朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル米穀統制法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月二十八日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
大藏大臣 高橋是淸
農林大臣 後藤文夫
拓務大臣 永井柳太郞
法律第二十四號
米穀統制法
第一條 政府ハ米穀ノ數量又ハ市價ヲ調節シ米穀ノ統制ヲ圖ル爲本法ニ依リ米穀ノ買入及賣渡ヲ行フ
第二條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ每年米穀ノ最低價格及最高價格ヲ公定シ之ヲ吿示ス
前項ノ最低價格及最高價格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀生產費、家計費及物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
前項ノ規定ニ依リ定メタル最低價格又ハ最高價格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物價ノ變動著シキ場合又ハ米穀ノ需給狀況ニ著シキ變動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テハ之ヲ改定スルコトヲ得
第三條 政府ハ前條ノ最低價格又ハ最高價格ヲ維持スル爲勅令ノ定ムル所ニ依リ最低價格ニ依ル賣渡ノ申込又ハ最高價格ニ依ル買入ノ申込ニ應ジテ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲ス
第四條 政府ハ道府縣ヨリ該地域外ニ又ハ朝鮮若ハ臺灣ヨリ內地ニ移出スル米穀ノ數量ヲ月別平均的ナラシムル爲勅令ノ定ムル所ニ依リ出廻期ニ於テ米穀ノ買入ヲ爲シ出廻期後ニ於テ米穀ノ賣渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第五條 政府ハ必要ニ應ジ所有米穀ノ貯藏、買換、交換、加工及整理ノ爲ニスル賣渡竝ニ輸入ヲ目的トスル米穀ノ買入及輸出ヲ目的トスル米穀ノ賣渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第六條 政府ハ米穀ノ買換ヲ爲サントスル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ買換ニ代ヘ買換ノ爲賣渡ヲ爲サントスル米穀ヲ道府縣ニ對シ貸付スルコトヲ得
第七條 米穀ノ輸入又ハ輸出ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第八條 政府ハ米穀ノ統制ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ粟、高梁又ハ黍ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第九條 政府ハ米穀ノ統制ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ヲ以テ期間ヲ指定シ米穀、粟、高梁又ハ黍ノ輸入稅ヲ增減又ハ免除スルコトヲ得
第十條 米穀生產費、家計費竝ニ米穀其ノ他ノ穀物ノ生產高、現在高、移動及價格ノ調查ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條 政府ハ前條ニ規定スル事項其ノ他米穀ノ統制ニ關シ必要ナル事項ヲ調查スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ米穀其ノ他ノ穀物ノ生產者、取引業者、倉庫業者其ノ他占有者ニ對シ必要ナル事項ノ報吿ヲ命ジ又ハ官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ營業所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ帳簿物件ヲ檢查セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該官吏又ハ吏員ハ其ノ身分ヲ證明スル證票ヲ携帶スベシ
第十二條 第七條ノ規定ニ違反シテ米穀ヲ輸入若ハ輸出シ又ハ第八條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ粟、高梁若ハ黍ヲ輸入シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處シ其ノ米穀、粟、高梁又ハ黍ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
營業者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ前項ノ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第七條ノ規定又ハ第八條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
法人ノ代表者其ノ他ノ從業者法人ノ業務ニ關シ第七條ノ規定又ハ第八條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ其ノ罰則ヲ法人ニ適用ス
第十三條 第十一條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ當該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ妨ゲタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
米穀法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前米穀法第三條ノ規定ニ依リ爲シタル許可ハ本法第七條ノ規定ニ依リ之ヲ爲シタルモノト看做ス
本法施行前ニ米穀法ノ罰則ヲ適用スベキ行爲アリタルトキハ本法施行ノ後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル米穀統制法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月二十八日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
大蔵大臣 高橋是清
農林大臣 後藤文夫
拓務大臣 永井柳太郎
法律第二十四号
米穀統制法
第一条 政府ハ米穀ノ数量又ハ市価ヲ調節シ米穀ノ統制ヲ図ル為本法ニ依リ米穀ノ買入及売渡ヲ行フ
第二条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年米穀ノ最低価格及最高価格ヲ公定シ之ヲ告示ス
前項ノ最低価格及最高価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀生産費、家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
前項ノ規定ニ依リ定メタル最低価格又ハ最高価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物価ノ変動著シキ場合又ハ米穀ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テハ之ヲ改定スルコトヲ得
第三条 政府ハ前条ノ最低価格又ハ最高価格ヲ維持スル為勅令ノ定ムル所ニ依リ最低価格ニ依ル売渡ノ申込又ハ最高価格ニ依ル買入ノ申込ニ応ジテ米穀ノ買入又ハ売渡ヲ為ス
第四条 政府ハ道府県ヨリ該地域外ニ又ハ朝鮮若ハ台湾ヨリ内地ニ移出スル米穀ノ数量ヲ月別平均的ナラシムル為勅令ノ定ムル所ニ依リ出廻期ニ於テ米穀ノ買入ヲ為シ出廻期後ニ於テ米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
前項ノ買入又ハ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第五条 政府ハ必要ニ応ジ所有米穀ノ貯蔵、買換、交換、加工及整理ノ為ニスル売渡並ニ輸入ヲ目的トスル米穀ノ買入及輸出ヲ目的トスル米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
前項ノ買入又ハ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第六条 政府ハ米穀ノ買換ヲ為サントスル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ買換ニ代ヘ買換ノ為売渡ヲ為サントスル米穀ヲ道府県ニ対シ貸付スルコトヲ得
第七条 米穀ノ輸入又ハ輸出ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第八条 政府ハ米穀ノ統制ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ粟、高梁又ハ黍ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第九条 政府ハ米穀ノ統制ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ヲ以テ期間ヲ指定シ米穀、粟、高梁又ハ黍ノ輸入税ヲ増減又ハ免除スルコトヲ得
第十条 米穀生産費、家計費並ニ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産高、現在高、移動及価格ノ調査ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 政府ハ前条ニ規定スル事項其ノ他米穀ノ統制ニ関シ必要ナル事項ヲ調査スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産者、取引業者、倉庫業者其ノ他占有者ニ対シ必要ナル事項ノ報告ヲ命ジ又ハ官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ営業所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ帳簿物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ当該官吏又ハ吏員ハ其ノ身分ヲ証明スル証票ヲ携帯スベシ
第十二条 第七条ノ規定ニ違反シテ米穀ヲ輸入若ハ輸出シ又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ粟、高梁若ハ黍ヲ輸入シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処シ其ノ米穀、粟、高梁又ハ黍ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
営業者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ前項ノ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第七条ノ規定又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
法人ノ代表者其ノ他ノ従業者法人ノ業務ニ関シ第七条ノ規定又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ其ノ罰則ヲ法人ニ適用ス
第十三条 第十一条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ当該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ妨ゲタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
米穀法ハ之ヲ廃止ス
本法施行前米穀法第三条ノ規定ニ依リ為シタル許可ハ本法第七条ノ規定ニ依リ之ヲ為シタルモノト看做ス
本法施行前ニ米穀法ノ罰則ヲ適用スベキ行為アリタルトキハ本法施行ノ後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス