民法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第40号
公布年月日: 昭和37年3月29日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

昭和22年の新民法制定時、将来の再改正の必要性が附帯決議され、法務省は昭和29年以降、民法全般の改正を検討してきた。民法全般の改正は国民生活に関わる根本問題を含むため、さらなる検討を要するが、新民法施行後の運用実態から、解釈に疑義があり実務上不便な事項や、改正が望ましい事項が存在する。そこで今回は、根本問題に関わらない事項について改正を行うため、本法律案を提出するものである。

参照した発言:
第40回国会 衆議院 法務委員会 第6号

審議経過

第40回国会

衆議院
(昭和37年2月16日)
(昭和37年2月23日)
参議院
(昭和37年2月27日)
衆議院
(昭和37年3月1日)
(昭和37年3月8日)
(昭和37年3月9日)
参議院
(昭和37年3月20日)
(昭和37年3月22日)
(昭和37年3月23日)
民法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年三月二十九日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第四十号
民法の一部を改正する法律
民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
目次中
第四節
失踪
第四節
失踪
第五節
同時死亡ノ推定
に改める。
第三十条第二項中「三年」を「一年」に改める。
第三十一条を次のように改める。
第三十一条 前条第一項ノ規定ニ依リ失踪ノ宣告ヲ受ケタル者ハ前条第一項ノ期間満了ノ時ニ死亡シタルモノト看做シ前条第二項ノ規定ニ依リ失踪ノ宣告ヲ受ケタル者ハ危難ノ去リタル時ニ死亡シタルモノト看做ス
第三十二条の次に次の一節を加える。
第五節 同時死亡ノ推定
第三十二条ノ二 死亡シタル数人中其一人ガ他ノ者ノ死亡後尚ホ生存シタルコト分明ナラザルトキハ此等ノ者ハ同時ニ死亡シタルモノト推定ス
第八百十一条第二項中「養子に代わつて縁組の承諾をする権利を有する者」を「養子の離縁後にその法定代理人となるべき者」に改め、同項の次に次の三項を加える。
前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、前項の父若しくは母又は養親の請求によつて、協議に代わる審判をすることができる。
第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によつて、養子の離縁後にその後見人となるべき者を選任する。
第八百十五条中「その縁組につき承諾権を有する者から」を「第八百十一条の規定によつて養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して」に改める。
第八百四十五条中「又は被後見人の親族の請求によつて」を「、被後見人の親族若しくは検察官の請求によつて、又は職権で」に改める。
第八百八十七条を次のように改める。
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その相続権を失つたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。但し、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その代襲相続権を失つた場合にこれを準用する。
第八百八十八条を次のように改める。
第八百八十八条 削除
第八百八十九条第一項中「前二条」を「第八百八十七条」に改め、「直系尊属」の下に「。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。」を加え、同条第二項中「第八百八十七条」を「第八百八十七条第二項及び第三項」に改め、「、前項第一号の場合に、同条第二号及び前条の規定は」を削る。
第九百条中「直系卑属」を「子」に改める。
第九百一条第一項中「第八百八十八条」を「第八百八十七条第二項又は第三項」に改める。
第九百十九条に次の一項を加える。
前項の規定によつて限定承認又は放棄の取消をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
第九百三十九条を次のように改める。
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。
第九百五十八条中「一年」を「六箇月」に改める。
第九百五十八条の次に次の二条を加える。
第九百五十八条の二 前条の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、相続人並びに管理人に知れなかつた相続債権者及び受遺者は、その権利を行うことができない。
第九百五十八条の三 前条の場合において相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者の請求によつて、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内に、これをしなければならない。
第九百五十九条を次のように改める。
第九百五十九条 前条の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。この場合には、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
第九百九十四条第一項中「死亡前」を「死亡以前」に改める。
第千四十四条中「第八百八十八条」を「第八百八十七条第二項、第三項」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十七年七月一日から施行する。
(経過規定)
2 この法律による改正後の民法は、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、従前の民法によつて生じた効力を妨げない。
(家事審判法の一部改正)
3 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項甲類第七号の次に次の一号を加える。
七の二 民法第八百十一条第五項の規定による後見人となるべき者の選任
第九条第一項甲類第八号中「第八百十一条第三項」を「第八百十一条第六項」に改める。
第九条第一項甲類第二十五号の次に次の一号を加える。
二十五の二 民法第九百十九条第三項の規定による相続の限定承認又は放棄の取消の申述の受理
第九条第一項甲類第三十二号の次に次の一号を加える。
三十二の二 民法第九百五十八条の三第一項の規定による相続財産の処分
第九条第一項乙類第六号の次に次の一号を加える。
六の二 民法第八百十一条第四項の規定による親権者となるべき者の指定
(戸籍法の一部改正)
4 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。
第九十四条中「民法第三十条に定める期間が満了した日」を「民法第三十一条の規定によつて死亡したとみなされる日」に改める。
法務大臣 植木庚子郎
内閣総理大臣 池田勇人