船舶安全法
法令番号: 法律第十一號
公布年月日: 昭和8年3月15日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル船舶安全法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
遞信大臣 南弘
法律第十一號
船舶安全法
第一條 日本船舶ハ本法ニ依リ其ノ堪航性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ必要ナル施設ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ
第二條 船舶ハ左ニ揭グル事項ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス
一 船體
二 機關
三 帆裝
四 排水設備
五 操舵、繫船及揚錨ノ設備
六 救命及消防ノ設備
七 居住設備
八 衞生設備
九 航海用具
十 危險物其ノ他ノ特殊貨物ノ積附設備
十一 荷役其ノ他ノ作業ノ設備
十二 電氣設備
十三 前各號ノ外主務大臣ニ於テ特ニ定ムル事項
前項ノ規定ハ左ニ揭グル船舶ニハ之ヲ適用セズ
一 總噸數五噸未滿ノ船舶
二 櫓櫂ヲ以テ運轉スル舟其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ定ムル船舶
第三條 遠洋區域ヲ航行スル船舶又ハ近海區域ヲ航行スル總噸數百五十噸以上ノ船舶ハ命令ノ定ムル所ニ依リ滿載吃水線ヲ標示スルコトヲ要ス但シ漁獵、曳船、海難救助、浚渫又ハ測量ニノミ使用スル船舶其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ滿載吃水線ヲ標示スル必要ナシト認ムル船舶ハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 左ニ揭グル船舶ハ無線電信法ニ依ル無線電信ヲ施設スルコトヲ要ス
一 遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル總噸數千六百噸以上ノ船舶
二 遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル旅客船(十二人ヲ超ユル旅客定員ヲ有スル船舶)
三 總噸數百噸以上ノ漁船
前項ノ規定ニ依リ無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ト雖モ航海ノ目的其ノ他ノ事情ニ依リ主務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ之ヲ施設スルコトヲ要セズ
第五條 船舶所有者ハ第二條第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付同條第一項各號ニ揭グル事項、第三條ノ船舶ニ付滿載吃水線、第四條ノ船舶ニ付無線電信ニ關シ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ區別ニ依ル檢查ヲ受クベシ
一 初メテ航行ノ用ニ供スルトキ又ハ第十條ニ規定スル有效期間滿了シタルトキ行フ精密ナル檢查(定期檢查)
二 定期檢查ト定期檢查トノ中間ニ於テ命令ノ定ムル時期ニ行フ簡易ナル檢查(中間檢查)
三 臨時ニ特殊ノ用途ニ使用スルトキ行フ檢查(特殊船檢查)
四 前各號ノ外主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキ行フ檢查(臨時檢查)
主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ中間檢查ヲ受クルコトヲ免除スルコトヲ得
第六條 本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メートル以上ノ船舶ノ製造者ハ第二條第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付同條第一項第一號、第二號及第四號ニ揭グル事項、第三條ノ船舶ニ付滿載吃水線ニ關シ船舶ノ製造ニ著シタル時ヨリ檢查(製造檢查)ヲ受クベシ但シ主務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラズ
本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メートル未滿ノ船舶ノ製造者ハ其ノ船舶ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ製造檢查ヲ受クルコトヲ得
