狩猟法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第23号
公布年月日: 昭和38年3月22日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

野生鳥獣の減少傾向が強まる中、自然保護や生活環境の改善、農林水産業への影響を考慮し、より強力な保護繁殖施策と適正な狩猟制度の確立が必要となっている。そこで、法律名を「鳥獣保護及狩猟二関スル法律」に改め、鳥獣保護事業計画制度を新設し、禁猟区制度を鳥獣保護区制度に統合する。また、狩猟免許の効力を都道府県単位とし、休猟区制度を設けるとともに、都道府県鳥獣審議会の設置や鳥獣保護員の配置など、組織体制の整備を行う。

参照した発言:
第43回国会 参議院 農林水産委員会 第6号

審議経過

第43回国会

参議院
(昭和38年2月12日)
(昭和38年2月14日)
(昭和38年2月19日)
(昭和38年2月21日)
(昭和38年2月22日)
(昭和38年2月26日)
(昭和38年2月27日)
衆議院
(昭和38年3月12日)
(昭和38年3月13日)
(昭和38年3月14日)
(昭和38年3月15日)
参議院
(昭和38年3月20日)
狩猟法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十八年三月二十二日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第二十三号
狩猟法の一部を改正する法律
狩猟法(大正七年法律第三十二号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律
第一条第四項中「鳥獣審議会」を「中央鳥獣審議会」に改め、同条第五項中「利害関係人及学識経験者ノ意見ヲ聞キ、且」を「利害関係人ノ意見ヲ聞キ、且都道府県鳥獣審議会ニ諮問シタル上、」に改め、同条を第一条ノ四とし、第一条から第一条ノ三までとして次の三条を加える。
第一条 本法ハ鳥獣保護事業ヲ実施シ及狩猟ヲ適正化スルコトニ依リ鳥獣ノ保護蕃殖、有害鳥獣ノ駆除及危険ノ予防ヲ図リ以テ生活環境ノ改善及農林水産業ノ振興ニ資スルコトヲ目的トス
第一条ノ二 都道府県知事ハ鳥獣ノ保護蕃殖ヲ目的トスル事業(之ニ係ル狩猟ニ関スル取締ヲ含ム以下鳥獣保護事業ト称ス)ヲ実施スル為農林大臣ガ中央鳥獣審議会ノ意見ヲ聞キ定ムル基準ニ従ヒ鳥獣保護事業計画ヲ樹ツルモノトス
鳥獣保護事業計画ニ於テハ左ニ掲グル事項ヲ定ムルモノトス
一 計画ノ期間
二 鳥獣保護区ノ設定及特別保護地区ノ指定並ニ休猟区ノ設定並ニ此等ノ整備ニ関スル事項
三 鳥獣ノ人工増殖及放鳥獣ニ関スル事項
四 有害鳥獣ノ駆除ニ関スル事項
五 鳥獣ノ棲息状況ノ調査ニ関スル事項
六 鳥獣保護事業ニ関スル啓蒙ニ関スル事項
七 鳥獣保護事業ノ実施ノ体制ノ整備其ノ他鳥獣保護事業ノ実施ノ為必要ナル事項
都道府県知事鳥獣保護事業計画ヲ樹テ又ハ之ヲ変更セントスルトキハ都道府県鳥獣審議会ノ意見ヲ聞クコトヲ要ス
都道府県知事鳥獣保護事業計画ヲ樹テ又ハ之ヲ変更シタルトキハ遅滞ナク之ヲ公表スルト共ニ農林大臣ニ報告スべシ
第一条ノ三 国ハ都道府県ニ対シ鳥獣保護事業計画ノ樹立ニ関シ必要アリト認ムルトキハ勧告ヲ行フト共ニ鳥獣保護事業ヲ実施スル為必要ナル指導及援助ヲ行フ様努ムルモノトス
都道府県知事ハ鳥獣保護事業計画ノ達成ヲ図ル為所要ノ措置ヲ講ズルモノトス
第四条第三項中「狩猟免状」を「狩猟免許」に改め、同条第二項の次に次の二項を加える。
都道府県知事ハ狩猟免許ヲ受クル者ニ対シ狩猟免状ト共ニ狩猟免許ヲ受ケタルコトヲ表示スル記章ヲ交付ス
狩猟免許ハ狩猟免状ヲ交付シタル都道府県知事ノ管轄スル区域内ニ非ザレバ其ノ効力ヲ有セズ
第五条第二項中「経過スルニ非ザレバ」の下に「当該取消ニ係ル狩猟免許ニ付テハ取消ヲ為シタル都道府県知事ノ」を加える。
第六条第二項中「其ノ免許」を「其ノ狩猟免許」に改める。
第七条中「次条第一項ノ講習会ニ於ケル講習ヲ受ケザル者ニシテ同項各号」を「次条第二項ノ証明書ヲ有セザル者ニシテ同条第一項各号」に改め、同条に次の一項を加える。
都道府県知事狩猟免許ヲ為スニ当リテハ当該都道府県ノ区域内ニ於ケル鳥獣ノ棲息状況其ノ他ノ事情ヲ勘案スルト共ニ特ニ必要アリト認ムルトキハ狩猟免許ヲ申請シタル者ノ狩猟ヲ為スニ必要ナル適性ノ有無ヲ審査シテ之ヲ為スモノトス
第七条ノ二第一項中「知識ノ普及及向上」を「知識ヲ修得セシムルコト」に改め、同条第二項中「前項」を「第一項」に、「鳥獣審議会」を「中央鳥獣審議会」に改める。
第七条ノ二第一項の次に次の一項を加える。
都道府県知事ハ政令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ講習会ニ於ケル講習ヲ受ケ其ノ課程ヲ修了シタル者ニ対シ証明書ヲ交付ス
第八条第一項中「其ノ免許」を「其ノ狩猟免許ノ全部又ハ一部」に改める。
第八条ノ二第一項中「特ニ必要アルトキハ」を「必要アリト認ムルトキハ」に改める。
第八条ノ二第六項中「第三項」を「第二項」に、「第四項」を「第五項」に改め、同条第四項及び第五項中「鳥獣保護区」を「特別保護地区」に改め、同条第三項の次に次の二項を加える。
農林大臣又ハ都道府県知事ハ鳥獣ノ保護蕃殖ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ政令ノ定ムル所ニ依リ鳥獣保護区ノ区域内ニ特別保護地区ヲ指定スルコトヲ得
第一条ノ四第四項及第五項ノ規定ハ第一項及前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第八条ノ二第二項を削る。
第九条を次のように改める。
第九条 都道府県知事ハ一定ノ地域ニ於ケル狩猟鳥獣ガ減少シタル場合ニ於テ其ノ増加ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ三年以内ノ期間ヲ定メ休猟区ヲ設定スルコトヲ得
第十一条第二号を次のように改める。
二 休猟区
第十四条第一項から第三項まで中「入猟規程」を「猟区管理規程」に改め、同条第七項を次のように改める。
猟区設定者猟区内ニ於ケル狩猟鳥獣ノ保護蕃殖上必要アリト認ムルトキハ其ノ生育及蕃殖ニ必要ナル施設ノ設置、狩猟鳥獣ノ人工増殖、放鳥獣等当該猟区ノ維持管理ニ関スル事務ヲ国ノ設定スル猟区ニ在リテハ農林大臣ガ中央鳥獣審議会ノ、地方公共団体ノ設定スル猟区ニ在リテハ都道府県知事ガ都道府県鳥獣審議会ノ意見ヲ聞キ指定スル者ニ委託スルコトヲ得
第十四条第七項の次に次の二項を加える。
前項ノ規定ニ依リ同項ノ事務ノ委託ヲ受ケタル者(以下受託者ト称ス)ハ当該事務ニ要スル費用ヲ負担スルモノトス
受託者ハ猟区内ニ於テ狩猟ヲ為サントスル者ヨリ委託ニ係ル事務ニ要スル費用ニ充ツべキ金額ヲ徴収シ其ノ収入ト為スコトヲ得
第十九条ノ二第一項中「禁猟区」を「休猟区」に改める。
第二十条中「又ハ譲受クルコト」を「、譲受ケ、又ハ販売、加工若ハ保管ノ為引渡シ、若ハ其ノ引渡ヲ受クルコト」に改める。
第二十条ノ三中「卵ヲ」の下に「加工、」を加える。
第二十条ノ五を次のように改める。
第二十条ノ五 農林省ニ中央鳥獣審議会ヲ、都道府県ニ都道府県鳥獣審議会ヲ置ク
中央鳥獣審議会又ハ都道府県鳥獣審議会ハ本法ニ依リ其ノ権限ニ属セシメラレタル事項ヲ行フノ外農林大臣又ハ都道府県知事ノ諮問ニ応ジ鳥獣ノ保護蕃殖及狩猟ニ関スル重要事項ヲ調査審議ス
