戸籍法
法令番号: 法律第二百二十四号
公布年月日: 昭和22年12月22日
法令の形式: 法律
戸籍法を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月二十二日
内閣総理大臣 片山哲
法律第二百二十四号
戸籍法目次
第一章
総則
第二章
戸籍簿
第三章
戸籍の記載
第四章
届出
第一節
通則
第二節
出生
第三節
認知
第四節
養子縁組
第五節
養子離縁
第六節
婚姻
第七節
離婚
第八節
親権及び後見
第九節
死亡及び失踪
第十節
生存配偶者の復氏及び姻族関係の終了
第十一節
推定相続人の廃除
第十二節
入籍
第十三節
分籍
第十四節
國籍の得喪
第十五節
氏名の変更
第十六節
轉籍及び就籍
第五章
戸籍の訂正
第六章
雜則
附則
戸籍法
第一章 総則
第一條 戸籍に関する事務は、市町村長がこれを管掌する。
第二條 市町村長は、自己又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属に関する戸籍事件については、その職務を行うことができない。
第三條 戸籍事務は、市役所又は町村役場の所在地を管轄する司法事務局の長がこれを監督する。
第四條 都の区のある区域においては、この法律中の市、市長及び市役所に関する規定は、区、区長及び区役所にこれを準用する。特別市及び地方自治法第百五十五條第二項の市においても、第五條第一項の場合を除く外、同樣である。
第五條 この法律の規定によつて納める手数料は、これを市町村の收入とする。
手数料の額は、別に法律でこれを定める。
第二章 戸籍簿
第六條 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。但し、配偶者がない者についてあらたに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。
第七條 戸籍は、これをつづつて帳簿とする。
第八條 戸籍は、正本と副本を設ける。
正本は、これを市役所又は町村役場に備え、副本は、監督司法事務局又はその出張所がこれを保存する。
第九條 戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する。その者が戸籍から除かれた後も、同樣である。
第十條 何人でも、手数料を納めて、戸籍簿の閲覽又は戸籍の謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。戸籍の謄本若しくは抄本の記載事項に変更がないことの証明又は戸籍に記載した事項に関する証明についても、同樣である。但し、市町村長は、正当な理由がある場合に限り、本項の請求を拒むことができる。
手数料の外に郵送料を納めて、謄本、抄本又は前項に規定する証明書の送付を請求することができる。
謄本は、請求によつて、除籍者に関する記載の謄写を省略して、これを作ることができる。
第十一條 戸籍簿の全部又は一部が、滅失したとき、又は滅失の虞があるときは、最高法務総裁は、その再製又は補完について必要な処分を命ずる。但し、滅失した場合には、その旨を告示しなければならない。
第十二條 一戸籍内の全員をその戸籍から除いたときは、その戸籍は、これを戸籍簿から除いて別につづり、除籍簿として、これを保存する。
第九條乃至前條の規定は、除籍簿及び除かれた戸籍にこれを準用する。
第三章 戸籍の記載
第十三條 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
一 氏名
二 出生の年月日
三 戸籍に入つた原因及び年月日
四 実父母の氏名及び実父母との続柄
五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六 夫婦については、夫又は妻である旨
七 他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示
八 その他命令で定める事項
第十四條 氏名を記載するには、左の順序による。
第一 夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻
第二 配偶者
第三 
子の間では、出生の前後による。
戸籍を編製した後にその戸籍に入るべき原因が生じた者については、戸籍の末尾にこれを記載する。
第十五條 戸籍の記載は、届出、報告、申請若しくは請求、証書若しくは航海日誌の謄本又は裁判によつてこれをする。
第十六條 婚姻の届出があつたときは、夫婦について新戸籍を編製する。但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。
前項但書の場合には、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入り、妻の氏を称する夫は、妻の戸籍に入る。
第十七條 戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者以外の者がこれと同一の氏を称する子又は養子を有するに至つたときは、その者について新戸籍を編製する。
第十八條 父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。
前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
養子は、養親の戸籍に入る。
第十九條 婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。
前項の規定は、民法第七百五十一條第一項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び同法第七百九十一條第三項の規定によつて從前の氏に復する場合にこれを準用する。
第二十條 前二條の規定によつて他の戸籍に入るべき者に配偶者があるときは、前二條の規定にかかわらず、その夫婦について新戸籍を編製する。
第二十一條 成年に達した者は、分籍をすることができる。但し、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、この限りでない。
分籍の届出があつたときは、新戸籍を編製する。
第二十二條 父又は母の戸籍に入る者を除く外、戸籍に記載がない者についてあらたに戸籍の記載をすべきときは、新戸籍を編製する。
第二十三條 第十六條乃至第二十一條の規定によつて、新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者は、從前の戸籍から除籍される。死亡し、失踪の宣告を受け、又は國籍を失つた者も、同樣である。
第二十四條 戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、市町村長は、遅滯なく届出人又は届出事件の本人にその旨を通知しなければならない。但し、その錯誤又は遺漏が市町村長の過誤によるものであるときは、この限りでない。
前項の通知をすることができないとき、又は通知をしても戸籍訂正の申請をする者がないときは、市町村長は、監督司法事務局の長の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。前項但書の場合も、同樣である。
裁判所その他の官廳、檢察官又は吏員がその職務上戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを知つたときは、遅滯なく届出事件の本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
第四章 届出
第一節 通則
第二十五條 届出は、届出事件の本人の本籍地又は届出人の所在地でこれをしなければならない。
日本の國籍を有しない者に関する届出は、その寄留地又は届出人の所在地でこれをしなければならない。
第二十六條 本籍が明かでない者又は本籍がない者について、届出があつた後に、その者の本籍が明かになつたとき、又はその者が本籍を有するに至つたときは、届出人又は届出事件の本人は、その事実を知つた日から十日以内に、届出事件を表示して、届出を受理した市町村長にその旨を届け出なければならない。
第二十七條 届出は、書面又は口頭でこれをすることができる。
第二十八條 最高法務総裁は、事件の種類によつて、届書の樣式を定めることができる。
前項の場合には、その事件の届出は、当該樣式によつてこれをしなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。
第二十九條 届書には、左の事項を記載し、届出人が、これに署名し、印をおさなければならない。
一 届出事件
二 届出の年月日
三 届出人の出生の年月日、所在及び戸籍の表示
四 届出人と届出事件の本人と異なるときは、届出事件の本人の氏名、出生の年月日、所在、戸籍の表示及び届出人の資格
第三十條 届出事件によつて、届出人又は届出事件の本人が他の戸籍に入るべきときは、その戸籍の表示を、その者が從前の戸籍から除かれるべきときは、從前の戸籍の表示を、その者について新戸籍を編製すべきときは、その旨、新戸籍編製の原因及び新本籍を、届書に記載しなければならない。
届出事件によつて、届出人若しくは届出事件の本人でない者が他の戸籍に入り、又はその者について新戸籍を編製すべきときは、届書にその者の氏名及び出生の年月日を記載する外、その者が他の戸籍に入るか又はその者について新戸籍を編製するかの区別に從つて、前項に掲げる事項を記載しなければならない。
届出人でない者について新戸籍を編製すべきときは、その者の從前の本籍と同一の場所を新本籍と定めたものとみなす。
第三十一條 届出をすべき者が未成年者又は禁治産者であるときは、親権を行う者又は後見人を届出義務者とする。但し、未成年者又は禁治産者が届出をすることを妨げない。
親権を行う者又は後見人が届出をする場合には、届書に左の事項を記載しなければならない。
一 届出をすべき者の氏名、出生の年月日及び本籍
二 無能力の原因
三 届出人が親権を行う者又は後見人である旨
第三十二條 無能力者がその法定代理人の同意を得ないですることができる行爲については、無能力者が、これを届け出なければならない。
禁治産者が届出をする場合には、届書に届出事件の性質及び効果を理解するに足りる能力を有することを証すべき診断書を添附しなければならない。
第三十三條 証人を必要とする事件の届出については、証人は、届書に出生の年月日、所在及び本籍を記載して署名し、印をおさなければならない。
第三十四條 届書に記載すべき事項であつて、存しないもの又は知れないものがあるときは、その旨を記載しなければならない。
市町村長は、特に重要であると認める事項を記載しない届書を受理することができない。
第三十五條 届書には、この法律その他の法令に定める事項の外、戸籍に記載すべき事項を明かにするために必要であるものは、これを記載しなければならない。
第三十六條 二箇所以上の市役所又は町村役場で戸籍の記載をすべき場合には、市役所又は町村役場の数と同数の届書を提出しなければならない。
本籍地外で届出をするときは、前項の規定によるものの外、なお、一通の届書を提出しなければならない。
前二項の場合に、相当と認めるときは、市町村長は、届書の謄本を作り、これを届書に代えることができる。
第三十七條 口頭で届出をするには、届出人は、市役所又は町村役場に出頭し、届書に記載すべき事項を陳述しなければならない。
市町村長は、届出人の陳述を筆記し、届出の年月日を記載して、これを届出人に読み聞かせ、且つ、届出人に、その書面に署名させ、印をおさせなければならない。
届出人が疾病その他の事故によつて出頭することができないときは、代理人によつて届出をすることができる。但し、第六十條、第六十一條、第六十六條、第六十八條、第七十條乃至第七十二條、第七十四條及び第七十六條の届出については、この限りでない。
第三十八條 届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。但し、同意又は承諾をした者に、届書にその旨を付記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。
届出事件について裁判又は官廳の許可を必要とするときは、届書に裁判又は許可書の謄本を添附しなければならない。
第三十九條 届書に関する規定は、第三十七條第二項及び前條第一項の書面にこれを準用する。
第四十條 外國に在る日本人は、この法律の規定に從つて、その國に駐在する日本の大使、公使又は領事に届出をすることができる。
第四十一條 外國に在る日本人が、その國の方式に從つて、届出事件に関する証書を作らせたときは、一箇月以内にその國に駐在する日本の大使、公使又は領事にその証書の謄本を提出しなければならない。
大使、公使又は領事がその國に駐在しないときは、一箇月以内に本籍地の市町村長に証書の謄本を発送しなければならない。
第四十二條 大使、公使又は領事は、前二條の規定によつて書類を受理したときは、遅滯なく、外務大臣を経由してこれを本人の本籍地の市町村長に送付しなければならない。
第四十三條 届出期間は、届出事件発生の日からこれを起算する。
裁判が確定した日から期間を起算すべき場合に、裁判が送達又は交付前に確定したときは、その送達又は交付の日からこれを起算する。
第四十四條 市町村長は、届出を怠つた者があることを知つたときは、相当の期間を定めて、届出義務者に対し、その期間内に届出をすべき旨を催告しなければならない。
届出義務者が前項の期間内に届出をしなかつたときは、市町村長は、更に相当の期間を定めて、催告をすることができる。
第二十四條第二項の規定は、前二項の催告をすることができない場合及び催告をしても届出をしない場合に、同條第三項の規定は、裁判所その他の官廳、檢察官又は吏員がその職務上届出を怠つた者があることを知つた場合にこれを準用する。
第四十五條 市町村長は、届出を受理した場合に、届書に不備があるため戸籍の記載をすることができないときは、届出義務者に、その追完をさせなければならない。この場合には、前條の規定を準用する。
第四十六條 届出期間が経過した後の届出であつても、市町村長は、これを受理しなければならない。
第四十七條 届出人の生存中に郵送した届書は、その死亡後であつても、市町村長は、これを受理しなければならない。
前項の規定によつて届書が受理されたときは、届出人の死亡の時に届出があつたものとみなす。
第四十八條 届出人は、届出の受理又は不受理の証明書を請求することができる。但し、受理の証明書を請求する場合には、手数料を納めなければならない。
利害関係人は、特別の事由がある場合に限り、届書その他市町村長の受理した書類の閲覽を請求し、又はその書類に記載した事項について証明書を請求することができる。但し市町村長に対し請求する場合には、手数料を納めなければならない。
第十條第二項の規定は、前二項の場合にこれを準用する。
第二節 出生
第四十九條 出生の届出は、十四日以内にこれをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
二 出生の年月日時分及び場所
三 父母の氏名及び本籍若し、日本の國籍を有しないときは、その旨
四 その他命令で定める事項
医師、助産婦又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産婦、その他の者の順序に從つてそのうちの一人が命令の定めるところによつて作成する出生証明書を届書に添附しなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。
第五十條 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
常用平易な文字の範囲は、命令でこれを定める。
第五十一條 出生の届出は、外國又は命令で定める地域で出生があつた場合を除いては、出生地でこれをしなければならない。但し、汽車その他の交通機関(船舶を除く。以下同じ。)の中で出生があつたときは、母がその交通機関から降りた地で、航海日誌を備えない船舶の中で出生があつたときは、その船舶が最初に入港した地で、これをしなければならない。
第五十二條 嫡出子出生の届出は、父がこれをし、父が届出をすることができない場合又は子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。
嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。
前二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に從つて、届出をしなければならない。
第一 同居者
第二 出産に立ち会つた医師、助産婦又はその他の者
第五十三條 嫡出子否認の訴を提起したときであつても、出生の届出をしなければならない。
第五十四條 民法第七百七十三條の規定によつて裁判所が父を定むべきときは、出生の届出は、母がこれをしなければならない。この場合には、届書に、父が未定である事由を記載しなければならない。
第五十二條第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第五十五條 航海中に出生があつたときは、船長は、二十四時間以内に、第四十九條第二項に掲げる事項を航海日誌に記載して、署名し、印をおさなければならない。
前項の手続をした後に、船舶が日本の港に着いたときは、船長は、遅滯なく出生に関する航海日誌の謄本をその地の市町村長に送付しなければならない。
船舶が外國の港に着いたときは、船長は、遅滯なく出生に関する航海日誌の謄本をその國に駐在する日本の大使、公使又は領事に送付し、大使、公使又は領事は、遅滯なく外務大臣を経由してこれを本籍地の市町村長に送付しなければならない。
第五十六條 病院、監獄その他の公設所で出生があつた場合に、父母がともに届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。
第五十七條 棄兒を発見した者又は棄兒発見の申告を受けた警察官は、二十四時間以内にその旨を市町村長に申し出なければならない。
前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を調書に記載しなければならない。その調書は、これを届書とみなす。
第五十八條 前條第一項に規定する手続をする前に、棄兒が死亡したときは、死亡の届出とともにその手続をしなければならない。
第五十九條 父又は母は、棄兒を引き取つたときは、その日から一箇月以内に、出生の届出をし、且つ、戸籍の訂正を申請しなければならない。
第三節 認知
第六十條 認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二 死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍
第六十一條 胎内に在る子を認知する場合には、届書にその旨、母の氏名及び本籍を記載し、母の本籍地でこれを届け出なければならない。
第六十二條 民法第七百八十九條第二項の規定によつて嫡出子となるべき者について、父母が嫡出子出生の届出をしたときは、その届出は、認知の届出の効力を有する。
第六十三條 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
第六十四條 遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十條又は第六十一條の規定に從つて、その届出をしなければならない。
第六十五條 認知された胎兒が死体で生まれたときは、出生届出義務者は、その事実を知つた日から十四日以内に、認知の届出地で、その旨を届け出なければならない。但し、遺言執行者が前條の届出をした場合には、遺言執行者が、その届出をしなければならない。
