米穀配給統制法
法令番号: 法律第八十一號
公布年月日: 昭和14年4月12日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル米穀配給統制法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年四月十一日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
內務大臣 侯爵 木戶幸一
商工大臣 八田嘉明
大藏大臣 石渡莊太郞
農林大臣 櫻內幸雄
法律第八十一號
米穀配給統制法
第一條 米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行ハントスル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ但シ勅令ヲ以テ定ムル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第二條 前條ノ許可ヲ受ケタル者命令ノ定ムル所ニ依リ正當ノ事由ナクシテ業務ヲ開始セザルトキ又ハ其ノ業務ヲ休止シタルトキハ政府ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第三條 政府第一條ノ許可ヲ受ケタル者ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第四條 政府ハ特ニ必要アル場合米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ヲ爲ス者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀ノ配給統制ニ關スル命令ヲ爲スコトヲ得
政府必要ト認ムルトキハ何時ニテモ第一條ノ許可ヲ受ケタル者ニ對シ其ノ業務ニ關スル諸般ノ報吿ヲ命ジ又ハ其ノ帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第五條 米穀市場ハ日本米穀株式會社ニ限リ之ヲ開設スルコトヲ得
日本米穀株式會社米穀市場ヲ開設セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市場每ニ政府ノ認可ヲ受クベシ
何人ト雖モ米穀市場ニ類似ノ施設ヲ爲シ又ハ其ノ施設ニ依リ取引ヲ爲スコトヲ得ズ
第六條 米穀市場ノ賣買取引ハ差金ノ授受ニ依リ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ズ但シ履行期ニ於ケル決濟ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
日本米穀株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ米穀市場ノ賣買取引ニ付證據金ヲ納メシメ又ハ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
米穀市場ノ賣買取引ノ方法其ノ他賣買取引ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 米穀市場ノ賣買取引ノ價格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀統制法第二條ノ最低價格及最高價格ニ準據シテ定ムル價格ノ範圍ヲ超ユルコトヲ得ズ
第八條 米穀市場ノ賣買取引ハ其ノ市場ノ市場員ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ命令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
市場員タラントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ免許ヲ受クベシ
第九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條第二項ノ免許ヲ受クルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一 帝國臣民又帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ非ザル者
二 破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
三 禁錮以上ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後三年ヲ經過スルニ至ル迄ノ者
四 米穀市場ノ市場員ニシテ除名セラレ除名ノ日ヨリ三年ヲ經過セザルモノ
五 第二十條ノ規定ニ依リ免許ヲ取消サレ取消ノ日ヨリ三年ヲ經過セザル者
六 營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セザル未成年者又ハ禁治產者ニシテ其ノ法定代理人ガ前各號ノ一ニ該當スルモノ
七 法人ニシテ其ノ業務ヲ執行スル役員中第一號乃至第五號ノ一ニ該當スル者アルモノ
第十條 米穀市場ノ市場員前條第一號乃至第四號、第六號若ハ第七號ニ該當スルニ至リタルトキ又ハ日本米穀株式會社ノ役員ト爲リタルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
政府ハ不正ノ手段ニ依リ第八條第二項ノ免許ヲ受ケタル者アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第十一條 本法ニ規定スルモノノ外市場員ノ資格其ノ他市場員ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 市場員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本米穀株式會社ニ身元保證金ヲ納付スベシ
第十三條 日本米穀株式會社ハ米穀市場ノ秩序ヲ保持スル爲定款ノ定ムル所ニ依リ市場員ノ業務ヲ停止シ、千圓以內ノ過怠金ヲ課シ又ハ政府ノ認可ヲ受ケ市場員ヲ除名スルコトヲ得
第十四條 市場員ハ業務ヲ廢止シタル後ト雖モ米穀市場ノ賣買取引ノ結了及監督ノ目的ノ範圍內ニ於テハ取引結了後二週間ヲ經過スル迄仍業務ヲ廢止セザルモノト看做ス
市場員死亡シ若ハ解散シ又ハ其ノ免許ガ取消サレ若ハ效力ヲ失ヒタル場合ニ於テハ米穀市場ノ賣買取引ノ結了ニ至ル迄亦前項ニ同ジ
前二項ノ場合ニ於テ市場員ノ行爲ヲ爲ス者ナキトキハ日本米穀株式會社ハ定款ノ定ムル所ニ依リ他人ヲシテ其ノ行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第十五條 市場員ハ其ノ米穀市場ニ依ラズシテ米穀ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ場合ニ於ケル米穀ノ賣買取引ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 市場員ハ委託ヲ受ケタル米穀市場ノ賣買取引ニ付米穀市場ニ於テ其ノ賣付、買付又ハ受渡ヲ爲サズシテ之ヲ爲シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以テ委託者ニ對シ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ違反シタル市場員ハ日本米穀株式會社定款ノ定ムル所ニ依リ之ニ二週間以上業務停止ヲ命ジ又ハ之ヲ除名スベシ
第十七條 日本米穀株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ米穀市場ノ賣買取引ノ違約ヨリ生ズル損害ニ付賠償ノ責ニ任ズルコトヲ得
日本米穀株式會社前項ノ規定ニ依リ損害ヲ賠償シタルトキハ違約者ニ對シ其ノ賠償シタル金額及之ニ要シタル費用ニ付求償權ヲ有ス
第十八條 日本米穀株式會社ハ證據金及身元保證金ニ付他ノ債權者ニ對シ優先權ヲ有ス
市場員ニ對シ米穀市場ノ賣買取引ノ委託ヲ爲シタル者ハ委託契約ニ基キテ生ズル債權ニ關シ其ノ市場員ノ身元保證金ニ付他ノ債權者ニ對シ優先權ヲ有ス
第一項ノ優先權ハ前項ノ優先權ニ對シ優先ノ效力ヲ有ス
第十九條 政府ハ市場員ニ對シ米穀市場ノ賣買取引ニ關シ米穀ノ配給統制上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
政府必要ト認ムルトキハ何時ニテモ市場員ニ對シ業務ニ關スル諸般ノ報吿ヲ命ジ又ハ市場員ノ帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第二十條 政府市場員ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第二十一條 日本米穀株式會社ハ米穀ノ配給ノ統制ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第二十二條 日本米穀株式會社ノ資本ハ三千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第二十三條 日本米穀株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第二十四條 政府ハ千五百萬圓ヲ限リ日本米穀株式會社ニ出資スベシ
前項ノ規定ニ依ル出資拂込金ハ米穀需給調節特別會計ノ歲出トシ該出資ニ因リ政府ノ取得シタル株式ハ同特別會計ノ所屬物件トス
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第二十五條 日本米穀株式會社ニ非ザルモノハ日本米穀株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第二十六條 日本米穀株式會社ニ役員トシテ理事長副理事長各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
理事長ハ日本米穀株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ理事長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ日本米穀株式會社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ日本米穀株式會社ノ業務ヲ監査ス
第二十七條 理事長及副理事長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
日本米穀株式會社ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五箇年間日本米穀株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十八條 理事長、副理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九條 日本米穀株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 米穀市場ノ開設
二 政府ノ委託ニ依ル米穀ノ買入又ハ賣渡
三 前二號ノ事業ニ附帶スル事業
四 其ノ他本會社ノ目的達成上必要ナル事業
日本米穀株式會社前項第三號又ハ第四號ノ事業ヲ營マントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
日本米穀株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ廢止シ又ハ休止スルコトヲ得ズ
第三十條 日本米穀株式會社ノ役員又ハ使用人ハ勅令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ米穀市場ノ賣買取引ヲ爲シ又ハ其ノ委託ヲ爲スコトヲ得ズ
日本米穀株式會社ノ役員又ハ使用人ハ市場員トノ間ニ資金ノ供與、損益ノ分配其ノ他市場員ノ業務ニ付特別ノ利害關係ヲ有スルコトヲ得ズ
第三十一條 政府ハ日本米穀株式會社ノ業務ヲ監督ス
第三十二條 定款ノ變更、利益金ノ處分、社債ノ募集、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第三十三條 政府ハ日本米穀株式會社監理官ヲ置キ日本米穀株式會社ノ業務ヲ監視セシム
日本米穀株式會社監理官ハ何時ニテモ日本米穀株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本米穀株式會社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本米穀株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本米穀株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十四條 日本米穀株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本米穀株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト四トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十五條 政府ハ日本米穀株式會社ニ對シ米穀ノ配給統制上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