本法施行地ニ於テ製造スル船舶用機關ノ製造者ハ備附クベキ船舶ノ特定前ト雖モ其ノ機關ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ檢查ヲ受クルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依ル檢查ニ合格シタル事項ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ檢查ヲ省略ス
第七條 第五條又ハ前條第一項若ハ第二項ノ規定ニ依ル檢查ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外船舶ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ行フ
前條第三項ノ規定ニ依ル檢查ハ船舶用機關ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ行フ
第八條 主務大臣ノ認定シタル日本ノ船級協會(以下單ニ船級協會ト稱ス)ノ檢查ヲ受ケ船級ノ登錄ヲ爲シタル船舶ニシテ旅客船ニ非ザルモノハ其ノ船級ヲ有スル間第二條第一項第一號乃至第五號、第十號乃至第十二號ニ揭グル事項及滿載吃水線ニ關シ管海官廳ノ檢查ヲ受ケ之ニ合格シタルモノト看做ス
第九條 管海官廳ハ定期檢查ニ合格シタル船舶ニ對シテハ其ノ航行區域(漁船ニ付テハ從業制限)、最大搭載人員、制限汽壓及滿載吃水線ノ位置ヲ定メ船舶檢查證書ヲ交付ス
管海官廳ハ特殊船檢查ニ合格シタル船舶ニ對シテハ特殊船檢查證書ヲ交付ス
管海官廳ハ第六條ノ規定ニ依ル檢查ニ合格シタル船舶又ハ船舶用機關ニ對シテハ合格證明書ヲ交付ス
前條ノ船舶ニ付船級協會ノ定メタル制限汽壓及滿載吃水線ノ位置ハ管海官廳ニ於テ之ヲ定メタルモノト看做ス
第十條 船舶檢查證書ノ有效期間ハ四年トス但シ命令ヲ以テ定ムル小形船ニ付テハ四年以內ニ於テ管海官廳ノ定メタル期間トス
船舶檢查證書ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ニ於テハ其ノ有效期間滿了後五月迄ハ仍其ノ效力ヲ有ス
船舶檢查證書ハ中間檢查又ハ臨時檢查ニ合格セザル船舶ニ付テハ之ニ合格スル迄其ノ效力ヲ停止ス
第八條ノ船舶ノ受有スル船舶檢查證書ハ其ノ船舶ガ當該船級ノ登錄ヲ抹消セラレ又ハ旅客船ト爲リタルトキハ其ノ有效期間滿了ス
第十一條 船舶ニ付管海官廳ノ檢查ヲ受ケタル者檢查ニ對シ不服アルトキハ其ノ事由ヲ具シ主務大臣ニ再檢查ヲ申請スルコトヲ得
再檢查ヲ申請シタル者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ關係部分ノ原狀ヲ變更スルコトヲ得ズ
第十二條 管海官廳ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ當該官吏ヲシテ船舶ニ臨檢セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ當該官吏ハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
管海官廳ハ本法ニ違反シタル事實アリト認ムルトキハ船舶ノ航行停止其ノ他ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十三條 船舶乘組員二十人未滿ノ船舶ニ在リテハ其ノ二分ノ一以上、其ノ他ノ船舶ニ在リテハ乘組員十人以上ガ命令ノ定ムル所ニ依リ當該船舶ノ堪航性又ハ居住設備衞生設備其ノ他ノ人命ノ安全ニ關スル設備ニ付重大ナル缺陷アル旨ヲ申立テタル場合ニ於テハ管海官廳ハ其ノ事實ヲ調查シ必要アリト認ムルトキハ前條第二項ノ處分ヲ爲スコトヲ要ス
第十四條 日本船舶ニ非ザル船舶ニシテ左ニ揭グルモノニハ勅令ヲ以テ本法ノ全部又ハ一部ヲ準用ス
一 本法施行地ノ各港間又ハ湖川港灣ノミヲ航行スル船舶
二 日本船舶ヲ所有シ得ル者ノ借入レタル船舶ニシテ本法施行地ト其ノ他ノ地トノ間ノ航行ニ從事スルモノ
三 前各號ノ外本法施行地ニ在ル船舶
第十五條 主務大臣ニ於テ前條第三號ニ揭グル船舶ノ所屬地ノ本法ニ該當スル法令ヲ相當ト認メタルトキハ之ニ基キタル船舶ノ堪航性又ハ人命ノ安全ニ關スル證書ハ本法ニ依リ交付シタル證書ト同一ノ效力ヲ有ス
前項ノ規定ハ本法ニ依リ交付シタル證書ノ效力ヲ認メザル國ニ屬スル船舶ニ付テハ之ヲ適用セズ
第十六條 船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ關シ條約ニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ
第十七條 滿載吃水線ノ標示ヲ隱蔽、變更又ハ抹消シタル者ハ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條 船舶所有者又ハ船長左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ船舶所有者及船長ヲ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 船舶檢查證書ヲ受有セズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船檢查證書ヲ受有セズシテ船舶ヲ特殊ノ用途ニ使用シタルトキ
二 航行區域ヲ超エ又ハ從業制限ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
三 制限汽壓ヲ超エテ汽罐ヲ使用シタルトキ
四 最大搭載人員ヲ超エテ旅客其ノ他ノ者ヲ搭載シタルトキ
五 滿載吃水線ヲ超エテ載荷シタルトキ
六 無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ヲ其ノ施設ナクシテ航行ノ用ニ供シタルトキ
七 中間檢查ヲ受クベキ場合ニ於テ之ヲ受ケズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
八 前各號ノ外船舶檢查證書ニ記載シタル條件ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船檢查證書ニ記載シタル條件ニ違反シテ船舶ヲ特殊ノ用途ニ使用シタルトキ
九 管海官廳ノ許可ヲ受ケズシテ檢查ヲ受ケタル事項ニ變更ヲ爲シ又ハ其ノ事項ニ變更アリタルニ拘ラズ適當ノ措置ヲ爲サズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
第十九條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ第九條ニ揭グル證書ヲ受ケタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十條 船舶所有者又ハ船長第十二條又ハ第十三條ノ規定ニ依ル處分ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 正當ノ事由ナクシテ當該官吏ノ臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シテ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條 船舶乘組員虛僞ノ申立ヲ爲シ管海官廳ヲシテ第十三條ノ規定ニ依ル調查ヲ爲サシメタルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十三條 船級協會ノ職員第八條ニ揭グル船舶ニ付第二條第一項第一號乃至第五號、第十號乃至第十二號ニ揭グル事項又ハ滿載吃水線ノ檢查ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第二十四條 船級協會ノ職員ニ前條ニ揭グル檢查ニ關シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十五條 本法及本法ニ基ク命令ニ依リ船舶所有者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ之ヲ適用シ國又ハ道府縣市町村其ノ他ノ公共團體ガ船舶所有者ナルトキハ之ヲ適用セズ
第二十六條 本法及本法ニ基ク命令中船舶所有者ニ關スル規定ハ船舶共有ノ場合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキハ之ヲ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合ニ在リテハ之ヲ船舶借入人ニ適用シ又船長ニ關スル規定ハ船長ニ代リテ其ノ職務ヲ行フ者ニ之ヲ適用ス
第二十七條 船舶ノ衝突豫防ニ關シ船舶ノ遵守スベキ船燈ノ表示、航法、信號其ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ船舶ニハ海軍艦船ヲモ包含ス
第二十八條 危險物ノ運送禁止、遭難者救助、救命艇手、操練及操舵命令ニ關スル事項竝ニ危險及氣象ノ通報其ノ他船舶航行上ノ危險防止ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九條 前二條ニ規定スル事項ヲ除クノ外地方長官ハ第二條第一項ノ規定ヲ適用セザル船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ關シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ナル規則ヲ設クルコトヲ得
