第二十六條 公證人ハ法令ニ違反シタル事項、無效ノ法律行爲及無能力ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ法律行爲ニ付證書ヲ作成スルコトヲ得ス
第二十七條 公證人ハ日本語ヲ用ウル證書ニ非サレハ之ヲ作成スルコトヲ得ス
第二十八條 公證人證書ヲ作成スルニハ囑託人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルコトヲ要ス
公證人囑託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ其ノ本籍地若ハ寄留地ノ市區町村長ノ作成シタル印鑑證明書ヲ提出セシメ又ハ氏名ヲ知リ且面識アル證人二人ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ證明セシムルコトヲ要ス但シ囑託人外國人ナルトキハ警察官吏又ハ帝國ニ駐在スル本國領事ノ證明書ヲ以テ印鑑證明書ニ代フルコトヲ得
急迫ナル場合ニ於テ公證人法律行爲ニ非サル事實ニ付證書ヲ作成スルトキハ前項ノ手續ハ證書ヲ作成シタル後三日內ニ證書ノ作成ニ關スル規定ニ依リ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ手續ヲ爲シタルトキハ證書ハ急迫ナル場合ニ非サルカ爲其ノ效力ヲ妨ケラルルコトナシ
第二十九條 囑託人日本語ヲ解セサル場合又ハ聾者若ハ啞者其ノ他言語ヲ發スルコト能ハサル者ニシテ文字ヲ解セサル場合ニ於テ公證人證書ヲ作成スルニハ通事ヲ立會ハシムルコトヲ要ス
第三十條 囑託人盲者ナル場合又ハ文字ヲ解セサル場合ニ於テ公證人證書ヲ作成スルニハ立會人ヲ立會ハシムルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ囑託人立會人ヲ立會ハシムルコトヲ請求シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十一條 代理人ニ依リ囑託セラレタル場合ニ於テハ前三條ノ規定ハ其ノ代理人ニ之ヲ適用ス
第三十二條 代理人ニ依リ囑託セラレタル場合ニ於テ公證人證書ヲ作成スルニハ其ノ代理人ノ權限ヲ證スヘキ證書ヲ提出セシメ其ノ權限ヲ證明セシムルコトヲ要ス
前項ノ證書カ認證ヲ受ケサル私署證書ナルトキハ其ノ證書ノ外其ノ署名者ノ本籍地又ハ寄留地ノ市區町村長ノ作成シタル印鑑證明書ヲ提出セシメ證書ノ眞正ナルコトヲ證明セシムルコトヲ要ス但シ其ノ署名者外國人ナルトキハ第二十八條第二項但書ノ規定ヲ準用ス
證書ノ作成ニ關スル規定ニ依リ代理又ハ其ノ方式ノ欠缺ヲ追完シタルトキハ證書ハ其ノ欠缺アリタルカ爲效力ヲ妨ケラルルコトナシ
第三十三條 第三者ノ許可又ハ同意ヲ要スヘキ法律行爲ニ付公證人證書ヲ作成スルニハ其ノ許可又ハ同意アリタルコトヲ證スヘキ證書ヲ提出セシメ其ノ許可又ハ同意ヲ證明セシムルコトヲ要ス
第三十四條 通事及立會人ハ囑託人又ハ其ノ代理人之ヲ選定スルコトヲ要ス
左ニ揭クル者ハ立會人タルコトヲ得ス
五 囑託事項ニ付代理人若ハ輔佐人タル者又ハ代理人若ハ輔佐人タリシ者
六 公證人又ハ囑託人若ハ其ノ代理人ノ配偶者、四親等內ノ親族、同居ノ戶主若ハ家族、法定代理人、保佐人、雇人又ハ同居人
第三十五條 公證人證書ヲ作成スルニハ其ノ聽取シタル陳述、其ノ目擊シタル狀況其ノ他自ラ實驗シタル事實ヲ錄取シ且其ノ實驗ノ方法ヲ記載シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三十六條 公證人ノ作成スル證書ニハ其ノ本旨ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
