兵役法施行令
法令番号: 勅令第三百三十號
公布年月日: 昭和2年11月30日
法令の形式: 勅令
朕兵役法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年十一月三十日
內閣總理大臣兼外務大臣 男爵 田中義一
海軍大臣 岡田啓介
陸軍大臣 白川義則
內務大臣 鈴木喜三郞
文部大臣 水野鍊太郞
勅令第三百三十號
兵役法施行令
目次
第一章
志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役關係
第一款
武官及武官ノ候補者
第二款
志願ニ依ル兵卒及其ノ候補者
第二章
服役
第一款
通則
第二款
短期現役兵
第三款
在營期間ノ短縮
第四款
服役延期
第五款
特殊ノ轉役及免役
第六款
服役期間ノ計算
第三章
徵集
第一款
通則
第二款
徵兵區
第三款
徵兵官
第四款
兵員配賦
第五款
徵兵檢査
第六款
現役兵入營
第七款
現役兵補闕
第八款
徵集延期
第九款
短期現役兵ニ關スル特例
第十款
樺太ニ關スル特例
第四章
召集
第五章
雜則
附 則
兵役法施行令
第一章 志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役關係
第一款 武官及武官ノ候補者
第一條 武官及海軍各科少尉候補生ノ兵役ニ關シテハ本款ニ規定スルモノノ外別ニ定ムル所ニ依ル
第二條 武官ト爲ルベキ陸軍ノ諸生徒(幹部候補生ヲ除ク)又ハ海軍ノ學生生徒トシテ兵籍ニ編入セラレ居ル者ノ兵役上ノ身分取扱ハ現役ニ準ズ
第三條 幹部候補生ノ兵役上ノ身分取扱ニ付テハ陸軍補充令ニ規定スル修業期間ハ現役トシ爾後其ノ任官ニ至ル迄ノ期間ハ豫備役トス
第四條 兵役法第二十一條第一項但書及之ニ基ク本令ノ規定ハ武官ノ候補者ノ兵役上ノ身分取扱ニ之ヲ準用ス
兵役法第五十四條乃至第五十六條、同法第五十九條乃至第六十三條及之ニ基ク本令ノ規定ハ幹部候補生ニシテ豫備役ニ在ル者ノ召集ニ之ヲ準用ス
第五條 武官又ハ武官ノ候補者ニシテ徵兵檢査ヲ受クル前ヨリ志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレ居ル者ニ對シテハ兵籍ニ在ル間徵兵檢査ヲ行フコトナシ
前項ノ規定ニ該當スル者ニシテ現役ニ服シタル期間、隊附ノ期間、練習ノ爲海軍ノ艦船ニ乘組ミタル期間又ハ召集セラレタル期間ヲ通算シテ二年以上ノ者ハ其ノ期間二年ニ滿ツル日ヲ以テ徵兵終決處分ヲ經タル者ト看做ス
第六條 第二條ノ規定ニ該當スル者戰時又ハ事變ニ際スルトキハ之ヲ現役ノ實役ニ就カシムルコトヲ得幹部候補生ニ付亦同ジ
第二款 志願ニ依ル兵卒及其ノ候補者
第七條 現役兵ハ年齡十七年以上徵兵適齡未滿ノ者ニシテ現役兵トシテ陸軍ニ在リテハ二年、海軍ニ在リテハ三年在營スルコトヲ志願スル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ現役兵ニ充ツル者ノ資格ハ兵役法及本令ノ定ムル所ニ依リ現役兵トシテ徵集セラルル者ノ資格ニ同ジ
輜重輸卒又ハ補助看護卒ハ志願ニ依リ之ヲ採用スルコトナシ
第一項ニ規定スル年齡ハ志願ノ年ノ十二月一日ニ於ケル年齡トス
第八條 前條第一項ノ規定ニ依リ現役兵タランコトヲ志願シタル者ノ採否ハ陸軍兵ニ付テハ聯隊區司令官、海軍兵ニ付テハ海軍人事部長之ヲ決ス但シ海軍ニ採用スベキ人員ハ海軍大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
前條第一項ノ規定ニ依リ陸軍兵ニ採用シタル者ハ之ヲ採用シタル聯隊區ノ其ノ年ニ於ケル現役兵ノ配賦要員ニ充ツ
第九條 第七條第一項ノ規定ニ依リ採用セラレタル者ノ兵役ニ關シテハ兵役法ノ定ムル所ニ依リ現役兵トシテ徵集セラレタル者ノ兵役ニ同ジ
第十條 海軍志願兵令ノ定ムル所ニ依リ採用セラレタル者ノ兵役ニ關シテハ同令ノ定ムル所ニ依ル
志願ニ依リ兵卒ト爲ル者ニシテ本令ニ規定セザル者ノ兵役ニ關シテハ別ニ定ムル所ニ依ル
第十一條 憲兵上等兵及樂手補ノ服スベキ兵役ハ現役、豫備役及後備兵役トシ現役ヲ終リタル者ハ豫備役ニ、豫備役ヲ終リタル者ハ後備兵役ニ服セシム
前項ノ規定ニ依リ服役スル者ニシテ年齡四十年ニ滿ツル前ニ於テ後備兵役ヲ終リタル者ハ第一國民兵役ニ服セシム
第十二條 憲兵上等兵及樂手補ノ服役期間左ノ如シ
一 現役 憲兵上等兵ニ在リテハ前服役期間ヲ通算シ四年トシ樂手補ニ在リテハ之ヲ命ゼラレタル年ノ十二月一日ヨリ起算シテ五年トス
二 豫備役 現役ノ期間ヲ通算シテ七年四月ニ滿ツル日迄トス
三 後備兵役 前服役ヲ通算シテ十七年四月ニ滿ツル日迄トス
戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項第一號ニ規定スル起算ノ日ヲ變更スルコトヲ得
第一項ニ規定スル現役ノ期間ハ本人ノ願ニ依リ之ヲ延長スルコトヲ得
憲兵上等兵又ハ樂手補トシテ二年以上現役ニ在ル者成績不良ナルトキハ之ヲ現役滿期ト爲スコトヲ得
第十三條 現役ノ憲兵上等兵及樂手補ハ之ヲ營外ニ居住セシムルヲ例トス
第十四條 兵卒(現役兵又ハ補充兵ニ決定シタル者ヲ含ム)ニシテ武官又ハ陸軍ノ諸生徒若ハ海軍ノ學生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者ハ當該兵籍ニ編入セラレタル日ヲ以テ兵卒ノ身分及服役ヲ免ズ
第十五條 前條ノ規定ニ該當スル者武官又ハ陸軍ノ諸生徒若ハ海軍ノ學生生徒ヲ免ゼラレタルトキハ前ニ免ゼラレタル兵卒ノ身分ニ復シ兵役法第五條乃至第九條又ハ本令第九條乃至第十二條ノ規定ニ從ヒ前ノ服役ヲ繼續セシム但シ兵役法第二十一條及本令第十八條又ハ第三十八條ノ規定ニ依リ轉役スル者又ハ兵役ヲ免ゼラルル者ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ハ陸軍武官服役令又ハ海軍武官服役令ノ定ムル所ニ依リ兵卒ト爲リタル者ニ之ヲ準用ス
第百三十六條各號ニ揭グル期間ハ前二項ノ規定ニ依リ服役ヲ繼續スル者ノ服役期間ニ之ヲ通算ス
第十六條 兵役法又ハ本令第七條第一項ノ規定ニ依リ徵集又ハ採用セラレタル海軍兵ニシテ海軍志願兵令ノ定ムル兵籍ニ編入セラレタル者ハ當該兵籍ニ編入ノ日ヲ以テ其ノ服役ヲ免ジ海軍志願兵令ノ定ムル所ニ依リ服役セシム
第十七條 陸軍現役兵ニシテ下士又ハ憲兵上等兵タランコトヲ志願シタル者ハ之ニ任用又ハ採用シ得ベキ見込アル者ニ限リ本人ノ願ニ依リ二年ヲ限リ現役期間ヲ延長シ之ヲ在營セシムルコトヲ得
第十八條 兵役法第十二條、第十六條、第十八條乃至第二十二條、第五十四條乃至第五十六條、第五十九條乃至第六十三條又ハ同法第六十五條第二項及之ニ基ク本令ノ規定ハ憲兵上等兵、樂手補及第十五條ニ規定スル兵卒ノ身分ニ復シタル者又ハ兵卒ト爲リタル者ノ服役及召集ニ之ヲ準用ス
第二十四條ノ規定ハ前項ニ揭グル兵卒ノ身分取扱ニ之ヲ準用ス但シ原兵科ナキトキハ主務大臣臨時其ノ者ノ屬スベキ兵科ヲ定ム
第十九條 年齡四十年ヲ過ギ志願ニ依リ國民軍ニ編入セラレタル兵卒ハ當該期間第一國民兵役ニ在ル者ト看做ス
第二十條 第二條、第四條第一項、第五條及第六條ノ規定ハ兵卒ノ候補者トシテ兵籍ニ編入セラレタル諸生徒ニ之ヲ準用ス
第二章 服役
第一款 通則
第二十一條 陸軍ノ現役兵(歸休兵ヲ除ク)ハ之ヲ所屬部隊ノ兵籍ニ編入ス
陸軍ノ歸休兵、豫備兵及後備兵竝ニ補充兵ハ之ヲ本籍所在ノ聯隊區ノ兵籍ニ編入シ當該聯隊區司令官ノ管轄ニ屬セシム
海軍ノ現役兵、豫備兵及後備兵ハ其ノ本籍地ヲ管轄スル鎭守府ノ兵籍ニ編入ス但シ現役兵ニ付テハ海軍大臣ハ必要ニ應ジ其ノ兵籍ノ所在ヲ變更スルコトヲ得
第二十二條 兵役法第六條乃至第八條及同法第九條第一項ノ規定ニ依リ一ノ兵役ヲ終リ他ノ兵役ニ就ク場合ニ於テハ別ニ辭令ヲ用ヒズ一ノ兵役ヲ終リタル日ノ翌日ヲ以テ他ノ兵役ニ服スルモノトス
前項ノ規定ハ兵役法第九條第二項ノ規定ニ基キ兵役ニ就キ又ハ之ヲ去ル場合及同法第十八條ノ規定ニ基キ兵役ヲ去ル場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條 現役兵トシテ入營スベキ者入營スルニ至リタルトキハ別ニ辭令ヲ用ヒズ其ノ日ヲ以テ陸軍ニ在リテハ兵科部ノ區分ニ從ヒ第三級ノ兵卒、海軍ニ在リテハ科ノ區分ニ從ヒ四等兵ヲ命ゼラレタルモノトス其ノ入營シタル後ニ於ケル進級ニ關シテハ本令中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外主務大臣之ヲ定ム
前項ノ規定ハ召集セラレタル補充兵ニ之ヲ準用ス
第二十四條 上等兵又ハ之ト同等級ノ陸軍兵卒ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ之ヲ當該兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等級ノ兵卒ト爲ス但シ當該兵科部ニ一等卒又ハ之ト同等ノ階級ナキトキハ原兵科ノ一等卒ト爲ス
一 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者但シ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未滿ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ヲ除ク
二 陸軍懲罰令ニ依リ降等セラレタル者
三 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シタルニ因リ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ見込ナキニ因リ陸軍ノ諸生徒ヲ免ゼラレタル者ニシテ第十五條ノ規定ニ依リ兵卒ノ身分ニ復シタル者
第二款 短期現役兵
第二十五條 短期現役兵ハ軍事上ノ必要ニ依リ陸軍又ハ海軍ニ於テ服役セシム但シ本人ノ希望ヲ參酌スルコトヲ得
兵役法第十條第一項但書ノ規定ニ該當スル者ハ之ヲ海軍ニ於テ服役セシムルコトナシ
第二十六條 短期現役兵ノ服役スベキ部隊ニ關シテハ主務大臣之ヲ定ム
第二十七條 短期現役兵ハ之ヲ陸軍ニ在リテハ步兵科、海軍ニ在リテハ兵科ニ屬セシム
第二十八條 短期現役兵ハ陸軍ニ在リテハ入營後槪ネ二月ノ後之ニ一等卒ヲ、槪ネ四月ノ後之ニ上等兵ヲ命ジ現役滿期ノ際之ヲ伍長ニ任ジ海軍ニ在リテハ入營後槪ネ一月半ノ後之ニ三等水兵ヲ、槪ネ三月ノ後之ニ二等水兵ヲ、槪ネ四月半ノ後之ニ一等水兵ヲ命ジ現役滿期ノ際之ヲ三等兵曹ニ任ズ
兵役法第十條第一項但書ノ規定ニ該當スル者ハ前項ノ規定ニ拘ラズ入營後槪ネ四月ノ後之ニ一等卒ヲ、槪ネ六月ノ後之ニ上等兵ヲ命ジ現役滿期ノ際之ヲ伍長ニ任ズ
前二項ノ規定ニ依ル進級及任官ハ陸軍ニ在リテハ聯隊長、海軍ニ在リテハ進級ハ所轄長、任官ハ鎭守府司令長官之ヲ行フ
短期現役兵ニシテ在營間其ノ成績不良ナル者ハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル進級ノ一部若ハ全部又ハ任官ヲ爲サシムルコトナシ
第二十九條 短期現役兵ニシテ兵役法第六十七條第二項ノ規定ニ該當スル者アルトキハ其ノ等級ヲ免ジ短期現役兵ノ兵籍ヨリ之ヲ除クベシ
前條第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ行フ處分ニ之ヲ準用ス
第三十條 短期現役兵其ノ現役中現役ニ堪ヘザルニ至リタルトキハ現役ヲ免除シ第一國民兵役ニ服セシム兵役法第二十條ノ規定ニ依リ現役ヲ免除セラレタル者小學校ノ敎職ニ就クノ資格ヲ有スル者ナルトキ亦同ジ
第三十八條第三項ノ規定ハ短期現役兵ノ現役免除、轉役及兵役免除ノ處分ニ之ヲ準用ス
第三款 在營期間ノ短縮
第三十一條 兵役法第十一條ノ規定ニ依ル在營期間ノ短縮ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ノ定ムル檢定ニ合格シタル者ニ付之ヲ行フ其ノ短縮スベキ期間ハ步兵科ノ兵卒(戰車兵ヲ除ク)ニ在リテハ六月、其ノ他ノ陸軍兵(第三十三條ニ揭グル兵種ヲ除ク)及海軍兵ニ在リテハ當該兵種ノ本務ニ應ジ六十日以內トス
前項ノ檢定ニ合格シタル者ト雖モ在營間其ノ成績不良ナルトキハ其ノ者ニ付前項ノ規定ニ依ル短縮ヲ行ハズ
兵役法第十一條第二項ノ規定ニ依ル認定ハ陸軍大臣及文部大臣之ヲ爲ス
第三十二條 兵役法第十二條ノ規定ニ依ル在營期間ノ短縮ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ付主務大臣ニ於テ軍事上妨ゲナシト認ムルトキニ限リ之ヲ行フ其ノ短縮スベキ期間ハ槪ネ四十日トス
一 靑年訓練所ノ訓練又ハ陸軍大臣及文部大臣ニ於テ之ト同等以上ト認定シタル訓練ヲ修了セザル者
二 前號ノ訓練ヲ修了シタル者ニシテ前條第一項ノ檢定ニ合格セザル者
三 前條第二項ノ規定ニ該當スル者
第三十三條 兵役法第十三條ノ規定ニ依リ在營期間ヲ短縮スベキ兵種ハ輜重輸卒及陸軍衞生部ノ兵卒トス其ノ在營期間左ノ如シ
一 輜重輸卒 槪ネ二月
二 看護卒及磨工卒 一年六月
三 補助看護卒 三月
第三十四條 兵役法第十四條ノ規定ニ依リ在營期間ヲ短縮スル者ニ關シテハ主務大臣上裁ヲ經テ之ヲ定ム
第三十五條 戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ兵役法第十四條竝ニ本令第三十一條第一項、第三十二條及第三十三條ノ規定ニ依ル在營期間ノ短縮ヲ行ハズ又ハ其ノ短縮スベキ期間ヲ減ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第三十六條ノ規定ヲ準用ス
第四款 服役延期
第三十六條 兵役法第十九條ノ規定ニ依ル服役期間ノ延長及其ノ解止ニ關シテハ主務大臣臨時之ヲ定ム但シ航海中又ハ外國ニ於テ勤務中ナルトキノ海軍兵ノ服役期間ノ延長及其ノ解止ハ鎭守府司令長官之ヲ爲スコトヲ得
時機切迫シ主務大臣又ハ鎭守府司令長官ノ命ヲ待チ難キ場合ニ於テハ第百十八條第一項ニ揭グル者ハ其ノ部下ノ者ニ對シ必要ノ期間ヲ限リ服役期間ノ延長ヲ專行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事實ヲ具シ速ニ主務大臣ニ報告スベシ
第三十七條 後備兵、補充兵又ハ國民兵ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集ヲ令セラレタル者應召ノ日ニ於テ後備兵役、補充兵役又ハ國民兵役ノ期間ヲ過グルニ至ルベキトキハ前條ニ規定スル主務大臣ノ命又ハ召集解除ノ命アル迄其ノ服役期間ヲ延長ス
第五款 特殊ノ轉役及免役
第三十八條 短期現役兵ヲ除クノ外兵役法第二十一條ノ規定ニ依リ轉役スル者ノ服スベキ兵役左ノ如シ
一 現役兵ニシテ現役ニ堪ヘザル者在營三月以上ノ者ナルトキハ之ヲ豫備役ニ、在營三月未滿ノ者ナルトキハ陸軍ニ在リテハ之ヲ第一補充兵役ニ、海軍ニ在リテハ之ヲ第二補充兵役ニ服セシメ兵役法第二十條ノ規定ニ依リ現役ヲ免除セラレタル者ハ之ヲ第二補充兵役ニ服セシム
二 現役兵ニシテ現役、豫備役及後備兵役ニ又ハ現役及補充兵役ニ堪ヘザル者ハ之ヲ第一國民兵役ニ服セシム
三 豫備兵ニシテ豫備役及後備兵役ニ堪ヘザル者又ハ後備兵若ハ補充兵ニシテ其ノ役ニ堪ヘザル者ハ之ヲ第一國民兵役ニ服セシム
前項各號ノ規定ニ依リ陸軍ノ歸休兵、豫備兵若ハ後備兵又ハ補充兵ヲ轉役セシムルノ處分ハ召集ノ際若ハ部隊編入中又ハ陸海軍ノ病院ニ收容中ノ場合ニ限リ之ヲ行フ
兵役法第二十條及同法第二十一條竝ニ前二項ノ規定ニ依ル陸軍兵ノ現役免除、轉役及兵役免除ノ處分ハ部隊編入中ノ者ニ付テハ聯隊長又ハ之ト同等以上ノ權アル部隊ノ長、其ノ他ノ者ニ付テハ聯隊區司令官之ヲ行ヒ海軍兵ノ現役免除、轉役及兵役免除ノ處分ハ鎭守府司令長官之ヲ行フ
第三十九條 第九十六條ノ規定ハ兵役法第二十條ノ規定ニ依ル現役免除ニ之ヲ準用ス
第六款 服役期間ノ計算
第四十條 二期ニ分チ入營セシムベキ部隊ニ屬スル者ニシテ後期ニ入營スル者ノ現役期間ハ入營ノ月ノ一日ヨリ之ヲ起算ス
兵役法第四十五條第一項ノ規定ニ依リ入營ヲ延期セラレタル者ノ服役期間ノ計算ハ之ト同年(後期ニ入營スル者ニ在リテハ同期)ニ於テ入營スル一般ノ者ノ服役期間ノ計算ニ同ジ
第四十一條 兵役法第二十一條及本令第三十八條ノ規定ニ依リ轉役シタル者ノ服役期間左ノ如シ
一 現役ヲ免除シ豫備役ニ編入セラレタル者ノ豫備役期間ハ前ニ服役シタル期間ヲ通算シ陸軍ニ在リテハ七年四月、海軍ニ在リテハ七年ニ滿ツル日迄トス
二 現役ヲ免除シ補充兵役ニ編入セラレタル者ノ補充兵役ノ期間ハ前ニ服役シタル期間ヲ通算シ十二年四月ニ滿ツル日迄トス
第三章 徵集
第一款 通則
第四十二條 本章中市又ハ市長ニ關スル規定ハ東京市、京都市、大阪市、名古屋市及橫濱市ニ在リテハ本章中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外區又ハ區長ニ、町村又ハ町村長ニ關スル規定ハ町村又ハ町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
第四十三條 師團長ハ本章中ノ規定ヲ適用シ難キ島嶼ニ於テハ地方長官ニ協議シ其ノ規定ニ付適宜ノ措置ヲ爲スコトヲ得
第二款 徵兵區
第四十四條 徵兵區ハ之ヲ師管及聯隊區トシ其ノ區域ハ陸軍管區表ノ定ムル所ニ依ル
徵兵事務執行ノ爲必要アルトキハ徵募區ヲ檢査區ニ分ツコトヲ得
徵募區及檢査區ノ區域ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第四十五條 步兵隊ノ兵員ハ聯隊每ニ其ノ師管ノ一聯隊區ヨリ、他ノ兵員ハ其ノ師管ヨリ之ヲ徵集ス但シ他ノ聯隊區又ハ師管ヨリ之ヲ徵集スルコトヲ得
團隊ノ位置又ハ種類ニ依リ一箇乃至數箇ノ師管又ハ各師管ヨリ當該團隊ノ兵員ヲ徵集スルコトヲ得
海軍ノ兵員ハ各師管ヨリ之ヲ徵集ス
第三款 徵兵官
第四十六條 徵兵官ハ總理徵兵官、師管徵兵官、聯隊區徵兵官及聯隊區聯合徵兵官トス
第四十七條 總理徵兵官ハ陸軍大臣及內務大臣ヲ以テ之ニ充テ全國徵兵ノ事務ヲ統轄ス
第四十八條 師管徵兵官ハ師管內道府縣每ニ師團長及地方長官ヲ以テ之ニ充テ師團長ヲ首座トシ徵兵ノ事務ヲ統轄ス
第四十九條 聯隊區徵兵官ハ聯隊區內道府縣每ニ左ノ區分ニ從ヒ聯隊區司令官、當該府縣ノ兵事ニ關スル事務ヲ分掌スル書記官又ハ地方事務官(以下之ヲ兵事官ト稱ス)、支廳長、市長及區長ヲ以テ之ニ充テ聯隊區司令官ヲ首座トシ徵兵事務ヲ執行ス但シ樺太ニ於ケル聯隊區徵兵官及第四號ニ揭グル聯隊區徵兵官ハ抽籤事務ヲ行ハズ
一 支廳長ノ管轄區域以外及市以外ノ區域ニ在リテハ聯隊區司令官及兵事官
二 支廳長ノ管轄區域ニ在リテハ聯隊區司令官及支廳長
三 市(第四十二條ノ市ヲ除ク)ニ在リテハ聯隊區司令官及市長
四 第四十二條ノ市ノ區ニ在リテハ聯隊區司令官及區長
第五十條 聯隊區聯合徵兵官ハ第四十二條ノ市(市ガ二以上ノ聯隊區ニ分屬スルトキハ其ノ分屬スル部分)及樺太ニ之ヲ置キ第四十二條ノ市ニ在リテハ聯隊區司令官、市長及區長、樺太ニ在リテハ聯隊區司令官及樺太廳長官ノ命ズル支廳長ヲ以テ之ニ充テ聯隊區司令官ヲ首座トシ抽籤事務ヲ執行ス
第五十一條 前二條ノ徵兵官事故アルトキハ聯隊區司令官ニ在リテハ師團長ノ指名スル其ノ部下ノ將校、兵事官ニ在リテハ地方長官ノ指名スル其ノ部下ノ官吏、支廳長市長又ハ區長ニ在リテハ其ノ職務ヲ代理スル者徵兵官ノ職務ヲ代理ス
府縣ガ二以上ノ聯隊區ニ分屬スルトキ又ハ第五十七條ノ規定ニ依リ師團長ガ其ノ部下ノ佐官ヲシテ聯隊區司令官ノ職務ヲ代理セシムルトキハ地方長官ハ其ノ部下ノ官吏ヲシテ聯隊區徵兵官タル兵事官ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第五十二條 師管徵兵醫官、聯隊區徵兵醫官及聯隊區徵兵副醫官ハ每年徵兵事務執行中之ヲ置ク
師管徵兵醫官ハ師團長ニ屬シ師管內ノ身體檢査ニ關スル事務ヲ管掌ス
聯隊區徵兵醫官ハ聯隊區司令官ニ屬シ聯隊區內ノ身體檢査ニ關スル事務ヲ管掌ス
聯隊區徵兵副醫官ハ聯隊區徵兵醫官ヲ輔佐ス
第五十三條 師管徵兵醫官ハ師團軍醫部長ヲ以テ之ニ充ツ
聯隊區徵兵醫官ハ陸軍三等軍醫正又ハ陸軍一等軍醫ノ內一人ヲ以テ之ニ充ツ
聯隊區徵兵副醫官ハ陸軍一、二、三等軍醫ノ內一人ヲ以テ之ニ充ツ
師團長必要ト認ムルトキハ陸軍一、二、三等軍醫ノ內二人ヲ以テ前項ノ副醫官ニ充ツルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ陸軍一等軍醫ヲ以テ聯隊區徵兵副醫官ニ充ツルハ聯隊區徵兵醫官ガ陸軍三等軍醫正ナルトキ又ハ聯隊區徵兵副醫官タルベキ者ガ聯隊區徵兵醫官ヨリ後任ナルトキニ限ル
第五十四條 戰時又ハ事變ニ際シ前條ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ聯隊區徵兵醫官ハ陸軍一、二等軍醫正又ハ陸軍二、三等軍醫ヲ以テ、聯隊區徵兵副醫官ハ醫師免許證ヲ有スル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第五十五條 徵兵檢査ヲ受クベキ者僅少ナル島嶼ニ於ケル身體檢査ニ付テハ聯隊區徵兵副醫官ヲ置カザルコトヲ得
第五十六條 師團長又ハ師團軍醫部長遠隔ノ地ニ在ル爲師管徵兵官又ハ師管徵兵醫官ノ職務ヲ行ヒ難キ場合ニ於テハ陸軍大臣ノ命ズル者ヲシテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第五十七條 聯隊區內ノ徵兵檢査ヲ受クベキ者ノ多數其ノ他ノ事由ニ因リ陸軍大臣ノ定ムル期間內ニ徵兵檢査ヲ終了シ難キトキハ師團長ハ其ノ部下ノ佐官ヲシテ徵募區又ハ檢査區ヲ限リ聯隊區徵兵官タル聯隊區司令官ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ聯隊區司令官ノ職務ヲ代理スル者ハ其ノ代理ニ關シ當該聯隊區司令官ノ區處ヲ承ク
第一項ノ規定ニ依ル徵兵事務ノ執行ニ付テハ第五十三條ノ規定ニ依リ別ニ聯隊區徵兵醫官及聯隊區徵兵副醫官ヲ置ク
第五十八條 徵兵署ニ事務員ヲ置キ庶務ニ從事セシム
前項ノ事務員ハ陸軍下士又ハ同判任文官及道府縣市(第四十二條ノ市ニ於テハ市及區)ノ官吏吏員ヲ以テ之ニ充ツ
地方長官ハ必要アル場合ニ於テハ町村長ニ命ジ當該町村ノ吏員ヲシテ第一項ニ規定スル事務員ノ職務ヲ補助セシムルコトヲ得
第四款 兵員配賦
第五十九條 每年徵集スル現役兵及第一補充兵ノ員數ハ陸軍大臣上裁ヲ經テ之ヲ各師管ニ配賦ス
海軍ニ徵集スル兵員ノ數ハ海軍大臣之ヲ陸軍大臣ニ移ス
第六十條 師團長ハ師管ニ配賦セラレタル員數ヲ各聯隊區ニ、聯隊區司令官ハ聯隊區ニ配賦セラレタル員數ヲ各徵募區ニ配賦ス
第五款 徵兵檢査
第六十一條 徵兵事務(抽籤事務ヲ除ク)執行ノ爲徵募區每ニ聯隊區徵兵署ヲ每年設ク但シ檢査區ヲ設ケタル徵募區ニ於テハ檢査區每ニ之ヲ設ク
抽籤事務執行ノ爲第四十二條ノ市及樺太ヲ除キタル區域ニ付テハ聯隊區抽籤徵兵署ヲ、第四十二條ノ市及樺太ニ付テハ聯隊區聯合抽籤徵兵署ヲ每年設ク
第六十二條 聯隊區徵兵署ハ市ニ在リテハ市長(第四十二條ノ市ニ在リテハ區長)、支廳長ノ管轄區域ニ在リテハ支廳長、其ノ他ノ區域ニ在リテハ地方長官之ヲ設備ス但シ必要アル場合ニ於テハ地方長官ハ徵兵署ヲ開設スル地ノ町村長ニ命ジ設備ヲ爲サシムルコトヲ得
聯隊區抽籤徵兵署ハ地方長官之ヲ設備ス
聯隊區聯合抽籤徵兵署ハ第四十二條ノ市ニ在リテハ市長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官之ヲ設備ス
第六十三條 師團長及地方長官ハ徵兵署ノ取締ニ關シ必要ナル措置ヲ爲スベシ
徵兵署ニ出張シタル警察官吏又ハ憲兵ハ聯隊區徵兵官又ハ聯隊區聯合徵兵官ニ對シ徵兵署ノ取締ニ關シ必要ナル協力ヲ爲スベシ
第六十四條 徵兵處分ヲ取消シ更ニ處分ヲ爲シ其ノ他臨時ニ徵兵處分ヲ爲ス爲特ニ必要アルトキハ第六十一條ノ規定ニ拘ラズ臨時ニ徵兵署ヲ設クルコトヲ得
第六十五條 徵兵署開設ノ期日、場所其ノ他開設ニ必要ナル事項ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ基キ聯隊區司令官ハ兵事官、支廳長又ハ市長(第四十二條ノ市ニ在リテハ市長及區長)ト協議シテ之ヲ定ム
第六十六條 市町村長ハ徵兵檢査ヲ受クベキ者ヲ精査シ且之ニ對シ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ徵兵檢査通達書ヲ交付スベシ
徵兵檢査通達書ヲ受ケタル者ハ指定ニ從ヒ徵兵署ニ出頭スベシ
第六十七條 身體檢査ハ聯隊區徵兵署內ニ設クル身體檢査場ニ於テ之ヲ行フ
第六十八條 兵役法第三十二條第二項ノ規定ニ依ル標準及同法第三十三條第一項ニ規定スル體格等位左ノ如シ
一 現役ニ適スル者ハ身長一・五五メートル以上ニシテ身體强健ナル者トス
現役ニ適スル者ハ其ノ體格ノ程度ニ應ジ之ヲ甲種及乙種ニ、乙種ハ之ヲ第一乙種及第二乙種ニ分ツ
二 國民兵役ニ適スルモ現役ニ適セザル者ハ身長一・五五メートル以上ニシテ身體乙種ニ次グ者及身長一・五〇メートル以上、一・五五メートル未滿ノ者ニシテ第三號及第四號ニ該當セザル者トス之ヲ丙種トス
三 兵役ニ適セザル者ハ身長一・五〇メートル未滿ノ者及左ニ揭グル疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常アル者トス之ヲ丁種トス
(イ)全身畸形
(ロ)筋骨甚薄弱ナルモノ
(ハ)惡性腫瘍
(ニ)不治ノ精神病又ハ不治ノ神經系病
(ホ)不治ノ榮養失常
(ヘ)癩
(ト)盲
(チ)聾
(リ)啞
(ヌ)口蓋破裂又ハ著シキ兎唇
(ル)斜頸又ハ脊柱骨盤ノ畸形ニシテ運動ニ妨ゲアルモノ
(ヲ)胸腹臟器ノ慢性疾患ニシテ一般榮養狀態ニ妨ゲアルモノ
(ワ)脫肛、痔瘻又ハ肛門畸形ニシテ其ノ程度重キモノ
(カ)泌尿生殖器ノ慢性病又ハ缺損畸形ニシテ機能障礙アルモノ
(ヨ)骨、骨膜又ハ關節ノ慢性病ニシテ其ノ程度重キモノ及其ノ繼發症
(タ)四肢ノ缺損又ハ著シキ四肢ノ短縮彎曲
(レ)指趾ノ缺損、强剛、癒著又ハ畸形ニシテ著シク機能障礙アルモノ
(ソ)飜足、馬足
(ツ)前各號ニ準ズル疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニシテ陸軍大臣ノ定ムルモノ
四 兵役ノ適否ヲ判定シ難キ者ハ身體檢査ヲ受ケタル年ニ於テハ疾病中又ハ病後其ノ他ノ事由ニ因リ甲種又ハ乙種ト判定シ難キモ其ノ翌年ニ至ルトキハ甲種又ハ乙種ニ合格スベキ見込アル者トス之ヲ戊種トス
疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ第一乙種、第二乙種、丙種又ハ丁種ト爲スベキ細部ノ標準ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十九條 兵役法第三十七條ノ規定ニ依リ兵役ヲ免除スルコトヲ得ル疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常左ノ如シ
一 全身畸形
