最高裁判所裁判官国民審査法
法令番号: 法律第百三十六号
公布年月日: 昭和22年11月20日
法令の形式: 法律
最高裁判所裁判官國民審査法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十一月二十日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百三十六号
最高裁判所裁判官國民審査法目次
第一章
総則
第二章
投票及び開票
第三章
審査分会及び審査会
第四章
審査の結果
第五章
訴訟
第六章
再審査
第七章
罰則
第八章
補則
附則
最高裁判所裁判官國民審査法
第一章 総則
第一條(この法律の趣旨) 最高裁判所の裁判官の任命に関する國民の審査については、この法律の定めるところによる。
第二條(審査の期日) 審査は、各裁判官につき、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に、これを行う。
各裁判官については、最初の審査の期日から十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に、更に審査を行い、その後も、また同樣とする。
第三條(審査を行う区域) 審査は、全都道府縣の区域を通じて、これを行う。
第四條(審査権) 衆議院議員の選挙権を有する者は、審査権を有する。
第五條(審査の期日及び裁判官の氏名の告示) 最高裁判所裁判官國民審査管理委員会は、審査の期日前二十五日までに、審査の期日及び審査に付される裁判官の氏名を官報で告示しなければならない。
第六條(審査の方法) 審査は、投票によりこれを行う。
投票は、一人一票に限る。
第七條(投票区及び開票区) 審査の投票区及び開票区は、衆議院議員の選挙の投票区及び開票区による。
第八條(審査人の名簿) 審査には、衆議院議員選挙人名簿を用いる。
第九條(最高裁判所裁判官國民審査管理委員会) 審査に関する事務を管理させるため、最高裁判所裁判官國民審査管理委員会(以下これを國民審査管理委員会という。)を置く。
國民審査管理委員会は、最高裁判所裁判官國民審査管理委員(以下これを國民審査管理委員という。)十人を以てこれを組織する。
國民審査管理委員は、参議院においてその議員の中からこれを選挙する。
國民審査管理委員の任期は、三年とする。但し、補欠委員の任期は、その前任者の残任期間とする。
國民審査管理委員会に関しては、参議院議員選挙法第十六條乃至第十九條の規定を準用する。
第十條(審査に関する事務の監督) 國民審査管理委員会は、審査に関する事務については、都道府縣の選挙管理委員会を指揮監督する。
都道府縣の選挙管理委員会は、審査に関する事務については、市町村の選挙管理委員会を指揮監督する。
第十一條(裁判官の退官等の場合) 審査に付される裁判官が、審査の期日前その官を失い、又は死亡したときは、その裁判官についての審査は、これを行わない。
前項の場合においては、國民審査管理委員会は、直ちにその旨を官報で告示しなければならない。
第二章 投票及び開票
第十二條(投票に関する事務の担任) 衆議院議員の選挙における投票管理者は、審査における投票管理者となり、審査の投票に関する事務を担任する。
衆議院議員の選挙における投票立会人は、審査における投票立会人となるものとする。
第十三條(投票の時及び場所) 審査の投票は、衆議院議員総選挙の投票所において、その投票と同時にこれを行う。
第十四條(投票用紙の樣式) 投票用紙には、審査に付される裁判官の氏名を、國民審査管理委員会がくじで定めた順序により、印刷しなければならない。
投票用紙には、審査に付される各裁判官に対する×の記号を記載する欄を設けなければならない。
投票用紙は、別記樣式に準じて都道府縣の選挙管理委員会がこれを調製しなければならない。
第十五條(投票の方式) 審査人は、投票所において、罷免を可とする裁判官については、投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に自ら×の記号を記載し、罷免を可としない裁判官については、投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に何等の記載をしないで、これを投票箱に入れなければならない。
投票用紙には、審査人の氏名を記載することができない。
第十六條(点字による投票) 点字による審査の投票を行う場合においては、審査人は、投票所において、投票用紙に、罷免を可とする裁判官があるときはその裁判官の氏名を自ら記載し、罷免を可とする裁判官がないときは何等の記載をしないで、これを投票箱に入れなければならない。
前項の場合における投票用紙の樣式その他必要な事項は、政令でこれを定める。
第十七條(投票録) 投票管理者は、審査の投票録を作り、投票に関する次第を記載し、投票立会人とともに、これに署名しなければならない。
第十八條(投票の祕密) 何人も、審査人のした審査の投票の内容を陳述する義務を負わない。
第十九條(開票に関する事務の担任) 衆議院議員の選挙における開票管理者は、審査における開票管理者となり、審査の開票に関する事務を担任する。
衆議院議員の選挙における開票立会人は、審査における開票立会人となるものとする。
第二十條(開票の時及び場所) 審査の開票は、衆議院議員総選挙の開票所において、審査の投票の当日又はその翌日(一開票区に数投票区があるときは、すべての投票箱の送致を受けた日又はその翌日)にこれを行う。
