朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ徵兵事務條例改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年九月十三日
內閣總理大臣 原敬
海軍大臣 加藤友三郞
陸軍大臣 田中義一
內務大臣 床次竹二郞
勅令第四百二十五號
徵兵事務條例
第一章 總則
第一條 本令中郡市又ハ郡市町村長ニ關スル規定ハ第五條ノ市ニ於テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外區又ハ區長ニ、郡制市制町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ郡市又ハ郡市町村長ニ準スヘキモノニ之ヲ適用ス
本令中聯隊區司令官又ハ聯隊區ニ關スル規定ハ警備隊區ニ於テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外警備隊司令官又ハ警備隊區ニ之ヲ適用ス
第二條 師團長ハ本令中ノ規定ヲ適用シ難キ島嶼ニ於テハ地方長官ニ協議シ其ノ規定ニ付適宜ノ措置ヲ爲スコトヲ得
第二章 徵兵區
第三條 徵兵區ハ師管及聯隊區ノ區域ニ從ヒ聯隊區ハ之ヲ徵募區ニ分ツ
第四條 徵募區ハ郡又ハ市ノ管轄區域ニ從フ市カ二以上ノ聯隊區ニ分屬スルトキハ其ノ分屬スル部分ヲ一徵募區トス
第五條 東京市、京都市、大阪市及名古屋市ニ於テハ徵募區ヲ檢査區ニ分チ市ノ區ヲ以テ檢査區トス
第六條 步兵隊ノ兵員ハ聯隊每ニ其ノ師管ノ一聯隊區ヨリ、他ノ兵員ハ其ノ師管ヨリ之ヲ徵集ス
要員配賦上ノ必要アルトキハ他ノ聯隊區又ハ師管ヨリ之ヲ徵集スルコトヲ得
徵兵區ヲ有セサル團隊ノ兵員ハ師管ヲ通シテ之ヲ徵集ス
警備隊ノ兵員ハ其ノ警備隊區ヨリ之ヲ徵集ス
海軍ノ兵員ハ師管ヲ通シテ之ヲ徵集ス
第三章 徵兵官
第七條 徵兵官ハ總理徵兵官、師管徵兵官、聯隊區徵兵官及聯隊區聯合徵兵官トス
第八條 總理徵兵官ハ陸軍大臣及內務大臣ヲ以テ之ニ充テ全國徵兵ノ事務ヲ統轄ス
第九條 師管徵兵官ハ師管內道府縣每ニ師團長及地方長官ヲ以テ之ニ充テ師團長ヲ首座トシ徵兵ノ事務ヲ統轄ス
第十條 聯隊區徵兵官ハ第五條ノ市ヲ除クノ外聯隊區內ノ徵募區每ニ聯隊區司令官及郡市長ヲ以テ之ニ充テ聯隊區司令官ヲ首座トシ徵募事務ヲ執行シ第五條ノ市ニ於テハ檢査區每ニ聯隊區司令官及區長ヲ以テ之ニ充テ聯隊區司令官ヲ首座トシ抽籤事務ヲ除クノ外徵募事務ヲ執行ス
第十一條 聯隊區聯合徵兵官ハ第五條ノ市ノ徵募區每ニ聯隊區司令官、市長及區長ヲ以テ之ニ充テ聯隊區司令官ヲ首座トシ抽籤事務ヲ執行ス
第十二條 前二條ノ徵兵官事故アルトキハ聯隊區司令官ニ在リテハ師團長ノ指名シタル其ノ部下ノ將校、郡市長區長ニ在リテハ其ノ職務ヲ代理スル者徵兵官ノ職務ヲ代理ス
第十三條 師管徵兵醫官、聯隊區徵兵醫官及聯隊區徵兵副醫官ハ每年徵募事務執行中之ヲ置ク
師管徵兵醫官ハ師團長ニ屬シ師管內ノ徵兵身體檢査ニ關スル事務ヲ管掌ス
聯隊區徵兵醫官ハ聯隊區司令官ニ屬シ聯隊區內ノ徵兵身體檢査ニ關スル事務ヲ管掌ス
聯隊區徵兵副醫官ハ聯隊區徵兵醫官ヲ補佐ス
第十四條 師管徵兵醫官ハ師團軍醫部長ヲ以テ之ニ充ツ
聯隊區徵兵醫官ハ陸軍一等軍醫一人ヲ以テ之ニ充ツ
聯隊區徵兵副醫官ハ陸軍二三等軍醫ノ內一人ヲ以テ之ニ充ツ
師團長必要ト認ムルトキハ陸軍二三等軍醫ノ內二人ヲ以テ前項ノ副醫官ニ充ツルコトヲ得
第十五條 戰時又ハ事變ニ際シ前條ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ聯隊區徵兵醫官ハ陸軍軍醫正又ハ陸軍二三等軍醫ヲ以テ、聯隊區徵兵副醫官ハ醫師免許證ヲ有スル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第十六條 壯丁僅少ナル島嶼ニ於ケル身體檢査ニ付テハ聯隊區徵兵副醫官ノ置カサルコトヲ得
