朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル徵兵令改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十一日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
陸軍大臣 宇垣一成
海軍大臣 財部彪
法律第四十七號
兵役法
第一章 總則
第一條 帝國臣民タル男子ハ本法ノ定ムル所ニ依リ兵役ニ服ス
第二條 兵役ハ之ヲ常備兵役、後備兵役、補充兵役及國民兵役ニ分ツ
常備兵役ハ之ヲ現役及豫備役ニ、補充兵役ハ之ヲ第一補充兵役及第二補充兵役ニ、國民兵役ハ之ヲ第一國民兵役及第二國民兵役ニ分ツ
第三條 志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第四條 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ兵役ニ服スルコトヲ得ズ
第二章 服役
第五條 現役ハ陸軍ニ在リテハ二年、海軍ニ在リテハ三年トシ現役兵トシテ徵集セラレタル者之ニ服ス
現役兵ハ現役中之ヲ在營セシム
第六條 豫備役ハ陸軍ニ在リテハ五年四月、海軍ニ在リテハ四年トシ現役ヲ終リタル者之ニ服ス
第七條 後備兵役ハ陸軍ニ在リテハ十年、海軍ニ在リテハ五年トシ常備兵役ヲ終リタル者之ニ服ス
第八條 第一補充兵役ハ陸軍ニ在リテハ十二年四月、海軍ニ在リテハ一年トシ現役ニ適スル者ニシテ其ノ年所要ノ現役兵員ニ超過スル者ノ中所要ノ人員之ニ服ス
第二補充兵役ハ十二年四月トシ現役ニ適スル者ノ中現役又ハ第一補充兵役ニ徵集セラレザル者及海軍ノ第一補充兵役ヲ終リタル者之ニ服ス但シ海軍ノ第一補充兵役ヲ終リタル者ニ在リテハ十一年四月トス
第九條 第一國民兵役ハ後備兵役ヲ終リタル者及軍隊ニ於テ敎育ヲ受ケタル補充兵ニシテ補充兵役ヲ終リタル者之ニ服ス
第二國民兵役ハ戶籍法ノ適用ヲ受クル者ニシテ常備兵役、後備兵役、補充兵役及第一國民兵役ニ在ラザル年齡十七年ヨリ四十年迄ノ者之ニ服ス
第十條 年齡二十五年迄ニ師範學校ヲ卒業シタル者(小學校ノ敎職ニ就クノ資格ヲ失ヒタル者ヲ除ク)ノ現役ハ第五條ノ規定ニ拘ラズ五月トス但シ師範學校ノ敎練ヲ修了セザル者ニ在リテハ七月トス
前項ノ規定ニ依リ現役ニ服スル者ハ現役中之ヲ短期現役兵ト稱ス
短期現役兵其ノ現役ヲ終リタルトキハ直ニ第一國民兵役ニ服ス
第十一條 現役兵ニシテ靑年訓練所ノ訓練又ハ之ト同等以上ト認ムル訓練ヲ修了シタル者ノ在營期間ハ六月以內之ヲ短縮スルコトヲ得
前項ニ規定スル認定及在營期間短縮ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 現役兵ニシテ前條ノ規定ノ適用ヲ受ケザル者ノ在營期間ハ軍事上妨ゲナキトキニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ六十日以內之ヲ短縮スルコトヲ得
第十三條 現役兵ニシテ一年六月以內ニ於テ敎育ヲ修了シ得ル兵種ニ屬スル者ノ在營期間ハ前二條ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
第十四條 現役兵ニシテ在營中左ノ各號ノ一ニ該當スル者ノ在營期間ハ之ヲ短縮スルコトヲ得
一 品行方正學術勤務ノ成績優秀ナル者
二 定員ニ對シ過剩ト爲リタル者
第十五條 前四條ノ規定ハ短期現役兵ニ之ヲ適用セズ
第十六條 第十一條乃至第十四條ノ規定ニ依リ在營期間ヲ短縮スル場合ニ於テハ現役期間內ニ未入營期間又ハ歸休期間ヲ置ク
第十七條 現役又ハ補充兵役ハ現役兵又ハ補充兵トシテ徵集シタル年ノ十二月一日ヨリ之ヲ起算ス
短期現役兵ノ現役ハ入營ノ月ノ一日ヨリ之ヲ起算ス
戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前二項ニ規定スル起算ノ日ヲ變更スルコトヲ得
第十八條 第五條乃至第八條、第九條第一項及第十條ニ規定スル服役ハ其ノ期間ニ拘ラズ年齡四十年ヲ以テ限トス
第十九條 左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ服役ノ期間ヲ延長スルコトヲ得
一 戰時又ハ事變ニ際スルトキ
二 出師ノ準備又ハ守備若ハ警備ノ爲必要アルトキ
三 航海中又ハ外國ニ於テ勤務中ナルトキ
四 重要ナル演習又ハ特別ニ觀兵ノ擧アルトキ
五 天災其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ已ムヲ得ザルトキ
前項ノ規定ニ依リ延長シタル期間ハ次ニ服スベキ兵役ノ期間ニ之ヲ通算ス
第二十條 在營中本人ニ依ルニ非ザレバ家族(戶主ヲ含ミ本人ト世帶ヲ同ジクスル者ニ限ル)ガ生活ヲ爲スコト能ハザルニ至リタルトキハ現役ヲ免除ス但シ故意ニ其ノ事故ヲ作爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十一條 現役兵、豫備兵、後備兵若ハ補充兵ニシテ疾病其ノ他身體若ハ精神ノ異常ニ因リ當該兵役ニ服シ難キ者又ハ現役兵ニシテ前條ノ規定ニ依リ現役ヲ免除セラレタル者ハ之ヲ他ノ兵役ニ轉ゼシム但シ疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ兵役ニ堪ヘザル者ニ對シテハ兵役ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ轉役スル者ノ服スベキ兵役及服役期間ノ計算ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條 現役兵ニシテ入營前又ハ入營後六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ノ在營中刑ノ執行ヲ受ケタル日數及在營中逃亡シタル者ノ逃亡中ノ日數ハ之ヲ現役期間ニ算入セズ
第三章 徵集
第二十三條 戶籍法ノ適用ヲ受クル者ニシテ前年十二月一日ヨリ其ノ年十一月三十日迄ノ間ニ於テ年齡二十年ニ達スル者ハ本法中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外徵兵檢查ヲ受クルコトヲ要ス
前項ニ規定スル年齡ハ之ヲ徵兵適齡ト稱ス
第二十四條 戶主ハ其ノ家族中每年十二月一日ヨリ同月三十一日迄ノ間ニ年齡二十年ト爲ル者アルトキハ翌年一月中ニ、一月一日ヨリ十一月三十日迄ノ間ニ年齡二十年ト爲ル者アルトキハ其ノ年一月中ニ本籍ノ市町村長ニ屆出ヅベシ戶主年齡二十年ト爲ルトキ亦同ジ但シ命令ヲ以テ定ムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十五條 兵員ヲ徵集スル爲徵兵區ヲ設ク