第四節 養子縁組
第六十六條 縁組をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第六十七條 配偶者の一方が双方の名義で縁組をする場合には、届書にその事由を記載しなければならない。
第六十八條 民法第七百九十七條の規定によつて縁組の承諾をする場合には、届出は、その承諾をする者がこれをしなければならない。
第六十九條 第六十三條の規定は、縁組取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
第五節 養子離縁
第七十條 離縁をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第七十一條 民法第八百十一條第二項の規定によつて協議上の離縁をする場合には、届出は、その協議をする者がこれをしなければならない。
第七十二條 民法第八百十一條第三項の規定によつて離縁をする場合には、養子だけで、その届出をすることができる。
第七十三條 第六十三條の規定は、離縁又は離縁取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
第六節 婚姻
第七十四條 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他命令で定める事項
第七十五條 第六十三條の規定は、婚姻取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
檢察官が訴を提起した場合には、裁判が確定した後に、遅滯なく戸籍記載の請求をしなければならない。
第七節 離婚
第七十六條 離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他命令で定める事項
第七十七條 第六十三條の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
前項に規定する離婚の届書には、左の事項をも記載しなければならない。
一 親権者と定められた当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他命令で定める事項
第八節 親権及び後見
第七十八條 民法第八百十九條第三項但書又は第四項の規定によつて協議で親権者を定めようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第七十九條 第六十三條の規定は、民法第八百十九條第三項但書若しくは第四項の協議に代わる裁判が確定し、若しくは親権者変更の裁判が確定した場合又は父母の一方が親権若しくは管理権の喪失の宣告を受け他の一方がその権利を行う場合において親権者に、失権宣告取消の裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者にこれを準用する。
第八十條 親権若しくは管理権を辞し、又はこれを回復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第八十一條 後見開始の届出は、後見人が、その就職の日から十日以内に、これをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 後見開始の原因及び年月日
二 後見人が就職した年月日
第八十二條 後見人が更迭した場合には、後任者は、就職の日から十日以内にその旨を届け出なければならない。この場合には、前條第二項の規定を準用する。
第八十三條 遺言による後見人指定の場合には、指定に関する遺言の謄本を届書に添附しなければならない。
後見人選任の裁判があつた場合には、裁判の謄本を届書に添附しなければならない。
第八十四條 後見終了の届出は、後見人が、十日以内に、これをしなければならない。その届書には、後見終了の原因及び年月日を記載しなければならない。
第八十五條 後見人に関するこの節の規定は、後見監督人及び保佐人にこれを準用する。
第九節 死亡及び失踪
第八十六條 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内に、診断書又は檢案書を添附して、これをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他命令で定める事項
やむを得ない事由によつて診断書又は檢案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は檢案書を得ることができない事由を記載しなければならない。
第八十七條 左の者は、その順序に從つて、死亡の届出をしなければならない。但し、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
第八十八條 死亡の届出は、外國又は命令で定める地域で死亡があつた場合を除いては、死亡地でこれをしなければならない。但し、死亡地が明かでないときは、死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡があつたときは、死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡があつたときは、その船舶が最初に入港した地で、これをしなければならない。
第八十九條 水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官廳又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外國又は前條の地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
第九十條 死刑の執行があつたときは、監獄の長は、遅滯なく監獄所在地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
前項の規定は、在監中死亡した者の引取人がない場合にこれを準用する。この場合には、報告書に診断書又は檢案書を添附しなければならない。
第九十一條 前二條に規定する報告書には、第八十六條第二項に掲げる事項を記載しなければならない。
第九十二條 死亡者の本籍が明かでない場合又は死亡者を認識することができない場合には、警察官は、檢視調書を作り、これを添附して、遅滯なく死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
死亡者の本籍が明かになり、又は死亡者を認識することができるに至つたときは、警察官は、遅滯なくその旨を報告しなければならない。
第一項の報告があつた後に、第八十七條第一号又は第二号に掲げる者が、死亡者を認識したときは、その日から十日以内に、死亡の届出をしなければならない。
第九十三條 第五十五條及び第五十六條の規定は、死亡の届出にこれを準用する。
第九十四條 第六十三條の規定は、失踪宣告又は失踪宣告取消の裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者にこれを準用する。この場合には、失踪宣告の届書に民法第三十條に定める期間が満了した日をも記載しなければならない。
第十節 生存配偶者の復氏及び姻族関係の終了
第九十五條 民法第七百五十一條第一項の規定によつて婚姻前の氏に復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第九十六條 民法第七百二十八條第二項の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第十一節 推定相続人の廃除
第九十七條 第六十三條の規定は、推定相続人の廃除又は廃除取消の裁判が確定した場合において、その裁判を請求した者にこれを準用する。
第十二節 入籍
第九十八條 民法第七百九十一條第一項又は第二項の規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第九十九條 民法第七百九十一條第三項の規定によつて從前の氏に復しようとする者は、同條第一項又は第二項の規定によつて氏を改めた年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第十三節 分籍
第百條 分籍をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
他の市町村に新本籍を定める場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
第百一條 前條第二項の場合には、分籍の届出は、分籍地でこれをすることができる。
第十四節 國籍の得喪
第百二條 外國人が養子縁組又は婚姻によつて日本の國籍を取得すべきときは、縁組又は婚姻の届書に國籍取得者の原國籍を記載しなければならない。
第百三條 外國人が認知によつて日本の國籍を收得すべきときは、認知の届書に子の原國籍を記載しなければならない。
認知者が父であるときは、届書に母の國籍を記載しなければならない。
第百四條 帰化の届出は、許可の日から十日以内にこれをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 帰化をした者の原國籍
二 父母の氏名及び國籍
三 許可の年月日
四 帰化をした者とともに日本の國籍を取得した者があるときは、その氏名、出生の年月日及び帰化をした者との続柄
帰化をした者の妻又は子がその者とともに日本の國籍を取得しないときは、届書にその事由を記載しなければならない。
第百五條 國籍喪失の届出は、配偶者又は四親等内の親族が、その事実を知つた日から一箇月以内に、國籍喪失を証すべき書面を添附して、これをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 國籍喪失の原因及び年月日
二 あらたに國籍を取得したときは、その國籍