二 囑託人ノ住所、職業、氏名及年齡若法人ナルトキハ其ノ名稱及事務所
三 代理人ニ依リ囑託セラレタルトキハ其ノ旨及其ノ代理人ノ權限ヲ證スヘキ證書ヲ提出セシメ其ノ權限ヲ證明セシメタルコト竝其ノ代理人ノ住所、職業、氏名及年齡
四 囑託人又ハ其ノ代理人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルトキハ其ノ旨
五 第三者ノ許可又ハ同意アリタルコトヲ證スヘキ證書ヲ提出セシメ其ノ許可又ハ同意ヲ證明セシメタルトキハ其ノ旨及其ノ事由竝其ノ第三者ノ住所、職業、氏名及年齡若法人ナルトキハ其ノ名稱及事務所
六 市區町村長ノ作成シタル印鑑證明書又ハ警察官吏若ハ領事ノ證明書ヲ提出セシメ人違ナキコト又ハ證書ノ眞正ナルコトヲ證明セシメタルトキハ其ノ旨及其ノ事由
七 氏名ヲ知リ且面識アル證人ニ依リ人違ナキコトヲ證明セシメタルトキハ其ノ旨及其ノ事由竝其ノ證人ノ住所、職業、氏名及年齡
八 急迫ナル場合ニ於テ人違ナキコトヲ證明セシメサリシトキハ其ノ旨
九 通事又ハ立會人ヲ立會ハシメタルトキハ其ノ旨及其ノ事由竝其ノ通事又ハ立會人ノ住所、職業、氏名及年齡
第三十七條 公證人證書ヲ作成スルニハ普通平易ノ語ヲ用井字畫ヲ明瞭ナラシムヘシ
接續スヘキ字行ニ空白アルトキハ墨線ヲ以テ之ヲ接續セシムヘシ
數量、年月日及番號ヲ記載スルニハ壹貳參拾ノ字ヲ用ウヘシ
證書ニ文字ヲ挿入スルトキハ其ノ文字及其ノ箇所ヲ欄外又ハ末尾ノ餘白ニ記載シ公證人、囑託人又ハ其ノ代理人及立會人之ニ捺印スルコトヲ要ス
證書ノ文字ヲ削除スルトキハ其ノ文字ハ尙明ニ讀得ヘキ爲字體ヲ存シ削除シタル字數及箇所ヲ欄外又ハ末尾ノ餘白ニ記載シ公證人、囑託人又ハ其ノ代理人及立會人之ニ捺印スルコトヲ要ス
前三項ノ規定ニ違反シテ爲シタル訂正ハ其ノ效力ヲ有セス
第三十九條 公證人ハ其ノ作成シタル證書ヲ列席者ニ讀聞カセ又ハ閱覽セシメ囑託人又ハ其ノ代理人ノ承認ヲ得且其ノ旨ヲ證書ニ記載スルコトヲ要ス
通事ヲ立會ハシメタル場合ニ於テハ前項ノ外通事ヲシテ證書ノ趣旨ヲ通譯セシメ且其ノ旨ヲ證書ニ記載スルコトヲ要ス
前二項ノ記載ヲ爲シタルトキハ公證人及列席者各自證書ニ署名捺印スルコトヲ要ス
列席者ニシテ署名スルコト能ハサル者アルトキハ其ノ旨ヲ證書ニ記載シ公證人及立會人之ニ捺印スルコトヲ要ス
證書數葉ニ涉ルトキハ公證人、囑託人又ハ其ノ代理人及立會人ハ每葉ノ綴目ニ契印ヲ爲スコトヲ要ス
證書ハ公證人、囑託人若ハ其ノ代理人又ハ立會人ノ契印ニ依リ其ノ全部ノ連綴明白ナル場合ニ於テハ前項ニ違反シタルカ爲其ノ效力ヲ妨ケラルルコトナシ
第四十條 公證人ノ作成スル證書ニ他ノ書面ヲ引用シ且之ヲ其ノ證書ニ添附スルトキハ公證人、囑託人又ハ其ノ代理人及立會人其ノ證書ト添附書面トノ綴目ニ契印ヲ爲スコトヲ要ス
前二項ニ依ル添附書面ハ公證人ノ作成シタル證書ノ一部ト看做ス
第四十一條 代理人ノ權限ヲ證スヘキ證書、市區町村長、警察官吏又ハ領事ノ證明書、第三者ノ許可又ハ同意ヲ證スヘキ證書其ノ他ノ附屬書類ハ公證人ノ作成シタル證書ニ之ヲ連綴スヘシ
公證人、囑託人又ハ其ノ代理人及立會人ハ證書ト其ノ附屬書類トノ綴目及附屬書類相互ノ綴目ニ契印ヲ爲スヘシ
第四十二條 證書ノ原本滅失シタルトキハ公證人ハ旣ニ交付シタル證書ノ正本又ハ謄本ヲ徵シ所屬地方裁判所長ノ認可ヲ受ケ滅失シタル證書ニ代ヘテ之ヲ保存スルコトヲ要ス
前項ノ證書ニハ所屬地方裁判所長ノ認可ヲ受ケ滅失シタル證書ニ代ヘテ之ヲ保存スル旨及其ノ認可ノ年月日ヲ記載シ公證人之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
第四十三條 公證人ハ囑託人ヲシテ印紙稅法ニ依リ證書ノ原本ニ印紙ヲ貼用セシムヘシ