二 不治ノ精神病ニシテ監視又ハ保護ヲ要スルモノ
三 
四 兩眼盲(眼前三分ノ一メートルニ於テ視標〇・一ヲ視別シ得ザルモノ)
五 兩耳全ク聾シタルモノ
六 
七 腕關節又ハ足關節以上ニテ一肢ヲ缺キタルモノ
第七十條 聯隊區司令官ハ身體檢査ノ事務ヲ監督シ身體檢査ヲ受ケタル者ノ兵種ノ選定ニ任ズ
第七十一條 聯隊區徵兵醫官ハ身體檢査ヲ受クル者ノ體格等位ノ決定ニ任ズ
第七十二條 兵事官、支廳長又ハ市長ハ徵兵檢査ヲ受クル者ノ身上ニ關スル調査ニ任ズ
第七十三條 町村長ハ徵兵署ニ出席シ徵兵官ノ諮問ニ應ズベシ
第七十四條 兵役法第三十三條第一項ノ規定ニ依ル現役兵及第一補充兵ノ徵集ニ關シテハ左ノ各號ニ依ル
一 各徵募區ニ配賦シタル現役兵及第一補充兵ハ甲種及乙種ノ者ニシテ身長一・六五メートル以上ノ者ヨリ之ヲ徵集ス但シ身長一・六五メートル以上ノ者ヲ以テ配賦人員ヲ充足スルコト能ハザルトキハ各體格等位ニ付一樣ニ遞次身長ヲ繰下ゲ配賦要員ヲ充足スルコトヲ得
二 現役兵及第一補充兵ニ徵集スベキ者ノ體格等位ノ優劣ニ依ル徵集順序ハ甲種、第一乙種及第二乙種ノ順序トス
第七十五條 徵兵檢査ニ於テ區分スベキ兵種ハ陸軍ニ在リテハ步兵、戰車兵、騎兵野砲兵、山砲兵、野戰重砲兵、騎砲兵、重砲兵、高射砲兵、工兵、鐵道兵、電信兵、飛行兵、氣球兵、輜重兵、輜重輸卒、看護卒、磨工卒及補助看護卒トシ海軍ニ在リテハ水兵、機關兵、船匠兵、看護兵及主計兵トス
前項ニ規定スル兵種ノ區分ハ現役兵及第一補充兵トシテ徵集スベキ者ニ付之ヲ行フ
兵役法第四十六條第二項又ハ同法第四十七條第一項ノ規定ニ依リ更ニ徵兵檢査ヲ爲シタル者ハ前年ニ於テ決定シタル兵種ニ之ヲ選定ス但シ陸軍大臣ノ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七十六條 抽籤ハ聯隊區徵兵署ニ於ケル事務終了後聯隊區抽籤徵兵署ニ於テ徵募區每ニ之ヲ行フ但シ第四十二條ノ市ノ徵募區及樺太ニ在リテハ聯隊區聯合抽籤徵兵署ニ於テ之ヲ行フ
兵役法第三十三條第一項ノ規定ニ依リ抽籤スル場合ニ於ケル兵種ハ前條第一項ニ規定スル區分ニ從フ
第七十七條 抽籤ハ第四十二條ノ市及樺太ヲ除キタル區域ニ在リテハ聯隊區徵兵官、第四十二條ノ市及樺太ニ在リテハ聯隊區聯合徵兵官列席シ抽籤總代人ヲシテ之ヲ爲サシム
支廳長ガ聯隊區徵兵官トシテ抽籤ニ列席シ難キトキハ地方長官ハ兵事官又ハ部下ノ他ノ官吏ヲシテ聯隊區徵兵官タル支廳長ノ代理トシテ抽籤ニ列席セシムルコトヲ得
徵兵官ハ聯隊區抽籤徵兵署又ハ聯隊區聯合抽籤徵兵署最寄ノ市町村ニ於ケル其ノ年身體檢査ヲ受ケタル者ニ就キ當該市町村長ヲシテ抽籤總代人ヲ選定セシム其ノ人員ハ適宜トス
地方長官ハ町村長ヲシテ抽籤ニ立會セシムルコトヲ得
抽籤ノ方法ニ關シテハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十八條 他ノ徵募區ニ寄留スル者ハ本人ノ願ニ依リ其ノ地ニ於テ身體檢査ヲ受クルコトヲ得
第七十九條 本籍所在ノ徵募區ノ爲設ケタル聯隊區徵兵署閉鎖後ニ於テ身體檢査ヲ要スル者アルトキハ他ノ徵募區ノ爲設ケタル聯隊區徵兵署ニ於テ身體檢査ヲ行フコトヲ得
徵兵檢査開始前又ハ師管ニ於ケル聯隊區徵兵署閉鎖後抽籤前ニ於テ身體檢査ヲ要スル者アルトキハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ身體檢査ヲ行フコトヲ得
第八十條 朝鮮若ハ臺灣ニ在留スル者ニシテ徵兵檢査ヲ受クベキ者又ハ關東州、支那、香港、澳門若ハ沿海州其ノ他當該地域ノ附近ニ在留スル者ニシテ徵集ヲ延期セラレザル者ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ本人ノ在留地附近ノ軍隊、地方廳又ハ領事館(總領事館ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ於テ身體檢査ヲ受クルコトヲ得
第八十一條 前條ノ身體檢査ハ第三章第三款、第百四條及第百五條ノ規定ニ拘ラズ陸軍佐官又ハ大尉一名ヲ檢査員トシ之ニ陸軍一、二、三等軍醫(已ムヲ得ザル場合ニ於テハ陸軍三等軍醫正)及陸軍下士又ハ同判任文官ヲ附屬シテ之ヲ行フ
陸軍大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ地方廳又ハ領事館ニ於テ執行スル身體檢査ニ關シテハ當該官廳ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ擔任セシムルコトヲ得
第一項ニ規定スル檢査員及屬員ノ任命及職務其ノ他檢査執行ニ關スル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第八十二條 身體檢査ノ結果ニ依ル第二補充兵役編入、徵集免除、兵役免除及徵收延期ノ處分ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本人ノ本籍所在ノ徵募區ヲ管轄スル聯隊區徵兵官之ヲ行フ身體檢査ヲ行フコトナク徵集免除、兵役免除又ハ徵集延期ノ處分ヲ爲ス場合ニ付亦同ジ
第八十三條 現役編入又ハ第一補充兵役編入ノ處分及抽籤ノ結果ニ依ル第二補充兵役編入ノ處分ハ抽籤終了ノ後第六十條ノ規定ニ依ル配賦ニ基キ本人ノ本籍所在ノ徵募區ヲ管轄スル聯隊區司令官之ヲ行フ
第八十四條 現役編入、補充兵役編入、徵集免除及兵役免除ノ處分ハ之ヲ徵兵終決處分トス
第八十五條 現役編入、補充兵役編入、兵役免除及徵集延期ノ處分ハ證書ヲ以テ之ヲ本人ニ通達ス
徵集免除ノ處分ハ便宜ノ方法ヲ以テ之ヲ本人ニ通達ス
第六款 現役兵入營
第八十六條 現役兵ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ入營セシム
第八十七條 兵役法第四十五條及同法第四十六條ノ規定ニ依ル入營延期ノ處分ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ聯隊區司令官之ヲ行フ
第八十八條 兵役法第四十七條ノ規定ニ依リ歸鄕セシムルノ處分ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ陸軍ニ在リテハ聯隊長又ハ之ト同等以上ノ權アル部隊ノ長、海軍ニ在リテハ海軍人事部長之ヲ行フ
第八十九條 兵役法第四十六條第二項但書又ハ同法第四十七條第二項ノ規定ハ輜重輸卒ニ限リ之ヲ適用ス
第九十條 聯隊區司令官ハ現役兵入營ノ際疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ常備兵役及後備兵役ニ堪ヘザル者ナルトキハ之ニ對シ徵集ヲ免除シ永久兵役ニ堪ヘザル者ナルトキハ之ニ對シ兵役ヲ免除ス但シ第七條ノ規定ニ依リ現役ヲ志願シタル者ニシテ之ニ該當スル者ニ付テハ陸軍大臣ハ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
第七款 現役兵補闕
第九十一條 現役兵死亡、疾病、犯罪其ノ他ノ事故ニ因リ闕員ヲ生ジタルトキハ入營期日迄ニ於ケル闕員及爾後三十一日(步兵ニ在リテハ二十日、補助看護卒ニ在リテハ十日)間ノ闕員ニ限リ其ノ徵募區ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徵集順序ニ從ヒ闕員ヲ補充ス但シ二期以上ニ分チ入營セシムル者ノ補闕ニ付テハ陸軍大臣ハ補闕期間又ハ補充員ニ關シ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
前項ニ規定スル闕員ノ補充ハ聯隊區司令官之ヲ行フ
第九十二條 臨時ニ現役兵多數ノ闕員ヲ生ジタル場合ニ於テハ前條ニ規定スル期間ニ拘ラズ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ闕員ヲ補充スルコトヲ得
第九十三條 第七條ノ規定ニ依リ陸軍現役兵ニ採用シタル者闕員ト爲リタル場合ニ於ケル第九十一條ノ規定ニ依ル補充ハ之ヲ採用シタル聯隊區內ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徵集順序ニ從ヒ之ヲ爲ス
第九十四條 現役兵ヲ第九十一條ノ規定ニ依リ其ノ徵募區ヨリ補充スルコト能ハザルトキハ其ノ聯隊區內ノ他ノ徵募區ヨリ、第九十一條及前條ノ規定ニ依リ其ノ聯隊區ヨリ補充スルコト能ハザルトキハ其ノ師管內ノ他ノ聯隊區ヨリ、其ノ師管ヨリ補充スルコト能ハザルトキハ他ノ師管ヨリ闕員ヲ補充スルコトヲ得其ノ補充ハ徵集順序ニ依ル
第九十五條 前二條ノ規定ニ依ル補充員ノ配賦ハ各徵募區、各聯隊區又ハ各師管ニ於ケル同兵種ノ補充兵ノ總數ニ比例シテ之ヲ定ム
前項ニ規定スル補充員ノ配賦ハ師管ニ對シテハ陸軍大臣、聯隊區ニ對シテハ師團長、徵募區ニ對シテハ聯隊區司令官之ヲ行フ
第八款 徵集延期
第九十六條 兵役法第四十條第一項ノ規定ニ依ル徵集延期ハ軍事救護法ニ依リ救護シ得ベキ見込アル者ニ對シテハ之ヲ行ハズ
第九十七條 聯隊區徵兵官ノ爲シタル兵役法第四十條ニ規定スル徵集延期ニ關スル處分ニ不服アルトキハ本人又ハ其ノ家族ヨリ師管徵兵官ニ訴願スルコトヲ得其ノ訴願ノ裁決ニ不服アルトキハ總理徵兵官ニ訴願スルコトヲ得但シ訴願ハ徵集處分ノ執行ヲ停止セズ
訴願書ハ處分ヲ受ケ又ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ發スベシ
第九十八條 前條ノ訴願書ハ徵集延期ニ關スル處分又ハ裁決ヲ爲シタル徵兵官ヲ經由シテ之ヲ差出スベシ
前項ノ徵兵官訴願書ヲ受ケタルトキハ前ノ處分又ハ裁決ニ關スル書類ヲ添ヘ上級ノ徵兵官ニ差出スベシ
第九十九條 現役編入ノ處分アリタル後入營期日迄ニ兵役法第四十條第一項ニ規定延スル事故生ジタル場合ニ於テ爲ス徵集期ノ處分ハ聯隊區司令官之ヲ行フ
第百條 左ニ揭グルモノハ兵役法第四十一條第一項ノ規定ニ依ル中學校ノ學科程度ト同等以上ト認ムル學校トス但シ硏究科、選科等ノ別科ヲ除ク
一 師範學校、實業學校(尋常小學校卒業ヲ入學程度トスル修業年限五年又ハ之ト同等以上ノモノニ限ル)、高等學校、大學令ニ依ル大學豫科、專門學校、高等師範學校、大學令ニ依ル大學學部、臨時敎員養成所、實業學校敎員養成所及實業補習學校敎員養成所
二 宮內大臣、文部大臣以外ノ各省大臣、朝鮮總督、臺灣總督、關東長官又ハ樺太廳長官ノ所轄學校ニシテ前號ニ揭グル學校ニ準ズルモノ
三 前二號ニ揭グル以外ノ學校ニシテ陸軍大臣及文部大臣ニ於テ認定ヲ爲シタルモノ
第百一條 兵役法第四十一條第一項ノ規定ニ依リ學校ニ在學スル者ニ付徵集ヲ延期シ得ベキ最高年齡左ノ如シ
【表】
前條第二號又ハ第三號ニ該當スル學校ニ在學スル者ニ付徵集ヲ延期シ得ベキ最高年齡ハ其ノ入學資格及修業年限ニ應ジ前項ノ規定ニ準ジ陸軍大臣之ヲ定ム
第百二條 兵役法第四十二條第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セザルモノトシテ除外スベキ者左ノ如シ
一 關東州又ハ南滿洲鐵道附屬地ニ在ル者但シ陸軍大臣ノ定ムル徵集延期願出ノ期日ニ於テ當該地域其ノ他帝國外ノ地ニ引續キ在留スル期間三年ヲ超ユル者ヲ除ク
二 徵兵檢査ヲ受ケ現役兵ト爲ルベキ順位ニ在ル者
三 第百三條第一號ニ揭グル地域(關東州及南滿洲鐵道附屬地ヲ除ク)ニ在ル者ニシテ陸軍大臣ノ定ムル徵集延期願出ノ期日ニ於テ其ノ在留スル期間一年ニ滿チザル者
四 第百三條各號ニ揭グル地域(關東州及南滿洲鐵道附屬地ヲ除ク)ヨリ一時關東州又ハ南滿洲鐵道附屬地ニ到リ其ノ地域ニ滯在スル者但シ兵役法第四十三條第一項ニ規定スル事由ニ因リ九十日以內當該地域ニ滯在スル者又ハ同法第四十三條第二項ノ規定ニ依ル帝國內ノ滯在ヲ通ジ一年間一囘ヲ限リ第百三條各號ニ規定スル區分ニ應ジ當該地域ニ滯在スル者ヲ除ク
五 短期現役兵トシテ服役スベキ者ニシテ第百三條第一號ニ揭グル地域ニ在ル者
第百三條 兵役法第四十三條第二項ノ規定ニ依ル滯在期間左ノ如シ
一 關東州、奉天省、吉林省、直隸省、山東省、江蘇省、浙江省、安徽省、福建省、廣東省、廣西省、香港、澳門又ハ沿海州ニ在留スル者ニシテ徵集延期中ノ者 三十日
二 「サガレン」州、「ザバイカル」州以東「シベリア」(沿海州ヲ除ク)、黑龍江省、內蒙古、山西省、河南省、湖北省、湖南省又ハ江西省ニ在留スル者ニシテ徵集延期中ノ者 六十日
三 其ノ他ノ地方ニ在留スル者ニシテ徵集延期中ノ者 九十日
第九款 短期現役兵ニ關スル特例
第百四條 短期現役兵徵集ノ爲ノ聯隊區徵兵官ハ聯隊區內道府縣每ニ聯隊區司令官及兵事官(北海道廳及樺太廳ニ在リテハ之ニ相當スル者)ヲ以テ之ニ充テ聯隊區司令官ヲ首座トシ當該事務ヲ執行ス
第百五條 短期現役兵ノ身體檢査ニ付テハ聯隊區徵兵副醫官ヲ置カザルコトヲ得
第百六條 短期現役兵徵集ノ事務ヲ行フベキ聯隊區徵兵署ハ第六十一條ノ規定ニ拘ラズ便宜ノ地ニ之ヲ設ク
前項ノ聯隊區徵兵署ハ地方長官之ヲ設備ス
第百七條 短期現役兵トシテ服役スベキ者ニ對スル徵兵檢査ハ徵兵適齡又ハ其ノ後ニ於テ師範學校ヲ卒業スル者ニ對シテハ卒業ノ年又ハ其ノ翌年ニ於テ、徵兵適齡前ニ於テ師範學校ヲ卒業シタル者ニ對シテハ徵兵適齡ノ年ニ於テ之ヲ行フ但シ師範學校卒業後引續キ兵役法第四十一條第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラルル者ニ對シテハ其ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ之ヲ行フ