附 則
第三十條 本法施行ノ期日ハ第二條第一項第十一號ニ關スル規定、同條同項第十二號ニ關スル規定、第二十七條ノ規定竝ニ他ノ一般規定ニ付各別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十一條 船舶檢查法、船舶滿載吃水線法、船舶無線電信施設法及明治六年第二百九十二號布吿ハ前條ノ一般規定施行ノ日ヨリ、海上衝突豫防法ハ第二十七條ノ規定ノ施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
第三十二條 第二條第一項ノ規定ハ左ニ揭グル船舶ニハ當分ノ內之ヲ適用セズ
一 總噸數二十噸未滿ノ帆船
二 總噸數二十噸未滿ノ漁船
三 平水區域ノミヲ航行スル帆船
第三十三條 船舶滿載吃水線法ニ依リ滿載吃水線ノ標示ヲ要セザリシ船舶ニシテ本法ニ依リ其ノ標示ヲ要スルモノニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ滿載吃水線ニ關スル檢查ヲ受クル迄之ヲ標示セザルコトヲ得
第三十四條 本法施行前ニ生ジタル事項ニ付テハ仍舊法ニ依ル但シ船級協會ノ認定其ノ他命令ヲ以テ定ムル事項ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五條 船舶檢查法ニ依リ船舶檢查證書若ハ假證書ヲ受有スル船舶又ハ之ヲ受有セズシテ航行ノ用ニ供スル船舶ニハ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至ル迄船舶檢查、滿載吃水線及無線電信施設ニ關シ仍舊法ニ依ル
一 航行期間滿了ノ爲船舶檢查法ニ依リ檢查ヲ受クベキトキ
二 船舶檢查法ニ依リ船舶檢查證書又ハ假證書ヲ受有セズシテ航行ノ用ニ供シ得ザルニ至リタルトキ
三 船舶滿載吃水線法ニ依リ滿載吃水線ノ指定ヲ受クベキトキ
第三十六條 前條ノ船舶同條各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ檢查ヲ受クベシ
前項ノ檢查ニ合格シタル船舶ニハ船舶檢查證書ヲ交付ス但シ其ノ有效期間ハ四年以內ニ於テ管海官廳ノ定メタル期間トス
前項ノ有效期間ノ滿了ハ第五條第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第十條ニ規定スル有效期間ノ滿了ト看做ス
第三十七條 他ノ法令中航路定限、遠洋航路、近海航路、沿海航路又ハ平水航路トアルハ各之ヲ航行區域、遠洋區域、近海區域、沿海區域又ハ平水區域トス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル船舶安全法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月十四日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
逓信大臣 南弘
法律第十一号
船舶安全法
第一条 日本船舶ハ本法ニ依リ其ノ堪航性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ必要ナル施設ヲ為スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ
第二条 船舶ハ左ニ掲グル事項ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス
一 船体
二 機関
三 帆装
四 排水設備
五 操舵、繋船及揚錨ノ設備
六 救命及消防ノ設備
七 居住設備
八 衛生設備
九 航海用具
十 危険物其ノ他ノ特殊貨物ノ積附設備
十一 荷役其ノ他ノ作業ノ設備
十二 電気設備
十三 前各号ノ外主務大臣ニ於テ特ニ定ムル事項
前項ノ規定ハ左ニ掲グル船舶ニハ之ヲ適用セズ
一 総噸数五噸未満ノ船舶
二 櫓櫂ヲ以テ運転スル舟其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ定ムル船舶
第三条 遠洋区域ヲ航行スル船舶又ハ近海区域ヲ航行スル総噸数百五十噸以上ノ船舶ハ命令ノ定ムル所ニ依リ満載吃水線ヲ標示スルコトヲ要ス但シ漁猟、曳船、海難救助、浚渫又ハ測量ニノミ使用スル船舶其ノ他主務大臣ニ於テ特ニ満載吃水線ヲ標示スル必要ナシト認ムル船舶ハ此ノ限ニ在ラズ
第四条 左ニ掲グル船舶ハ無線電信法ニ依ル無線電信ヲ施設スルコトヲ要ス
