家畜伝染病予防法
法令番号: 法律第百六十六号
公布年月日: 昭和26年5月31日
法令の形式: 法律
家畜伝染病予防法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十六号
家畜伝染病予防法
目次
第一章
総則(第一條─第三條)
第二章
家畜の伝染性疾病の発生の予防(第四條─第十二條)
第三章
家畜伝染病のまん延の防止(第十三條─第三十五條)
第四章
輸出入検疫(第三十六條─第四十六條)
第五章
雑則(第四十七條─第六十二條)
第六章
罰則(第六十三條─第六十六條)
附則
第一章 総則
(目的)
第一條 この法律は、家畜の伝染性疾病(寄生虫病を含む。以下同じ。)の発生を予防し、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「家畜伝染病」とは、左の表の上欄に掲げる伝染性疾病であつてそれぞれ相当下欄に掲げる家畜についてのものをいう。
伝染性疾病の種類
家畜の種類
一   牛疫
牛、めん羊、山羊、豚
二   牛肺疫
三   口蹄疫
牛、めん羊、山羊、豚
四   流行性感冒
五   流行性脳炎
牛、馬、めん羊、山羊、豚
六   狂犬病
牛、馬、めん羊、山羊、豚
七   炭疽
牛、馬、めん羊、山羊、豚
八   気腫疽
牛、めん羊、山羊、豚
九   出血性敗血症
牛、めん羊、山羊、豚
十   ブルセラ病
牛、めん羊、山羊、豚
十一  結核病
牛、山羊
十二  ピロプラズマ病(省令で定める病原体によるものに限る。)
牛、馬
十三  トリパノゾーマ病(省令で定める病原体によるものに限る。)
牛、馬
十四  アナプラズマ病
十五  トリコモナス病
十六  鼻疽
十七  仮性皮疽
十八  馬伝染性貧血
十九  馬パラチフス
二十  羊痘
めん羊
二十一 かいせん
めん羊
二十二 豚コレラ
二十三 豚丹毒
二十四 家きんコレラ
鶏、あひる
二十五 家きんペスト
鶏、あひる
二十六 ニューカツスル病
鶏、あひる
二十七 ひな白痢
鶏、あひる
2 この法律において「患畜」とは、家畜伝染病にかかつている家畜をいい、「疑似患畜」とは 患畜である疑がある家畜及び牛疫、牛肺疫、口蹄疫、狂犬病、鼻疽又は羊痘の病原体に触れたため、又は触れた疑があるため、患畜となるおそれがある家畜をいう。
(管理者に対する適用)
第三條 この法律中家畜、物品又は施設の所有者に関する規定(第五十六條、第五十八條及び第五十九條の規定を除く。)は、当該家畜、物品又は施設を管理する所有者以外の者(鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機による運送業者で当該家畜、物品又は施設の運送の委託を受けた者を除く。)があるときは、その者に対して適用する。
第二章 家畜の伝染性疾病の発生の予防
(死亡の届出義務)
第四條 牛、馬、めん羊、山羊又は豚の所有者は、これらの家畜が疾病のため死亡したときは、省令で定める手続に従い、遅滯なく、その旨を当該家畜の死体の所在地を管轄する市町村長に届け出なければならない。但し、鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機により運送業者が運送中の家畜については、当該家畜の所有者がすべき届出は、その者が遅滯なくその届出をすることができる場合を除き、運送業者がしなければならない。
2 前項但書の家畜についての同項の届出は、運輸上支障があるときは、当該貨物の終着地を管轄する市町村長にすることができる。
3 第一項の規定は、当該家畜について既に第十三條第一項の規定による届出をしている場合、家畜が第四十條又は第四十五條の規定による検査中に死亡した場合その他省令で定める場合には、適用しない。
4 市町村長は、第一項の届出があつたときは、省令で定める手続に従い、その旨を家畜防疫員に通報するとともに都道府県知事に報告しなければならない。
5 市町村長は、第一項の規定による届出をした者から請求があつたときには、省令の定めるところにより、届出を受けた旨の証明書を交付しなければならない。
(移動のための健康証明書の携行)
第五條 政令で定める家畜の所有者は、家畜の伝染性疾病にかかつていない旨の健康証明書とともにするのでなければ、当該家畜を政令で定める区域をこえて移動させてはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 短期の一定期間内に当該区域の境界をこえて往復させる場合
二 と殺の目的をもつてと場に直送する旨の都道府県知事が発行する証明書とともに移動させる場合
三 試験研究の用に供するためその他省令で定める特別の事由により都道府県知事の許可を受けて当該許可書とともに移動させる場合
四 第四十四條第一項の規定による輸入検疫証明書又は第四十五條第三項の規定による輸出検疫証明書の交付を受けた日から三十日以内に当該証明書とともに移動させる場合
2 前項の政令で定める区域は、都道府県の区域又はこれをこえる区域でなければならない。
3 第一項の健康証明書は、都道府県知事又は獣医師が省令で定める基準に従つて発行するものとし、その有効期間は、三十日とする。
4 第一項第一号の一定期間並びに同項の健康証明書、同項第二号の証明書及び同項第三号の許可書の様式は、省令で定める。
5 運送業者は、第一項の家畜の運送については、同項の違反を生じないようにしなければならない。
(検査、注射、薬浴又は投薬)
第六條 都道府県知事は、家畜の伝染性疾病の発生を予防するため必要があるときは、家畜の所有者に対し、家畜について家畜防疫員の検査、注射、薬浴又は投薬を受けるべき旨を命ずることができる。
2 前項の命令は、省令で定める手続に従い、その実施期日の十日前までに左に掲げる事項を公示して行う。但し、緊急の場合には、その期間を三日まで短縮することができる。
一 実施の目的
二 実施する区域
三 実施の対象となる家畜の種類及び範囲
四 実施の期日
五 検査、注射、薬浴又は投薬の別及びその方法
(検査、注射、薬浴又は投薬を行つた旨の表示)
第七條 都道府県知事は、前條第一項の規定により検査、注射、薬浴又は投薬を受けた家畜に、省令の定めるところにより、検査、注射、薬浴又は投薬を行つた旨のらく印、いれずみその他の標識を家畜防疫員に附させることができる。
(証明書の交付)
第八條 都道府県知事は、第六條第一項の規定による検査、注射、薬浴又は投薬を受けた家畜の所有者から請求があつたときは、省令の定めるところにより、検査、注射、薬浴又は投薬を行つた旨の証明書を交付しなければならない。
(消毒方法等の実施)
第九條 都道府県知事は、家畜の伝染性疾病の発生を予防するため必要があるときは、区域を限り、家畜の所有者に対し、省令の定めるところにより、消毒方法、清潔方法又はねずみ、昆虫等の駆除方法を実施すべき旨を命ずることができる。
(へい獣取扱場についての制限)
第十條 へい獣取扱場においては、疾病のため死亡した牛、馬、めん羊、山羊及び豚は、左の各号の一に該当する場合でなければ、これを解体し、埋却し、又は燒却してはならない。
一 第四條第五項の証明書がある場合
二 第二十一條第一項本文の家畜防疫員の指示に従い燒却し、若しくは埋却する場合、同項但書に規定する場合又は同條第三項の許可を受けて解体する場合
(化製場についての制限)
第十一條 化製場においては、農林大臣が家畜の伝染性疾病の発生を予防するため必要があると認めて指定する骨肉皮毛類については、省令で定める基準に適合する設備及び方法によるものでなければ、これを原料とする製造を行つてはならない。
(家畜集合施設についての制限)
第十二條 競馬、家畜市場、家畜共進会等家畜を集合させる催物であつて農林大臣の指定するものの開催者は、その開催中、省令の定めるところにより、家畜診断所、隔離所、汚物だめその他家畜の伝染性疾病の発生を予防するために必要な設備を備えなければならない。
2 前項の規定により家畜診断所を備えなければならない催物の開催者は、その開催中、その家畜診断所において家畜の伝染性疾病にかかつていないと診断された家畜及び第五條第一項の健康証明書のある家畜以外の家畜をその開催の場所においてけい留させてはならない。但し、前項の隔離所にけい留する場合は、この限りでない。
第三章 家畜伝染病のまん延の防止
(患畜等の届出義務)
第十三條 家畜が患畜又は疑似患畜となつたことを発見したときは、当該家畜を診断し、又はその死体を検案した獣医師(獣医師による診断又は検案を受けていない家畜又はその死体についてはその所有者)は、省令で定める手続に従い、遅滯なく、当該家畜又はその死体の所在地を管轄する市町村長にその旨を届け出なければならない。但し、鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機により運送業者が運送中の家畜については、当該家畜の所有者がなすべき届出は、その者が遅滯なくその届出をすることができる場合を除き、運送業者がしなければならない。
2 前項の規定による届出については、第四條第二項及び第三項の規定を準用する。
3 市町村長は、第一項の届出があつたときは、省令で定める手続に従い、遅滯なく、その旨を公示し、家畜防疫員及び隣接市町村長に通報し、且つ、都道府県知事に報告しなければならない。
4 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、省令で定める手続に従い、その旨を公示するとともに農林大臣に報告し、且つ、関係都道府県知事に通報しなければならない。
(隔離の義務)
第十四條 患畜又は疑似患畜の所有者は、遅滯なく、当該家畜を隔離しなければならない。但し、次項の規定による家畜防疫員の指示があつたときにおいて、その指示に従つて隔離を解く場合は、この限りでない。
2 家畜防疫員は、前項の規定により隔離された家畜につき隔離を必要としないと認めるときは、その者に対し、隔離を解いてもよい旨を指示し、又はその指示にあわせて、家畜伝染病のまん延を防止するため必要な限度において、けい留、一定の範囲をこえる移動の制限その他の措置をとるべき旨を指示しなければならない。
3 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、患畜若しくは疑似患畜と同居していたため、又はその他の理由により患畜となるおそれがある家畜(疑似患畜を除く。)の所有者に対し、十日をこえない範囲内において期間を限り、当該家畜を一定の区域外へ移動させてはならない旨を指示することができる。
(通行しや断)