第十七條 師團長又ハ師團軍醫部長遠隔ノ地ニ在ル爲師管徵兵官又ハ師管徵兵醫官ノ職務ヲ行ヒ難キ場合ニ於テハ陸軍大臣他ノ師團長又ハ師團軍醫部長ヲ指定シテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第十八條 聯隊區內ノ壯丁多數其ノ他ノ事由ニ因リ陸軍大臣ノ定ムル期間內ニ身體檢査ヲ終了シ難キトキハ師團長ハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ部下ノ佐官ヲシテ徵募區又ハ檢査區ヲ限リ聯隊區徵兵官タル聯隊區司令官ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ聯隊區司令官ノ職務ヲ代理スル者ハ其ノ代理ニ關シ當該聯隊區司令官ノ區處ヲ承ク
第一項ノ規定ニ依ル徵募事務ノ執行ニ付テハ第十四條ノ規定ニ依リ別ニ聯隊區徵兵醫官及聯隊區徵兵副醫官ヲ置ク
第十九條 徵兵署ニ事務員ヲ置キ庶務ニ從事セシム
前項ノ事務員ハ陸軍下士及郡市第五條ノ市ニ於テハ市及區ノ官吏吏員ヲ以テ之ニ充ツ
第四章 兵員配賦
第二十條 每年徵集スル現役兵及補充兵ノ員數ハ上裁ヲ經テ陸軍大臣之ヲ各師管ニ配賦ス
第二十一條 師團長ハ師管ニ配賦セラレタル員數ヲ各聯隊區ニ、聯隊區司令官ハ聯隊區ニ配賦セラレタル員數ヲ各徵募區ニ配賦ス
第二十二條 現役兵及補充兵ノ員數ノ配賦ハ身體檢査ヲ受クル見込ノ壯丁人員ヲ基準トシテ之ヲ定ム
第五章 徵募
第二十三條 徵募事務執行ノ爲第五條ノ市ヲ除クノ外徵募區每ニ聯隊區徵兵署ヲ每年設ク
第五條ノ市ニ於テハ抽籤事務ヲ除クノ外徵募事務執行ノ爲檢査區每ニ聯隊區徵兵署ヲ、抽籤事務執行ノ爲徵募區每ニ聯隊區聯合徵兵署ヲ每年設ク
第二十四條 第四十三條ノ規定ニ依リ更ニ處分ヲ爲ス爲必要アルトキハ前條ノ規定ニ依ラス別ニ徵兵署ヲ設クルコトヲ得
第二十五條 壯丁ノ兵役ノ適否ヲ定ムル爲聯隊區徵兵署ニ於テ聯隊區徵兵官ノ面前ニ於テ其ノ身體檢査ヲ行フ
町村長ハ前項ノ身體檢査ニ列席シ徵兵官ノ諮問ニ應スヘシ
第二十六條 聯隊區司令官ハ壯丁ノ身體檢査ノ事ヲ監督シ兵種ノ選定ニ任ス
第二十七條 聯隊區徵兵醫官ハ壯丁ノ體格等位ノ決定ニ任ス
第二十八條 郡市長ハ徵兵署ニ於ケル身體檢査ノ準備ヲ爲シ壯丁ノ身上ニ關スル調査ニ任ス
第二十九條 壯丁ノ身體檢査終ルトキハ聯隊區徵兵官ハ徵集延期、徵集免除及兵役免除ノ處分ヲ爲スヘシ
第三十條 身體檢査ニ合格シタル壯丁ハ徵募區每ニ陸軍ニ在リテハ步兵、騎兵、砲兵山砲兵ヲ除ク、山砲兵、工兵隊兵、鐵道隊兵、電信隊兵、航空隊兵、氣球隊兵、輜重兵隊兵、自動車隊兵、輜重輸卒、縫工卒、靴工卒及補助看護卒ノ兵種ニ分チ海軍ニ在リテハ水兵、機關兵、軍樂生、木工、看護及主廚ノ兵種ニ分チ體格等位ニ區別シ聯隊區徵兵署又ハ聯隊區聯合徵兵署ニ於テ抽籤ヲ行フ
第三十一條 抽籤ハ第五條ノ市ヲ除クノ外聯隊區徵兵官及町村長、第五條ノ市ニ於テハ聯隊區聯合徵兵官列席シ抽籤總代人ヲシテ之ヲ爲サシム
抽籤總代人ハ徵兵官其ノ年ノ壯丁ニ就キ市町村長ヲシテ之ヲ選定セシム其ノ人員ハ適宜トス
第三十二條 徵兵令第十二條ノ規定ニ依リ現役ニ服セムコトヲ志願スル者アルトキハ聯隊區司令官又ハ海軍人事部長之ヲ許可スルコトヲ得
第三十三條 徵兵適齡ニ達スル者ニシテ抽籤ノ法ニ依ラス現役ニ服セムコトヲ志願スル者アルトキハ聯隊區司令官之ヲ許可スルコトヲ得
第三十四條 各徵募區ノ抽籤終ルトキハ聯隊區司令官ハ第二十一條ノ規定ニ依ル配賦ニ基キ現役兵及補充兵編入ノ處分ヲ爲スヘシ