國籍喪失者が日本の官職を有していた者であるときは、その官職を失つたことを証すべき書面を届書に添附しなければならない。
第百六條 國籍回復の届出は、許可の日から十日以内にこれをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 日本の國籍を失つた原因及び年月日
二 國籍回復前に有していた國籍
三 許可の年月日
四 國籍回復者とともに、日本の國籍を取得し、又は回復した者があるときは、その氏名、出生の年月日及び國籍回復者との続柄
第百四條第三項の規定は、前項の届出にこれを準用する。
第十五節 氏名の変更
第百七條 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家事審判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
正当な事由によつて名を変更しょうとする者は、家事審判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
第十六節 轉籍及び就籍
第百八條 轉籍をしようとするときは、新本籍を届書に記載して、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者が、その旨を届け出なければならない。
他の市町村に轉籍をする場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
第百九條 轉籍の届出は、轉籍地でこれをすることができる。
第百十條 本籍を有しない者は、家事審判所の許可を得て、許可の日から十日以内に就籍の届出をしなければならない。
届書には、第十三條に掲げる事項の外、就籍許可の年月日を記載しなければならない。
第百十一條 前條の規定は、確定判決によつて就籍の届出をすべき場合にこれを準用する。この場合には、判決の謄本を届書に添附しなければならない。
第百十二條 就籍の届出は、就籍地でこれをすることができる。
第五章 戸籍の訂正
第百十三條 戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家事審判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
第百十四條 届出によつて効力を生ずべき行爲について戸籍の記載をした後に、その行爲が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家事審判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
第百十五條 前二條の許可の裁判があつたときは、一箇月以内に、その謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。
第百十六條 確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。
檢察官が訴を提起した場合には、判決が確定した後に、遅滯なく戸籍の訂正を請求しなければならない。
第百十七條 第二十五條第一項、第二十七條乃至第三十二條、第三十四條乃至第三十九條及び第四十三條乃至第四十八條の規定は、戸籍訂正の申請にこれを準用する。
第六章 雜則
第百十八條 戸籍事件について、市町村長の処分を不当とする者は、家事審判所に不服の申立をすることができる。
第百十九條 第百七條、第百十條第一項、第百十三條又は第百十四條の許可及び前條の不服の申立は、家事審判法の適用に関しては、これを同法第九條第一項甲類に掲げる事項とみなす。
第百二十條 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、これを五百円以下の過料に処する。
第百二十一條 市町村長が、第四十四條第一項又は第二項(第百十七條において準用する場合を含む。)の規定によつて、期間を定めて届出又は申請の催告をした場合に、正当な理由がなくてその期間内に届出又は申請をしない者は、これを千円以下の過料に処する。
第百二十二條 左の場合には、市町村長を千円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて届出又は申請を受理しないとき。
二 戸籍の記載をすることを怠つたとき。
三 正当な理由がなくて戸籍簿、除籍簿又は届書その他の受理した書類の閲覽を拒んだとき。
四 正当な理由がなくて戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しくは抄本、第十條第一項(第十二條第二項において準用する場合を含む。)に規定する証明書又は第四十八條第一項若しくは第二項(第百十七條において準用する場合を含む。)の証明書を交付しないとき。
五 その他戸籍事件について職務を怠つたとき。
第百二十三條 過料の裁判は、簡易裁判所がこれをする。
第百二十四條 戸籍の記載を要しない事項について虚僞の届出をした者は、これを一年以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。日本の國籍を有しない者に関する事項について虚僞の届出をした者も、同樣である。
第百二十五條 この法律に定めるものの外、届書その他戸籍事務の処理に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
附 則
第百二十六條 この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第百二十七條 この附則で、新法とは、この法律による改正後の戸籍法をいい、旧法とは、從前の戸籍法をいい、新民法とは、この法律と同日に施行される民法の一部を改正する法律をいい、旧民法とは、從前の民法をいい、應急措置法とは、昭和二十二年法律第七十四号をいう。
第百二十八條 旧法の規定による戸籍は、これを新法の規定による戸籍とみなす。但し、新法施行後十年を経過したときは、旧法の規定による戸籍は、命令の定めるところにより、新法によつてこれを改製しなければならない。
旧法によつて定められた本籍は、新法によつて定められたものとみなす。
第百二十九條 旧民法を適用する場合に関しては、新法施行後も、なお、旧法を適用する。
第百三十條 新法は、新法施行前の届出その他の事由によつて、戸籍の記載をし、又は新戸籍を編製する場合にもこれを適用する。
第百三十一條 第百二十八條第一項の戸籍に在る者について新戸籍を編製する場合には、同項の戸籍に在るその者の子でこれと引き続き氏を同じくする者は、新戸籍に入る。但し、その子の配偶者又は戸籍を同じくする子があるときは、この限りでない。
前項の場合に、新本籍が從前の本籍地と同一の市町村内に定められたときは、第三十條第二項の規定は、これを適用しない。
第百三十二條 第十九條第一項及び第九十九條の規定は、新民法附則第十二條の規定によつて從前の氏に復する場合にこれを準用する。
第百三十三條 第百二十八條第一項の戸籍に在る者で配偶者のある者は、配偶者とともにしなければ、分籍をすることができない。
第百三十四條 應急措置法施行後新法施行前に、應急措置法第六條第二項前段の規定によつて、親権者を定める協議が調つたときは、親権者は、新法施行の日から十日以内に、協議を証する書面を添附して、その旨を届け出なければならない。この場合には、第三十八條第一項但書及び第三十九條の規定を準用する。
應急措置法施行後新法施行前に應急措置法第六條第二項後段又は第三項に規定する裁判が確定したときは、親権者は、新法施行の日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
第百三十五條 第七十八條の規定は、新民法附則第十四條第一項但書の規定によつて協議で親権者を定めようとする者にこれを準用する。
第六十三條の規定は、新民法附則第十四條第二項又は第三項に規定する裁判が確定した場合において親権者にこれを準用する。
第百三十六條 新法施行の際現に後見監督人の地位に在る者は、新法施行の日から十日以内に第八十五條において準用する第八十一條又は第八十二條に規定する届出をしなければならない。
第百三十七條 第百二十八條第一項の戸籍について轉籍の届出があつたときは、新法の規定にかかわらず、從前の戸籍によつて戸籍を編製する。
第百三十八條 左の法令は、これを廃止する。
明治五年太政官布告第二百三十五号(改姓名に関する件)
明治六年太政官布告第百十八号(御歴代の御諱及び御名の文字の使用に関する件)
昭和十五年法律第四号(委託又は郵便による戸籍届出に関する件)
昭和二十一年司法省令第四十七号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く出生及び死亡の届出等に関する件)
この法律施行前にされた戸籍届出の委託については、昭和十五年法律第四号は、なお、その効力を有する。この場合には、同法第一條第一項の確認は、家事審判所がこれをする。
第百十九條の規定は、前項の確認にこれを準用する。
第百三十九條 寄留法の一部を次のように改正する。
第二條第二項中「、第五條乃第六條」を「及第四條」に改める。
第三條中「勅令」を「政令」に改める。
第四條第一項中「五円」を「二百円」に、同條第二項中「第百七十九條」を「第百二十三條」に改める。
第百四十條 この法律施行前にした行爲に対する過料に関する規定の適用については、なお、從前の例による。
第百四十一條 この法律施行の際現に裁判所に係属している過料事件については、なお、從前の例による。
第百四十二條 第十一條及び第二十八條第一項中「最高法務総裁」とあるのは、最高法務廳設置法施行までの間、「司法大臣」と読み替えるものとする。
第百四十三條 第五條第二項の手数料の額は、昭和二十二年法律第三十四号財政法第三條の規定の適用があるまで、政令の定によることを妨げない。
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲
戸籍法を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月二十二日
内閣総理大臣 片山哲
法律第二百二十四号
戸籍法目次
第一章
総則
第二章
戸籍簿
第三章
戸籍の記載
第四章
届出
第一節
通則
第二節
出生
第三節
認知
第四節
養子縁組
第五節
養子離縁
第六節
婚姻
第七節
離婚
第八節
親権及び後見
第九節
死亡及び失踪
第十節
生存配偶者の復氏及び姻族関係の終了
第十一節
推定相続人の廃除
第十二節
入籍
第十三節
分籍
第十四節
国籍の得喪
第十五節
氏名の変更
第十六節
転籍及び就籍
第五章
戸籍の訂正
第六章
雑則
附則
戸籍法
第一章 総則
第一条 戸籍に関する事務は、市町村長がこれを管掌する。
第二条 市町村長は、自己又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属に関する戸籍事件については、その職務を行うことができない。
第三条 戸籍事務は、市役所又は町村役場の所在地を管轄する司法事務局の長がこれを監督する。
第四条 都の区のある区域においては、この法律中の市、市長及び市役所に関する規定は、区、区長及び区役所にこれを準用する。特別市及び地方自治法第百五十五条第二項の市においても、第五条第一項の場合を除く外、同様である。
第五条 この法律の規定によつて納める手数料は、これを市町村の収入とする。
手数料の額は、別に法律でこれを定める。
第二章 戸籍簿
第六条 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。但し、配偶者がない者についてあらたに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。
第七条 戸籍は、これをつづつて帳簿とする。
第八条 戸籍は、正本と副本を設ける。
正本は、これを市役所又は町村役場に備え、副本は、監督司法事務局又はその出張所がこれを保存する。
第九条 戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する。その者が戸籍から除かれた後も、同様である。
第十条 何人でも、手数料を納めて、戸籍簿の閲覧又は戸籍の謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。戸籍の謄本若しくは抄本の記載事項に変更がないことの証明又は戸籍に記載した事項に関する証明についても、同様である。但し、市町村長は、正当な理由がある場合に限り、本項の請求を拒むことができる。
手数料の外に郵送料を納めて、謄本、抄本又は前項に規定する証明書の送付を請求することができる。
謄本は、請求によつて、除籍者に関する記載の謄写を省略して、これを作ることができる。
第十一条 戸籍簿の全部又は一部が、滅失したとき、又は滅失の虞があるときは、最高法務総裁は、その再製又は補完について必要な処分を命ずる。但し、滅失した場合には、その旨を告示しなければならない。
第十二条 一戸籍内の全員をその戸籍から除いたときは、その戸籍は、これを戸籍簿から除いて別につづり、除籍簿として、これを保存する。
第九条乃至前条の規定は、除籍簿及び除かれた戸籍にこれを準用する。
第三章 戸籍の記載
第十三条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
一 氏名
二 出生の年月日
三 戸籍に入つた原因及び年月日
四 実父母の氏名及び実父母との続柄
五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六 夫婦については、夫又は妻である旨
七 他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示
八 その他命令で定める事項
第十四条 氏名を記載するには、左の順序による。
第一 夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻
第二 配偶者
第三 
子の間では、出生の前後による。
戸籍を編製した後にその戸籍に入るべき原因が生じた者については、戸籍の末尾にこれを記載する。
第十五条 戸籍の記載は、届出、報告、申請若しくは請求、証書若しくは航海日誌の謄本又は裁判によつてこれをする。
第十六条 婚姻の届出があつたときは、夫婦について新戸籍を編製する。但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。
前項但書の場合には、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入り、妻の氏を称する夫は、妻の戸籍に入る。
第十七条 戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者以外の者がこれと同一の氏を称する子又は養子を有するに至つたときは、その者について新戸籍を編製する。
第十八条 父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。
前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
養子は、養親の戸籍に入る。
第十九条 婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。
前項の規定は、民法第七百五十一条第一項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び同法第七百九十一条第三項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。
第二十条 前二条の規定によつて他の戸籍に入るべき者に配偶者があるときは、前二条の規定にかかわらず、その夫婦について新戸籍を編製する。
第二十一条 成年に達した者は、分籍をすることができる。但し、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、この限りでない。
分籍の届出があつたときは、新戸籍を編製する。
第二十二条 父又は母の戸籍に入る者を除く外、戸籍に記載がない者についてあらたに戸籍の記載をすべきときは、新戸籍を編製する。
第二十三条 第十六条乃至第二十一条の規定によつて、新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者は、従前の戸籍から除籍される。死亡し、失踪の宣告を受け、又は国籍を失つた者も、同様である。
第二十四条 戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、市町村長は、遅滞なく届出人又は届出事件の本人にその旨を通知しなければならない。但し、その錯誤又は遺漏が市町村長の過誤によるものであるときは、この限りでない。
前項の通知をすることができないとき、又は通知をしても戸籍訂正の申請をする者がないときは、市町村長は、監督司法事務局の長の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。前項但書の場合も、同様である。
裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを知つたときは、遅滞なく届出事件の本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
第四章 届出
第一節 通則
第二十五条 届出は、届出事件の本人の本籍地又は届出人の所在地でこれをしなければならない。
日本の国籍を有しない者に関する届出は、その寄留地又は届出人の所在地でこれをしなければならない。
第二十六条 本籍が明かでない者又は本籍がない者について、届出があつた後に、その者の本籍が明かになつたとき、又はその者が本籍を有するに至つたときは、届出人又は届出事件の本人は、その事実を知つた日から十日以内に、届出事件を表示して、届出を受理した市町村長にその旨を届け出なければならない。
第二十七条 届出は、書面又は口頭でこれをすることができる。
第二十八条 最高法務総裁は、事件の種類によつて、届書の様式を定めることができる。
前項の場合には、その事件の届出は、当該様式によつてこれをしなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。
第二十九条 届書には、左の事項を記載し、届出人が、これに署名し、印をおさなければならない。
一 届出事件
二 届出の年月日
三 届出人の出生の年月日、所在及び戸籍の表示
四 届出人と届出事件の本人と異なるときは、届出事件の本人の氏名、出生の年月日、所在、戸籍の表示及び届出人の資格
第三十条 届出事件によつて、届出人又は届出事件の本人が他の戸籍に入るべきときは、その戸籍の表示を、その者が従前の戸籍から除かれるべきときは、従前の戸籍の表示を、その者について新戸籍を編製すべきときは、その旨、新戸籍編製の原因及び新本籍を、届書に記載しなければならない。
届出事件によつて、届出人若しくは届出事件の本人でない者が他の戸籍に入り、又はその者について新戸籍を編製すべきときは、届書にその者の氏名及び出生の年月日を記載する外、その者が他の戸籍に入るか又はその者について新戸籍を編製するかの区別に従つて、前項に掲げる事項を記載しなければならない。
届出人でない者について新戸籍を編製すべきときは、その者の従前の本籍と同一の場所を新本籍と定めたものとみなす。
第三十一条 届出をすべき者が未成年者又は禁治産者であるときは、親権を行う者又は後見人を届出義務者とする。但し、未成年者又は禁治産者が届出をすることを妨げない。
親権を行う者又は後見人が届出をする場合には、届書に左の事項を記載しなければならない。
一 届出をすべき者の氏名、出生の年月日及び本籍
二 無能力の原因
三 届出人が親権を行う者又は後見人である旨
