旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律
法令番号: 法律第177号
公布年月日: 昭和31年12月20日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

終戦から10年以上が経過し独立を回復して4年となるが、異国に抑留されている同胞や、国内で一家の支柱を失い生活苦と戦う百数十万の遺族が存在する状況は遺憾である。軍人恩給の復活や援護法における遺族年金支給範囲の拡大が実現したが、これらの措置を受けられない遺族への援護は国家の責務である。本法案は、太平洋戦争時の状況を考慮し、戦地に指定されなかった地域で職務に関連して死亡した旧軍人・旧準軍人等の死亡を公務死亡に準じて取り扱い、その遺族に対して遺族年金または扶助料を支給することを目的とする。

参照した発言:
第24回国会 衆議院 内閣委員会 第47号

審議経過

第24回国会

衆議院
(昭和31年5月16日)
参議院
(昭和31年5月17日)
衆議院
(昭和31年5月21日)
(昭和31年5月23日)

第25回国会

衆議院
(昭和31年11月28日)
(昭和31年12月5日)
(昭和31年12月12日)
(昭和31年12月13日)
参議院
(昭和31年12月13日)
(昭和31年12月13日)
(昭和31年12月13日)
旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年十二月二十日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百七十七号
旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律
(この法律の趣旨)
第一条 本邦等において負傷し、又は疾病にかかり、これにより死亡した旧軍人又は旧準軍人の遺族に対する扶助料及び遺族年金については、この法律の定める特例によるほか、恩給法(大正十二年法律第四十八号)及び戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の定めるところによる。
(遺族年金の支給の特例等)
第二条 恩給法の一部を改正する法律(昭和二十一年法律第三十一号)による改正前の恩給法(以下「改正前の恩給法」という。)第二十一条に規定する軍人又は準軍人(以下「旧軍人等」という。)の死亡につき戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「援護法」という。)第三十四条第二項の規定の適用により同条第一項の規定による弔慰金の支給を受けた者(この法律の施行前に支給を受けた者を含む。)がある場合において、当該旧軍人等で営内に居住すべき者が、昭和十六年十二月八日から昭和二十年九月一日までの間に本邦その他政令で定める地域(援護法第四条第二項に規定する戦地の区域(当該区域が戦地であつた期間に限る。)を除く。)における在職期間(援護法第三条に規定する在職期間をいう。以下同じ。)内においてその職務に関連して負傷し、又は疾病にかかり、その在職期間内又は在職期間経過後一年(厚生大臣の指定する疾病については、三年とする。)以内に、これにより死亡したものであるときは、援護法第二十三条の規定の適用については、当該旧軍人等の遺族は、同条第一号に掲げる遺族とみなし、援護法第三十四条第一項の規定の適用については、当該弔慰金は、同条第二項の規定の適用によらないで支給を受けたものとみなす。ただし、当該旧軍人等の負傷又は疾病が昭和十九年一月一日前に生じたものである場合においては、その負傷又は疾病が職務に関連することが顕著であると認められる場合に限る。
2 旧恩給法の特例に関する件(昭和二十一年勅令第六十八号)の施行前に、旧軍人等の死亡につき改正前の恩給法の規定による扶助料を受ける権利についての裁定(改正前の恩給法第七十五条第一項第二号又は第三号に掲げる額の扶助料を給する裁定を除く。)がなされた場合にあつては、援護審査会の議決を経た場合に限り、前項の規定を適用する。
3 旧軍人等の遺族で前二項の規定の適用により援護法第二十三条第一号に掲げる遺族とみなされるものに対し同条の規定により遺族年金を支給する場合においては、当該遺族年金の額は、同法の規定により支給すべき遺族年金の額の十分の六に相当する額とする。
4 前三項の規定に基く遺族年金に関する援護法の適用については、同法第二十五条第一項中「昭和二十七年四月一日」とあるのは「昭和二十八年四月一日」と、「昭和二十七年四月二日」とあるのは「昭和二十八年四月二日」と、第二十九条第二号中「昭和二十七年三月三十一日」とあるのは「昭和二十八年三月三十一日」と、第三十条第一項中「昭和二十七年四月」とあるのは「昭和三十二年一月」と、「昭和二十七年四月一日」とあるのは「昭和三十二年一月一日」とする。