徵兵區ハ之ヲ徵募區ニ分ツ
徵兵區ノ種類及區域竝ニ徵募區ノ區域ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第二十六條 現役兵及第一補充兵ノ員數ハ之ヲ徵兵區ニ配賦シ更ニ之ヲ徵募區ニ配賦ス
前項ニ規定スル配賦ハ徵兵區又ハ徵募區ニ本籍ヲ有シ徵兵檢查ヲ受クベキ者ノ見込數ヲ基準トシテ之ヲ行フ
第二十七條 前條ノ規定ニ依リ配賦シタル兵員ハ當該徵募區ニ本籍ヲ有スル者ヨリ之ヲ徵集ス
第二十八條 徵兵區又ハ徵募區ニ配賦シタル兵員ヲ當該徵兵區又ハ徵募區ニ於テ充足シ難キトキハ其ノ不足員數ヲ他ノ徵兵區又ハ徵募區ニ配賦シ徵集スルコトヲ得
第二十九條 徵兵檢查ハ徵兵檢查ヲ受クベキ者ノ本籍所在ノ徵募區ニ於テ之ヲ行フ但シ身體檢查ニ限リ本籍所在ノ徵募區以外ノ地ニ於テ行フコトヲ得
第三十條 徵兵檢查ヲ受クベキ者徵兵檢查ヲ受クベキ年ニ於テ之ヲ受ケザルトキハ次年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ
第三十一條 身體檢查ヲ受ケタル者ニシテ現役兵又ハ第一補充兵トシテ徵集セラルベキ者ハ他ノ徵募區ニ轉屬スルモ之ヲ轉屬前ノ徵募區ノ配賦人員ニ充テ徵集ス
第三十二條 身體檢查ヲ受ケタル者ハ左ノ如ク之ヲ區分ス
一 現役ニ適スル者
二 國民兵役ニ適スルモ現役ニ適セザル者
三 兵役ニ適セザル者
四 兵役ノ適否ヲ判定シ難キ者
前項ニ規定スル區分ノ標準ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第三十三條 現役ニ適スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ體格等位ノ優劣ニ從ヒ各徵募區ノ配賦人員ニ應ジ現役兵、第一補充兵ノ順序ニ之ヲ徵集ス此ノ場合ニ於テ體格等位同一ナル者ハ本法中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外兵種每ニ抽籤ノ法ニ依リ徵集順序ヲ定ム
前項ノ規定ニ依リ徵集スベキ者ノ屬スル兵種ハ各徵募區ノ配賦人員ニ應ジ其ノ身材、藝能及職業ニ依リ之ヲ定ム
現役ニ適スル者ニシテ現役兵又ハ第一補充兵ニ徵集セザル者ハ之ヲ第二補充兵ニ徵集ス
現役兵トシテ徵集セラルベキ者ニシテ其ノ屬スル兵種定マリタル者ハ本人ノ願ニ依リ第一項ニ規定スル抽籤ニ加フルコトナク現役兵ニ之ヲ徵集スルコトヲ得
第三十四條 國民兵役ニ適スルモ現役ニ適セザル者ハ之ヲ徵集セズ
第三十五條 兵役ニ適セザル者ハ兵役ヲ免除ス
第三十六條 兵役ノ適否ヲ判定シ難キ者ニ付テハ徵集ヲ延期シ爾後適否ヲ決定シ得ルニ至ル迄每年徵兵檢查ヲ行フ
第三十七條 徵兵檢查ヲ受クベキ者勅令ノ定ムル所ニ依リ兵役ニ適セズト認ムル疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ノ者ナルトキハ其ノ事實ヲ證明スベキ書類ニ基キ身體檢查ヲ行フコトナク兵役ヲ免除スルコトヲ得
第三十八條 短期現役兵タルノ資格ヲ有スル者ニシテ現役ニ適スル者ハ第三十三條ノ規定ニ拘ラズ之ヲ短期現役兵ニ徵集ス
第二十六條乃至第二十八條ノ規定ハ短期現役兵ノ徵集ニ關シ之ヲ適用セズ
第三十九條 徵兵檢查ヲ受クベキ者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ徵集ヲ延期スルコトヲ得
一 禁錮以上ノ刑ニ該ルベキ犯罪ノ爲豫審又ハ公判中ナルトキ
二 犯罪ノ爲拘禁中ナルトキ
三 刑ノ執行停止中ナルトキ
四 假出獄中ナルトキ
五 少年法ノ定ムル所ニ依リ感化院、矯正院又ハ病院ニ收容中ナルトキ
六 矯正院法ノ定ムル所ニ依リ假退院中ナルトキ
前項ノ規定ハ現役ニ適スル者ニシテ未ダ徵集順序定マラザル者ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者ハ其ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ
第四十條 徵兵檢查ヲ受ケタル者現役兵トシテ徵集セラルルニ因リ家族(戶主ヲ含ミ本人ト世帶ヲ同ジクスル者ニ限ル)ガ生活ヲ爲スコト能ハザルニ至ルベキ確證アル場合ニ於テハ二年間徵集ヲ延期ス但シ故意ニ其ノ事故ヲ作爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者其ノ延期期間內ニ於テ其ノ事由止ムトキハ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ
第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者其ノ延期期間ヲ過ギ尙其ノ事由止マザルトキハ之ヲ過ギタル年ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ但シ現役兵又ハ第一補充兵トシテ徵集スルコトナシ
第一項ノ延期期間ハ徵兵檢查ヲ受ケタル年ノ十二月一日ヨリ之ヲ起算ス
第四十一條 中學校又ハ中學校ノ學科程度ト同等以上ト認ムル學校ニ在學スル者ニ對シテハ本人ノ願ニ依リ學校ノ修業年限ニ應ジ年齡二十七年ニ至ル迄徵集ヲ延期ス
前項ニ規定スル認定及年齡ノ區分ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者ハ在學ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ但シ一ノ學校卒業ノ日ヨリ六月以內ニ他ノ學校ニ入學スル者ニ付テハ徵集延期ノ事由尙繼續スルモノト看做ス
第二項ノ年齡ノ區分ニ基ク最高年齡ニ達スルモ在學ノ事由尙止マザル者ハ最高年齡ニ達シタル年又ハ其ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ
第四十二條 徵兵適齡及其ノ前ヨリ帝國外ノ地ニ在ル者(勅令ヲ以テ定ムル者ヲ除ク)ニ對シテハ本人ノ願ニ依リ徵集ヲ延期ス
前項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者ハ其ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ
第四十三條 前條第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者ニシテ直系尊屬若ハ妻子ノ死亡若ハ重態ノ爲又ハ官廳ノ命ニ依リ一時帝國內ニ歸還スル者ハ徵集延期ノ事由尙繼續スルモノト看做ス但シ歸還後ノ滯在期間九十日ヲ超ユルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ニ規定スル場合ヲ除クノ外前條第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタル者ニシテ一時帝國內ニ歸還スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ在留地ノ遠近ニ應ジ一年間一囘滯在期間九十日ヲ超エザル場合ニ限リ徵集延期ノ事由尙繼續スルモノト看做ス
前二項ノ規定ニ該當スル者ニシテ歸還後ノ滯在間ニ於テ疾病其ノ他避クベカラザル事故生ジ前二項ニ規定スル期間內ニ出發シ難キ者アルトキハ其ノ滯在期間ヲ延長スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ延長シタル期間徵集延期ノ事由尙繼續スルモノト看做ス
第四十四條 前二條ノ規定ハ帝國外ノ地ヲ往復スル帝國船舶ノ船員ニ之ヲ準用ス
第四十五條 家族(戶主ヲ含ミ本人ト世帶ヲ同ジクスル者ニ限ル)二人以上現役兵トシテ同時ニ在營スル爲家事上ノ支障ヲ生ズベキトキハ一人ノ在營間他ノ者ノ入營ヲ延期スルコトヲ得
第十七條第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ入營ヲ延期セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第四十六條 現役兵トシテ入營スベキ者疾病其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ入營スベキ期日ニ入營シ難キトキ又ハ第三十九條第一項各號ノ一ニ該當スルトキハ三十一日以內入營ヲ延期スルコトヲ得
現役兵トシテ入營スベキ者ニシテ前項ニ規定スル入營ヲ延期シ得ベキ期間內ニ入營シ難キ者ニ對シテハ更ニ徵兵檢查ヲ行フ但シ第十三條ニ規定スル兵種ニ屬スル者ニ在リテハ更ニ徵兵檢查ヲ行フコトナク次ノ入營スベキ期日ニ入營セシムルコトヲ得
第四十七條 現役兵トシテ入營スベキ者入營ノ際行フ身體檢查ニ於テ疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ三十一日以內ニ治癒ノ見込ナク且勤務ニ堪ヘズト認ムル者ナルトキハ之ヲ歸鄕セシメ第二十一條ノ規定ノ適用ヲ受クル者ヲ除クノ外更ニ徵兵檢查ヲ行フ
前條第二項但書ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ歸鄕セシメラレタル者ニ之ヲ準用ス
第四十八條 現役兵ニ闕員ヲ生ジタル場合ニ於テハ服役第一年次ノ第一補充兵ヲ以テ其ノ徵集順序ニ從ヒ之ヲ補闕スルコトヲ得
第二十七條及第二十八條ノ規定ハ前項ニ規定スル補闕ニ之ヲ準用ス
第四十九條 左ニ揭グル者(第一號、第二號、第五號及第六號ノ者ニ在リテハ徵兵適齡ヲ過ギタル者ニ限ル)徵集セラルル場合ニ於テハ第三十三條第一項ニ規定スル抽籤ニ加ヘザルモノトス但シ二人以上アルトキハ其ノ者ノミニ付抽籤ヲ行ヒ徵集順序ヲ定ム
一 第四十一條第三項又ハ第四項ノ規定ニ該當スル者
二 第四十二條第二項又ハ第四十四條ノ規定ニ該當スル者
三 第四十六條第二項ノ規定ニ該當スル者
四 第四十七條ノ規定ニ該當スル者
五 第六十六條第一項ノ規定ニ該當スル者
六 第六十七條ノ規定ニ該當スル者
七 第七十四條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者
八 第七十六條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者
前項ニ揭グル者ノ徵集順序ハ第三十三條第一項ノ規定ニ依リ抽籤ヲ爲シタル者ノ上位トシ同條第四項ノ規定ニ依リ徵集セラルベキ者ノ徵集順序ハ前項ニ揭グル者ノ上位トス
第五十條 第七十四條又ハ第七十六條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者ニ對シテハ第四十條乃至第四十二條、第四十四條及第四十五條ノ規定ニ依ル延期ヲ爲サズ
第五十一條 戶籍ノ記載ノ抹消又ハ遺漏其ノ他ノ事由ニ因リ戶籍ニ記載セラレザル爲本籍ヲ有セザル者ニシテ徵兵檢查ヲ受クベキ者ヲ發見シタルトキハ發見ノ年又ハ其ノ翌年ニ於テ徵兵檢查ヲ行フ
徵兵檢查ヲ受ケタル者戶籍ニ記載セラレアル出生年月日ノ訂正ニ因リ徵兵適齡又ハ徵兵適齡未滿ト爲リタルトキハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヲ除クノ外更ニ徵兵檢查ヲ行フ
一 現役中ノ者又ハ現役ヲ終リタル者
二 補充兵ニシテ敎育ノ爲召集中ノ者又ハ其ノ召集ヲ終リタル者
三 第三十七條ノ規定ニ依リ兵役ヲ免除セラレタル者
第五十二條 戶籍法ノ適用ヲ受ケザル者ニシテ徵兵適齡ヲ過ギ戶籍法ノ適用ヲ受クル者ノ家ニ入リタル者ニ對シテハ徵集ヲ免除ス
前項ノ規定ハ徵兵適齡ヲ過ギ帝國ノ國籍ヲ取得シ又ハ囘復シタル者ニ之ヲ準用ス
第五十三條 第三十條、第三十六條、第三十九條第三項、第四十條第二項若ハ第三項、第四十一條第三項若ハ第四項、第四十二條第二項、第四十四條、第四十六條第二項、第四十七條、第五十一條第一項、第六十六條第一項又ハ第六十七條ノ規定ニ依リ徵兵檢查ヲ受クベキ者年齡三十七年ヲ過ギタルトキハ徵集ヲ免除ス
前項ノ年齡ハ第十七條第一項又ハ第二項ニ規定スル現役又ハ補充兵役ノ起算ノ日ニ於ケル年齡トス
第四章 召集
第五十四條 歸休兵、豫備兵、後備兵、補充兵又ハ國民兵ハ戰時又ハ事變ニ際シ必要ニ應ジ之ヲ召集ス
第五十五條 歸休兵ハ在營兵ノ補闕其ノ他必要アル場合ニ之ヲ召集スルコトヲ得
服役第一年次ノ豫備兵ハ警備其ノ他ノ必要ニ因リ歸休兵ヲ召集スルモ尙兵員ヲ要スル場合ニ之ヲ召集スルコトヲ得
第五十六條 豫備兵及後備兵ハ勤務演習ノ爲豫備役及後備兵役ヲ通ジ五囘以內之ヲ召集スルコトヲ得
前項ニ規定スル召集ハ一年一囘トシ一囘ノ日數ハ陸軍ニ在リテハ三十五日以內、海軍ニ在リテハ七十日以內トス
第五十七條 第一補充兵ハ敎育ノ爲百二十日以內之ヲ召集スルコトヲ得
第五十八條 補充兵ニシテ軍隊ニ於テ敎育ヲ受ケタル者ハ勤務演習ノ爲之ヲ召集スルコトヲ得
第五十六條ノ規定ハ前項ニ規定スル召集ニ之ヲ準用ス
第五十九條 勤務演習ニ召集セラレタル者召集中犯罪ノ爲又ハ正當ノ事由ナク勤務演習ヲ闕キタルトキハ其ノ闕キタル日數又ハ囘數ヲ勤務演習ノ日數又ハ囘數ニ算入セズ正當ノ事由ナク召集ノ期日ニ後レタルトキ亦同ジ
前項ノ規定ハ敎育ノ爲召集セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第六十條 歸休兵、豫備兵、後備兵及補充兵ニ對シテハ每年一囘簡閱點呼ヲ行フコトヲ得