一 遠洋区域又ハ近海区域ヲ航行スル総噸数千六百噸以上ノ船舶
二 遠洋区域又ハ近海区域ヲ航行スル旅客船(十二人ヲ超ユル旅客定員ヲ有スル船舶)
三 総噸数百噸以上ノ漁船
前項ノ規定ニ依リ無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ト雖モ航海ノ目的其ノ他ノ事情ニ依リ主務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ之ヲ施設スルコトヲ要セズ
第五条 船舶所有者ハ第二条第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付同条第一項各号ニ掲グル事項、第三条ノ船舶ニ付満載吃水線、第四条ノ船舶ニ付無線電信ニ関シ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ区別ニ依ル検査ヲ受クベシ
一 初メテ航行ノ用ニ供スルトキ又ハ第十条ニ規定スル有効期間満了シタルトキ行フ精密ナル検査(定期検査)
二 定期検査ト定期検査トノ中間ニ於テ命令ノ定ムル時期ニ行フ簡易ナル検査(中間検査)
三 臨時ニ特殊ノ用途ニ使用スルトキ行フ検査(特殊船検査)
四 前各号ノ外主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキ行フ検査(臨時検査)
主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ中間検査ヲ受クルコトヲ免除スルコトヲ得
第六条 本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メートル以上ノ船舶ノ製造者ハ第二条第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付同条第一項第一号、第二号及第四号ニ掲グル事項、第三条ノ船舶ニ付満載吃水線ニ関シ船舶ノ製造ニ著シタル時ヨリ検査(製造検査)ヲ受クベシ但シ主務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラズ
本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メートル未満ノ船舶ノ製造者ハ其ノ船舶ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ製造検査ヲ受クルコトヲ得
本法施行地ニ於テ製造スル船舶用機関ノ製造者ハ備附クベキ船舶ノ特定前ト雖モ其ノ機関ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ検査ヲ受クルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依ル検査ニ合格シタル事項ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ前条ノ検査ヲ省略ス
第七条 第五条又ハ前条第一項若ハ第二項ノ規定ニ依ル検査ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外船舶ノ所在地ヲ管轄スル管海官庁之ヲ行フ
前条第三項ノ規定ニ依ル検査ハ船舶用機関ノ所在地ヲ管轄スル管海官庁之ヲ行フ
第八条 主務大臣ノ認定シタル日本ノ船級協会(以下単ニ船級協会ト称ス)ノ検査ヲ受ケ船級ノ登録ヲ為シタル船舶ニシテ旅客船ニ非ザルモノハ其ノ船級ヲ有スル間第二条第一項第一号乃至第五号、第十号乃至第十二号ニ掲グル事項及満載吃水線ニ関シ管海官庁ノ検査ヲ受ケ之ニ合格シタルモノト看做ス
第九条 管海官庁ハ定期検査ニ合格シタル船舶ニ対シテハ其ノ航行区域(漁船ニ付テハ従業制限)、最大搭載人員、制限汽圧及満載吃水線ノ位置ヲ定メ船舶検査証書ヲ交付ス
管海官庁ハ特殊船検査ニ合格シタル船舶ニ対シテハ特殊船検査証書ヲ交付ス
管海官庁ハ第六条ノ規定ニ依ル検査ニ合格シタル船舶又ハ船舶用機関ニ対シテハ合格証明書ヲ交付ス
前条ノ船舶ニ付船級協会ノ定メタル制限汽圧及満載吃水線ノ位置ハ管海官庁ニ於テ之ヲ定メタルモノト看做ス
第十条 船舶検査証書ノ有効期間ハ四年トス但シ命令ヲ以テ定ムル小形船ニ付テハ四年以内ニ於テ管海官庁ノ定メタル期間トス
船舶検査証書ハ主務大臣ノ特ニ定ムル場合ニ於テハ其ノ有効期間満了後五月迄ハ仍其ノ効力ヲ有ス
船舶検査証書ハ中間検査又ハ臨時検査ニ合格セザル船舶ニ付テハ之ニ合格スル迄其ノ効力ヲ停止ス
第八条ノ船舶ノ受有スル船舶検査証書ハ其ノ船舶ガ当該船級ノ登録ヲ抹消セラレ又ハ旅客船ト為リタルトキハ其ノ有効期間満了ス