政府ハ日本米穀株式會社ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十六條 政府ハ日本米穀株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ決議ノ取消、役員ノ解任又ハ事業ノ停止若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第三十七條 米穀市場ニ類似ノ施設ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十八條 米穀市場ニ類似ノ施設ニ依リ取引ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條 第三十條第一項ノ規定ニ違反シタル者又ハ同條第二項ノ規定ニ違反シ市場員トノ間ニ特別ノ利害關係ヲ生ズルコトヲ目的トスル行爲ヲ爲シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條 第一條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行ヒタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第三條ノ規定ニ依ル制限又ハ停止ノ處分ニ違反シタル者
二 第四條第一項又ハ第十九條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第四十二條 第四條第二項又ハ第十九條第二項ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十三條 日本米穀株式會社ノ役員又ハ使用人米穀市場ノ賣買取引又ハ政府ノ委託ニ依ル米穀ノ買入若ハ賣渡ニ關スル職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價格ヲ追徵ス
第四十四條 前條第一項ニ揭グル者ニ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除スルコトヲ得
第四十五條 米穀市場ニ於ケル相場ノ變動ヲ圖ル目的ヲ以テ虛僞ノ風說ヲ流布シ、僞計ヲ用ヒ又ハ暴行若ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 米穀市場ニ於ケル相場ヲ僞リテ公示シタル者
二 公示若ハ頒布ノ目的ヲ以テ虛僞ノ相場ヲ記載シタル文書ヲ作成シ又ハ之ヲ頒布シタル者
第四十七條 米穀市場ニ依ラズシテ米穀市場ノ相場ニ依リ差金ノ授受ヲ目的トスル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ刑法第百八十六條ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第四十八條 米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行フ者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第四十條又ハ第四十一條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免カルルコトヲ得ズ
第四十九條 第四十條及第四十一條ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五十條 日本米穀株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ理事長又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副理事長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第二十九條第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第三十五條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
日本米穀株式會社ノ理事長、副理事長又ハ理事第二十八條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十一條 第二十五條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十二條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第五十三條 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四條 政府ハ設立委員ヲ命ジ日本米穀株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受ケタル後株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ株主ヲ募集スベシ
株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第二號、第四號及第五號ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
設立委員ハ前項ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
創立總會ニ於テハ第二十七條ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本米穀株式會社理事長ニ引渡スベシ
第五十五條 取引所法ハ米穀ニ關シテハ之ヲ適用セズ
前項ノ規定施行前米穀ノ賣買取引ヲ爲ス取引所ニ於テ爲シタル米穀ノ賣買取引ニ付テハ仍從前ノ例ニ依リ其ノ取引ヲ結了スルコトヲ得
第一項ノ規定施行前米穀ニ關スル行爲ニシテ取引所法ノ罰則ヲ適用スベカリシモノニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第五十六條 日本米穀株式會社ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ米穀ヲ賣買取引スル取引所又ハ正米市場開設者ガ本法公布ノ際現ニ所有スル土地、建物其ノ他ノ設備ヲ其ノ申込ニ應ジ買取ルモノトス
日本米穀株式會社ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ本法公布ノ際現ニ存スル米穀ヲ賣買取引スル取引所ノ使用人及取引員ニシテ前條ノ規定施行ノ日迄引續キ其ノ業務ニ從事スルモノニ關シ必要ナル措置ヲ爲スモノトス
政府前二項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ米穀取引事業審議委員會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
米穀取引事業審議委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十七條 日本米穀株式會社前條第一項ニ規定スル買取ニ基ク不動產ニ關スル權利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登錄稅ノ額ハ不動產ノ價格ノ千分ノ三トス但シ登錄稅法ニ依リ算出シタル登錄稅ノ額ガ本法ニ依リ算出シタル稅額ヨリ少キトキハ其ノ稅額ニ依ル
北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ日本米穀株式會社ニ對シ前條第一項ニ規定スル買取ニ基ク不動產ニ關スル權利ノ取得ニ關シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第五十八條 第二十五條ノ規定施行ノ際現ニ日本米穀株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規定施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第五十一條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前項ニ揭グル者ニ適用セズ
第五十九條 昭和十四年四月一日現ニ第一條ノ許可ヲ受クベキ米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行フ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ同條ノ規定施行ノ日ヨリ之ヲ同條ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第六十條 
取引所稅法中第二十一條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第二十一條ノ二 日本米穀株式會社ノ米穀市場ニ於ケル賣買取引ニシテ差金ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シ得ルモノニ付テハ命令ヲ以テ定ムル賣買取引ヲ除クノ外日本米穀株式會社及其ノ米穀市場ヲ取引所、其ノ市場員ヲ取引員ト看做シ本法中取引稅ニ關スル規定ヲ適用ス此ノ場合ニ於テハ第五條第一項ノ規定ニ拘ラス賣買各約定金高ニ對シ萬分ノ一・二五ノ稅率ニ依ル
米穀配給統制法第十六條ノ規定ニ違反シタル行爲アリタルトキハ第十七條ノ例ニ依ル
日本米穀株式會社ノ米穀市場ニ於ケル賣買取引ニシテ第一項ニ規定スル賣買取引ニ該當セサルモノニ付差金ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シタルトキハ第十七條ノ二ノ例ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル米穀配給統制法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年四月十一日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
内務大臣 侯爵 木戸幸一
商工大臣 八田嘉明
大蔵大臣 石渡荘太郎
農林大臣 桜内幸雄
法律第八十一号
米穀配給統制法
第一条 米穀ノ買入若ハ売渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行ハントスル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ但シ勅令ヲ以テ定ムル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第二条 前条ノ許可ヲ受ケタル者命令ノ定ムル所ニ依リ正当ノ事由ナクシテ業務ヲ開始セザルトキ又ハ其ノ業務ヲ休止シタルトキハ政府ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第三条 政府第一条ノ許可ヲ受ケタル者ノ行為ガ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第四条 政府ハ特ニ必要アル場合米穀ノ買入若ハ売渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ヲ為ス者ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀ノ配給統制ニ関スル命令ヲ為スコトヲ得
政府必要ト認ムルトキハ何時ニテモ第一条ノ許可ヲ受ケタル者ニ対シ其ノ業務ニ関スル諸般ノ報告ヲ命ジ又ハ其ノ帳簿物件ヲ検査スルコトヲ得
第五条 米穀市場ハ日本米穀株式会社ニ限リ之ヲ開設スルコトヲ得
日本米穀株式会社米穀市場ヲ開設セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市場毎ニ政府ノ認可ヲ受クベシ
何人ト雖モ米穀市場ニ類似ノ施設ヲ為シ又ハ其ノ施設ニ依リ取引ヲ為スコトヲ得ズ
第六条 米穀市場ノ売買取引ハ差金ノ授受ニ依リ其ノ決済ヲ為スコトヲ得ズ但シ履行期ニ於ケル決済ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
日本米穀株式会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ米穀市場ノ売買取引ニ付証拠金ヲ納メシメ又ハ手数料ヲ徴収スルコトヲ得
米穀市場ノ売買取引ノ方法其ノ他売買取引ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 米穀市場ノ売買取引ノ価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀統制法第二条ノ最低価格及最高価格ニ準拠シテ定ムル価格ノ範囲ヲ超ユルコトヲ得ズ
第八条 米穀市場ノ売買取引ハ其ノ市場ノ市場員ニ限リ之ヲ為スコトヲ得但シ命令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
