2 火薬庫においてする火薬類の貯蔵は、通商産業省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
3 都道府県知事は、火薬類の貯蔵が、前項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、貯蔵者に対し、技術上の基準に従つて火薬類を貯蔵すべきことを命ずることができる。
(火薬庫)
第十二条 火薬庫を設置し、移転し又はその構造若しくは設備を変更しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による許可の申請があつた場合において、その火薬庫の構造、位置及び設備が、通商産業省令で定める技術上の基準に適合するものであるときは、許可を与えなければならない。
第十三条 製造業者又は販売業者は、もつぱら自己の用に供する火薬庫を所有し、又は占有しなければならない。但し、土地の事情等のためやむを得ない場合において都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
第十四条 火薬庫の所有者又は占有者は、火薬庫を、その構造、位置及び設備が第十二条第二項の技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 都道府県知事は、火薬庫の構造、位置及び設備が、第十二条第二項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、火薬庫の所有者又は占有者に対し、技術上の基準に適合するように、火薬庫を修理し、改造し、又は移転すべきことを命ずることができる。
(完成検査)
第十五条 第三条、第十条又は第十二条第一項の許可を受けた者は、火薬類の製造施設若しくは火薬庫の設置若しくは移転又はその構造若しくは設備の変更の工事をした場合には、製造施設又は火薬庫につき通商産業大臣が行う完成検査を受け、これらが、第七条第一号又は第十二条第二項の技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。
(営業の廃止等)
第十六条 製造業者又は販売業者が、その営業を廃止したときは、遅滞なくその旨を通商産業大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
2 火薬庫の所有者又は占有者は、その火薬庫の用途を廃止したときは、遅滞なくその旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(譲渡又は譲受の許可)
第十七条 火薬類を譲り渡し、又は譲り受けようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当するときは、この限りでない。
一 製造業者が、火薬類を製造する目的で譲り受け、又はその製造した火薬類を譲り渡すとき。
二 販売業者が、火薬類を譲り渡し、又は譲り受けるとき。
三 狩猟法(大正七年法律第三十二号)第三条の規定による狩猟免許を受けた者又は同法第十二条第一項の規定による鳥獣を捕獲することの許可を受けた者であつて装薬銃を使用するものが、鳥獣を捕獲する目的で通商産業省令で定める数量以下の火薬類を譲り受けるとき。
四 鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)により鉱物の試掘又は採掘をする者が、通商産業省令で定める数量以下の火薬類を護り受けるとき。
五 第二十四条第二項の許可を受けて火薬類を譲り受けるとき。
六 法令に基きその事務又は事業のために火薬類を消費する者が、その目的で火薬類を譲り受けるとき。
2 都道府県知事は、譲渡又は譲受の目的が明らかでないときその他譲渡又は譲受が、公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
3 都道府県知事が、第一項の許可をしたときは、譲渡許可証又は譲受許可証を交付しなければならない。
4 製造業者又は販売業者は、譲受人が第一項各号の一に該当することを確認した場合又は譲受人が前項の譲受許可証を呈示した場合でなければ、火薬類を譲り渡してはならない。
(行商及び屋外販売の禁止)
第十八条 何人も、火薬類の行商をし、又は露店その他屋外で火薬類を販売してはならない。
(運搬の制限)
第十九条 火薬類を運搬する場合は、次条の運搬証明書を携帯してこれをしなければならない。但し、同条但書の場合は、この限りでない。
2 火薬類の運搬は、その通路、積載方法、運搬具及び運搬方法について政令(軌道、無軌条電車、自動車及び軽車両の運搬具並びに鉄道、索道及び船舶については運輸省令)で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
(運搬届)
第二十条 火薬類を運搬しようとする場合は、その荷送人(他に運搬を委託しないで運搬する場合にあつては、その者)は、その旨を都道府県知事に届け出て、届出を証明する文書(以下「運搬証明書」という。)の交付を受けなければならない。但し、通商産業省令で定める数量以下の火薬類を運搬する場合は、この限りでない。