第十一条 船舶ニ付管海官庁ノ検査ヲ受ケタル者検査ニ対シ不服アルトキハ其ノ事由ヲ具シ主務大臣ニ再検査ヲ申請スルコトヲ得
再検査ヲ申請シタル者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ関係部分ノ原状ヲ変更スルコトヲ得ズ
第十二条 管海官庁ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ当該官吏ヲシテ船舶ニ臨検セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ当該官吏ハ其ノ身分ヲ証明スベキ証票ヲ携帯スベシ
管海官庁ハ本法ニ違反シタル事実アリト認ムルトキハ船舶ノ航行停止其ノ他ノ処分ヲ為スコトヲ得
第十三条 船舶乗組員二十人未満ノ船舶ニ在リテハ其ノ二分ノ一以上、其ノ他ノ船舶ニ在リテハ乗組員十人以上ガ命令ノ定ムル所ニ依リ当該船舶ノ堪航性又ハ居住設備衛生設備其ノ他ノ人命ノ安全ニ関スル設備ニ付重大ナル欠陥アル旨ヲ申立テタル場合ニ於テハ管海官庁ハ其ノ事実ヲ調査シ必要アリト認ムルトキハ前条第二項ノ処分ヲ為スコトヲ要ス
第十四条 日本船舶ニ非ザル船舶ニシテ左ニ掲グルモノニハ勅令ヲ以テ本法ノ全部又ハ一部ヲ準用ス
一 本法施行地ノ各港間又ハ湖川港湾ノミヲ航行スル船舶
二 日本船舶ヲ所有シ得ル者ノ借入レタル船舶ニシテ本法施行地ト其ノ他ノ地トノ間ノ航行ニ従事スルモノ
三 前各号ノ外本法施行地ニ在ル船舶
第十五条 主務大臣ニ於テ前条第三号ニ掲グル船舶ノ所属地ノ本法ニ該当スル法令ヲ相当ト認メタルトキハ之ニ基キタル船舶ノ堪航性又ハ人命ノ安全ニ関スル証書ハ本法ニ依リ交付シタル証書ト同一ノ効力ヲ有ス
前項ノ規定ハ本法ニ依リ交付シタル証書ノ効力ヲ認メザル国ニ属スル船舶ニ付テハ之ヲ適用セズ
第十六条 船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ関シ条約ニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ従フ
第十七条 満載吃水線ノ標示ヲ隠蔽、変更又ハ抹消シタル者ハ百円以上二千円以下ノ罰金ニ処ス
第十八条 船舶所有者又ハ船長左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ船舶所有者及船長ヲ百円以上二千円以下ノ罰金ニ処ス
一 船舶検査証書ヲ受有セズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船検査証書ヲ受有セズシテ船舶ヲ特殊ノ用途ニ使用シタルトキ
二 航行区域ヲ超エ又ハ従業制限ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
三 制限汽圧ヲ超エテ汽缶ヲ使用シタルトキ
四 最大搭載人員ヲ超エテ旅客其ノ他ノ者ヲ搭載シタルトキ
五 満載吃水線ヲ超エテ載荷シタルトキ
六 無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ヲ其ノ施設ナクシテ航行ノ用ニ供シタルトキ
七 中間検査ヲ受クベキ場合ニ於テ之ヲ受ケズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
八 前各号ノ外船舶検査証書ニ記載シタル条件ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船検査証書ニ記載シタル条件ニ違反シテ船舶ヲ特殊ノ用途ニ使用シタルトキ
九 管海官庁ノ許可ヲ受ケズシテ検査ヲ受ケタル事項ニ変更ヲ為シ又ハ其ノ事項ニ変更アリタルニ拘ラズ適当ノ措置ヲ為サズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキ
第十九条 詐偽其ノ他不正ノ行為ヲ以テ第九条ニ掲グル証書ヲ受ケタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十条 船舶所有者又ハ船長第十二条又ハ第十三条ノ規定ニ依ル処分ニ違反シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十一条 正当ノ事由ナクシテ当該官吏ノ臨検ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ対シテ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十二条 船舶乗組員虚偽ノ申立ヲ為シ管海官庁ヲシテ第十三条ノ規定ニ依ル調査ヲ為サシメタルトキハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十三条 