市場員タラントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ免許ヲ受クベシ
第九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ前条第二項ノ免許ヲ受クルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一 帝国臣民又帝国法令ニ依リ設立シタル法人ニ非ザル者
二 破産者ニシテ復権ヲ得ザルモノ
三 禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後三年ヲ経過スルニ至ル迄ノ者
四 米穀市場ノ市場員ニシテ除名セラレ除名ノ日ヨリ三年ヲ経過セザルモノ
五 第二十条ノ規定ニ依リ免許ヲ取消サレ取消ノ日ヨリ三年ヲ経過セザル者
六 営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セザル未成年者又ハ禁治産者ニシテ其ノ法定代理人ガ前各号ノ一ニ該当スルモノ
七 法人ニシテ其ノ業務ヲ執行スル役員中第一号乃至第五号ノ一ニ該当スル者アルモノ
第十条 米穀市場ノ市場員前条第一号乃至第四号、第六号若ハ第七号ニ該当スルニ至リタルトキ又ハ日本米穀株式会社ノ役員ト為リタルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ免許ハ其ノ効力ヲ失フ
政府ハ不正ノ手段ニ依リ第八条第二項ノ免許ヲ受ケタル者アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第十一条 本法ニ規定スルモノノ外市場員ノ資格其ノ他市場員ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 市場員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本米穀株式会社ニ身元保証金ヲ納付スベシ
第十三条 日本米穀株式会社ハ米穀市場ノ秩序ヲ保持スル為定款ノ定ムル所ニ依リ市場員ノ業務ヲ停止シ、千円以内ノ過怠金ヲ課シ又ハ政府ノ認可ヲ受ケ市場員ヲ除名スルコトヲ得
第十四条 市場員ハ業務ヲ廃止シタル後ト雖モ米穀市場ノ売買取引ノ結了及監督ノ目的ノ範囲内ニ於テハ取引結了後二週間ヲ経過スル迄仍業務ヲ廃止セザルモノト看做ス
市場員死亡シ若ハ解散シ又ハ其ノ免許ガ取消サレ若ハ効力ヲ失ヒタル場合ニ於テハ米穀市場ノ売買取引ノ結了ニ至ル迄亦前項ニ同ジ
前二項ノ場合ニ於テ市場員ノ行為ヲ為ス者ナキトキハ日本米穀株式会社ハ定款ノ定ムル所ニ依リ他人ヲシテ其ノ行為ヲ為サシムルコトヲ得
第十五条 市場員ハ其ノ米穀市場ニ依ラズシテ米穀ノ売買取引ヲ為スコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ場合ニ於ケル米穀ノ売買取引ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 市場員ハ委託ヲ受ケタル米穀市場ノ売買取引ニ付米穀市場ニ於テ其ノ売付、買付又ハ受渡ヲ為サズシテ之ヲ為シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以テ委託者ニ対シ其ノ決済ヲ為スコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ違反シタル市場員ハ日本米穀株式会社定款ノ定ムル所ニ依リ之ニ二週間以上業務停止ヲ命ジ又ハ之ヲ除名スベシ
第十七条 日本米穀株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ米穀市場ノ売買取引ノ違約ヨリ生ズル損害ニ付賠償ノ責ニ任ズルコトヲ得
日本米穀株式会社前項ノ規定ニ依リ損害ヲ賠償シタルトキハ違約者ニ対シ其ノ賠償シタル金額及之ニ要シタル費用ニ付求償権ヲ有ス
第十八条 日本米穀株式会社ハ証拠金及身元保証金ニ付他ノ債権者ニ対シ優先権ヲ有ス
市場員ニ対シ米穀市場ノ売買取引ノ委託ヲ為シタル者ハ委託契約ニ基キテ生ズル債権ニ関シ其ノ市場員ノ身元保証金ニ付他ノ債権者ニ対シ優先権ヲ有ス
第一項ノ優先権ハ前項ノ優先権ニ対シ優先ノ効力ヲ有ス
第十九条 政府ハ市場員ニ対シ米穀市場ノ売買取引ニ関シ米穀ノ配給統制上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
政府必要ト認ムルトキハ何時ニテモ市場員ニ対シ業務ニ関スル諸般ノ報告ヲ命ジ又ハ市場員ノ帳簿物件ヲ検査スルコトヲ得
第二十条 政府市場員ノ行為ガ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第二十一条 日本米穀株式会社ハ米穀ノ配給ノ統制ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第二十二条 日本米穀株式会社ノ資本ハ三千万円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第二十三条 日本米穀株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人又ハ外国法人ニ属セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第二十四条 政府ハ千五百万円ヲ限リ日本米穀株式会社ニ出資スベシ
前項ノ規定ニ依ル出資払込金ハ米穀需給調節特別会計ノ歳出トシ該出資ニ因リ政府ノ取得シタル株式ハ同特別会計ノ所属物件トス
政府所有ノ株式ノ株金払込ハ其ノ他ノ株式ノ株金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第二十五条 日本米穀株式会社ニ非ザルモノハ日本米穀株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第二十六条 日本米穀株式会社ニ役員トシテ理事長副理事長各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
理事長ハ日本米穀株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ理事長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ日本米穀株式会社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ日本米穀株式会社ノ業務ヲ監査ス