(所持者の範囲)
第二十一条 火薬類は、法令に基く場合又は左の各号の一に該当する場合の外、所持してはならない。
一 製造業者又は第四条但書の規定により火薬類を製造する者が、その製造した火薬類を所持するとき。
二 販売業者が、所持するとき。
三 第十七条第一項の規定により火薬類を譲り受けることができる者が、その火薬類を所持するとき。
四 第二十四条第二項の許可を受けて輸入した者が、その火薬類を所持するとき。
五 運送、貯蔵その他の取扱を委託された者が、その委託を受けた火薬類を所持するとき。
六 相続又は遺贈により火薬類の所有権を取得した者が、その火薬類を所持するとき。
七 法人の合併により火薬類の所有権を取得した者が、その火薬類を所持するとき。
八 火薬類を所持することができる者が、次条の規定に該当し、譲渡又は廃棄をしなければならない場合に、その措置をするまでの間所持するとき。
九 前各号に掲げる者の従業者が、その職務上火薬類を所持するとき。
(残火薬類の措置)
第二十二条 製造業者若しくは販売業者が、第八条若しくは第四十四条の許可の取消その他の事由により営業を廃止した場合又は火薬類を消費する目的で第十七条第一項の規定により火薬類の譲受の許可を受けた者が、その火薬類を消費し、若しくは消費することを要しなくなつた場合において、なお火薬類の残量があるときは、遅滞なくその火薬類を譲り渡し、又は廃棄しなければならない。
(取扱者の制限)
第二十三条 十八才未満の者は、火薬類の取扱をしてはならない。
2 何人も、十八才未満の者、白痴者又は精神病者に、火薬類の取扱をさせてはならない。
3 前二項の規定は、火薬類を包装する作業等の危険の少い取扱であつて通商産業省令で定めるものについては、適用しない。
(輸出及び輸入)
第二十四条 火薬類を輸出しようとする者は、都道府県知事に届け出なければならない。
2 火薬類を輸入しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
3 都道府県知事は、輸入の目的が明らかでないときその他その輸入が公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
4 火薬類を輸入した者は、遅滞なくその旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(消費)
第二十五条 火薬類を爆発させ、又は燃焼させようとする者(以下「消費者」という。)は、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、理化学上の実験、鳥獣の捕獲若しくは駆除又は射的練習の用に供するため通商産業省令で定める数量以下の火薬類を消費する場合、法令に基きその事務又は事業のために火薬類を消費する場合、第二十七条の規定に基き火薬類を廃棄する場合及び非常災害に際し緊急の措置をとるため必要な火薬類を消費する場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、その爆発又は燃焼の目的、場所、日時、数量又は方法が不適当であると認めるときその他その爆発又は燃焼が公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
第二十六条 火薬類の爆発又は燃焼は、通商産業省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
(廃業)
第二十七条 火薬類の廃棄は、廃棄の場所、数量その他廃棄の方法について通商産業省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
2 火薬類を廃棄しようとする者は、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。但し、製造業者が火薬類の製造中に生じた火薬類の廃薬を廃棄する場合は、この限りでない。
第三章 保安
(危害予防規程)
第二十八条 製造業者は、災害の発生を防止するため、危害予防規程を定め、通商産業大臣の許可を受けなければならない。これを変更するときも同様である。
2 通商産業大臣は、危害予防規程が、第七条第一号及び第二号の技術上の基準に適合していないときその他災害の発生の防止に適当でないと認めるときは、前項の認可をしてはならない。
3 通商産業大臣は、災害の発生の防止のため必要があると認めるときは、危害予防規程の変更を命ずることができる。
4 製造業者及びその従業者は、危害予防規程を守らなければならない。
(保安教育)
第二十九条 製造業者、販売業者及び消費者は、従業者に火薬類による災害の防止に必要な教育を施さなければならない。
(作業主任者及び取扱主任者)
第三十条 製造業者は、通商産業省令で定める区分により、次条の火薬類作業主任者免状を有する者のうちから、火薬類作業主任者(以下「作業主任者」という。)を選任し、火薬類の製造作業に係る保安について監督を行わせなければならない。
2 火薬庫の所有者若しくは占有者又は通商産業省令で定める数量以上の火薬類を消費する者は、通商産業省令で定める区分により、次条の火薬類取扱主任者免状を有する者のうちから、火薬類取扱主任者(以下「取扱主任者」という。)を選任し、火薬類の貯蔵又は消費に係る保安について監督を行わせなければならない。