第六十一條 歸休兵、豫備兵、後備兵又ハ補充兵ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ勤務演習召集又ハ簡閱點呼ヲ免除スルコトヲ得
一 餘人ヲ以テ代フベカラザル職ニ在ル官吏又ハ官吏待遇者
二 市町村長、助役、收入役其ノ他之ニ準ズベキ職ニ在ル者
三 帝國議會、府縣會、市長村會其ノ他之ニ準ズベキモノノ議員但シ其ノ會期中ニ限ル
四 帝國外ノ地ニ旅行又ハ在留スル者
五 帝國外ノ地ヲ往復スル帝國船舶ノ船員
第六十二條 召集セラレタル者疾病其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ召集ニ應ジ難キトキハ十日以內召集ヲ延期スルコトヲ得
召集セラレタル者第三十九條第一項各號ノ一ニ該當シ召集期日ニ召集ニ應ジ難キトキ又ハ前項ノ規定ニ依リ召集ヲ延期セラレタル者其ノ延期期間內ニ召集ニ應ジ難キトキハ召集期日又ハ召集年次ヲ變更ス
前二項ノ規定ハ簡閱點呼ニ參會ヲ命ゼラレタル者ニ之ヲ準用ス
召集セラレタル者入營ノ際行フ身體檢查ニ於テ疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ勤務ニ堪ヘズト認ムル者ナルトキハ召集ヲ免除ス
第六十三條 召集セラレタル者召集ニ因リ家族(戶主ヲ含ミ本人ト世帶ヲ同ジクスル者ニ限ル)ガ生活ヲ爲スコト能ハザルノ確證アル場合ニ於テハ召集ヲ免除ス但シ故意ニ其ノ事故ヲ作爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第五章 雜則
第六十四條 第一補充兵ニシテ第四十八條ノ規定ニ依リ現役兵ノ補闕ニ充テラレ現役ニ服スルニ至リタル者ノ旣ニ服シタル第一補充兵役ノ期間ハ之ヲ現役ノ期間ニ通算ス
第六十五條 第四十六條ノ規定ニ依リ後レテ入營シタル者又ハ第四十八條第一項ノ規定ニ依リ補闕トシテ後レテ入營シタル者ト雖モ其ノ在營期間ノ計算ニ關シテハ後レズシテ入營シタルモノト看做ス但シ犯罪ノ爲又ハ正當ノ事由ナク後レテ入營シタル者ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ハ第六十二條第一項ノ規定ニ依リ召集ヲ延期セラレタル者ニシテ其ノ延期期間內ニ召集ニ應ジタル者ニ之ヲ準用ス
第六十六條 志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニシテ兵籍ヨリ除カルルニ至リタル者勅令ノ定ムル期間服役セザル者ナルトキハ更ニ徵兵檢查ヲ行フ
前項ノ規定ニ依リ徵兵檢查ヲ受ケタル者現役兵トシテ徵集セラレタル場合ニ於ケル現役期間ノ計算ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第六十七條 短期現役兵トシテ現役ヲ終リタル者年齡二十八年迄ノ間ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ更ニ徵兵檢查ヲ行フ此ノ場合ニ於テ現役兵トシテ徵集セラレタルトキハ前ノ現役期間ヲ後ノ現役期間ニ、前ニ在營シタル期間ヲ後ニ在營スベキ期間ニ通算ス但シ第十三條ノ規定ニ該當スル現役兵トシテ徵集セラレタルトキハ前ニ在營シタル期間ヲ後ニ在營スベキ期間ニ通算セズ
一 小學校ノ敎職ニ就クノ資格ヲ失ヒタルトキ
二 現役ヲ終リタル日ヨリ六月ヲ經過シタル日及其ノ後ニ於テ小學校ノ敎職ニ在ラザルトキ
前項ノ規定ハ短期現役兵トシテ現役中小學校ノ敎職ニ就クノ資格ヲ失ヒタル者ニ之ヲ準用ス
第六十八條 本法ニ規定スルモノノ外兵役ニ關シ必要ナル屆出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ爲サシムルコトヲ得
第六十九條 市町村長ハ兵役(第二國民兵役ヲ除ク)ニ在ル者ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ戶籍ノ欄外ニ兵役ノ略符號ヲ附スベシ
戶籍法第三條ノ規定ハ前項ニ規定スル事務ニ之ヲ準用ス
第七十條 本法中本人ヨリ願出ヲ爲スベキ場合ニ於テ本人事故アルトキハ戶主之ヲ爲スコトヲ得
第七十一條 本法中戶主ニ關スル規定ハ戶主未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ戶主ノ法定代理人ニ、戶主若ハ戶主ノ法定代理人未ダ決定セザルトキ又ハ避クベカラザル事故アルトキハ家族中家事ヲ擔當スル者ニ之ヲ適用ス
第七十二條 本法中市長ニ關スル規定(第六十一條ノ規定ヲ除ク)ハ區長ヲ以テ戶籍ニ關スル事務ヲ管掌スル者ト爲シタル市ニ在リテハ區長ニ之ヲ適用ス
本法中町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ準ズベキ者ニ之ヲ適用ス
第七十三條 本法ニ規定スル學校中ニハ帝國外ノ地ニ在リテ帝國臣民ノ爲ニ設置シタル學校ニシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ指定シタルモノヲ包含ス
第六章 罰則
第七十四條 兵役ヲ免ルル爲逃亡シ若ハ潛匿シ又ハ身體ヲ毀傷シ若ハ疾病ヲ作爲シ其ノ他詐僞ノ行爲ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第七十五條 現役兵トシテ入營スベキ者正當ノ事由ナク入營ノ期日ニ後レ十日ヲ過ギタルトキハ六月以下ノ禁錮ニ處シ戰時ニ在リテ五日ヲ過ギタルトキハ一年以下ノ禁錮ニ處ス
前項ノ規定ハ志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレ服役スル者ニ之ヲ準用ス
第七十六條 正當ノ事由ナク徵兵檢查ヲ受ケザル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第七十七條 第二十四條ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲サザル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第七十八條 前四條ノ規定ハ何人ヲ問ハズ帝國外ニ於テ其ノ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス
附 則
本法ハ昭和二年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行ノ際現ニ豫備役ニ在ル者ノ服役期間ハ尙從前ノ規定ニ依ル此ノ場合ニ於テハ第五十五條第二項ノ規定ヲ適用セズ
本法施行ノ際現ニ補充兵役ニ在ル者ハ第一補充兵役ニ服スルモノトス
