家畜改良増殖法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第171号
公布年月日: 昭和36年11月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

家畜の改良増殖の成果を計画的かつ効率的に農業者にもたらし、畜産の発展とともに農業経営の改善に貢献する必要性が高まっているため、家畜改良増殖法の一部改正を行うものである。改正の主な内容は、法の目的規定の改正、国・都道府県の施策義務の明確化、家畜改良増殖目標の設定と公表、都道府県による改良増殖計画の策定、種畜・人工授精に関する規定の整備、家畜登録事業の規制、家畜改良増殖審議会の設置などである。

参照した発言:
第39回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号

審議経過

第39回国会

衆議院
(昭和36年10月4日)
参議院
(昭和36年10月5日)
(昭和36年10月10日)
衆議院
(昭和36年10月11日)
(昭和36年10月12日)
(昭和36年10月13日)
参議院
(昭和36年10月13日)
(昭和36年10月17日)
(昭和36年10月19日)
(昭和36年10月20日)
(昭和36年10月21日)
衆議院
(昭和36年10月31日)
家畜改良増殖法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年十一月一日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百七十一号
家畜改良増殖法の一部を改正する法律
家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一章 総則(第一条―第三条)」を
第一章
総則(第一条―第三条)
第一章の二
家畜の改良増殖に関する目標等(第三条の二―第三条の五)
に、「第三章 家畜人工授精(第十一条―第三十二条)」を
第三章
家畜人工授精(第十一条―第三十二条)
第三章の二
家畜登録事業(第三十二条の二―第三十二条の五)
第三章の三
家畜改良増殖審議会(第三十二条の六―第三十二条の十一)
に改める。
第一条中「種畜を確保し、その利用を増強し、その他」を「家畜の改良増殖を計画的に行なうための措置並びにこれに関連して必要な種畜の確保及び家畜の登録に関する制度、家畜人工授精に関する規制等について定めて、」に、「図ること」を「図り、あわせて農業経営の改善に資すること」に改める。
第二条の見出し中「を促進する義務」を「の促進と家畜の導入」に改め、同条中「国又は都道府県は、第二章以下において規定する事項以外の事項であつても」を「国及び都道府県は、」に改め、同条に次の二項を加える。
2 国及び都道府県は、前項の規定により、家畜の改良増殖の促進に有効な事項として、助成等の援助措置を講じ又は指導を行なうに当たつては、有畜農家育成基準に準拠して家畜の導入を行なう農業者に優良な資質を有する家畜の導入が行なわれることとなることその他当該援助措置又は指導が家畜を導入してその農業経営の改善を図る農業者の当該経営の改善の促進に資することとなるように努めるものとする。
3 前項の有畜農家育成基準は、農業経営の改善を図るため、第三条の二第一項の家畜改良増殖目標、農業経営の状況及び改善の目標等を勘案して農林大臣が有畜農業経営の育成に関して定める基準とする。
第一章の次に次の一章を加える。
第一章の二 家畜の改良増殖に関する目標等
(家畜改良増殖目標)
第三条の二 農林大臣は、政令で定めるところにより、牛、馬、めん羊、山羊、豚及び政令で定めるその他の家畜(次章及び第三章を除き、以下単に「家畜」という。)につき、その種類ごとに、その改良増殖に関する目標(以下「家畜改良増殖目標」という。)を定め、これを公表しなければならない。
2 家畜改良増殖目標は、家畜の能力、体型、頭数等についての一定期間における向上に関する目標を定めるものとし、その期間における家畜の飼養管理及び利用の動向並びに畜産物の需要の動向に即するものでなければならない。
3 農林大臣は、家畜改良増殖目標を定めようとするときは、家畜改良増殖審議会の意見をきかなければならない。
(都道府県の家畜改良増殖計画)
第三条の三 都道府県知事は、家畜につき、その種類ごとに、家畜改良増殖目標に即し、当該都道府県におけるその改良増殖に関する計画(以下「家畜改良増殖計画」という。)を定めることができる。
2 家畜改良増殖計画には、次の各号に掲げる事項を定めるものとする。
一 家畜の改良増殖の目標
二 計画の期間