第三十五條 他ノ徵募區ニ寄留スル者ハ本人ノ願ニ依リ其ノ地ニ於テ身體檢査ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ身體檢査ヲ受ケタル者ニ付テハ兵種ヲ假定シ寄留地ノ徵募區ニ於ケル壯丁ト合シテ抽籤ヲ行フコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ身體檢査ヲ受ケタル者ノ兵種ノ選定ハ本籍地ノ聯隊區司令官之ニ任ス
第三十六條 徵募區ニ於ケル徵兵署閉鎖後ニ於テ身體檢査ヲ要スル者アルトキハ他ノ徵兵署ニ於テ身體檢査ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ身體檢査ヲ受ケタル者ニ付テハ前條第二項及第三項ノ規定ヲ準用ス
第三十七條 徵募事務終ルトキハ管內徵兵事務ノ狀況ヲ聯隊區司令官ハ師團長ニ、師團長ハ陸軍大臣ニ報吿シ陸軍大臣ハ全國徵兵事務ノ狀況ヲ奏上スヘシ
第六章 裁決
第三十八條 裁決ハ假決及終決ニ之ヲ分ツ
第三十九條 假決ハ徵集延期ヲ、終決ハ現役兵編入、補充兵編入、要員超過、徵集免除又ハ兵役免除ヲ裁決スルモノトス
第四十條 徵集延期、徵集免除及兵役免除ノ裁決ハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外聯隊區徵兵官之ヲ爲シ其ノ他ノ裁決ハ聯隊區司令官之ヲ爲ス
第四十一條 壯丁又ハ其ノ家族ニ於テ聯隊區徵兵官ノ爲シタル徵兵令第二十二條ニ規定スル徵集延期ノ裁決ニ不服アルトキハ師管徵兵官ニ訴願スルコトヲ得其ノ訴願ノ裁決ニ不服アルトキハ總理徵兵官ニ訴願スルコトヲ得但シ訴願ノ爲ニ裁決ノ執行ヲ停止セス
訴願書ハ裁決書ヲ受ケタル日ヨリ二十日內ニ之ヲ發スヘシ其ノ期日ヲ過クルモノハ之ヲ受理セス
第四十二條 訴願書ハ壯丁ノ徵募區內其ノ年徵集ニ應スヘキ他ノ壯丁ノ屬スル家ノ戶主三人ノ保證書ヲ添ヘ其ノ裁決ヲ爲シタル徵兵官ヲ經由シテ之ヲ差出スヘシ
前項ノ徵兵官訴願書ヲ受ケタルトキハ前ノ裁決ニ關スル書類ヲ添ヘ上級ノ徵兵官ニ差出スヘシ
第四十三條 總理徵兵官又ハ師管徵兵官ハ下級徵兵官ノ處分違法又ハ不當ナリト認ムルトキハ之ヲ取消シ更ニ處分ヲ命スヘシ但シ師管徵兵官ハ總理徵兵官ノ認可ヲ受クヘシ
聯隊區徵兵官其ノ爲シタル處分違法又ハ不當ナルコトヲ發見シタル場合ニ於テ之ヲ取消シ更ニ處分ヲ爲スニハ陸軍大臣ノ定ムル場合ヲ除クノ外師管徵兵官ノ認可ヲ受クヘシ師管徵兵官認可ヲ爲ス場合ニ於テハ總理徵兵官ノ認可ヲ受クヘシ
第四十四條 徵兵官ノ裁決ニ對シテハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第七章 現役兵入營
第四十五條 現役兵警備隊兵及輜重輸卒ヲ除クノ入營期日ハ徵集年ノ十二月一日トス
警備隊兵ノ入營ハ二期ニ分チ第一期ハ徵集年ノ十二月一日、第二期ハ翌年六月一日トス
輜重輸卒ノ入營ハ四期ニ分チ第一期ハ徵集年ノ十二月一日、第二期ハ翌年三月一日、第三期ハ同年六月一日、第四期ハ同年九月一日トス但シ第七、第八、第九及第十三師管ニ於テハ三期ニ分チ第一期ハ徵集年ノ翌年三月一日、第二期ハ同年六月一日、第三期ハ同年九月一日トス
第四十六條 疾病、犯罪其ノ他ノ事故ニ因リ前條ノ規定ニ依リ入營シ難キ者ニ付テハ聯隊區司令官ハ警備隊兵及輜重輸卒ニ在リテハ入營ノ月ノ十日迄、其ノ他ノ現役兵ニ在リテハ入營ノ月ノ三十一日迄入營期日ヲ延期スルコトヲ得
第四十七條 陸軍大臣ハ戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要ノ場合ニ於テハ前二條ノ規定ニ依ル入營期日ヲ變更スルコトヲ得
第四十八條 陸軍大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ現役兵入營ニ際シ已ムヲ得サル事故アル場合ニ於テハ前三條又ハ第五十一條ノ規定ニ依ル入營期日ノ後二十日內其ノ入營ヲ延期スルコトヲ得
第四十九條 現役兵入營前ハ戶籍ノ移動アルモ所屬ノ除籍ヲ變更セス