中央鳥獣審議会及都道府県鳥獣審議会ハ鳥獣ノ保護蕃殖及狩猟ニ関スル重要事項ニ付関係行政庁ニ建議スルコトヲ得
第二十条ノ五の次に次の五条を加える。
第二十条ノ六 中央鳥獣審議会ハ委員二十五人以内ヲ以テ之ヲ組織ス
委員ハ関係行政庁ノ職員及前条第二項ニ規定スル事項ニ関シ学識経験ヲ有スル者ノ中ヨリ農林大臣之ヲ任命ス
委員ノ任期ハ二年トシ之ニ欠員ヲ生ジタル場合ノ補欠委員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス但シ再任ヲ妨ゲズ
委員ハ之ヲ非常勤トス
第二十条ノ七 都道府県鳥獣審議会ハ委員十五人以内ヲ以テ之ヲ組織ス
委員ハ関係行政庁ノ職員及第二十条ノ五第二項ニ規定スル事項ニ関シ学識経験ヲ有スル者ノ中ヨリ都道府県知事之ヲ任命ス
委員ノ任期ハ二年トシ之ニ欠員ヲ生ジタル場合ノ補欠委員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス但シ再任ヲ妨ゲズ
委員ハ之ヲ非常勤トス
第二十条ノ八 中央鳥獣審議会及都道府県鳥獣審議会ニ会長ヲ置キ夫々委員ノ中ヨリ之ヲ互選ス
会長ハ会務ヲ総理ス
第二十条ノ九 前四条ニ規定スルモノノ外中央鳥獣審議会及都道府県鳥獣審議会ノ組識及運営ニ関シ必要ナル事項ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十条ノ十 鳥獣保護事業ノ実施ニ関スル事務ヲ補助セシムル為都道府県ニ鳥獣保護員ヲ置クコトヲ得鳥獣保護員ハ之ヲ非常勤トス
第二十二条第一号中「第一条第一項」を「第一条ノ四第一項」に、「第四条第五項」を「第四条第七項」に改め、同条第二号中「第一条第三項」を「第一条ノ四第三項」に改める。
第二十二条ノ二中「第八条ノ二第三項若ハ第四項」を「第八条ノ二第二項若ハ第五項」に改める。
第二十三条第四号中「禁猟区」を「特別保護地区、休猟区」に、「第八条ノ二第三項」を「第八条ノ二第二項」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過規定)
第二条 この法律の施行後改正後の第一条ノ二の規定により最初にたてる鳥獣保護事業計画の始期は、昭和三十九年四月一日とし、その鳥獣保護事業計画は、昭和三十八年十二月三十一日までにたてなければならない。
第三条 この法律の施行の際現に狩猟鳥獣として定められているものは、改正後の第一条ノ四第二項及び第四項の規定により定められたものとみなす。
第四条 この法律の施行前に農林大臣又は都道府県知事がした改正前の第一条第三項の規定による捕獲の禁止又は制限であつてこの法律の施行の際現に効力を有するものは、改正後の第一条ノ四第三項から第五項までの規定により農林大臣又は都道府県知事がした禁止又は制限とみなす。
第五条 この法律の施行の際現に設定されている鳥獣保護区は、改正後の第八条ノ二第一項の規定により設定された鳥獣保護区とみなし、当該鳥獣保護区の区域は、改正後の第八条ノ二第三項並びに同条第四項において準用する改正後の第一条ノ四第四項及び第五項の規定により指定された特別保護地区とみなす。
第六条 この法律の施行の際現に設けられている禁猟区は、改正後の第八条ノ二第一項の規定により設定された鳥獣保護区とみなす。
2 前項の鳥獣保護区については、改正後の第八条ノ二第二項の規定は、同項の規定の適用につき、次項の規定による異議の申出がなかつたときは第四項の期間の末日まで、次項の規定による異議の申出があつたときは第五項前段の決定があるまでは、適用しない。
3 農林大臣又は都道府県知事は、この法律の施行後三十日以内に、改正後の第八条ノ二第二項の規定の適用につき異議のある利害関係人は農林大臣又は都道府県知事に異議を申し出ることができる旨の公告をしなければならない。