前項ニ規定スル徵兵檢査ノ時期、短期現役兵トシテ服役スベキ者ノ調査及徵兵檢査通達書ノ交付ニ關シテハ陸軍大臣之ヲ定ム
第百八條 短期現役兵トシテ服役スベキ者ニシテ朝鮮、臺灣、樺太又ハ第百三條第一號ニ揭グル地域ニ在ル者ノ調査ハ朝鮮總督府道知事、臺灣總督府總務長官、關東廳內務局長、樺太廳長官又ハ領事官(明治三十二年法律第七十號第十九條ニ規定スル領事官ヲ謂フ以下之ニ同ジ)ヲシテ之ヲ爲サシムルコトヲ得
第十款 樺太ニ關スル特例
第百九條 樺太ニ於ケル徵兵事務ニ關シテハ總理徵兵官ハ內閣總理大臣及陸軍大臣ヲ以テ之ニ充ツ
第百十條 樺太ニ於ケル徵兵事務ニ關シテハ本章中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外地方長官トアルハ樺太廳長官、道府縣トアルハ樺太トス
第百十一條 沿海州又ハ「サガレン」州ニ在留スル者ニシテ徵集ヲ延期セラレザル者ハ第八十條ノ規定ニ依ルノ外本人ノ願ニ依リ樺太ニ於ケル聯隊區徵兵署ニ於テ身體檢査ヲ受クルコトヲ得
第四章 召集
第百十二條 陸軍ノ召集及簡閱點呼ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外召集及簡閱點呼ヲ受クベキ者ノ本籍地所管ノ師團長之ヲ掌ル
海軍ノ召集及簡閱點呼ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外在籍鎭守府司令長官之ヲ掌ル
第百十三條 召集及簡閱點呼ハ令狀ヲ以テ之ヲ本人ニ通達ス但シ必要アル場合ニ於テハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ他ノ方法ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第百十四條 兵役法第五十四條ノ規定ニ依ル召集ハ陸軍ニ在リテハ動員令、海軍ニ在リテハ充員令ニ依リ之ヲ實施ス但シ必要アル場合ニ於テハ之ニ依ラザルコトヲ得
前項ニ規定スル召集ノ解除ハ陸軍ニ在リテハ復員令、海軍ニ在リテハ解員令ニ依リ之ヲ實施ス但シ必要アル場合ニ於テハ之ニ依ラザルコトヲ得
第百十五條 兵役法第五十四條ノ規定ニ依ル陸軍ノ召集要員ノ配當及其ノ他必要ナル準備ハ師管內ニ於テハ當該師團長、聯隊區內ニ於テハ聯隊區司令官之ヲ行フ
前項ノ規定ニ依ル配當ニ基キ召集スベキ者ハ第四項ニ規定スル場合ヲ除クノ外前項ノ配當ニ基キ聯隊區司令官之ヲ定ム
兵役法第五十四條ノ規定ニ依リ海軍ニ於テ召集スベキ者ハ鎭守府司令長官ノ達ニ依リ海軍人事部長之ヲ定ム
陸軍ニ於ケル國民兵ノ召集ハ師團長ノ行フ配當其ノ他必要ナル達ニ基キ聯隊區司令官之ヲ聯隊區內ノ市町村ニ配當シ市町村長ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ召集スベキ者ヲ定ム
第百十六條 兵役法第五十四條ノ規定ニ依ル召集ノ事務ニ關シ職責アル者ハ本令及主務大臣ノ定ムル所ニ依リ平時之ニ關シ遺漏ナク計畫準備シ召集實施ニ當リ支障ナカラシムルコトヲ要ス
第百十七條 兵役法第五十五條ノ規定ニ依ル召集ハ主務大臣ノ命ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ師團長又ハ鎭守府司令長官之ヲ行フ
第百十八條 左ニ揭グル者ハ時機切迫シ命ヲ請フ遑ナキトキハ獨斷ヲ以テ兵役法第五十四條又ハ同法第五十五條ノ規定ニ依ル召集ヲ專行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事實ヲ具シ速ニ主務大臣ニ報告スベシ
一 陸軍ニ在リテハ軍司令官、師團長、旅團長、守備隊司令官、聯隊長(獨立隊長ヲ含ム)若ハ之ト同等以上ノ權アル軍隊指揮官、要塞司令官又ハ分遣隊長
二 海軍ニ在リテハ艦隊司令長官、艦隊司令官、鎭守府司令長官、要港部司令官、特命司令官又ハ分遣艦船部隊指揮官
前項ノ場合ニ於テハ同項第一號及第二號ニ揭グル者ハ召集ニ關シ師團長又ハ鎭守府司令長官ト同一ノ職權ヲ有ス
第百十九條 兵役法第五十六條又ハ同法第五十八條ノ規定ニ依ル召集ハ主務大臣ノ定ムル所ニ基キ師團長又ハ鎭守府司令長官其ノ期日、人員、部隊及日數ヲ定ム
第百十五條ノ規定ハ前項ノ召集ニ之ヲ準用ス
第百二十條 兵役法第五十七條ノ規定ニ依ル召集ハ陸軍ニ限リ之ヲ行フ其ノ期日、人員、部隊及日數ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ基キ師團長之ヲ定ム
兵役法第五十七條ノ規定ニ依リ召集スベキ人員ハ陸軍大臣ノ達ニ基キ師團長之ヲ聯隊區ニ配當シ聯隊區司令官ハ補充兵ノ總數ヲ基準トシテ之ヲ徵募區ニ配當シ補充兵ノ徵集順序ニ從ヒ召集ス
第百十五條ノ規定ハ前二項ノ召集ニ之ヲ準用ス
第百二十一條 兵役法第五十六條乃至第五十八條ノ規定ニ依ル陸軍ノ召集ハ召集ヲ受クベキ者ノ本籍所在ノ師管內ノ部隊トス但シ必要アル場合ニ於テハ他ノ師管內ニ在ル部隊ニ之ヲ召集スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ當該師管ヲ管轄スル師團長之ガ召集ヲ掌ル
第百二十二條 簡閱點呼ハ之ヲ受クル者ノ本籍所在ノ師管又ハ鎭守府管區ニ於テ之ヲ行フ但シ必要アル場合ニ於テハ他ノ師管又ハ鎭守府管區ニ於テ之ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ當該師管又ハ鎭守府管區ヲ管轄スル師團長又ハ鎭守府司令長官之ガ簡閱點呼ヲ掌ル
第百二十三條 主務大臣ハ簡閱點呼ノ執行ヲ要セズト認メタル場合ニ於テハ其ノ執行ヲ爲サザルコトヲ得
第百二十四條 僻陬ノ地ニ於テ簡閱點呼ニ參會スベキ者僅少ナルトキ其ノ他已ムヲ得ザル場合ニ於テハ師團長又ハ鎭守府司令長官ハ簡閱點呼ヲ省略スルコトヲ得
第百二十五條 師團長ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ基キ陸軍ノ簡閱點呼ノ時期及人員ヲ定メ之ヲ聯隊區司令官ニ達シ且部下ノ將校ニ簡閱點呼執行官ヲ命ズベシ但シ師團長ハ部下ニ非ザル將校ニ當該將校ノ在職スル部隊ノ長ト協議シ簡閱點呼執行官ヲ命ズルコトヲ得
鎭守府司令長官ハ海軍ノ簡閱點呼ノ時期及人員ヲ定メ部下ノ兵科將校ニ簡閱點呼執行官ヲ命ズベシ
第百二十六條 陸軍ノ簡閱點呼ノ場所、區域及日割ハ聯隊區司令官之ヲ定メ海軍ノ簡閱點呼ノ場所、區域及日割ハ海軍人事部長之ヲ定メ師團長又ハ鎭守府司令長官ノ認可ヲ受クベシ
第百二十七條 兵役法第六十一條第一號ニ揭グル者ノ勤務演習召集又ハ簡閱點呼ノ免除ニ付テハ當該官廳豫メ其ノ者ノ本籍地、寄留地、役種、兵種、徵集年、豫備役後備兵役編入年、官等級氏名及理由ヲ具シ內閣總理大臣ノ認可ヲ受クベシ但シ內閣總理大臣ノ指定シタル者ハ其ノ認可ヲ受ケタル者ト看做ス
關東州又ハ滿洲ニ旅行又ハ在留スル者ニ對シテハ勤務演習召集又ハ簡閱點呼ヲ免除セズ
前二項ノ規定ニ該當スル者ヲ除クノ外兵役法第六十一條ノ規定ニ依ル勤務演習召集又ハ簡閱點呼ノ免除ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ聯隊區司令官又ハ海軍人事部長之ヲ爲ス
第百二十八條 師團長及鎭守府司令長官ハ定期又ハ臨時ニ地方行政廳ノ召集事務(簡閱點呼ノ事務ヲ含ム以下之ニ同ジ)ヲ檢閱シ又ハ部下ノ將校(海軍ニ在リテハ兵科將校)ヲシテ之ヲ檢閱セシムベシ
地方長官、憲兵司令官及憲兵隊長ハ其ノ所部ノ召集事務ヲ檢閱シ又ハ部下ノ官吏ヲシテ之ヲ檢閱セシムベシ
第百二十九條 地方長官ハ動員令又ハ充員令其ノ他召集ニ關スル通知ヲ受ケタルトキハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ召集ニ關係アル管下ノ官公署ノ長ニ之ヲ通知シ且召集ニ關シ必要ナル協力ヲ爲スベシ
第百三十條 召集事務ヲ管掌スル警察署長及支廳長ハ聯隊區司令官又ハ海軍人事部長ヨリ送付ヲ受ケタル召集令狀又ハ簡閱點呼令狀ヲ整備シ召集又ハ簡閱點呼ノ實施ニ當リ遺漏ナク關係ノ町村長ニ送付スベキ責ニ任ズ
前項ノ規定ハ市長ニ之ヲ準用ス
第百三十一條 市町村長ハ召集又ハ簡閱點呼ヲ受クベキ者ノ所在ヲ明ニシ召集令狀若ハ簡閱點呼令狀ヲ本人ニ交付シ又ハ其ノ命ヲ本人ニ傳達スベキ責ニ任ズ
第百三十二條 召集事務ニ關シ師團長又ハ鎭守府司令長官ノ定メタル規定ハ地方長官、憲兵隊長及其ノ所部ノ官吏公吏之ヲ遵行スベシ
地方長官ハ前項ノ規定ニ依ルノ外兵役法第五十四條ニ規定スル召集ノ準備又ハ實施ニ關シ師團長又ハ鎭守府司令長官ヨリ臨時要求ヲ受ケタルトキハ之ニ應ジ又ハ自ラ召集ヲ容易ナラシムルノ措置ヲ爲スベシ
第百三十三條 本章中地方長官ニ關スル規定ハ東京府ニ在リテハ警視總監ニモ之ヲ適用シ樺太ニ在リテハ樺太廳長官ニ之ヲ適用ス
第四十二條ノ規定ハ召集事務ニ之ヲ準用ス
第百三十四條 陸軍大臣ハ朝鮮、臺灣、關東州又ハ滿洲ニ於テ行フベキ召集及簡閱點呼ニ關シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百三十五條 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外召集及簡閱點呼ニ關シ必要ナル事項ハ主務大臣之ヲ定ム
第五章 雜則
第百三十六條 兵役法第六十六條第一項ノ規定ニ依リ更ニ徵兵檢査ヲ受クベキ者ハ左ニ揭グル期間ヲ通算シテ二年ニ滿チザル者トス但シ兵役ヲ免除セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一 現役ニ服シタル期間
二 兵籍ニ編入セラレタル陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ學生生徒トシテ爲シタル隊附期間又ハ練習ノ爲海軍ノ艦船ニ乘組ミタル期間
三 召集セラレタル期間
第百三十七條 前條ノ規定ニ該當スル者更ニ現役ニ服スルニ至リタルトキハ前條ニ揭グル期間ヲ通算シテ服役セシム
第百三十八條 短期現役兵トシテ現役ヲ終リ第一國民兵役ニ在ル者ニシテ兵役法第六十七條ノ規定ニ依リ更ニ徵兵檢査ヲ受クベキ者ハ其ノ事由發生ノ日ヲ以テ別ニ辭令ヲ用ヒズ兵科官等級ヲ免ゼラレタルモノトス
第百三十九條 兵役法第七十三條ノ規定ニ依ル指定ハ關東州及南滿洲鐵道附屬地ニ在リテハ陸軍大臣ハ文部大臣及關東長官ト協議シ其ノ他ノ地ニ在リテハ陸軍大臣ハ外務大臣及文部大臣ト協議シテ之ヲ告示ス
第百四十條 兵役法ノ定ムル所ニ依リ更ニ徵兵檢査ヲ受クベキ者ニ對シ前ニ爲シタル兵役ノ處分ハ本令中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外其ノ事由發生ノ日ヲ以テ其ノ效力ヲ失フ
第百四十一條 總理徵兵官又ハ師管徵兵官ハ下級徵兵官ノ處分ガ違法又ハ不當ナリト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ取消シタル上更ニ處分ヲ命ズベシ但シ師管徵兵官ハ總理徵兵官ノ認可ヲ受クベシ
聯隊區徵兵官其ノ爲シタル處分ガ違法又ハ不當ナルコトヲ發見シタル場合ニ於テ之ヲ取消シ又ハ取消シタル上更ニ處分ヲ爲スニハ陸軍大臣ノ定ムル場合ヲ除クノ外總理徵兵官ノ認可ヲ受クベシ
聯隊區司令官ノ爲シタル處分ヲ取消シ又ハ取消シタル上更ニ處分ヲ爲スコトヲ要スルモノアルトキハ前二項ノ規定ニ準ジ陸軍大臣ノ認可ヲ受クベシ
第百四十二條 徵兵官又ハ聯隊區司令官ノ爲シタル處分ニ對シテハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ズ
第百四十三條 朝鮮、臺灣、關東州又ハ滿洲ニ在ル陸軍軍人ノ服役及召集ニ關シテハ陸軍大臣ハ朝鮮ニ在リテハ道知事府尹郡守島司及警察署長、臺灣ニ在リテハ州知事廳長郡守市尹警察署長及支署長、關東州ニ在リテハ民政署長民政支署長及警察署長、滿洲ニ在リテハ警察署長及領事官ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ擔任セシムルコトヲ得
帝國外ノ地ニ在ル者ノ徵集延期ニ關シテハ陸軍大臣ハ關東州及南滿洲鐵道附屬地ニ在リテハ民政署長及警察署長、南洋群島ニ在リテハ南洋廳支廳長、其ノ他ノ地ニ在リテハ大使公使及領事官ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ擔任セシムルコトヲ得
町村ガ二以上ノ警察署ノ管轄區域ニ涉ルトキハ當該町村ニ於ケル召集事務ハ其ノ町村役場ノ所在地ヲ管轄スル警察署長之ヲ行フ
警察署ノ管轄區域ノ變更アリタル場合ニ於テハ當該區域內ノ召集事務ハ師團長又ハ鎭守府司令長官ノ指定スル警察署長ヲシテ一時之ヲ行ハシムルコトヲ得
第百四十四條 徵兵署ノ諸費、徵兵檢査ヲ受クル者及抽籤總代人ノ旅費竝ニ現役兵入營ノ旅費ハ之ヲ官給トシ第七條ノ規定ニ依リ現役ヲ志願スル者ノ身體檢査ヲ受クル爲ノ旅費ハ之ヲ自辨トス
疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ監視又ハ保護ヲ要スル者ニ徵兵檢査ヲ受ケシメ又ハ之ヲ入營セシムル爲附添人ヲ同行セシメタルトキハ當該附添人ノ旅費ハ之ヲ官給トス
第百四十五條 徵兵事務終ルトキハ管內徵兵事務ノ狀況ヲ聯隊區司令官ハ師團長ニ、師團長ハ陸軍大臣ニ報告シ陸軍大臣ハ全國徵兵事務ノ狀況ヲ上奏スベシ
附 則
本令ハ昭和二年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廢止ス
徵兵事務條例
一年志願兵條例
一年現役兵條例
一年志願兵及一年現役兵服役特例
陸軍召集令
