食糧緊急措置令
法令番号: 勅令第八十六號
公布年月日: 昭和21年2月17日
法令の形式: 勅令
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項及第七十條第一項ニ依リ食糧緊急措置令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十一年二月十七日
內閣總理大臣兼第一復員大臣 第二復員大臣 男爵 幣原喜重郞
內務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郞
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十六號
食糧緊急措置令
第一條 主要食糧(食糧管理法第二條ノ主要食糧ニシテ農林大臣ノ指定スルモノヲ謂フ以下第八條迄同ジ)ノ所有者ガ同法第三條第一項ノ規定又ハ同法第九條ノ規定ニ基ク命令ニ依リ政府ニ賣渡スベキ主要食糧ヲ當該命令ニ定メタル時期迄ニ賣渡サザルトキハ政府ハ當該命令ニ係ル主要食糧ニシテ政府ニ賣渡サザル數量ニ相當スルモノヲ收用スルコトヲ得
第二條 政府前條ノ規定ニ依リ主要食糧ヲ收用セントスルトキハ當該官吏ヲシテ收用セントスル主要食糧ニ付收用スベキ主要食糧タルノ表示ヲ爲サシムルト共ニ當該主要食糧ノ所有者ニ對シ收用令書(以下令書ト稱ス)ヲ交付セシムベシ但シ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ交付スルコト著シク困難ナル場合ニ於テハ權原ニ基キ當該主要食糧ヲ占有スル者(以下管理者ト稱ス)ニ對シ之ヲ交付スルヲ以テ足ル
第三條 當該官吏ガ令書ノ交付ヲ爲シタルトキハ政府ハ遲滯ナク令書ノ交付ノ際ニ於ケル當該主要食糧ノ所有者又ハ管理者(令書ノ交付ヲ受ケタル者ヲ除ク)其ノ他當該主要食糧ニ付權利ヲ有スル者ニシテ知レタルモノニ對シ之ヲ通知スベシ令書ノ交付後當該主要食糧ノ所有者又ハ管理者ト爲リタル者其ノ他當該主要食糧ニ付權利ヲ有スルニ至リタル者ニシテ知レタルモノニ對シ亦同ジ
第四條 令書ノ交付又ハ前條ノ通知ヲ受ケタル者ハ收用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ當該主要食糧ノ形質若ハ所在場所ヲ變更シ又ハ之ヲ讓渡シ、貸與シ、質權ノ目的ト爲シ其ノ他當該主要食糧ニ關シ新ナル處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第五條 令書ノ交付又ハ第三條ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ令書ニ記載シタル引渡時期ニ於テ當該主要食糧ノ所有者タルモノハ令書ニ記載シタル引渡時期ニ當該主要食糧ノ所在場所ニ於テ之ヲ引渡スベシ引渡時期ニ於テ所有者知レザル場合又ハ所有者ヨリ引渡スコト能ハザル場合又ハ引渡スコト著シク困難ナル場合ニ於テハ令書ノ交付又ハ第三條ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ令書ニ記載シタル引渡時期ニ於テ當該主要食糧ノ管理者タルモノ之ヲ引渡スベシ
前項ノ規定ハ當該主要食糧ニ關シ强制執行手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第六條 政府ハ當該官吏ヲシテ收用スベキ主要食糧ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
前項ノ規定ニ依リ主要食糧ノ引渡アリタル時ニ於テ政府ハ其ノ所有權ヲ取得シ其ノ他ノ權利ハ消滅ス
第七條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第一條ノ規定ニ依ル收用ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ規定ニ依ル補償金額ハ食糧管理法第三條第一項ニ規定スル主要食糧ニ付テハ同條第二項ノ規定ニ依ル買入ノ價格、其ノ他ノ主要食糧ニ付テハ時價ニ準據シテ農林大臣之ヲ定ム
第一條ノ規定ニ依リ收用シタル主要食糧ハ食糧管理特別會計ノ所屬トシ第一項ノ規定ニ依リ補償金ハ同會計ノ負擔トス
第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ一年內ニ償還スベキ無記名證券ヲ以テ其ノ額面金額ニ依リ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル爲政府ハ證券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ發行スル證券ハ之ヲ食糧管理特別會計法第三條ノ規定ニ依リ發行スル證券ト看做ス
第八條 第一條乃至前條ニ定ムルモノヲ除クノ外主要食糧ノ收用ニ關シ必要ナル報吿ノ徵取其ノ他主要食糧ノ收用ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 政府ハ靑果物、魚介類其ノ他勅令ヲ以テ定ムル食料品ニ付其ノ配給ノ適正又ハ價格ノ安定ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ此等ノ食料品ノ配給、讓渡、讓受、使用、消費、保管、移動又ハ價格ノ統制ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十條 主要食糧(食糧管理法第二條ノ主要食糧ヲ謂フ以下第十一條迄同ジ)ノ配給ニ關シ不實ノ申吿ヲ爲シ其ノ他不正ノ手段ニ依リ主要食糧ノ配給ヲ受ケ又ハ他人ヲシテ之ヲ受ケシメタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第十一條 食糧管理法第三條第一項ノ規定又ハ同法第九條ノ規定ニ基ク命令ニ依ル主要食糧ノ政府ニ對スル賣渡ヲ爲サザルコトヲ煽動シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第十三條 第一條ノ規定ニ依ル主要食糧ノ收用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 前二條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第十五條 第八條ノ規定ニ基ク命令ニ依ル報吿ヲ怠リ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第十二條、第十三條又ハ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕茲ニ緊急ノ必要アリト認メ枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝国憲法第八条第一項及第七十条第一項ニ依リ食糧緊急措置令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十一年二月十七日