第二十七条 理事長及副理事長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
日本米穀株式会社ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五箇年間日本米穀株式会社ノ役員ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十八条 理事長、副理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九条 日本米穀株式会社ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 米穀市場ノ開設
二 政府ノ委託ニ依ル米穀ノ買入又ハ売渡
三 前二号ノ事業ニ附帯スル事業
四 其ノ他本会社ノ目的達成上必要ナル事業
日本米穀株式会社前項第三号又ハ第四号ノ事業ヲ営マントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
日本米穀株式会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ廃止シ又ハ休止スルコトヲ得ズ
第三十条 日本米穀株式会社ノ役員又ハ使用人ハ勅令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ米穀市場ノ売買取引ヲ為シ又ハ其ノ委託ヲ為スコトヲ得ズ
日本米穀株式会社ノ役員又ハ使用人ハ市場員トノ間ニ資金ノ供与、損益ノ分配其ノ他市場員ノ業務ニ付特別ノ利害関係ヲ有スルコトヲ得ズ
第三十一条 政府ハ日本米穀株式会社ノ業務ヲ監督ス
第三十二条 定款ノ変更、利益金ノ処分、社債ノ募集、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第三十三条 政府ハ日本米穀株式会社監理官ヲ置キ日本米穀株式会社ノ業務ヲ監視セシム
日本米穀株式会社監理官ハ何時ニテモ日本米穀株式会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
日本米穀株式会社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本米穀株式会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本米穀株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十四条 日本米穀株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
日本米穀株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ一ト四トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第三十五条 政府ハ日本米穀株式会社ニ対シ米穀ノ配給統制上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
政府ハ日本米穀株式会社ニ対シ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第三十六条 政府ハ日本米穀株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ決議ノ取消、役員ノ解任又ハ事業ノ停止若ハ禁止ヲ為スコトヲ得
第三十七条 米穀市場ニ類似ノ施設ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十八条 米穀市場ニ類似ノ施設ニ依リ取引ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十九条 第三十条第一項ノ規定ニ違反シタル者又ハ同条第二項ノ規定ニ違反シ市場員トノ間ニ特別ノ利害関係ヲ生ズルコトヲ目的トスル行為ヲ為シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十条 第一条ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ米穀ノ買入若ハ売渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行ヒタル者ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第三条ノ規定ニ依ル制限又ハ停止ノ処分ニ違反シタル者
二 第四条第一項又ハ第十九条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第四十二条 第四条第二項又ハ第十九条第二項ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第四十三条 日本米穀株式会社ノ役員又ハ使用人米穀市場ノ売買取引又ハ政府ノ委託ニ依ル米穀ノ買入若ハ売渡ニ関スル職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為サザルトキハ三年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価格ヲ追徴ス
第四十四条 前条第一項ニ掲グル者ニ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽シ又ハ免除スルコトヲ得
第四十五条 米穀市場ニ於ケル相場ノ変動ヲ図ル目的ヲ以テ虚偽ノ風説ヲ流布シ、偽計ヲ用ヒ又ハ暴行若ハ脅迫ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十六条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 米穀市場ニ於ケル相場ヲ偽リテ公示シタル者
二 公示若ハ頒布ノ目的ヲ以テ虚偽ノ相場ヲ記載シタル文書ヲ作成シ又ハ之ヲ頒布シタル者
第四十七条 米穀市場ニ依ラズシテ米穀市場ノ相場ニ依リ差金ノ授受ヲ目的トスル行為ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス但シ刑法第百八十六条ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第四十八条 米穀ノ買入若ハ売渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行フ者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第四十条又ハ第四十一条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免カルルコトヲ得ズ