本法施行ノ際現ニ徵兵令第二十三條ノ規定ニ依リ入營ヲ延期セラレ居ル者ニ付テハ尙從前ノ例ニ依ル其ノ徵集セラルル場合ニ於ケル徵集順序ニ關シテハ第四十九條ノ例ニ依ル
刑法施行法第二十六條第二號ヲ左ノ如ク改ム
二 削除
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル徴兵令改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十一日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
陸軍大臣 宇垣一成
海軍大臣 財部彪
法律第四十七号
兵役法
第一章 総則
第一条 帝国臣民タル男子ハ本法ノ定ムル所ニ依リ兵役ニ服ス
第二条 兵役ハ之ヲ常備兵役、後備兵役、補充兵役及国民兵役ニ分ツ
常備兵役ハ之ヲ現役及予備役ニ、補充兵役ハ之ヲ第一補充兵役及第二補充兵役ニ、国民兵役ハ之ヲ第一国民兵役及第二国民兵役ニ分ツ
第三条 志願ニ依リ兵籍ニ編入セラルル者ノ兵役ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第四条 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ハ兵役ニ服スルコトヲ得ズ
第二章 服役
第五条 現役ハ陸軍ニ在リテハ二年、海軍ニ在リテハ三年トシ現役兵トシテ徴集セラレタル者之ニ服ス
現役兵ハ現役中之ヲ在営セシム
第六条 予備役ハ陸軍ニ在リテハ五年四月、海軍ニ在リテハ四年トシ現役ヲ終リタル者之ニ服ス
第七条 後備兵役ハ陸軍ニ在リテハ十年、海軍ニ在リテハ五年トシ常備兵役ヲ終リタル者之ニ服ス
第八条 第一補充兵役ハ陸軍ニ在リテハ十二年四月、海軍ニ在リテハ一年トシ現役ニ適スル者ニシテ其ノ年所要ノ現役兵員ニ超過スル者ノ中所要ノ人員之ニ服ス
第二補充兵役ハ十二年四月トシ現役ニ適スル者ノ中現役又ハ第一補充兵役ニ徴集セラレザル者及海軍ノ第一補充兵役ヲ終リタル者之ニ服ス但シ海軍ノ第一補充兵役ヲ終リタル者ニ在リテハ十一年四月トス
第九条 第一国民兵役ハ後備兵役ヲ終リタル者及軍隊ニ於テ教育ヲ受ケタル補充兵ニシテ補充兵役ヲ終リタル者之ニ服ス
第二国民兵役ハ戸籍法ノ適用ヲ受クル者ニシテ常備兵役、後備兵役、補充兵役及第一国民兵役ニ在ラザル年齢十七年ヨリ四十年迄ノ者之ニ服ス
第十条 年齢二十五年迄ニ師範学校ヲ卒業シタル者(小学校ノ教職ニ就クノ資格ヲ失ヒタル者ヲ除ク)ノ現役ハ第五条ノ規定ニ拘ラズ五月トス但シ師範学校ノ教練ヲ修了セザル者ニ在リテハ七月トス
前項ノ規定ニ依リ現役ニ服スル者ハ現役中之ヲ短期現役兵ト称ス
短期現役兵其ノ現役ヲ終リタルトキハ直ニ第一国民兵役ニ服ス
第十一条 現役兵ニシテ青年訓練所ノ訓練又ハ之ト同等以上ト認ムル訓練ヲ修了シタル者ノ在営期間ハ六月以内之ヲ短縮スルコトヲ得
前項ニ規定スル認定及在営期間短縮ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 現役兵ニシテ前条ノ規定ノ適用ヲ受ケザル者ノ在営期間ハ軍事上妨ゲナキトキニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ六十日以内之ヲ短縮スルコトヲ得
第十三条 現役兵ニシテ一年六月以内ニ於テ教育ヲ修了シ得ル兵種ニ属スル者ノ在営期間ハ前二条ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
第十四条 現役兵ニシテ在営中左ノ各号ノ一ニ該当スル者ノ在営期間ハ之ヲ短縮スルコトヲ得
一 品行方正学術勤務ノ成績優秀ナル者
二 定員ニ対シ過剰ト為リタル者
第十五条 前四条ノ規定ハ短期現役兵ニ之ヲ適用セズ
第十六条 第十一条乃至第十四条ノ規定ニ依リ在営期間ヲ短縮スル場合ニ於テハ現役期間内ニ未入営期間又ハ帰休期間ヲ置ク
第十七条 現役又ハ補充兵役ハ現役兵又ハ補充兵トシテ徴集シタル年ノ十二月一日ヨリ之ヲ起算ス
短期現役兵ノ現役ハ入営ノ月ノ一日ヨリ之ヲ起算ス
戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前二項ニ規定スル起算ノ日ヲ変更スルコトヲ得
第十八条 第五条乃至第八条、第九条第一項及第十条ニ規定スル服役ハ其ノ期間ニ拘ラズ年齢四十年ヲ以テ限トス
第十九条 左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ服役ノ期間ヲ延長スルコトヲ得
一 戦時又ハ事変ニ際スルトキ
二 出師ノ準備又ハ守備若ハ警備ノ為必要アルトキ
三 航海中又ハ外国ニ於テ勤務中ナルトキ
四 重要ナル演習又ハ特別ニ観兵ノ挙アルトキ
五 天災其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ已ムヲ得ザルトキ
前項ノ規定ニ依リ延長シタル期間ハ次ニ服スベキ兵役ノ期間ニ之ヲ通算ス
第二十条 在営中本人ニ依ルニ非ザレバ家族(戸主ヲ含ミ本人ト世帯ヲ同ジクスル者ニ限ル)ガ生活ヲ為スコト能ハザルニ至リタルトキハ現役ヲ免除ス但シ故意ニ其ノ事故ヲ作為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十一条 現役兵、予備兵、後備兵若ハ補充兵ニシテ疾病其ノ他身体若ハ精神ノ異常ニ因リ当該兵役ニ服シ難キ者又ハ現役兵ニシテ前条ノ規定ニ依リ現役ヲ免除セラレタル者ハ之ヲ他ノ兵役ニ転ゼシム但シ疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ兵役ニ堪ヘザル者ニ対シテハ兵役ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ転役スル者ノ服スベキ兵役及服役期間ノ計算ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二条 現役兵ニシテ入営前又ハ入営後六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ノ在営中刑ノ執行ヲ受ケタル日数及在営中逃亡シタル者ノ逃亡中ノ日数ハ之ヲ現役期間ニ算入セズ
第三章 徴集
第二十三条 戸籍法ノ適用ヲ受クル者ニシテ前年十二月一日ヨリ其ノ年十一月三十日迄ノ間ニ於テ年齢二十年ニ達スル者ハ本法中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外徴兵検査ヲ受クルコトヲ要ス
前項ニ規定スル年齢ハ之ヲ徴兵適齢ト称ス