(扶助料給与の特例)
第三条 旧軍人等の死亡につき、援護法第三十四条第二項の規定の適用により同条第一項の規定による弔慰金の支給を受けた者(この法律の施行前に支給を受けた者を含む。)がある場合において、前条の規定の適用により当該弔慰金が同法第三十四条第二項の規定の適用によらないで支給を受けたものとみなされるときは、恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号。以下「法律第百五十五号」という。)附則第三十五条の二第一項の規定の適用についても、当該弔慰金は、援護法第三十四条第二項の規定の適用によらないで支給を受けたものとみなす。
2 前項の規定の適用により旧軍人等の遺族に対し法律第百五十五号附則の規定による扶助料を給する場合における当該扶助料の年額は、恩給法第七十五条第一項第一号に規定する場合の扶助料の年額に相当する金額に恩給法の規定により旧軍人等の遺族に給する恩給の金額を計算する場合におけるその計算の基礎となるべき俸給年額により定めた別表の率を乗じて得た金額の年額とする。
3 第一項の規定の適用がある場合においては、法律第百五十五号附則第三十五条の二第一項中「死亡した者の遺族」とあるのは「死亡した者の遺族及び支給を受けた弔慰金が旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律(昭和三十一年法律第百七十七号)第二条第二項の規定の適用により同条第一項の規定により戦傷病者戦没者遺族等援護法第三十四条第二項の規定の適用によらないで支給を受けたものとみなされる場合の遺族」と、法律第百五十五号附則第三十五条の二第三項中「死亡したかどうかの認否」とあるのは「死亡したかどうかの認否及び当該旧軍人又は旧準軍人の死亡が旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律第二条第一項の規定に該当するものであるかどうかの認否」と読み替えるものとする。
(扶助料、遺族年金の支給の調整)
第四条 旧軍人等の死亡につき、前条の規定の適用により法律第百五十五号附則の規定による扶助料を受ける権利若しくは資格を取得する遺族又は援護法第二十三条第二号の規定に該当して同条の規定による遺族年金を支給される遺族には、第二条の規定に基く遺族年金は支給しない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十二年一月一日から施行する。
(経過規定)
2 この法律の規定に基く扶助料及び遺族年金は、昭和三十二年一月分から支給するものとする。
(扶助料の年額の改定)
3 この法律の施行の際、現に旧軍人等の死亡につき恩給法第七十五条第一項第一号に規定する場合の扶助料を受ける者で、第三条の規定に基く扶助料を受けることとなるものについては、昭和三十二年一月分以降その扶助料の年額を第三条第二項の規定により計算して得た年額に改定するものとする。
(遺族年金の支給時期の特例)
4 この法律の規定に基く遺族年金で昭和三十二年一月分から同年三月分までのものは、政令で定める同年四月以後の時期に支給する。
(一時扶助料を受けた場合の扶助料の年額)
5 この法律の施行前に法律第百五十五号附則の規定により一時扶助料を受けた者がこの法律の規定に基く扶助料を給せられることとなる場合においては、当該扶助料の年額は、当該一時扶助料の金額の十五分の一に相当する金額を控除した金額とする。
別表
俸給年額
四三〇、八〇〇円以上のもの
一〇・〇割
三六七、二〇〇円をこえ四三〇、八〇〇円未満のもの
一〇・〇割に四三〇、八〇〇円と退職当時の俸給年額との差額一五、六〇〇円ごとに〇・四割を加えた割合
二五九、二〇〇円をこえ三六七、二〇〇円以下のもの
一一・五割
二四九、六〇〇円をこえ二五九、二〇〇円以下のもの
一一・五割に二六八、八〇〇円と退職当時の俸給年額との差額九、六〇〇円ごとに一・〇割を加えた割合
一一八、二〇〇円をこえ二四九、六〇〇円以下のもの
一三・五割
一一四、六〇〇円をこえ一一八、二〇〇円以下のもの
一五・〇割
九七、八〇〇円をこえ一一四、六〇〇円以下のもの
一五・〇割に一一八、二〇〇円と退職当時の俸給年額との差額三、〇〇〇円ごとに○・四割を加えた割合
九四、八〇〇円をこえ九七、八〇〇円以下のもの
一七・六割
九一、八〇〇円をこえ九四、八〇〇円以下のもの
一八・〇割
八八、八〇〇円をこえ九一、八〇〇円以下のもの
一八・四割
七九、八〇〇円をこえ八八、八〇〇円以下のもの
一八・四割に九一、八〇〇円と退職当時の俸給年額との差額三、〇〇〇円ごとに○・四割を加えた割合
七九、八〇〇円のもの
一九・九割
内閣総理大臣 鳩山一郎
厚生大臣 小林英三