(土地等の使用権)
第七十三条 第一種電気通信事業者は、第一種電気通信事業の用に供する線路及び空中線並びにこれらの附属設備(以下この章において「線路」と総称する。)を設置するため他人の土地及びこれに定着する建物その他の工作物(以下単に「土地等」という。)を利用することが必要かつ適当であるときは、その土地等の所在地を管轄する都道府県知事の認可を受けて、その土地等の所有者(所有権以外の権原に基づきその土地等を使用する者があるときは、その者及び所有者。以下同じ。)に対し、その土地等を使用する権利(以下「使用権」という。)の設定に関する協議を求めることができる。第三項の存続期間が満了した後において、その期間を延長して使用しようとするときも、同様とする。
2 前項の認可は、第一種電気通信事業者がその土地等の利用を著しく妨げない限度において使用する場合にすることができる。ただし、他の法律によつて土地等を収用し、又は使用することができる事業の用に供されている土地等にあつてはその事業のための土地等の利用を妨げない限度において利用する場合に限り、建物その他の工作物にあつては線路を支持するために利用する場合に限る。
3 第一項の使用権の存続期間は、十五年(地下ケーブルその他の地下工作物又は鉄鋼若しくはコンクリート造の地上工作物の設置を目的とするものにあつては、五十年)とする。ただし、同項の協議又は第七十七条第二項若しくは第三項の裁定においてこれより短い期間を定めたときは、この限りでない。
4 都道府県知事は、第一項の認可をしたときは、その旨をその土地等の所有者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
5 第一項の協議が調つた場合には、第一種電気通信事業者及び土地等の所有者は、郵政省令で定めるところにより、その協議において定めた事項を都道府県知事に届け出るものとする。
6 前項の届出があつたときは、その届け出たところに従い、第一種電気通信事業者がその土地等の使用権を取得し、又は当該使用権の存続期間が延長されるものとする。
(裁定の申請)
第七十四条 前条第一項の規定による協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、第一種電気通信事業者は、郵政省令で定める手続に従い、その土地等の使用について、都道府県知事の裁定を申請することができる。ただし、同項の認可があつた日から三月を経過したときは、この限りでない。
2 第一種電気通信事業者は、使用権の存続期間の延長について前項の規定により裁定を申請したときは、その裁定があるまでは、引き続きその土地等を使用することができる。
(裁定)
第七十五条 都道府県知事は、前条第一項の規定による裁定の申請を受理したときは、三日以内に、その申請書の写しを当該市町村長に送付するとともに、土地等の所有者に裁定の申請があつた旨を通知しなければならない。
2 市町村長は、前項の書類を受け取つたときは、三日以内に、その旨を公告し、公告の日から一週間、これを公衆の縦覧に供しなければならない。
3 市町村長は、前項の規定による公告をしたときは、公告の日を都道府県知事に報告しなければならない。
4 前三項の規定の適用については、これらの規定中「市町村長」とあるのは、特別区のある地にあつては「特別区の区長」と、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては「区長」と、全部事務組合のある地にあつては「全部事務組合の管理者」と、役場事務組合のある地にあつては「役場事務組合の管理者」とする。
第七十六条 前条第二項の規定による公告があつたときは、土地等の所有者その他利害関係人は、公告の日から十日以内に、都道府県知事に意見書を提出することができる。
第七十七条 都道府県知事は、前条の期間が経過した後、速やかに、裁定をしなければならない。
2 使用権を設定すべき旨を定める裁定においては、次の事項を定めなければならない。
3 使用権の存続期間を延長すべき旨を定める裁定においては、延長する期間(延長に際し前項第五号に掲げる事項を変更するときは、延長する期間及び当該変更後の同号に掲げる事項)を定めなければならない。
4 都道府県知事は、第二項第五号に掲げる事項(前項に規定する変更後のものを含む。)については、あらかじめ収用委員会の意見を聴き、これに基づいて裁定しなければならない。この場合において、同号の対価の額の基準は、その使用により通常生ずる損失を償うように、線路及び土地等の種類ごとに政令で定める。
5 都道府県知事は、第七十四条第一項の裁定をしたときは、遅滞なく、その旨を第一種電気通信事業者及び土地等の所有者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
6 使用権を設定すべき旨を定める裁定があつたときは、その裁定において定められた使用開始の時期に、第一種電気通信事業者は、その土地等の使用権を取得するものとする。
7 使用権の存続期間を延長すべき旨を定める裁定があつたときは、当該使用権の存続期間は、その裁定において定められた期間延長されるものとする。
8 第三十九条第六項から第八項までの規定は、第七十四条第一項の裁定について準用する。この場合において、第三十九条第六項及び第八項中「当事者が取得し、又は負担すべき金額」とあるのは「対価の額」と、同項中「異議申立て」とあるのは「審査請求」と読み替えるものとする。
(土地等の一時使用)
第七十八条 第一種電気通信事業者は、次に掲げる目的のため他人の土地等を利用することが必要であつて、やむを得ないときは、その土地等の利用を著しく妨げない限度において、一時これを使用することができる。ただし、建物その他の工作物にあつては、線路を支持するために利用する場合に限る。