第五十條 聯隊區司令官ハ現役兵入營ノ際傷痍又ハ疾病ニ因リ常備及後備兵役ニ堪ヘサル者ナルトキハ徵集ヲ免除シ永久兵役ニ堪ヘサル者ナルトキハ兵役ヲ免除ス但シ徵兵令第十二條ノ規定ニ依リ現役ヲ志願シタル者ニシテ之ニ該ルモノニ付テハ陸軍大臣ハ免除ニ付別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第八章 現役兵補闕
第五十一條 現役兵死亡、疾病、犯罪其ノ他ノ事故ニ因リ闕員ヲ生シタルトキハ徵集年ノ翌年一月三十一日海軍兵ニ在リテハ徵集年ノ十二月三十一日迄ニ其ノ徵募區ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徵集順序ニ從ヒ闕員ヲ補充ス但シ警備隊兵及輜重輸卒ニ在リテハ第四十五條第二項及第三項ニ揭クル入營ノ月ノ十日迄ニ次期入營スヘキ者ヲ逐次繰リ上ケ入營セシメ終期ニ闕員ヲ補充ス
第五十二條 臨時ニ現役兵多數ノ闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ前條ノ期日ノ規定ニ拘ラス闕員ヲ補充スルコトヲ得
第五十三條 徵兵令第十二條ノ規定ニ依リ陸軍現役兵ニ採用シタル者闕員ト爲リタル場合ノ補充ハ之ヲ採用シタル聯隊區內ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徵集順序ニ從ヒ闕員ヲ補充ス
第五十四條 現役兵ヲ第五十一條ノ規定ニ依リ其ノ徵募區ヨリ補充スルコト能ハサルトキハ其ノ聯隊區內ノ他ノ徵募區ヨリ、第五十一條及前條ノ規定ニ依リ其ノ聯隊區ヨリ補充スルコト能ハサルトキハ其ノ師管內ノ他ノ聯隊區ヨリ、其ノ師管ヨリ補充スルコト能ハサルトキハ他ノ師管ヨリ闕員ヲ補充スルコトヲ得其ノ補充ハ徵集順序ニ依ル
第五十五條 前二條ノ規定ニ依ル補充員ノ配賦ハ各徵募區、各聯隊區又ハ各師管ニ於ケル同兵種補充兵ノ總數ニ比例シテ之ヲ定ム
第九章 徵集延期
第五十六條 徵兵令第二十二條ノ規定ニ依ル徵集延期ノ處分ハ軍事救護法ニ依リ救護ヲ受クルモ其ノ家族自活シ能ハサル者ニ限リ之ヲ爲ス
第五十七條 現役兵入營前徵兵令第二十二條ニ揭クル事故生スルトキハ本人ノ願ニ依リ聯隊區司令官其ノ徵集ヲ延期ス
第五十八條 徵兵令第二十三條ノ二ノ規定ニ依リ願出ツル者ハ大使、公使、領事官又ハ貿易事務官ノ證明書ヲ添ヘ每年聯隊區徵兵官ニ願書ヲ差出スヘシ
第五十九條 徵兵令第二十七條ニ該ル者ハ翌年更ニ身體檢査ヲ行ヒ徵否ヲ定ム但シ輜重輸卒ニ在リテハ身體檢査ヲ行ハサルコトヲ得
第十章 雜則
第六十條 徵兵令第七條ノ二第二項ノ規定ニ依リ兵籍ヨリ除カルルニ至リタル者左ノ各號ノ一ニ該ルモノナルトキハ之ヲ徵集ス但シ徵兵終決處分ヲ經タル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 現役軍人ト爲リ其ノ服役三年未滿ノ者
二 兵籍ニ編入セラレタル學生生徒
三 海軍豫備員ト爲リ召集セラレタル期間三年未滿ノ者
第六十一條 徵兵署ノ諸費、壯丁及抽籤總代人ノ旅費竝現役兵入營ノ旅費ハ官給ス但シ徵兵令第十二條ノ規定ニ依リ現役ヲ志願スル者ノ身體檢査ヲ受クル爲ノ旅費ハ自辨トス
第六十二條 聯隊區司令官ハ一年志願兵又ハ一年現役兵ノ入營前傷痍又ハ疾病ニ因リ其ノ者常備及後備兵役ニ堪ヘサルモノナルトキハ徵集ヲ免除シ永久兵役ニ堪ヘサルモノナルトキハ兵役ヲ免除ス但シ其ノ年十二月一日ニ於テ徵兵適齡未滿ノ者ニ付テハ陸軍大臣ハ免除ニ付別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
附 則
本令ハ大正八年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十七年勅令第六十四號及同年勅令第二百十五號ハ之ヲ廢止ス
