(家畜人工授精の制限)
第十一條 家畜人工授精師でない者は、家畜人工授精用精液を採取し、処理し、又はこれを雌の家畜に注入してはならない。但し、学術研究のためにする場合、自己の飼養する雄の家畜から家畜人工授精用精液を採取し、処理し、又はこれを自己の飼養する雌の家畜に注入する場合その他省令で定める場合は、この限りでない。
第十二條 家畜人工授精用精液は、家畜人工授精所、家畜保健衛生所その他家畜人工授精を行うため国又は都道府県が開設する施設以外の場所で採取し、又は処理してはならない。但し、家畜人工授精用精液を採取する回数が、都道府県知事の定める回数に満たない雄の家畜から家畜人工授精用精液を採取し、又はこれを処理する場合並びに前條但書の場合は、この限りでない。
(家畜人工授精用精液の検査等)
第十三條 家畜人工授精師は、家畜人工授精用精液を採取したときは、すみやかに、省令で定める方法により、これを検査しなければならない。
2 家畜人工授精師は、前項の検査の後すみやかに、省令の定める方法により、家畜人工授精用精液を容器に收めた上これに封かんを施し、且つ、家畜人工授精用精液証明書を添付しなければならない。但し、検査の後その場所において雌の家畜に注入する場合は、この限りでない。
3 家畜人工授精師は、第一項の検査の結果省令で定める異常を発見したときは、すみやかに種畜検査委員又は地方種畜検査委員にその旨を届け出なければならない。
(家畜人工授精用精液の讓渡等の制限)
第十四條 前條第二項の封かんがなく、又は精液証明書が添付されていない家畜人工授精用精液は、これを讓り渡し、又は雌の家畜に注入してはならない。但し、第十一條但書及び前條第二項但書の場合は、この限りでない。
2 省令で定める品質の不良な家畜人工授精用精液は、これを讓り渡し、又は雌の家畜に注入してはならない。但し、第十一條但書の場合は、この限りでない。
(家畜人工授精簿)
第十五條 家畜人工授精師は、家畜人工授精簿を備えて、家畜人工授精に関する事項を記載しなければならない。
2 家畜人工授精師は、前項の家畜人工授精簿を五年間保存しなければならない。
(家畜人工授精師の免許)
第十六條 家畜人工授精師になろうとする者は、都道府県知事の免許を受けなければならない。
2 家畜人工授精師の免許は、左の各号の一に該当する者でなければ、與えない。
二 農林大臣の指定する者又は都道府県知事が家畜の種類別に行う家畜人工授精に関する講習会の課程を修了してその修業試験に合格した者
3 前項第二号に該当して家畜人工授精師の免許を與えられた者は、その者が合格した同項の修業試験に係る家畜の種類についてのみ家畜人工授精師として業務を行うことができる。
(家畜人工授精師の免許を與えない場合)
第十七條 禁治産者又は準禁治産者には、前條の免許を與えない。
2 左の各号の一に該当する者には、前條の免許を與えないことができる。
二 不具の者であつて、家畜人工授精師としての業務を行うのに支障があるもの
三 家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)、種畜法(昭和二十三年法律第百五十五号)、薬事法(昭和二十三年法律第百七十九号)、獸医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)若しくは家畜商法(昭和二十四年法律第二百八号)又はこれらの法律に基く命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられた者
四 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反した者
(家畜人工授精師免許証)
第十八條 都道府県知事は、第十六條の免許を與えたときは、家畜人工授精師免許証を交付しなければならない。
(家畜人工授精師の免許の取消及び業務の停止)
第十九條 都道府県知事は、家畜人工授精師が第十七條第一項に規定する者に該当するに至つたとき又は家畜人工授精師から申請があつたときは、その免許を取り消さなければならない。
2 都道府県知事は、家畜人工授精師が第十七條第二項各号の一に掲げる者に該当するに至つたとき又はこの法律若しくはこの法律に基く命令に基く処分に違反したときは、その免許を取り消し、又はその業務の停止を命ずることができる。
3 都道府県知事は、前項の処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対して相当の期間を置いて予告した上、公開による聽聞を行わなければならない。