4 前項の規定により異議を申し出ることができる期間は、同項の公告があつた日の翌日から起算して六十日とする。
5 農林大臣又は都道府県知事は、第三項の規定による異議の申出があつたときは、その申出があつた日から六十日以内にこれについて決定をしなければならない。この場合において、異議を正当と認める旨の決定をするときは、同時に当該鳥獣保護区の設定を取り消さなければならない。
6 改正後の第一条ノ四第四項及び第五項の規定は、前項前段の決定をする場合に準用する。
第七条 この法律の施行の際現に設定されている猟区は、改正後の第十四条第一項の規定により設定された猟区とみなし、当該猟区に係る入猟規程は、次項の規定による当該猟区に係る猟区管理規程の認可又は第三項の規定による当該猟区の設定の認可の取消しがあるまでは、改正後の第十四条第一項の猟区管理規程とみなす。
2 前項の猟区の設定者は、改正後の第十四条第二項の規定に基づく政令で定めるところにより猟区管理規程を定め、昭和三十八年十二月三十一日までに農林大臣に認可の申請をしなければならない。
3 農林大臣は、第一項の猟区の設定者が前項の日までに同項の申請をしなかつたとき、又は同項の申請に対し不認可の処分をしたときは、当該猟区の設定の認可を取り消さなければならない。
第八条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(農林省設置法の一部改正)
第九条 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第六十五条第一項の表中
鳥獣審議会
狩猟法(大正七年法律第三十二号)の規定によりその権限に属させられた事項を行うこと。
中央鳥獣審議会
鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三十二号)の規定によりその権限に属させられた事項を行なうこと。
に改め、同条第二項中「鳥獣審議会」を「中央鳥獣審議会」に、「狩猟法」を「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に改める。
(火薬類取締法の一部改正)
第十条 火薬類取締法(昭和二十五年法律第百四十九号)の一部を次のように改正する。
第十七条第一項第三号中「狩猟法」を「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に改める。
第二十二条中「狩猟法」を「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に、「狩猟免状」を「狩猟免許」に改める。
(地方交付税法の一部改正)
第十一条 地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の一部を次のように改正する。
第十四条第三項の表道府県の項中「狩猟法」を「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に、「下付」を「交付」に改める。
(銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正)
第十二条 銃砲刀剣類等所持取締法(昭和三十三年法律第六号)の一部を次のように改正する。
第十条第二項第一号中「狩猟法」を「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に改める。
内閣総理大臣 池田勇人
農林大臣 重政誠之
通商産業大臣 福田一
自治大臣 篠田弘作