第十五條 都道府県知事又は市町村長は、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、省令で定める手続に従い、四十八時間をこえない範囲内において期間を定め、患畜又は牛疫、牛肺疫、口蹄疫、鼻疽若しくは羊痘の疑似患畜の所在の場所(これに隣接して家畜伝染病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある場合を含む。)とその他の場所との通行をしや断することができる。
(と殺の義務)
第十六條 左に掲げる家畜の所有者は、家畜防疫員の指示に従い、直ちに当該家畜を殺さなければならない。但し、省令で定める場合には、この限りでない。
一 牛疫、牛肺疫、口蹄疫、鼻疽又は羊痘の患畜
二 牛疫又は口蹄疫の疑似患畜
2 前項の家畜の所有者は、同項但書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該家畜を殺してはならない。
(殺処分)
第十七條 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、左に掲げる家畜の所有者に期限を定めて当該家畜を殺すべき旨を命ずることができる。
一 流行性脳炎、狂犬病、炭疽、気腫疽、出血性敗血症、ブルセラ病、結核病、ピロプラズマ病、トリパノゾーマ病、アナプラズマ病、仮性皮疽、馬伝染性貧血、馬パラチフス、かいせん、豚コレラ、豚丹毒、家きんコレラ、家きんペスト、ニユーカツスル病又はひな白痢の患畜
二 牛肺疫の疑似患畜
2 家畜の所有者又はその所在が知れないため前項の命令をすることができない場合において緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができる。
(と殺の届出)
第十八條 患畜又は疑似患畜の所有者は、当該家畜を殺すときは、前二條の規定により殺す場合その他省令で定める場合を除き、あらかじめ家畜防疫員にその旨を届け出なければならない。
(と殺に関する指示)
第十九條 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、第十七條の命令又は前條の届出に係る家畜につき、殺す場所又は殺す方法を指示することができる。
(病性鑑定のための処分)
第二十條 都道府県知事は、病性鑑定のため必要があるときは、家畜防疫員に家畜の死体を剖検させ、又は剖検のため疑似患畜を殺させることができる。
2 家畜防疫員は、病性鑑定のため必要があるときは、疑似患畜の所有者に対し、七日をこえない範囲内において期間を定め、当該家畜を殺してはならない旨を指示することができる。
(死体の燒却等の義務)
第二十一條 左に掲げる患畜又は疑似患畜の死体の所有者は、家畜防疫員が省令で定める基準に基いてする指示に従い、遅滯なく、当該死体を燒却し、又は埋却しなければならない。但し、病性鑑定又は学術研究の用に供するため都道府県知事の許可を受けた場合その他省令で定める場合は、この限りでない。
一 牛疫、牛肺疫、口蹄疫、流行性感冒、狂犬病、炭疽、気腫疽、出血性敗血症、鼻疽、仮性皮疽、羊痘、豚コレラ、豚丹毒、家きんコレラ、家きんペスト又はニユーカツスル病の患畜又は疑似患畜の死体
二 流行性脳炎、ブルセラ病、結核病、馬伝染性貧血、馬パラチフス、かいせん又はひな白痢の患畜又は疑似患畜の死体(と場において殺したものを除く。)
2 前項の死体は、同項但書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該死体を燒却し、又は埋却してはならない。
3 第一項の規定により燒却し、又は埋却しなければならない死体は、家畜防疫員の許可を受けなければ、他の場所に移し、損傷し、又は解体してはならない。
(へい獣処理場等に関する法律の特例)
第二十二條 第二十條第一項の規定による剖検のため家畜の死体を解体する場合及び前條第一項の規定により家畜の死体を燒却し、又は埋却する場合には、へい獣処理場等に関する法律(昭和二十三年法律第百四十号)第二條第一項の規定(へい獣処理場外における処理の禁止)は、適用しない。
(汚染物品の燒却等の義務)
第二十三條 家畜伝染病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある物品の所有者(当該物品が鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機により運送中のものである場合には、当該物品の所有者又は運送業者。次項において同じ。)は、家畜防疫員が省令で定める基準に基いてする指示に従い、遅滯なく、当該物品を燒却し、埋却し、又は消毒しなければならない。但し、ひな白痢の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある物品その他省令で定める物品は、指示をまたないで燒却し、埋却し、又は消毒することを妨げない。
2 前項の物品(同項但書の物品を除く。)の所有者は、同項の指示があるまでは、当該物品を燒却し、埋却し、又は消毒してはならず、また、家畜防疫員の許可を受けなければ、これを他の場所に移し、使用し、又は洗じようしてはならない。
3 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、第一項の物品(同項但書の物品を除く。)について、同項の指示に代えて、自らこれを燒却し、埋却し、又は消毒することができる。
(発掘の禁止)
第二十四條 第二十一條第一項又は前條第一項の規定により家畜の死体又は家畜伝染病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品を埋却した土地は、省令で定める期間内は、掘つてはならない。但し、都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
(畜舍等の消毒の義務)
第二十五條 患畜若しくは疑似患畜又はこれらの死体の所在した畜舍、船車その他これに準ずる施設は、家畜防疫員が省令で定める基準に基いてする指示に従い、その所有者が消毒しなければならない。但し、ひな白痢の患畜若しくは疑似患畜又はこれらの死体の所在した施設その他省令で定める施設は、指示をまたないで、消毒することを妨げない。
2 前項の畜舍、船車その他これに準ずる施設の所有者は、同項但書の場合を除き、家畜防疫員の指示があるまでは、当該施設を消毒してはならない。
3 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、第一項の施設(同項但書の施設を除く。)について、同項の指示に代えて、自らこれを消毒することができる。
(航海中の特例)
第二十六條 航海中の船舶において、患畜若しくは疑似患畜が死亡したとき、又は物品若しくは畜舍その他これに準ずる施設が家畜伝染病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれを生じたときは、当該家畜、物品若しくは施設の所有者又は当該船舶の船長(船長に代つてその職務を行う者があるときはその者)は、第二十一條、第二十三條又は前條の規定にかかわらず、省令の定めるところにより、消毒その他必要な措置をしなければならない。
(病原体に触れた者の消毒の義務)
第二十七條 家畜伝染病の病原体に触れ、又は触れたおそれがある者は、遅滯なく、自らその身体を消毒しなければならない。
(患畜等の表示)
第二十八條 家畜防疫員は、省令の定めるところにより、患畜及び疑似患畜について、らく印、いれずみその他の標識を附することができる。
(消毒方法等の実施)
第二十九條 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、区域を限り、家畜の所有者に対し、省令の定めるところにより、消毒方法、清潔方法又はねずみ、昆虫等の駆除方法を実施すべき旨を命ずることができる。
(検査、注射又は薬浴)
第三十條 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、家畜防疫員に、省令で定める方法により家畜の検査、注射又は薬浴を行わせることができる。
第三十一條 省令で定める牛又は馬の所有者は、都道府県知事が省令で定める方法により行う結核病又は馬伝染性貧血についての検査を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前項の検査を毎年少くとも各一回実施しなければならない。
3 第一項の検査には、第六條第二項、第七條及び第八條の規定を準用する。
(家畜等の移動の制限)
第三十二條 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、一定種類の家畜、その死体又は家畜伝染病の病原体をひろげるおそれがある物品の当該都道府県の区域内での移動、当該都道府県内への移入又は当該都道府県外への移出を禁止し、又は制限することができる。
2 農林大臣は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、省令の定めるところにより、区域を指定し、一定種類の家畜、その死体又は家畜伝染病の病原体をひろげるおそれがある物品の当該区域外への移出を禁止し、又は制限することができる。
(家畜集合施設の開催等の制限)
第三十三條 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、競馬、家畜市場、家畜共進会等家畜を集合させる催物の開催又はと場若しくは化製場の事業を停止し、又は制限することができる。
(放牧等の制限)
第三十四條 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、一定種類の家畜の放牧、種付又はふ卵を停止し、又は制限することができる。
(報告及び通報の義務)
第三十五條 都道府県知事は、この章の規定により家畜伝染病のまん延の防止のためとつた措置につき、省令の定めるところにより、その実施状況及び実施の結果を農林大臣に報告するとともに関係都道府県知事に通報しなければならない。
第四章 輸出入検疫
(輸入禁止)
第三十六條 何人も、左に掲げる物を輸入してはならない。但し、試験研究の用に供するため農林大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
一 省令で定める地域から発送され、又はこれらの地域を経由した次條各号の物であつて農林大臣の指定するもの
二 家畜の伝染性疾病の病原体
2 前項但書の許可を受けて輸入する場合には、同項の許可を受けたことを証明する書面を添えなければならない。
3 第一項但書の許可には、輸入の方法、輸入後の管理方法その他必要な條件を附することができる。
(輸入のための検査証明書の添附)
第三十七條 左に掲げる物であつて農林大臣の指定するもの(以下「指定検疫物」という。)は、輸出国の政府機関により発行され、且つ、その検疫の結果家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがないことを確かめ、又は信ずる旨を記載した検査証明書又はその写を添附してあるものでなければ、輸入してはならない。但し、動物検疫についての政府機関を有しない国から輸入する場合その他農林大臣の指定する場合は、この限りでない。
一 動物、その死体又は骨肉卵皮毛類及びこれらの容器包裝
二 前号に掲げる物を除き、家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがある敷料その他これに準ずる物
(輸入場所の制限)
第三十八條 指定検疫物は、省令で指定する港又は飛行場以外の場所で輸入してはならない。但し、第四十一條の規定により検査を受け、且つ、第四十四條の規定による輸入検疫証明書の交付を受けた物及び郵便物として輸入する物については、この限りでない。
(検疫信号)
第三十九條 外国から入港した船舶であつて指定検疫物(郵便物として輸送されたものを除く。)を積載するものは、省令の定めるところにより、入港後、遅滯なく、検疫信号を掲げなければならない。
2 前項の信号は、同項の指定検疫物について第四十一條の規定による検査を終了し、当該指定検疫物の積卸を終了し、又は出港するまでは、おろしてはならない。
(輸入検査)
第四十條 指定検疫物を輸入した者は、遅滯なくその旨を動植物検疫所に届け出て、その物につき、原状のままで、家畜防疫官から第三十六條及び第三十七條の規定の違反の有無並びに家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれの有無についての検査を受けなければならない。但し、既に次條の規定により検査を受け、且つ、第四十四條の規定による輸入検疫証明書の交付を受けた物及び郵便物として輸入した物については、この限りでない。
2 家畜防疫官は、指定検疫物以外の物が家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあるときは、輸入後遅滯なくその物につき、検査を行うことができる。
3 第一項の規定による検査は、動植物検疫所又は第三十八條の規定により指定された港若しくは飛行場内の家畜防疫官が指定した場所で行う。但し、特別の事由があるときは、農林大臣の指定するその他の場所で検査を行うことができる。
4 家畜防疫官は、家畜の伝染性疾病の病原体のひろがるのを防止するため必要があるときは、第一項の検査を受ける者に対し指定検疫物を前項の場所に送致するための順路その他の方法を指示することができる。
第四十一條 家畜防疫官は、輸入される指定検疫物又は輸入されるその他の物であつて家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、若しくは汚染しているおそれがあるものにつき、船舶又は航空機内で輸入に先だつて検査を行うことができる。
(郵便物としての輸入)
第四十二條 指定検疫物は、小形包裝物、商品見本及び小包郵便物以外の郵便物としては、輸入してはならない。
2 前項の規定に違反して輸入された指定検疫物を包有している郵便物を受け取つた者は、遅滯なく、その現品を添えてその旨を動植物検疫所に届け出て家畜防疫官の検査を受けなければならない。
第四十三條 通関手続をする郵便局は、指定検疫物を包有し、又は包有している疑のある小形包裝物、商品見本又は小包郵便物の送付を受けたときは、遅滯なく、その旨を動植物検疫所に通知しなければならない。
2 家畜防疫官は、前項の通知があつたときは、同項の小形包裝物、商品見本又は小包郵便物の検査を行う。
3 家畜防疫官は、前項の検査を行うため必要があるときは、当該郵便物の受取人にその開示を求めることができる。
4 受取人が前項の開示を拒んだとき、又は受取人に開示を求めることができないときは、家畜防疫官は、郵便局員立合の上で当該郵便物を開くことができる。
5 第二項の検査を受けていない小形包裝物、商品見本又は小包郵便物であつて指定検疫物を包有しているものを受け取つた者は、遅滯なく、その現品を添え、その旨を動植物検疫所に届け出て家畜防疫官の検査を受けなければならない。
(輸入検疫証明書の交付等)
第四十四條 家畜防疫官は、前四條の検査の結果、指定検疫物が家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがないと認められるときは、省令の定めるところにより、輸入検疫証明書を交付し、且つ、指定検疫物にらく印、いれずみその他の標識を附さなければならない。
2 家畜防疫官は、第四十條第二項又は第四十一條の規定による検査を受けた指定検疫物以外の物について、輸入検疫証明書を請求されたときは、これを交付しなければならない。
(輸出検査)
第四十五條 左に掲げる物を輸出しようとする者は、これにつき、あらかじめ、家畜防疫官の検査を受け、且つ、第三項の規定により輸出検疫証明書の交付を受けなければならない。
一 輸入国政府がその輸入に当り、家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれの有無についての輸出国の検査証明を必要としている動物その他の物
二 第三十七條各号に掲げる物であつて農林大臣が国際動物検疫上必要と認めて指定するもの
2 前項の検査については、第四十條第三項の規定を準用する。
3 家畜防疫官は、第一項の規定による検査の結果、その物が家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがないと認められるときは、省令の定めるところにより、輸出検疫証明書を交付しなければならない。
4 家畜防疫官は、国際動物検疫上、必要があるときは、前項の規定による輸出検疫証明書の交付を受けた物について再検査を行うことができる。
(検査に基く処置)
第四十六條 第四十條第一項若しくは第二項、第四十一條、第四十二條第二項、第四十三條第二項若しくは第五項又は前條第一項若しくは第四項の規定による検査において、その検査に係る物が家畜伝染病の病原体により汚染し、汚染しているおそれがあり、又は汚染するおそれがあると認められた場合における第六條から第八條まで、第十四條から第二十一條まで、第二十三條から第二十五條まで、第二十八條及び第三十條の規定の適用については、これらの規定中「都道府県知事」(第十五條の場合にあつては「都道府県知事又は市町村長」)とあるのは「動植物検疫所長」と、「家畜防疫員」とあるのは「家畜防疫官」と読み替えるものとする。
2 農林大臣は、前項の検査において、家畜伝染病以外の家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあると認められた動物その他の物につき、省令の定めるところにより、その所有者に対し、これらを隔離し、若しくは消毒すべき旨を命じ、又は家畜防疫官に隔離、注射、薬浴若しくは消毒を行わせることができる。
第五章 雑則
(農林大臣の都道府県知事に対する指示)
第四十七條 農林大臣は、家畜の伝染性疾病の発生又はまん延により、畜産に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、都道府県知事に第六條、第九條、第十七條、第二十九條から第三十一條まで、第三十二條第一項、第三十三條又は第三十四條の規定による措置を実施すべき旨を指示することができる。
(国の都道府県に対する協力)
第四十八條 農林大臣は、前條の指示をした場合又は都道府県知事から求められた場合において必要と認めるときは、その指定する家畜防疫官をして都道府県知事の指示を受け、第二章又は第三章の規定により家畜防疫員の行うべき事務に従事させることができる。
2 前項の場合には、第二章又は第三章の規定中「家畜防疫員」とあるのは、「家畜防疫員又は第四十八條第一項の規定により指定された家畜防疫官」と読み替えるものとする。
(動物用生物学的製剤等の讓與又は貸付)
第四十九條 農林大臣は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があると認めるときは、都道府県に対し、動物用生物学的製剤を讓與し、又は予防用器具を無償若しくは時価よりも低い対価で貸し付けることができる。
(動物用生物学的製剤の使用の制限)
第五十條 農林大臣の指定する動物用生物学的製剤は、都道府県知事の許可を受けなければ使用してはならない。
(立入検査等)
第五十一條 家畜防疫官又は家畜防疫員は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があるときは、競馬場、家畜市場、家畜共進会場等家畜の集合する場所、畜舍、へい獣処理場、と場、倉庫、船車、航空機又は家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがあるその他の場所に立ち入つて動物その他の物を検査し、関係者に質問し、又は検査のため必要な限度において、動物の血液、乳汁等を採取し、若しくは動物の死体その他の物を集取することができる。
2 前項の規定による立入検査、質問、採取又は集取の権限は、犯罪搜査のために認められたものと解してはならない。
(報告)
第五十二條 農林大臣又は都道府県知事は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があるときは、省令で定める手続に従い、動物の所有者、競馬、家畜市場、家畜共進会等家畜を集合させる催物の開催者又はへい獣処理場若しくはと場の所有者に対し、必要な事項についての報告を求めることができる。
(家畜防疫官及び家畜防疫員)
第五十三條 この法律に規定する事務に従事させるため、農林省に家畜防疫官を、都道府県に家畜防疫員を置く。
2 前項の家畜防疫官及び家畜防疫員は、獣医師の中から任命する。但し、特に必要があるときは家畜の伝染性疾病予防に関し学識経験のある獣医師以外の者を任命することができる。
(証票の携帶等)
第五十四條 家畜防疫官又は家畜防疫員は、この法律により職務を執行するときは、省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶し、関係者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(服制)
第五十五條 家畜防疫官の服制は、農林大臣が定める。
(処分の承継人に対する効力)
第五十六條 この法律又はこの法律に基く命令の規定による指示その他の処分は、当該処分の目的である家畜その他の物の所有者又は管理者から権利を承継した者又は権利の設定を受けて、新たに当該家畜その他の物の管理者となつた者に対しても、またその効力を有する。
2 前項の家畜その他の物の所有者又は管理者は、当該家畜その他の物を他人に讓渡し、又は管理させる場合には、その処分のあつたこと及びその処分の内容をその者に知らせなければならない。
(特別区等に関する規定の適用)
第五十七條 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合の管理者に適用する。
(手当金)
第五十八條 国は、左に掲げる家畜又は物品の所有者(第十七條の規定により殺すべき旨を命ぜられた家畜については、その命令のあつた時における当該家畜の所有者)に対し、それぞれ当該各号に定める額(当該家畜の死体が利用価値を有する場合には、その評価額を当該各号に定める額から差し引いて得た額)を手当金として交付する。
一 第十六條又は第十七條の規定により殺された患畜(次号に該当するものを除く。)にあつては、患畜となる前における当該家畜の評価額の三分の一(その額が牛にあつては四万三千三百円、馬にあつては二万六千六百円、めん羊及び山羊にあつては五千円、豚にあつては一万円、鶏及びあひるにあつては三百円をこえるときはそれぞれこれらの額)
二 結核病又は馬伝染性貧血にかかつたため第十七條の規定により殺された患畜にあつては、同條の命令があつた時における当該家畜の評価額の五分の四(その額が牛にあつては十万四千円、山羊にあつては一万二千円、馬にあつては六万四千円をこえるときはそれぞれこれらの額)
三 第十六條、第十七條又は第二十條第一項の規定により殺された疑似患畜にあつては、疑似患畜となる前における当該家畜の評価額の五分の四
四 第六條第一項、第三十條又は第四十六條第二項の規定による検査、注射、薬浴又は投薬を行つたため死亡した動物又は死産し、若しくは流産した動物の胎兒にあつては、当該検査、注射、薬浴又は投薬の時における当該動物の評価額又は死産若しくは流産をする前における当該胎兒の評価額の全額
五 第二十三條(同條第一項但書の場合を除く。)の規定により燒却し、又は埋却した物品にあつては、燒却又は埋却前における当該物品の評価額の五分の四
2 第四十六條第一項に規定する場合には、前項の規定は、同項第四号の家畜及びその胎兒に対する場合を除き、適用しない。
3 農林大臣は、第一項に掲げる動物、死体、胎兒又は物品の評価額を決定するには、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。
4 都道府県知事は、農林大臣に前項の意見を具申するには、省令の定めるところにより、あらかじめ選定した三人以上の評価人の意見をきかなければならない。
(費用の負担)
第五十九條 国は、第二十一條第一項又は第二十三條第一項の規定により燒却し、又は埋却した家畜の死体又は物品の所有者に対し、燒却又は埋却に要した費用の二分の一を交付する。
第六十條 国は、都道府県知事又は家畜防疫員がこの法律を執行するために必要な費用のうち左に掲げるものを負担する。
一 家畜防疫員の旅費の全額
二 第五十八條第四項の評価人の手当及び旅費の全額
三 雇い入れた獣医師に対する手当の二分の一
四 牛疫血清の購入費又は製造費の全額
五 牛疫血清以外の動物用生物学的製剤の購入費又は製造費の二分の一
六 農林大臣の指定する薬品の購入費の全額
(家畜保健衞生所長への事務の委任)
第六十一條 都道府県知事は、第四條第四項、第五條第一項第二号及び第三号、同條第三項、第八條、第十三條第三項、第十五條及び第五十條の規定によりその権限に属する事務の一部を家畜保健衞生所長に委任することができる。
(家畜伝染病以外の疾病に対するこの法律の準用)
第六十二條 家畜その他の動物について家畜伝染病以外の伝染性疾病の発生又はまん延の徴があり、家畜の生産又は健康の維持に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、政令で、動物及び疾病の種類並びに地域を指定し、一年以内の期間を限り、第三章の規定及びこれに係るこの章の規定の全部又は一部を準用することができる。
第六章 罰則
第六十三條 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十三條第一項(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定に違反した獣医師
二 第十六條第一項、第三十六條第一項、第三十七條、第三十八條又は第四十五條第一項の規定に違反した者
三 第十七條の規定による命令に違反した者
四 第三十六條第三項の規定による條件に違反した者
五 第四十條第一項の規定による検査を受けず、又は検査を受けるに当つて不正行為をした者
第六十四條 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第五條第一項、第十一條、第十二條、第十四條第一項、第十六條第二項、第二十一條第一項若しくは第三項、第五十條又は第五十六條第二項(第十四條第一項及び第五十六條第二項については、第六十二條において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第十三條第一項(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定に違反した所有者
三 第三十二條又は第三十三條(第三十二條及び第三十三條については、第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による禁止、停止又は制限に違反した者
第六十五條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第四條第一項、第十條、第十八條、第二十一條第二項、第二十三條第一項、第二十四條、第二十五條第一項又は第三十一條第一項(第十八條、第二十三條第一項、第二十四條及び第二十五條第一項については、第六十二條において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第六條第一項、第九條又は第二十九條(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
三 第十四條第二項後段若しくは第三項、第十九條又は第四十條第四項(第十四條第二項後段若しくは第三項及び第十九條については、第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による指示に違反した者
四 第十五條(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による通行しや断に違反した者
五 第二十條第一項(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による剖検又は殺処分を拒み、妨げ、又は忌避した者
六 第二十八條(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による標識を附することを拒み、妨げ、又は忌避した者
七 第三十條(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による検査、注射又は薬浴を拒み、妨げ、又は忌避した者
八 第三十四條(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による停止又は制限に違反した者
九 第四十條第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
十 第四十二條第二項又は第四十三條第五項の規定による検査を受けず、又は検査を受けるに当つて不正行為をした者
十一 第四十六條第二項の規定による命令に違反し、又は同項の規定による隔離、注射、薬浴若しくは消毒を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
十二 第五十一條第一項(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による検査、採取若しくは集取を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対し虚僞の陳述をした者
十三 第五十二條(第六十二條において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
第六十六條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、昭和二十六年六月一日から施行する。
2 家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号。以下「旧法」という。)は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
3 この法律施行前に旧法第二十四條第一項各号の一に該当した家畜又は物品の所有者に対し交付する手当金については、この法律施行後でもなお従前の例による。
4 旧法又はこれに基く命令の規定によつてした行政庁、家畜検疫官吏又は家畜防疫委員の処分その他の行為は、それぞれこの法律又はこの法律に基く命令の相当規定により行政庁、家畜防疫官又は家畜防疫員のしたものとみなす。
5 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第二十七條第一項第二号を次のように改める。
二 輸出入家畜その他の貨物に対する家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)又は狂犬病予防法(昭和二十五年法律第二百四十七号)に基く検疫又は検査
6 左に掲げる法律の規定中「家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)」を「家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)」に改める。
家畜商法(昭和二十四年法律第二百八号)第四條第二号
家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)第十七條第二項第三号
厚生大臣臨時代理 国務大臣 保利茂
農林大臣 広川弘禪