第二十一條(投票の点檢及びその結果の報告) 開票管理者は、審査の投票の点檢を終えたときは、直ちにその結果を審査分会長に報告しなければならない。
第二十二條(投票の効力) 審査の投票で左に掲げるものは、これを無効とする。
一 成規の用紙を用いないもの
二 ×の記号以外の事項を記載したもの
三 ×の記号を自ら記載したものでないもの
審査に付される裁判官が二人以上の場合においては、前項第三号に該当する投票は、その記載のみを無効とする。裁判官の何人について×の記号を記載したかを確認し難い記載もまた同樣とする。
第二十三條(開票録) 開票管理者は、審査の開票録を作り、開票に関する次第を記載し、開票立会人とともに、これに署名しなければならない。
第二十四條(投票等の保存) 審査の投票は、有効無効を区別し、審査の投票録及び開票録と併せて、市町村の選挙管理委員会において、審査の期日から十年間これを保存しなければならない。
第二十五條(選挙の投票を行わない場合) 衆議院議員選挙法第七十一條の規定により選挙の投票を行わない場合においても、審査は、これを行う。
前項の場合における審査の投票及び開票に関しては、第十二條第一項、第十三條、第十九條第一項及び第二十條の規定にかかわらず、衆議院議員選挙法第二十條乃至第二十二條、第四十四條乃至第四十六條及び第四十八條の規定を準用する。
前項の投票及び開票においては、第十二條第二項及び第十九條第二項の規定にかかわらず、投票管理者又は開票管理者は、各投票区又は開票区における衆議院議員選挙人名簿に記載された者の中から、本人の承諾を得て、投票立会人又は開票立会人各三人を選任しなければならない。
第二十六條(投票及び開票に関するその他の事項) この法律及びこれに基いて発する命令に規定するものの外、投票及び開票に関しては、衆議院議員の選挙の投票及び開票の例による。
第三章 審査分会及び審査会
第二十七條(審査分会) 審査分会は、都道府縣ごとに都道府縣廳又は審査分会長の指定した場所でこれを開く。
審査分会長は、審査権を有する者の中から都道府縣の選挙管理委員会の選任したものを以て、これに充てる。
審査分会長は、審査分会に関する事務を担任する。
審査分会長は、当該都道府縣の区域内における衆議院議員選挙人名簿に記載された者の中から審査分会立会人三人を選任しなければならない。
審査分会長は、当該都道府縣の区域内におけるすべての開票管理者から第二十一條の報告を受けた日又はその翌日に審査分会を開き、審査分会立会人立会の上、その報告を調査しなければならない。
第二十八條(審査分会録) 審査分会長は、審査分会録を作り、審査分会に関する次第を記載し、審査分会立会人とともに、これに署名しなければならない。
審査分会録は、第二十一條の報告に関する書類と併せて、都道府縣の選挙管理委員会において、審査の期日から十年間これを保存しなければならない。
第二十九條(審査分会の結果の報告) 審査分会長は、第二十七條第五項の規定による調査を終えたときは、審査分会録の写を添えて、各裁判官について罷免を可とする投票及び可としない投票の数その他審査分会における調査の結果を直ちに審査長に報告しなければならない。
第三十條(審査会) 審査会は、審査長の指定した場所で、これを開く。
審査長は、審査権を有する者の中から國民審査管理委員会の選任した者を以て、これに充てる。
審査長は、審査会に関する事務を担任する。
審査長は、衆議院議員選挙人名簿に記載された者の中から審査立会人三人を選任しなければならない。
審査長は、すべての審査分会長から前條の報告を受けた日又はその翌日に審査会を開き、審査立会人立会の上、その報告を調査しなければならない。
第三十一條(審査録) 審査長は、審査録を作り、審査会に関する次第を記載し、審査立会人とともに、これに署名しなければならない。
審査録は、第二十九條の報告に関する書類と併せて、國民審査管理委員会において、審査の期日から十年間これを保存しなければならない。
第三十二條(罷免を可とされた裁判官) 罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票の数より多い裁判官は、罷免を可とされたものとする。但し、投票の総数が、衆議院議員選挙人名簿確定の日においてこれに記載された者の総数の百分の一に達しないときは、この限りでない。
第三十三條(審査の結果の報告及び告示) 第三十條第五項の規定による調査を終えたときは、審査長は、直ちに罷免を可とされた裁判官の氏名並びに罷免を可とする投票の数及び罷免を可としない投票の数その他審査の次第を國民審査管理委員会に報告しなければならない。
國民審査管理委員会は、前項の報告を受けたときは、直ちに罷免を可とされた裁判官にその旨を告知し、同時に罷免を可とされた裁判官の氏名を官報で告示し、且つ、内閣総理大臣に通知しなければならない。
第三十四條(審査分会及び審査会に関するその他の事項) この法律及びこれに基いて発する命令に規定するものの外、審査分会及び審査会については、衆議院議員選挙法第六章の規定を準用する。
第四章 審査の結果
第三十五條(罷免の効果) 罷免を可とされた裁判官は、第三十六條又は第三十八條の規定による訴を提起すべき期間が経過した日(その訴の提起があつた場合においては、その訴訟が裁判所に係属しなくなつた日又はその訴訟について裁判の確定した日)に罷免される。