第二十四条 戸主ハ其ノ家族中毎年十二月一日ヨリ同月三十一日迄ノ間ニ年齢二十年ト為ル者アルトキハ翌年一月中ニ、一月一日ヨリ十一月三十日迄ノ間ニ年齢二十年ト為ル者アルトキハ其ノ年一月中ニ本籍ノ市町村長ニ届出ヅベシ戸主年齢二十年ト為ルトキ亦同ジ但シ命令ヲ以テ定ムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十五条 兵員ヲ徴集スル為徴兵区ヲ設ク
徴兵区ハ之ヲ徴募区ニ分ツ
徴兵区ノ種類及区域並ニ徴募区ノ区域ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第二十六条 現役兵及第一補充兵ノ員数ハ之ヲ徴兵区ニ配賦シ更ニ之ヲ徴募区ニ配賦ス
前項ニ規定スル配賦ハ徴兵区又ハ徴募区ニ本籍ヲ有シ徴兵検査ヲ受クベキ者ノ見込数ヲ基準トシテ之ヲ行フ
第二十七条 前条ノ規定ニ依リ配賦シタル兵員ハ当該徴募区ニ本籍ヲ有スル者ヨリ之ヲ徴集ス
第二十八条 徴兵区又ハ徴募区ニ配賦シタル兵員ヲ当該徴兵区又ハ徴募区ニ於テ充足シ難キトキハ其ノ不足員数ヲ他ノ徴兵区又ハ徴募区ニ配賦シ徴集スルコトヲ得
第二十九条 徴兵検査ハ徴兵検査ヲ受クベキ者ノ本籍所在ノ徴募区ニ於テ之ヲ行フ但シ身体検査ニ限リ本籍所在ノ徴募区以外ノ地ニ於テ行フコトヲ得
第三十条 徴兵検査ヲ受クベキ者徴兵検査ヲ受クベキ年ニ於テ之ヲ受ケザルトキハ次年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ
第三十一条 身体検査ヲ受ケタル者ニシテ現役兵又ハ第一補充兵トシテ徴集セラルベキ者ハ他ノ徴募区ニ転属スルモ之ヲ転属前ノ徴募区ノ配賦人員ニ充テ徴集ス
第三十二条 身体検査ヲ受ケタル者ハ左ノ如ク之ヲ区分ス
一 現役ニ適スル者
二 国民兵役ニ適スルモ現役ニ適セザル者
三 兵役ニ適セザル者
四 兵役ノ適否ヲ判定シ難キ者
前項ニ規定スル区分ノ標準ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第三十三条 現役ニ適スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ体格等位ノ優劣ニ従ヒ各徴募区ノ配賦人員ニ応ジ現役兵、第一補充兵ノ順序ニ之ヲ徴集ス此ノ場合ニ於テ体格等位同一ナル者ハ本法中別段ノ規定アルモノヲ除クノ外兵種毎ニ抽籤ノ法ニ依リ徴集順序ヲ定ム
前項ノ規定ニ依リ徴集スベキ者ノ属スル兵種ハ各徴募区ノ配賦人員ニ応ジ其ノ身材、芸能及職業ニ依リ之ヲ定ム
現役ニ適スル者ニシテ現役兵又ハ第一補充兵ニ徴集セザル者ハ之ヲ第二補充兵ニ徴集ス
現役兵トシテ徴集セラルベキ者ニシテ其ノ属スル兵種定マリタル者ハ本人ノ願ニ依リ第一項ニ規定スル抽籤ニ加フルコトナク現役兵ニ之ヲ徴集スルコトヲ得
第三十四条 国民兵役ニ適スルモ現役ニ適セザル者ハ之ヲ徴集セズ
第三十五条 兵役ニ適セザル者ハ兵役ヲ免除ス
第三十六条 兵役ノ適否ヲ判定シ難キ者ニ付テハ徴集ヲ延期シ爾後適否ヲ決定シ得ルニ至ル迄毎年徴兵検査ヲ行フ
第三十七条 徴兵検査ヲ受クベキ者勅令ノ定ムル所ニ依リ兵役ニ適セズト認ムル疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ノ者ナルトキハ其ノ事実ヲ証明スベキ書類ニ基キ身体検査ヲ行フコトナク兵役ヲ免除スルコトヲ得
第三十八条 短期現役兵タルノ資格ヲ有スル者ニシテ現役ニ適スル者ハ第三十三条ノ規定ニ拘ラズ之ヲ短期現役兵ニ徴集ス
第二十六条乃至第二十八条ノ規定ハ短期現役兵ノ徴集ニ関シ之ヲ適用セズ
第三十九条 徴兵検査ヲ受クベキ者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ徴集ヲ延期スルコトヲ得
一 禁錮以上ノ刑ニ該ルベキ犯罪ノ為予審又ハ公判中ナルトキ
二 犯罪ノ為拘禁中ナルトキ
三 刑ノ執行停止中ナルトキ
四 仮出獄中ナルトキ
五 少年法ノ定ムル所ニ依リ感化院、矯正院又ハ病院ニ収容中ナルトキ
六 矯正院法ノ定ムル所ニ依リ仮退院中ナルトキ
前項ノ規定ハ現役ニ適スル者ニシテ未ダ徴集順序定マラザル者ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者ハ其ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ
第四十条 徴兵検査ヲ受ケタル者現役兵トシテ徴集セラルルニ因リ家族(戸主ヲ含ミ本人ト世帯ヲ同ジクスル者ニ限ル)ガ生活ヲ為スコト能ハザルニ至ルベキ確証アル場合ニ於テハ二年間徴集ヲ延期ス但シ故意ニ其ノ事故ヲ作為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者其ノ延期期間内ニ於テ其ノ事由止ムトキハ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ
第一項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者其ノ延期期間ヲ過ギ尚其ノ事由止マザルトキハ之ヲ過ギタル年ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ但シ現役兵又ハ第一補充兵トシテ徴集スルコトナシ
第一項ノ延期期間ハ徴兵検査ヲ受ケタル年ノ十二月一日ヨリ之ヲ起算ス
第四十一条 中学校又ハ中学校ノ学科程度ト同等以上ト認ムル学校ニ在学スル者ニ対シテハ本人ノ願ニ依リ学校ノ修業年限ニ応ジ年齢二十七年ニ至ル迄徴集ヲ延期ス
前項ニ規定スル認定及年齢ノ区分ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者ハ在学ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ但シ一ノ学校卒業ノ日ヨリ六月以内ニ他ノ学校ニ入学スル者ニ付テハ徴集延期ノ事由尚継続スルモノト看做ス
第二項ノ年齢ノ区分ニ基ク最高年齢ニ達スルモ在学ノ事由尚止マザル者ハ最高年齢ニ達シタル年又ハ其ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ
第四十二条 徴兵適齢及其ノ前ヨリ帝国外ノ地ニ在ル者(勅令ヲ以テ定ムル者ヲ除ク)ニ対シテハ本人ノ願ニ依リ徴集ヲ延期ス
前項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者ハ其ノ事由止ム年又ハ其ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ
第四十三条 前条第一項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者ニシテ直系尊属若ハ妻子ノ死亡若ハ重態ノ為又ハ官庁ノ命ニ依リ一時帝国内ニ帰還スル者ハ徴集延期ノ事由尚継続スルモノト看做ス但シ帰還後ノ滞在期間九十日ヲ超ユルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ニ規定スル場合ヲ除クノ外前条第一項ノ規定ニ依リ徴集ヲ延期セラレタル者ニシテ一時帝国内ニ帰還スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ在留地ノ遠近ニ応ジ一年間一回滞在期間九十日ヲ超エザル場合ニ限リ徴集延期ノ事由尚継続スルモノト看做ス
前二項ノ規定ニ該当スル者ニシテ帰還後ノ滞在間ニ於テ疾病其ノ他避クベカラザル事故生ジ前二項ニ規定スル期間内ニ出発シ難キ者アルトキハ其ノ滞在期間ヲ延長スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ延長シタル期間徴集延期ノ事由尚継続スルモノト看做ス
第四十四条 前二条ノ規定ハ帝国外ノ地ヲ往復スル帝国船舶ノ船員ニ之ヲ準用ス
第四十五条 家族(戸主ヲ含ミ本人ト世帯ヲ同ジクスル者ニ限ル)二人以上現役兵トシテ同時ニ在営スル為家事上ノ支障ヲ生ズベキトキハ一人ノ在営間他ノ者ノ入営ヲ延期スルコトヲ得
第十七条第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ入営ヲ延期セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第四十六条 現役兵トシテ入営スベキ者疾病其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ入営スベキ期日ニ入営シ難キトキ又ハ第三十九条第一項各号ノ一ニ該当スルトキハ三十一日以内入営ヲ延期スルコトヲ得
現役兵トシテ入営スベキ者ニシテ前項ニ規定スル入営ヲ延期シ得ベキ期間内ニ入営シ難キ者ニ対シテハ更ニ徴兵検査ヲ行フ但シ第十三条ニ規定スル兵種ニ属スル者ニ在リテハ更ニ徴兵検査ヲ行フコトナク次ノ入営スベキ期日ニ入営セシムルコトヲ得
第四十七条 現役兵トシテ入営スベキ者入営ノ際行フ身体検査ニ於テ疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ三十一日以内ニ治癒ノ見込ナク且勤務ニ堪ヘズト認ムル者ナルトキハ之ヲ帰郷セシメ第二十一条ノ規定ノ適用ヲ受クル者ヲ除クノ外更ニ徴兵検査ヲ行フ
前条第二項但書ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ帰郷セシメラレタル者ニ之ヲ準用ス
第四十八条 現役兵ニ闕員ヲ生ジタル場合ニ於テハ服役第一年次ノ第一補充兵ヲ以テ其ノ徴集順序ニ従ヒ之ヲ補闕スルコトヲ得
第二十七条及第二十八条ノ規定ハ前項ニ規定スル補闕ニ之ヲ準用ス
第四十九条 左ニ掲グル者(第一号、第二号、第五号及第六号ノ者ニ在リテハ徴兵適齢ヲ過ギタル者ニ限ル)徴集セラルル場合ニ於テハ第三十三条第一項ニ規定スル抽籤ニ加ヘザルモノトス但シ二人以上アルトキハ其ノ者ノミニ付抽籤ヲ行ヒ徴集順序ヲ定ム
一 第四十一条第三項又ハ第四項ノ規定ニ該当スル者
二 第四十二条第二項又ハ第四十四条ノ規定ニ該当スル者
三 第四十六条第二項ノ規定ニ該当スル者
四 第四十七条ノ規定ニ該当スル者
五 第六十六条第一項ノ規定ニ該当スル者
六 第六十七条ノ規定ニ該当スル者
七 第七十四条ニ規定スル罪ヲ犯シ刑ニ処セラレタル者
八 第七十六条ニ規定スル罪ヲ犯シ刑ニ処セラレタル者
前項ニ掲グル者ノ徴集順序ハ第三十三条第一項ノ規定ニ依リ抽籤ヲ為シタル者ノ上位トシ同条第四項ノ規定ニ依リ徴集セラルベキ者ノ徴集順序ハ前項ニ掲グル者ノ上位トス
第五十条 第七十四条又ハ第七十六条ニ規定スル罪ヲ犯シ刑ニ処セラレタル者ニ対シテハ第四十条乃至第四十二条、第四十四条及第四十五条ノ規定ニ依ル延期ヲ為サズ
第五十一条 戸籍ノ記載ノ抹消又ハ遺漏其ノ他ノ事由ニ因リ戸籍ニ記載セラレザル為本籍ヲ有セザル者ニシテ徴兵検査ヲ受クベキ者ヲ発見シタルトキハ発見ノ年又ハ其ノ翌年ニ於テ徴兵検査ヲ行フ
徴兵検査ヲ受ケタル者戸籍ニ記載セラレアル出生年月日ノ訂正ニ因リ徴兵適齢又ハ徴兵適齢未満ト為リタルトキハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヲ除クノ外更ニ徴兵検査ヲ行フ
一 現役中ノ者又ハ現役ヲ終リタル者
二 補充兵ニシテ教育ノ為召集中ノ者又ハ其ノ召集ヲ終リタル者
三 第三十七条ノ規定ニ依リ兵役ヲ免除セラレタル者
第五十二条 戸籍法ノ適用ヲ受ケザル者ニシテ徴兵適齢ヲ過ギ戸籍法ノ適用ヲ受クル者ノ家ニ入リタル者ニ対シテハ徴集ヲ免除ス
前項ノ規定ハ徴兵適齢ヲ過ギ帝国ノ国籍ヲ取得シ又ハ回復シタル者ニ之ヲ準用ス
第五十三条 第三十条、第三十六条、第三十九条第三項、第四十条第二項若ハ第三項、第四十一条第三項若ハ第四項、第四十二条第二項、第四十四条、第四十六条第二項、第四十七条、第五十一条第一項、第六十六条第一項又ハ第六十七条ノ規定ニ依リ徴兵検査ヲ受クベキ者年齢三十七年ヲ過ギタルトキハ徴集ヲ免除ス
前項ノ年齢ハ第十七条第一項又ハ第二項ニ規定スル現役又ハ補充兵役ノ起算ノ日ニ於ケル年齢トス
第四章 召集
第五十四条 帰休兵、予備兵、後備兵、補充兵又ハ国民兵ハ戦時又ハ事変ニ際シ必要ニ応ジ之ヲ召集ス
第五十五条 帰休兵ハ在営兵ノ補闕其ノ他必要アル場合ニ之ヲ召集スルコトヲ得
服役第一年次ノ予備兵ハ警備其ノ他ノ必要ニ因リ帰休兵ヲ召集スルモ尚兵員ヲ要スル場合ニ之ヲ召集スルコトヲ得
第五十六条 予備兵及後備兵ハ勤務演習ノ為予備役及後備兵役ヲ通ジ五回以内之ヲ召集スルコトヲ得
前項ニ規定スル召集ハ一年一回トシ一回ノ日数ハ陸軍ニ在リテハ三十五日以内、海軍ニ在リテハ七十日以内トス
第五十七条 第一補充兵ハ教育ノ為百二十日以内之ヲ召集スルコトヲ得
第五十八条 補充兵ニシテ軍隊ニ於テ教育ヲ受ケタル者ハ勤務演習ノ為之ヲ召集スルコトヲ得
第五十六条ノ規定ハ前項ニ規定スル召集ニ之ヲ準用ス
第五十九条 勤務演習ニ召集セラレタル者召集中犯罪ノ為又ハ正当ノ事由ナク勤務演習ヲ闕キタルトキハ其ノ闕キタル日数又ハ回数ヲ勤務演習ノ日数又ハ回数ニ算入セズ正当ノ事由ナク召集ノ期日ニ後レタルトキ亦同ジ
前項ノ規定ハ教育ノ為召集セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第六十条 帰休兵、予備兵、後備兵及補充兵ニ対シテハ毎年一回簡閲点呼ヲ行フコトヲ得