第三十二条 無能力者がその法定代理人の同意を得ないですることができる行為については、無能力者が、これを届け出なければならない。
禁治産者が届出をする場合には、届書に届出事件の性質及び効果を理解するに足りる能力を有することを証すべき診断書を添附しなければならない。
第三十三条 証人を必要とする事件の届出については、証人は、届書に出生の年月日、所在及び本籍を記載して署名し、印をおさなければならない。
第三十四条 届書に記載すべき事項であつて、存しないもの又は知れないものがあるときは、その旨を記載しなければならない。
市町村長は、特に重要であると認める事項を記載しない届書を受理することができない。
第三十五条 届書には、この法律その他の法令に定める事項の外、戸籍に記載すべき事項を明かにするために必要であるものは、これを記載しなければならない。
第三十六条 二箇所以上の市役所又は町村役場で戸籍の記載をすべき場合には、市役所又は町村役場の数と同数の届書を提出しなければならない。
本籍地外で届出をするときは、前項の規定によるものの外、なお、一通の届書を提出しなければならない。
前二項の場合に、相当と認めるときは、市町村長は、届書の謄本を作り、これを届書に代えることができる。
第三十七条 口頭で届出をするには、届出人は、市役所又は町村役場に出頭し、届書に記載すべき事項を陳述しなければならない。
市町村長は、届出人の陳述を筆記し、届出の年月日を記載して、これを届出人に読み聞かせ、且つ、届出人に、その書面に署名させ、印をおさせなければならない。
届出人が疾病その他の事故によつて出頭することができないときは、代理人によつて届出をすることができる。但し、第六十条、第六十一条、第六十六条、第六十八条、第七十条乃至第七十二条、第七十四条及び第七十六条の届出については、この限りでない。
第三十八条 届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。但し、同意又は承諾をした者に、届書にその旨を付記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。
届出事件について裁判又は官庁の許可を必要とするときは、届書に裁判又は許可書の謄本を添附しなければならない。
第三十九条 届書に関する規定は、第三十七条第二項及び前条第一項の書面にこれを準用する。
第四十条 外国に在る日本人は、この法律の規定に従つて、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事に届出をすることができる。
第四十一条 外国に在る日本人が、その国の方式に従つて、届出事件に関する証書を作らせたときは、一箇月以内にその国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその証書の謄本を提出しなければならない。
大使、公使又は領事がその国に駐在しないときは、一箇月以内に本籍地の市町村長に証書の謄本を発送しなければならない。
第四十二条 大使、公使又は領事は、前二条の規定によつて書類を受理したときは、遅滞なく、外務大臣を経由してこれを本人の本籍地の市町村長に送付しなければならない。
第四十三条 届出期間は、届出事件発生の日からこれを起算する。
裁判が確定した日から期間を起算すべき場合に、裁判が送達又は交付前に確定したときは、その送達又は交付の日からこれを起算する。
第四十四条 市町村長は、届出を怠つた者があることを知つたときは、相当の期間を定めて、届出義務者に対し、その期間内に届出をすべき旨を催告しなければならない。
届出義務者が前項の期間内に届出をしなかつたときは、市町村長は、更に相当の期間を定めて、催告をすることができる。
第二十四条第二項の規定は、前二項の催告をすることができない場合及び催告をしても届出をしない場合に、同条第三項の規定は、裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上届出を怠つた者があることを知つた場合にこれを準用する。
第四十五条 市町村長は、届出を受理した場合に、届書に不備があるため戸籍の記載をすることができないときは、届出義務者に、その追完をさせなければならない。この場合には、前条の規定を準用する。
第四十六条 届出期間が経過した後の届出であつても、市町村長は、これを受理しなければならない。
第四十七条 届出人の生存中に郵送した届書は、その死亡後であつても、市町村長は、これを受理しなければならない。
前項の規定によつて届書が受理されたときは、届出人の死亡の時に届出があつたものとみなす。
第四十八条 届出人は、届出の受理又は不受理の証明書を請求することができる。但し、受理の証明書を請求する場合には、手数料を納めなければならない。
利害関係人は、特別の事由がある場合に限り、届書その他市町村長の受理した書類の閲覧を請求し、又はその書類に記載した事項について証明書を請求することができる。但し市町村長に対し請求する場合には、手数料を納めなければならない。
第十条第二項の規定は、前二項の場合にこれを準用する。
第二節 出生
第四十九条 出生の届出は、十四日以内にこれをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
二 出生の年月日時分及び場所
三 父母の氏名及び本籍若し、日本の国籍を有しないときは、その旨
四 その他命令で定める事項
医師、助産婦又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産婦、その他の者の順序に従つてそのうちの一人が命令の定めるところによつて作成する出生証明書を届書に添附しなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。
第五十条 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
常用平易な文字の範囲は、命令でこれを定める。
第五十一条 出生の届出は、外国又は命令で定める地域で出生があつた場合を除いては、出生地でこれをしなければならない。但し、汽車その他の交通機関(船舶を除く。以下同じ。)の中で出生があつたときは、母がその交通機関から降りた地で、航海日誌を備えない船舶の中で出生があつたときは、その船舶が最初に入港した地で、これをしなければならない。
第五十二条 嫡出子出生の届出は、父がこれをし、父が届出をすることができない場合又は子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。
嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。
前二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。
第一 同居者
第二 出産に立ち会つた医師、助産婦又はその他の者
第五十三条 嫡出子否認の訴を提起したときであつても、出生の届出をしなければならない。
第五十四条 民法第七百七十三条の規定によつて裁判所が父を定むべきときは、出生の届出は、母がこれをしなければならない。この場合には、届書に、父が未定である事由を記載しなければならない。
第五十二条第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第五十五条 航海中に出生があつたときは、船長は、二十四時間以内に、第四十九条第二項に掲げる事項を航海日誌に記載して、署名し、印をおさなければならない。
前項の手続をした後に、船舶が日本の港に着いたときは、船長は、遅滞なく出生に関する航海日誌の謄本をその地の市町村長に送付しなければならない。
船舶が外国の港に着いたときは、船長は、遅滞なく出生に関する航海日誌の謄本をその国に駐在する日本の大使、公使又は領事に送付し、大使、公使又は領事は、遅滞なく外務大臣を経由してこれを本籍地の市町村長に送付しなければならない。
第五十六条 病院、監獄その他の公設所で出生があつた場合に、父母がともに届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。
第五十七条 棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、二十四時間以内にその旨を市町村長に申し出なければならない。
前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を調書に記載しなければならない。その調書は、これを届書とみなす。
第五十八条 前条第一項に規定する手続をする前に、棄児が死亡したときは、死亡の届出とともにその手続をしなければならない。
第五十九条 父又は母は、棄児を引き取つたときは、その日から一箇月以内に、出生の届出をし、且つ、戸籍の訂正を申請しなければならない。
第三節 認知
第六十条 認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二 死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍
第六十一条 胎内に在る子を認知する場合には、届書にその旨、母の氏名及び本籍を記載し、母の本籍地でこれを届け出なければならない。
第六十二条 民法第七百八十九条第二項の規定によつて嫡出子となるべき者について、父母が嫡出子出生の届出をしたときは、その届出は、認知の届出の効力を有する。
第六十三条 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
第六十四条 遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十条又は第六十一条の規定に従つて、その届出をしなければならない。
