(目的)
第一条 この法律は、育児休業に関する制度を設けるとともに、子の養育を容易にするため勤務時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めることにより、子を養育する労働者の雇用の継続を促進し、もって労働者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。
(育児休業の申出)
第二条 労働者(日々雇用される者及び期間を定めて雇用される者を除く。以下この条から第九条までにおいて同じ。)は、その事業主に申し出ることにより、育児休業(労働者が、この法律に定めるところにより、その一歳に満たない子を養育するためにする休業をいう。以下同じ。)をすることができる。ただし、育児休業をしたことがある労働者は、当該育児休業を開始した日に養育していた子については、労働省令で定める特別の事情がある場合を除き、当該申出をすることができない。
2 前項本文の規定による申出(以下「休業申出」という。)は、労働省令で定めるところにより、その期間中は育児休業をすることとする一の期間について、その初日(以下「休業開始予定日」という。)及び末日(以下「休業終了予定日」という。)とする日を明らかにして、しなければならない。
(休業申出があった場合における事業主の義務等)
第三条 事業主は、労働者からの休業申出があったときは、当該休業申出を拒むことができない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの休業申出があった場合は、この限りでない。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
二 労働者の配偶者で当該休業申出に係る子の親であるものが、常態として当該子を養育することができるものとして労働省令で定める者に該当する場合における当該労働者
三 前二号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として労働省令で定めるもの
2 前項ただし書の場合において、事業主にその休業申出を拒まれた労働者は、前条第一項本文の規定にかかわらず、育児休業をすることができない。
3 事業主は、労働者からの休業申出があった場合において、当該休業申出に係る休業開始予定日とされた日が当該休業申出があった日の翌日から起算して一月を経過する日(以下この項において「一月経過日」という。)前の日であるときは、労働省令で定めるところにより、当該休業開始予定日とされた日から当該一月経過日(当該休業申出があった日までに、出産予定日前に子が出生したことその他の労働省令で定める事由が生じた場合にあっては、当該一月経過日前の日で労働省令で定める日)までの間のいずれかの日を当該休業開始予定日として指定することができる。
(休業開始予定日の変更の申出等)
第四条 休業申出をした労働者は、その後当該休業申出に係る休業開始予定日とされた日(前条第三項の規定による事業主の指定があった場合にあっては、当該事業主の指定した日。以下この項において同じ。)の前日までに、同条第三項の労働省令で定める事由が生じた場合には、その事業主に申し出ることにより、当該休業申出に係る休業開始予定日を一回に限り当該休業開始予定日とされた日前の日に変更することができる。
2 事業主は、前項の規定による労働者からの申出があった場合において、当該申出に係る変更後の休業開始予定日とされた日が当該申出があった日の翌日から起算して一月を超えない範囲内で労働省令で定める期間を経過する日(以下この項において「期間経過日」という。)前の日であるときは、労働省令で定めるところにより、当該申出に係る変更後の休業開始予定日とされた日から当該期間経過日(その日が当該申出に係る変更前の休業開始予定日とされていた日(前条第三項の規定による事業主の指定があった場合にあっては、当該事業主の指定した日。以下この項において同じ。)以後の日である場合にあっては、当該申出に係る変更前の休業開始予定日とされていた日)までの間のいずれかの日を当該労働者に係る休業開始予定日として指定することができる。
3 休業申出をした労働者は、労働省令で定める日までにその事業主に申し出ることにより、当該休業申出に係る休業終了予定日を一回に限り当該休業終了予定日とされた日後の日に変更することができる。
(休業申出の撤回等)
第五条 休業申出をした労働者は、当該休業申出に係る休業開始予定日とされた日(第三条第三項又は前条第二項の規定による事業主の指定があった場合にあっては当該事業主の指定した日、同条第一項の規定により休業開始予定日が変更された場合にあってはその変更後の休業開始予定日とされた日。第三項及び次条第一項において同じ。)の前日までは、当該休業申出を撤回することができる。
2 前項の規定により休業申出を撤回した労働者は、当該休業申出に係る子については、労働省令で定める特別の事情がある場合を除き、第二条第一項本文の規定にかかわらず、休業申出をすることができない。
3 休業申出がされた後休業開始予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の労働者が当該休業申出に係る子を養育しないこととなった事由として労働省令で定める事由が生じたときは、当該休業申出は、されなかったものとみなす。この場合において、労働者は、その事業主に対して、当該事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければならない。
(育児休業期間)
第六条 休業申出をした労働者がその期間中は育児休業をすることができる期間(次項において「育児休業期間」という。)は、休業開始予定日とされた日から休業終了予定日とされた日(第四条第三項の規定により当該休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の休業終了予定日とされた日。次項において同じ。)までの間とする。
