民法及び家事審判法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第五十一号
公布年月日: 昭和55年5月17日
法令の形式: 法律
民法及び家事審判法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十五年五月十七日
内閣総理大臣 大平正芳
法律第五十一号
民法及び家事審判法の一部を改正する法律
(民法の一部改正)
第一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第八百八十九条第二項中「及び第三項」を削る。
第九百条第一号中「子の相続分は、三分の二とし、配偶者の相続分は、三分の一」を「子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一」に改め、同条第二号中「配偶者の相続分及び直系尊属の相続分は、各々二分の一」を「配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一」に改め、同条第三号中「三分の二」を「四分の三」に、「三分の一」を「四分の一」に改める。
第九百一条第二項中「直系卑属」を「子」に改める。
第九百四条の次に次の一条を加える。
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもつてその者の相続分とする。
前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。
第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があつた場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。
第九百六条中「職業」を「年齢、職業、心身の状態及び生活の状況」に改める。
第千二十八条第一号を次のように改める。
一 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一
第千二十八条第二号中「三分の一」を「二分の一」に改める。
(家事審判法の一部改正)
第二条 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項乙類第九号の次に次の一号を加える。
九の二 民法第九百四条の二第二項の規定による寄与分を定める処分
第十五条の四を第十五条の七とし、第十五条の三を第十五条の六とし、第十五条の二を第十五条の五とし、第十五条の次に次の三条を加える。
第十五条の二 第九条第一項甲類に掲げる事項についての審判又は次条第一項若しくは第二項の規定による審判(同条第五項の裁判を含む。)若しくはこれを取り消す裁判で最高裁判所の定めるものが効力を生じた場合には、裁判所書記官は、最高裁判所の定めるところにより、遅滞なく、戸籍事務を管掌する者に対し、戸籍の記載を嘱託しなければならない。
第十五条の三 第九条の審判の申立てがあつた場合においては、家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずることができる。
前項の規定による審判(以下「審判前の保全処分」という。)が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
前二項の規定による審判は、疎明に基づいてする。
前項の審判は、これを受ける者に告知することによつてその効力を生ずる。
第九条に規定する審判事件が高等裁判所に係属する場合には、当該高等裁判所が、第三項の審判に代わる裁判を行う。
審判前の保全処分の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他の仮差押え及び仮処分の執行に関する法令の規定に従つてする。
民事訴訟法第五百十三条、第七百三十七条、第七百四十一条第二項から第四項まで、第七百四十三条、第七百五十五条、第七百五十八条及び第七百六十条の規定は、審判前の保全処分について準用する。
第十五条の四 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をするため必要があると認めるときは、相続人に対して、遺産の全部又は一部について競売し、その他最高裁判所の定めるところにより換価することを命ずることができる。
前条第二項の規定は、前項の規定による審判について準用する。
前二項の規定は、民法第九百五十八条の三第一項の規定による相続財産の処分の審判について準用する。この場合において、第一項中「相続人」とあるのは、「相続財産の管理人」と読み替えるものとする。
第十六条中「者にこれを」を「者について、同法第二十七条から第二十九条までの規定は、第十五条の三第一項の規定による財産の管理者について」に改める。
第二十五条の二中「第十五条の二から第十五条の四まで」を「第十五条の五から第十五条の七まで」に改める。
第二十七条中「三千円」を「五万円」に改める。
第二十八条第一項中「第十五条の三」を「第十五条の六」に、「五千円」を「十万円」に改める。
第二十九条第二項中「(昭和五十四年法律第四号)」を削る。
第三十条第一項中「五千円」を「十万円」に改める。
第三十一条中「一万円」を「二十万円」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。
(民法の一部改正に伴う経過措置)
2 この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、第一条の規定による改正前の民法の規定を適用する。
(家事審判法の罰則の適用に関する経過措置)
3 この法律の施行前にした行為に対する家事審判法の罰則の適用については、なお従前の例による。
(戸籍法の一部改正)
4 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。
第十五条中「若しくは請求」を「、請求若しくは嘱託」に改める。
(相続税法の一部改正)
5 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の一部を次のように改正する。
第十九条の二第一項第二号イ中「三分の一」を「二分の一」に改める。
第三十二条中「左の」を「次の」に、「因り」を「より」に、「民法の規定」を「民法(第九百四条の二を除く。)の規定」に、「取消」を「取消し」に、「行なわれた」を「行われた」に改める。
第五十五条中「因り」を「より」に、「民法の規定」を「民法(第九百四条の二を除く。)の規定」に、「但し」を「ただし」に改める。
(相続税法の一部改正に伴う経過措置)
6 前項の規定による改正後の相続税法の規定は、この法律の施行の日以後に相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により取得した財産に係る相続税について適用し、同日前に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税については、なお従前の例による。
(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)
7 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
別表第一の一七の項の上欄ニ中「第十五条の三」を「第十五条の六」に改める。
法務大臣 倉石忠雄
大蔵大臣 竹下登
内閣総理大臣 大平正芳