三 種付け又は家畜人工授精の用に供する家畜の雄で優良な血統、能力及び体型を有するものの配置、利用及び更新に関する事項
四 前号に規定する家畜の雄の生産施設、家畜人工授精施設その他家畜改良増殖施設の整備拡充に関する事項
五 家畜の能力検定の実施及び改善に関する事項
六 講習会、共進会等の開催その他家畜改良増殖技術の改良及び普及に関する事項
七 その他家畜の改良増殖を図るために必要な事項
3 都道府県知事は、家畜改良増殖計画を定めようとするときは、畜産に関する専門的知識又は経験を有する者の意見をきかなければならない。
4 都道府県知事は、家畜改良増殖計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(国の援助)
第三条の四 国は、都道府県知事が前条第一項の規定により家畜改良増殖計画を定めた場合には、当該都道府県に対し、国の所有する優良な資質を有する家畜の貸付けその他当該家畜改良増殖計画の実施に必要な援助を行なうように努めるものとする。
(家畜改良増殖目標等と家畜の改良増殖のための措置)
第三条の五 農林大臣又は都道府県知事は、次条第三項の家畜の血統、能力及び体型による等級に係る基準又は第二十七条第一項の規格を定め、その他次章から第四章までの規定を実施するに当たつては、それぞれ、家畜改良増殖目標又は家畜改良増殖計画に即し、その達成に資することとなるように努めるものとする。
第四条の見出し中「種付」を「種付け等」に改め、同条第一項中「種付(家畜人工授精を含む。以下同じ。)」を「種付け又は家畜人工授精の用に供する精液(以下「家畜人工授精用精液」という。)の採取」に、「種付の用」を「種付け又は家畜人工授精用精液の採取の用」に改める。
第五条の見出し中「種付」を「種付け等」に改め、同条中「種付の用」を「種付け又は家畜人工授精用精液の採取の用」に改める。
第九条第一項中「種付」を「種付け」に改め、同条第二項中「種付に関する事項」を「種付け及び家畜人工授精用精液の採取に関する事項」に改め、同条第四項中「種付を」を「種付けを」に改め、「若しくは精液採取証明書」を削り、「家畜人工授精の用に供する精液(以下「家畜人工授精用精液」という。)」を「家畜人工授精用精液」に、「精液採取に関する証明」を「精液採取に関する証明書」に改める。
第十条中「精液採取証明書」を「精液採取に関する証明書」に改める。
第十三条に次の一項を加える。
4 第二項但書の場合には、当該家畜人工授精師は、当該家畜人工授精用精液の注入を受けた雌の家畜の所有者から精液採取に関する証明書を要求されたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
第二十二条第二項中「採取に関する証明」を「精液採取に関する証明書」に改める。
第三十二条中「第十五条の家畜人工授精簿」を「第十三条第二項の家畜人工授精用精液証明書、同条第四項の精液採取に関する証明書、第十五条の家畜人工授精簿並びに第二十二条第二項の授精証明書及び精液採取に関する証明書」に改める。
第三章の次に次の二章を加える。
第三章の二 家畜登録事業
(家畜登録事業に係る承認)
第三十二条の二 家畜につき、その血統、能力又は体型を審査して一定の基準に適合するものを登録する事業(以下「家畜登録事業」という。)を行なおうとする者は、省令で定める手続により、当該事業の実施に関する規程(以下「登録規程」という。)を定め、これにつき農林大臣の承認を受けなければならない。
2 登録規程においては、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 登録する家畜の種類
二 登録の種類及び方法
三 審査の基準に関する事項
四 登録手数料に関する事項
五 家畜登録簿に関する事項
3 家畜登録事業を行なう者(以下「家畜登録機関」という。)は、登録規程を変更しようとするときは、省令で定める手続により、農林大臣の承認を受けなければならない。
4 農林大臣は、登録規程につき第一項又は前項の承認の申請があつたときは、当該登録規程又は当該変更後の登録規程の内容が、家畜改良増殖目標に即するものと認められない場合及び家畜登録事業の公正な運営を行なうのに適切なものと認められない場合を除き、その承認をしなければならない。
5 家畜登録機関は、家畜登録事業を廃止しようとするときは、省令で定める手続により、その旨を農林大臣に届け出なければならない。
(国の援助)
第三十二条の三 国は、家畜登録事業の公正な運営を確保するため、家畜登録機関に対して、助言、指導その他必要な援助を行なうように努めるものとする。
(必要措置命令)