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂
家畜伝染病予防法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十六号
家畜伝染病予防法
目次
第一章
総則(第一条─第三条)
第二章
家畜の伝染性疾病の発生の予防(第四条─第十二条)
第三章
家畜伝染病のまん延の防止(第十三条─第三十五条)
第四章
輸出入検疫(第三十六条─第四十六条)
第五章
雑則(第四十七条─第六十二条)
第六章
罰則(第六十三条─第六十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、家畜の伝染性疾病(寄生虫病を含む。以下同じ。)の発生を予防し、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「家畜伝染病」とは、左の表の上欄に掲げる伝染性疾病であつてそれぞれ相当下欄に掲げる家畜についてのものをいう。
伝染性疾病の種類
家畜の種類
一   牛疫
牛、めん羊、山羊、豚
二   牛肺疫
三   口蹄疫
牛、めん羊、山羊、豚
四   流行性感冒
五   流行性脳炎
牛、馬、めん羊、山羊、豚
六   狂犬病
牛、馬、めん羊、山羊、豚
七   炭疽
牛、馬、めん羊、山羊、豚
八   気腫疽
牛、めん羊、山羊、豚
九   出血性敗血症
牛、めん羊、山羊、豚
十   ブルセラ病
牛、めん羊、山羊、豚
十一  結核病
牛、山羊
十二  ピロプラズマ病(省令で定める病原体によるものに限る。)
牛、馬
十三  トリパノゾーマ病(省令で定める病原体によるものに限る。)
牛、馬
十四  アナプラズマ病
十五  トリコモナス病
十六  鼻疽
十七  仮性皮疽
十八  馬伝染性貧血
十九  馬パラチフス
二十  羊痘
めん羊
二十一 かいせん
めん羊
二十二 豚コレラ
二十三 豚丹毒
二十四 家きんコレラ
鶏、あひる
二十五 家きんペスト
鶏、あひる
二十六 ニューカツスル病
鶏、あひる
二十七 ひな白痢
鶏、あひる
2 この法律において「患畜」とは、家畜伝染病にかかつている家畜をいい、「疑似患畜」とは 患畜である疑がある家畜及び牛疫、牛肺疫、口蹄疫、狂犬病、鼻疽又は羊痘の病原体に触れたため、又は触れた疑があるため、患畜となるおそれがある家畜をいう。
(管理者に対する適用)
第三条 この法律中家畜、物品又は施設の所有者に関する規定(第五十六条、第五十八条及び第五十九条の規定を除く。)は、当該家畜、物品又は施設を管理する所有者以外の者(鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機による運送業者で当該家畜、物品又は施設の運送の委託を受けた者を除く。)があるときは、その者に対して適用する。
第二章 家畜の伝染性疾病の発生の予防
(死亡の届出義務)
第四条 牛、馬、めん羊、山羊又は豚の所有者は、これらの家畜が疾病のため死亡したときは、省令で定める手続に従い、遅滞なく、その旨を当該家畜の死体の所在地を管轄する市町村長に届け出なければならない。但し、鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機により運送業者が運送中の家畜については、当該家畜の所有者がすべき届出は、その者が遅滞なくその届出をすることができる場合を除き、運送業者がしなければならない。
2 前項但書の家畜についての同項の届出は、運輸上支障があるときは、当該貨物の終着地を管轄する市町村長にすることができる。
3 第一項の規定は、当該家畜について既に第十三条第一項の規定による届出をしている場合、家畜が第四十条又は第四十五条の規定による検査中に死亡した場合その他省令で定める場合には、適用しない。
4 市町村長は、第一項の届出があつたときは、省令で定める手続に従い、その旨を家畜防疫員に通報するとともに都道府県知事に報告しなければならない。
5 市町村長は、第一項の規定による届出をした者から請求があつたときには、省令の定めるところにより、届出を受けた旨の証明書を交付しなければならない。
(移動のための健康証明書の携行)
第五条 政令で定める家畜の所有者は、家畜の伝染性疾病にかかつていない旨の健康証明書とともにするのでなければ、当該家畜を政令で定める区域をこえて移動させてはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 短期の一定期間内に当該区域の境界をこえて往復させる場合
二 と殺の目的をもつてと場に直送する旨の都道府県知事が発行する証明書とともに移動させる場合
三 試験研究の用に供するためその他省令で定める特別の事由により都道府県知事の許可を受けて当該許可書とともに移動させる場合
四 第四十四条第一項の規定による輸入検疫証明書又は第四十五条第三項の規定による輸出検疫証明書の交付を受けた日から三十日以内に当該証明書とともに移動させる場合
2 前項の政令で定める区域は、都道府県の区域又はこれをこえる区域でなければならない。
3 第一項の健康証明書は、都道府県知事又は獣医師が省令で定める基準に従つて発行するものとし、その有効期間は、三十日とする。
4 第一項第一号の一定期間並びに同項の健康証明書、同項第二号の証明書及び同項第三号の許可書の様式は、省令で定める。
5 運送業者は、第一項の家畜の運送については、同項の違反を生じないようにしなければならない。
(検査、注射、薬浴又は投薬)
第六条 都道府県知事は、家畜の伝染性疾病の発生を予防するため必要があるときは、家畜の所有者に対し、家畜について家畜防疫員の検査、注射、薬浴又は投薬を受けるべき旨を命ずることができる。
2 前項の命令は、省令で定める手続に従い、その実施期日の十日前までに左に掲げる事項を公示して行う。但し、緊急の場合には、その期間を三日まで短縮することができる。
一 実施の目的
二 実施する区域
三 実施の対象となる家畜の種類及び範囲
四 実施の期日
五 検査、注射、薬浴又は投薬の別及びその方法
(検査、注射、薬浴又は投薬を行つた旨の表示)
第七条 都道府県知事は、前条第一項の規定により検査、注射、薬浴又は投薬を受けた家畜に、省令の定めるところにより、検査、注射、薬浴又は投薬を行つた旨のらく印、いれずみその他の標識を家畜防疫員に附させることができる。
(証明書の交付)
第八条 都道府県知事は、第六条第一項の規定による検査、注射、薬浴又は投薬を受けた家畜の所有者から請求があつたときは、省令の定めるところにより、検査、注射、薬浴又は投薬を行つた旨の証明書を交付しなければならない。
(消毒方法等の実施)
第九条 都道府県知事は、家畜の伝染性疾病の発生を予防するため必要があるときは、区域を限り、家畜の所有者に対し、省令の定めるところにより、消毒方法、清潔方法又はねずみ、昆虫等の駆除方法を実施すべき旨を命ずることができる。
(へい獣取扱場についての制限)
第十条 へい獣取扱場においては、疾病のため死亡した牛、馬、めん羊、山羊及び豚は、左の各号の一に該当する場合でなければ、これを解体し、埋却し、又は焼却してはならない。
一 第四条第五項の証明書がある場合
二 第二十一条第一項本文の家畜防疫員の指示に従い焼却し、若しくは埋却する場合、同項但書に規定する場合又は同条第三項の許可を受けて解体する場合
(化製場についての制限)
第十一条 化製場においては、農林大臣が家畜の伝染性疾病の発生を予防するため必要があると認めて指定する骨肉皮毛類については、省令で定める基準に適合する設備及び方法によるものでなければ、これを原料とする製造を行つてはならない。
(家畜集合施設についての制限)
第十二条 競馬、家畜市場、家畜共進会等家畜を集合させる催物であつて農林大臣の指定するものの開催者は、その開催中、省令の定めるところにより、家畜診断所、隔離所、汚物だめその他家畜の伝染性疾病の発生を予防するために必要な設備を備えなければならない。
2 前項の規定により家畜診断所を備えなければならない催物の開催者は、その開催中、その家畜診断所において家畜の伝染性疾病にかかつていないと診断された家畜及び第五条第一項の健康証明書のある家畜以外の家畜をその開催の場所においてけい留させてはならない。但し、前項の隔離所にけい留する場合は、この限りでない。
第三章 家畜伝染病のまん延の防止
(患畜等の届出義務)
第十三条 家畜が患畜又は疑似患畜となつたことを発見したときは、当該家畜を診断し、又はその死体を検案した獣医師(獣医師による診断又は検案を受けていない家畜又はその死体についてはその所有者)は、省令で定める手続に従い、遅滞なく、当該家畜又はその死体の所在地を管轄する市町村長にその旨を届け出なければならない。但し、鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機により運送業者が運送中の家畜については、当該家畜の所有者がなすべき届出は、その者が遅滞なくその届出をすることができる場合を除き、運送業者がしなければならない。
2 前項の規定による届出については、第四条第二項及び第三項の規定を準用する。
3 市町村長は、第一項の届出があつたときは、省令で定める手続に従い、遅滞なく、その旨を公示し、家畜防疫員及び隣接市町村長に通報し、且つ、都道府県知事に報告しなければならない。
4 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、省令で定める手続に従い、その旨を公示するとともに農林大臣に報告し、且つ、関係都道府県知事に通報しなければならない。
(隔離の義務)
第十四条 患畜又は疑似患畜の所有者は、遅滞なく、当該家畜を隔離しなければならない。但し、次項の規定による家畜防疫員の指示があつたときにおいて、その指示に従つて隔離を解く場合は、この限りでない。
2 家畜防疫員は、前項の規定により隔離された家畜につき隔離を必要としないと認めるときは、その者に対し、隔離を解いてもよい旨を指示し、又はその指示にあわせて、家畜伝染病のまん延を防止するため必要な限度において、けい留、一定の範囲をこえる移動の制限その他の措置をとるべき旨を指示しなければならない。
3 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、患畜若しくは疑似患畜と同居していたため、又はその他の理由により患畜となるおそれがある家畜(疑似患畜を除く。)の所有者に対し、十日をこえない範囲内において期間を限り、当該家畜を一定の区域外へ移動させてはならない旨を指示することができる。
(通行しや断)
第十五条 都道府県知事又は市町村長は、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、省令で定める手続に従い、四十八時間をこえない範囲内において期間を定め、患畜又は牛疫、牛肺疫、口蹄疫、鼻疽若しくは羊痘の疑似患畜の所在の場所(これに隣接して家畜伝染病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある場合を含む。)とその他の場所との通行をしや断することができる。
(と殺の義務)
第十六条 左に掲げる家畜の所有者は、家畜防疫員の指示に従い、直ちに当該家畜を殺さなければならない。但し、省令で定める場合には、この限りでない。
一 牛疫、牛肺疫、口蹄疫、鼻疽又は羊痘の患畜
二 牛疫又は口蹄疫の疑似患畜
2 前項の家畜の所有者は、同項但書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該家畜を殺してはならない。
(殺処分)
第十七条 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、左に掲げる家畜の所有者に期限を定めて当該家畜を殺すべき旨を命ずることができる。
一 流行性脳炎、狂犬病、炭疽、気腫疽、出血性敗血症、ブルセラ病、結核病、ピロプラズマ病、トリパノゾーマ病、アナプラズマ病、仮性皮疽、馬伝染性貧血、馬パラチフス、かいせん、豚コレラ、豚丹毒、家きんコレラ、家きんペスト、ニユーカツスル病又はひな白痢の患畜
二 牛肺疫の疑似患畜
2 家畜の所有者又はその所在が知れないため前項の命令をすることができない場合において緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができる。
(と殺の届出)
第十八条 患畜又は疑似患畜の所有者は、当該家畜を殺すときは、前二条の規定により殺す場合その他省令で定める場合を除き、あらかじめ家畜防疫員にその旨を届け出なければならない。
(と殺に関する指示)
第十九条 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、第十七条の命令又は前条の届出に係る家畜につき、殺す場所又は殺す方法を指示することができる。
(病性鑑定のための処分)
第二十条 都道府県知事は、病性鑑定のため必要があるときは、家畜防疫員に家畜の死体を剖検させ、又は剖検のため疑似患畜を殺させることができる。
2 家畜防疫員は、病性鑑定のため必要があるときは、疑似患畜の所有者に対し、七日をこえない範囲内において期間を定め、当該家畜を殺してはならない旨を指示することができる。
(死体の焼却等の義務)
第二十一条 左に掲げる患畜又は疑似患畜の死体の所有者は、家畜防疫員が省令で定める基準に基いてする指示に従い、遅滞なく、当該死体を焼却し、又は埋却しなければならない。但し、病性鑑定又は学術研究の用に供するため都道府県知事の許可を受けた場合その他省令で定める場合は、この限りでない。
一 牛疫、牛肺疫、口蹄疫、流行性感冒、狂犬病、炭疽、気腫疽、出血性敗血症、鼻疽、仮性皮疽、羊痘、豚コレラ、豚丹毒、家きんコレラ、家きんペスト又はニユーカツスル病の患畜又は疑似患畜の死体
二 流行性脳炎、ブルセラ病、結核病、馬伝染性貧血、馬パラチフス、かいせん又はひな白痢の患畜又は疑似患畜の死体(と場において殺したものを除く。)
2 前項の死体は、同項但書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該死体を焼却し、又は埋却してはならない。
3 第一項の規定により焼却し、又は埋却しなければならない死体は、家畜防疫員の許可を受けなければ、他の場所に移し、損傷し、又は解体してはならない。
(へい獣処理場等に関する法律の特例)
第二十二条 第二十条第一項の規定による剖検のため家畜の死体を解体する場合及び前条第一項の規定により家畜の死体を焼却し、又は埋却する場合には、へい獣処理場等に関する法律(昭和二十三年法律第百四十号)第二条第一項の規定(へい獣処理場外における処理の禁止)は、適用しない。
(汚染物品の焼却等の義務)
第二十三条 家畜伝染病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある物品の所有者(当該物品が鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機により運送中のものである場合には、当該物品の所有者又は運送業者。次項において同じ。)は、家畜防疫員が省令で定める基準に基いてする指示に従い、遅滞なく、当該物品を焼却し、埋却し、又は消毒しなければならない。但し、ひな白痢の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある物品その他省令で定める物品は、指示をまたないで焼却し、埋却し、又は消毒することを妨げない。
2 前項の物品(同項但書の物品を除く。)の所有者は、同項の指示があるまでは、当該物品を焼却し、埋却し、又は消毒してはならず、また、家畜防疫員の許可を受けなければ、これを他の場所に移し、使用し、又は洗じようしてはならない。
3 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、第一項の物品(同項但書の物品を除く。)について、同項の指示に代えて、自らこれを焼却し、埋却し、又は消毒することができる。
(発掘の禁止)
第二十四条 第二十一条第一項又は前条第一項の規定により家畜の死体又は家畜伝染病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品を埋却した土地は、省令で定める期間内は、掘つてはならない。但し、都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
(畜舎等の消毒の義務)
第二十五条 患畜若しくは疑似患畜又はこれらの死体の所在した畜舎、船車その他これに準ずる施設は、家畜防疫員が省令で定める基準に基いてする指示に従い、その所有者が消毒しなければならない。但し、ひな白痢の患畜若しくは疑似患畜又はこれらの死体の所在した施設その他省令で定める施設は、指示をまたないで、消毒することを妨げない。
2 前項の畜舎、船車その他これに準ずる施設の所有者は、同項但書の場合を除き、家畜防疫員の指示があるまでは、当該施設を消毒してはならない。
3 家畜防疫員は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、第一項の施設(同項但書の施設を除く。)について、同項の指示に代えて、自らこれを消毒することができる。
(航海中の特例)
第二十六条 航海中の船舶において、患畜若しくは疑似患畜が死亡したとき、又は物品若しくは畜舎その他これに準ずる施設が家畜伝染病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれを生じたときは、当該家畜、物品若しくは施設の所有者又は当該船舶の船長(船長に代つてその職務を行う者があるときはその者)は、第二十一条、第二十三条又は前条の規定にかかわらず、省令の定めるところにより、消毒その他必要な措置をしなければならない。
(病原体に触れた者の消毒の義務)
第二十七条 家畜伝染病の病原体に触れ、又は触れたおそれがある者は、遅滞なく、自らその身体を消毒しなければならない。
(患畜等の表示)
第二十八条 家畜防疫員は、省令の定めるところにより、患畜及び疑似患畜について、らく印、いれずみその他の標識を附することができる。
(消毒方法等の実施)
第二十九条 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、区域を限り、家畜の所有者に対し、省令の定めるところにより、消毒方法、清潔方法又はねずみ、昆虫等の駆除方法を実施すべき旨を命ずることができる。
(検査、注射又は薬浴)
第三十条 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、家畜防疫員に、省令で定める方法により家畜の検査、注射又は薬浴を行わせることができる。
第三十一条 省令で定める牛又は馬の所有者は、都道府県知事が省令で定める方法により行う結核病又は馬伝染性貧血についての検査を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前項の検査を毎年少くとも各一回実施しなければならない。
3 第一項の検査には、第六条第二項、第七条及び第八条の規定を準用する。
(家畜等の移動の制限)
第三十二条 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、一定種類の家畜、その死体又は家畜伝染病の病原体をひろげるおそれがある物品の当該都道府県の区域内での移動、当該都道府県内への移入又は当該都道府県外への移出を禁止し、又は制限することができる。
2 農林大臣は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、省令の定めるところにより、区域を指定し、一定種類の家畜、その死体又は家畜伝染病の病原体をひろげるおそれがある物品の当該区域外への移出を禁止し、又は制限することができる。
(家畜集合施設の開催等の制限)
第三十三条 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、競馬、家畜市場、家畜共進会等家畜を集合させる催物の開催又はと場若しくは化製場の事業を停止し、又は制限することができる。
(放牧等の制限)
第三十四条 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、規則を定め、一定種類の家畜の放牧、種付又はふ卵を停止し、又は制限することができる。
(報告及び通報の義務)
第三十五条 都道府県知事は、この章の規定により家畜伝染病のまん延の防止のためとつた措置につき、省令の定めるところにより、その実施状況及び実施の結果を農林大臣に報告するとともに関係都道府県知事に通報しなければならない。
第四章 輸出入検疫
(輸入禁止)
第三十六条 何人も、左に掲げる物を輸入してはならない。但し、試験研究の用に供するため農林大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
一 省令で定める地域から発送され、又はこれらの地域を経由した次条各号の物であつて農林大臣の指定するもの
二 家畜の伝染性疾病の病原体
2 前項但書の許可を受けて輸入する場合には、同項の許可を受けたことを証明する書面を添えなければならない。
3 第一項但書の許可には、輸入の方法、輸入後の管理方法その他必要な条件を附することができる。
(輸入のための検査証明書の添附)
第三十七条 左に掲げる物であつて農林大臣の指定するもの(以下「指定検疫物」という。)は、輸出国の政府機関により発行され、且つ、その検疫の結果家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがないことを確かめ、又は信ずる旨を記載した検査証明書又はその写を添附してあるものでなければ、輸入してはならない。但し、動物検疫についての政府機関を有しない国から輸入する場合その他農林大臣の指定する場合は、この限りでない。
一 動物、その死体又は骨肉卵皮毛類及びこれらの容器包装
二 前号に掲げる物を除き、家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがある敷料その他これに準ずる物
(輸入場所の制限)
第三十八条 指定検疫物は、省令で指定する港又は飛行場以外の場所で輸入してはならない。但し、第四十一条の規定により検査を受け、且つ、第四十四条の規定による輸入検疫証明書の交付を受けた物及び郵便物として輸入する物については、この限りでない。
(検疫信号)
第三十九条 外国から入港した船舶であつて指定検疫物(郵便物として輸送されたものを除く。)を積載するものは、省令の定めるところにより、入港後、遅滞なく、検疫信号を掲げなければならない。
2 前項の信号は、同項の指定検疫物について第四十一条の規定による検査を終了し、当該指定検疫物の積卸を終了し、又は出港するまでは、おろしてはならない。
(輸入検査)
第四十条 指定検疫物を輸入した者は、遅滞なくその旨を動植物検疫所に届け出て、その物につき、原状のままで、家畜防疫官から第三十六条及び第三十七条の規定の違反の有無並びに家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれの有無についての検査を受けなければならない。但し、既に次条の規定により検査を受け、且つ、第四十四条の規定による輸入検疫証明書の交付を受けた物及び郵便物として輸入した物については、この限りでない。
2 家畜防疫官は、指定検疫物以外の物が家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあるときは、輸入後遅滞なくその物につき、検査を行うことができる。
3 第一項の規定による検査は、動植物検疫所又は第三十八条の規定により指定された港若しくは飛行場内の家畜防疫官が指定した場所で行う。但し、特別の事由があるときは、農林大臣の指定するその他の場所で検査を行うことができる。
4 家畜防疫官は、家畜の伝染性疾病の病原体のひろがるのを防止するため必要があるときは、第一項の検査を受ける者に対し指定検疫物を前項の場所に送致するための順路その他の方法を指示することができる。
第四十一条 家畜防疫官は、輸入される指定検疫物又は輸入されるその他の物であつて家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、若しくは汚染しているおそれがあるものにつき、船舶又は航空機内で輸入に先だつて検査を行うことができる。
(郵便物としての輸入)
第四十二条 指定検疫物は、小形包装物、商品見本及び小包郵便物以外の郵便物としては、輸入してはならない。
2 前項の規定に違反して輸入された指定検疫物を包有している郵便物を受け取つた者は、遅滞なく、その現品を添えてその旨を動植物検疫所に届け出て家畜防疫官の検査を受けなければならない。
第四十三条 通関手続をする郵便局は、指定検疫物を包有し、又は包有している疑のある小形包装物、商品見本又は小包郵便物の送付を受けたときは、遅滞なく、その旨を動植物検疫所に通知しなければならない。
2 家畜防疫官は、前項の通知があつたときは、同項の小形包装物、商品見本又は小包郵便物の検査を行う。
3 家畜防疫官は、前項の検査を行うため必要があるときは、当該郵便物の受取人にその開示を求めることができる。
4 受取人が前項の開示を拒んだとき、又は受取人に開示を求めることができないときは、家畜防疫官は、郵便局員立合の上で当該郵便物を開くことができる。
5 第二項の検査を受けていない小形包装物、商品見本又は小包郵便物であつて指定検疫物を包有しているものを受け取つた者は、遅滞なく、その現品を添え、その旨を動植物検疫所に届け出て家畜防疫官の検査を受けなければならない。
(輸入検疫証明書の交付等)
第四十四条 家畜防疫官は、前四条の検査の結果、指定検疫物が家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがないと認められるときは、省令の定めるところにより、輸入検疫証明書を交付し、且つ、指定検疫物にらく印、いれずみその他の標識を附さなければならない。
2 家畜防疫官は、第四十条第二項又は第四十一条の規定による検査を受けた指定検疫物以外の物について、輸入検疫証明書を請求されたときは、これを交付しなければならない。
(輸出検査)
第四十五条 左に掲げる物を輸出しようとする者は、これにつき、あらかじめ、家畜防疫官の検査を受け、且つ、第三項の規定により輸出検疫証明書の交付を受けなければならない。
一 輸入国政府がその輸入に当り、家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれの有無についての輸出国の検査証明を必要としている動物その他の物
二 第三十七条各号に掲げる物であつて農林大臣が国際動物検疫上必要と認めて指定するもの
2 前項の検査については、第四十条第三項の規定を準用する。
3 家畜防疫官は、第一項の規定による検査の結果、その物が家畜の伝染性疾病の病原体をひろげるおそれがないと認められるときは、省令の定めるところにより、輸出検疫証明書を交付しなければならない。
4 家畜防疫官は、国際動物検疫上、必要があるときは、前項の規定による輸出検疫証明書の交付を受けた物について再検査を行うことができる。
(検査に基く処置)
第四十六条 第四十条第一項若しくは第二項、第四十一条、第四十二条第二項、第四十三条第二項若しくは第五項又は前条第一項若しくは第四項の規定による検査において、その検査に係る物が家畜伝染病の病原体により汚染し、汚染しているおそれがあり、又は汚染するおそれがあると認められた場合における第六条から第八条まで、第十四条から第二十一条まで、第二十三条から第二十五条まで、第二十八条及び第三十条の規定の適用については、これらの規定中「都道府県知事」(第十五条の場合にあつては「都道府県知事又は市町村長」)とあるのは「動植物検疫所長」と、「家畜防疫員」とあるのは「家畜防疫官」と読み替えるものとする。
2 農林大臣は、前項の検査において、家畜伝染病以外の家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、又は汚染しているおそれがあると認められた動物その他の物につき、省令の定めるところにより、その所有者に対し、これらを隔離し、若しくは消毒すべき旨を命じ、又は家畜防疫官に隔離、注射、薬浴若しくは消毒を行わせることができる。
第五章 雑則
(農林大臣の都道府県知事に対する指示)
第四十七条 農林大臣は、家畜の伝染性疾病の発生又はまん延により、畜産に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、都道府県知事に第六条、第九条、第十七条、第二十九条から第三十一条まで、第三十二条第一項、第三十三条又は第三十四条の規定による措置を実施すべき旨を指示することができる。
(国の都道府県に対する協力)
第四十八条 農林大臣は、前条の指示をした場合又は都道府県知事から求められた場合において必要と認めるときは、その指定する家畜防疫官をして都道府県知事の指示を受け、第二章又は第三章の規定により家畜防疫員の行うべき事務に従事させることができる。
2 前項の場合には、第二章又は第三章の規定中「家畜防疫員」とあるのは、「家畜防疫員又は第四十八条第一項の規定により指定された家畜防疫官」と読み替えるものとする。
(動物用生物学的製剤等の譲与又は貸付)
第四十九条 農林大臣は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があると認めるときは、都道府県に対し、動物用生物学的製剤を譲与し、又は予防用器具を無償若しくは時価よりも低い対価で貸し付けることができる。
(動物用生物学的製剤の使用の制限)
第五十条 農林大臣の指定する動物用生物学的製剤は、都道府県知事の許可を受けなければ使用してはならない。
(立入検査等)
第五十一条 家畜防疫官又は家畜防疫員は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があるときは、競馬場、家畜市場、家畜共進会場等家畜の集合する場所、畜舎、へい獣処理場、と場、倉庫、船車、航空機又は家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがあるその他の場所に立ち入つて動物その他の物を検査し、関係者に質問し、又は検査のため必要な限度において、動物の血液、乳汁等を採取し、若しくは動物の死体その他の物を集取することができる。
2 前項の規定による立入検査、質問、採取又は集取の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(報告)
第五十二条 農林大臣又は都道府県知事は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があるときは、省令で定める手続に従い、動物の所有者、競馬、家畜市場、家畜共進会等家畜を集合させる催物の開催者又はへい獣処理場若しくはと場の所有者に対し、必要な事項についての報告を求めることができる。
(家畜防疫官及び家畜防疫員)
第五十三条 この法律に規定する事務に従事させるため、農林省に家畜防疫官を、都道府県に家畜防疫員を置く。
2 前項の家畜防疫官及び家畜防疫員は、獣医師の中から任命する。但し、特に必要があるときは家畜の伝染性疾病予防に関し学識経験のある獣医師以外の者を任命することができる。
(証票の携帯等)
第五十四条 家畜防疫官又は家畜防疫員は、この法律により職務を執行するときは、省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(服制)
第五十五条 家畜防疫官の服制は、農林大臣が定める。
(処分の承継人に対する効力)
第五十六条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による指示その他の処分は、当該処分の目的である家畜その他の物の所有者又は管理者から権利を承継した者又は権利の設定を受けて、新たに当該家畜その他の物の管理者となつた者に対しても、またその効力を有する。
2 前項の家畜その他の物の所有者又は管理者は、当該家畜その他の物を他人に譲渡し、又は管理させる場合には、その処分のあつたこと及びその処分の内容をその者に知らせなければならない。
(特別区等に関する規定の適用)
第五十七条 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合の管理者に適用する。
(手当金)
第五十八条 国は、左に掲げる家畜又は物品の所有者(第十七条の規定により殺すべき旨を命ぜられた家畜については、その命令のあつた時における当該家畜の所有者)に対し、それぞれ当該各号に定める額(当該家畜の死体が利用価値を有する場合には、その評価額を当該各号に定める額から差し引いて得た額)を手当金として交付する。
一 第十六条又は第十七条の規定により殺された患畜(次号に該当するものを除く。)にあつては、患畜となる前における当該家畜の評価額の三分の一(その額が牛にあつては四万三千三百円、馬にあつては二万六千六百円、めん羊及び山羊にあつては五千円、豚にあつては一万円、鶏及びあひるにあつては三百円をこえるときはそれぞれこれらの額)
二 結核病又は馬伝染性貧血にかかつたため第十七条の規定により殺された患畜にあつては、同条の命令があつた時における当該家畜の評価額の五分の四(その額が牛にあつては十万四千円、山羊にあつては一万二千円、馬にあつては六万四千円をこえるときはそれぞれこれらの額)
三 第十六条、第十七条又は第二十条第一項の規定により殺された疑似患畜にあつては、疑似患畜となる前における当該家畜の評価額の五分の四
四 第六条第一項、第三十条又は第四十六条第二項の規定による検査、注射、薬浴又は投薬を行つたため死亡した動物又は死産し、若しくは流産した動物の胎児にあつては、当該検査、注射、薬浴又は投薬の時における当該動物の評価額又は死産若しくは流産をする前における当該胎児の評価額の全額
五 第二十三条(同条第一項但書の場合を除く。)の規定により焼却し、又は埋却した物品にあつては、焼却又は埋却前における当該物品の評価額の五分の四
2 第四十六条第一項に規定する場合には、前項の規定は、同項第四号の家畜及びその胎児に対する場合を除き、適用しない。
3 農林大臣は、第一項に掲げる動物、死体、胎児又は物品の評価額を決定するには、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。
4 都道府県知事は、農林大臣に前項の意見を具申するには、省令の定めるところにより、あらかじめ選定した三人以上の評価人の意見をきかなければならない。
(費用の負担)
第五十九条 国は、第二十一条第一項又は第二十三条第一項の規定により焼却し、又は埋却した家畜の死体又は物品の所有者に対し、焼却又は埋却に要した費用の二分の一を交付する。
第六十条 国は、都道府県知事又は家畜防疫員がこの法律を執行するために必要な費用のうち左に掲げるものを負担する。
一 家畜防疫員の旅費の全額
二 第五十八条第四項の評価人の手当及び旅費の全額
三 雇い入れた獣医師に対する手当の二分の一
四 牛疫血清の購入費又は製造費の全額
五 牛疫血清以外の動物用生物学的製剤の購入費又は製造費の二分の一
六 農林大臣の指定する薬品の購入費の全額
(家畜保健衛生所長への事務の委任)
第六十一条 都道府県知事は、第四条第四項、第五条第一項第二号及び第三号、同条第三項、第八条、第十三条第三項、第十五条及び第五十条の規定によりその権限に属する事務の一部を家畜保健衛生所長に委任することができる。
(家畜伝染病以外の疾病に対するこの法律の準用)
第六十二条 家畜その他の動物について家畜伝染病以外の伝染性疾病の発生又はまん延の徴があり、家畜の生産又は健康の維持に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、政令で、動物及び疾病の種類並びに地域を指定し、一年以内の期間を限り、第三章の規定及びこれに係るこの章の規定の全部又は一部を準用することができる。
第六章 罰則
第六十三条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条第一項(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反した獣医師
二 第十六条第一項、第三十六条第一項、第三十七条、第三十八条又は第四十五条第一項の規定に違反した者
三 第十七条の規定による命令に違反した者
四 第三十六条第三項の規定による条件に違反した者
五 第四十条第一項の規定による検査を受けず、又は検査を受けるに当つて不正行為をした者
第六十四条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第五条第一項、第十一条、第十二条、第十四条第一項、第十六条第二項、第二十一条第一項若しくは第三項、第五十条又は第五十六条第二項(第十四条第一項及び第五十六条第二項については、第六十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第十三条第一項(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反した所有者
三 第三十二条又は第三十三条(第三十二条及び第三十三条については、第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による禁止、停止又は制限に違反した者
第六十五条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第四条第一項、第十条、第十八条、第二十一条第二項、第二十三条第一項、第二十四条、第二十五条第一項又は第三十一条第一項(第十八条、第二十三条第一項、第二十四条及び第二十五条第一項については、第六十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第六条第一項、第九条又は第二十九条(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
三 第十四条第二項後段若しくは第三項、第十九条又は第四十条第四項(第十四条第二項後段若しくは第三項及び第十九条については、第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による指示に違反した者
四 第十五条(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による通行しや断に違反した者
五 第二十条第一項(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による剖検又は殺処分を拒み、妨げ、又は忌避した者
六 第二十八条(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による標識を附することを拒み、妨げ、又は忌避した者
七 第三十条(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による検査、注射又は薬浴を拒み、妨げ、又は忌避した者
八 第三十四条(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による停止又は制限に違反した者
九 第四十条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
十 第四十二条第二項又は第四十三条第五項の規定による検査を受けず、又は検査を受けるに当つて不正行為をした者
十一 第四十六条第二項の規定による命令に違反し、又は同項の規定による隔離、注射、薬浴若しくは消毒を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
十二 第五十一条第一項(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による検査、採取若しくは集取を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
十三 第五十二条(第六十二条において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第六十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、昭和二十六年六月一日から施行する。
2 家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号。以下「旧法」という。)は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
3 この法律施行前に旧法第二十四条第一項各号の一に該当した家畜又は物品の所有者に対し交付する手当金については、この法律施行後でもなお従前の例による。
4 旧法又はこれに基く命令の規定によつてした行政庁、家畜検疫官吏又は家畜防疫委員の処分その他の行為は、それぞれこの法律又はこの法律に基く命令の相当規定により行政庁、家畜防疫官又は家畜防疫員のしたものとみなす。
5 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第二十七条第一項第二号を次のように改める。
二 輸出入家畜その他の貨物に対する家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)又は狂犬病予防法(昭和二十五年法律第二百四十七号)に基く検疫又は検査
6 左に掲げる法律の規定中「家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)」を「家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)」に改める。
家畜商法(昭和二十四年法律第二百八号)第四条第二号
家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)第十七条第二項第三号
厚生大臣臨時代理 国務大臣 保利茂
農林大臣 広川弘禅
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