大正七年法律第二十四號附則第三項又ハ第五項ノ規定ニ依リ舊法ニ依ル徵集猶豫ヲ願出ツル者ハ學校長ノ證明書ヲ添ヘ每年聯隊區徵兵官ニ願書ヲ差出スヘシ
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ徴兵事務条例改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年九月十三日
内閣総理大臣 原敬
海軍大臣 加藤友三郎
陸軍大臣 田中義一
内務大臣 床次竹二郎
勅令第四百二十五号
徴兵事務条例
第一章 総則
第一条 本令中郡市又ハ郡市町村長ニ関スル規定ハ第五条ノ市ニ於テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外区又ハ区長ニ、郡制市制町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ郡市又ハ郡市町村長ニ準スヘキモノニ之ヲ適用ス
本令中連隊区司令官又ハ連隊区ニ関スル規定ハ警備隊区ニ於テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外警備隊司令官又ハ警備隊区ニ之ヲ適用ス
第二条 師団長ハ本令中ノ規定ヲ適用シ難キ島嶼ニ於テハ地方長官ニ協議シ其ノ規定ニ付適宜ノ措置ヲ為スコトヲ得
第二章 徴兵区
第三条 徴兵区ハ師管及連隊区ノ区域ニ従ヒ連隊区ハ之ヲ徴募区ニ分ツ
第四条 徴募区ハ郡又ハ市ノ管轄区域ニ従フ市カ二以上ノ連隊区ニ分属スルトキハ其ノ分属スル部分ヲ一徴募区トス
第五条 東京市、京都市、大阪市及名古屋市ニ於テハ徴募区ヲ検査区ニ分チ市ノ区ヲ以テ検査区トス
第六条 歩兵隊ノ兵員ハ連隊毎ニ其ノ師管ノ一連隊区ヨリ、他ノ兵員ハ其ノ師管ヨリ之ヲ徴集ス
要員配賦上ノ必要アルトキハ他ノ連隊区又ハ師管ヨリ之ヲ徴集スルコトヲ得
徴兵区ヲ有セサル団隊ノ兵員ハ師管ヲ通シテ之ヲ徴集ス
警備隊ノ兵員ハ其ノ警備隊区ヨリ之ヲ徴集ス
海軍ノ兵員ハ師管ヲ通シテ之ヲ徴集ス
第三章 徴兵官
第七条 徴兵官ハ総理徴兵官、師管徴兵官、連隊区徴兵官及連隊区連合徴兵官トス
第八条 総理徴兵官ハ陸軍大臣及内務大臣ヲ以テ之ニ充テ全国徴兵ノ事務ヲ統轄ス
第九条 師管徴兵官ハ師管内道府県毎ニ師団長及地方長官ヲ以テ之ニ充テ師団長ヲ首座トシ徴兵ノ事務ヲ統轄ス
第十条 連隊区徴兵官ハ第五条ノ市ヲ除クノ外連隊区内ノ徴募区毎ニ連隊区司令官及郡市長ヲ以テ之ニ充テ連隊区司令官ヲ首座トシ徴募事務ヲ執行シ第五条ノ市ニ於テハ検査区毎ニ連隊区司令官及区長ヲ以テ之ニ充テ連隊区司令官ヲ首座トシ抽籤事務ヲ除クノ外徴募事務ヲ執行ス
第十一条 連隊区連合徴兵官ハ第五条ノ市ノ徴募区毎ニ連隊区司令官、市長及区長ヲ以テ之ニ充テ連隊区司令官ヲ首座トシ抽籤事務ヲ執行ス
第十二条 前二条ノ徴兵官事故アルトキハ連隊区司令官ニ在リテハ師団長ノ指名シタル其ノ部下ノ将校、郡市長区長ニ在リテハ其ノ職務ヲ代理スル者徴兵官ノ職務ヲ代理ス
第十三条 師管徴兵医官、連隊区徴兵医官及連隊区徴兵副医官ハ毎年徴募事務執行中之ヲ置ク
師管徴兵医官ハ師団長ニ属シ師管内ノ徴兵身体検査ニ関スル事務ヲ管掌ス
連隊区徴兵医官ハ連隊区司令官ニ属シ連隊区内ノ徴兵身体検査ニ関スル事務ヲ管掌ス
連隊区徴兵副医官ハ連隊区徴兵医官ヲ補佐ス
第十四条 師管徴兵医官ハ師団軍医部長ヲ以テ之ニ充ツ
連隊区徴兵医官ハ陸軍一等軍医一人ヲ以テ之ニ充ツ
連隊区徴兵副医官ハ陸軍二三等軍医ノ内一人ヲ以テ之ニ充ツ
師団長必要ト認ムルトキハ陸軍二三等軍医ノ内二人ヲ以テ前項ノ副医官ニ充ツルコトヲ得
第十五条 戦時又ハ事変ニ際シ前条ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ連隊区徴兵医官ハ陸軍軍医正又ハ陸軍二三等軍医ヲ以テ、連隊区徴兵副医官ハ医師免許証ヲ有スル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第十六条 壮丁僅少ナル島嶼ニ於ケル身体検査ニ付テハ連隊区徴兵副医官ノ置カサルコトヲ得