4 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
5 聽聞に際しては、当該処分に係る者に対して、当該事案について意見を述べ、且つ、証拠を呈示する機会を與えなければならない。
(家畜人工授精師免許等の効力)
第二十條 第十六條の免許及び前條の免許の取消又は業務の停止の効力は、全都道府県に及ぶ。
(名称の独占)
第二十一條 家畜人工授精師でなければ、家畜人工授精師という名称を用いてはならない。
(家畜人工授精師免許証の携帶等)
第二十二條 家畜人工授精師は、家畜人工授精を行うときは、家畜人工授精師免許証を携帶し、且つ、家畜人工授精に係る家畜の飼養者の要求があるときは、これを呈示しなければならない。
2 家畜人工授精師は、家畜人工授精用精液の注入を受けた雌の家畜の飼養者から授精証明書の交付を要求されたとき又は家畜人工授精用精液を採取した雄の家畜の飼養者からその採取に関する証明を要求されたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
(家畜人工授精師の届出)
第二十三條 家畜人工授精師は、毎年十二月三十一日現在において、その氏名、住所その他省令で定める事項を、翌年一月三十一日までにその住所地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。
(家畜人工授精所の開設の許可)
第二十四條 家畜人工授精所を開設しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、国又は都道府県が開設する家畜人工授精所については、この限りでない。
(家畜人工授精所の開設の許可を與えない場合)
第二十五條 前條の許可は、申請に係る施設が、家畜人工授精を適確に、且つ、衛生的に実施するため必要な省令で定める構造、設備及び器具を備えていない場合には、與えない。
2 前條の許可は、当該施設の設置の場所が風紀上不適当であるときは、與えないことができる。
(家畜人工授精所の開設の許可の取消及び使用の停止)
第二十六條 都道府県知事は、家畜人工授精所の開設者から申請があつたときは、その開設の許可を取り消さなければならない。
2 都道府県知事は、家畜人工授精所が前條第一項の構造、設備及び器具を欠くに至つたとき又は家畜人工授精所の開設者がこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定若しくはこれらに基く処分に違反したときは、その開設の許可を取り消し、又はその使用の停止を命ずることができる。
3 第十九條第三項から第五項までの規定は、前項の場合に準用する。
(家畜人工授精所の種畜)
第二十七條 家畜人工授精所の開設者は、都道府県知事が畜産に関する專門的知識又は経験を有する者の意見をきいて定めた規格に適合する雄の家畜を少くとも一頭所有し、若しくは占有し、又は他人の飼養する家畜であつて規格に適合するものの家畜人工授精用精液を契約等により提供できるようにしておかなければならない。但し、家畜人工授精用精液の採取をしない家畜人工授精所については、この限りでない。
2 家畜人工授精所の開設者は、前項但書の場合を除き、同項の家畜の種類、名前、生年月日及び血統を都道府県知事に届け出なければならない。
(家畜人工授精所の管理)
第二十八條 家畜人工授精所の開設者は、みずから家畜人工授精師であつてその家畜人工授精所を管理する場合の外、その家畜人工授精所を管理させるために、家畜人工授精師を置かなければならない。
(家畜人工授精用精液提供の義務)
第二十九條 家畜人工授精所の開設者は、その家畜人工授精所において家畜人工授精用精液の提供を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
(名称の独占)
第三十條 家畜人工授精所でなければ、その名称中に家畜人工授精所たることを示す文字を用いてはならない。
(国又は都道府県の開設する家畜人工授精所等)
第三十一條 国又は都道府県が開設する家畜人工授精所その他家畜人工授精を行うため国又は都道府県が開設する施設は、第二十五條第一項の構造、設備及び器具を備えなければならない。
(家畜人工授精師の免許の申請手続等)
第三十二條 この章に規定するものの外、第十五條の家畜人工授精簿の様式、第十六條第二項第二号の講習会及び修業試験の方法、家畜人工授精師の免許及び家畜人工授精所の開設の許可の申請手続並びに家畜人工授精師免許証の交付、書換交付、再交付及び返納に関し必要な事項は、省令で定める。