第六十五条 認知された胎児が死体で生まれたときは、出生届出義務者は、その事実を知つた日から十四日以内に、認知の届出地で、その旨を届け出なければならない。但し、遺言執行者が前条の届出をした場合には、遺言執行者が、その届出をしなければならない。
第四節 養子縁組
第六十六条 縁組をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第六十七条 配偶者の一方が双方の名義で縁組をする場合には、届書にその事由を記載しなければならない。
第六十八条 民法第七百九十七条の規定によつて縁組の承諾をする場合には、届出は、その承諾をする者がこれをしなければならない。
第六十九条 第六十三条の規定は、縁組取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
第五節 養子離縁
第七十条 離縁をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第七十一条 民法第八百十一条第二項の規定によつて協議上の離縁をする場合には、届出は、その協議をする者がこれをしなければならない。
第七十二条 民法第八百十一条第三項の規定によつて離縁をする場合には、養子だけで、その届出をすることができる。
第七十三条 第六十三条の規定は、離縁又は離縁取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
第六節 婚姻
第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他命令で定める事項
第七十五条 第六十三条の規定は、婚姻取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
検察官が訴を提起した場合には、裁判が確定した後に、遅滞なく戸籍記載の請求をしなければならない。
第七節 離婚
第七十六条 離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他命令で定める事項
第七十七条 第六十三条の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
前項に規定する離婚の届書には、左の事項をも記載しなければならない。
一 親権者と定められた当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他命令で定める事項
第八節 親権及び後見
第七十八条 民法第八百十九条第三項但書又は第四項の規定によつて協議で親権者を定めようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第七十九条 第六十三条の規定は、民法第八百十九条第三項但書若しくは第四項の協議に代わる裁判が確定し、若しくは親権者変更の裁判が確定した場合又は父母の一方が親権若しくは管理権の喪失の宣告を受け他の一方がその権利を行う場合において親権者に、失権宣告取消の裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者にこれを準用する。
第八十条 親権若しくは管理権を辞し、又はこれを回復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第八十一条 後見開始の届出は、後見人が、その就職の日から十日以内に、これをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 後見開始の原因及び年月日
二 後見人が就職した年月日
第八十二条 後見人が更迭した場合には、後任者は、就職の日から十日以内にその旨を届け出なければならない。この場合には、前条第二項の規定を準用する。
第八十三条 遺言による後見人指定の場合には、指定に関する遺言の謄本を届書に添附しなければならない。
後見人選任の裁判があつた場合には、裁判の謄本を届書に添附しなければならない。
第八十四条 後見終了の届出は、後見人が、十日以内に、これをしなければならない。その届書には、後見終了の原因及び年月日を記載しなければならない。
第八十五条 後見人に関するこの節の規定は、後見監督人及び保佐人にこれを準用する。
第九節 死亡及び失踪
第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内に、診断書又は検案書を添附して、これをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他命令で定める事項
やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。
第八十七条 左の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。但し、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
第八十八条 死亡の届出は、外国又は命令で定める地域で死亡があつた場合を除いては、死亡地でこれをしなければならない。但し、死亡地が明かでないときは、死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡があつたときは、死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡があつたときは、その船舶が最初に入港した地で、これをしなければならない。
第八十九条 水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は前条の地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
第九十条 死刑の執行があつたときは、監獄の長は、遅滞なく監獄所在地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
前項の規定は、在監中死亡した者の引取人がない場合にこれを準用する。この場合には、報告書に診断書又は検案書を添附しなければならない。
第九十一条 前二条に規定する報告書には、第八十六条第二項に掲げる事項を記載しなければならない。
第九十二条 死亡者の本籍が明かでない場合又は死亡者を認識することができない場合には、警察官は、検視調書を作り、これを添附して、遅滞なく死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
死亡者の本籍が明かになり、又は死亡者を認識することができるに至つたときは、警察官は、遅滞なくその旨を報告しなければならない。
第一項の報告があつた後に、第八十七条第一号又は第二号に掲げる者が、死亡者を認識したときは、その日から十日以内に、死亡の届出をしなければならない。
第九十三条 第五十五条及び第五十六条の規定は、死亡の届出にこれを準用する。
第九十四条 第六十三条の規定は、失踪宣告又は失踪宣告取消の裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者にこれを準用する。この場合には、失踪宣告の届書に民法第三十条に定める期間が満了した日をも記載しなければならない。
第十節 生存配偶者の復氏及び姻族関係の終了
第九十五条 民法第七百五十一条第一項の規定によつて婚姻前の氏に復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第九十六条 民法第七百二十八条第二項の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第十一節 推定相続人の廃除
第九十七条 第六十三条の規定は、推定相続人の廃除又は廃除取消の裁判が確定した場合において、その裁判を請求した者にこれを準用する。
第十二節 入籍
第九十八条 民法第七百九十一条第一項又は第二項の規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第九十九条 民法第七百九十一条第三項の規定によつて従前の氏に復しようとする者は、同条第一項又は第二項の規定によつて氏を改めた年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
第十三節 分籍
第百条 分籍をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
他の市町村に新本籍を定める場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
第百一条 前条第二項の場合には、分籍の届出は、分籍地でこれをすることができる。
第十四節 国籍の得喪
第百二条 外国人が養子縁組又は婚姻によつて日本の国籍を取得すべきときは、縁組又は婚姻の届書に国籍取得者の原国籍を記載しなければならない。
第百三条 外国人が認知によつて日本の国籍を収得すべきときは、認知の届書に子の原国籍を記載しなければならない。
認知者が父であるときは、届書に母の国籍を記載しなければならない。
第百四条 帰化の届出は、許可の日から十日以内にこれをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 帰化をした者の原国籍
二 父母の氏名及び国籍
三 許可の年月日
四 帰化をした者とともに日本の国籍を取得した者があるときは、その氏名、出生の年月日及び帰化をした者との続柄
帰化をした者の妻又は子がその者とともに日本の国籍を取得しないときは、届書にその事由を記載しなければならない。
第百五条 国籍喪失の届出は、配偶者又は四親等内の親族が、その事実を知つた日から一箇月以内に、国籍喪失を証すべき書面を添附して、これをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 国籍喪失の原因及び年月日
二 あらたに国籍を取得したときは、その国籍