第十七条 師団長又ハ師団軍医部長遠隔ノ地ニ在ル為師管徴兵官又ハ師管徴兵医官ノ職務ヲ行ヒ難キ場合ニ於テハ陸軍大臣他ノ師団長又ハ師団軍医部長ヲ指定シテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第十八条 連隊区内ノ壮丁多数其ノ他ノ事由ニ因リ陸軍大臣ノ定ムル期間内ニ身体検査ヲ終了シ難キトキハ師団長ハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ部下ノ佐官ヲシテ徴募区又ハ検査区ヲ限リ連隊区徴兵官タル連隊区司令官ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ連隊区司令官ノ職務ヲ代理スル者ハ其ノ代理ニ関シ当該連隊区司令官ノ区処ヲ承ク
第一項ノ規定ニ依ル徴募事務ノ執行ニ付テハ第十四条ノ規定ニ依リ別ニ連隊区徴兵医官及連隊区徴兵副医官ヲ置ク
第十九条 徴兵署ニ事務員ヲ置キ庶務ニ従事セシム
前項ノ事務員ハ陸軍下士及郡市第五条ノ市ニ於テハ市及区ノ官吏吏員ヲ以テ之ニ充ツ
第四章 兵員配賦
第二十条 毎年徴集スル現役兵及補充兵ノ員数ハ上裁ヲ経テ陸軍大臣之ヲ各師管ニ配賦ス
第二十一条 師団長ハ師管ニ配賦セラレタル員数ヲ各連隊区ニ、連隊区司令官ハ連隊区ニ配賦セラレタル員数ヲ各徴募区ニ配賦ス
第二十二条 現役兵及補充兵ノ員数ノ配賦ハ身体検査ヲ受クル見込ノ壮丁人員ヲ基準トシテ之ヲ定ム
第五章 徴募
第二十三条 徴募事務執行ノ為第五条ノ市ヲ除クノ外徴募区毎ニ連隊区徴兵署ヲ毎年設ク
第五条ノ市ニ於テハ抽籤事務ヲ除クノ外徴募事務執行ノ為検査区毎ニ連隊区徴兵署ヲ、抽籤事務執行ノ為徴募区毎ニ連隊区連合徴兵署ヲ毎年設ク
第二十四条 第四十三条ノ規定ニ依リ更ニ処分ヲ為ス為必要アルトキハ前条ノ規定ニ依ラス別ニ徴兵署ヲ設クルコトヲ得
第二十五条 壮丁ノ兵役ノ適否ヲ定ムル為連隊区徴兵署ニ於テ連隊区徴兵官ノ面前ニ於テ其ノ身体検査ヲ行フ
町村長ハ前項ノ身体検査ニ列席シ徴兵官ノ諮問ニ応スヘシ
第二十六条 連隊区司令官ハ壮丁ノ身体検査ノ事ヲ監督シ兵種ノ選定ニ任ス
第二十七条 連隊区徴兵医官ハ壮丁ノ体格等位ノ決定ニ任ス
第二十八条 郡市長ハ徴兵署ニ於ケル身体検査ノ準備ヲ為シ壮丁ノ身上ニ関スル調査ニ任ス
第二十九条 壮丁ノ身体検査終ルトキハ連隊区徴兵官ハ徴集延期、徴集免除及兵役免除ノ処分ヲ為スヘシ
第三十条 身体検査ニ合格シタル壮丁ハ徴募区毎ニ陸軍ニ在リテハ歩兵、騎兵、砲兵山砲兵ヲ除ク、山砲兵、工兵隊兵、鉄道隊兵、電信隊兵、航空隊兵、気球隊兵、輜重兵隊兵、自動車隊兵、輜重輸卒、縫工卒、靴工卒及補助看護卒ノ兵種ニ分チ海軍ニ在リテハ水兵、機関兵、軍楽生、木工、看護及主厨ノ兵種ニ分チ体格等位ニ区別シ連隊区徴兵署又ハ連隊区連合徴兵署ニ於テ抽籤ヲ行フ
第三十一条 抽籤ハ第五条ノ市ヲ除クノ外連隊区徴兵官及町村長、第五条ノ市ニ於テハ連隊区連合徴兵官列席シ抽籤総代人ヲシテ之ヲ為サシム
抽籤総代人ハ徴兵官其ノ年ノ壮丁ニ就キ市町村長ヲシテ之ヲ選定セシム其ノ人員ハ適宜トス
第三十二条 徴兵令第十二条ノ規定ニ依リ現役ニ服セムコトヲ志願スル者アルトキハ連隊区司令官又ハ海軍人事部長之ヲ許可スルコトヲ得
第三十三条 徴兵適齢ニ達スル者ニシテ抽籤ノ法ニ依ラス現役ニ服セムコトヲ志願スル者アルトキハ連隊区司令官之ヲ許可スルコトヲ得
第三十四条 各徴募区ノ抽籤終ルトキハ連隊区司令官ハ第二十一条ノ規定ニ依ル配賦ニ基キ現役兵及補充兵編入ノ処分ヲ為スヘシ
