(傍受をした通信の記録)
第十九条 傍受をした通信については、すべて、録音その他通信の性質に応じた適切な方法により記録媒体に記録しなければならない。この場合においては、第二十二条第二項の手続の用に供するため、同時に、同一の方法により他の記録媒体に記録することができる。
2 傍受の実施を中断し又は終了するときは、その時に使用している記録媒体に対する記録を終了しなければならない。
(記録媒体の封印等)
第二十条 前条第一項前段の規定により記録をした記録媒体については、傍受の実施を中断し又は終了したときは、速やかに、立会人にその封印を求めなければならない。傍受の実施をしている間に記録媒体の交換をしたときその他記録媒体に対する記録が終了したときも、同様とする。
2 前項の記録媒体については、前条第一項後段の規定により記録をした記録媒体がある場合を除き、立会人にその封印を求める前に、第二十二条第二項の手続の用に供するための複製を作成することができる。
3 立会人が封印をした記録媒体は、遅滞なく、傍受令状を発付した裁判官が所属する裁判所の裁判官に提出しなければならない。
(傍受の実施の状況を記載した書面の提出等)
第二十一条 検察官又は司法警察員は、傍受の実施の終了後、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を、前条第三項に規定する裁判官に提出しなければならない。第七条の規定により傍受ができる期間の延長を請求する時も、同様とする。
四 傍受の実施をしている間における通話の開始及び終了の年月日時
五 傍受をした通信については、傍受の根拠となった条項、その開始及び終了の年月日時並びに通信の当事者の氏名その他その特定に資する事項
六 第十四条に規定する通信については、当該通信に係る犯罪の罪名及び罰条並びに当該通信が同条に規定する通信に該当すると認めた理由
八 前条第一項の規定による封印の年月日時及び封印をした立会人の氏名
九 その他傍受の実施の状況に関し最高裁判所規則で定める事項
2 前項に規定する書面の提出を受けた裁判官は、同項第六号の通信については、これが第十四条に規定する通信に該当するかどうかを審査し、これに該当しないと認めるときは、当該通信の傍受の処分を取り消すものとする。この場合においては、第二十六条第三項、第五項及び第六項の規定を準用する。
(傍受記録の作成)
第二十二条 検察官又は司法警察員は、傍受の実施を中断し又は終了したときは、その都度、速やかに、傍受をした通信の内容を刑事手続において使用するための記録(以下「傍受記録」という。)一通を作成しなければならない。傍受の実施をしている間に記録媒体の交換をしたときその他記録媒体に対する記録が終了したときも、同様とする。
2 傍受記録は、第十九条第一項後段の規定により記録をした記録媒体又は第二十条第二項の規定により作成した複製から、次に掲げる通信以外の通信の記録を消去して作成するものとする。
二 第十三条第二項の規定により傍受をした通信であって、なおその内容を復元するための措置を要するもの
三 第十四条の規定により傍受をした通信及び第十三条第二項の規定により傍受をした通信であって第十四条に規定する通信に該当すると認められるに至ったもの
四 前三号に掲げる通信と同一の通話の機会に行われた通信
3 前項第二号に掲げる通信の記録については、当該通信が傍受すべき通信及び第十四条に規定する通信に該当しないことが判明したときは、傍受記録から当該通信の記録及び当該通信に係る同項第四号に掲げる通信の記録を消去しなければならない。ただし、当該通信と同一の通話の機会に行われた同項第一号から第三号までに掲げる通信があるときは、この限りでない。
4 検察官又は司法警察員は、傍受記録を作成した場合において、他に第二十条第三項の規定により裁判官に提出した記録媒体(以下「傍受の原記録」という。)以外の傍受をした通信の記録をした記録媒体又はその複製等(複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。以下同じ。)があるときは、その記録の全部を消去しなければならない。前項の規定により傍受記録から記録を消去した場合において、他に当該記録の複製等があるときも、同様とする。
5 検察官又は司法警察員は、傍受をした通信であって、傍受記録に記録されたもの以外のものについては、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならない。その職を退いた後も、同様とする。
(通信の当事者に対する通知)
第二十三条 検察官又は司法警察員は、傍受記録に記録されている通信の当事者に対し、傍受記録を作成した旨及び次に掲げる事項を書面で通知しなければならない。
一 当該通信の開始及び終了の年月日時並びに相手方の氏名(判明している場合に限る。)
六 第十四条に規定する通信については、その旨並びに当該通信に係る犯罪の罪名及び罰条
2 前項の通知は、通信の当事者が特定できない場合又はその所在が明らかでない場合を除き、傍受の実施が終了した後三十日以内にこれを発しなければならない。ただし、地方裁判所の裁判官は、捜査が妨げられるおそれがあると認めるときは、検察官又は司法警察員の請求により、六十日以内の期間を定めて、この項の規定により通知を発しなければならない期間を延長することができる。
3 検察官又は司法警察員は、前項本文に規定する期間が経過した後に、通信の当事者が特定された場合又はその所在が明らかになった場合には、当該通信の当事者に対し、速やかに、第一項の通知を発しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
(傍受記録の聴取及び閲覧等)
第二十四条 前条第一項の通知を受けた通信の当事者は、傍受記録のうち当該通信に係る部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することができる。
(傍受の原記録の聴取及び閲覧等)
第二十五条 傍受の原記録を保管する裁判官(以下「原記録保管裁判官」という。)は、傍受記録に記録されている通信の当事者が、前条の規定により、傍受記録のうち当該通信に係る部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成した場合において、傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、当該通信の当事者の請求により、傍受の原記録のうち当該通信に相当する部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可しなければならない。