船級協会ノ職員第八条ニ掲グル船舶ニ付第二条第一項第一号乃至第五号、第十号乃至第十二号ニ掲グル事項又ハ満載吃水線ノ検査ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為サザルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第二十四条 船級協会ノ職員ニ前条ニ掲グル検査ニ関シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第二十五条 本法及本法ニ基ク命令ニ依リ船舶所有者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ之ヲ適用シ国又ハ道府県市町村其ノ他ノ公共団体ガ船舶所有者ナルトキハ之ヲ適用セズ
第二十六条 本法及本法ニ基ク命令中船舶所有者ニ関スル規定ハ船舶共有ノ場合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキハ之ヲ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合ニ在リテハ之ヲ船舶借入人ニ適用シ又船長ニ関スル規定ハ船長ニ代リテ其ノ職務ヲ行フ者ニ之ヲ適用ス
第二十七条 船舶ノ衝突予防ニ関シ船舶ノ遵守スベキ船灯ノ表示、航法、信号其ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ船舶ニハ海軍艦船ヲモ包含ス
第二十八条 危険物ノ運送禁止、遭難者救助、救命艇手、操練及操舵命令ニ関スル事項並ニ危険及気象ノ通報其ノ他船舶航行上ノ危険防止ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九条 前二条ニ規定スル事項ヲ除クノ外地方長官ハ第二条第一項ノ規定ヲ適用セザル船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ関シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ナル規則ヲ設クルコトヲ得
附 則
第三十条 本法施行ノ期日ハ第二条第一項第十一号ニ関スル規定、同条同項第十二号ニ関スル規定、第二十七条ノ規定並ニ他ノ一般規定ニ付各別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十一条 船舶検査法、船舶満載吃水線法、船舶無線電信施設法及明治六年第二百九十二号布告ハ前条ノ一般規定施行ノ日ヨリ、海上衝突予防法ハ第二十七条ノ規定ノ施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス
第三十二条 第二条第一項ノ規定ハ左ニ掲グル船舶ニハ当分ノ内之ヲ適用セズ
一 総噸数二十噸未満ノ帆船
二 総噸数二十噸未満ノ漁船
三 平水区域ノミヲ航行スル帆船
第三十三条 船舶満載吃水線法ニ依リ満載吃水線ノ標示ヲ要セザリシ船舶ニシテ本法ニ依リ其ノ標示ヲ要スルモノニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ満載吃水線ニ関スル検査ヲ受クル迄之ヲ標示セザルコトヲ得
第三十四条 本法施行前ニ生ジタル事項ニ付テハ仍旧法ニ依ル但シ船級協会ノ認定其ノ他命令ヲ以テ定ムル事項ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五条 船舶検査法ニ依リ船舶検査証書若ハ仮証書ヲ受有スル船舶又ハ之ヲ受有セズシテ航行ノ用ニ供スル船舶ニハ左ノ各号ノ一ニ該当スルニ至ル迄船舶検査、満載吃水線及無線電信施設ニ関シ仍旧法ニ依ル
一 航行期間満了ノ為船舶検査法ニ依リ検査ヲ受クベキトキ
二 船舶検査法ニ依リ船舶検査証書又ハ仮証書ヲ受有セズシテ航行ノ用ニ供シ得ザルニ至リタルトキ
三 船舶満載吃水線法ニ依リ満載吃水線ノ指定ヲ受クベキトキ
第三十六条 前条ノ船舶同条各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ検査ヲ受クベシ
前項ノ検査ニ合格シタル船舶ニハ船舶検査証書ヲ交付ス但シ其ノ有効期間ハ四年以内ニ於テ管海官庁ノ定メタル期間トス
前項ノ有効期間ノ満了ハ第五条第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第十条ニ規定スル有効期間ノ満了ト看做ス
第三十七条 他ノ法令中航路定限、遠洋航路、近海航路、沿海航路又ハ平水航路トアルハ各之ヲ航行区域、遠洋区域、近海区域、沿海区域又ハ平水区域トス