海軍召集令
明治三十九年勅令第三百十八號
明治四十一年勅令第九十三號
大正八年勅令第二十一號
大正十五年勅令第二百四十八號
朕兵役法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年十一月三十日
内閣総理大臣兼外務大臣 男爵 田中義一
海軍大臣 岡田啓介
陸軍大臣 白川義則
内務大臣 鈴木喜三郎
文部大臣 水野錬太郎
勅令第三百三十号
兵役法施行令
目次
第一章
志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役関係
第一款
武官及武官ノ候補者
第二款
志願ニ依ル兵卒及其ノ候補者
第二章
服役
第一款
通則
第二款
短期現役兵
第三款
在営期間ノ短縮
第四款
服役延期
第五款
特殊ノ転役及免役
第六款
服役期間ノ計算
第三章
徴集
第一款
通則
第二款
徴兵区
第三款
徴兵官
第四款
兵員配賦
第五款
徴兵検査
第六款
現役兵入営
第七款
現役兵補闕
第八款
徴集延期
第九款
短期現役兵ニ関スル特例
第十款
樺太ニ関スル特例
第四章
召集
第五章
雑則
附 則
兵役法施行令
第一章 志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役関係
第一款 武官及武官ノ候補者
第一条 武官及海軍各科少尉候補生ノ兵役ニ関シテハ本款ニ規定スルモノノ外別ニ定ムル所ニ依ル
第二条 武官ト為ルベキ陸軍ノ諸生徒(幹部候補生ヲ除ク)又ハ海軍ノ学生生徒トシテ兵籍ニ編入セラレ居ル者ノ兵役上ノ身分取扱ハ現役ニ準ズ
第三条 幹部候補生ノ兵役上ノ身分取扱ニ付テハ陸軍補充令ニ規定スル修業期間ハ現役トシ爾後其ノ任官ニ至ル迄ノ期間ハ予備役トス
第四条 兵役法第二十一条第一項但書及之ニ基ク本令ノ規定ハ武官ノ候補者ノ兵役上ノ身分取扱ニ之ヲ準用ス
兵役法第五十四条乃至第五十六条、同法第五十九条乃至第六十三条及之ニ基ク本令ノ規定ハ幹部候補生ニシテ予備役ニ在ル者ノ召集ニ之ヲ準用ス
第五条 武官又ハ武官ノ候補者ニシテ徴兵検査ヲ受クル前ヨリ志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレ居ル者ニ対シテハ兵籍ニ在ル間徴兵検査ヲ行フコトナシ
前項ノ規定ニ該当スル者ニシテ現役ニ服シタル期間、隊附ノ期間、練習ノ為海軍ノ艦船ニ乗組ミタル期間又ハ召集セラレタル期間ヲ通算シテ二年以上ノ者ハ其ノ期間二年ニ満ツル日ヲ以テ徴兵終決処分ヲ経タル者ト看做ス
第六条 第二条ノ規定ニ該当スル者戦時又ハ事変ニ際スルトキハ之ヲ現役ノ実役ニ就カシムルコトヲ得幹部候補生ニ付亦同ジ
第二款 志願ニ依ル兵卒及其ノ候補者
第七条 現役兵ハ年齢十七年以上徴兵適齢未満ノ者ニシテ現役兵トシテ陸軍ニ在リテハ二年、海軍ニ在リテハ三年在営スルコトヲ志願スル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ現役兵ニ充ツル者ノ資格ハ兵役法及本令ノ定ムル所ニ依リ現役兵トシテ徴集セラルル者ノ資格ニ同ジ
輜重輸卒又ハ補助看護卒ハ志願ニ依リ之ヲ採用スルコトナシ
第一項ニ規定スル年齢ハ志願ノ年ノ十二月一日ニ於ケル年齢トス
第八条 前条第一項ノ規定ニ依リ現役兵タランコトヲ志願シタル者ノ採否ハ陸軍兵ニ付テハ連隊区司令官、海軍兵ニ付テハ海軍人事部長之ヲ決ス但シ海軍ニ採用スベキ人員ハ海軍大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
前条第一項ノ規定ニ依リ陸軍兵ニ採用シタル者ハ之ヲ採用シタル連隊区ノ其ノ年ニ於ケル現役兵ノ配賦要員ニ充ツ
第九条 第七条第一項ノ規定ニ依リ採用セラレタル者ノ兵役ニ関シテハ兵役法ノ定ムル所ニ依リ現役兵トシテ徴集セラレタル者ノ兵役ニ同ジ
第十条 海軍志願兵令ノ定ムル所ニ依リ採用セラレタル者ノ兵役ニ関シテハ同令ノ定ムル所ニ依ル
志願ニ依リ兵卒ト為ル者ニシテ本令ニ規定セザル者ノ兵役ニ関シテハ別ニ定ムル所ニ依ル
第十一条 憲兵上等兵及楽手補ノ服スベキ兵役ハ現役、予備役及後備兵役トシ現役ヲ終リタル者ハ予備役ニ、予備役ヲ終リタル者ハ後備兵役ニ服セシム
前項ノ規定ニ依リ服役スル者ニシテ年齢四十年ニ満ツル前ニ於テ後備兵役ヲ終リタル者ハ第一国民兵役ニ服セシム
第十二条 憲兵上等兵及楽手補ノ服役期間左ノ如シ
一 現役 憲兵上等兵ニ在リテハ前服役期間ヲ通算シ四年トシ楽手補ニ在リテハ之ヲ命ゼラレタル年ノ十二月一日ヨリ起算シテ五年トス
二 予備役 現役ノ期間ヲ通算シテ七年四月ニ満ツル日迄トス
三 後備兵役 前服役ヲ通算シテ十七年四月ニ満ツル日迄トス
戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項第一号ニ規定スル起算ノ日ヲ変更スルコトヲ得
第一項ニ規定スル現役ノ期間ハ本人ノ願ニ依リ之ヲ延長スルコトヲ得
憲兵上等兵又ハ楽手補トシテ二年以上現役ニ在ル者成績不良ナルトキハ之ヲ現役満期ト為スコトヲ得
第十三条 現役ノ憲兵上等兵及楽手補ハ之ヲ営外ニ居住セシムルヲ例トス
第十四条 兵卒(現役兵又ハ補充兵ニ決定シタル者ヲ含ム)ニシテ武官又ハ陸軍ノ諸生徒若ハ海軍ノ学生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者ハ当該兵籍ニ編入セラレタル日ヲ以テ兵卒ノ身分及服役ヲ免ズ
第十五条 前条ノ規定ニ該当スル者武官又ハ陸軍ノ諸生徒若ハ海軍ノ学生生徒ヲ免ゼラレタルトキハ前ニ免ゼラレタル兵卒ノ身分ニ復シ兵役法第五条乃至第九条又ハ本令第九条乃至第十二条ノ規定ニ従ヒ前ノ服役ヲ継続セシム但シ兵役法第二十一条及本令第十八条又ハ第三十八条ノ規定ニ依リ転役スル者又ハ兵役ヲ免ゼラルル者ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ハ陸軍武官服役令又ハ海軍武官服役令ノ定ムル所ニ依リ兵卒ト為リタル者ニ之ヲ準用ス
第百三十六条各号ニ掲グル期間ハ前二項ノ規定ニ依リ服役ヲ継続スル者ノ服役期間ニ之ヲ通算ス
第十六条 兵役法又ハ本令第七条第一項ノ規定ニ依リ徴集又ハ採用セラレタル海軍兵ニシテ海軍志願兵令ノ定ムル兵籍ニ編入セラレタル者ハ当該兵籍ニ編入ノ日ヲ以テ其ノ服役ヲ免ジ海軍志願兵令ノ定ムル所ニ依リ服役セシム
第十七条 陸軍現役兵ニシテ下士又ハ憲兵上等兵タランコトヲ志願シタル者ハ之ニ任用又ハ採用シ得ベキ見込アル者ニ限リ本人ノ願ニ依リ二年ヲ限リ現役期間ヲ延長シ之ヲ在営セシムルコトヲ得
第十八条 兵役法第十二条、第十六条、第十八条乃至第二十二条、第五十四条乃至第五十六条、第五十九条乃至第六十三条又ハ同法第六十五条第二項及之ニ基ク本令ノ規定ハ憲兵上等兵、楽手補及第十五条ニ規定スル兵卒ノ身分ニ復シタル者又ハ兵卒ト為リタル者ノ服役及召集ニ之ヲ準用ス
第二十四条ノ規定ハ前項ニ掲グル兵卒ノ身分取扱ニ之ヲ準用ス但シ原兵科ナキトキハ主務大臣臨時其ノ者ノ属スベキ兵科ヲ定ム
第十九条 年齢四十年ヲ過ギ志願ニ依リ国民軍ニ編入セラレタル兵卒ハ当該期間第一国民兵役ニ在ル者ト看做ス
第二十条 第二条、第四条第一項、第五条及第六条ノ規定ハ兵卒ノ候補者トシテ兵籍ニ編入セラレタル諸生徒ニ之ヲ準用ス
第二章 服役
第一款 通則
第二十一条 陸軍ノ現役兵(帰休兵ヲ除ク)ハ之ヲ所属部隊ノ兵籍ニ編入ス
陸軍ノ帰休兵、予備兵及後備兵並ニ補充兵ハ之ヲ本籍所在ノ連隊区ノ兵籍ニ編入シ当該連隊区司令官ノ管轄ニ属セシム
海軍ノ現役兵、予備兵及後備兵ハ其ノ本籍地ヲ管轄スル鎮守府ノ兵籍ニ編入ス但シ現役兵ニ付テハ海軍大臣ハ必要ニ応ジ其ノ兵籍ノ所在ヲ変更スルコトヲ得
第二十二条 兵役法第六条乃至第八条及同法第九条第一項ノ規定ニ依リ一ノ兵役ヲ終リ他ノ兵役ニ就ク場合ニ於テハ別ニ辞令ヲ用ヒズ一ノ兵役ヲ終リタル日ノ翌日ヲ以テ他ノ兵役ニ服スルモノトス
前項ノ規定ハ兵役法第九条第二項ノ規定ニ基キ兵役ニ就キ又ハ之ヲ去ル場合及同法第十八条ノ規定ニ基キ兵役ヲ去ル場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条 現役兵トシテ入営スベキ者入営スルニ至リタルトキハ別ニ辞令ヲ用ヒズ其ノ日ヲ以テ陸軍ニ在リテハ兵科部ノ区分ニ従ヒ第三級ノ兵卒、海軍ニ在リテハ科ノ区分ニ従ヒ四等兵ヲ命ゼラレタルモノトス其ノ入営シタル後ニ於ケル進級ニ関シテハ本令中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外主務大臣之ヲ定ム
前項ノ規定ハ召集セラレタル補充兵ニ之ヲ準用ス
第二十四条 上等兵又ハ之ト同等級ノ陸軍兵卒ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ之ヲ当該兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等級ノ兵卒ト為ス但シ当該兵科部ニ一等卒又ハ之ト同等ノ階級ナキトキハ原兵科ノ一等卒ト為ス
一 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者但シ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未満ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ヲ除ク
二 陸軍懲罰令ニ依リ降等セラレタル者
三 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シタルニ因リ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ見込ナキニ因リ陸軍ノ諸生徒ヲ免ゼラレタル者ニシテ第十五条ノ規定ニ依リ兵卒ノ身分ニ復シタル者
第二款 短期現役兵
第二十五条 短期現役兵ハ軍事上ノ必要ニ依リ陸軍又ハ海軍ニ於テ服役セシム但シ本人ノ希望ヲ参酌スルコトヲ得
兵役法第十条第一項但書ノ規定ニ該当スル者ハ之ヲ海軍ニ於テ服役セシムルコトナシ
第二十六条 短期現役兵ノ服役スベキ部隊ニ関シテハ主務大臣之ヲ定ム
第二十七条 短期現役兵ハ之ヲ陸軍ニ在リテハ歩兵科、海軍ニ在リテハ兵科ニ属セシム
第二十八条 短期現役兵ハ陸軍ニ在リテハ入営後概ネ二月ノ後之ニ一等卒ヲ、概ネ四月ノ後之ニ上等兵ヲ命ジ現役満期ノ際之ヲ伍長ニ任ジ海軍ニ在リテハ入営後概ネ一月半ノ後之ニ三等水兵ヲ、概ネ三月ノ後之ニ二等水兵ヲ、概ネ四月半ノ後之ニ一等水兵ヲ命ジ現役満期ノ際之ヲ三等兵曹ニ任ズ
兵役法第十条第一項但書ノ規定ニ該当スル者ハ前項ノ規定ニ拘ラズ入営後概ネ四月ノ後之ニ一等卒ヲ、概ネ六月ノ後之ニ上等兵ヲ命ジ現役満期ノ際之ヲ伍長ニ任ズ
前二項ノ規定ニ依ル進級及任官ハ陸軍ニ在リテハ連隊長、海軍ニ在リテハ進級ハ所轄長、任官ハ鎮守府司令長官之ヲ行フ
短期現役兵ニシテ在営間其ノ成績不良ナル者ハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル進級ノ一部若ハ全部又ハ任官ヲ為サシムルコトナシ
第二十九条 短期現役兵ニシテ兵役法第六十七条第二項ノ規定ニ該当スル者アルトキハ其ノ等級ヲ免ジ短期現役兵ノ兵籍ヨリ之ヲ除クベシ
前条第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ行フ処分ニ之ヲ準用ス
第三十条 短期現役兵其ノ現役中現役ニ堪ヘザルニ至リタルトキハ現役ヲ免除シ第一国民兵役ニ服セシム兵役法第二十条ノ規定ニ依リ現役ヲ免除セラレタル者小学校ノ教職ニ就クノ資格ヲ有スル者ナルトキ亦同ジ
第三十八条第三項ノ規定ハ短期現役兵ノ現役免除、転役及兵役免除ノ処分ニ之ヲ準用ス
第三款 在営期間ノ短縮
第三十一条 兵役法第十一条ノ規定ニ依ル在営期間ノ短縮ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ノ定ムル検定ニ合格シタル者ニ付之ヲ行フ其ノ短縮スベキ期間ハ歩兵科ノ兵卒(戦車兵ヲ除ク)ニ在リテハ六月、其ノ他ノ陸軍兵(第三十三条ニ掲グル兵種ヲ除ク)及海軍兵ニ在リテハ当該兵種ノ本務ニ応ジ六十日以内トス
前項ノ検定ニ合格シタル者ト雖モ在営間其ノ成績不良ナルトキハ其ノ者ニ付前項ノ規定ニ依ル短縮ヲ行ハズ
兵役法第十一条第二項ノ規定ニ依ル認定ハ陸軍大臣及文部大臣之ヲ為ス
第三十二条 兵役法第十二条ノ規定ニ依ル在営期間ノ短縮ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ付主務大臣ニ於テ軍事上妨ゲナシト認ムルトキニ限リ之ヲ行フ其ノ短縮スベキ期間ハ概ネ四十日トス
一 青年訓練所ノ訓練又ハ陸軍大臣及文部大臣ニ於テ之ト同等以上ト認定シタル訓練ヲ修了セザル者
二 前号ノ訓練ヲ修了シタル者ニシテ前条第一項ノ検定ニ合格セザル者
三 前条第二項ノ規定ニ該当スル者
第三十三条 兵役法第十三条ノ規定ニ依リ在営期間ヲ短縮スベキ兵種ハ輜重輸卒及陸軍衛生部ノ兵卒トス其ノ在営期間左ノ如シ
一 輜重輸卒 概ネ二月
二 看護卒及磨工卒 一年六月
三 補助看護卒 三月
第三十四条 兵役法第十四条ノ規定ニ依リ在営期間ヲ短縮スル者ニ関シテハ主務大臣上裁ヲ経テ之ヲ定ム
第三十五条 戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ兵役法第十四条並ニ本令第三十一条第一項、第三十二条及第三十三条ノ規定ニ依ル在営期間ノ短縮ヲ行ハズ又ハ其ノ短縮スベキ期間ヲ減ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第三十六条ノ規定ヲ準用ス