3 第一項又は前項の規定により、製造業者、火薬庫の所有者若しくは占有者又は前項の消費者が、作業主任者又は取扱主任者を選任したときは、その旨を通商産業大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。これを解任したときも同様である。
(作業主任者免状及び取扱主任者免状)
第三十一条 火薬類作業主任者免状は、甲種火薬類作業主任者免状、乙種火薬類作業主任者免状及び丙種火薬類作業主任者免状とする。
2 火薬類取扱主任者免状は、甲種火薬類取扱主任者免状及び乙種火薬類取扱主任者免状とする。
3 甲種火薬類作業主任者免状及び乙種火薬類作業主任者免状は、通商産業大臣の行う試験に合格した者に対し、丙種火薬類作業主任者免状、甲種火薬類取扱主任者免状及び乙種火薬類取扱主任者免状は、都道府県知事の行う試験に合格した者に対し交付する。
4 通商産業大臣又は都道府県知事は、火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状の交付を受けた者が、この法律又はこの法律に基く省令の規定に違反したときは、その火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状の返納を命ずることができる。
5 第三項の試験の課目、受験手続その他試験の実施細目並びに火薬類作業主任者免状及び火薬類取扱主任者免状の交付及び返納に関する手続的事項は、通商産業省令で定める。
(作業主任者等の義務)
第三十二条 作業主任者及び取扱主任者は、誠実にその職務を遂行しなければならない。
2 火薬類を取り扱う者は、作業主任者及び取扱主任者が、この法律又はこの法律に基く省令及び危害予防規程の実施を確保するためにする指示に従わなければならない。
(作業主任者の代理者)
第三十三条 製造業者は、通商産業省令で定める区分により、火薬類作業主任者免状を有する者のうちから、あらかじめ作業主任者の代理者を選任し、作業主任者が旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができない場合に、その職務を代行させなければならない。
2 製造業者が、前項の代理者を選任したときは、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。これを解任したときも同様である。
3 第一項の代理者は、作業主任者の職務を代行する場合は、この法律及びこの法律に基く省令の規定の適用については、これを作業主任者とみなす。
(作業主任者等の解任命令)
第三十四条 通商産業大臣は、作業主任者若しくはその代理者又は取扱主任者が、この法律又はこの法律に基く省令の規定に違反したとき又は保安上その職務を遂行させることが不適当であると認めるときは、これらの者を選任した者又はその承継人に対し、作業主任者若しくはその代理者又は取扱主任者の解任を命ずることができる。
(保安検査)
第三十五条 製造業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者は、火薬類の爆発又は発火の危険がある製造施設であつて通商産業省令で定めるもの又は火薬庫について、通商産業大臣が、毎年定期に行う保安検査を受けなければならない。
2 前項の保安検査は、その施設又は火薬庫が、第七条第一号又は第十二条第二項の技術上の基準に適合しているかどうかについて行う。
(安定度試験)
第三十六条 火薬類を輸入した者又はその製造後通商産業省令で定める期間を経過した火薬類を所有する者は、通商産業省令で定める方法により、その火薬類につき安定度試験を実施し、且つ、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。
2 通商産業大臣又は都道府県知事は、災害の防止のため必要があると認めるときは、火薬類の所有者に対し、前項の安定度試験を実施すべきことを命ずることができる。
(不良火薬類の措置)
第三十七条 火薬類の所有者は、前条の安定度試験の結果通商産業省令で定める技術上の基準に適合しない火薬類があつたときは、その火薬類を廃棄しなければならない。
(火薬類の混包等の禁止)
第三十八条 火薬類は、他の物と混包し、又は火薬類でないようにみせかけて、これを所持し、運搬し、若しくは託送してはならない。
(危険時の措置及び届出)
第三十九条 火薬庫が近隣の火災その他の事情により危険な状態となり、又は火薬類が煙若しくは異臭を発し、その他安定度に異常を呈したときは、その火薬庫又は火薬類の所有者又は占有者は、直ちに通商産業省令で定める応急の措置を講じなければならない。
2 前項の事態を発見した者は、直ちにその旨を都道府県知事、警察官又は警察吏員に届け出なければならない。
(喫煙等の制限)
第四十条 何人も、火薬類の製造所又は火薬庫においては、製造業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者の指定する場所以外の場所で、喫煙し、又は火気を取り扱つてはならない。
