漁船損害補償法
法令番号: 法律第二十八号
公布年月日: 昭和27年3月31日
法令の形式: 法律
漁船損害補償法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二十八号
漁船損害補償法
目次
第一章
総則(第一條―第三條)
第二章
漁船保険組合
第一節
通則(第四條―第十二條)
第二節
設立(第十三條―第二十一條)
第三節
組合員(第二十二條―第二十九條)
第四節
漁船保険事業(第三十條―第五十四條)
第五節
管理(第五十五條―第七十四條)
第六節
解散及び清算(第七十五條―第八十七條)
第七節
登記(第八十八條―第百八條)
第八節
監督(第百九條―第百十三條)
第三章
政府の再保険事業(第百十四條―第百二十六條)
第四章
漁船保険中央会(第百二十七條―第百三十八條)
第五章
保険料の負担及び補助金の交付(第百三十九條―第百四十三條)
第六章
罰則(第百四十四條―第百四十六條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、漁船につき、不慮の事故によつて生じた損害を補償して、その復旧を容易にし、もつて、漁業経営の安定に資することを目的とする。
(漁船損害補償)
第二條 漁船損害補償は、漁船保険組合が行う漁船保険事業及び政府が行う再保険事業により行う。
(定義)
第三條 この法律において「漁船保険」とは、保険の目的たる漁船(漁船法(昭和二十五年法律第百七十八号)第二條第一項(漁船の定義)に規定する漁船をいう。)につき、滅失、沈没、損傷その他の事故によつて生じた損害をてん補する相互保険をいう。
2 漁船保険は、特殊保険及び普通保険とし、「特殊保険」とは、戦争、変乱その他政令で定めるこれに準ずるものによる事故(以下「特殊保険事故」という。)を保険事故とする保険をいい、「普通保険」とは、特殊保険事故以外の事故(以下「普通保険事故」という。)を保険事故とする保険をいう。
第二章 漁船保険組合
第一節 通則
(目的)
第四條 漁船保険組合(以下「組合」という。)は、組合員の所有する漁船につき、漁船保険事業を行うことを目的とする。
(組合の人格)
第五條 組合は、法人とする。
(組合の住所)
第六條 組合の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。
(組合の種類及び区域)
第七條 組合は、地域組合及び業態組合とする。
2 地域組合の区域は、都道府県の区域とする。但し、北海道及び兵庫県の区域において設立されるものについては、省令で特別の定をすることができる。
3 業態組合とは、政令で定める特定の漁業に従事する特定の漁船のみを保険の目的とする組合をいう。
(組合の名称)
第八條 組合の名称中には、「漁船保険組合」という文字を用いなければならない。
2 組合でないものは、その名称中に、「漁船保険組合」という文字を用いてはならない。
(登記)
第九條 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(組合の事業年度)
第十條 組合の事業年度は、四月一日から翌年三月三十一日までとする。
(非課税)
第十一條 組合がこの法律に基いてする登記については、登録税を課さない。
第十二條 この法律による漁船損害補償に関する書類には、印紙税を課さない。
第二節 設立
(発起人)
第十三條 組合を設立するには、組合員たる資格を有する者のうち、地域組合にあつては十五人以上、業態組合にあつては五人以上が発起人とならなければならない。
(設立準備会)
第十四條 発起人は、あらかじめ組合の区域及び組合員たる資格に関する目論見書を作り、一定の期間前までにこれを会議の日時及び場所とともに公告して、設立準備会を開かなければならない。
2 前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。
第十五條 設立準備会においては、出席した前條第一項の目論見書に定める組合員たる資格を有する者の中から定款の作成に当るべき者(以下「定款作成委員」という。)を選任し、且つ、区域、組合員たる資格その他定款作成の基本となるべき事項を定めなければならない。
2 定款作成委員は、地域組合にあつては十五人以上、業態組合にあつては五人以上でなければならない。
3 設立準備会の議事は、出席した前條第一項の目論見書に定める組合員たる資格を有する者の過半数の同意をもつて決する。
(創立総会)
第十六條 定款作成委員が定款を作成したときは、発起人は、一定の期間前までにこれを創立総会の日時及び場所とともに公告して、創立総会を開かなければならない。
2 前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。
3 定款作成委員が作成した定款の承認、事業計画の設定その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。
4 創立総会においては、前項の定款を修正することができる。但し、区域及び組合員たる資格に関する規定については、この限りでない。
5 創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者でその会日までに発起人に対して設立の同意を申し出た者の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
6 前項の者は、書面又は代理人をもつて議決権を行うことができる。
7 創立総会については、第二十八條、第二十九條第二項及び第三項並びに民法(明治二十九年法律第八十九号)第六十六條(表決権のない場合)の規定を準用する。
(設立の認可の申請)
第十七條 発起人は、創立総会の終了後遅滞なく定款及び事業計画書を農林大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
2 発起人は、農林大臣の要求があるときは、設立に関する報告書を提出しなければならない。
(設立の認可)
第十八條 農林大臣は、前條第一項の申請があつた場合において、左の各号の一に該当せず、且つ、その事業が健全に行われ公益に反しないと認められるときには、設立の認可をしなければならない。
一 設立の手続又は定款若しくは事業計画の内容が、法令又は法令に基いてする行政庁の処分に違反するとき。
二 定款又は事業計画のうち、主要な事項につき、虚偽の記載があり、又はその記載が欠けているとき。
2 農林大臣は、前項の認可をし、又はしなかつたときは、遅滞なく発起人に対してその旨を書面で通知しなければならない。
(理事への事務の引渡)
第十九條 設立の認可があつたときは、発起人は、遅滞なくその事務を理事に引き渡さなければならない。
(成立の時期)
第二十條 組合は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて成立する。
(定款に記載すべき事項)
第二十一條 組合の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 区域
四 事務所の所在地
五 事業
六 保険の目的及び保険料率
七 準備金の積立及び管理の方法に関する規定
八 剰余金の処分及び不足金の処理に関する規定
九 組合員たる資格並びに組合員の加入及び脱退に関する規定
十 事業の執行に関する規定
十一 役員の定数、職務の分担及び選任に関する規定
十二 公告の方法
十三 存立の期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
2 農林大臣は、模範定款例を定めることができる。
第三節 組合員
(組合員たる資格)
第二十二條 組合員たる資格を有する者は、保険の目的たるべき漁船の所有者で、当該組合の区域内に、その者の住所又は当該漁船の主たる根拠地があるものとする。
(組合員たる地位)
第二十三條 設立当時の組合員は、組合の定款で定める期間内に保険料の支払をしなかつたときは、そのときに組合員たる地位を失う。
2 組合設立後に組合員になろうとする者が組合に保険料の支払をしたときは、その者は、その時(定款で別段の定をしたときはその日)から組合員となる。
(脱退)
第二十四條 組合員は、三箇月前までに予告して、組合を脱退することができる。
2 組合員は、左の事由によつて脱退する。但し、第一号の場合については、組合の定款で別段の定をすることができる。
一 保険関係の全部の消滅
二 組合員たる資格の喪失
三 死亡又は解散
四 破産
五 除名
(保険の目的の譲受人等)
第二十五條 保険の目的たる漁船の譲受人が、第三十三條第一項の規定により当該漁船につき組合員の有する保険関係に関する権利義務を承継したときは、その者は、当該漁船を譲り受けた時から組合員となる。但し、組合が、同條第二項の規定により承継を拒んだときは、その限りでない。
2 前項の規定は、第三十三條第三項の規定による保険関係に関する権利義務の承継があつた場合に準用する。
(除名)
第二十六條 除名の事由は、定款で定める。
2 除名は、総会の決議によつて行うものとする。この場合において、組合は、その総会の会日の七日前までにその組合員に対してその旨を通知し、且つ、総会において弁明する機会を与えなければならない。
3 除名については、第六十九條第一項の規定を準用する。
4 除名は、除名した組合員に対してその旨を通知しなければ、これをもつてその組合員に対抗することができない。
(脱退の効果)
第二十七條 組合員が第二十四條第一項及び同條第二項第二号から第五号までの規定により脱退したときは、第二十五條の規定に該当する場合の外は、保険関係は、消滅する。
2 組合員は、組合を脱退したときでも、脱退の日の属する事業年度の追徴金及び保険金額の削減に関しては、その義務を免かれることができない。
(議決権)
第二十八條 組合員は、各々一箇の議決権を有する。
第二十九條 組合員は、定款の定めるところにより、第六十二條第三項の規定によりあらかじめ通知のあつた事項につき、書面又は代理人をもつて議決権を行うことができる。
2 前項の規定により議決権を行う者は、出席者とみなす。
3 代理人は、代理権を証する書面を組合に提出しなければならない。
第四節 漁船保険事業
(保険の目的)
第三十條 保険の目的たるべき漁船は、総トン数千トン未満の漁船とし、業態組合にあつては政令で定める漁業に従事する漁船であつて政令で定める総トン数以上のもの、地域組合にあつては業態組合の保険の目的となつていない漁船とする。但し、地域組合にあつては、業態組合の保険の目的となつていない漁船であつても、水産業協同組合以外の法人で常時使用する従業員の数が三百人以上で、且つ、使用漁船の合計総トン数が三百トン以上のものが所有する政令で定める総トン数以上の漁船については、定款で別段の定をした場合の外は、保険の目的とすることができない。
2 漁具は、定款の定めるところにより特約がある場合に限り、その属する漁船とともに保険の目的とすることができる。
3 前項の規定により漁具を保険の目的とする場合においては、この法律の規定中「漁船」とあるのは「漁船(漁具を含む。)」と読み替えるものとする。
(保険引受の拒否の制限)
第三十一條 組合は、組合員又は組合員たる資格を有する者から、保険の申込があつたときは、これに対して正当の事由がなければ、保険の引受を拒むことができない。
(付保の義務等)
第三十二條 漁業協同組合の地区内にその住所を有し且つ政令で指定する漁船を所有する者(以下本條において「指定漁船の所有者」という。)の総員の三分の二以上の者が、政令で定める手続により指定漁船の所有者はすべてその所有する当該漁船の全部につき普通保険に付すべきことにつき同意をしたときは、指定漁船の所有者のすべての者(同意があつた後指定漁船の所有者となつた者を含む。)は、その所有する当該漁船の全部につき、普通保険に付さなければならない。
2 前項の規定による同意があつたときは、その代表者は、当該地区を区域内に含む市町村(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五條第二項の市にあつては区)又は特別区(以下「市町村」という。)の長にその旨を通知するものとし、その通知を受けた市町村の長は、その旨及び前項の規定の適用を受ける地区を公示しなければならない。
3 第一項の規定による同意があつたときは、その代表者は、当該地区の漁業協同組合に対し、その同意を証する書面を添えて、当該漁業協同組合の組合員たる指定漁船の所有者が組合に支払うべき保険料を集収してその者に代り組合に払い込む事業を行うべき旨の申出をしたときは、当該漁業協同組合は、正当な事由がある場合の外は、その申出に係る事業を行わなければならない。
4 前項の規定による事業を行う漁業協同組合は、当該漁業協同組合の組合員からその所有する第一項の政令で指定する漁船以外の漁船で保険の目的たるべきものにつき普通保険に付することに関し前項と同様の申出があつたときは、正当な事由がある場合の外は、当該漁船についても、前項の事業を行わなければならない。
5 第三項の規定による事業を行う漁業協同組合は、その組合員以外の者であつてその地区内に住所を有する者の所有する漁船に係る普通保険についても、第三項の事業を行うことができる。
6 第一項の規定により漁船を普通保険に付する場合における保険金額並びに第四項及び前項の規定の適用を受くべき漁船の普通保険の保険金額は、政令で定める金額を下るものであつてはならない。
7 組合は、第三項の事業を行う漁業協同組合に対し、その事務費として、政令で定める金額を交付しなければならない。
8 第一項から第五項までの規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。
(保険の目的の譲渡)
第三十三條 保険の目的たる漁船の譲受人は、組合に通知して、保険関係に関する譲渡人の有する権利義務を承継することができる。
2 組合は、正当な事由があるときは、前項の通知を受けた後直ちにその旨を譲受人に通知して、前項の権利義務の承継を拒むことができる。
3 前二項の規定は、保険の目的たる漁船につき、相続その他の包括承継があつた場合に準用する。
(組合のてん補責任)
第三十四條 組合は、保険の目的たる漁船につき、滅失、沈没、損傷その他の事故によつて生じた損害をてん補する。
2 前項の事故及びてん補すべき損害の範囲に関して必要な事項は、省令で定める。
(保険関係の成立等)
第三十五條 保険関係は、組合が保険料を受け取つた時に成立する。
2 組合の損害をてん補する責任は、定款で別段の定をした場合の外は、保険関係が成立した日の翌日から始まる。
(保険期間)
第三十六條 保険期間は、一年とする。但し、組合は、省令の定めるところにより、定款で別段の定をすることができる。
(保険証券の交付及び記載事項)
第三十七條 組合は、組合員の請求があつたときは、保険証券を交付しなければならない。
2 保険証券に記載すべき事項は、省令で定める。
(危険の消滅)
第三十八條 組合は、保険の目的たる漁船につき、保険期間中その負担した危険が消滅したときは、定款の定めるところにより、保険料の一部を組合員に払い戻すことができる。
2 前項の規定によつて保険料の払戻をする場合及び払戻をする額の制限は、政令で定める。
(追徴金)
第三十九條 組合は、定款の定めるところにより、追徴金を支払わせることができる。
2 前項の追徴金に関する制限は、省令で定める。
(相殺できない場合)
第四十條 組合員は、組合に支払うべき保険料及び追徴金につき、相殺をもつて組合に対抗することができない。
(保険金額の削減)
第四十一條 組合は、保険金額の支払に不足を生ずるときは、定款の定めるところにより、保険金額を削減することができる。
2 組合が前項の規定によつて保険金額を削減する場合であつても、そのてん補する額は、政府から支払を受けた再保険金額を下つてはならない。
(損害防止軽減の義務)
第四十二條 組合員は、保険の目的たる漁船につき、損害の防止及び軽減に努めなければならない。このために必要又は有益であつた費用は、省令の定めるところにより、組合がてん補する。
(組合員の通知義務)
第四十三條 組合員は、保険の目的たる漁船につき、組合のてん補すべき損害が発生したときは、定款の定めるところにより、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。
第四十四條 組合員は、定款の定めるところにより、保険の目的たる漁船の構造、設備、漁業の種類等につき、重大な変更を加えようとするときは、あらかじめ組合に通知しなければならない。
2 保険の目的たる漁船の危険が、その構造、設備、漁業の種類等の重大な変更により著しく増加する場合においては、組合は、組合員に対して、その変更を制限し、その他必要な処置をすべきことを指示することができる。
(組合の保険の目的の調査等)
第四十五條 組合は、保険の目的たる漁船に関して、調査をし、又は組合員に通常の修繕その他必要な処置をすべきことを指示することができる。
(組合の免責事由)
第四十六條 左の場合には、組合は、てん補すべき額の全部又は一部につき、てん補する責を免かれることができる。
一 保険の目的たる漁船につき、事故による損害が、法令に違反して航行又は操業した場合に生じたとき。
二 組合員が、保険の目的たる漁船につき、損害の防止又は軽減を怠つたとき。
三 組合員が、第四十三條の規定による通知を著しく遅滞したため、損害の状況の認定が困難となつたとき。
四 組合員が、第四十四條第一項の規定による通知を怠り、又は同條第二項の規定による組合の指示に従わなかつたとき。
五 組合員が、前條の規定による調査を拒み、又は指示に従わなかつたとき。
第四十七條 組合は、組合員の故意又は重大な過失によつて生じた損害及び船長その他漁船を指揮する者の故意によつて生じた損害をてん補する責を負わない。
第四十八條 組合は、保険の目的たる漁船が法令に違反して使用されたために法令に基いてなされた処分によつて生じた損害をてん補する責を負わない。
第四十九條 組合は、特殊保険の引受をした場合であつても、捕獲、拿捕又は抑留によつて生じた損害は、特約がなければ、てん補する責を負わない。
(委付の原因)
第五十條 左の場合には、組合員は、保険の目的たる漁船を組合を委付して保険金額の全部を請求することができる。
一 漁船が沈没したとき。
二 漁船の行方が知れなくなつたとき。
三 漁船が修繕することができなくなつたとき。
四 漁船が捕獲、拿捕又は抑留され、三十日間解放されなかつたとき。
2 前項第三号の規定に該当する場合については、省令で定める。
(責任準備金の積立)
第五十一條 組合は、毎事業年度の終において存する漁船保険につき、省令の定めるところにより、責任準備金を積み立てなければならない。
(準備金の積立)
第五十二條 組合は、不足金の補てんに備えるため、省令の定めるところにより、毎事業年度の剰余金の中から準備金を積み立てなければならない。
(剰余金の分配)
第五十三條 組合は、定款の定めるところにより、組合員が払い込んだ保険料の額に比例して、剰余金の分配をすることができる。
(商法の準用)
第五十四條 組合の漁船保険については、商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百三十一條から第六百三十九條まで、第六百四十二條から第六百四十六條まで、第六百五十九條、第六百六十一條から第六百六十三條まで(損害保険の総則)、第八百三十四條第一項、第八百三十六條第一項及び第二項並びに第八百三十七條から第八百四十一條まで(保険委付)の規定を準用する。この場合において、第六百六十三條中「保険料支払ノ義務」とあるのは「保険料支払ノ義務及ヒ追徴金支払ノ義務」と、第八百三十四條第一項中「六ヶ月間」及び第八百三十六條第一項中「三ケ月」とあるのは「省令ヲ以テ定ムル期間」と、第八百三十六條第二項中「第八百三十三條第一号、第三号及ヒ第四号」とあるのは「漁船損害補償法第五十條第一項第一号及ヒ第三号」と読み替えるものとする。
第五節 管理
(役員の定数及び選任)
第五十五條 組合に、役員として理事及び監事を置く。
2 理事の定数は、五人以上とし、監事の定数は、二人以上とする。
3 役員は、定款の定めるところにより、総会において選任する。但し、設立当時の役員は、創立総会において選任する。
4 組合の理事の定数の少くとも五分の三は、組合員でなければならない。但し、設立当時の理事の定数の少くとも五分の三は、設立の同意を申し出た者でなければならない。
(役員の任期)
第五十六條 役員の任期は、一年とする。但し、定款で二年以内において別段の任期を定めたときは、その期間とする。
2 設立当時の役員の任期は、前項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。但し、その期間は、一年をこえてはならない。
(役員の兼職禁止)
第五十七條 理事は、監事又は組合の職員と、監事は、理事又は組合の職員と兼ねてはならない。
(理事の自己契約等の禁止)
第五十八條 組合が理事と契約するときは、監事が、組合を代表する。組合と理事との訴訟についても、同様とする。
(総会の招集)
第五十九條 理事は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
2 理事は、必要があると認めるときは、何時でも臨時総会を招集することができる。
第六十條 組合員が、総組合員の五分の一以上の同意を得て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して総会の招集を請求したときは、理事は、その請求のあつた日から二十日以内に、臨時総会を招集しなければならない。
第六十一條 理事の職務を行う者がないとき、又は前條の請求があつた場合において理事が正当な事由がないのに総会の招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。
(組合員に対する通知又は催告)
第六十二條 組合が組合員に対してする通知又は催告は、組合員名簿に記載したその者の住所(その者が別に通知又は催告を受ける場所を組合に通知したときはその場所)にあてればよい。
2 前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に到達したものとみなす。
3 総会の招集の通知は、その会日の十日前までに、その会議の目的たる事項を示してしなければならない。
(定款その他の書類の備付及び閲覧)
第六十三條 理事は、定款及び総会の議事録を各事務所に備えて置き、且つ、省令の定めるところにより、組合員名簿を主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 組合員及び組合の債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。
(決算関係書類の提出、備付及び閲覧)
第六十四條 理事は、通常総会の会日の七日前までに、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案を監事に提出し、且つ、これらを主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 組合員及び組合の債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。
3 第一項に掲げる書類を通常総会に提出するときは、監事の意見書を添附しなければならない。
(役員の解職の請求)
第六十五條 組合員は、総組合員の五分の一以上の連署をもつて、その代表者から役員の解職を請求することができる。
2 前項の規定による解職の請求は、理事の全員又は監事の全員について、同時にしなければならない。但し、法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款の違反を理由として解職を請求する場合は、この限りでない。
3 第一項の規定による解職の請求は、解職の理由を記載した書面を組合に提出しなければならない。
4 第一項の規定による解職の請求があつたときは、理事は、これを総会の議に附さなければならない。この場合には、第六十條及び第六十一條の規定を準用する。
5 第三項の規定による書面の提出があつたときは、組合は、総会の会日の七日前までに、当該請求に係る役員にその書面又はその写を送付し、且つ、総会において弁明する機会を与えなければならない。
(役員に関する民法の準用)
第六十六條 理事については、民法第四十四條第一項(法人の損害賠償)、第五十二條第二項(理事の業務執行)及び第五十三條から第五十六條まで(理事の代表権等)の規定を、監事については、第五十九條(監事の職務)の規定を準用する。この場合において、民法第五十六條中「裁判所」とあるのは「農林大臣」と読み替えるものとする。
(総会の議決事項)
第六十七條 左の事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案
(総会の議事)
第六十八條 総会の議事は、この法律又は定款に特別の定がある場合を除いて、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 議長は、総会において選任する。
3 議長は、組合員として総会の議決に加わることができない。
(定款の変更)
第六十九條 定款変更の議決は、総組合員の過半数が出席し、その議決権の三分の二以上の多数によらなければならない。
2 定款の変更は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 前項の認可については、第十八條の規定を準用する。
4 農林大臣は、特殊保険の保険料率についての定款の変更を命ずることができる。
5 前項の規定による定款変更の命令があつた場合には、第六十七條及び第一項から第三項までの規定にかかわらず、その命令により、定款変更の効力を生ずるものとする。
(総会に関する民法の準用)
第七十條 総会については、民法第六十四條(総会の決議事項)及び第六十六條(表決権のない場合)の規定を準用する。この場合において、同法第六十四條中「第六十二條」とあるのは、「漁船損害補償法第六十二條第三項」と読み替えるものとする。
(総代会)
第七十一條 組合は、定款の定めるところにより、総会に代るべき総代会を設けることができる。
2 総代は、組合員でなければならない。
3 総代の定数は、十五人以上でなければならない。
4 総代は、定款の定めるところにより選挙する。但し、設立当時の総代は、創立総会において選挙する。
5 総代の選挙は、無記名投票によつて行う。
6 投票は、一人につき一票とする。
7 組合が第四項の規定により定款で総代の選挙についての選挙区及び当該選挙区において選挙すべき総代の数等を定めたときは、総代選挙のために組合が組合員に対してする通知は、第六十二條第一項の規定にかかわらず、当該組合の区域に包括される市町村の事務所の掲示場に、選挙の期日、選挙の方法その他選挙につき必要な事項を記載した書面を掲示すればよい。
8 前項の掲示は、選挙の期日の少くとも十日前までにしなければならない。
9 総代については、第五十六條及び第六十五條の規定を準用する。
10 総代会については、総会に関する規定を準用する。但し、総代会においては、解散又は合併の議決をすることができない。
(参事及び会計主任)
第七十二條 組合は、参事及び会計主任を選任し、その主たる事務所又は従たる事務所において、その業務を行わせることができる。
2 参事及び会計主任の選任及び解職は、理事の過半数によつて決する。
3 参事については、商法第三十八條第一項及び第三項(支配人の代理権)、第三十九條(共同支配人)、第四十一條(支配人の義務)並びに第四十二條(表見支配人)の規定を準用する。
第七十三條 組合員又は総代は、総組合員又は総総代の五分の一以上の同意を得て、理事に対し、参事又は会計主任の解職を請求することができる。
2 前項の規定による請求は、解職の理由を記載した書面を理事に提出してしなければならない。
3 第一項の規定による請求があつたときは、理事は、当該参事又は会計主任の解職の可否を決しなければならない。
4 理事は、前項の可否を決する日の七日前までに、当該参事又は会計主任に対して第二項の書面又はその写を送付し、且つ、弁明する機会を与えなければならない。
(退職手当)
第七十四條 組合は、その常勤する有給の役員又は職員の退職手当について、定款で必要な定をしなければならない。
第六節 解散及び清算
(解散事由)
第七十五條 組合は、左の事由によつて解散する。
一 定款に定める存立の期間の満了又は解散事由の発生
二 総会の決議
三 組合の合併
四 破産
五 第百十一條第二項の規定による解散の命令
2 解散の決議については、第六十九條第一項の規定を準用する。
3 解散の決議は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
4 組合は、第一項の事由による外、組合員が、地域組合にあつては十五人未満、業態組合にあつては五人未満になつたことによつて解散する。
5 組合は、前項の規定により解散したときは、遅滞なくその旨を農林大臣に届け出なければならない。
(解散の効果)
第七十六條 組合が解散したときは、合併の場合を除いては、保険関係は、終了する。
2 前項の場合には、組合は、まだ経過しない期間に対する保険料を払い戻さなければならない。
(合併の手続)
第七十七條 組合が合併しようとするときは、総会において合併を議決しなければならない。この場合には、第六十九條第一項の規定を準用する。
2 合併は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 前項の場合には、第十八條の規定を準用する。
(財産目録及び貸借対照表の作成)
第七十八條 組合が合併の議決をしたときは、その議決の日から二週間以内に財産目録及び貸借対照表を作らなければならない。
(債権者の異議)
第七十九條 組合は、前條の期間内に債権者に対して、異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
2 前項の一定の期間は、一箇月を下つてはならない。
3 債権者が第一項の一定の期間内に異議を述べなかつたときは、合併を承認したものとみなす。
4 債権者が異議を述べたときは、組合は、弁済をし、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社若しくは信託業務を営む銀行に相当の財産を信託しなければならない。
(新設合併の手続)
第八十條 合併によつて組合を設立するには、各組合の総会において組合員の中から選任した設立委員が共同して、定款を作成し、役員を選任し、その他設立に必要な行為をしなければならない。
2 前項の規定による役員の選任は、合併をしようとする組合の組合員の中からしなければならない。但し、特別の事由があるときは、組合員以外の者から選任することができる。この場合には、第五十五條第四項本文の規定を準用する。
3 第一項の規定による設立委員の選任については、第六十九條第一項の規定を準用する。
(合併の時期)
第八十一條 組合の合併は、合併後存続する組合又は合併によつて設立する組合が、その主たる事務所の所在地において、第九十四條に規定する登記をすることによつてその効力を生ずる。
(合併による権利義務の承継)
第八十二條 合併後存続する組合又は合併によつて設立した組合は、合併によつて消滅した組合の権利義務(当該組合がその行う事業に関し、行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。
(清算人)
第八十三條 組合が解散したときは、合併及び破産による解散の場合を除いては、理事が、その清算人となる。但し、総会において他人を選任したときは、この限りでない。
(清算事務)
第八十四條 清算人は、就職の後遅滞なく、組合の財産の状況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作り、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
第八十五條 清算人は、組合の債務を弁済した後でなければ、組合の財産を分配することができない。
第八十六條 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(民法及び非訟事件手続法の準用)
第八十七條 組合の解散及び清算については、民法第七十三條(清算法人)、第七十五條(裁判所による清算人の選任)、第七十六條(清算人の解任)及び第七十八條から第八十三條まで(清算人の職務権限等)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五條第二項(法人の解散及び清算の監督の管轄)、第三十六條(検査人の選任)、第三十七條ノ二(準用規定)、第百三十五條ノ二十五第二項及び第三項(意見の聴取等)、第百三十六條(管轄裁判所)、第百三十七條(精算人の選任又は解任の裁判)及び第百三十八條(清算人不適格者)の規定を準用する。この場合において、民法第七十五條中「前條」とあるのは「漁船損害補償法第八十三條」と読み替えるものとする。
第七節 登記
(設立の登記)
第八十八條 組合は、設立の認可があつた日から二週間以内に、主たる事務所の所在地において、設立の登記をしなければならない。
2 設立の登記には、左の事項を掲げなければならない。
一 第二十一條第一項第一号から第三号まで、第五号、第十二号及び第十三号に掲げる事項
二 事務所
三 役員の氏名及び住所
3 組合は、設立の登記をした後二週間以内に、従たる事務所の所在地において、前項の事項を登記しなければならない。
(従たる事務所新設の登記)
第八十九條 組合の成立後従たる事務所を設けたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に従たる事務所を設けたことを登記し、その従たる事務所の所在地においては三週間以内に前條第二項の事項を登記し、他の従たる事務所の所在地においては同期間内にその従たる事務所を設けたことを登記しなければならない。
2 主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内において、新たに従たる事務所を設けたときは、その従たる事務所を設けたことを登記すればよい。
(事務所移転の登記)
第九十條 組合が主たる事務所を移転したときは、旧所在地においては二週間以内に移転の登記をし、新所在地においては三週間以内に第八十八條第二項の事項を登記し、従たる事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第八十八條第二項の事項を登記しなければならない。
2 同一の登記所の管轄区域内において主たる事務所又は従たる事務所を移転したときは、その移転の登記をすればよい。
(設立登記事項の変更の登記)
第九十一條 第八十八條第二項の事項中に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に変更の登記をしなければならない。
(参事の登記)
第九十二條 組合が参事を選任したときは、二週間以内に、これを置いた事務所の所在地において、参事の氏名及び住所、参事を置いた事務所並びに数人の参事が共同して代理権を行うべきことを定めたときはその旨を登記しなければならない。その登記した事項の変更及び参事の代理権の消滅についても、同様である。
(解散の登記)
第九十三條 組合が解散したときは、合併及び破産の場合を除いては、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に解散の登記をしなければならない。
(合併の登記)
第九十四條 組合が合併したときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、合併後存続する組合については変更の登記、合併によつて消滅する組合については解散の登記、合併によつて設立した組合については第八十八條第二項に規定する登記をしなければならない。
(清算人の登記)
第九十五條 清算人は、その就職の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算人の氏名及び住所を登記しなければならない。
2 前項の規定により登記した事項の変更の登記については、第九十一條の規定を準用する。
(清算結了の登記)
第九十六條 組合の清算が結了したときは、清算結了の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算結了の登記をしなければならない。
(管轄登記所及び登記簿)
第九十七條 組合の登記については、その事務所の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所が、管轄登記所としてこれをつかさどる。
2 登記所に、漁船保険組合登記簿を備える。
(設立の登記の申請)
第九十八條 組合の設立の登記は、役員全員の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、定款及び役員たることを証する書面を添附しなければならない。
3 合併による組合の設立の登記の申請書には、前項に掲げる書面の外、第七十九條第一項の規定による公告及び催告をしたこと、並びに異議を述べた債権者があるときは、これに対して弁済し、若しくは担保を供し、又は財産を信託したことを証する書面を添附しなければならない。
第九十九條 第八十八條第三項の規定による登記は、理事の申請によつてする。
(事務所新設、移転及び設立の登記事項変更の登記の申請)
第百條 組合の事務所の新設又は事務所の移転その他第八十八條第二項の事項の変更の登記は、理事又は清算人の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、事務所の新設又は登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。
3 組合の合併による変更の登記の申請については、第九十八條第一項及び第三項の規定を準用する。
(参事の登記の申請)
第百一條 参事の選任、第九十二條の規定により登記した事項の変更及び参事の代理権の消滅の登記は、理事の申請によつてする。
2 前項の登記のうち、参事の選任の登記の申請書には、参事の選任を証する書面及び数人の参事が共同して代理権を行うべきことを定めたときはその旨を証する書面を、その他の登記の申請書には、その事項を証する書面を添附しなければならない。
(解散の登記の申請)
第百二條 第九十三條の規定による組合の解散の登記は、第三項に規定する場合を除いて清算人の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、解散の事由を証する書面を添附しなければならない。
3 農林大臣が組合の解散を命じた場合における解散の登記は、その嘱託によつてする。
第百三條 第九十四條の規定による解散の登記は、合併によつて消滅した組合の理事の申請によつてする。
2 前項の場合には、第九十八條第三項及び前條第二項の規定を準用する。
(清算人の登記の申請)
第百四條 第九十五條第一項の規定による登記の申請書には、理事が清算人でない場合には、申請人の資格を証する書面を添附しなければならない。
2 第九十五條第二項の規定による登記は、清算人の申請によつてする。
3 前項の登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。
(清算結了の登記の申請)
第百五條 組合の清算結了の登記は、清算人の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、清算人が第八十六條の規定により決算報告書の承認を得たことを証する書面を添附しなければならない。
(登記の期間の計算)
第百六條 登記すべき事項で農林大臣の認可を要するものは、その認可書が到達した時から登記の期間を起算する。
(登記事項の公告)
第百七條 登記した事項は、登記所において、遅滞なく公告しなければならない。
(非訟事件手続法の準用)
第百八條 組合の登記については、非訟事件手続法第百三十九條ノ二、第百四十一條から第百五十一條ノ六まで及び第百五十四條から第百五十七條まで(商業登記の通則)の規定を準用する。
第八節 監督
(業務又は財産状況の報告の徴取)
第百九條 農林大臣は、組合の業務又は財産の状況に関して監督上必要があると認めるときは、組合からその業務又は財産の状況に関し報告を徴することができる。
(業務又は会計状況の検査)
第百十條 組合員又は総代が、総組合員又は総総代の十分の一以上の同意を得て、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反する疑があることを理由として検査を請求したときは、農林大臣は、その組合の業務又は会計の状況を検査しなければならない。
2 農林大臣は、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分若しくは定款に違反する疑があると認めるとき、又はその業務若しくは財産の状況により監督上必要があると認めるときは、何時でも、その組合の業務又は会計の状況を検査することができる。
(法令等の違反に対する措置)
第百十一條 農林大臣は、第百九條の規定により報告を徴した場合又は前條の規定により検査を行つた場合において、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分若しくは定款に違反すると認めるときは、その組合に対して、役員の解職、事業の停止、定款の変更その他必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
2 組合が前項の規定による命令に違反したときは、農林大臣は、その組合の解散を命ずることができる。
(議決、選挙又は当選の取消)
第百十二條 組合員又は総代が、総組合員又は総総代の十分の一以上の同意を得て、総会又は総代会の招集手続、議決の方法又は選挙が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反することを理由として、その議決又は選挙若しくは当選決定の日から一箇月以内に、その議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、農林大臣はその違反の事実があると認めるときは、当該議決又は選挙若しくは当選を取り消すことができる。
(権限の委任)
第百十三條 この章中に規定する農林大臣の権限は、政令の定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。
第三章 政府の再保険事業
(再保険者)
第百十四條 政府は、組合が漁船保険事業によつてその組合員に対して負う保険責任を再保険するものとする。
(再保険関係の成立)
第百十五條 組合とその組合員との間に保険関係が成立したときは、これによつて政府と当該組合との間に再保険関係が成立するものとする。
(再保険金額)
第百十六條 再保険金額は、保険金額の百分の九十とする。
(再保険料率)
第百十七條 再保険料率は、組合が農林大臣の認可を受けて定めた純保険料率と同率とする。
(危険の消滅)
第百十八條 政府は、組合が第三十八條の規定により保険料の払戻をしたときは、政令の定めるところにより、再保険料の一部を払い戻すことができる。
(保険引受の通知)
第百十九條 組合は、その組合員との間に保険関係が成立したときは、省令の定めるところにより、当該保険関係に関する事項を農林大臣に通知しなければならない。通知した事項に変更を生じたときも、同様とする。
(保険事故発生の通知)
第百二十條 組合は、保険事故が発生したと認めるときは、省令の定めるところにより、遅滞なくその旨を農林大臣に通知しなければならない。
(再保険の免責)
第百二十一條 左の場合には、政府は、省令の定めるところにより、再保険金額の全部又は一部につき、その支払の責を免かれることができる。
一 組合が法令又は定款に違反しててん補したとき。
二 組合がてん補額を不当に認定しててん補したとき。
三 組合が不正の目的をもつて前二條の規定による通知を怠り、又は虚偽の通知をしたとき。
(委付等による政府の取得権利)
第百二十二條 組合は、省令の定めるところにより、委付によつて取得した一切の権利の行使又は処分に関する事項を定めて農林大臣の承認を受けなければならない。
2 農林大臣が、前項の承認をしたときは、政府は、組合に対して再保険金額を支払うものとする。
3 前項の規定により再保険金額の支払を受けた組合は、委付によつて取得した一切の権利を行使し又は処分して得た金額から、その行使又は処分に要した費用を控除した残額のうち再保険金額の保険金額に対する割合によつて算出した金額を、遅滞なく政府に還付しなければならない。
4 前三項の規定は、第五十四條の規定で準用する商法第六百六十一條及び第六百六十二條(保険代位)の規定によつて、組合が権利を取得した場合に準用する。
(政府を相手方とする訴の提起)
第百二十三條 組合が、再保険に関する事項につき、政府を相手方とする訴を提起するには、漁船再保険審査会の審査を経なければならない。
2 前項の審査の請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。
(準用規定)
第百二十四條 政府の再保険については、商法第六百三十六條、第六百三十七條、第六百四十三條、第六百四十六條及び第六百六十三條(損害保険の総則)の規定を準用する。
(審査会の設置及び権限)
第百二十五條 農林省に漁船再保険審査会(以下「審査会」という。)を置く。
2 審査会は、第百二十三條の規定により、その権限に属させた事項を処理する。
(審査会の組織及び運営)
第百二十六條 審査会は、農林大臣の任命する左の委員をもつて組織する。
一 農林省の職員 三人
二 組合の役員 三人
三 学識経験者 三人
2 審査会に会長を置き、委員の互選した者をもつて充てる。
3 会長は、会務を処理し、審査会を代表する。
4 会長に事故があるときは、会長が、あらかじめ委員のうちから指定した者が、その職務を代行する。
5 委員は、非常勤とする。
6 前各項に規定するものを除く外、審査会の委員、議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 漁船保険中央会
(設立の目的)
第百二十七條 組合は、漁船保険事業の健全な発達を図るため漁船保険中央会を設立することができる。
(中央会の数)
第百二十八條 漁船保険中央会(以下「中央会」という。)は、全国を通じて一箇とする。
(設立)
第百二十九條 中央会を設立するには、五以上の組合が発起人とならなければならない。
(定款に記載すべき事項)
第百三十條 中央会の定款には、第二十一條第一項第一号から第五号まで及び第九号から第十三号までの事項並びに経費の賦課に関する事項を記載しなければならない。
(会員たる資格)
第百三十一條 中央会の会員たる資格を有する者は、組合とする。
2 会員たる資格を有する者が中央会に加入をしようとするときは、中央会は、正当な事由がないのにその加入を拒み、又はその加入につき現在の組合員が加入の際に附されたよりも困難な條件を附してはならない。
(事業)
第百三十二條 中央会は、定款の定めるところにより、左の事業を行うものとする。
一 保険料率の算出
二 損害の発生の予防及び防止に関する事項の調査及び指導
三 会員たる組合の委託によつてする保険引受のための漁船の調査及び保険の目的たる漁船についての損害の調査
四 漁船保険の普及宣伝
五 会員たる組合の職員の指導及び福利厚生
六 その他漁船保険事業の健全な発達を図るための調査及び指導
七 前各号の事業に附帯する事業
(保険料率)
第百三十三條 中央会は、定款の定めるところにより、会員たる組合に対して保険料率の計算につき必要な資料の提出を求めることができる。
2 中央会が算出する保険料率は、組合の保険事業の健全な発達を図るための合理的且つ妥当なものでなければならず、又不当に差別的なものであつてはならず、且つ、会員たる組合を拘束するものであつてはならない。
3 会員たる組合は、その保険料率についての定款の変更につき農林大臣の認可を受けようとする場合においては、単独に、直接に、且つ、自己のためにこれをしなければならない。
4 中央会は、保険料率を算出したときは、その主たる事務所に、算出した保険料率表及びその表の算出の基礎となつた資料を備えて置かなければならない。
5 会員たる組合は、中央会に対して前項の表及び資料の閲覧を求め、又はその表の写の交付を求めることができる。
(建議等)
第百三十四條 中央会は、漁船損害補償に関する重要事項につき、農林大臣の諮問に応じて答申する。
2 中央会は、漁船損害補償に関する重要事項について、関係行政庁に建議することができる。
(経費の賦課)
第百三十五條 中央会は、定款の定めるところにより、会員に経費を賦課することができる。
(役員の定数及び選挙)
第百三十六條 中央会に、役員として理事及び監事を置く。
2 理事の定数は、十人以上とし、監事の定数は、二人以上とする。
3 役員は、定款の定めるところにより、総会において選挙する。但し、設立当時の役員は、創立総会において選挙する。
4 役員の選挙は、無記名投票によつて行う。
5 投票は、一人につき一票とする。
6 中央会の理事の定数の少くとも五分の三は、会員たる組合の役員又は参事でなければならない。但し、設立当時の理事の定数の少くとも五分の三は、設立の同意を申し出た組合の役員又は参事でなければならない。
(総会の議決事項)
第百三十七條 左の事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 毎事業年度の事業計画の設定又は変更
三 経費の賦課及び徴収の方法
四 毎事業年度内における借入金の最高限度
五 事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支決算書
(準用規定)
第百三十八條 中央会の人格等に関する事項については、第五條、第六條及び第八條から第十二條までの規定を準用する。
2 中央会の設立に関する事項については、第十四條から第二十條まで、第二十一條第二項及び第二十九條第一項の規定を準用する。この場合において、第十五條第二項中「地域組合にあつては十五人以上、業態組合にあつては五人以上」とあるのは「五組合以上」と、第十六條第六項、第二十九條第一項及び第十六條第七項の規定で準用する第二十九條第二項中「議決権」とあるのは「議決権又は選挙権」と読み替えるものとする。
3 中央会の会員に関する事項については、第二十四條第一項及び第二項第三号から第五号まで、第二十六條、第二十七條第二項、第二十八條及び第二十九條の規定を準用する。この場合において、第二十四條第二項第三号中「死亡又は解散」とあるのは「解散」と、第二十七條第二項中「追徴金又は保険金額の削減」とあるのは「賦課金」と読み替えるものとする。
4 中央会の管理に関する事項については、第五十六條から第六十六條まで、第六十八條、第六十九條第一項から第三項まで、第七十條及び第七十四條の規定を準用する。この場合において、第六十四條第一項中「損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案」とあるのは「収支決算書」と読み替えるものとする。
5 中央会の解散及び清算に関する事項については、第七十五條第一項第一号、第二号、第四号及び第五号、同條第二項から第五項まで並びに第八十三條から第八十七條までの規定を準用する。この場合において、第七十五條第四項中「組合員が、地域組合にあつては十五人未満、業態組合にあつては五人未満」とあるのは「会員が十五組合未満」と、第八十三條中「合併及び破産」とあるのは「破産」と読み替えるものとする。
6 中央会の登記に関する事項については、第八十八條から第九十一條まで、第九十三條、第九十五條から第九十七條まで、第九十八條第一項及び第二項、第九十九條、第百條第一項及び第二項、第百二條並びに第百四條から第百八條までの規定を準用する。この場合において、第九十三條中「合併及び破産」とあるのは「破産」と、第九十七條第二項中「漁船保険組合登記簿」とあるのは「漁船保険中央会登記簿」と読み替えるものとする。
7 中央会の監督に関する事項については、第百九條から第百十二條までの規定を準用する。
第五章 保険料の負担及び補助金の交付
(保険料の負担)
第百三十九條 国庫は、第三十二條第一項の規定により保険に付した漁船及び政令で定める漁船についての同條第六項の政令で定める金額に相当する保険金額に対する純保険料の百分の五十を負担する。
2 前項の規定による負担金に相当する金額は、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から漁船再保険特別会計に繰り入れる。
第百四十條 前條第一項の規定による負担金は、組合員が組合に支払うべき保険料の一部に充てるため、当該組合に交付する。
2 前項の規定によつて組合に交付すべき交付金は、組合に交付するのに代えて、当該組合が政府に支払うべき再保険料の一部に充てて、漁船再保険特別会計の再保険料収入に計上することができる。
(漁業協同組合事務費交付金の補助)
第百四十一條 政府は、予算の範囲内において政令の定めるところにより、組合が第三十二條第七項の規定により漁業協同組合に対し交付する事務費交付金の一部を補助することができる。
2 前項の規定による補助金に相当する金額は、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から漁船再保険特別会計に繰り入れる。
(組合事務費補助金)
第百四十二條 政府は、予算の範囲内において政令の定めるところにより、毎会計年度組合の事務費の一部を補助することができる。
(再保険事業に関する事務費の繰入)
第百四十三條 政府は、再保険事業の業務の執行に要する経費に相当する金額を、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から漁船再保険特別会計に繰り入れるものとする。
第六章 罰則
第百四十四條 第百九條(第百三十八條第七項において準用する場合及び第百十三條の規定により委任した場合を含む。)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は第百十條(第百三十八條第七項の規定において準用する場合及び第百十三條の規定により委任した場合を含む。)の規定により検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二千円以下の罰金に処する。
2 組合又は中央会の代表者又は代理人、職員その他の従業者がその組合又は中央会の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その組合又は中央会に対しても同項の刑を科する。但し、組合又は中央会の役員がその違反行為を防止するため相当の注意を怠らなかつたことの証明があつたときは、この限りでない。
第百四十五條 左の場合には、組合又は中央会の役員又は清算人を一万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により農林大臣の認可を受けなければならない場合にその認可を受けなかつたとき。
二 この法律による登記を怠り、又は虚偽の登記をしたとき。
三 組合又は中央会がその目的でない事業をしたとき。
四 第二十六條第二項(第百三十八條第三項において準用する場合を含む。)又は第六十五條第五項(第七十一條第九項及び第百三十八條第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
五 第五十一條及び第五十二條の規定に違反したとき。
六 法令又は定款に違反して剰余金を処分し、又は保険金額を削減したとき。
七 第五十七條(第百三十八條第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
八 第五十九條第一項、第六十條又は第六十一條の規定に違反したとき。
九 第六十三條第一項又は第六十四條第一項(これらの規定を第百三十八條第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して書類を備えて置かず、その書類に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は正当な理由がないのに第六十三條第二項若しくは第六十四條第二項(これらの規定を第百三十八條第四項において準用する場合を含む。)の規定による閲覧を拒んだとき。
十 第七十八條又は第七十九條第一項若しくは第四項の規定に違反して組合の合併をしたとき。
十一 第八十四條又は第八十六條(これらの規定を第百三十八條第五項において準用する場合を含む。)に掲げる書類に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
十二 第八十五條(第百三十八條第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して財産を分配したとき。
十三 第八十七條(第百三十八條第五項において準用する場合を含む。以下本條において同じ。)において準用する民法第七十九條第一項の期間内に債権者に弁済をしたとき。
十四 第八十七條において準用する民法第七十九條第一項又は同法第八十一條第一項の規定に違反してその公告を怠り、又は虚偽の公告をしたとき。
十五 第八十七條において準用する民法第八十一條第一項の規定に違反して破産宣告の請求を怠つたとき。
第百四十六條 第八條第二項(第百三十八條第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、千円以下の過料に処する。
附 則
この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 広川弘禅
内閣総理大臣 吉田茂
漁船損害補償法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二十八号
漁船損害補償法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
漁船保険組合
第一節
通則(第四条―第十二条)
第二節
設立(第十三条―第二十一条)
第三節
組合員(第二十二条―第二十九条)
第四節
漁船保険事業(第三十条―第五十四条)
第五節
管理(第五十五条―第七十四条)
第六節
解散及び清算(第七十五条―第八十七条)
第七節
登記(第八十八条―第百八条)
第八節
監督(第百九条―第百十三条)
第三章
政府の再保険事業(第百十四条―第百二十六条)
第四章
漁船保険中央会(第百二十七条―第百三十八条)
第五章
保険料の負担及び補助金の交付(第百三十九条―第百四十三条)
第六章
罰則(第百四十四条―第百四十六条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、漁船につき、不慮の事故によつて生じた損害を補償して、その復旧を容易にし、もつて、漁業経営の安定に資することを目的とする。
(漁船損害補償)
第二条 漁船損害補償は、漁船保険組合が行う漁船保険事業及び政府が行う再保険事業により行う。
(定義)
第三条 この法律において「漁船保険」とは、保険の目的たる漁船(漁船法(昭和二十五年法律第百七十八号)第二条第一項(漁船の定義)に規定する漁船をいう。)につき、滅失、沈没、損傷その他の事故によつて生じた損害をてん補する相互保険をいう。
2 漁船保険は、特殊保険及び普通保険とし、「特殊保険」とは、戦争、変乱その他政令で定めるこれに準ずるものによる事故(以下「特殊保険事故」という。)を保険事故とする保険をいい、「普通保険」とは、特殊保険事故以外の事故(以下「普通保険事故」という。)を保険事故とする保険をいう。
第二章 漁船保険組合
第一節 通則
(目的)
第四条 漁船保険組合(以下「組合」という。)は、組合員の所有する漁船につき、漁船保険事業を行うことを目的とする。
(組合の人格)
第五条 組合は、法人とする。
(組合の住所)
第六条 組合の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。
(組合の種類及び区域)
第七条 組合は、地域組合及び業態組合とする。
2 地域組合の区域は、都道府県の区域とする。但し、北海道及び兵庫県の区域において設立されるものについては、省令で特別の定をすることができる。
3 業態組合とは、政令で定める特定の漁業に従事する特定の漁船のみを保険の目的とする組合をいう。
(組合の名称)
第八条 組合の名称中には、「漁船保険組合」という文字を用いなければならない。
2 組合でないものは、その名称中に、「漁船保険組合」という文字を用いてはならない。
(登記)
第九条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(組合の事業年度)
第十条 組合の事業年度は、四月一日から翌年三月三十一日までとする。
(非課税)
第十一条 組合がこの法律に基いてする登記については、登録税を課さない。
第十二条 この法律による漁船損害補償に関する書類には、印紙税を課さない。
第二節 設立
(発起人)
第十三条 組合を設立するには、組合員たる資格を有する者のうち、地域組合にあつては十五人以上、業態組合にあつては五人以上が発起人とならなければならない。
(設立準備会)
第十四条 発起人は、あらかじめ組合の区域及び組合員たる資格に関する目論見書を作り、一定の期間前までにこれを会議の日時及び場所とともに公告して、設立準備会を開かなければならない。
2 前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。
第十五条 設立準備会においては、出席した前条第一項の目論見書に定める組合員たる資格を有する者の中から定款の作成に当るべき者(以下「定款作成委員」という。)を選任し、且つ、区域、組合員たる資格その他定款作成の基本となるべき事項を定めなければならない。
2 定款作成委員は、地域組合にあつては十五人以上、業態組合にあつては五人以上でなければならない。
3 設立準備会の議事は、出席した前条第一項の目論見書に定める組合員たる資格を有する者の過半数の同意をもつて決する。
(創立総会)
第十六条 定款作成委員が定款を作成したときは、発起人は、一定の期間前までにこれを創立総会の日時及び場所とともに公告して、創立総会を開かなければならない。
2 前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。
3 定款作成委員が作成した定款の承認、事業計画の設定その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。
4 創立総会においては、前項の定款を修正することができる。但し、区域及び組合員たる資格に関する規定については、この限りでない。
5 創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者でその会日までに発起人に対して設立の同意を申し出た者の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
6 前項の者は、書面又は代理人をもつて議決権を行うことができる。
7 創立総会については、第二十八条、第二十九条第二項及び第三項並びに民法(明治二十九年法律第八十九号)第六十六条(表決権のない場合)の規定を準用する。
(設立の認可の申請)
第十七条 発起人は、創立総会の終了後遅滞なく定款及び事業計画書を農林大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
2 発起人は、農林大臣の要求があるときは、設立に関する報告書を提出しなければならない。
(設立の認可)
第十八条 農林大臣は、前条第一項の申請があつた場合において、左の各号の一に該当せず、且つ、その事業が健全に行われ公益に反しないと認められるときには、設立の認可をしなければならない。
一 設立の手続又は定款若しくは事業計画の内容が、法令又は法令に基いてする行政庁の処分に違反するとき。
二 定款又は事業計画のうち、主要な事項につき、虚偽の記載があり、又はその記載が欠けているとき。
2 農林大臣は、前項の認可をし、又はしなかつたときは、遅滞なく発起人に対してその旨を書面で通知しなければならない。
(理事への事務の引渡)
第十九条 設立の認可があつたときは、発起人は、遅滞なくその事務を理事に引き渡さなければならない。
(成立の時期)
第二十条 組合は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて成立する。
(定款に記載すべき事項)
第二十一条 組合の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 区域
四 事務所の所在地
五 事業
六 保険の目的及び保険料率
七 準備金の積立及び管理の方法に関する規定
八 剰余金の処分及び不足金の処理に関する規定
九 組合員たる資格並びに組合員の加入及び脱退に関する規定
十 事業の執行に関する規定
十一 役員の定数、職務の分担及び選任に関する規定
十二 公告の方法
十三 存立の期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
2 農林大臣は、模範定款例を定めることができる。
第三節 組合員
(組合員たる資格)
第二十二条 組合員たる資格を有する者は、保険の目的たるべき漁船の所有者で、当該組合の区域内に、その者の住所又は当該漁船の主たる根拠地があるものとする。
(組合員たる地位)
第二十三条 設立当時の組合員は、組合の定款で定める期間内に保険料の支払をしなかつたときは、そのときに組合員たる地位を失う。
2 組合設立後に組合員になろうとする者が組合に保険料の支払をしたときは、その者は、その時(定款で別段の定をしたときはその日)から組合員となる。
(脱退)
第二十四条 組合員は、三箇月前までに予告して、組合を脱退することができる。
2 組合員は、左の事由によつて脱退する。但し、第一号の場合については、組合の定款で別段の定をすることができる。
一 保険関係の全部の消滅
二 組合員たる資格の喪失
三 死亡又は解散
四 破産
五 除名
(保険の目的の譲受人等)
第二十五条 保険の目的たる漁船の譲受人が、第三十三条第一項の規定により当該漁船につき組合員の有する保険関係に関する権利義務を承継したときは、その者は、当該漁船を譲り受けた時から組合員となる。但し、組合が、同条第二項の規定により承継を拒んだときは、その限りでない。
2 前項の規定は、第三十三条第三項の規定による保険関係に関する権利義務の承継があつた場合に準用する。
(除名)
第二十六条 除名の事由は、定款で定める。
2 除名は、総会の決議によつて行うものとする。この場合において、組合は、その総会の会日の七日前までにその組合員に対してその旨を通知し、且つ、総会において弁明する機会を与えなければならない。
3 除名については、第六十九条第一項の規定を準用する。
4 除名は、除名した組合員に対してその旨を通知しなければ、これをもつてその組合員に対抗することができない。
(脱退の効果)
第二十七条 組合員が第二十四条第一項及び同条第二項第二号から第五号までの規定により脱退したときは、第二十五条の規定に該当する場合の外は、保険関係は、消滅する。
2 組合員は、組合を脱退したときでも、脱退の日の属する事業年度の追徴金及び保険金額の削減に関しては、その義務を免かれることができない。
(議決権)
第二十八条 組合員は、各々一箇の議決権を有する。
第二十九条 組合員は、定款の定めるところにより、第六十二条第三項の規定によりあらかじめ通知のあつた事項につき、書面又は代理人をもつて議決権を行うことができる。
2 前項の規定により議決権を行う者は、出席者とみなす。
3 代理人は、代理権を証する書面を組合に提出しなければならない。
第四節 漁船保険事業
(保険の目的)
第三十条 保険の目的たるべき漁船は、総トン数千トン未満の漁船とし、業態組合にあつては政令で定める漁業に従事する漁船であつて政令で定める総トン数以上のもの、地域組合にあつては業態組合の保険の目的となつていない漁船とする。但し、地域組合にあつては、業態組合の保険の目的となつていない漁船であつても、水産業協同組合以外の法人で常時使用する従業員の数が三百人以上で、且つ、使用漁船の合計総トン数が三百トン以上のものが所有する政令で定める総トン数以上の漁船については、定款で別段の定をした場合の外は、保険の目的とすることができない。
2 漁具は、定款の定めるところにより特約がある場合に限り、その属する漁船とともに保険の目的とすることができる。
3 前項の規定により漁具を保険の目的とする場合においては、この法律の規定中「漁船」とあるのは「漁船(漁具を含む。)」と読み替えるものとする。
(保険引受の拒否の制限)
第三十一条 組合は、組合員又は組合員たる資格を有する者から、保険の申込があつたときは、これに対して正当の事由がなければ、保険の引受を拒むことができない。
(付保の義務等)
第三十二条 漁業協同組合の地区内にその住所を有し且つ政令で指定する漁船を所有する者(以下本条において「指定漁船の所有者」という。)の総員の三分の二以上の者が、政令で定める手続により指定漁船の所有者はすべてその所有する当該漁船の全部につき普通保険に付すべきことにつき同意をしたときは、指定漁船の所有者のすべての者(同意があつた後指定漁船の所有者となつた者を含む。)は、その所有する当該漁船の全部につき、普通保険に付さなければならない。
2 前項の規定による同意があつたときは、その代表者は、当該地区を区域内に含む市町村(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の市にあつては区)又は特別区(以下「市町村」という。)の長にその旨を通知するものとし、その通知を受けた市町村の長は、その旨及び前項の規定の適用を受ける地区を公示しなければならない。
3 第一項の規定による同意があつたときは、その代表者は、当該地区の漁業協同組合に対し、その同意を証する書面を添えて、当該漁業協同組合の組合員たる指定漁船の所有者が組合に支払うべき保険料を集収してその者に代り組合に払い込む事業を行うべき旨の申出をしたときは、当該漁業協同組合は、正当な事由がある場合の外は、その申出に係る事業を行わなければならない。
4 前項の規定による事業を行う漁業協同組合は、当該漁業協同組合の組合員からその所有する第一項の政令で指定する漁船以外の漁船で保険の目的たるべきものにつき普通保険に付することに関し前項と同様の申出があつたときは、正当な事由がある場合の外は、当該漁船についても、前項の事業を行わなければならない。
5 第三項の規定による事業を行う漁業協同組合は、その組合員以外の者であつてその地区内に住所を有する者の所有する漁船に係る普通保険についても、第三項の事業を行うことができる。
6 第一項の規定により漁船を普通保険に付する場合における保険金額並びに第四項及び前項の規定の適用を受くべき漁船の普通保険の保険金額は、政令で定める金額を下るものであつてはならない。
7 組合は、第三項の事業を行う漁業協同組合に対し、その事務費として、政令で定める金額を交付しなければならない。
8 第一項から第五項までの規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。
(保険の目的の譲渡)
第三十三条 保険の目的たる漁船の譲受人は、組合に通知して、保険関係に関する譲渡人の有する権利義務を承継することができる。
2 組合は、正当な事由があるときは、前項の通知を受けた後直ちにその旨を譲受人に通知して、前項の権利義務の承継を拒むことができる。
3 前二項の規定は、保険の目的たる漁船につき、相続その他の包括承継があつた場合に準用する。
(組合のてん補責任)
第三十四条 組合は、保険の目的たる漁船につき、滅失、沈没、損傷その他の事故によつて生じた損害をてん補する。
2 前項の事故及びてん補すべき損害の範囲に関して必要な事項は、省令で定める。
(保険関係の成立等)
第三十五条 保険関係は、組合が保険料を受け取つた時に成立する。
2 組合の損害をてん補する責任は、定款で別段の定をした場合の外は、保険関係が成立した日の翌日から始まる。
(保険期間)
第三十六条 保険期間は、一年とする。但し、組合は、省令の定めるところにより、定款で別段の定をすることができる。
(保険証券の交付及び記載事項)
第三十七条 組合は、組合員の請求があつたときは、保険証券を交付しなければならない。
2 保険証券に記載すべき事項は、省令で定める。
(危険の消滅)
第三十八条 組合は、保険の目的たる漁船につき、保険期間中その負担した危険が消滅したときは、定款の定めるところにより、保険料の一部を組合員に払い戻すことができる。
2 前項の規定によつて保険料の払戻をする場合及び払戻をする額の制限は、政令で定める。
(追徴金)
第三十九条 組合は、定款の定めるところにより、追徴金を支払わせることができる。
2 前項の追徴金に関する制限は、省令で定める。
(相殺できない場合)
第四十条 組合員は、組合に支払うべき保険料及び追徴金につき、相殺をもつて組合に対抗することができない。
(保険金額の削減)
第四十一条 組合は、保険金額の支払に不足を生ずるときは、定款の定めるところにより、保険金額を削減することができる。
2 組合が前項の規定によつて保険金額を削減する場合であつても、そのてん補する額は、政府から支払を受けた再保険金額を下つてはならない。
(損害防止軽減の義務)
第四十二条 組合員は、保険の目的たる漁船につき、損害の防止及び軽減に努めなければならない。このために必要又は有益であつた費用は、省令の定めるところにより、組合がてん補する。
(組合員の通知義務)
第四十三条 組合員は、保険の目的たる漁船につき、組合のてん補すべき損害が発生したときは、定款の定めるところにより、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。
第四十四条 組合員は、定款の定めるところにより、保険の目的たる漁船の構造、設備、漁業の種類等につき、重大な変更を加えようとするときは、あらかじめ組合に通知しなければならない。
2 保険の目的たる漁船の危険が、その構造、設備、漁業の種類等の重大な変更により著しく増加する場合においては、組合は、組合員に対して、その変更を制限し、その他必要な処置をすべきことを指示することができる。
(組合の保険の目的の調査等)
第四十五条 組合は、保険の目的たる漁船に関して、調査をし、又は組合員に通常の修繕その他必要な処置をすべきことを指示することができる。
(組合の免責事由)
第四十六条 左の場合には、組合は、てん補すべき額の全部又は一部につき、てん補する責を免かれることができる。
一 保険の目的たる漁船につき、事故による損害が、法令に違反して航行又は操業した場合に生じたとき。
二 組合員が、保険の目的たる漁船につき、損害の防止又は軽減を怠つたとき。
三 組合員が、第四十三条の規定による通知を著しく遅滞したため、損害の状況の認定が困難となつたとき。
四 組合員が、第四十四条第一項の規定による通知を怠り、又は同条第二項の規定による組合の指示に従わなかつたとき。
五 組合員が、前条の規定による調査を拒み、又は指示に従わなかつたとき。
第四十七条 組合は、組合員の故意又は重大な過失によつて生じた損害及び船長その他漁船を指揮する者の故意によつて生じた損害をてん補する責を負わない。
第四十八条 組合は、保険の目的たる漁船が法令に違反して使用されたために法令に基いてなされた処分によつて生じた損害をてん補する責を負わない。
第四十九条 組合は、特殊保険の引受をした場合であつても、捕獲、拿捕又は抑留によつて生じた損害は、特約がなければ、てん補する責を負わない。
(委付の原因)
第五十条 左の場合には、組合員は、保険の目的たる漁船を組合を委付して保険金額の全部を請求することができる。
一 漁船が沈没したとき。
二 漁船の行方が知れなくなつたとき。
三 漁船が修繕することができなくなつたとき。
四 漁船が捕獲、拿捕又は抑留され、三十日間解放されなかつたとき。
2 前項第三号の規定に該当する場合については、省令で定める。
(責任準備金の積立)
第五十一条 組合は、毎事業年度の終において存する漁船保険につき、省令の定めるところにより、責任準備金を積み立てなければならない。
(準備金の積立)
第五十二条 組合は、不足金の補てんに備えるため、省令の定めるところにより、毎事業年度の剰余金の中から準備金を積み立てなければならない。
(剰余金の分配)
第五十三条 組合は、定款の定めるところにより、組合員が払い込んだ保険料の額に比例して、剰余金の分配をすることができる。
(商法の準用)
第五十四条 組合の漁船保険については、商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百三十一条から第六百三十九条まで、第六百四十二条から第六百四十六条まで、第六百五十九条、第六百六十一条から第六百六十三条まで(損害保険の総則)、第八百三十四条第一項、第八百三十六条第一項及び第二項並びに第八百三十七条から第八百四十一条まで(保険委付)の規定を準用する。この場合において、第六百六十三条中「保険料支払ノ義務」とあるのは「保険料支払ノ義務及ヒ追徴金支払ノ義務」と、第八百三十四条第一項中「六ヶ月間」及び第八百三十六条第一項中「三ケ月」とあるのは「省令ヲ以テ定ムル期間」と、第八百三十六条第二項中「第八百三十三条第一号、第三号及ヒ第四号」とあるのは「漁船損害補償法第五十条第一項第一号及ヒ第三号」と読み替えるものとする。
第五節 管理
(役員の定数及び選任)
第五十五条 組合に、役員として理事及び監事を置く。
2 理事の定数は、五人以上とし、監事の定数は、二人以上とする。
3 役員は、定款の定めるところにより、総会において選任する。但し、設立当時の役員は、創立総会において選任する。
4 組合の理事の定数の少くとも五分の三は、組合員でなければならない。但し、設立当時の理事の定数の少くとも五分の三は、設立の同意を申し出た者でなければならない。
(役員の任期)
第五十六条 役員の任期は、一年とする。但し、定款で二年以内において別段の任期を定めたときは、その期間とする。
2 設立当時の役員の任期は、前項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。但し、その期間は、一年をこえてはならない。
(役員の兼職禁止)
第五十七条 理事は、監事又は組合の職員と、監事は、理事又は組合の職員と兼ねてはならない。
(理事の自己契約等の禁止)
第五十八条 組合が理事と契約するときは、監事が、組合を代表する。組合と理事との訴訟についても、同様とする。
(総会の招集)
第五十九条 理事は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
2 理事は、必要があると認めるときは、何時でも臨時総会を招集することができる。
第六十条 組合員が、総組合員の五分の一以上の同意を得て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して総会の招集を請求したときは、理事は、その請求のあつた日から二十日以内に、臨時総会を招集しなければならない。
第六十一条 理事の職務を行う者がないとき、又は前条の請求があつた場合において理事が正当な事由がないのに総会の招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。
(組合員に対する通知又は催告)
第六十二条 組合が組合員に対してする通知又は催告は、組合員名簿に記載したその者の住所(その者が別に通知又は催告を受ける場所を組合に通知したときはその場所)にあてればよい。
2 前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に到達したものとみなす。
3 総会の招集の通知は、その会日の十日前までに、その会議の目的たる事項を示してしなければならない。
(定款その他の書類の備付及び閲覧)
第六十三条 理事は、定款及び総会の議事録を各事務所に備えて置き、且つ、省令の定めるところにより、組合員名簿を主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 組合員及び組合の債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。
(決算関係書類の提出、備付及び閲覧)
第六十四条 理事は、通常総会の会日の七日前までに、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案を監事に提出し、且つ、これらを主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 組合員及び組合の債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。
3 第一項に掲げる書類を通常総会に提出するときは、監事の意見書を添附しなければならない。
(役員の解職の請求)
第六十五条 組合員は、総組合員の五分の一以上の連署をもつて、その代表者から役員の解職を請求することができる。
2 前項の規定による解職の請求は、理事の全員又は監事の全員について、同時にしなければならない。但し、法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款の違反を理由として解職を請求する場合は、この限りでない。
3 第一項の規定による解職の請求は、解職の理由を記載した書面を組合に提出しなければならない。
4 第一項の規定による解職の請求があつたときは、理事は、これを総会の議に附さなければならない。この場合には、第六十条及び第六十一条の規定を準用する。
5 第三項の規定による書面の提出があつたときは、組合は、総会の会日の七日前までに、当該請求に係る役員にその書面又はその写を送付し、且つ、総会において弁明する機会を与えなければならない。
(役員に関する民法の準用)
第六十六条 理事については、民法第四十四条第一項(法人の損害賠償)、第五十二条第二項(理事の業務執行)及び第五十三条から第五十六条まで(理事の代表権等)の規定を、監事については、第五十九条(監事の職務)の規定を準用する。この場合において、民法第五十六条中「裁判所」とあるのは「農林大臣」と読み替えるものとする。
(総会の議決事項)
第六十七条 左の事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案
(総会の議事)
第六十八条 総会の議事は、この法律又は定款に特別の定がある場合を除いて、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 議長は、総会において選任する。
3 議長は、組合員として総会の議決に加わることができない。
(定款の変更)
第六十九条 定款変更の議決は、総組合員の過半数が出席し、その議決権の三分の二以上の多数によらなければならない。
2 定款の変更は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 前項の認可については、第十八条の規定を準用する。
4 農林大臣は、特殊保険の保険料率についての定款の変更を命ずることができる。
5 前項の規定による定款変更の命令があつた場合には、第六十七条及び第一項から第三項までの規定にかかわらず、その命令により、定款変更の効力を生ずるものとする。
(総会に関する民法の準用)
第七十条 総会については、民法第六十四条(総会の決議事項)及び第六十六条(表決権のない場合)の規定を準用する。この場合において、同法第六十四条中「第六十二条」とあるのは、「漁船損害補償法第六十二条第三項」と読み替えるものとする。
(総代会)
第七十一条 組合は、定款の定めるところにより、総会に代るべき総代会を設けることができる。
2 総代は、組合員でなければならない。
3 総代の定数は、十五人以上でなければならない。
4 総代は、定款の定めるところにより選挙する。但し、設立当時の総代は、創立総会において選挙する。
5 総代の選挙は、無記名投票によつて行う。
6 投票は、一人につき一票とする。
7 組合が第四項の規定により定款で総代の選挙についての選挙区及び当該選挙区において選挙すべき総代の数等を定めたときは、総代選挙のために組合が組合員に対してする通知は、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該組合の区域に包括される市町村の事務所の掲示場に、選挙の期日、選挙の方法その他選挙につき必要な事項を記載した書面を掲示すればよい。
8 前項の掲示は、選挙の期日の少くとも十日前までにしなければならない。
9 総代については、第五十六条及び第六十五条の規定を準用する。
10 総代会については、総会に関する規定を準用する。但し、総代会においては、解散又は合併の議決をすることができない。
(参事及び会計主任)
第七十二条 組合は、参事及び会計主任を選任し、その主たる事務所又は従たる事務所において、その業務を行わせることができる。
2 参事及び会計主任の選任及び解職は、理事の過半数によつて決する。
3 参事については、商法第三十八条第一項及び第三項(支配人の代理権)、第三十九条(共同支配人)、第四十一条(支配人の義務)並びに第四十二条(表見支配人)の規定を準用する。
第七十三条 組合員又は総代は、総組合員又は総総代の五分の一以上の同意を得て、理事に対し、参事又は会計主任の解職を請求することができる。
2 前項の規定による請求は、解職の理由を記載した書面を理事に提出してしなければならない。
3 第一項の規定による請求があつたときは、理事は、当該参事又は会計主任の解職の可否を決しなければならない。
4 理事は、前項の可否を決する日の七日前までに、当該参事又は会計主任に対して第二項の書面又はその写を送付し、且つ、弁明する機会を与えなければならない。
(退職手当)
第七十四条 組合は、その常勤する有給の役員又は職員の退職手当について、定款で必要な定をしなければならない。
第六節 解散及び清算
(解散事由)
第七十五条 組合は、左の事由によつて解散する。
一 定款に定める存立の期間の満了又は解散事由の発生
二 総会の決議
三 組合の合併
四 破産
五 第百十一条第二項の規定による解散の命令
2 解散の決議については、第六十九条第一項の規定を準用する。
3 解散の決議は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
4 組合は、第一項の事由による外、組合員が、地域組合にあつては十五人未満、業態組合にあつては五人未満になつたことによつて解散する。