国籍喪失者が日本の官職を有していた者であるときは、その官職を失つたことを証すべき書面を届書に添附しなければならない。
第百六条 国籍回復の届出は、許可の日から十日以内にこれをしなければならない。
届書には、左の事項を記載しなければならない。
一 日本の国籍を失つた原因及び年月日
二 国籍回復前に有していた国籍
三 許可の年月日
四 国籍回復者とともに、日本の国籍を取得し、又は回復した者があるときは、その氏名、出生の年月日及び国籍回復者との続柄
第百四条第三項の規定は、前項の届出にこれを準用する。
第十五節 氏名の変更
第百七条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家事審判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
正当な事由によつて名を変更しょうとする者は、家事審判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
第十六節 転籍及び就籍
第百八条 転籍をしようとするときは、新本籍を届書に記載して、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者が、その旨を届け出なければならない。
他の市町村に転籍をする場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
第百九条 転籍の届出は、転籍地でこれをすることができる。
第百十条 本籍を有しない者は、家事審判所の許可を得て、許可の日から十日以内に就籍の届出をしなければならない。
届書には、第十三条に掲げる事項の外、就籍許可の年月日を記載しなければならない。
第百十一条 前条の規定は、確定判決によつて就籍の届出をすべき場合にこれを準用する。この場合には、判決の謄本を届書に添附しなければならない。
第百十二条 就籍の届出は、就籍地でこれをすることができる。
第五章 戸籍の訂正
第百十三条 戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家事審判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
第百十四条 届出によつて効力を生ずべき行為について戸籍の記載をした後に、その行為が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家事審判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
第百十五条 前二条の許可の裁判があつたときは、一箇月以内に、その謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。
第百十六条 確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。
検察官が訴を提起した場合には、判決が確定した後に、遅滞なく戸籍の訂正を請求しなければならない。
第百十七条 第二十五条第一項、第二十七条乃至第三十二条、第三十四条乃至第三十九条及び第四十三条乃至第四十八条の規定は、戸籍訂正の申請にこれを準用する。
第六章 雑則
第百十八条 戸籍事件について、市町村長の処分を不当とする者は、家事審判所に不服の申立をすることができる。
第百十九条 第百七条、第百十条第一項、第百十三条又は第百十四条の許可及び前条の不服の申立は、家事審判法の適用に関しては、これを同法第九条第一項甲類に掲げる事項とみなす。
第百二十条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、これを五百円以下の過料に処する。
第百二十一条 市町村長が、第四十四条第一項又は第二項(第百十七条において準用する場合を含む。)の規定によつて、期間を定めて届出又は申請の催告をした場合に、正当な理由がなくてその期間内に届出又は申請をしない者は、これを千円以下の過料に処する。
第百二十二条 左の場合には、市町村長を千円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて届出又は申請を受理しないとき。
二 戸籍の記載をすることを怠つたとき。
三 正当な理由がなくて戸籍簿、除籍簿又は届書その他の受理した書類の閲覧を拒んだとき。
四 正当な理由がなくて戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しくは抄本、第十条第一項(第十二条第二項において準用する場合を含む。)に規定する証明書又は第四十八条第一項若しくは第二項(第百十七条において準用する場合を含む。)の証明書を交付しないとき。
五 その他戸籍事件について職務を怠つたとき。
第百二十三条 過料の裁判は、簡易裁判所がこれをする。
第百二十四条 戸籍の記載を要しない事項について虚偽の届出をした者は、これを一年以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。日本の国籍を有しない者に関する事項について虚偽の届出をした者も、同様である。
第百二十五条 この法律に定めるものの外、届書その他戸籍事務の処理に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
附 則
第百二十六条 この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第百二十七条 この附則で、新法とは、この法律による改正後の戸籍法をいい、旧法とは、従前の戸籍法をいい、新民法とは、この法律と同日に施行される民法の一部を改正する法律をいい、旧民法とは、従前の民法をいい、応急措置法とは、昭和二十二年法律第七十四号をいう。
第百二十八条 旧法の規定による戸籍は、これを新法の規定による戸籍とみなす。但し、新法施行後十年を経過したときは、旧法の規定による戸籍は、命令の定めるところにより、新法によつてこれを改製しなければならない。
旧法によつて定められた本籍は、新法によつて定められたものとみなす。
第百二十九条 旧民法を適用する場合に関しては、新法施行後も、なお、旧法を適用する。
第百三十条 新法は、新法施行前の届出その他の事由によつて、戸籍の記載をし、又は新戸籍を編製する場合にもこれを適用する。
第百三十一条 第百二十八条第一項の戸籍に在る者について新戸籍を編製する場合には、同項の戸籍に在るその者の子でこれと引き続き氏を同じくする者は、新戸籍に入る。但し、その子の配偶者又は戸籍を同じくする子があるときは、この限りでない。
前項の場合に、新本籍が従前の本籍地と同一の市町村内に定められたときは、第三十条第二項の規定は、これを適用しない。
第百三十二条 第十九条第一項及び第九十九条の規定は、新民法附則第十二条の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。
第百三十三条 第百二十八条第一項の戸籍に在る者で配偶者のある者は、配偶者とともにしなければ、分籍をすることができない。
第百三十四条 応急措置法施行後新法施行前に、応急措置法第六条第二項前段の規定によつて、親権者を定める協議が調つたときは、親権者は、新法施行の日から十日以内に、協議を証する書面を添附して、その旨を届け出なければならない。この場合には、第三十八条第一項但書及び第三十九条の規定を準用する。
応急措置法施行後新法施行前に応急措置法第六条第二項後段又は第三項に規定する裁判が確定したときは、親権者は、新法施行の日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
第百三十五条 第七十八条の規定は、新民法附則第十四条第一項但書の規定によつて協議で親権者を定めようとする者にこれを準用する。
第六十三条の規定は、新民法附則第十四条第二項又は第三項に規定する裁判が確定した場合において親権者にこれを準用する。
第百三十六条 新法施行の際現に後見監督人の地位に在る者は、新法施行の日から十日以内に第八十五条において準用する第八十一条又は第八十二条に規定する届出をしなければならない。
第百三十七条 第百二十八条第一項の戸籍について転籍の届出があつたときは、新法の規定にかかわらず、従前の戸籍によつて戸籍を編製する。
第百三十八条 左の法令は、これを廃止する。
明治五年太政官布告第二百三十五号(改姓名に関する件)
明治六年太政官布告第百十八号(御歴代の御諱及び御名の文字の使用に関する件)
昭和十五年法律第四号(委託又は郵便による戸籍届出に関する件)
昭和二十一年司法省令第四十七号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く出生及び死亡の届出等に関する件)
この法律施行前にされた戸籍届出の委託については、昭和十五年法律第四号は、なお、その効力を有する。この場合には、同法第一条第一項の確認は、家事審判所がこれをする。
第百十九条の規定は、前項の確認にこれを準用する。
第百三十九条 寄留法の一部を次のように改正する。
第二条第二項中「、第五条乃第六条」を「及第四条」に改める。
第三条中「勅令」を「政令」に改める。
第四条第一項中「五円」を「二百円」に、同条第二項中「第百七十九条」を「第百二十三条」に改める。
第百四十条 この法律施行前にした行為に対する過料に関する規定の適用については、なお、従前の例による。
第百四十一条 この法律施行の際現に裁判所に係属している過料事件については、なお、従前の例による。
第百四十二条 第十一条及び第二十八条第一項中「最高法務総裁」とあるのは、最高法務庁設置法施行までの間、「司法大臣」と読み替えるものとする。
第百四十三条 第五条第二項の手数料の額は、昭和二十二年法律第三十四号財政法第三条の規定の適用があるまで、政令の定によることを妨げない。
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