2 何人も、製造業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者の承諾を得ないで、発火し易い物を携帯して火薬類の製造所又は火薬庫に立ち入つてはならない。
(帳簿)
第四十一条 製造業者、販売業者及び火薬庫の所有者若しくは占有者は、帳簿を備え、火薬類の製造、販売及び出納について通商産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(報告の徴収)
第四十二条 通商産業大臣は、災害を防止し、又は公共の安全の維持をはかるため、必要があると認めるときは、製造業者、販売業者又は火薬庫の所有者若しくは占有者に対し、事業に関し、報告をさせることができる。
(立入検査等)
第四十三条 通商産業大臣又は都道府県知事は、災害の防止又は公共の安全の維持のため必要があると認めるときは、その職員に、製造業者、販売業者、消費者又は火薬類を保管する者の製造所、販売所、火薬庫、消費場所又は保管場所に立ち入り、その者の帳簿書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させ、又は試験のため必要な最少限度の分量に限り火薬類を収去させることができる。
2 警察官、警察吏員又は海上保安官は、人の生命、身体又は財産に対する危害を予防するため特に必要がある場合には、火薬庫その他火薬類の保管場所又は火薬類の製造場所若しくは消費場所に立ち入り、関係者に質問することができる。
3 前二項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係者の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による立入検査は、関係者の正当な業務又は行為を妨害するものであつてはならず、且つ、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(許可の取消等)
第四十四条 通商産業大臣は、製造業者又は販売業者が、左の各号の一に該当するときは、第三条若しくは第五条の許可を取り消し、又は期間を定めてその事業の停止を命ずることができる。
一 第十一条第一項、第十三条、第十八条、第二十三条第二項、第三十条第一項若しくは第二項又は第三十八条の規定に違反したとき。
二 第十条第一項、第十二条第一項又は第二十四条第二項の規定により許可を受けなければならない事項を許可を受けないでしたとき。
三 第十五条の規定による完成検査を受けないで、火薬類の製造施設又は火薬庫を使用したとき。
四 第二十四条第一項の規定による届出をしないで火薬類を輸出したとき。
五 第三十六条第一項の規定による安定度試験を実施しなかつたとき。
六 第九条第三項、第十一条第三項、第十四条第二項、第二十八条第三項、第三十四条、第三十六条第二項若しくは次条第一号の命令又は同条第二号の禁止若しくは制限に違反したとき。
七 第六条第二号から第四号までの規定に該当するに至つたとき。
八 第四十八条第一項の条件に違反したとき。
(緊急措置)
第四十五条 通商産業大臣(鉄道、軌道、索道、無軌条電車、自動車、軽車両及び船舶による運搬については、運輸大臣)は、災害の発生の防止又は公共の安全の維持のため緊急の必要があると認めるときは、左に掲げる措置をすることができる。
一 製造業者、販売業者又は消費者に対して、製造施設又は火薬庫の全部若しくは一部の使用を一時停止すべきことを命ずること。
二 製造業者、販売業者、消費者その他火薬類を取り扱う者に対して、製造、販売、貯蔵、運搬又は消費を一時禁止し、又は制限すること。
三 火薬類の所有者又は占有者に対して、火薬類の所在場所の変更又はその廃棄を命ずること。
第四章 雑則
(事故届等)
第四十六条 製造業者、販売業者、消費者その他火薬類を取り扱う者は、左の各号の場合には、遅滞なくその旨を警察官、警察吏員又は海上保安官に届け出なければならない。
一 その所有し、又は占有する火薬類について災害が発生したとき。
二 その所有し、又は占有する火薬類、譲渡許可証、譲受許可証又は運搬証明書を喪失し、又は盗取されたとき。
2 通商産業大臣又は都道府県知事は、前項第一号の場合においては、所有者又は占有者に対し、災害発生の日時、場所及び原因、火薬類の種類及び数量、被害の程度等につき報告をさせることができる。
(現状変更の禁止)
第四十七条 何人も、火薬類による爆発その他災害が発生したときは、交通の確保その他公共の利益のためやむを得ない場合を除き、通商産業大臣、都道府県知事、警察官又は警察吏員の指示なく、その現状を変更してはならない。但し、第三十九条第一項の規定による措置を講ずる場合は、この限りでない。
(許可の条件)
第四十八条 第三条、第五条、第十七条第一項、第二十四条第二項又は第二十五条第一項の許可には、条件を附することができる。
2 前項の条件は、災害の防止又は公共の安全の維持をはかるため必要な最小限度のものに限り、且つ、許可を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(手数料の納付)