審査の結果罷免された裁判官は、罷免の日から五年間は、最高裁判所の裁判官に任命されることができない。
第一項に規定する裁判官は、同項の規定による罷免されるべき日前にその官を失つたときは、同項の規定により罷免されたものとみなす。
第五章 訴訟
第三十六條(審査無効の訴訟) 審査の効力に関し異議があるときは、審査人又は罷免を可とされた裁判官は、國民審査管理委員会の委員長を被告として第三十三條第二項の規定による告示のあつた日から三十日内に東京高等裁判所に訴を提起することができる。
第三十七條(審査無効の判決) 前條の規定による訴訟においては、審査についてこの法律又はこれに基いて発する命令に違反することがあるときは、審査の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、裁判所は、審査の全部又は一部の無効の判決をしなければならない。
第三十八條の規定による訴訟においても、その審査が前項の場合に該当するときは、裁判所は、当該審査の全部又は一部の無効の判決をしなければならない。
第三十八條(罷免無効の訴訟) 審査の結果罷免を可とされた裁判官は、その罷免の効力に関し異議があるときは、國民審査管理委員会の委員長を被告として第三十三條第二項の規定による告示のあつた日から三十日内に東京高等裁判所に訴を提起することがある。
第三十九條(審判の順位) 第三十六條又は前條の規定による訴訟については、裁判所は、他の訴訟の順序にかかわらず、速かにその裁判をしなければならない。
第四十條(訴訟に関する通知) 第三十六條又は第三十八條の規定による訴訟が提起されたとき若しくは裁判所に係属しなくなつたとき又はその訴訟について裁判が確定したときは、裁判所の長は、内閣総理大臣及び國民審査管理委員会に対し直ちにその旨を通知しなければならない。
第四十一條(訴訟手続) 第三十六條乃至前條に定めるものの外、第三十六條又は第三十八條の規定による訴訟については、民事訴訟(再審を除く。)の例による。
第四十二條(審査無効等の告示) 第三十六條又は第三十八條の規定による訴訟の結果、審査又は罷免の無効の判決が確定したときは、國民審査管理委員会は、直ちにその旨を官報で告示しなければならない。
第六章 再審査
第四十三條(再審査) 第三十六條又は第三十八條の規定による訴訟の結果審査の全部又は一部が無効となつた場合においては、第五項の規定に該当する場合を除いて、更に審査を行わなければならない。
前項の規定による審査の期日は、國民審査管理委員会においてこれを定め少くとも二十五日前に官報で告示しなければならない。
第三十六條又は第三十八條の規定による訴を提起すべき期間又はその訴訟の係属中は、第一項の規定による審査は、これを行うことができない。
第二十五條第二項及び第三項の規定は、第一項の規定による審査にこれを準用する。
第三十六條又は第三十八條の規定による訴訟の結果、審査の全部又は一部が無効となつたときに、更に審査の投票を行わないで審査の結果を定めることができる場合においては、審査会を開き、これを定めなければならない。
第七章 罰則
第四十四條(利益供與等の罪) 左の各号に掲げる行爲をした者は、これを三年以下の懲役若しくは禁錮又は二万円以下の罰金に処する。
一 審査による罷免を免れ若しくは免れさせ又は審査により罷免をさせる目的で、審査人又は審査に関し運動をする者に対し、金銭、物品その他財産上の利益若しくは公私の職務の供與、その供與の申込若しくは約束をし、職務上の地位若しくは職務上の地位に関する特殊の関係を利用して特殊の利益の供與、その供與の申込若しくは約束をし、又は饗應接待、その申込若しくは約束をしたとき。
二 審査による罷免を免れ若しくは免れさせ又は審査により罷免をさせる目的で、審査人又は審査に関し運動をする者に対し、その者又はその者の関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導したとき。
三 審査の投票をし若しくはしないこと、審査に関し運動をし若しくは止めたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的で、審査人又は審査に関し運動をする者に対し、第一号に掲げる行爲をしたとき。
四 第一号若しくは前号の供與、饗應接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込を承諾し、又は第二号の誘導に應じ若しくはこれを促したとき。
五 第一号乃至第三号に掲げる行爲をさせる目的で、審査に関し運動をする者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込若しくは約束をし、又は審査に関し運動をする者においてその交付を受け若しくは要求し、若しくは、その申込を承諾したとき。
六 前各号に掲げる行爲に関し周旋又は勧誘をしたとき。
國民審査管理委員、地方公共團体(行政区及び地方自治法第百五十五條第二項の市の区を含む。以下同じ。)の選挙管理委員、國民審査管理委員会若しくは地方公共團体の選挙管理委員会の書記、投票管理者、開票管理者、審査分会長及び審査長並びに審査事務に関係のある官吏及び吏員が当該審査に関し前項の罪を犯したときは、これを四年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金に処する。警察官吏がその関係の都道府縣内の審査に関し前項の罪を犯したときも、また同樣とする。