第三十二条の四 農林大臣は、家畜登録機関の業務がその登録規程に違反すると認めるときは、当該家畜登録機関に対し、期間を定めて、その業務運営の改善に関し必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
(業務の停止命令)
第三十二条の五 農林大臣は、家畜登録機関がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、家畜登録事業の業務の停止を命ずることができる。
2 第十九条第三項から第五項までの規定は、前項の場合に準用する。
第三章の三 家畜改良増殖審議会
(設置)
第三十二条の六 農林省に家畜改良増殖審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(権限)
第三十二条の七 審議会は、第三条の二第三項の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、農林大臣の諮問に応じ、家畜の改良増殖に関する重要事項を調査審議する。
2 審議会は、前項に規定する事項に関し、農林大臣に意見を述べることができる。
(組織)
第三十二条の八 審議会は、委員二十人以内で組織する。
2 委員は、前条第一項に規定する事項に関し学識経験を有する者のうちから農林大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
(会長)
第三十二条の九 審議会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめ会長が指名する委員がその職務を代理する。
(部会)
第三十二条の十 審議会に、部会を置くことができる。
2 部会に属すべき委員は、会長が指名する。
3 審議会は、その定めるところにより、部会の議決をもつて審議会の議決とすることができる。
(政令への委任)
第三十二条の十一 この法律に規定するもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第三十四条中「種付」を「種付け、家畜人工授精」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
農林大臣は、家畜登録事業の公正な運営を図るため必要があると認めるときは、家畜登録機関から家畜登録事業に関し必要な事項の報告を求めることができる。
第三十八条に次の二号を加える。
三 第三十二条の二第一項の規定に違反して、農林大臣の承認を受けないで家畜登録事業を行なつた者
四 第三十二条の二第三項の規定に違反して、農林大臣の承認を受けないで登録規程を変更した者
第四十条第一号中「第四項」の下に「、第十三条第四項」を加え、同条中第六号を第七号とし、第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 第三十二条の五の規定による業務の停止の命令に違反した者
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の施行の際現に改正後の第三十二条の二第一項の家畜登録事業を行なつている者は、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日までに、同項の規定により、農林大臣に対し、その登録規程につき同項の承認の申請をしなければならない。
3 前項に規定する者は、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日(その日までに改正後の第三十二条の二第一項の承認を受けた者については、その承認を受けた時、その日までにした当該承認の申請に対し承認をするかどうかの処分がその日までになかつた者についてはその処分のある時。次項において「経過措置期限」という。)までは、その登録規程につき改正後の第三十二条の二第一項の承認を受けないでも、同項の家畜登録事業を行なうことができる。
4 附則第二項に規定する者については、経過措置期限までは、改正後の第三十二条の二第三項、第三十二条の四及び第三十二条の五の規定は、適用しない。
5 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第一項の表中
飼料需給安定審議会
飼料需給安定法による飼料の需給及び価格の安定に関する重要事項を審議すること。
家畜改良増殖審議会
家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。
飼料需給安定審議会
飼料需給安定法による飼料の需給及び価格の安定に関する重要事項を審議すること。
に改める。
大蔵大臣 水田三喜男
農林大臣 河野一郎
内閣総理大臣 池田勇人