第四十九条 左の表の上欄に掲げる者(国を除く。)は、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内で政令で定める額の手数料を納めなければならない。
手数料を納付すべき者
金額
一 第三条の許可の申請をする者
七千円
二 第五条の許可の申請をする者
五千円
三 第十二条第一項の許可の申請をする者
二千円
四 第十五条の完成検査を受けようとする者
一千円
五 第十七条第一項の許可の申請をする者
二百円
六 第二十条の運搬証明書の交付を受けようとする者
二百円
七 第二十四条第二項の許可の申請をする者
二千円
八 甲種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者
一千円
九 乙種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者
八百円
十 丙種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者
七百円
十一 甲種火薬類取扱主任者免状の交付を受けようとする者
六百円
十二 乙種火薬類取扱主任者免状の交付を受けようとする者
五百円
2 前項の手数料は、第三条の許可の申請を通商産業大臣に対してする者、通商産業大臣の行う第十五条の完成検査を受けようとする者並びに甲種火薬類作業主任者免状及び乙種火薬類作業主任者免状の交付を受けようとする者の納付するものについては、国庫の、その他の者の納付するものについては、当該都道府県の収入とする。
(けい留船等の特則)
第五十条 けい留船を火薬庫に使用する場合及び船舶に常用火薬類を貯蔵する場合には、第十一条、第十二条、第十六条第二項及び第五十二条中「通商産業省令」とあるのは、「運輸省令」と、「都道府県知事」とあるのは、「海上保安庁長官(湖沼河川については、都道府県知事)」と読み替えるものとする。
2 第十五条及び第三十五条の規定は、けい留船を火薬庫に使用する場合には、適用しない。
(適用除外)
第五十一条 導火線及び電気導火線については、第十九条、第二十条、第二十五条、第二十六条、第三十条第二項及び第三十六条の規定は、適用しない。
2 信号焔管、信号火せん及び煙火については、第十七条、第十九条から第二十二条まで、第二十五条から第二十七条まで、第三十条第二項、第三十三条及び第三十六条の規定は、適用しない。
3 鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二条の鉱山においては、第十九条、第二十条、第二十五条第一項、第二十六条、第二十九条、第三十条第二項(火薬類の消費に係るものに限る。)、第四十三条第一項(火薬類の消費場所に係るものに限る。)、第四十五条第二号及び第三号(火薬類の運搬又は消費に関する災害の防止に係るものに限る。)並びに第四十七条(火薬類の運搬又は消費に関する災害の発生に係るものに限る。)の規定は、適用しない。
(通商産業大臣と国家公安委員会との関係等)
第五十二条 通商産業大臣又は都道府県知事は、第三条、第五条、第十条第一項、第十二条第一項、第十七条第一項、第二十四条第二項若しくは第二十五条第一項の許可をし、又は第十六条若しくは第二十条の届出を受理したときは、政令で定める区分により、その旨を国家公安委員会、都道府県公安委員会、市町村公安委員会若しくは特別区公安委員会又は海上保安庁長官に通報しなければならない。
2 警察官又は警察吏員は、第三十九条第二項又は第四十六条第一項の規定による届出を受理したときは、すみやかにその旨を当該都道府県知事に通報しなければならない。
(公聴会)
第五十三条 主務大臣は、第七条第一号若しくは第二号、第十一条第二項、第十二条第二項、第十九条第二項、第二十六条又は第二十七条第一項の命令を制定しようとするときは、公聴会を開き、広く一般の意見を聞かなければならない。
(聴聞)
第五十四条 行政庁は、第八条、第三十一条第四項、第三十四条又は第四十四条の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対して、相当な期間を置いて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(不服の申立)
第五十五条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による行政庁の処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、当該行政庁に不服の申立をすることができる。
(決定)
第五十六条 行政庁は、前条の不服の申立があつたときは、第五十四条の例により公開の聴聞をした後、文書をもって決定をし、その写を不服の申立をした者に送付しなければならない。
(権限の委任)
第五十七条 この法律又はこの法律に基く命令の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令の定めるところにより、都道府県知事に行わせることができる。
第五章 罰則
第五十八条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条の規定による許可を受けないで火薬類の製造の業を営んだ者