第四款 服役延期
第三十六条 兵役法第十九条ノ規定ニ依ル服役期間ノ延長及其ノ解止ニ関シテハ主務大臣臨時之ヲ定ム但シ航海中又ハ外国ニ於テ勤務中ナルトキノ海軍兵ノ服役期間ノ延長及其ノ解止ハ鎮守府司令長官之ヲ為スコトヲ得
時機切迫シ主務大臣又ハ鎮守府司令長官ノ命ヲ待チ難キ場合ニ於テハ第百十八条第一項ニ掲グル者ハ其ノ部下ノ者ニ対シ必要ノ期間ヲ限リ服役期間ノ延長ヲ専行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事実ヲ具シ速ニ主務大臣ニ報告スベシ
第三十七条 後備兵、補充兵又ハ国民兵ニシテ戦時又ハ事変ニ際シ召集ヲ令セラレタル者応召ノ日ニ於テ後備兵役、補充兵役又ハ国民兵役ノ期間ヲ過グルニ至ルベキトキハ前条ニ規定スル主務大臣ノ命又ハ召集解除ノ命アル迄其ノ服役期間ヲ延長ス
第五款 特殊ノ転役及免役
第三十八条 短期現役兵ヲ除クノ外兵役法第二十一条ノ規定ニ依リ転役スル者ノ服スベキ兵役左ノ如シ
一 現役兵ニシテ現役ニ堪ヘザル者在営三月以上ノ者ナルトキハ之ヲ予備役ニ、在営三月未満ノ者ナルトキハ陸軍ニ在リテハ之ヲ第一補充兵役ニ、海軍ニ在リテハ之ヲ第二補充兵役ニ服セシメ兵役法第二十条ノ規定ニ依リ現役ヲ免除セラレタル者ハ之ヲ第二補充兵役ニ服セシム
二 現役兵ニシテ現役、予備役及後備兵役ニ又ハ現役及補充兵役ニ堪ヘザル者ハ之ヲ第一国民兵役ニ服セシム
三 予備兵ニシテ予備役及後備兵役ニ堪ヘザル者又ハ後備兵若ハ補充兵ニシテ其ノ役ニ堪ヘザル者ハ之ヲ第一国民兵役ニ服セシム
前項各号ノ規定ニ依リ陸軍ノ帰休兵、予備兵若ハ後備兵又ハ補充兵ヲ転役セシムルノ処分ハ召集ノ際若ハ部隊編入中又ハ陸海軍ノ病院ニ収容中ノ場合ニ限リ之ヲ行フ
兵役法第二十条及同法第二十一条並ニ前二項ノ規定ニ依ル陸軍兵ノ現役免除、転役及兵役免除ノ処分ハ部隊編入中ノ者ニ付テハ連隊長又ハ之ト同等以上ノ権アル部隊ノ長、其ノ他ノ者ニ付テハ連隊区司令官之ヲ行ヒ海軍兵ノ現役免除、転役及兵役免除ノ処分ハ鎮守府司令長官之ヲ行フ
第三十九条 第九十六条ノ規定ハ兵役法第二十条ノ規定ニ依ル現役免除ニ之ヲ準用ス
第六款 服役期間ノ計算
第四十条 二期ニ分チ入営セシムベキ部隊ニ属スル者ニシテ後期ニ入営スル者ノ現役期間ハ入営ノ月ノ一日ヨリ之ヲ起算ス
兵役法第四十五条第一項ノ規定ニ依リ入営ヲ延期セラレタル者ノ服役期間ノ計算ハ之ト同年(後期ニ入営スル者ニ在リテハ同期)ニ於テ入営スル一般ノ者ノ服役期間ノ計算ニ同ジ
第四十一条 兵役法第二十一条及本令第三十八条ノ規定ニ依リ転役シタル者ノ服役期間左ノ如シ
一 現役ヲ免除シ予備役ニ編入セラレタル者ノ予備役期間ハ前ニ服役シタル期間ヲ通算シ陸軍ニ在リテハ七年四月、海軍ニ在リテハ七年ニ満ツル日迄トス
二 現役ヲ免除シ補充兵役ニ編入セラレタル者ノ補充兵役ノ期間ハ前ニ服役シタル期間ヲ通算シ十二年四月ニ満ツル日迄トス
第三章 徴集
第一款 通則
第四十二条 本章中市又ハ市長ニ関スル規定ハ東京市、京都市、大阪市、名古屋市及横浜市ニ在リテハ本章中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外区又ハ区長ニ、町村又ハ町村長ニ関スル規定ハ町村又ハ町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
第四十三条 師団長ハ本章中ノ規定ヲ適用シ難キ島嶼ニ於テハ地方長官ニ協議シ其ノ規定ニ付適宜ノ措置ヲ為スコトヲ得
第二款 徴兵区
第四十四条 徴兵区ハ之ヲ師管及連隊区トシ其ノ区域ハ陸軍管区表ノ定ムル所ニ依ル
徴兵事務執行ノ為必要アルトキハ徴募区ヲ検査区ニ分ツコトヲ得
徴募区及検査区ノ区域ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第四十五条 歩兵隊ノ兵員ハ連隊毎ニ其ノ師管ノ一連隊区ヨリ、他ノ兵員ハ其ノ師管ヨリ之ヲ徴集ス但シ他ノ連隊区又ハ師管ヨリ之ヲ徴集スルコトヲ得
団隊ノ位置又ハ種類ニ依リ一箇乃至数箇ノ師管又ハ各師管ヨリ当該団隊ノ兵員ヲ徴集スルコトヲ得
海軍ノ兵員ハ各師管ヨリ之ヲ徴集ス
第三款 徴兵官
第四十六条 徴兵官ハ総理徴兵官、師管徴兵官、連隊区徴兵官及連隊区連合徴兵官トス
第四十七条 総理徴兵官ハ陸軍大臣及内務大臣ヲ以テ之ニ充テ全国徴兵ノ事務ヲ統轄ス
第四十八条 師管徴兵官ハ師管内道府県毎ニ師団長及地方長官ヲ以テ之ニ充テ師団長ヲ首座トシ徴兵ノ事務ヲ統轄ス
第四十九条 連隊区徴兵官ハ連隊区内道府県毎ニ左ノ区分ニ従ヒ連隊区司令官、当該府県ノ兵事ニ関スル事務ヲ分掌スル書記官又ハ地方事務官(以下之ヲ兵事官ト称ス)、支庁長、市長及区長ヲ以テ之ニ充テ連隊区司令官ヲ首座トシ徴兵事務ヲ執行ス但シ樺太ニ於ケル連隊区徴兵官及第四号ニ掲グル連隊区徴兵官ハ抽籤事務ヲ行ハズ
一 支庁長ノ管轄区域以外及市以外ノ区域ニ在リテハ連隊区司令官及兵事官
二 支庁長ノ管轄区域ニ在リテハ連隊区司令官及支庁長
三 市(第四十二条ノ市ヲ除ク)ニ在リテハ連隊区司令官及市長
四 第四十二条ノ市ノ区ニ在リテハ連隊区司令官及区長
第五十条 連隊区連合徴兵官ハ第四十二条ノ市(市ガ二以上ノ連隊区ニ分属スルトキハ其ノ分属スル部分)及樺太ニ之ヲ置キ第四十二条ノ市ニ在リテハ連隊区司令官、市長及区長、樺太ニ在リテハ連隊区司令官及樺太庁長官ノ命ズル支庁長ヲ以テ之ニ充テ連隊区司令官ヲ首座トシ抽籤事務ヲ執行ス
第五十一条 前二条ノ徴兵官事故アルトキハ連隊区司令官ニ在リテハ師団長ノ指名スル其ノ部下ノ将校、兵事官ニ在リテハ地方長官ノ指名スル其ノ部下ノ官吏、支庁長市長又ハ区長ニ在リテハ其ノ職務ヲ代理スル者徴兵官ノ職務ヲ代理ス
府県ガ二以上ノ連隊区ニ分属スルトキ又ハ第五十七条ノ規定ニ依リ師団長ガ其ノ部下ノ佐官ヲシテ連隊区司令官ノ職務ヲ代理セシムルトキハ地方長官ハ其ノ部下ノ官吏ヲシテ連隊区徴兵官タル兵事官ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第五十二条 師管徴兵医官、連隊区徴兵医官及連隊区徴兵副医官ハ毎年徴兵事務執行中之ヲ置ク
師管徴兵医官ハ師団長ニ属シ師管内ノ身体検査ニ関スル事務ヲ管掌ス
連隊区徴兵医官ハ連隊区司令官ニ属シ連隊区内ノ身体検査ニ関スル事務ヲ管掌ス
連隊区徴兵副医官ハ連隊区徴兵医官ヲ輔佐ス
第五十三条 師管徴兵医官ハ師団軍医部長ヲ以テ之ニ充ツ
連隊区徴兵医官ハ陸軍三等軍医正又ハ陸軍一等軍医ノ内一人ヲ以テ之ニ充ツ
連隊区徴兵副医官ハ陸軍一、二、三等軍医ノ内一人ヲ以テ之ニ充ツ
師団長必要ト認ムルトキハ陸軍一、二、三等軍医ノ内二人ヲ以テ前項ノ副医官ニ充ツルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ陸軍一等軍医ヲ以テ連隊区徴兵副医官ニ充ツルハ連隊区徴兵医官ガ陸軍三等軍医正ナルトキ又ハ連隊区徴兵副医官タルベキ者ガ連隊区徴兵医官ヨリ後任ナルトキニ限ル
第五十四条 戦時又ハ事変ニ際シ前条ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ連隊区徴兵医官ハ陸軍一、二等軍医正又ハ陸軍二、三等軍医ヲ以テ、連隊区徴兵副医官ハ医師免許証ヲ有スル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第五十五条 徴兵検査ヲ受クベキ者僅少ナル島嶼ニ於ケル身体検査ニ付テハ連隊区徴兵副医官ヲ置カザルコトヲ得
第五十六条 師団長又ハ師団軍医部長遠隔ノ地ニ在ル為師管徴兵官又ハ師管徴兵医官ノ職務ヲ行ヒ難キ場合ニ於テハ陸軍大臣ノ命ズル者ヲシテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第五十七条 連隊区内ノ徴兵検査ヲ受クベキ者ノ多数其ノ他ノ事由ニ因リ陸軍大臣ノ定ムル期間内ニ徴兵検査ヲ終了シ難キトキハ師団長ハ其ノ部下ノ佐官ヲシテ徴募区又ハ検査区ヲ限リ連隊区徴兵官タル連隊区司令官ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ連隊区司令官ノ職務ヲ代理スル者ハ其ノ代理ニ関シ当該連隊区司令官ノ区処ヲ承ク
第一項ノ規定ニ依ル徴兵事務ノ執行ニ付テハ第五十三条ノ規定ニ依リ別ニ連隊区徴兵医官及連隊区徴兵副医官ヲ置ク
第五十八条 徴兵署ニ事務員ヲ置キ庶務ニ従事セシム
前項ノ事務員ハ陸軍下士又ハ同判任文官及道府県市(第四十二条ノ市ニ於テハ市及区)ノ官吏吏員ヲ以テ之ニ充ツ
地方長官ハ必要アル場合ニ於テハ町村長ニ命ジ当該町村ノ吏員ヲシテ第一項ニ規定スル事務員ノ職務ヲ補助セシムルコトヲ得
第四款 兵員配賦
第五十九条 毎年徴集スル現役兵及第一補充兵ノ員数ハ陸軍大臣上裁ヲ経テ之ヲ各師管ニ配賦ス
海軍ニ徴集スル兵員ノ数ハ海軍大臣之ヲ陸軍大臣ニ移ス
第六十条 師団長ハ師管ニ配賦セラレタル員数ヲ各連隊区ニ、連隊区司令官ハ連隊区ニ配賦セラレタル員数ヲ各徴募区ニ配賦ス
第五款 徴兵検査
第六十一条 徴兵事務(抽籤事務ヲ除ク)執行ノ為徴募区毎ニ連隊区徴兵署ヲ毎年設ク但シ検査区ヲ設ケタル徴募区ニ於テハ検査区毎ニ之ヲ設ク
抽籤事務執行ノ為第四十二条ノ市及樺太ヲ除キタル区域ニ付テハ連隊区抽籤徴兵署ヲ、第四十二条ノ市及樺太ニ付テハ連隊区連合抽籤徴兵署ヲ毎年設ク
第六十二条 連隊区徴兵署ハ市ニ在リテハ市長(第四十二条ノ市ニ在リテハ区長)、支庁長ノ管轄区域ニ在リテハ支庁長、其ノ他ノ区域ニ在リテハ地方長官之ヲ設備ス但シ必要アル場合ニ於テハ地方長官ハ徴兵署ヲ開設スル地ノ町村長ニ命ジ設備ヲ為サシムルコトヲ得
連隊区抽籤徴兵署ハ地方長官之ヲ設備ス
連隊区連合抽籤徴兵署ハ第四十二条ノ市ニ在リテハ市長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官之ヲ設備ス
第六十三条 師団長及地方長官ハ徴兵署ノ取締ニ関シ必要ナル措置ヲ為スベシ
徴兵署ニ出張シタル警察官吏又ハ憲兵ハ連隊区徴兵官又ハ連隊区連合徴兵官ニ対シ徴兵署ノ取締ニ関シ必要ナル協力ヲ為スベシ
第六十四条 徴兵処分ヲ取消シ更ニ処分ヲ為シ其ノ他臨時ニ徴兵処分ヲ為ス為特ニ必要アルトキハ第六十一条ノ規定ニ拘ラズ臨時ニ徴兵署ヲ設クルコトヲ得
第六十五条 徴兵署開設ノ期日、場所其ノ他開設ニ必要ナル事項ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ基キ連隊区司令官ハ兵事官、支庁長又ハ市長(第四十二条ノ市ニ在リテハ市長及区長)ト協議シテ之ヲ定ム
第六十六条 市町村長ハ徴兵検査ヲ受クベキ者ヲ精査シ且之ニ対シ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ徴兵検査通達書ヲ交付スベシ
徴兵検査通達書ヲ受ケタル者ハ指定ニ従ヒ徴兵署ニ出頭スベシ
第六十七条 身体検査ハ連隊区徴兵署内ニ設クル身体検査場ニ於テ之ヲ行フ
第六十八条 兵役法第三十二条第二項ノ規定ニ依ル標準及同法第三十三条第一項ニ規定スル体格等位左ノ如シ
一 現役ニ適スル者ハ身長一・五五メートル以上ニシテ身体強健ナル者トス
現役ニ適スル者ハ其ノ体格ノ程度ニ応ジ之ヲ甲種及乙種ニ、乙種ハ之ヲ第一乙種及第二乙種ニ分ツ
二 国民兵役ニ適スルモ現役ニ適セザル者ハ身長一・五五メートル以上ニシテ身体乙種ニ次グ者及身長一・五〇メートル以上、一・五五メートル未満ノ者ニシテ第三号及第四号ニ該当セザル者トス之ヲ丙種トス
三 兵役ニ適セザル者ハ身長一・五〇メートル未満ノ者及左ニ掲グル疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常アル者トス之ヲ丁種トス
(イ)全身畸形
(ロ)筋骨甚薄弱ナルモノ
(ハ)悪性腫瘍
(ニ)不治ノ精神病又ハ不治ノ神経系病
(ホ)不治ノ栄養失常
(ヘ)癩
(ト)盲
(チ)聾
(リ)唖
(ヌ)口蓋破裂又ハ著シキ兎唇
(ル)斜頸又ハ脊柱骨盤ノ畸形ニシテ運動ニ妨ゲアルモノ
(ヲ)胸腹臓器ノ慢性疾患ニシテ一般栄養状態ニ妨ゲアルモノ
(ワ)脱肛、痔瘻又ハ肛門畸形ニシテ其ノ程度重キモノ
(カ)泌尿生殖器ノ慢性病又ハ欠損畸形ニシテ機能障碍アルモノ
(ヨ)骨、骨膜又ハ関節ノ慢性病ニシテ其ノ程度重キモノ及其ノ継発症
(タ)四肢ノ欠損又ハ著シキ四肢ノ短縮彎曲
(レ)指趾ノ欠損、強剛、癒著又ハ畸形ニシテ著シク機能障碍アルモノ
(ソ)翻足、馬足
(ツ)前各号ニ準ズル疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニシテ陸軍大臣ノ定ムルモノ
四 兵役ノ適否ヲ判定シ難キ者ハ身体検査ヲ受ケタル年ニ於テハ疾病中又ハ病後其ノ他ノ事由ニ因リ甲種又ハ乙種ト判定シ難キモ其ノ翌年ニ至ルトキハ甲種又ハ乙種ニ合格スベキ見込アル者トス之ヲ戊種トス
疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ第一乙種、第二乙種、丙種又ハ丁種ト為スベキ細部ノ標準ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十九条 兵役法第三十七条ノ規定ニ依リ兵役ヲ免除スルコトヲ得ル疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常左ノ如シ
一 全身畸形
二 不治ノ精神病ニシテ監視又ハ保護ヲ要スルモノ
三 