5 組合は、前項の規定により解散したときは、遅滞なくその旨を農林大臣に届け出なければならない。
(解散の効果)
第七十六条 組合が解散したときは、合併の場合を除いては、保険関係は、終了する。
2 前項の場合には、組合は、まだ経過しない期間に対する保険料を払い戻さなければならない。
(合併の手続)
第七十七条 組合が合併しようとするときは、総会において合併を議決しなければならない。この場合には、第六十九条第一項の規定を準用する。
2 合併は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 前項の場合には、第十八条の規定を準用する。
(財産目録及び貸借対照表の作成)
第七十八条 組合が合併の議決をしたときは、その議決の日から二週間以内に財産目録及び貸借対照表を作らなければならない。
(債権者の異議)
第七十九条 組合は、前条の期間内に債権者に対して、異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
2 前項の一定の期間は、一箇月を下つてはならない。
3 債権者が第一項の一定の期間内に異議を述べなかつたときは、合併を承認したものとみなす。
4 債権者が異議を述べたときは、組合は、弁済をし、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社若しくは信託業務を営む銀行に相当の財産を信託しなければならない。
(新設合併の手続)
第八十条 合併によつて組合を設立するには、各組合の総会において組合員の中から選任した設立委員が共同して、定款を作成し、役員を選任し、その他設立に必要な行為をしなければならない。
2 前項の規定による役員の選任は、合併をしようとする組合の組合員の中からしなければならない。但し、特別の事由があるときは、組合員以外の者から選任することができる。この場合には、第五十五条第四項本文の規定を準用する。
3 第一項の規定による設立委員の選任については、第六十九条第一項の規定を準用する。
(合併の時期)
第八十一条 組合の合併は、合併後存続する組合又は合併によつて設立する組合が、その主たる事務所の所在地において、第九十四条に規定する登記をすることによつてその効力を生ずる。
(合併による権利義務の承継)
第八十二条 合併後存続する組合又は合併によつて設立した組合は、合併によつて消滅した組合の権利義務(当該組合がその行う事業に関し、行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。
(清算人)
第八十三条 組合が解散したときは、合併及び破産による解散の場合を除いては、理事が、その清算人となる。但し、総会において他人を選任したときは、この限りでない。
(清算事務)
第八十四条 清算人は、就職の後遅滞なく、組合の財産の状況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作り、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
第八十五条 清算人は、組合の債務を弁済した後でなければ、組合の財産を分配することができない。
第八十六条 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(民法及び非訟事件手続法の準用)
第八十七条 組合の解散及び清算については、民法第七十三条(清算法人)、第七十五条(裁判所による清算人の選任)、第七十六条(清算人の解任)及び第七十八条から第八十三条まで(清算人の職務権限等)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第二項(法人の解散及び清算の監督の管轄)、第三十六条(検査人の選任)、第三十七条ノ二(準用規定)、第百三十五条ノ二十五第二項及び第三項(意見の聴取等)、第百三十六条(管轄裁判所)、第百三十七条(精算人の選任又は解任の裁判)及び第百三十八条(清算人不適格者)の規定を準用する。この場合において、民法第七十五条中「前条」とあるのは「漁船損害補償法第八十三条」と読み替えるものとする。
第七節 登記
(設立の登記)
第八十八条 組合は、設立の認可があつた日から二週間以内に、主たる事務所の所在地において、設立の登記をしなければならない。
2 設立の登記には、左の事項を掲げなければならない。
一 第二十一条第一項第一号から第三号まで、第五号、第十二号及び第十三号に掲げる事項
二 事務所
三 役員の氏名及び住所
3 組合は、設立の登記をした後二週間以内に、従たる事務所の所在地において、前項の事項を登記しなければならない。
(従たる事務所新設の登記)
第八十九条 組合の成立後従たる事務所を設けたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に従たる事務所を設けたことを登記し、その従たる事務所の所在地においては三週間以内に前条第二項の事項を登記し、他の従たる事務所の所在地においては同期間内にその従たる事務所を設けたことを登記しなければならない。
2 主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内において、新たに従たる事務所を設けたときは、その従たる事務所を設けたことを登記すればよい。
(事務所移転の登記)
第九十条 組合が主たる事務所を移転したときは、旧所在地においては二週間以内に移転の登記をし、新所在地においては三週間以内に第八十八条第二項の事項を登記し、従たる事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第八十八条第二項の事項を登記しなければならない。
2 同一の登記所の管轄区域内において主たる事務所又は従たる事務所を移転したときは、その移転の登記をすればよい。
(設立登記事項の変更の登記)
第九十一条 第八十八条第二項の事項中に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に変更の登記をしなければならない。
(参事の登記)
第九十二条 組合が参事を選任したときは、二週間以内に、これを置いた事務所の所在地において、参事の氏名及び住所、参事を置いた事務所並びに数人の参事が共同して代理権を行うべきことを定めたときはその旨を登記しなければならない。その登記した事項の変更及び参事の代理権の消滅についても、同様である。
(解散の登記)
第九十三条 組合が解散したときは、合併及び破産の場合を除いては、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に解散の登記をしなければならない。
(合併の登記)
第九十四条 組合が合併したときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、合併後存続する組合については変更の登記、合併によつて消滅する組合については解散の登記、合併によつて設立した組合については第八十八条第二項に規定する登記をしなければならない。
(清算人の登記)
第九十五条 清算人は、その就職の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算人の氏名及び住所を登記しなければならない。
2 前項の規定により登記した事項の変更の登記については、第九十一条の規定を準用する。
(清算結了の登記)
第九十六条 組合の清算が結了したときは、清算結了の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算結了の登記をしなければならない。
(管轄登記所及び登記簿)
第九十七条 組合の登記については、その事務所の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所が、管轄登記所としてこれをつかさどる。
2 登記所に、漁船保険組合登記簿を備える。
(設立の登記の申請)
第九十八条 組合の設立の登記は、役員全員の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、定款及び役員たることを証する書面を添附しなければならない。
3 合併による組合の設立の登記の申請書には、前項に掲げる書面の外、第七十九条第一項の規定による公告及び催告をしたこと、並びに異議を述べた債権者があるときは、これに対して弁済し、若しくは担保を供し、又は財産を信託したことを証する書面を添附しなければならない。
第九十九条 第八十八条第三項の規定による登記は、理事の申請によつてする。
(事務所新設、移転及び設立の登記事項変更の登記の申請)
第百条 組合の事務所の新設又は事務所の移転その他第八十八条第二項の事項の変更の登記は、理事又は清算人の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、事務所の新設又は登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。
3 組合の合併による変更の登記の申請については、第九十八条第一項及び第三項の規定を準用する。
(参事の登記の申請)
第百一条 参事の選任、第九十二条の規定により登記した事項の変更及び参事の代理権の消滅の登記は、理事の申請によつてする。
2 前項の登記のうち、参事の選任の登記の申請書には、参事の選任を証する書面及び数人の参事が共同して代理権を行うべきことを定めたときはその旨を証する書面を、その他の登記の申請書には、その事項を証する書面を添附しなければならない。
(解散の登記の申請)
第百二条 第九十三条の規定による組合の解散の登記は、第三項に規定する場合を除いて清算人の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、解散の事由を証する書面を添附しなければならない。
3 農林大臣が組合の解散を命じた場合における解散の登記は、その嘱託によつてする。
第百三条 第九十四条の規定による解散の登記は、合併によつて消滅した組合の理事の申請によつてする。
2 前項の場合には、第九十八条第三項及び前条第二項の規定を準用する。
(清算人の登記の申請)
第百四条 第九十五条第一項の規定による登記の申請書には、理事が清算人でない場合には、申請人の資格を証する書面を添附しなければならない。
2 第九十五条第二項の規定による登記は、清算人の申請によつてする。
3 前項の登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。
(清算結了の登記の申請)
第百五条 組合の清算結了の登記は、清算人の申請によつてする。
2 前項の登記の申請書には、清算人が第八十六条の規定により決算報告書の承認を得たことを証する書面を添附しなければならない。
(登記の期間の計算)
第百六条 登記すべき事項で農林大臣の認可を要するものは、その認可書が到達した時から登記の期間を起算する。
(登記事項の公告)
第百七条 登記した事項は、登記所において、遅滞なく公告しなければならない。
(非訟事件手続法の準用)
第百八条 組合の登記については、非訟事件手続法第百三十九条ノ二、第百四十一条から第百五十一条ノ六まで及び第百五十四条から第百五十七条まで(商業登記の通則)の規定を準用する。
第八節 監督
(業務又は財産状況の報告の徴取)
第百九条 農林大臣は、組合の業務又は財産の状況に関して監督上必要があると認めるときは、組合からその業務又は財産の状況に関し報告を徴することができる。
(業務又は会計状況の検査)
第百十条 組合員又は総代が、総組合員又は総総代の十分の一以上の同意を得て、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反する疑があることを理由として検査を請求したときは、農林大臣は、その組合の業務又は会計の状況を検査しなければならない。
2 農林大臣は、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分若しくは定款に違反する疑があると認めるとき、又はその業務若しくは財産の状況により監督上必要があると認めるときは、何時でも、その組合の業務又は会計の状況を検査することができる。
(法令等の違反に対する措置)
第百十一条 農林大臣は、第百九条の規定により報告を徴した場合又は前条の規定により検査を行つた場合において、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分若しくは定款に違反すると認めるときは、その組合に対して、役員の解職、事業の停止、定款の変更その他必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
2 組合が前項の規定による命令に違反したときは、農林大臣は、その組合の解散を命ずることができる。
(議決、選挙又は当選の取消)
第百十二条 組合員又は総代が、総組合員又は総総代の十分の一以上の同意を得て、総会又は総代会の招集手続、議決の方法又は選挙が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反することを理由として、その議決又は選挙若しくは当選決定の日から一箇月以内に、その議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、農林大臣はその違反の事実があると認めるときは、当該議決又は選挙若しくは当選を取り消すことができる。
(権限の委任)
第百十三条 この章中に規定する農林大臣の権限は、政令の定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。
第三章 政府の再保険事業
(再保険者)
第百十四条 政府は、組合が漁船保険事業によつてその組合員に対して負う保険責任を再保険するものとする。
(再保険関係の成立)
第百十五条 組合とその組合員との間に保険関係が成立したときは、これによつて政府と当該組合との間に再保険関係が成立するものとする。
(再保険金額)
第百十六条 再保険金額は、保険金額の百分の九十とする。
(再保険料率)
第百十七条 再保険料率は、組合が農林大臣の認可を受けて定めた純保険料率と同率とする。
(危険の消滅)
第百十八条 政府は、組合が第三十八条の規定により保険料の払戻をしたときは、政令の定めるところにより、再保険料の一部を払い戻すことができる。
(保険引受の通知)