第四十九条 第四十条及第四十一条ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五十条 日本米穀株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ理事長又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副理事長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第二十九条第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ営ミタルトキ
三 第三十五条ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
日本米穀株式会社ノ理事長、副理事長又ハ理事第二十八条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第五十一条 第二十五条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
第五十二条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前二条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第五十三条 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四条 政府ハ設立委員ヲ命ジ日本米穀株式会社ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受ケタル後株式総数ヨリ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ株主ヲ募集スベシ
株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ商法第百二十六条第二項第二号、第四号及第五号ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ政府ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
設立委員ハ前項ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
創立総会ニ於テハ第二十七条ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本米穀株式会社理事長ニ引渡スベシ
第五十五条 取引所法ハ米穀ニ関シテハ之ヲ適用セズ
前項ノ規定施行前米穀ノ売買取引ヲ為ス取引所ニ於テ為シタル米穀ノ売買取引ニ付テハ仍従前ノ例ニ依リ其ノ取引ヲ結了スルコトヲ得
第一項ノ規定施行前米穀ニ関スル行為ニシテ取引所法ノ罰則ヲ適用スベカリシモノニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
第五十六条 日本米穀株式会社ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ米穀ヲ売買取引スル取引所又ハ正米市場開設者ガ本法公布ノ際現ニ所有スル土地、建物其ノ他ノ設備ヲ其ノ申込ニ応ジ買取ルモノトス
日本米穀株式会社ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ本法公布ノ際現ニ存スル米穀ヲ売買取引スル取引所ノ使用人及取引員ニシテ前条ノ規定施行ノ日迄引続キ其ノ業務ニ従事スルモノニ関シ必要ナル措置ヲ為スモノトス
政府前二項ノ認可ヲ為サントスルトキハ米穀取引事業審議委員会ノ議ヲ経ルコトヲ要ス
米穀取引事業審議委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十七条 日本米穀株式会社前条第一項ニ規定スル買取ニ基ク不動産ニ関スル権利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登録税ノ額ハ不動産ノ価格ノ千分ノ三トス但シ登録税法ニ依リ算出シタル登録税ノ額ガ本法ニ依リ算出シタル税額ヨリ少キトキハ其ノ税額ニ依ル
北海道、府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ日本米穀株式会社ニ対シ前条第一項ニ規定スル買取ニ基ク不動産ニ関スル権利ノ取得ニ関シ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
第五十八条 第二十五条ノ規定施行ノ際現ニ日本米穀株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ同条ノ規定施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第五十一条ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ前項ニ掲グル者ニ適用セズ
第五十九条 昭和十四年四月一日現ニ第一条ノ許可ヲ受クベキ米穀ノ買入若ハ売渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行フ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ同条ノ規定施行ノ日ヨリ之ヲ同条ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第六十条 
取引所税法中第二十一条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第二十一条ノ二 日本米穀株式会社ノ米穀市場ニ於ケル売買取引ニシテ差金ノ授受ニ依リテ決済ヲ為シ得ルモノニ付テハ命令ヲ以テ定ムル売買取引ヲ除クノ外日本米穀株式会社及其ノ米穀市場ヲ取引所、其ノ市場員ヲ取引員ト看做シ本法中取引税ニ関スル規定ヲ適用ス此ノ場合ニ於テハ第五条第一項ノ規定ニ拘ラス売買各約定金高ニ対シ万分ノ一・二五ノ税率ニ依ル
米穀配給統制法第十六条ノ規定ニ違反シタル行為アリタルトキハ第十七条ノ例ニ依ル
日本米穀株式会社ノ米穀市場ニ於ケル売買取引ニシテ第一項ニ規定スル売買取引ニ該当セサルモノニ付差金ノ授受ニ依リテ決済ヲ為シタルトキハ第十七条ノ二ノ例ニ依ル