(保険の目的)
第三十條 保険の目的たるべき漁船は、総トン数千トン未満の漁船とし、業態組合にあつては政令で定める漁業に従事する漁船であつて政令で定める総トン数以上のもの、地域組合にあつては業態組合の保険の目的となつていない漁船とする。但し、地域組合にあつては、業態組合の保険の目的となつていない漁船であつても、水産業協同組合以外の法人で常時使用する従業員の数が三百人以上で、且つ、使用漁船の合計総トン数が三百トン以上のものが所有する政令で定める総トン数以上の漁船については、定款で別段の定をした場合の外は、保険の目的とすることができない。
2 漁具は、定款の定めるところにより特約がある場合に限り、その属する漁船とともに保険の目的とすることができる。
3 前項の規定により漁具を保険の目的とする場合においては、この法律の規定中「漁船」とあるのは「漁船(漁具を含む。)」と読み替えるものとする。
(保険引受の拒否の制限)
第三十一條 組合は、組合員又は組合員たる資格を有する者から、保険の申込があつたときは、これに対して正当の事由がなければ、保険の引受を拒むことができない。
(付保の義務等)
第三十二條 漁業協同組合の地区内にその住所を有し且つ政令で指定する漁船を所有する者(以下本條において「指定漁船の所有者」という。)の総員の三分の二以上の者が、政令で定める手続により指定漁船の所有者はすべてその所有する当該漁船の全部につき普通保険に付すべきことにつき同意をしたときは、指定漁船の所有者のすべての者(同意があつた後指定漁船の所有者となつた者を含む。)は、その所有する当該漁船の全部につき、普通保険に付さなければならない。
2 前項の規定による同意があつたときは、その代表者は、当該地区を区域内に含む市町村(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五條第二項の市にあつては区)又は特別区(以下「市町村」という。)の長にその旨を通知するものとし、その通知を受けた市町村の長は、その旨及び前項の規定の適用を受ける地区を公示しなければならない。
3 第一項の規定による同意があつたときは、その代表者は、当該地区の漁業協同組合に対し、その同意を証する書面を添えて、当該漁業協同組合の組合員たる指定漁船の所有者が組合に支払うべき保険料を集収してその者に代り組合に払い込む事業を行うべき旨の申出をしたときは、当該漁業協同組合は、正当な事由がある場合の外は、その申出に係る事業を行わなければならない。
4 前項の規定による事業を行う漁業協同組合は、当該漁業協同組合の組合員からその所有する第一項の政令で指定する漁船以外の漁船で保険の目的たるべきものにつき普通保険に付することに関し前項と同様の申出があつたときは、正当な事由がある場合の外は、当該漁船についても、前項の事業を行わなければならない。
5 第三項の規定による事業を行う漁業協同組合は、その組合員以外の者であつてその地区内に住所を有する者の所有する漁船に係る普通保険についても、第三項の事業を行うことができる。
6 第一項の規定により漁船を普通保険に付する場合における保険金額並びに第四項及び前項の規定の適用を受くべき漁船の普通保険の保険金額は、政令で定める金額を下るものであつてはならない。
7 組合は、第三項の事業を行う漁業協同組合に対し、その事務費として、政令で定める金額を交付しなければならない。
8 第一項から第五項までの規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。
(保険の目的の譲渡)
第三十三條 保険の目的たる漁船の譲受人は、組合に通知して、保険関係に関する譲渡人の有する権利義務を承継することができる。
2 組合は、正当な事由があるときは、前項の通知を受けた後直ちにその旨を譲受人に通知して、前項の権利義務の承継を拒むことができる。
3 前二項の規定は、保険の目的たる漁船につき、相続その他の包括承継があつた場合に準用する。
(組合のてん補責任)
第三十四條 組合は、保険の目的たる漁船につき、滅失、沈没、損傷その他の事故によつて生じた損害をてん補する。
2 前項の事故及びてん補すべき損害の範囲に関して必要な事項は、省令で定める。
(保険関係の成立等)
第三十五條 保険関係は、組合が保険料を受け取つた時に成立する。
2 組合の損害をてん補する責任は、定款で別段の定をした場合の外は、保険関係が成立した日の翌日から始まる。
(保険期間)
第三十六條 保険期間は、一年とする。但し、組合は、省令の定めるところにより、定款で別段の定をすることができる。
(保険証券の交付及び記載事項)
第三十七條 組合は、組合員の請求があつたときは、保険証券を交付しなければならない。
(危険の消滅)