四 両眼盲(眼前三分ノ一メートルニ於テ視標〇・一ヲ視別シ得ザルモノ)
五 両耳全ク聾シタルモノ
六 
七 腕関節又ハ足関節以上ニテ一肢ヲ欠キタルモノ
第七十条 連隊区司令官ハ身体検査ノ事務ヲ監督シ身体検査ヲ受ケタル者ノ兵種ノ選定ニ任ズ
第七十一条 連隊区徴兵医官ハ身体検査ヲ受クル者ノ体格等位ノ決定ニ任ズ
第七十二条 兵事官、支庁長又ハ市長ハ徴兵検査ヲ受クル者ノ身上ニ関スル調査ニ任ズ
第七十三条 町村長ハ徴兵署ニ出席シ徴兵官ノ諮問ニ応ズベシ
第七十四条 兵役法第三十三条第一項ノ規定ニ依ル現役兵及第一補充兵ノ徴集ニ関シテハ左ノ各号ニ依ル
一 各徴募区ニ配賦シタル現役兵及第一補充兵ハ甲種及乙種ノ者ニシテ身長一・六五メートル以上ノ者ヨリ之ヲ徴集ス但シ身長一・六五メートル以上ノ者ヲ以テ配賦人員ヲ充足スルコト能ハザルトキハ各体格等位ニ付一様ニ逓次身長ヲ繰下ゲ配賦要員ヲ充足スルコトヲ得
二 現役兵及第一補充兵ニ徴集スベキ者ノ体格等位ノ優劣ニ依ル徴集順序ハ甲種、第一乙種及第二乙種ノ順序トス
第七十五条 徴兵検査ニ於テ区分スベキ兵種ハ陸軍ニ在リテハ歩兵、戦車兵、騎兵野砲兵、山砲兵、野戦重砲兵、騎砲兵、重砲兵、高射砲兵、工兵、鉄道兵、電信兵、飛行兵、気球兵、輜重兵、輜重輸卒、看護卒、磨工卒及補助看護卒トシ海軍ニ在リテハ水兵、機関兵、船匠兵、看護兵及主計兵トス
前項ニ規定スル兵種ノ区分ハ現役兵及第一補充兵トシテ徴集スベキ者ニ付之ヲ行フ
兵役法第四十六条第二項又ハ同法第四十七条第一項ノ規定ニ依リ更ニ徴兵検査ヲ為シタル者ハ前年ニ於テ決定シタル兵種ニ之ヲ選定ス但シ陸軍大臣ノ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七十六条 抽籤ハ連隊区徴兵署ニ於ケル事務終了後連隊区抽籤徴兵署ニ於テ徴募区毎ニ之ヲ行フ但シ第四十二条ノ市ノ徴募区及樺太ニ在リテハ連隊区連合抽籤徴兵署ニ於テ之ヲ行フ
兵役法第三十三条第一項ノ規定ニ依リ抽籤スル場合ニ於ケル兵種ハ前条第一項ニ規定スル区分ニ従フ
第七十七条 抽籤ハ第四十二条ノ市及樺太ヲ除キタル区域ニ在リテハ連隊区徴兵官、第四十二条ノ市及樺太ニ在リテハ連隊区連合徴兵官列席シ抽籤総代人ヲシテ之ヲ為サシム
支庁長ガ連隊区徴兵官トシテ抽籤ニ列席シ難キトキハ地方長官ハ兵事官又ハ部下ノ他ノ官吏ヲシテ連隊区徴兵官タル支庁長ノ代理トシテ抽籤ニ列席セシムルコトヲ得
徴兵官ハ連隊区抽籤徴兵署又ハ連隊区連合抽籤徴兵署最寄ノ市町村ニ於ケル其ノ年身体検査ヲ受ケタル者ニ就キ当該市町村長ヲシテ抽籤総代人ヲ選定セシム其ノ人員ハ適宜トス
地方長官ハ町村長ヲシテ抽籤ニ立会セシムルコトヲ得
抽籤ノ方法ニ関シテハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十八条 他ノ徴募区ニ寄留スル者ハ本人ノ願ニ依リ其ノ地ニ於テ身体検査ヲ受クルコトヲ得
第七十九条 本籍所在ノ徴募区ノ為設ケタル連隊区徴兵署閉鎖後ニ於テ身体検査ヲ要スル者アルトキハ他ノ徴募区ノ為設ケタル連隊区徴兵署ニ於テ身体検査ヲ行フコトヲ得
徴兵検査開始前又ハ師管ニ於ケル連隊区徴兵署閉鎖後抽籤前ニ於テ身体検査ヲ要スル者アルトキハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ身体検査ヲ行フコトヲ得
第八十条 朝鮮若ハ台湾ニ在留スル者ニシテ徴兵検査ヲ受クベキ者又ハ関東州、支那、香港、澳門若ハ沿海州其ノ他当該地域ノ附近ニ在留スル者ニシテ徴集ヲ延期セラレザル者ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ本人ノ在留地附近ノ軍隊、地方庁又ハ領事館(総領事館ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ於テ身体検査ヲ受クルコトヲ得
第八十一条 前条ノ身体検査ハ第三章第三款、第百四条及第百五条ノ規定ニ拘ラズ陸軍佐官又ハ大尉一名ヲ検査員トシ之ニ陸軍一、二、三等軍医(已ムヲ得ザル場合ニ於テハ陸軍三等軍医正)及陸軍下士又ハ同判任文官ヲ附属シテ之ヲ行フ
陸軍大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ地方庁又ハ領事館ニ於テ執行スル身体検査ニ関シテハ当該官庁ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ担任セシムルコトヲ得
第一項ニ規定スル検査員及属員ノ任命及職務其ノ他検査執行ニ関スル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第八十二条 身体検査ノ結果ニ依ル第二補充兵役編入、徴集免除、兵役免除及徴収延期ノ処分ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本人ノ本籍所在ノ徴募区ヲ管轄スル連隊区徴兵官之ヲ行フ身体検査ヲ行フコトナク徴集免除、兵役免除又ハ徴集延期ノ処分ヲ為ス場合ニ付亦同ジ
第八十三条 現役編入又ハ第一補充兵役編入ノ処分及抽籤ノ結果ニ依ル第二補充兵役編入ノ処分ハ抽籤終了ノ後第六十条ノ規定ニ依ル配賦ニ基キ本人ノ本籍所在ノ徴募区ヲ管轄スル連隊区司令官之ヲ行フ
第八十四条 現役編入、補充兵役編入、徴集免除及兵役免除ノ処分ハ之ヲ徴兵終決処分トス
第八十五条 現役編入、補充兵役編入、兵役免除及徴集延期ノ処分ハ証書ヲ以テ之ヲ本人ニ通達ス
徴集免除ノ処分ハ便宜ノ方法ヲ以テ之ヲ本人ニ通達ス
第六款 現役兵入営
第八十六条 現役兵ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ入営セシム
第八十七条 兵役法第四十五条及同法第四十六条ノ規定ニ依ル入営延期ノ処分ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ連隊区司令官之ヲ行フ
第八十八条 兵役法第四十七条ノ規定ニ依リ帰郷セシムルノ処分ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ陸軍ニ在リテハ連隊長又ハ之ト同等以上ノ権アル部隊ノ長、海軍ニ在リテハ海軍人事部長之ヲ行フ
第八十九条 兵役法第四十六条第二項但書又ハ同法第四十七条第二項ノ規定ハ輜重輸卒ニ限リ之ヲ適用ス
第九十条 連隊区司令官ハ現役兵入営ノ際疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ常備兵役及後備兵役ニ堪ヘザル者ナルトキハ之ニ対シ徴集ヲ免除シ永久兵役ニ堪ヘザル者ナルトキハ之ニ対シ兵役ヲ免除ス但シ第七条ノ規定ニ依リ現役ヲ志願シタル者ニシテ之ニ該当スル者ニ付テハ陸軍大臣ハ別段ノ規定ヲ為スコトヲ得
第七款 現役兵補闕
第九十一条 現役兵死亡、疾病、犯罪其ノ他ノ事故ニ因リ闕員ヲ生ジタルトキハ入営期日迄ニ於ケル闕員及爾後三十一日(歩兵ニ在リテハ二十日、補助看護卒ニ在リテハ十日)間ノ闕員ニ限リ其ノ徴募区ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徴集順序ニ従ヒ闕員ヲ補充ス但シ二期以上ニ分チ入営セシムル者ノ補闕ニ付テハ陸軍大臣ハ補闕期間又ハ補充員ニ関シ別段ノ規定ヲ為スコトヲ得
前項ニ規定スル闕員ノ補充ハ連隊区司令官之ヲ行フ
第九十二条 臨時ニ現役兵多数ノ闕員ヲ生ジタル場合ニ於テハ前条ニ規定スル期間ニ拘ラズ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ闕員ヲ補充スルコトヲ得
第九十三条 第七条ノ規定ニ依リ陸軍現役兵ニ採用シタル者闕員ト為リタル場合ニ於ケル第九十一条ノ規定ニ依ル補充ハ之ヲ採用シタル連隊区内ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徴集順序ニ従ヒ之ヲ為ス
第九十四条 現役兵ヲ第九十一条ノ規定ニ依リ其ノ徴募区ヨリ補充スルコト能ハザルトキハ其ノ連隊区内ノ他ノ徴募区ヨリ、第九十一条及前条ノ規定ニ依リ其ノ連隊区ヨリ補充スルコト能ハザルトキハ其ノ師管内ノ他ノ連隊区ヨリ、其ノ師管ヨリ補充スルコト能ハザルトキハ他ノ師管ヨリ闕員ヲ補充スルコトヲ得其ノ補充ハ徴集順序ニ依ル
第九十五条 前二条ノ規定ニ依ル補充員ノ配賦ハ各徴募区、各連隊区又ハ各師管ニ於ケル同兵種ノ補充兵ノ総数ニ比例シテ之ヲ定ム
前項ニ規定スル補充員ノ配賦ハ師管ニ対シテハ陸軍大臣、連隊区ニ対シテハ師団長、徴募区ニ対シテハ連隊区司令官之ヲ行フ
第八款 徴集延期
第九十六条 兵役法第四十条第一項ノ規定ニ依ル徴集延期ハ軍事救護法ニ依リ救護シ得ベキ見込アル者ニ対シテハ之ヲ行ハズ
第九十七条 連隊区徴兵官ノ為シタル兵役法第四十条ニ規定スル徴集延期ニ関スル処分ニ不服アルトキハ本人又ハ其ノ家族ヨリ師管徴兵官ニ訴願スルコトヲ得其ノ訴願ノ裁決ニ不服アルトキハ総理徴兵官ニ訴願スルコトヲ得但シ訴願ハ徴集処分ノ執行ヲ停止セズ
訴願書ハ処分ヲ受ケ又ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ之ヲ発スベシ
第九十八条 前条ノ訴願書ハ徴集延期ニ関スル処分又ハ裁決ヲ為シタル徴兵官ヲ経由シテ之ヲ差出スベシ
前項ノ徴兵官訴願書ヲ受ケタルトキハ前ノ処分又ハ裁決ニ関スル書類ヲ添ヘ上級ノ徴兵官ニ差出スベシ
第九十九条 現役編入ノ処分アリタル後入営期日迄ニ兵役法第四十条第一項ニ規定延スル事故生ジタル場合ニ於テ為ス徴集期ノ処分ハ連隊区司令官之ヲ行フ
第百条 左ニ掲グルモノハ兵役法第四十一条第一項ノ規定ニ依ル中学校ノ学科程度ト同等以上ト認ムル学校トス但シ研究科、選科等ノ別科ヲ除ク
一 師範学校、実業学校(尋常小学校卒業ヲ入学程度トスル修業年限五年又ハ之ト同等以上ノモノニ限ル)、高等学校、大学令ニ依ル大学予科、専門学校、高等師範学校、大学令ニ依ル大学学部、臨時教員養成所、実業学校教員養成所及実業補習学校教員養成所
二 宮内大臣、文部大臣以外ノ各省大臣、朝鮮総督、台湾総督、関東長官又ハ樺太庁長官ノ所轄学校ニシテ前号ニ掲グル学校ニ準ズルモノ
三 前二号ニ掲グル以外ノ学校ニシテ陸軍大臣及文部大臣ニ於テ認定ヲ為シタルモノ
第百一条 兵役法第四十一条第一項ノ規定ニ依リ学校ニ在学スル者ニ付徴集ヲ延期シ得ベキ最高年齢左ノ如シ
【表】
前条第二号又ハ第三号ニ該当スル学校ニ在学スル者ニ付徴集ヲ延期シ得ベキ最高年齢ハ其ノ入学資格及修業年限ニ応ジ前項ノ規定ニ準ジ陸軍大臣之ヲ定ム
第百二条 兵役法第四十二条第一項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セザルモノトシテ除外スベキ者左ノ如シ
一 関東州又ハ南満洲鉄道附属地ニ在ル者但シ陸軍大臣ノ定ムル徴集延期願出ノ期日ニ於テ当該地域其ノ他帝国外ノ地ニ引続キ在留スル期間三年ヲ超ユル者ヲ除ク
二 徴兵検査ヲ受ケ現役兵ト為ルベキ順位ニ在ル者
三 第百三条第一号ニ掲グル地域(関東州及南満洲鉄道附属地ヲ除ク)ニ在ル者ニシテ陸軍大臣ノ定ムル徴集延期願出ノ期日ニ於テ其ノ在留スル期間一年ニ満チザル者
四 第百三条各号ニ掲グル地域(関東州及南満洲鉄道附属地ヲ除ク)ヨリ一時関東州又ハ南満洲鉄道附属地ニ到リ其ノ地域ニ滞在スル者但シ兵役法第四十三条第一項ニ規定スル事由ニ因リ九十日以内当該地域ニ滞在スル者又ハ同法第四十三条第二項ノ規定ニ依ル帝国内ノ滞在ヲ通ジ一年間一回ヲ限リ第百三条各号ニ規定スル区分ニ応ジ当該地域ニ滞在スル者ヲ除ク
五 短期現役兵トシテ服役スベキ者ニシテ第百三条第一号ニ掲グル地域ニ在ル者
第百三条 兵役法第四十三条第二項ノ規定ニ依ル滞在期間左ノ如シ
一 関東州、奉天省、吉林省、直隷省、山東省、江蘇省、浙江省、安徽省、福建省、広東省、広西省、香港、澳門又ハ沿海州ニ在留スル者ニシテ徴集延期中ノ者 三十日
二 「サガレン」州、「ザバイカル」州以東「シベリア」(沿海州ヲ除ク)、黒龍江省、内蒙古、山西省、河南省、湖北省、湖南省又ハ江西省ニ在留スル者ニシテ徴集延期中ノ者 六十日
三 其ノ他ノ地方ニ在留スル者ニシテ徴集延期中ノ者 九十日
第九款 短期現役兵ニ関スル特例
第百四条 短期現役兵徴集ノ為ノ連隊区徴兵官ハ連隊区内道府県毎ニ連隊区司令官及兵事官(北海道庁及樺太庁ニ在リテハ之ニ相当スル者)ヲ以テ之ニ充テ連隊区司令官ヲ首座トシ当該事務ヲ執行ス
第百五条 短期現役兵ノ身体検査ニ付テハ連隊区徴兵副医官ヲ置カザルコトヲ得
第百六条 短期現役兵徴集ノ事務ヲ行フベキ連隊区徴兵署ハ第六十一条ノ規定ニ拘ラズ便宜ノ地ニ之ヲ設ク
前項ノ連隊区徴兵署ハ地方長官之ヲ設備ス
第百七条 短期現役兵トシテ服役スベキ者ニ対スル徴兵検査ハ徴兵適齢又ハ其ノ後ニ於テ師範学校ヲ卒業スル者ニ対シテハ卒業ノ年又ハ其ノ翌年ニ於テ、徴兵適齢前ニ於テ師範学校ヲ卒業シタル者ニ対シテハ徴兵適齢ノ年ニ於テ之ヲ行フ但シ師範学校卒業後引続キ兵役法第四十一条第一項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラルル者ニ対シテハ其ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ之ヲ行フ
前項ニ規定スル徴兵検査ノ時期、短期現役兵トシテ服役スベキ者ノ調査及徴兵検査通達書ノ交付ニ関シテハ陸軍大臣之ヲ定ム
第百八条 短期現役兵トシテ服役スベキ者ニシテ朝鮮、台湾、樺太又ハ第百三条第一号ニ掲グル地域ニ在ル者ノ調査ハ朝鮮総督府道知事、台湾総督府総務長官、関東庁内務局長、樺太庁長官又ハ領事官(明治三十二年法律第七十号第十九条ニ規定スル領事官ヲ謂フ以下之ニ同ジ)ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ得
第十款 樺太ニ関スル特例
第百九条 樺太ニ於ケル徴兵事務ニ関シテハ総理徴兵官ハ内閣総理大臣及陸軍大臣ヲ以テ之ニ充ツ
第百十条 樺太ニ於ケル徴兵事務ニ関シテハ本章中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外地方長官トアルハ樺太庁長官、道府県トアルハ樺太トス
第百十一条 沿海州又ハ「サガレン」州ニ在留スル者ニシテ徴集ヲ延期セラレザル者ハ第八十条ノ規定ニ依ルノ外本人ノ願ニ依リ樺太ニ於ケル連隊区徴兵署ニ於テ身体検査ヲ受クルコトヲ得
第四章 召集
第百十二条 陸軍ノ召集及簡閲点呼ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外召集及簡閲点呼ヲ受クベキ者ノ本籍地所管ノ師団長之ヲ掌ル
海軍ノ召集及簡閲点呼ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外在籍鎮守府司令長官之ヲ掌ル
第百十三条 召集及簡閲点呼ハ令状ヲ以テ之ヲ本人ニ通達ス但シ必要アル場合ニ於テハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ他ノ方法ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第百十四条 兵役法第五十四条ノ規定ニ依ル召集ハ陸軍ニ在リテハ動員令、海軍ニ在リテハ充員令ニ依リ之ヲ実施ス但シ必要アル場合ニ於テハ之ニ依ラザルコトヲ得
前項ニ規定スル召集ノ解除ハ陸軍ニ在リテハ復員令、海軍ニ在リテハ解員令ニ依リ之ヲ実施ス但シ必要アル場合ニ於テハ之ニ依ラザルコトヲ得
第百十五条 兵役法第五十四条ノ規定ニ依ル陸軍ノ召集要員ノ配当及其ノ他必要ナル準備ハ師管内ニ於テハ当該師団長、連隊区内ニ於テハ連隊区司令官之ヲ行フ
前項ノ規定ニ依ル配当ニ基キ召集スベキ者ハ第四項ニ規定スル場合ヲ除クノ外前項ノ配当ニ基キ連隊区司令官之ヲ定ム
兵役法第五十四条ノ規定ニ依リ海軍ニ於テ召集スベキ者ハ鎮守府司令長官ノ達ニ依リ海軍人事部長之ヲ定ム
陸軍ニ於ケル国民兵ノ召集ハ師団長ノ行フ配当其ノ他必要ナル達ニ基キ連隊区司令官之ヲ連隊区内ノ市町村ニ配当シ市町村長ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ召集スベキ者ヲ定ム
第百十六条 兵役法第五十四条ノ規定ニ依ル召集ノ事務ニ関シ職責アル者ハ本令及主務大臣ノ定ムル所ニ依リ平時之ニ関シ遺漏ナク計画準備シ召集実施ニ当リ支障ナカラシムルコトヲ要ス
第百十七条 兵役法第五十五条ノ規定ニ依ル召集ハ主務大臣ノ命ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ師団長又ハ鎮守府司令長官之ヲ行フ
第百十八条 左ニ掲グル者ハ時機切迫シ命ヲ請フ遑ナキトキハ独断ヲ以テ兵役法第五十四条又ハ同法第五十五条ノ規定ニ依ル召集ヲ専行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事実ヲ具シ速ニ主務大臣ニ報告スベシ
一 陸軍ニ在リテハ軍司令官、師団長、旅団長、守備隊司令官、連隊長(独立隊長ヲ含ム)若ハ之ト同等以上ノ権アル軍隊指揮官、要塞司令官又ハ分遣隊長
二 海軍ニ在リテハ艦隊司令長官、艦隊司令官、鎮守府司令長官、要港部司令官、特命司令官又ハ分遣艦船部隊指揮官
前項ノ場合ニ於テハ同項第一号及第二号ニ掲グル者ハ召集ニ関シ師団長又ハ鎮守府司令長官ト同一ノ職権ヲ有ス
第百十九条 兵役法第五十六条又ハ同法第五十八条ノ規定ニ依ル召集ハ主務大臣ノ定ムル所ニ基キ師団長又ハ鎮守府司令長官其ノ期日、人員、部隊及日数ヲ定ム
第百十五条ノ規定ハ前項ノ召集ニ之ヲ準用ス
第百二十条 兵役法第五十七条ノ規定ニ依ル召集ハ陸軍ニ限リ之ヲ行フ其ノ期日、人員、部隊及日数ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ基キ師団長之ヲ定ム
兵役法第五十七条ノ規定ニ依リ召集スベキ人員ハ陸軍大臣ノ達ニ基キ師団長之ヲ連隊区ニ配当シ連隊区司令官ハ補充兵ノ総数ヲ基準トシテ之ヲ徴募区ニ配当シ補充兵ノ徴集順序ニ従ヒ召集ス
第百十五条ノ規定ハ前二項ノ召集ニ之ヲ準用ス
第百二十一条 兵役法第五十六条乃至第五十八条ノ規定ニ依ル陸軍ノ召集ハ召集ヲ受クベキ者ノ本籍所在ノ師管内ノ部隊トス但シ必要アル場合ニ於テハ他ノ師管内ニ在ル部隊ニ之ヲ召集スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ当該師管ヲ管轄スル師団長之ガ召集ヲ掌ル
第百二十二条 簡閲点呼ハ之ヲ受クル者ノ本籍所在ノ師管又ハ鎮守府管区ニ於テ之ヲ行フ但シ必要アル場合ニ於テハ他ノ師管又ハ鎮守府管区ニ於テ之ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ当該師管又ハ鎮守府管区ヲ管轄スル師団長又ハ鎮守府司令長官之ガ簡閲点呼ヲ掌ル
第百二十三条 主務大臣ハ簡閲点呼ノ執行ヲ要セズト認メタル場合ニ於テハ其ノ執行ヲ為サザルコトヲ得
第百二十四条 僻陬ノ地ニ於テ簡閲点呼ニ参会スベキ者僅少ナルトキ其ノ他已ムヲ得ザル場合ニ於テハ師団長又ハ鎮守府司令長官ハ簡閲点呼ヲ省略スルコトヲ得
第百二十五条 師団長ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ基キ陸軍ノ簡閲点呼ノ時期及人員ヲ定メ之ヲ連隊区司令官ニ達シ且部下ノ将校ニ簡閲点呼執行官ヲ命ズベシ但シ師団長ハ部下ニ非ザル将校ニ当該将校ノ在職スル部隊ノ長ト協議シ簡閲点呼執行官ヲ命ズルコトヲ得
鎮守府司令長官ハ海軍ノ簡閲点呼ノ時期及人員ヲ定メ部下ノ兵科将校ニ簡閲点呼執行官ヲ命ズベシ
第百二十六条 陸軍ノ簡閲点呼ノ場所、区域及日割ハ連隊区司令官之ヲ定メ海軍ノ簡閲点呼ノ場所、区域及日割ハ海軍人事部長之ヲ定メ師団長又ハ鎮守府司令長官ノ認可ヲ受クベシ
第百二十七条 兵役法第六十一条第一号ニ掲グル者ノ勤務演習召集又ハ簡閲点呼ノ免除ニ付テハ当該官庁予メ其ノ者ノ本籍地、寄留地、役種、兵種、徴集年、予備役後備兵役編入年、官等級氏名及理由ヲ具シ内閣総理大臣ノ認可ヲ受クベシ但シ内閣総理大臣ノ指定シタル者ハ其ノ認可ヲ受ケタル者ト看做ス
関東州又ハ満洲ニ旅行又ハ在留スル者ニ対シテハ勤務演習召集又ハ簡閲点呼ヲ免除セズ
前二項ノ規定ニ該当スル者ヲ除クノ外兵役法第六十一条ノ規定ニ依ル勤務演習召集又ハ簡閲点呼ノ免除ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ連隊区司令官又ハ海軍人事部長之ヲ為ス
第百二十八条 師団長及鎮守府司令長官ハ定期又ハ臨時ニ地方行政庁ノ召集事務(簡閲点呼ノ事務ヲ含ム以下之ニ同ジ)ヲ検閲シ又ハ部下ノ将校(海軍ニ在リテハ兵科将校)ヲシテ之ヲ検閲セシムベシ
地方長官、憲兵司令官及憲兵隊長ハ其ノ所部ノ召集事務ヲ検閲シ又ハ部下ノ官吏ヲシテ之ヲ検閲セシムベシ
第百二十九条 地方長官ハ動員令又ハ充員令其ノ他召集ニ関スル通知ヲ受ケタルトキハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ召集ニ関係アル管下ノ官公署ノ長ニ之ヲ通知シ且召集ニ関シ必要ナル協力ヲ為スベシ
第百三十条 召集事務ヲ管掌スル警察署長及支庁長ハ連隊区司令官又ハ海軍人事部長ヨリ送付ヲ受ケタル召集令状又ハ簡閲点呼令状ヲ整備シ召集又ハ簡閲点呼ノ実施ニ当リ遺漏ナク関係ノ町村長ニ送付スベキ責ニ任ズ
前項ノ規定ハ市長ニ之ヲ準用ス
第百三十一条 市町村長ハ召集又ハ簡閲点呼ヲ受クベキ者ノ所在ヲ明ニシ召集令状若ハ簡閲点呼令状ヲ本人ニ交付シ又ハ其ノ命ヲ本人ニ伝達スベキ責ニ任ズ
第百三十二条 召集事務ニ関シ師団長又ハ鎮守府司令長官ノ定メタル規定ハ地方長官、憲兵隊長及其ノ所部ノ官吏公吏之ヲ遵行スベシ
地方長官ハ前項ノ規定ニ依ルノ外兵役法第五十四条ニ規定スル召集ノ準備又ハ実施ニ関シ師団長又ハ鎮守府司令長官ヨリ臨時要求ヲ受ケタルトキハ之ニ応ジ又ハ自ラ召集ヲ容易ナラシムルノ措置ヲ為スベシ
第百三十三条 本章中地方長官ニ関スル規定ハ東京府ニ在リテハ警視総監ニモ之ヲ適用シ樺太ニ在リテハ樺太庁長官ニ之ヲ適用ス
第四十二条ノ規定ハ召集事務ニ之ヲ準用ス
第百三十四条 陸軍大臣ハ朝鮮、台湾、関東州又ハ満洲ニ於テ行フベキ召集及簡閲点呼ニ関シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百三十五条 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外召集及簡閲点呼ニ関シ必要ナル事項ハ主務大臣之ヲ定ム
第五章 雑則
第百三十六条 兵役法第六十六条第一項ノ規定ニ依リ更ニ徴兵検査ヲ受クベキ者ハ左ニ掲グル期間ヲ通算シテ二年ニ満チザル者トス但シ兵役ヲ免除セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一 現役ニ服シタル期間
二 兵籍ニ編入セラレタル陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ学生生徒トシテ為シタル隊附期間又ハ練習ノ為海軍ノ艦船ニ乗組ミタル期間
三 召集セラレタル期間
第百三十七条 前条ノ規定ニ該当スル者更ニ現役ニ服スルニ至リタルトキハ前条ニ掲グル期間ヲ通算シテ服役セシム
第百三十八条 短期現役兵トシテ現役ヲ終リ第一国民兵役ニ在ル者ニシテ兵役法第六十七条ノ規定ニ依リ更ニ徴兵検査ヲ受クベキ者ハ其ノ事由発生ノ日ヲ以テ別ニ辞令ヲ用ヒズ兵科官等級ヲ免ゼラレタルモノトス
第百三十九条 兵役法第七十三条ノ規定ニ依ル指定ハ関東州及南満洲鉄道附属地ニ在リテハ陸軍大臣ハ文部大臣及関東長官ト協議シ其ノ他ノ地ニ在リテハ陸軍大臣ハ外務大臣及文部大臣ト協議シテ之ヲ告示ス
第百四十条 兵役法ノ定ムル所ニ依リ更ニ徴兵検査ヲ受クベキ者ニ対シ前ニ為シタル兵役ノ処分ハ本令中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外其ノ事由発生ノ日ヲ以テ其ノ効力ヲ失フ
第百四十一条 総理徴兵官又ハ師管徴兵官ハ下級徴兵官ノ処分ガ違法又ハ不当ナリト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ取消シタル上更ニ処分ヲ命ズベシ但シ師管徴兵官ハ総理徴兵官ノ認可ヲ受クベシ
連隊区徴兵官其ノ為シタル処分ガ違法又ハ不当ナルコトヲ発見シタル場合ニ於テ之ヲ取消シ又ハ取消シタル上更ニ処分ヲ為スニハ陸軍大臣ノ定ムル場合ヲ除クノ外総理徴兵官ノ認可ヲ受クベシ
連隊区司令官ノ為シタル処分ヲ取消シ又ハ取消シタル上更ニ処分ヲ為スコトヲ要スルモノアルトキハ前二項ノ規定ニ準ジ陸軍大臣ノ認可ヲ受クベシ
第百四十二条 徴兵官又ハ連隊区司令官ノ為シタル処分ニ対シテハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ズ
第百四十三条 朝鮮、台湾、関東州又ハ満洲ニ在ル陸軍軍人ノ服役及召集ニ関シテハ陸軍大臣ハ朝鮮ニ在リテハ道知事府尹郡守島司及警察署長、台湾ニ在リテハ州知事庁長郡守市尹警察署長及支署長、関東州ニ在リテハ民政署長民政支署長及警察署長、満洲ニ在リテハ警察署長及領事官ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ担任セシムルコトヲ得
帝国外ノ地ニ在ル者ノ徴集延期ニ関シテハ陸軍大臣ハ関東州及南満洲鉄道附属地ニ在リテハ民政署長及警察署長、南洋群島ニ在リテハ南洋庁支庁長、其ノ他ノ地ニ在リテハ大使公使及領事官ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ担任セシムルコトヲ得
町村ガ二以上ノ警察署ノ管轄区域ニ渉ルトキハ当該町村ニ於ケル召集事務ハ其ノ町村役場ノ所在地ヲ管轄スル警察署長之ヲ行フ
警察署ノ管轄区域ノ変更アリタル場合ニ於テハ当該区域内ノ召集事務ハ師団長又ハ鎮守府司令長官ノ指定スル警察署長ヲシテ一時之ヲ行ハシムルコトヲ得
第百四十四条 徴兵署ノ諸費、徴兵検査ヲ受クル者及抽籤総代人ノ旅費並ニ現役兵入営ノ旅費ハ之ヲ官給トシ第七条ノ規定ニ依リ現役ヲ志願スル者ノ身体検査ヲ受クル為ノ旅費ハ之ヲ自弁トス
疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ監視又ハ保護ヲ要スル者ニ徴兵検査ヲ受ケシメ又ハ之ヲ入営セシムル為附添人ヲ同行セシメタルトキハ当該附添人ノ旅費ハ之ヲ官給トス
第百四十五条 徴兵事務終ルトキハ管内徴兵事務ノ状況ヲ連隊区司令官ハ師団長ニ、師団長ハ陸軍大臣ニ報告シ陸軍大臣ハ全国徴兵事務ノ状況ヲ上奏スベシ
附 則
本令ハ昭和二年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廃止ス
徴兵事務条例
一年志願兵条例
一年現役兵条例
一年志願兵及一年現役兵服役特例
陸軍召集令
海軍召集令
明治三十九年勅令第三百十八号
明治四十一年勅令第九十三号
大正八年勅令第二十一号
大正十五年勅令第二百四十八号