第四十五條(沒收及び追徴) 前條の場合において、收受し又は交付を受けた利益は、これを沒收する。その全部又は一部を沒收することができないときは、その價額を追徴する。
第四十六條(審査の自由を妨害する罪) 審査に関し左の各号に掲げる行爲をした者は、これを四年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金に処する。
一 審査人又は審査に関し運動をする者に対し暴行若しくは威力を加え又はこれを拐引したとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ又は演説を妨害しその他僞計詐術等不正の方法で審査の自由を妨害したとき。
三 審査人若しくは審査に関し運動をする者又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して審査人若しくは審査に関し運動する者を威迫したとき。
第四十七條(職権濫用等の罪) 審査に関し官吏、吏員又は第四十四條第二項前段に掲げる者が、故意にその職務の執行を怠り、又はその職権を濫用して審査の自由を妨害したときは、これを四年以下の禁錮に処する。
官吏、吏員又は第四十四條第二項前段に掲げる者が、審査人に対しその投票しようとし又は投票した内容の表示を求めたときは、これを六箇月以下の禁錮又は三千円以下の罰金に処する。
第四十八條(虚僞の事実を公にする罪) 演説又は新聞紙、雜誌、引札、張札その他如何なる方法によつても、左の各号に掲げる行爲をした者は、これを二年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処する。新聞紙及び雜誌にあつては、なお、その編集人及び実際編集を担当した者を罰する。
一 審査による罷免を免れ又は免れさせる目的で審査に付される裁判官の経歴に関し虚僞の事項を公にしたとき。
二 審査により罷免をさせる目的で審査に付される裁判官に関し虚僞の事項を公にしたとき。
第四十九條(衆議院議員選挙法の罰則準用) 審査に関しては、衆議院議員選挙法第百十七條乃至第百二十五條、第百二十七條、第百二十八條、第百三十八條及び第百四十七條の規定を準用する。この場合において、同法第百十七條中「第八條」とあるのは「最高裁判所裁判官國民審査法第四十四條第二項前段」、「投票シタル被選挙人ノ氏名」とあるのは「投票ノ内容」、同法第百十八條中「被選挙人ノ氏名」とあるのは「投票ノ内容」、同法第百十九條中「選挙長」とあるのは「審査分会長、審査長」、「選挙会場」とあるのは「審査分会場、審査会場」、同法第百二十條中「第百十五條第一号又ハ前條」とあるのは「最高裁判所裁判官國民審査法第四十六條第一号又ハ前條」、同法第百二十二條中「選挙会場」とあるのは「審査分会場、審査会場」、同法第百二十五條中「第百十二條乃至第百十三條、第百十五條」とあるのは「最高裁判所裁判官國民審査法第四十四條及第四十六條並ニ本法」、第百二十七條第四項中「第八條」とあるのは「最高裁判所裁判官國民審査法第四十四條第二項前段」、同法第百四十七條中「第十二章」とあるのは「最高裁判所裁判官國民審査法第七章」と、夫ゝ読み替えるものとする。
第八章 補則
第五十條(國民審査管理委員等の失職) 國民審査管理委員、投票管理者、開票管理者、審査分会長又は審査長は、審査権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第五十一條(費用) 審査の施行に関する費用は、國庫の負担とする。
第五十二條(裁判官の氏名の掲示) 市町村の選挙管理委員会は、政令の定めるところにより、審査に付される裁判官の氏名等の掲示をしなければならない。
第五十三條(審査公報の発行) 都道府縣の選挙管理委員会は、政令の定めるところにより、審査に付される裁判官の氏名、経歴その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報を発行しなければならない。
第五十四條(特別区等に対する適用) この法律中市に関する規定は、東京都の区の存する区域、特別市及び地方自治法第百五十五條第二項の市においては、特別区、行政区及び区に、これを適用する。
第五十五條(町村組合等に関する特例) この法律の適用については、全部事務組合又は役場事務組合はこれを一町村、その組合の選挙管理委員会及び選挙管理委員はこれを町村の選挙管理委員会及び選挙管理委員とみなす。
第五十六條(交通至難の地等に関する特例) 交通至難の島その他の地においてこの法律の規定を適用し難い事項については、政令で特別の規定を設けることができる。
第五十七條(施行に関する規定) この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
別記
備 考
一 用紙は、折り疊んだ場合において、なるべく外部から×印を透視することのできない紙質のものを用いなければならない。
二 用紙は、單に折合せとし、差込式によらないでも差し支えない。
三 投票用紙に押すべき都道府縣印は、都道府縣の選挙管理委員会の定めるところにより、市町村印を以てこれに代えても差し支えない。
内務大臣 木村小左衞門
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲
最高裁判所裁判官国民審査法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十一月二十日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百三十六号
最高裁判所裁判官国民審査法目次
第一章
総則
第二章
投票及び開票
第三章
審査分会及び審査会
第四章
審査の結果
第五章
訴訟
第六章
再審査
第七章
罰則
第八章
補則
附則
最高裁判所裁判官国民審査法
第一章 総則
第一条(この法律の趣旨) 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査については、この法律の定めるところによる。
第二条(審査の期日) 審査は、各裁判官につき、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に、これを行う。
各裁判官については、最初の審査の期日から十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に、更に審査を行い、その後も、また同様とする。
第三条(審査を行う区域) 審査は、全都道府県の区域を通じて、これを行う。
第四条(審査権) 衆議院議員の選挙権を有する者は、審査権を有する。
第五条(審査の期日及び裁判官の氏名の告示) 最高裁判所裁判官国民審査管理委員会は、審査の期日前二十五日までに、審査の期日及び審査に付される裁判官の氏名を官報で告示しなければならない。
第六条(審査の方法) 審査は、投票によりこれを行う。
投票は、一人一票に限る。
第七条(投票区及び開票区) 審査の投票区及び開票区は、衆議院議員の選挙の投票区及び開票区による。
第八条(審査人の名簿) 審査には、衆議院議員選挙人名簿を用いる。
第九条(最高裁判所裁判官国民審査管理委員会) 審査に関する事務を管理させるため、最高裁判所裁判官国民審査管理委員会(以下これを国民審査管理委員会という。)を置く。
国民審査管理委員会は、最高裁判所裁判官国民審査管理委員(以下これを国民審査管理委員という。)十人を以てこれを組織する。
国民審査管理委員は、参議院においてその議員の中からこれを選挙する。
国民審査管理委員の任期は、三年とする。但し、補欠委員の任期は、その前任者の残任期間とする。
国民審査管理委員会に関しては、参議院議員選挙法第十六条乃至第十九条の規定を準用する。
第十条(審査に関する事務の監督) 国民審査管理委員会は、審査に関する事務については、都道府県の選挙管理委員会を指揮監督する。
都道府県の選挙管理委員会は、審査に関する事務については、市町村の選挙管理委員会を指揮監督する。
第十一条(裁判官の退官等の場合) 審査に付される裁判官が、審査の期日前その官を失い、又は死亡したときは、その裁判官についての審査は、これを行わない。
前項の場合においては、国民審査管理委員会は、直ちにその旨を官報で告示しなければならない。
第二章 投票及び開票
第十二条(投票に関する事務の担任) 衆議院議員の選挙における投票管理者は、審査における投票管理者となり、審査の投票に関する事務を担任する。
衆議院議員の選挙における投票立会人は、審査における投票立会人となるものとする。
第十三条(投票の時及び場所) 審査の投票は、衆議院議員総選挙の投票所において、その投票と同時にこれを行う。
第十四条(投票用紙の様式) 投票用紙には、審査に付される裁判官の氏名を、国民審査管理委員会がくじで定めた順序により、印刷しなければならない。
投票用紙には、審査に付される各裁判官に対する×の記号を記載する欄を設けなければならない。
投票用紙は、別記様式に準じて都道府県の選挙管理委員会がこれを調製しなければならない。
第十五条(投票の方式) 審査人は、投票所において、罷免を可とする裁判官については、投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に自ら×の記号を記載し、罷免を可としない裁判官については、投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に何等の記載をしないで、これを投票箱に入れなければならない。
投票用紙には、審査人の氏名を記載することができない。
第十六条(点字による投票) 点字による審査の投票を行う場合においては、審査人は、投票所において、投票用紙に、罷免を可とする裁判官があるときはその裁判官の氏名を自ら記載し、罷免を可とする裁判官がないときは何等の記載をしないで、これを投票箱に入れなければならない。
前項の場合における投票用紙の様式その他必要な事項は、政令でこれを定める。
第十七条(投票録) 投票管理者は、審査の投票録を作り、投票に関する次第を記載し、投票立会人とともに、これに署名しなければならない。
第十八条(投票の秘密) 何人も、審査人のした審査の投票の内容を陳述する義務を負わない。
第十九条(開票に関する事務の担任) 衆議院議員の選挙における開票管理者は、審査における開票管理者となり、審査の開票に関する事務を担任する。
衆議院議員の選挙における開票立会人は、審査における開票立会人となるものとする。
第二十条(開票の時及び場所) 審査の開票は、衆議院議員総選挙の開票所において、審査の投票の当日又はその翌日(一開票区に数投票区があるときは、すべての投票箱の送致を受けた日又はその翌日)にこれを行う。
第二十一条(投票の点検及びその結果の報告) 開票管理者は、審査の投票の点検を終えたときは、直ちにその結果を審査分会長に報告しなければならない。