2 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、育児休業期間は、前項の規定にかかわらず、当該事情が生じた日(第三号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一 休業終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の労働者が休業申出に係る子を養育しないこととなった事由として労働省令で定める事由が生じたこと。
二 休業終了予定日とされた日の前日までに、休業申出に係る子が一歳に達したこと。
三 休業終了予定日とされた日までに、休業申出をした労働者について労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する期間又は新たな育児休業期間が始まったこと。
3 前条第三項後段の規定は、前項第一号の労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。
(解雇の制限)
第七条 事業主は、労働者が休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者を解雇することができない。
(育児休業に関する定めの周知等の措置)
第八条 事業主は、育児休業に関して、あらかじめ、次に掲げる事項を定めるとともに、これを労働者に周知させるための措置を講ずるよう努めなければならない。
二 育児休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、労働省令で定める事項
2 事業主は、労働者が休業申出をしたときは、労働省令で定めるところにより、当該労働者に対し、前項各号に掲げる事項に関する当該労働者に係る取扱いを明示するよう努めなければならない。
(雇用管理等に関する措置)
第九条 事業主は、休業申出及び育児休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(勤務時間の短縮等の措置)
第十条 事業主は、その雇用する労働者(日々雇用される者を除く。以下この条及び次条において同じ。)のうち、その一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものに関して、労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく勤務時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置を講じなければならない。
(一歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置)
第十一条 事業主は、その雇用する労働者のうち、その一歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、育児休業の制度又は前条に定める措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(指針)
第十二条 労働大臣は、第八条から前条までの規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
2 労働大臣は、前項の指針に従い、事業主に対し、必要な助言、指導又は勧告を行うことができる。
3 前項に定める労働大臣の権限は、労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県婦人少年室長に委任することができる。
(国による援助)
第十三条 国は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者の福祉の増進を図るため、第九条に定める措置を講ずる事業主その他の事業主に対して、必要な援助を行うように努めるものとする。
(政令で定める審議会への諮問)
第十四条 労働大臣は、第二条第一項、第三条第一項第二号及び第三号並びに第三項、第四条第二項及び第三項、第五条第二項及び第三項、第六条第二項第一号並びに第十条の労働省令の制定又は改正の立案をしようとするとき、第十二条第一項の指針を策定しようとするとき、その他この法律の施行に関する重要事項について決定しようとするときは、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。
(労働省令への委任)
第十五条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な手続その他の事項は、労働省令で定める。
(船員に関する特例)
第十六条 船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員に関しては、第二条、第三条第一項第二号及び第三号並びに第三項、第四条、第五条第二項及び第三項、第六条第二項第一号及び第三項、第八条第一項第三号及び第二項、第十条、第十二条第三項、第十四条並びに前条中「労働省令」とあるのは「運輸省令」と、第六条第二項第三号中「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する」とあるのは「船員法(昭和二十二年法律第百号)第八十七条第一項若しくは第二項の規定により作業に従事しない」と、第十二条及び第十四条中「労働大臣」とあるのは「運輸大臣」と、第十二条第三項中「都道府県婦人少年室長」とあるのは「地方運輸局長(海運監理部長を含む。)」と、第十四条中「政令で定める審議会」とあるのは「船員中央労働委員会」とする。
(適用除外)
第十七条 この法律は、国家公務員及び地方公務員に関しては、適用しない。