第三十五条 他ノ徴募区ニ寄留スル者ハ本人ノ願ニ依リ其ノ地ニ於テ身体検査ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ身体検査ヲ受ケタル者ニ付テハ兵種ヲ仮定シ寄留地ノ徴募区ニ於ケル壮丁ト合シテ抽籤ヲ行フコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ身体検査ヲ受ケタル者ノ兵種ノ選定ハ本籍地ノ連隊区司令官之ニ任ス
第三十六条 徴募区ニ於ケル徴兵署閉鎖後ニ於テ身体検査ヲ要スル者アルトキハ他ノ徴兵署ニ於テ身体検査ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ身体検査ヲ受ケタル者ニ付テハ前条第二項及第三項ノ規定ヲ準用ス
第三十七条 徴募事務終ルトキハ管内徴兵事務ノ状況ヲ連隊区司令官ハ師団長ニ、師団長ハ陸軍大臣ニ報告シ陸軍大臣ハ全国徴兵事務ノ状況ヲ奏上スヘシ
第六章 裁決
第三十八条 裁決ハ仮決及終決ニ之ヲ分ツ
第三十九条 仮決ハ徴集延期ヲ、終決ハ現役兵編入、補充兵編入、要員超過、徴集免除又ハ兵役免除ヲ裁決スルモノトス
第四十条 徴集延期、徴集免除及兵役免除ノ裁決ハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外連隊区徴兵官之ヲ為シ其ノ他ノ裁決ハ連隊区司令官之ヲ為ス
第四十一条 壮丁又ハ其ノ家族ニ於テ連隊区徴兵官ノ為シタル徴兵令第二十二条ニ規定スル徴集延期ノ裁決ニ不服アルトキハ師管徴兵官ニ訴願スルコトヲ得其ノ訴願ノ裁決ニ不服アルトキハ総理徴兵官ニ訴願スルコトヲ得但シ訴願ノ為ニ裁決ノ執行ヲ停止セス
訴願書ハ裁決書ヲ受ケタル日ヨリ二十日内ニ之ヲ発スヘシ其ノ期日ヲ過クルモノハ之ヲ受理セス
第四十二条 訴願書ハ壮丁ノ徴募区内其ノ年徴集ニ応スヘキ他ノ壮丁ノ属スル家ノ戸主三人ノ保証書ヲ添ヘ其ノ裁決ヲ為シタル徴兵官ヲ経由シテ之ヲ差出スヘシ
前項ノ徴兵官訴願書ヲ受ケタルトキハ前ノ裁決ニ関スル書類ヲ添ヘ上級ノ徴兵官ニ差出スヘシ
第四十三条 総理徴兵官又ハ師管徴兵官ハ下級徴兵官ノ処分違法又ハ不当ナリト認ムルトキハ之ヲ取消シ更ニ処分ヲ命スヘシ但シ師管徴兵官ハ総理徴兵官ノ認可ヲ受クヘシ
連隊区徴兵官其ノ為シタル処分違法又ハ不当ナルコトヲ発見シタル場合ニ於テ之ヲ取消シ更ニ処分ヲ為スニハ陸軍大臣ノ定ムル場合ヲ除クノ外師管徴兵官ノ認可ヲ受クヘシ師管徴兵官認可ヲ為ス場合ニ於テハ総理徴兵官ノ認可ヲ受クヘシ
第四十四条 徴兵官ノ裁決ニ対シテハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第七章 現役兵入営
第四十五条 現役兵警備隊兵及輜重輸卒ヲ除クノ入営期日ハ徴集年ノ十二月一日トス
警備隊兵ノ入営ハ二期ニ分チ第一期ハ徴集年ノ十二月一日、第二期ハ翌年六月一日トス
輜重輸卒ノ入営ハ四期ニ分チ第一期ハ徴集年ノ十二月一日、第二期ハ翌年三月一日、第三期ハ同年六月一日、第四期ハ同年九月一日トス但シ第七、第八、第九及第十三師管ニ於テハ三期ニ分チ第一期ハ徴集年ノ翌年三月一日、第二期ハ同年六月一日、第三期ハ同年九月一日トス
第四十六条 疾病、犯罪其ノ他ノ事故ニ因リ前条ノ規定ニ依リ入営シ難キ者ニ付テハ連隊区司令官ハ警備隊兵及輜重輸卒ニ在リテハ入営ノ月ノ十日迄、其ノ他ノ現役兵ニ在リテハ入営ノ月ノ三十一日迄入営期日ヲ延期スルコトヲ得
第四十七条 陸軍大臣ハ戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要ノ場合ニ於テハ前二条ノ規定ニ依ル入営期日ヲ変更スルコトヲ得
第四十八条 陸軍大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ現役兵入営ニ際シ已ムヲ得サル事故アル場合ニ於テハ前三条又ハ第五十一条ノ規定ニ依ル入営期日ノ後二十日内其ノ入営ヲ延期スルコトヲ得