内閣総理大臣兼第一復員大臣 第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
国務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大蔵大臣 子爵 渋沢敬三
商工大臣 小笠原三九郎
国務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十六号
食糧緊急措置令
第一条 主要食糧(食糧管理法第二条ノ主要食糧ニシテ農林大臣ノ指定スルモノヲ謂フ以下第八条迄同ジ)ノ所有者ガ同法第三条第一項ノ規定又ハ同法第九条ノ規定ニ基ク命令ニ依リ政府ニ売渡スベキ主要食糧ヲ当該命令ニ定メタル時期迄ニ売渡サザルトキハ政府ハ当該命令ニ係ル主要食糧ニシテ政府ニ売渡サザル数量ニ相当スルモノヲ収用スルコトヲ得
第二条 政府前条ノ規定ニ依リ主要食糧ヲ収用セントスルトキハ当該官吏ヲシテ収用セントスル主要食糧ニ付収用スベキ主要食糧タルノ表示ヲ為サシムルト共ニ当該主要食糧ノ所有者ニ対シ収用令書(以下令書ト称ス)ヲ交付セシムベシ但シ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ交付スルコト著シク困難ナル場合ニ於テハ権原ニ基キ当該主要食糧ヲ占有スル者(以下管理者ト称ス)ニ対シ之ヲ交付スルヲ以テ足ル
第三条 当該官吏ガ令書ノ交付ヲ為シタルトキハ政府ハ遅滞ナク令書ノ交付ノ際ニ於ケル当該主要食糧ノ所有者又ハ管理者(令書ノ交付ヲ受ケタル者ヲ除ク)其ノ他当該主要食糧ニ付権利ヲ有スル者ニシテ知レタルモノニ対シ之ヲ通知スベシ令書ノ交付後当該主要食糧ノ所有者又ハ管理者ト為リタル者其ノ他当該主要食糧ニ付権利ヲ有スルニ至リタル者ニシテ知レタルモノニ対シ亦同ジ
第四条 令書ノ交付又ハ前条ノ通知ヲ受ケタル者ハ収用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ当該主要食糧ノ形質若ハ所在場所ヲ変更シ又ハ之ヲ譲渡シ、貸与シ、質権ノ目的ト為シ其ノ他当該主要食糧ニ関シ新ナル処分ヲ為スコトヲ得ズ
第五条 令書ノ交付又ハ第三条ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ令書ニ記載シタル引渡時期ニ於テ当該主要食糧ノ所有者タルモノハ令書ニ記載シタル引渡時期ニ当該主要食糧ノ所在場所ニ於テ之ヲ引渡スベシ引渡時期ニ於テ所有者知レザル場合又ハ所有者ヨリ引渡スコト能ハザル場合又ハ引渡スコト著シク困難ナル場合ニ於テハ令書ノ交付又ハ第三条ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ令書ニ記載シタル引渡時期ニ於テ当該主要食糧ノ管理者タルモノ之ヲ引渡スベシ
前項ノ規定ハ当該主要食糧ニ関シ強制執行手続、国税徴収法ニ依ル強制徴収手続其ノ他此等ノ手続ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第六条 政府ハ当該官吏ヲシテ収用スベキ主要食糧ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
前項ノ規定ニ依リ主要食糧ノ引渡アリタル時ニ於テ政府ハ其ノ所有権ヲ取得シ其ノ他ノ権利ハ消滅ス
第七条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第一条ノ規定ニ依ル収用ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ規定ニ依ル補償金額ハ食糧管理法第三条第一項ニ規定スル主要食糧ニ付テハ同条第二項ノ規定ニ依ル買入ノ価格、其ノ他ノ主要食糧ニ付テハ時価ニ準拠シテ農林大臣之ヲ定ム
第一条ノ規定ニ依リ収用シタル主要食糧ハ食糧管理特別会計ノ所属トシ第一項ノ規定ニ依リ補償金ハ同会計ノ負担トス
第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ一年内ニ償還スベキ無記名証券ヲ以テ其ノ額面金額ニ依リ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル為政府ハ証券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ発行スル証券ハ之ヲ食糧管理特別会計法第三条ノ規定ニ依リ発行スル証券ト看做ス
第八条 第一条乃至前条ニ定ムルモノヲ除クノ外主要食糧ノ収用ニ関シ必要ナル報告ノ徴取其ノ他主要食糧ノ収用ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 政府ハ青果物、魚介類其ノ他勅令ヲ以テ定ムル食料品ニ付其ノ配給ノ適正又ハ価格ノ安定ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ此等ノ食料品ノ配給、譲渡、譲受、使用、消費、保管、移動又ハ価格ノ統制ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十条 主要食糧(食糧管理法第二条ノ主要食糧ヲ謂フ以下第十一条迄同ジ)ノ配給ニ関シ不実ノ申告ヲ為シ其ノ他不正ノ手段ニ依リ主要食糧ノ配給ヲ受ケ又ハ他人ヲシテ之ヲ受ケシメタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五万円以下ノ罰金ニ処ス其ノ刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ依ル
第十一条 食糧管理法第三条第一項ノ規定又ハ同法第九条ノ規定ニ基ク命令ニ依ル主要食糧ノ政府ニ対スル売渡ヲ為サザルコトヲ煽動シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 第九条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五万円以下ノ罰金ニ処ス
第十三条 第一条ノ規定ニ依ル主要食糧ノ収用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 前二条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情状ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第十五条 第八条ノ規定ニ基ク命令ニ依ル報告ヲ怠リ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第十二条、第十三条又ハ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ各本条ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス