第一條 日本船舶ハ本法ニ依リ其ノ堪航性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ必要ナル施設ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ
第二條 船舶ハ左ニ揭グル事項ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ左ニ揭グル船舶ニハ之ヲ適用セズ
二 櫓櫂ヲ以テ運轉スル舟其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ定ムル船舶
第三條 遠洋區域ヲ航行スル船舶又ハ近海區域ヲ航行スル總噸數百五十噸以上ノ船舶ハ命令ノ定ムル所ニ依リ滿載吃水線ヲ標示スルコトヲ要ス但シ漁獵、曳船、海難救助、浚渫又ハ測量ニノミ使用スル船舶其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ滿載吃水線ヲ標示スル必要ナシト認ムル船舶ハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 左ニ揭グル船舶ハ無線電信法ニ依ル無線電信ヲ施設スルコトヲ要ス
一 遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル總噸數千六百噸以上ノ船舶
二 遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル旅客船(十二人ヲ超ユル旅客定員ヲ有スル船舶)
前項ノ規定ニ依リ無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ト雖モ航海ノ目的其ノ他ノ事情ニ依リ主務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ之ヲ施設スルコトヲ要セズ
第五條 船舶所有者ハ第二條第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付同條第一項各號ニ揭グル事項、第三條ノ船舶ニ付滿載吃水線、第四條ノ船舶ニ付無線電信ニ關シ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ區別ニ依ル檢查ヲ受クベシ
一 初メテ航行ノ用ニ供スルトキ又ハ第十條ニ規定スル有效期間滿了シタルトキ行フ精密ナル檢查(定期檢查)
二 定期檢查ト定期檢查トノ中間ニ於テ命令ノ定ムル時期ニ行フ簡易ナル檢查(中間檢查)
三 臨時ニ特殊ノ用途ニ使用スルトキ行フ檢查(特殊船檢查)
四 前各號ノ外主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキ行フ檢查(臨時檢查)
主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ中間檢查ヲ受クルコトヲ免除スルコトヲ得
第六條 本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メートル以上ノ船舶ノ製造者ハ第二條第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付同條第一項第一號、第二號及第四號ニ揭グル事項、第三條ノ船舶ニ付滿載吃水線ニ關シ船舶ノ製造ニ著シタル時ヨリ檢查(製造檢查)ヲ受クベシ但シ主務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラズ
本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メートル未滿ノ船舶ノ製造者ハ其ノ船舶ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ製造檢查ヲ受クルコトヲ得
本法施行地ニ於テ製造スル船舶用機關ノ製造者ハ備附クベキ船舶ノ特定前ト雖モ其ノ機關ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ檢查ヲ受クルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依ル檢查ニ合格シタル事項ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ檢查ヲ省略ス
第七條 第五條又ハ前條第一項若ハ第二項ノ規定ニ依ル檢查ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外船舶ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ行フ
前條第三項ノ規定ニ依ル檢查ハ船舶用機關ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ行フ
第八條 主務大臣ノ認定シタル日本ノ船級協會(以下單ニ船級協會ト稱ス)ノ檢查ヲ受ケ船級ノ登錄ヲ爲シタル船舶ニシテ旅客船ニ非ザルモノハ其ノ船級ヲ有スル間第二條第一項第一號乃至第五號、第十號乃至第十二號ニ揭グル事項及滿載吃水線ニ關シ管海官廳ノ檢查ヲ受ケ之ニ合格シタルモノト看做ス
第九條 管海官廳ハ定期檢查ニ合格シタル船舶ニ對シテハ其ノ航行區域(漁船ニ付テハ從業制限)、最大搭載人員、制限汽壓及滿載吃水線ノ位置ヲ定メ船舶檢查證書ヲ交付ス
管海官廳ハ特殊船檢查ニ合格シタル船舶ニ對シテハ特殊船檢查證書ヲ交付ス
管海官廳ハ第六條ノ規定ニ依ル檢查ニ合格シタル船舶又ハ船舶用機關ニ對シテハ合格證明書ヲ交付ス
前條ノ船舶ニ付船級協會ノ定メタル制限汽壓及滿載吃水線ノ位置ハ管海官廳ニ於テ之ヲ定メタルモノト看做ス
第十條 船舶檢查證書ノ有效期間ハ四年トス但シ命令ヲ以テ定ムル小形船ニ付テハ四年以內ニ於テ管海官廳ノ定メタル期間トス
船舶檢查證書ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ニ於テハ其ノ有效期間滿了後五月迄ハ仍其ノ效力ヲ有ス
船舶檢查證書ハ中間檢查又ハ臨時檢查ニ合格セザル船舶ニ付テハ之ニ合格スル迄其ノ效力ヲ停止ス
第八條ノ船舶ノ受有スル船舶檢查證書ハ其ノ船舶ガ當該船級ノ登錄ヲ抹消セラレ又ハ旅客船ト爲リタルトキハ其ノ有效期間滿了ス
第十一條 船舶ニ付管海官廳ノ檢查ヲ受ケタル者檢查ニ對シ不服アルトキハ其ノ事由ヲ具シ主務大臣ニ再檢查ヲ申請スルコトヲ得
再檢查ヲ申請シタル者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ關係部分ノ原狀ヲ變更スルコトヲ得ズ
第十二條 管海官廳ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ當該官吏ヲシテ船舶ニ臨檢セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ當該官吏ハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
管海官廳ハ本法ニ違反シタル事實アリト認ムルトキハ船舶ノ航行停止其ノ他ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十三條 船舶乘組員二十人未滿ノ船舶ニ在リテハ其ノ二分ノ一以上、其ノ他ノ船舶ニ在リテハ乘組員十人以上ガ命令ノ定ムル所ニ依リ當該船舶ノ堪航性又ハ居住設備衞生設備其ノ他ノ人命ノ安全ニ關スル設備ニ付重大ナル缺陷アル旨ヲ申立テタル場合ニ於テハ管海官廳ハ其ノ事實ヲ調查シ必要アリト認ムルトキハ前條第二項ノ處分ヲ爲スコトヲ要ス
第十四條 日本船舶ニ非ザル船舶ニシテ左ニ揭グルモノニハ勅令ヲ以テ本法ノ全部又ハ一部ヲ準用ス
一 本法施行地ノ各港間又ハ湖川港灣ノミヲ航行スル船舶
二 日本船舶ヲ所有シ得ル者ノ借入レタル船舶ニシテ本法施行地ト其ノ他ノ地トノ間ノ航行ニ從事スルモノ
第十五條 主務大臣ニ於テ前條第三號ニ揭グル船舶ノ所屬地ノ本法ニ該當スル法令ヲ相當ト認メタルトキハ之ニ基キタル船舶ノ堪航性又ハ人命ノ安全ニ關スル證書ハ本法ニ依リ交付シタル證書ト同一ノ效力ヲ有ス
前項ノ規定ハ本法ニ依リ交付シタル證書ノ效力ヲ認メザル國ニ屬スル船舶ニ付テハ之ヲ適用セズ
第十六條 船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ關シ條約ニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ
第十七條 滿載吃水線ノ標示ヲ隱蔽、變更又ハ抹消シタル者ハ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條 船舶所有者又ハ船長左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ船舶所有者及船長ヲ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 船舶檢查證書ヲ受有セズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船檢查證書ヲ受有セズシテ船舶ヲ特殊ノ用途ニ使用シタルトキ
二 航行區域ヲ超エ又ハ從業制限ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
四 最大搭載人員ヲ超エテ旅客其ノ他ノ者ヲ搭載シタルトキ
六 無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ヲ其ノ施設ナクシテ航行ノ用ニ供シタルトキ
七 中間檢查ヲ受クベキ場合ニ於テ之ヲ受ケズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
八 前各號ノ外船舶檢查證書ニ記載シタル條件ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船檢查證書ニ記載シタル條件ニ違反シテ船舶ヲ特殊ノ用途ニ使用シタルトキ
九 管海官廳ノ許可ヲ受ケズシテ檢查ヲ受ケタル事項ニ變更ヲ爲シ又ハ其ノ事項ニ變更アリタルニ拘ラズ適當ノ措置ヲ爲サズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
第十九條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ第九條ニ揭グル證書ヲ受ケタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十條 船舶所有者又ハ船長第十二條又ハ第十三條ノ規定ニ依ル處分ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 正當ノ事由ナクシテ當該官吏ノ臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シテ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條 船舶乘組員虛僞ノ申立ヲ爲シ管海官廳ヲシテ第十三條ノ規定ニ依ル調查ヲ爲サシメタルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十三條 船級協會ノ職員第八條ニ揭グル船舶ニ付第二條第一項第一號乃至第五號、第十號乃至第十二號ニ揭グル事項又ハ滿載吃水線ノ檢查ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第二十四條 船級協會ノ職員ニ前條ニ揭グル檢查ニ關シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十五條 本法及本法ニ基ク命令ニ依リ船舶所有者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ之ヲ適用シ國又ハ道府縣市町村其ノ他ノ公共團體ガ船舶所有者ナルトキハ之ヲ適用セズ
第二十六條 本法及本法ニ基ク命令中船舶所有者ニ關スル規定ハ船舶共有ノ場合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキハ之ヲ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合ニ在リテハ之ヲ船舶借入人ニ適用シ又船長ニ關スル規定ハ船長ニ代リテ其ノ職務ヲ行フ者ニ之ヲ適用ス
第二十七條 船舶ノ衝突豫防ニ關シ船舶ノ遵守スベキ船燈ノ表示、航法、信號其ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條 危險物ノ運送禁止、遭難者救助、救命艇手、操練及操舵命令ニ關スル事項竝ニ危險及氣象ノ通報其ノ他船舶航行上ノ危險防止ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九條 前二條ニ規定スル事項ヲ除クノ外地方長官ハ第二條第一項ノ規定ヲ適用セザル船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ關シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ナル規則ヲ設クルコトヲ得