第四十九条 現役兵入営前ハ戸籍ノ移動アルモ所属ノ除籍ヲ変更セス
第五十条 連隊区司令官ハ現役兵入営ノ際傷痍又ハ疾病ニ因リ常備及後備兵役ニ堪ヘサル者ナルトキハ徴集ヲ免除シ永久兵役ニ堪ヘサル者ナルトキハ兵役ヲ免除ス但シ徴兵令第十二条ノ規定ニ依リ現役ヲ志願シタル者ニシテ之ニ該ルモノニ付テハ陸軍大臣ハ免除ニ付別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第八章 現役兵補闕
第五十一条 現役兵死亡、疾病、犯罪其ノ他ノ事故ニ因リ闕員ヲ生シタルトキハ徴集年ノ翌年一月三十一日海軍兵ニ在リテハ徴集年ノ十二月三十一日迄ニ其ノ徴募区ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徴集順序ニ従ヒ闕員ヲ補充ス但シ警備隊兵及輜重輸卒ニ在リテハ第四十五条第二項及第三項ニ掲クル入営ノ月ノ十日迄ニ次期入営スヘキ者ヲ逐次繰リ上ケ入営セシメ終期ニ闕員ヲ補充ス
第五十二条 臨時ニ現役兵多数ノ闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ前条ノ期日ノ規定ニ拘ラス闕員ヲ補充スルコトヲ得
第五十三条 徴兵令第十二条ノ規定ニ依リ陸軍現役兵ニ採用シタル者闕員ト為リタル場合ノ補充ハ之ヲ採用シタル連隊区内ニ於ケル同兵種ノ補充兵ヲ以テ徴集順序ニ従ヒ闕員ヲ補充ス
第五十四条 現役兵ヲ第五十一条ノ規定ニ依リ其ノ徴募区ヨリ補充スルコト能ハサルトキハ其ノ連隊区内ノ他ノ徴募区ヨリ、第五十一条及前条ノ規定ニ依リ其ノ連隊区ヨリ補充スルコト能ハサルトキハ其ノ師管内ノ他ノ連隊区ヨリ、其ノ師管ヨリ補充スルコト能ハサルトキハ他ノ師管ヨリ闕員ヲ補充スルコトヲ得其ノ補充ハ徴集順序ニ依ル
第五十五条 前二条ノ規定ニ依ル補充員ノ配賦ハ各徴募区、各連隊区又ハ各師管ニ於ケル同兵種補充兵ノ総数ニ比例シテ之ヲ定ム
第九章 徴集延期
第五十六条 徴兵令第二十二条ノ規定ニ依ル徴集延期ノ処分ハ軍事救護法ニ依リ救護ヲ受クルモ其ノ家族自活シ能ハサル者ニ限リ之ヲ為ス
第五十七条 現役兵入営前徴兵令第二十二条ニ掲クル事故生スルトキハ本人ノ願ニ依リ連隊区司令官其ノ徴集ヲ延期ス
第五十八条 徴兵令第二十三条ノ二ノ規定ニ依リ願出ツル者ハ大使、公使、領事官又ハ貿易事務官ノ証明書ヲ添ヘ毎年連隊区徴兵官ニ願書ヲ差出スヘシ
第五十九条 徴兵令第二十七条ニ該ル者ハ翌年更ニ身体検査ヲ行ヒ徴否ヲ定ム但シ輜重輸卒ニ在リテハ身体検査ヲ行ハサルコトヲ得
第十章 雑則
第六十条 徴兵令第七条ノ二第二項ノ規定ニ依リ兵籍ヨリ除カルルニ至リタル者左ノ各号ノ一ニ該ルモノナルトキハ之ヲ徴集ス但シ徴兵終決処分ヲ経タル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 現役軍人ト為リ其ノ服役三年未満ノ者
二 兵籍ニ編入セラレタル学生生徒
三 海軍予備員ト為リ召集セラレタル期間三年未満ノ者
第六十一条 徴兵署ノ諸費、壮丁及抽籤総代人ノ旅費並現役兵入営ノ旅費ハ官給ス但シ徴兵令第十二条ノ規定ニ依リ現役ヲ志願スル者ノ身体検査ヲ受クル為ノ旅費ハ自弁トス
第六十二条 連隊区司令官ハ一年志願兵又ハ一年現役兵ノ入営前傷痍又ハ疾病ニ因リ其ノ者常備及後備兵役ニ堪ヘサルモノナルトキハ徴集ヲ免除シ永久兵役ニ堪ヘサルモノナルトキハ兵役ヲ免除ス但シ其ノ年十二月一日ニ於テ徴兵適齢未満ノ者ニ付テハ陸軍大臣ハ免除ニ付別段ノ定ヲ為スコトヲ得
附 則
本令ハ大正八年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十七年勅令第六十四号及同年勅令第二百十五号ハ之ヲ廃止ス
大正七年法律第二十四号附則第三項又ハ第五項ノ規定ニ依リ旧法ニ依ル徴集猶予ヲ願出ツル者ハ学校長ノ証明書ヲ添ヘ毎年連隊区徴兵官ニ願書ヲ差出スヘシ