第二十二条(投票の効力) 審査の投票で左に掲げるものは、これを無効とする。
一 成規の用紙を用いないもの
二 ×の記号以外の事項を記載したもの
三 ×の記号を自ら記載したものでないもの
審査に付される裁判官が二人以上の場合においては、前項第三号に該当する投票は、その記載のみを無効とする。裁判官の何人について×の記号を記載したかを確認し難い記載もまた同様とする。
第二十三条(開票録) 開票管理者は、審査の開票録を作り、開票に関する次第を記載し、開票立会人とともに、これに署名しなければならない。
第二十四条(投票等の保存) 審査の投票は、有効無効を区別し、審査の投票録及び開票録と併せて、市町村の選挙管理委員会において、審査の期日から十年間これを保存しなければならない。
第二十五条(選挙の投票を行わない場合) 衆議院議員選挙法第七十一条の規定により選挙の投票を行わない場合においても、審査は、これを行う。
前項の場合における審査の投票及び開票に関しては、第十二条第一項、第十三条、第十九条第一項及び第二十条の規定にかかわらず、衆議院議員選挙法第二十条乃至第二十二条、第四十四条乃至第四十六条及び第四十八条の規定を準用する。
前項の投票及び開票においては、第十二条第二項及び第十九条第二項の規定にかかわらず、投票管理者又は開票管理者は、各投票区又は開票区における衆議院議員選挙人名簿に記載された者の中から、本人の承諾を得て、投票立会人又は開票立会人各三人を選任しなければならない。
第二十六条(投票及び開票に関するその他の事項) この法律及びこれに基いて発する命令に規定するものの外、投票及び開票に関しては、衆議院議員の選挙の投票及び開票の例による。
第三章 審査分会及び審査会
第二十七条(審査分会) 審査分会は、都道府県ごとに都道府県庁又は審査分会長の指定した場所でこれを開く。
審査分会長は、審査権を有する者の中から都道府県の選挙管理委員会の選任したものを以て、これに充てる。
審査分会長は、審査分会に関する事務を担任する。
審査分会長は、当該都道府県の区域内における衆議院議員選挙人名簿に記載された者の中から審査分会立会人三人を選任しなければならない。
審査分会長は、当該都道府県の区域内におけるすべての開票管理者から第二十一条の報告を受けた日又はその翌日に審査分会を開き、審査分会立会人立会の上、その報告を調査しなければならない。
第二十八条(審査分会録) 審査分会長は、審査分会録を作り、審査分会に関する次第を記載し、審査分会立会人とともに、これに署名しなければならない。
審査分会録は、第二十一条の報告に関する書類と併せて、都道府県の選挙管理委員会において、審査の期日から十年間これを保存しなければならない。
第二十九条(審査分会の結果の報告) 審査分会長は、第二十七条第五項の規定による調査を終えたときは、審査分会録の写を添えて、各裁判官について罷免を可とする投票及び可としない投票の数その他審査分会における調査の結果を直ちに審査長に報告しなければならない。
第三十条(審査会) 審査会は、審査長の指定した場所で、これを開く。
審査長は、審査権を有する者の中から国民審査管理委員会の選任した者を以て、これに充てる。
審査長は、審査会に関する事務を担任する。
審査長は、衆議院議員選挙人名簿に記載された者の中から審査立会人三人を選任しなければならない。
審査長は、すべての審査分会長から前条の報告を受けた日又はその翌日に審査会を開き、審査立会人立会の上、その報告を調査しなければならない。
第三十一条(審査録) 審査長は、審査録を作り、審査会に関する次第を記載し、審査立会人とともに、これに署名しなければならない。
審査録は、第二十九条の報告に関する書類と併せて、国民審査管理委員会において、審査の期日から十年間これを保存しなければならない。
第三十二条(罷免を可とされた裁判官) 罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票の数より多い裁判官は、罷免を可とされたものとする。但し、投票の総数が、衆議院議員選挙人名簿確定の日においてこれに記載された者の総数の百分の一に達しないときは、この限りでない。
第三十三条(審査の結果の報告及び告示) 第三十条第五項の規定による調査を終えたときは、審査長は、直ちに罷免を可とされた裁判官の氏名並びに罷免を可とする投票の数及び罷免を可としない投票の数その他審査の次第を国民審査管理委員会に報告しなければならない。
国民審査管理委員会は、前項の報告を受けたときは、直ちに罷免を可とされた裁判官にその旨を告知し、同時に罷免を可とされた裁判官の氏名を官報で告示し、且つ、内閣総理大臣に通知しなければならない。
第三十四条(審査分会及び審査会に関するその他の事項) この法律及びこれに基いて発する命令に規定するものの外、審査分会及び審査会については、衆議院議員選挙法第六章の規定を準用する。
第四章 審査の結果
第三十五条(罷免の効果) 罷免を可とされた裁判官は、第三十六条又は第三十八条の規定による訴を提起すべき期間が経過した日(その訴の提起があつた場合においては、その訴訟が裁判所に係属しなくなつた日又はその訴訟について裁判の確定した日)に罷免される。
審査の結果罷免された裁判官は、罷免の日から五年間は、最高裁判所の裁判官に任命されることができない。
第一項に規定する裁判官は、同項の規定による罷免されるべき日前にその官を失つたときは、同項の規定により罷免されたものとみなす。