第六十一条 帰休兵、予備兵、後備兵又ハ補充兵ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ勤務演習召集又ハ簡閲点呼ヲ免除スルコトヲ得
一 余人ヲ以テ代フベカラザル職ニ在ル官吏又ハ官吏待遇者
二 市町村長、助役、収入役其ノ他之ニ準ズベキ職ニ在ル者
三 帝国議会、府県会、市長村会其ノ他之ニ準ズベキモノノ議員但シ其ノ会期中ニ限ル
四 帝国外ノ地ニ旅行又ハ在留スル者
五 帝国外ノ地ヲ往復スル帝国船舶ノ船員
第六十二条 召集セラレタル者疾病其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ召集ニ応ジ難キトキハ十日以内召集ヲ延期スルコトヲ得
召集セラレタル者第三十九条第一項各号ノ一ニ該当シ召集期日ニ召集ニ応ジ難キトキ又ハ前項ノ規定ニ依リ召集ヲ延期セラレタル者其ノ延期期間内ニ召集ニ応ジ難キトキハ召集期日又ハ召集年次ヲ変更ス
前二項ノ規定ハ簡閲点呼ニ参会ヲ命ゼラレタル者ニ之ヲ準用ス
召集セラレタル者入営ノ際行フ身体検査ニ於テ疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ勤務ニ堪ヘズト認ムル者ナルトキハ召集ヲ免除ス
第六十三条 召集セラレタル者召集ニ因リ家族(戸主ヲ含ミ本人ト世帯ヲ同ジクスル者ニ限ル)ガ生活ヲ為スコト能ハザルノ確証アル場合ニ於テハ召集ヲ免除ス但シ故意ニ其ノ事故ヲ作為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第五章 雑則
第六十四条 第一補充兵ニシテ第四十八条ノ規定ニ依リ現役兵ノ補闕ニ充テラレ現役ニ服スルニ至リタル者ノ既ニ服シタル第一補充兵役ノ期間ハ之ヲ現役ノ期間ニ通算ス
第六十五条 第四十六条ノ規定ニ依リ後レテ入営シタル者又ハ第四十八条第一項ノ規定ニ依リ補闕トシテ後レテ入営シタル者ト雖モ其ノ在営期間ノ計算ニ関シテハ後レズシテ入営シタルモノト看做ス但シ犯罪ノ為又ハ正当ノ事由ナク後レテ入営シタル者ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ハ第六十二条第一項ノ規定ニ依リ召集ヲ延期セラレタル者ニシテ其ノ延期期間内ニ召集ニ応ジタル者ニ之ヲ準用ス
第六十六条 志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニシテ兵籍ヨリ除カルルニ至リタル者勅令ノ定ムル期間服役セザル者ナルトキハ更ニ徴兵検査ヲ行フ
前項ノ規定ニ依リ徴兵検査ヲ受ケタル者現役兵トシテ徴集セラレタル場合ニ於ケル現役期間ノ計算ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第六十七条 短期現役兵トシテ現役ヲ終リタル者年齢二十八年迄ノ間ニ於テ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ更ニ徴兵検査ヲ行フ此ノ場合ニ於テ現役兵トシテ徴集セラレタルトキハ前ノ現役期間ヲ後ノ現役期間ニ、前ニ在営シタル期間ヲ後ニ在営スベキ期間ニ通算ス但シ第十三条ノ規定ニ該当スル現役兵トシテ徴集セラレタルトキハ前ニ在営シタル期間ヲ後ニ在営スベキ期間ニ通算セズ
一 小学校ノ教職ニ就クノ資格ヲ失ヒタルトキ
二 現役ヲ終リタル日ヨリ六月ヲ経過シタル日及其ノ後ニ於テ小学校ノ教職ニ在ラザルトキ
前項ノ規定ハ短期現役兵トシテ現役中小学校ノ教職ニ就クノ資格ヲ失ヒタル者ニ之ヲ準用ス
第六十八条 本法ニ規定スルモノノ外兵役ニ関シ必要ナル届出ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ為サシムルコトヲ得
第六十九条 市町村長ハ兵役(第二国民兵役ヲ除ク)ニ在ル者ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ戸籍ノ欄外ニ兵役ノ略符号ヲ附スベシ
戸籍法第三条ノ規定ハ前項ニ規定スル事務ニ之ヲ準用ス
第七十条 本法中本人ヨリ願出ヲ為スベキ場合ニ於テ本人事故アルトキハ戸主之ヲ為スコトヲ得
第七十一条 本法中戸主ニ関スル規定ハ戸主未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ戸主ノ法定代理人ニ、戸主若ハ戸主ノ法定代理人未ダ決定セザルトキ又ハ避クベカラザル事故アルトキハ家族中家事ヲ担当スル者ニ之ヲ適用ス
第七十二条 本法中市長ニ関スル規定(第六十一条ノ規定ヲ除ク)ハ区長ヲ以テ戸籍ニ関スル事務ヲ管掌スル者ト為シタル市ニ在リテハ区長ニ之ヲ適用ス
本法中町村長ニ関スル規定ハ町村長ニ準ズベキ者ニ之ヲ適用ス
第七十三条 本法ニ規定スル学校中ニハ帝国外ノ地ニ在リテ帝国臣民ノ為ニ設置シタル学校ニシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ指定シタルモノヲ包含ス
第六章 罰則
第七十四条 兵役ヲ免ルル為逃亡シ若ハ潜匿シ又ハ身体ヲ毀傷シ若ハ疾病ヲ作為シ其ノ他詐偽ノ行為ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス
第七十五条 現役兵トシテ入営スベキ者正当ノ事由ナク入営ノ期日ニ後レ十日ヲ過ギタルトキハ六月以下ノ禁錮ニ処シ戦時ニ在リテ五日ヲ過ギタルトキハ一年以下ノ禁錮ニ処ス
前項ノ規定ハ志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレ服役スル者ニ之ヲ準用ス
第七十六条 正当ノ事由ナク徴兵検査ヲ受ケザル者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第七十七条 第二十四条ノ規定ニ依ル届出ヲ為サザル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第七十八条 前四条ノ規定ハ何人ヲ問ハズ帝国外ニ於テ其ノ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス
附 則
本法ハ昭和二年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行ノ際現ニ予備役ニ在ル者ノ服役期間ハ尚従前ノ規定ニ依ル此ノ場合ニ於テハ第五十五条第二項ノ規定ヲ適用セズ
本法施行ノ際現ニ補充兵役ニ在ル者ハ第一補充兵役ニ服スルモノトス
本法施行ノ際現ニ徴兵令第二十三条ノ規定ニ依リ入営ヲ延期セラレ居ル者ニ付テハ尚従前ノ例ニ依ル其ノ徴集セラルル場合ニ於ケル徴集順序ニ関シテハ第四十九条ノ例ニ依ル
刑法施行法第二十六条第二号ヲ左ノ如ク改ム
二 削除