二 第四条の規定に違反した者
三 第五条の規定による許可を受けないで火薬類の販売の業を営んだ者
四 第二十四条第二項の規定による許可を受けないで火薬類を輸入した者
五 第四十四条の規定による事業の停止の命令に違反した者
第五十九条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第十条第一項の規定による許可を受けないで製造施設の位置、構造若しくは設備の変更の工事をし、又はその製造する火薬類の種類若しくはその製造の方法を変更した者
二 第十一条第一項、第十三条、第十五条、第十八条、第二十一条、第二十三条第二項、第三十条第一項若しくは第二項、第三十三条第一項、第三十七条又は第三十八条の規定に違反した者
三 第十二条第一項の規定による許可を受けないで火薬庫を設置し、移転し、又はその構造若しくは設備を変更した者
四 第十七条第一項の規定に違反し、許可を受けないで火薬類を譲り渡し、又は譲り受けた者
五 第二十五条第一項の規定に違反し、許可を受けないで火薬類を爆発又は燃焼させた者
六 第二十八条第一項の規定による認可を受けないで、火薬類の製造をした者
七 第三十六条第一項の規定に違反し、安定度試験を実施しない者
八 第四十五条の規定による命令又は禁止若しくは制限に違反した者
第六十条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項若しくは第二項、第十一条第二項、第十四条第一項、第十七条第四項、第十九条第二項、第二十二条、第二十三条第一項、第二十六条、第二十七条第一項、第四十条第一項若しくは第二項又は第四十七条の規定に違反した者
二 第十九条第一項の規定に違反し、運搬証明書を携帯しないで火薬類を運搬した者
三 虚偽の届出をして、第二十条の運搬証明書の交付を受けた者
四 第二十四条第一項の届出をしないで火薬類を輸出し、又は虚偽の届出をした者
五 第二十四条第二項の許可に係る条件に違反した者
六 第二十七条第二項の規定に違反し、届出をしないで火薬類を廃棄し、又は虚偽の届出をした者
第六十一条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由なく第三十一条第四項の命令に違反し、火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状を返納しない者
二 第四十一条の規定による事項を帳簿に記載せず、又は虚偽の記載をした者
三 第三十六条 第一項、第四十二条又は第四十六条第二項の報告をせず、又は虚偽の報告をした者
四 第十六条第一項若しくは第二項、第二十四条第四項、第三十条第三項、第三十三条第二項又は第四十六条第一項の届出をせず、又は虚偽の届出をした者
五 第三十五条第一項、第四十三条第一項若しくは第二項の規定による検査若しくは収去を拒み、妨げ若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
(両罰規定)
第六十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律施行の期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
(他の法令の改廃)
2 銃砲火薬類取締法(明治四十三年法律第五十三号、以下「旧法」という。)は、廃止する。
3 通商産業省設置法(昭和二十四年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第二十九号中「銃砲火薬類」を「火薬類」に改める。
(経過規定)
4 旧法に基いてした命令、処分、許可、認可、検査その他の措置で、この法律に各相当する規定のあるものは、この法律に基いてしたものとみなす。
5 旧法に基いて交付された火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状は、それぞれこの法律の規定による火薬類作業主任者免状又は火薬類取扱主任者免状とみなす。
6 旧法に基いて交付された譲渡許可証、譲受許可証又は運搬許可証は、それぞれこの法律の規定による譲渡許可証、譲受許可証又は運搬証明書とみなす。
7 この法律施行の際、旧法第三条の許可を受けて火薬類の製造の業を営む者は、この法律施行の日から三箇月以内に第二十八条第一項の規定により危害予防規程を定め、通商産業大臣に認可を申請しなければならない。
8 第五十九条第七号の規定は、前項の者が、第二十八条第一項の規定により通商産業大臣の認可を受けるまでの間は、適用しない。
9 旧法第十四条第四号及びこれに基く命令の規定で火薬類製造所に関するものは、附則第七項の者が、第二十八条第一項の規定による通商産業大臣の認可を受けるまでの間は、附則第二項の規定にかかわらず、その者について、なおその効力を有する。
10 附則第七項の規定に違反し、認可を申請しない者は、五万円以下の罰金に処する。
11 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 吉田茂
通商産業大臣 高瀬荘太郎
運輸大臣 大屋晋三