第五章 訴訟
第三十六条(審査無効の訴訟) 審査の効力に関し異議があるときは、審査人又は罷免を可とされた裁判官は、国民審査管理委員会の委員長を被告として第三十三条第二項の規定による告示のあつた日から三十日内に東京高等裁判所に訴を提起することができる。
第三十七条(審査無効の判決) 前条の規定による訴訟においては、審査についてこの法律又はこれに基いて発する命令に違反することがあるときは、審査の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、裁判所は、審査の全部又は一部の無効の判決をしなければならない。
第三十八条の規定による訴訟においても、その審査が前項の場合に該当するときは、裁判所は、当該審査の全部又は一部の無効の判決をしなければならない。
第三十八条(罷免無効の訴訟) 審査の結果罷免を可とされた裁判官は、その罷免の効力に関し異議があるときは、国民審査管理委員会の委員長を被告として第三十三条第二項の規定による告示のあつた日から三十日内に東京高等裁判所に訴を提起することがある。
第三十九条(審判の順位) 第三十六条又は前条の規定による訴訟については、裁判所は、他の訴訟の順序にかかわらず、速かにその裁判をしなければならない。
第四十条(訴訟に関する通知) 第三十六条又は第三十八条の規定による訴訟が提起されたとき若しくは裁判所に係属しなくなつたとき又はその訴訟について裁判が確定したときは、裁判所の長は、内閣総理大臣及び国民審査管理委員会に対し直ちにその旨を通知しなければならない。
第四十一条(訴訟手続) 第三十六条乃至前条に定めるものの外、第三十六条又は第三十八条の規定による訴訟については、民事訴訟(再審を除く。)の例による。
第四十二条(審査無効等の告示) 第三十六条又は第三十八条の規定による訴訟の結果、審査又は罷免の無効の判決が確定したときは、国民審査管理委員会は、直ちにその旨を官報で告示しなければならない。
第六章 再審査
第四十三条(再審査) 第三十六条又は第三十八条の規定による訴訟の結果審査の全部又は一部が無効となつた場合においては、第五項の規定に該当する場合を除いて、更に審査を行わなければならない。
前項の規定による審査の期日は、国民審査管理委員会においてこれを定め少くとも二十五日前に官報で告示しなければならない。
第三十六条又は第三十八条の規定による訴を提起すべき期間又はその訴訟の係属中は、第一項の規定による審査は、これを行うことができない。
第二十五条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定による審査にこれを準用する。
第三十六条又は第三十八条の規定による訴訟の結果、審査の全部又は一部が無効となつたときに、更に審査の投票を行わないで審査の結果を定めることができる場合においては、審査会を開き、これを定めなければならない。
第七章 罰則
第四十四条(利益供与等の罪) 左の各号に掲げる行為をした者は、これを三年以下の懲役若しくは禁錮又は二万円以下の罰金に処する。
一 審査による罷免を免れ若しくは免れさせ又は審査により罷免をさせる目的で、審査人又は審査に関し運動をする者に対し、金銭、物品その他財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込若しくは約束をし、職務上の地位若しくは職務上の地位に関する特殊の関係を利用して特殊の利益の供与、その供与の申込若しくは約束をし、又は饗応接待、その申込若しくは約束をしたとき。
二 審査による罷免を免れ若しくは免れさせ又は審査により罷免をさせる目的で、審査人又は審査に関し運動をする者に対し、その者又はその者の関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導したとき。
三 審査の投票をし若しくはしないこと、審査に関し運動をし若しくは止めたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的で、審査人又は審査に関し運動をする者に対し、第一号に掲げる行為をしたとき。
四 第一号若しくは前号の供与、饗応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込を承諾し、又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
五 第一号乃至第三号に掲げる行為をさせる目的で、審査に関し運動をする者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込若しくは約束をし、又は審査に関し運動をする者においてその交付を受け若しくは要求し、若しくは、その申込を承諾したとき。
六 前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき。
国民審査管理委員、地方公共団体(行政区及び地方自治法第百五十五条第二項の市の区を含む。以下同じ。)の選挙管理委員、国民審査管理委員会若しくは地方公共団体の選挙管理委員会の書記、投票管理者、開票管理者、審査分会長及び審査長並びに審査事務に関係のある官吏及び吏員が当該審査に関し前項の罪を犯したときは、これを四年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金に処する。警察官吏がその関係の都道府県内の審査に関し前項の罪を犯したときも、また同様とする。