2 原記録保管裁判官は、傍受をされた通信の内容の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、傍受記録に記録されている通信以外の通信の当事者の請求により、傍受の原記録のうち当該通信に係る部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可しなければならない。
3 原記録保管裁判官は、傍受が行われた事件に関し、犯罪事実の存否の証明又は傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員の請求により、傍受の原記録のうち必要と認める部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可することができる。ただし、複製の作成については、次に掲げる通信(傍受記録に記録されているものを除く。)に係る部分に限る。
二 犯罪事実の存否の証明に必要な証拠となる通信(前号に掲げる通信を除く。)
三 前二号に掲げる通信と同一の通話の機会に行われた通信
4 次条第三項(第二十一条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により記録の消去を命じた裁判がある場合においては、前項の規定による複製を作成することの許可の請求は、同項の規定にかかわらず、当該裁判により消去を命じられた記録に係る通信が新たに同項第一号又は第二号に掲げる通信であって他にこれに代わるべき適当な証明方法がないものであることが判明するに至った場合に限り、傍受の原記録のうち当該通信及びこれと同一の通話の機会に行われた通信に係る部分について、することができる。ただし、当該裁判が次条第三項第二号に該当するとしてこれらの通信の記録の消去を命じたものであるときは、この請求をすることができない。
5 原記録保管裁判官は、検察官により傍受記録又はその複製等の取調べの請求があった被告事件に関し、被告人の防御又は傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、被告人又はその弁護人の請求により、傍受の原記録のうち必要と認める部分を聴取し、若しくは閲覧し、又はその複製を作成することを許可することができる。ただし、被告人が当事者でない通信に係る部分の複製の作成については、当該通信の当事者のいずれかの同意がある場合に限る。
6 検察官又は司法警察員が第三項の規定により作成した複製は、傍受記録とみなす。この場合において、第二十三条の規定の適用については、同条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「次に掲げる事項並びに第二十五条第三項の複製を作成することの許可があった旨及びその年月日」とし、同条第二項中「傍受の実施が終了した後」とあるのは「複製を作成した後」とする。
7 傍受の原記録については、第一項から第五項までの規定による場合のほか、これを聴取させ、若しくは閲覧させ、又はその複製を作成させてはならない。ただし、裁判所又は裁判官が、刑事訴訟法の定めるところにより、検察官により傍受記録若しくはその複製等の取調べの請求があった被告事件又は傍受に関する刑事の事件の審理又は裁判のために必要があると認めて、傍受の原記録のうち必要と認める部分を取り調べる場合においては、この限りでない。
(不服申立て)
第二十六条 裁判官がした通信の傍受に関する裁判に不服がある者は、その裁判官が所属する裁判所に、その裁判の取消し又は変更を請求することができる。
2 検察官又は検察事務官がした通信の傍受に関する処分に不服がある者はその検察官又は検察事務官が所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に、司法警察職員がした通信の傍受に関する処分に不服がある者はその職務執行地を管轄する地方裁判所に、その処分の取消し又は変更(傍受の実施の終了を含む。)を請求することができる。
3 裁判所は、前項の請求により傍受の処分を取り消す場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、検察官又は司法警察員に対し、その保管する傍受記録(前条第六項の規定により傍受記録とみなされたものを除く。以下この項において同じ。)及びその複製等のうち当該傍受の処分に係る通信及びこれと同一の通話の機会に行われた通信の記録の消去を命じなければならない。ただし、第三号に該当すると認める場合において、当該記録の消去を命ずることが相当でないと認めるときは、この限りでない。
一 当該傍受に係る通信が、第二十二条第二項各号に掲げる通信のいずれにも当たらないとき。
二 当該傍受において、通信の当事者の利益を保護するための手続に重大な違法があるとき。
三 前二号に該当する場合を除き、当該傍受の手続に違法があるとき。
4 前条第三項の複製を作成することの許可が取り消されたときは、検察官又は司法警察員は、その保管する同条第六項の規定によりみなされた傍受記録(その複製等を含む。)のうち当該取り消された許可に係る部分を消去しなければならない。
5 第三項に規定する記録の消去を命ずる裁判又は前項に規定する複製を作成することの許可の取消しの裁判は、当該傍受記録又はその複製等について既に被告事件において証拠調べがされているときは、証拠から排除する決定がない限り、これを当該被告事件に関する手続において証拠として用いることを妨げるものではない。
6 前項に規定する裁判があった場合において、当該傍受記録について既に被告事件において証拠調べがされているときは、当該被告事件に関する手続においてその内容を他人に知らせ又は使用する場合以外の場合においては、当該傍受記録について第三項の裁判又は第四項の規定による消去がされたものとみなして、第二十二条第五項の規定を適用する。
7 第一項及び第二項の規定による不服申立てに関する手続については、この法律に定めるもののほか、刑事訴訟法第四百二十九条第一項及び第四百三十条第一項の請求に係る手続の例による。
(傍受の原記録の保管期間)
第二十七条 傍受の原記録は、第二十条第三項の規定による提出の日から五年を経過する日又は傍受記録若しくはその複製等が証拠として取り調べられた被告事件若しくは傍受に関する刑事の事件の終結の日から六月を経過する日のうち最も遅い日まで保管するものとする。
2 原記録保管裁判官は、必要があると認めるときは、前項の保管の期間を延長することができる。