一 線路に関する工事の施行のため必要な資材及び車両の置場並びに土石の捨場の設置
二 天災、事変その他の非常事態が発生した場合その他特にやむを得ない事由がある場合における重要な通信を確保するための線路その他の電気通信設備の設置
2 第一種電気通信事業者は、前項の規定により他人の土地等を一時使用しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、天災、事変その他の非常事態が発生した場合において十五日以内の期間一時使用するときは、この限りでない。
3 第一種電気通信事業者は、第一項の規定により他人の土地等を一時使用しようとするときは、あらかじめ、土地等の占有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用開始の後、遅滞なく、通知することをもつて足りる。
4 第一項の規定により一時使用しようとする土地等が居住の用に供されているときは、その居住者の承諾を得なければならない。
5 第一項の規定による一時使用の期間は、六月(同項第二号に規定する場合において仮線路又は測標を設置したときは、一年)を超えることができない。
6 第一項の規定による一時使用のため他人の土地等に立ち入る者は、第二項の許可を受けたことを証する書面(同項ただし書の場合にあつては、その身分を示す証明書)を携帯し、関係人に提示しなければならない。
(土地の立入り)
第七十九条 第一種電気通信事業者は、線路に関する測量、実地調査又は工事のため必要があるときは、他人の土地に立ち入ることができる。
2 前条第二項から第四項まで及び第六項の規定は、第一種電気通信事業者が前項の規定により他人の土地に立ち入る場合について準用する。
(通行)
第八十条 第一種電気通信事業者は、線路に関する工事又は線路の維持のため必要があるときは、他人の土地を通行することができる。
2 第五十一条第三項並びに第七十八条第三項及び第四項の規定は、第一種電気通信事業者が前項の規定により他人の土地を通行する場合について準用する。
(植物の伐採)
第八十一条 第一種電気通信事業者は、植物が線路に障害を及ぼし、若しくは及ぼすおそれがある場合又は植物が線路に関する測量、実地調査若しくは工事に支障を及ぼす場合において、やむを得ないときは、都道府県知事の許可を受けて、その植物を伐採し、又は移植することができる。
2 第一種電気通信事業者は、前項の規定により植物を伐採し、又は移植するときは、あらかじめ、植物の所有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、伐採又は移植の後、遅滞なく、通知することをもつて足りる。
3 第一種電気通信事業者は、植物が線路に障害を及ぼしている場合において、その障害を放置するときは、線路を著しく損壊し、通信の確保に重大な支障を生ずると認められるときは、第一項の規定にかかわらず、都道府県知事の許可を受けないで、その植物を伐採し、又は移植することができる。この場合においては、伐採又は移植の後、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出るとともに、植物の所有者に通知しなければならない。
(損失補償)
第八十二条 第一種電気通信事業者は、第七十八条第一項の規定により他人の土地等を一時使用し、第七十九条第一項の規定により他人の土地に立ち入り、第八十条第一項の規定により他人の土地を通行し、又は前条第一項若しくは第三項の規定により植物を伐採し、若しくは移植したことによつて損失を生じたときは、損失を受けた者に対し、これを補償しなければならない。
2 前項の規定による損失の補償について、第一種電気通信事業者と損失を受けた者との間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、第一種電気通信事業者又は損失を受けた者は、郵政省令で定める手続に従い、都道府県知事の裁定を申請することができる。
3 第三十九条第三項から第八項までの規定は、前項の裁定について準用する。この場合において、同条第三項中「郵政大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「答弁書」とあるのは「答弁書(損失を受けた者に通知する場合にあつては、意見書)」と、同条第四項中「郵政大臣」とあるのは「都道府県知事」と、同条第六項及び第八項中「当事者が取得し、又は負担すべき金額」とあるのは「補償金の額」と、同項中「異議申立て」とあるのは「審査請求」と読み替えるものとする。
4 損失の補償をすべき旨を定める裁定においては、補償金の額並びにその支払の時期及び方法を定めなければならない。
(線路の移転等)
第八十三条 線路が設置されている土地等又はこれに近接する土地等の利用の目的又は方法が変更されたため、その線路が土地等の利用に著しく支障を及ぼすようになつたときは、その土地等の所有者は、第一種電気通信事業者に、線路の移転その他支障の除去に必要な措置をすべきことを請求することができる。
2 第一種電気通信事業者は、前項の措置が業務の遂行上又は技術上著しく困難な場合を除き、同項の措置をしなければならない。
3 第一項の措置について、第一種電気通信事業者と土地等の所有者との間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、第一種電気通信事業者又は土地等の所有者は、郵政省令で定める手続に従い、都道府県知事の裁定を申請することができる。
4 第七十五条、第七十六条並びに第七十七条第一項及び第五項の規定は、前項の裁定について準用する。