第四十五条(没収及び追徴) 前条の場合において、収受し又は交付を受けた利益は、これを没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第四十六条(審査の自由を妨害する罪) 審査に関し左の各号に掲げる行為をした者は、これを四年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金に処する。
一 審査人又は審査に関し運動をする者に対し暴行若しくは威力を加え又はこれを拐引したとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ又は演説を妨害しその他偽計詐術等不正の方法で審査の自由を妨害したとき。
三 審査人若しくは審査に関し運動をする者又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して審査人若しくは審査に関し運動する者を威迫したとき。
第四十七条(職権濫用等の罪) 審査に関し官吏、吏員又は第四十四条第二項前段に掲げる者が、故意にその職務の執行を怠り、又はその職権を濫用して審査の自由を妨害したときは、これを四年以下の禁錮に処する。
官吏、吏員又は第四十四条第二項前段に掲げる者が、審査人に対しその投票しようとし又は投票した内容の表示を求めたときは、これを六箇月以下の禁錮又は三千円以下の罰金に処する。
第四十八条(虚偽の事実を公にする罪) 演説又は新聞紙、雑誌、引札、張札その他如何なる方法によつても、左の各号に掲げる行為をした者は、これを二年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処する。新聞紙及び雑誌にあつては、なお、その編集人及び実際編集を担当した者を罰する。
一 審査による罷免を免れ又は免れさせる目的で審査に付される裁判官の経歴に関し虚偽の事項を公にしたとき。
二 審査により罷免をさせる目的で審査に付される裁判官に関し虚偽の事項を公にしたとき。
第四十九条(衆議院議員選挙法の罰則準用) 審査に関しては、衆議院議員選挙法第百十七条乃至第百二十五条、第百二十七条、第百二十八条、第百三十八条及び第百四十七条の規定を準用する。この場合において、同法第百十七条中「第八条」とあるのは「最高裁判所裁判官国民審査法第四十四条第二項前段」、「投票シタル被選挙人ノ氏名」とあるのは「投票ノ内容」、同法第百十八条中「被選挙人ノ氏名」とあるのは「投票ノ内容」、同法第百十九条中「選挙長」とあるのは「審査分会長、審査長」、「選挙会場」とあるのは「審査分会場、審査会場」、同法第百二十条中「第百十五条第一号又ハ前条」とあるのは「最高裁判所裁判官国民審査法第四十六条第一号又ハ前条」、同法第百二十二条中「選挙会場」とあるのは「審査分会場、審査会場」、同法第百二十五条中「第百十二条乃至第百十三条、第百十五条」とあるのは「最高裁判所裁判官国民審査法第四十四条及第四十六条並ニ本法」、第百二十七条第四項中「第八条」とあるのは「最高裁判所裁判官国民審査法第四十四条第二項前段」、同法第百四十七条中「第十二章」とあるのは「最高裁判所裁判官国民審査法第七章」と、夫ゝ読み替えるものとする。
第八章 補則
第五十条(国民審査管理委員等の失職) 国民審査管理委員、投票管理者、開票管理者、審査分会長又は審査長は、審査権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第五十一条(費用) 審査の施行に関する費用は、国庫の負担とする。
第五十二条(裁判官の氏名の掲示) 市町村の選挙管理委員会は、政令の定めるところにより、審査に付される裁判官の氏名等の掲示をしなければならない。
第五十三条(審査公報の発行) 都道府県の選挙管理委員会は、政令の定めるところにより、審査に付される裁判官の氏名、経歴その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報を発行しなければならない。
第五十四条(特別区等に対する適用) この法律中市に関する規定は、東京都の区の存する区域、特別市及び地方自治法第百五十五条第二項の市においては、特別区、行政区及び区に、これを適用する。
第五十五条(町村組合等に関する特例) この法律の適用については、全部事務組合又は役場事務組合はこれを一町村、その組合の選挙管理委員会及び選挙管理委員はこれを町村の選挙管理委員会及び選挙管理委員とみなす。
第五十六条(交通至難の地等に関する特例) 交通至難の島その他の地においてこの法律の規定を適用し難い事項については、政令で特別の規定を設けることができる。
第五十七条(施行に関する規定) この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
別記
備 考
一 用紙は、折り畳んだ場合において、なるべく外部から×印を透視することのできない紙質のものを用いなければならない。
二 用紙は、単に折合せとし、差込式によらないでも差し支えない。
三 投票用紙に押すべき都道府県印は、都道府県の選挙管理委員会の定めるところにより、市町村印を以てこれに代えても差し支えない。
内務大臣 木村小左衛門
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