(目的)
第一条 この法律は、飼育動物の診療施設の開設及び管理に関し必要な事項並びに獣医療を提供する体制の整備のために必要な事項を定めること等により、適切な獣医療の確保を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「飼育動物」とは、獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)第一条の二に規定する飼育動物をいう。
2 この法律において「診療施設」とは、獣医師が飼育動物の診療の業務を行う施設をいう。
(診療施設の開設の届出)
第三条 診療施設を開設した者(以下「開設者」という。)は、その開設の日から十日以内に、当該診療施設の所在地を管轄する都道府県知事に農林水産省令で定める事項を届け出なければならない。当該診療施設を休止し、若しくは廃止し、又は届け出た事項を変更したときも、同様とする。
(診療施設の構造設備の基準)
第四条 診療施設の構造設備は、農林水産省令で定める基準に適合したものでなければならない。
(診療施設の管理)
第五条 開設者は、自ら獣医師であってその診療施設を管理する場合のほか、獣医師にその診療施設を管理させなければならない。
2 前項の規定により診療施設を管理する者(以下「管理者」という。)が、その構造設備、医薬品その他の物品の管理及び飼育動物の収容につき遵守すべき事項については、農林水産省令で定める。
(診療施設の使用制限命令等)
第六条 都道府県知事は、診療施設の構造設備が第四条の基準に適合していないと認めるとき、又は診療施設に関し前条第二項に規定する事項が遵守されていないと認めるときは、その開設者に対し、期間を定めて、その全部若しくは一部の使用を制限し、若しくは禁止し、又は期限を定めて、修繕若しくは改築を行うべきことその他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
(往診診療者等への適用等)
第七条 往診のみによって飼育動物の診療の業務を自ら行う獣医師及び往診のみによって獣医師に飼育動物の診療の業務を行わせる者(以下「往診診療者等」という。)については、その住所を診療施設とみなして、第三条の規定を適用する。
2 第五条の規定は、農林水産省令で定める診療用機器その他の物品(以下「診療用機器等」という。)を所有し、又は借り受けてこれを使用する往診診療者等について準用する。この場合において、同条中「診療施設」とあり、及び「構造設備、医薬品その他の物品の管理及び飼育動物の収容」とあるのは、「診療用機器等」と読み替えるものとする。
3 都道府県知事は、診療用機器等に関し前項において読み替えて準用する第五条第二項に規定する事項が遵守されていないと認めるときは、その診療用機器等を所有し、又は借り受けてこれを使用する往診診療者等に対し、期限を定めて、必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
(報告の徴収及び立入検査)
第八条 農林水産大臣又は都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、又はその職員に、診療施設に立ち入り、その構造設備、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 農林水産大臣又は都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、往診診療者等又は前条第二項において読み替えて準用する第五条第二項の管理者に対し、必要な報告を命じ、又は検査のため診療用機器等、帳簿、書類その他の物件を提出させることができる。
3 第一項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(国の開設する診療施設の特例)
第九条 国の開設する診療施設に関しては、この法律の規定の適用について、政令で特別の定めをすることができる。
(獣医療を提供する体制の整備のための基本方針)
第十条 農林水産大臣は、獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
二 診療施設の整備及び獣医師の確保に関する目標の設定に関する事項
三 獣医療を提供する体制の整備が必要な地域の設定に関する事項
四 診療施設その他獣医療に関連する施設の相互の機能及び業務の連携に関する基本的事項
六 その他獣医療を提供する体制の整備に関する重要事項
3 農林水産大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
4 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、獣医事審議会の意見を聴かなければならない。
5 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(都道府県計画)
第十一条 都道府県は、農林水産省令で定めるところにより、当該都道府県における獣医療を提供する体制の整備を図るための計画(以下「都道府県計画」という。)を定めることができる。
2 都道府県計画においては、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、基本方針の内容に即するものでなければならない。
一 整備を行う診療施設の内容その他の診療施設の整備に関する目標
四 相互の機能及び業務の連携を行う施設の内容及びその方針
五 診療上必要な技術の研修の実施その他の獣医療に関する技術の向上に関する事項
六 その他獣医療を提供する体制の整備に関し必要な事項
3 都道府県は、都道府県計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、当該都道府県計画に定める前項第一号及び第三号に規定する事項について、農林水産大臣に協議しなければならない。
4 都道府は、都道府県計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、農林水産大臣に報告しなければならない。
(関係団体の協力)
第十二条 都道府県知事は、都道府県計画の達成に資するため必要があると認めるときは、獣医師が組織する団体、農業者が組織する団体その他の団体に対し、獣医療の提供、研修の実施その他の必要な協力を求めるものとする。
(設備等の提供)
第十三条 開設者及び管理者は、都道府県計画の達成に資するため、その診療施設の業務に差し支えない限り、その建物の全部又は一部、設備、器械及び器具をその診療施設に勤務しない獣医師の診療、研究又は研修のために利用させるように努めるものとする。
(診療施設整備計画の認定)
第十四条 都道府県計画に基づいて診療施設の整備を図ろうとする者は、診療施設の整備に関する計画(以下「診療施設整備計画」という。)を作成し、これを都道府県知事に提出して、当該診療施設整備計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 診療施設整備計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
三 診療施設の整備を実施するのに必要な資金の額及びその調達方法
3 都道府県知事は、第一項の認定の申請があった場合において、農林水産省令で定めるところにより、その診療施設整備計画が、都道府県計画に照らし適切なものであり、かつ、畜産業の振興に資するための診療施設の整備に係るものであると認めるときは、その認定をするものとする。
4 前三項に規定するもののほか、診療施設整備計画の認定及びその取消しに関し必要な事項は、農林水産省令で定める。
(農林漁業金融公庫からの資金の貸付け)
第十五条 農林漁業金融公庫は、農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)第十八条第一項、第四項及び第五項、第十八条の二第一項、第十八条の三第一項、第十八条の四第一項並びに附則第二十三項に規定する業務のほか、前条第一項の認定を受けた者に対し、当該認定に係る診療施設整備計画に従って診療施設の整備を実施するために必要な長期かつ低利の資金であって他の金融機関が融通することを困難とするもののうち農林水産大臣及び大蔵大臣の指定するものの貸付けの業務を行うことができる。
2 前項に規定する資金の貸付けの利率、償還期限及び据置期間については、政令で定める範囲内で、農林漁業金融公庫が定める。
3 第一項の規定により農林漁業金融公庫が行う同項に規定する資金の貸付けについての農林漁業金融公庫法第二十九条第二項、第三十条第二項第一号及び第三十六条第三号の規定の適用については、同法第二十九条第二項及び第三十条第二項第一号中「融通法」とあるのは「獣医療法」と、同法第三十六条第三号中「附則第二十三項」とあるのは「附則第二十三項並びに獣医療法第十五条第一項」とする。
(基本方針等の達成のための援助)
第十六条 国及び都道府県は、基本方針及び都道府県計画の達成に資するため、開設者及び管理者その他の関係者に対する助言、指導その他の援助の実施に努めるものとする。
(広告の制限)
第十七条 何人も、獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。第二号を除き、以下この条において同じ。)又は診療施設の業務に関しては、次に掲げる事項を除き、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、獣医師又は診療施設の業務に関する技能、療法又は経歴に関する事項のうち、広告しても差し支えないものとして農林水産省令で定めるものは、広告することができる。この場合において、農林水産省令で定めるところにより、その広告の方法その他の事項について必要な制限をすることができる。
3 農林水産大臣は、前項の農林水産省令を制定し、又は改廃しようとするときは、獣医事審議会の意見を聴かなければならない。
(聴聞)
第十八条 都道府県知事は、第六条又は第七条第三項の規定による命令をしようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、期日及び場所を指定して、聴聞を行わなければならない。
2 前項の聴聞に際しては、当該命令に係る者に、意見を述べ、及び証拠を提出する機会を与えなければならない。
(経過措置)
第十九条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(罰則)
第二十条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第六条又は第七条第三項の規定による命令に違反した者
第二十一条 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第五条第一項(第七条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
三 第八条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、同条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同条第二項の規定による物件の提出をしなかった者
第二十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。