5 第一項の措置をすべき旨を定める裁定においては、その措置に要する費用の全部又は一部を土地等の所有者が負担すべき旨を定めることができる。
6 第一項の措置をすべき旨を定める裁定においては、その措置をすべき時期(前項の場合にあつては、その時期並びに土地等の使用者が負担すべき費用の額、支払の時期及び支払の方法)を定めなければならない。
7 第四項において準用する第七十七条第五項の規定による公告があつたときは、裁定の定めるところに従い、第一種電気通信事業者と土地等の所有者との間に協議が調つたものとみなす。
8 第三十九条第六項から第八項までの規定は、第三項の裁定について準用する。この場合において、同条第六項及び第八項中「当事者が取得し、又は負担すべき金額」とあるのは「費用の負担の額」と、同項中「異議申立て」とあるのは「審査請求」と読み替えるものとする。
(原状回復の義務)
第八十四条 第一種電気通信事業者は、土地等の使用を終わつたとき、又はその使用する土地等を第一種電気通信事業の用に供する必要がなくなつたときは、その土地等を原状に回復し、又は原状に回復しないことによつて生ずる損失を補償して、これを返還しなければならない。
(公用水面の使用)
第八十五条 第一種電気通信事業者は、公共の用に供する水面(以下「水面」という。)に電気通信事業の用に供する水底線路(以下「水底線路」という。)を敷設しようとするときは、あらかじめ、次の事項を郵政大臣及び関係都道府県知事(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第百三十六条の規定により農林水産大臣が自ら都道府県知事の権限を行う漁場たる水面については、農林水産大臣を含む。次項において同じ。)に届け出なければならない。
一 水底線路の位置及び次条第一項の申請をしようとする区域
2 関係都道府県知事は、前項の規定による届出があつた場合において、漁業権(漁業法による漁業権をいう。以下同じ。)に関する利害関係人若しくは同項第一号の区域において次条第四項の政令で定める漁業を現に適法に行つている者の意見により、又は漁業に対する影響を勘案して、前項の届出に係る事項を変更する必要があると認めるときは、他の関係都道府県知事がある場合にあつては必要な協議を行つた上、届出があつた日から三十日以内に、その旨を郵政大臣及び当該第一種電気通信事業者に通知することができる。
3 第一種電気通信事業者は、前項の規定による通知を受けた場合には、当該事項を変更しなければならない。ただし、当該事項の変更がその業務の遂行上著しい支障がある場合において、その変更を要しない旨の郵政大臣の認可を受けたときは、その事項については、この限りでない。
(水底線路の保護)
第八十六条 郵政大臣は、第一種電気通信事業者の申請があつた場合において、前条に定める敷設の手続を経た水底線路を保護するため必要があるときは、その水底線路から千メートル(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)が適用され、又は準用される河川(以下「河川」という。)については、五十メートル)以内の区域を保護区域として指定することができる。
3 第一種電気通信事業者は、第一項の規定による保護区域の指定があつたときは、郵政省令で定めるところにより、これを示す陸標を設置し、かつ、その陸標の位置を公告しなければならない。
4 何人も、第一項の保護区域内において、船舶をびよう泊させ、底びき網を用いる漁業その他の政令で定める漁業を行い、若しくは土砂を掘採し、又は前項の陸標に舟若しくはいかだをつないではならない。ただし、河川管理者が河川工事を行う場合、海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第二項に規定する海岸管理者(以下この条において「海岸管理者」という。)が同法第二条第一項に規定する海岸保全施設(以下この項において「海岸保全施設」という。)に関する工事を施行する場合又は同法第六条第一項の規定により主務大臣が海岸保全施設に関する工事を施行する場合においてやむを得ない事情があるとき、その他政令で定める場合は、この限りでない。
5 都道府県知事(漁業法第百三十六条の規定により農林水産大臣が自ら都道府県知事の権限を行う場合は、農林水産大臣。次項において同じ。)は、第一種電気通信事業者の申請があつた場合において、水底線路を保護する必要があると認めるときは、第一項の保護区域内の水面に設定されている漁業権を取り消し、変更し、又はその行使の停止を命ずることができる。
6 都道府県知事は、第一項の保護区域内の水面における漁業権の設定については、水底線路の保護に必要な配慮をしなければならない。
7 海岸管理者は、第一項の保護区域の水面における施設若しくは工作物の設置又は行為の許可については、水底線路の保護に必要な配慮をしなければならない。
第八十七条 第一種電気通信事業者は、前条第五項の規定による漁業権の取消し、変更又はその行使の停止によつて生じた損失を当該漁業権者に対し補償しなければならない。
2 漁業法第三十九条第六項から第十一項までの規定は、前項の規定による損失の補償について準用する。この場合において、同条第九項中「国」とあり、及び同条第十項中「政府」とあるのは、「第一種電気通信事業者」と読み替えるものとする。
第八十八条 船舶は、水底線路の敷設若しくは修理に従事している船舶であつて、その旨を示す標識を掲げているものから千メートル以内で郵政省令で定める範囲内(河川については、五十メートル以内)又は施設若しくは修理中の水底線路の位置を示す浮標であつて、その旨の標識を掲げてあるものから四百メートル以内で郵政省令で定める範囲内(河川については、三十メートル以内)の水面を航行してはならない。