第四十四條 囑託人、其ノ承繼人又ハ證書ノ趣旨ニ付法律上利害ノ關係ヲ有スルコトヲ證明シタル者ハ證書ノ原本ノ閱覽ヲ請求スルコトヲ得
第二十八條第一項、第二項及第五項、第三十一條竝第三十二條第一項及第二項ノ規定ハ前項ニ依リ公證人證書ノ原本ヲ閱覽セシムヘキ場合ニ之ヲ準用ス
公證人囑託人ノ承繼人ニ證書ノ原本ヲ閱覽セシムヘキ場合ニ於テハ承繼人タルコトヲ證スヘキ證書ヲ提出セシメ其ノ承繼人タルコトヲ證明セシムヘシ
第三十二條第二項ノ規定ハ前項ニ依リ提出セシムヘキ證書ニ之ヲ準用ス
檢事ハ何時ニテモ證書ノ原本ノ閱覽ヲ請求スルコトヲ得
第四十五條 公證人ハ證書原簿ヲ調製シ記入前其ノ所屬地方裁判所長ノ契印ヲ請フヘシ
地方裁判所長ハ其ノ枚數ヲ表紙ノ裏面ニ記載シ職氏名ヲ署シ職印ヲ押捺シ每葉ノ綴目ニ職印ヲ以テ契印ヲ爲スヘシ
第四十六條 證書原簿ニハ證書ノ作成每ニ進行ノ順序ヲ逐ヒ左ノ事項ヲ記入スヘシ
二 囑託人ノ住所及氏名若法人ナルトキハ其ノ名稱及事務所
第三十七條及第三十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ハ證書ノ作成ヲ記入スヘキ帳簿ニ關シ法令ニ別段ノ定アル場合ニ之ヲ適用セス
第四十七條 囑託人又ハ其ノ承繼人ハ證書ノ正本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第二十八條第一項、第二項及第五項、第三十一條、第三十二條第一項及第二項竝第四十四條第三項及第四項ノ規定ハ前項ニ依リ公證人證書ノ正本ヲ作成スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
第四十八條 證書ノ正本ニハ左ノ事項ヲ記載シ公證人之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ違反スルモノハ證書ノ正本タルノ效力ヲ有セス
第四十九條 數事件ヲ列記スル證書又ハ數人各自ニ關係ヲ異ニスル證書ニ付テハ有用ノ部分及證書ノ方式ニ關スル記載ヲ抄錄シテ其ノ正本ヲ作成スルコトヲ得
前項ノ正本ニハ抄錄正本タルコトヲ記載シ前條第一項第二號ノ記載ニ代フルコトヲ要ス
第五十條 公證人證書ノ正本ヲ交付シタルトキハ其ノ證書ノ末尾ニ囑託人又ハ其ノ承繼人何某ノ爲正本ヲ交付シタル旨及其ノ交付ノ年月日ヲ記載シ之ニ署名捺印スヘシ
第五十一條 囑託人、其ノ承繼人又ハ證書ノ趣旨ニ付法律上利害ノ關係ヲ有スルコトヲ證明シタル者ハ證書又ハ其ノ附屬書類ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第二十八條第一項、第二項及第五項、第三十一條、第三十二條第一項及第二項竝第四十四條第三項及第四項ノ規定ハ前項ニ依リ公證人證書ノ謄本ヲ作成スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
第五十二條 證書ノ謄本ニハ左ノ事項ヲ記載シ公證人之ニ署名捺印スヘシ
第五十三條 證書ノ謄本ハ其ノ一部ニ付之ヲ作成スルコトヲ得
第五十四條 前二條ノ規定ハ證書ノ附屬書類ノ謄本ノ作成ニ之ヲ準用ス
第五十五條 證書又ハ其ノ附屬書類ノ謄本ヲ請求スル者ハ之ニ記載スヘキ事項ヲ自ラ記載シ公證人ノ署名捺印ノミヲ請求スルコトヲ得
公證人前項ノ謄本ニ署名捺印シタルトキハ其ノ謄本ハ公證人自ラ之ヲ作成シタルト同一ノ效力ヲ有ス
第五十六條 證書ノ正本若ハ謄本又ハ其ノ附屬書類ノ謄本數葉ニ涉ルトキハ公證人ハ每葉ノ綴目ニ契印ヲ爲スヘシ
第三十七條及第三十八條ノ規定ハ證書ノ正本及謄本竝其ノ附屬書類ノ謄本ノ作成ニ之ヲ準用ス
第五十七條 第十八條第二項ノ規定ハ公證人遺言書ヲ作成スル場合ニ、第二十八條乃至第三十二條ノ規定ハ公證人拒絕證書ヲ作成スル場合ニ之ヲ適用セス