第百十九条 組合は、その組合員との間に保険関係が成立したときは、省令の定めるところにより、当該保険関係に関する事項を農林大臣に通知しなければならない。通知した事項に変更を生じたときも、同様とする。
(保険事故発生の通知)
第百二十条 組合は、保険事故が発生したと認めるときは、省令の定めるところにより、遅滞なくその旨を農林大臣に通知しなければならない。
(再保険の免責)
第百二十一条 左の場合には、政府は、省令の定めるところにより、再保険金額の全部又は一部につき、その支払の責を免かれることができる。
一 組合が法令又は定款に違反しててん補したとき。
二 組合がてん補額を不当に認定しててん補したとき。
三 組合が不正の目的をもつて前二条の規定による通知を怠り、又は虚偽の通知をしたとき。
(委付等による政府の取得権利)
第百二十二条 組合は、省令の定めるところにより、委付によつて取得した一切の権利の行使又は処分に関する事項を定めて農林大臣の承認を受けなければならない。
2 農林大臣が、前項の承認をしたときは、政府は、組合に対して再保険金額を支払うものとする。
3 前項の規定により再保険金額の支払を受けた組合は、委付によつて取得した一切の権利を行使し又は処分して得た金額から、その行使又は処分に要した費用を控除した残額のうち再保険金額の保険金額に対する割合によつて算出した金額を、遅滞なく政府に還付しなければならない。
4 前三項の規定は、第五十四条の規定で準用する商法第六百六十一条及び第六百六十二条(保険代位)の規定によつて、組合が権利を取得した場合に準用する。
(政府を相手方とする訴の提起)
第百二十三条 組合が、再保険に関する事項につき、政府を相手方とする訴を提起するには、漁船再保険審査会の審査を経なければならない。
2 前項の審査の請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。
(準用規定)
第百二十四条 政府の再保険については、商法第六百三十六条、第六百三十七条、第六百四十三条、第六百四十六条及び第六百六十三条(損害保険の総則)の規定を準用する。
(審査会の設置及び権限)
第百二十五条 農林省に漁船再保険審査会(以下「審査会」という。)を置く。
2 審査会は、第百二十三条の規定により、その権限に属させた事項を処理する。
(審査会の組織及び運営)
第百二十六条 審査会は、農林大臣の任命する左の委員をもつて組織する。
一 農林省の職員 三人
二 組合の役員 三人
三 学識経験者 三人
2 審査会に会長を置き、委員の互選した者をもつて充てる。
3 会長は、会務を処理し、審査会を代表する。
4 会長に事故があるときは、会長が、あらかじめ委員のうちから指定した者が、その職務を代行する。
5 委員は、非常勤とする。
6 前各項に規定するものを除く外、審査会の委員、議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 漁船保険中央会
(設立の目的)
第百二十七条 組合は、漁船保険事業の健全な発達を図るため漁船保険中央会を設立することができる。
(中央会の数)
第百二十八条 漁船保険中央会(以下「中央会」という。)は、全国を通じて一箇とする。
(設立)
第百二十九条 中央会を設立するには、五以上の組合が発起人とならなければならない。
(定款に記載すべき事項)
第百三十条 中央会の定款には、第二十一条第一項第一号から第五号まで及び第九号から第十三号までの事項並びに経費の賦課に関する事項を記載しなければならない。
(会員たる資格)
第百三十一条 中央会の会員たる資格を有する者は、組合とする。
2 会員たる資格を有する者が中央会に加入をしようとするときは、中央会は、正当な事由がないのにその加入を拒み、又はその加入につき現在の組合員が加入の際に附されたよりも困難な条件を附してはならない。
(事業)
第百三十二条 中央会は、定款の定めるところにより、左の事業を行うものとする。
一 保険料率の算出
二 損害の発生の予防及び防止に関する事項の調査及び指導
三 会員たる組合の委託によつてする保険引受のための漁船の調査及び保険の目的たる漁船についての損害の調査
四 漁船保険の普及宣伝
五 会員たる組合の職員の指導及び福利厚生
六 その他漁船保険事業の健全な発達を図るための調査及び指導
七 前各号の事業に附帯する事業
(保険料率)
第百三十三条 中央会は、定款の定めるところにより、会員たる組合に対して保険料率の計算につき必要な資料の提出を求めることができる。
2 中央会が算出する保険料率は、組合の保険事業の健全な発達を図るための合理的且つ妥当なものでなければならず、又不当に差別的なものであつてはならず、且つ、会員たる組合を拘束するものであつてはならない。
3 会員たる組合は、その保険料率についての定款の変更につき農林大臣の認可を受けようとする場合においては、単独に、直接に、且つ、自己のためにこれをしなければならない。
4 中央会は、保険料率を算出したときは、その主たる事務所に、算出した保険料率表及びその表の算出の基礎となつた資料を備えて置かなければならない。
5 会員たる組合は、中央会に対して前項の表及び資料の閲覧を求め、又はその表の写の交付を求めることができる。
(建議等)
第百三十四条 中央会は、漁船損害補償に関する重要事項につき、農林大臣の諮問に応じて答申する。
2 中央会は、漁船損害補償に関する重要事項について、関係行政庁に建議することができる。
(経費の賦課)
第百三十五条 中央会は、定款の定めるところにより、会員に経費を賦課することができる。
(役員の定数及び選挙)
第百三十六条 中央会に、役員として理事及び監事を置く。
2 理事の定数は、十人以上とし、監事の定数は、二人以上とする。
3 役員は、定款の定めるところにより、総会において選挙する。但し、設立当時の役員は、創立総会において選挙する。
4 役員の選挙は、無記名投票によつて行う。
5 投票は、一人につき一票とする。
6 中央会の理事の定数の少くとも五分の三は、会員たる組合の役員又は参事でなければならない。但し、設立当時の理事の定数の少くとも五分の三は、設立の同意を申し出た組合の役員又は参事でなければならない。
(総会の議決事項)
第百三十七条 左の事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 毎事業年度の事業計画の設定又は変更
三 経費の賦課及び徴収の方法
四 毎事業年度内における借入金の最高限度
五 事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支決算書
(準用規定)
第百三十八条 中央会の人格等に関する事項については、第五条、第六条及び第八条から第十二条までの規定を準用する。
2 中央会の設立に関する事項については、第十四条から第二十条まで、第二十一条第二項及び第二十九条第一項の規定を準用する。この場合において、第十五条第二項中「地域組合にあつては十五人以上、業態組合にあつては五人以上」とあるのは「五組合以上」と、第十六条第六項、第二十九条第一項及び第十六条第七項の規定で準用する第二十九条第二項中「議決権」とあるのは「議決権又は選挙権」と読み替えるものとする。
3 中央会の会員に関する事項については、第二十四条第一項及び第二項第三号から第五号まで、第二十六条、第二十七条第二項、第二十八条及び第二十九条の規定を準用する。この場合において、第二十四条第二項第三号中「死亡又は解散」とあるのは「解散」と、第二十七条第二項中「追徴金又は保険金額の削減」とあるのは「賦課金」と読み替えるものとする。
4 中央会の管理に関する事項については、第五十六条から第六十六条まで、第六十八条、第六十九条第一項から第三項まで、第七十条及び第七十四条の規定を準用する。この場合において、第六十四条第一項中「損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案」とあるのは「収支決算書」と読み替えるものとする。
5 中央会の解散及び清算に関する事項については、第七十五条第一項第一号、第二号、第四号及び第五号、同条第二項から第五項まで並びに第八十三条から第八十七条までの規定を準用する。この場合において、第七十五条第四項中「組合員が、地域組合にあつては十五人未満、業態組合にあつては五人未満」とあるのは「会員が十五組合未満」と、第八十三条中「合併及び破産」とあるのは「破産」と読み替えるものとする。
6 中央会の登記に関する事項については、第八十八条から第九十一条まで、第九十三条、第九十五条から第九十七条まで、第九十八条第一項及び第二項、第九十九条、第百条第一項及び第二項、第百二条並びに第百四条から第百八条までの規定を準用する。この場合において、第九十三条中「合併及び破産」とあるのは「破産」と、第九十七条第二項中「漁船保険組合登記簿」とあるのは「漁船保険中央会登記簿」と読み替えるものとする。
7 中央会の監督に関する事項については、第百九条から第百十二条までの規定を準用する。
第五章 保険料の負担及び補助金の交付
(保険料の負担)
第百三十九条 国庫は、第三十二条第一項の規定により保険に付した漁船及び政令で定める漁船についての同条第六項の政令で定める金額に相当する保険金額に対する純保険料の百分の五十を負担する。
2 前項の規定による負担金に相当する金額は、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から漁船再保険特別会計に繰り入れる。
第百四十条 前条第一項の規定による負担金は、組合員が組合に支払うべき保険料の一部に充てるため、当該組合に交付する。
2 前項の規定によつて組合に交付すべき交付金は、組合に交付するのに代えて、当該組合が政府に支払うべき再保険料の一部に充てて、漁船再保険特別会計の再保険料収入に計上することができる。
(漁業協同組合事務費交付金の補助)
第百四十一条 政府は、予算の範囲内において政令の定めるところにより、組合が第三十二条第七項の規定により漁業協同組合に対し交付する事務費交付金の一部を補助することができる。
2 前項の規定による補助金に相当する金額は、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から漁船再保険特別会計に繰り入れる。
(組合事務費補助金)
第百四十二条 政府は、予算の範囲内において政令の定めるところにより、毎会計年度組合の事務費の一部を補助することができる。
(再保険事業に関する事務費の繰入)
第百四十三条 政府は、再保険事業の業務の執行に要する経費に相当する金額を、毎会計年度予算の定めるところにより、一般会計から漁船再保険特別会計に繰り入れるものとする。
第六章 罰則
第百四十四条 第百九条(第百三十八条第七項において準用する場合及び第百十三条の規定により委任した場合を含む。)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は第百十条(第百三十八条第七項の規定において準用する場合及び第百十三条の規定により委任した場合を含む。)の規定により検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二千円以下の罰金に処する。
2 組合又は中央会の代表者又は代理人、職員その他の従業者がその組合又は中央会の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その組合又は中央会に対しても同項の刑を科する。但し、組合又は中央会の役員がその違反行為を防止するため相当の注意を怠らなかつたことの証明があつたときは、この限りでない。
第百四十五条 左の場合には、組合又は中央会の役員又は清算人を一万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により農林大臣の認可を受けなければならない場合にその認可を受けなかつたとき。
二 この法律による登記を怠り、又は虚偽の登記をしたとき。
三 組合又は中央会がその目的でない事業をしたとき。
四 第二十六条第二項(第百三十八条第三項において準用する場合を含む。)又は第六十五条第五項(第七十一条第九項及び第百三十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
五 第五十一条及び第五十二条の規定に違反したとき。
六 法令又は定款に違反して剰余金を処分し、又は保険金額を削減したとき。
七 第五十七条(第百三十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
八 第五十九条第一項、第六十条又は第六十一条の規定に違反したとき。
九 第六十三条第一項又は第六十四条第一項(これらの規定を第百三十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して書類を備えて置かず、その書類に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は正当な理由がないのに第六十三条第二項若しくは第六十四条第二項(これらの規定を第百三十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定による閲覧を拒んだとき。
十 第七十八条又は第七十九条第一項若しくは第四項の規定に違反して組合の合併をしたとき。
十一 第八十四条又は第八十六条(これらの規定を第百三十八条第五項において準用する場合を含む。)に掲げる書類に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
十二 第八十五条(第百三十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して財産を分配したとき。
十三 第八十七条(第百三十八条第五項において準用する場合を含む。以下本条において同じ。)において準用する民法第七十九条第一項の期間内に債権者に弁済をしたとき。
十四 第八十七条において準用する民法第七十九条第一項又は同法第八十一条第一項の規定に違反してその公告を怠り、又は虚偽の公告をしたとき。
十五 第八十七条において準用する民法第八十一条第一項の規定に違反して破産宣告の請求を怠つたとき。
第百四十六条 第八条第二項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、千円以下の過料に処する。
附 則
この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 広川弘禅
内閣総理大臣 吉田茂