第三十八條 組合は、保険の目的たる漁船につき、保険期間中その負担した危険が消滅したときは、定款の定めるところにより、保険料の一部を組合員に払い戻すことができる。
2 前項の規定によつて保険料の払戻をする場合及び払戻をする額の制限は、政令で定める。
(追徴金)
第三十九條 組合は、定款の定めるところにより、追徴金を支払わせることができる。
(相殺できない場合)
第四十條 組合員は、組合に支払うべき保険料及び追徴金につき、相殺をもつて組合に対抗することができない。
(保険金額の削減)
第四十一條 組合は、保険金額の支払に不足を生ずるときは、定款の定めるところにより、保険金額を削減することができる。
2 組合が前項の規定によつて保険金額を削減する場合であつても、そのてん補する額は、政府から支払を受けた再保険金額を下つてはならない。
(損害防止軽減の義務)
第四十二條 組合員は、保険の目的たる漁船につき、損害の防止及び軽減に努めなければならない。このために必要又は有益であつた費用は、省令の定めるところにより、組合がてん補する。
(組合員の通知義務)
第四十三條 組合員は、保険の目的たる漁船につき、組合のてん補すべき損害が発生したときは、定款の定めるところにより、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。
第四十四條 組合員は、定款の定めるところにより、保険の目的たる漁船の構造、設備、漁業の種類等につき、重大な変更を加えようとするときは、あらかじめ組合に通知しなければならない。
2 保険の目的たる漁船の危険が、その構造、設備、漁業の種類等の重大な変更により著しく増加する場合においては、組合は、組合員に対して、その変更を制限し、その他必要な処置をすべきことを指示することができる。
(組合の保険の目的の調査等)
第四十五條 組合は、保険の目的たる漁船に関して、調査をし、又は組合員に通常の修繕その他必要な処置をすべきことを指示することができる。
(組合の免責事由)
第四十六條 左の場合には、組合は、てん補すべき額の全部又は一部につき、てん補する責を免かれることができる。
一 保険の目的たる漁船につき、事故による損害が、法令に違反して航行又は操業した場合に生じたとき。
二 組合員が、保険の目的たる漁船につき、損害の防止又は軽減を怠つたとき。
三 組合員が、第四十三條の規定による通知を著しく遅滞したため、損害の状況の認定が困難となつたとき。
四 組合員が、第四十四條第一項の規定による通知を怠り、又は同條第二項の規定による組合の指示に従わなかつたとき。
五 組合員が、前條の規定による調査を拒み、又は指示に従わなかつたとき。
第四十七條 組合は、組合員の故意又は重大な過失によつて生じた損害及び船長その他漁船を指揮する者の故意によつて生じた損害をてん補する責を負わない。
第四十八條 組合は、保険の目的たる漁船が法令に違反して使用されたために法令に基いてなされた処分によつて生じた損害をてん補する責を負わない。
第四十九條 組合は、特殊保険の引受をした場合であつても、捕獲、拿捕又は抑留によつて生じた損害は、特約がなければ、てん補する責を負わない。
(委付の原因)
第五十條 左の場合には、組合員は、保険の目的たる漁船を組合を委付して保険金額の全部を請求することができる。
四 漁船が捕獲、拿捕又は抑留され、三十日間解放されなかつたとき。
2 前項第三号の規定に該当する場合については、省令で定める。
(責任準備金の積立)
第五十一條 組合は、毎事業年度の終において存する漁船保険につき、省令の定めるところにより、責任準備金を積み立てなければならない。
(準備金の積立)
第五十二條 組合は、不足金の補てんに備えるため、省令の定めるところにより、毎事業年度の剰余金の中から準備金を積み立てなければならない。
(剰余金の分配)
第五十三條 組合は、定款の定めるところにより、組合員が払い込んだ保険料の額に比例して、剰余金の分配をすることができる。
(商法の準用)
第五十四條 組合の漁船保険については、商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百三十一條から第六百三十九條まで、第六百四十二條から第六百四十六條まで、第六百五十九條、第六百六十一條から第六百六十三條まで(損害保険の総則)、第八百三十四條第一項、第八百三十六條第一項及び第二項並びに第八百三十七條から第八百四十一條まで(保険委付)の規定を準用する。この場合において、第六百六十三條中「保険料支払ノ義務」とあるのは「保険料支払ノ義務及ヒ追徴金支払ノ義務」と、第八百三十四條第一項中「六ヶ月間」及び第八百三十六條第一項中「三ケ月」とあるのは「省令ヲ以テ定ムル期間」と、第八百三十六條第二項中「第八百三十三條第一号、第三号及ヒ第四号」とあるのは「漁船損害補償法第五十條第一項第一号及ヒ第三号」と読み替えるものとする。