朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル豫約出版法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年四月十五日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
內務大臣 法學博士 男爵 平田東助
法律第五十五號
豫約出版法
第一條 代金ノ全部又ハ一部ヲ前收シ文書圖畫ノ頒布ヲ豫約スル出版ニ對シテハ出版法ニ依ルノ外尙本法ヲ適用ス
第二條 發行者ハ左ノ事項ヲ記載シ內務大臣ニ屆出ツヘシ
一 題號
二 發行ノ年月日及順次發行ノ場合ハ其ノ豫定年月日
三 著作者ノ氏名
四 內容、製本及紙數ノ槪要
五 豫約定價及代金前收ノ方法
六 發行所
七 發行者ノ氏名、生年月日、法人ナルトキハ其ノ名稱及代表者ノ氏名
前項ノ屆出ハ書面ヲ以テシ發行者又ハ其ノ法定代理人ヨリ豫約手續ニ著手ノ日ヨリ十日以前ニ管轄地方官廳ニ之ヲ差出スヘシ
第三條 豫約出版物ニ付出版法ニ依リテ爲ス出版屆書ニハ第二條ニ依リテ屆出ヲ爲シタルコト及其ノ年月日ヲ記載スヘシ
第四條 發行者又ハ其ノ法定代理人ハ第二條ノ屆出ト同時ニ保證金トシテ管轄地方官廳ニ左ノ金額ヲ納ムヘシ
一 豫約定價十圓未滿ハ金五百圓
二 豫約定價十圓以上ハ金千圓
保證金ハ命令ヲ以テ定ムル種類ノ有價證券ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第五條 發行所、發行者ノ法定代理人、發行者法人ナルトキハ其ノ名稱及代表者ニ變更アリ又ハ發行者能力ヲ失ヒ、死亡若ハ解散シ又ハ死亡若ハ解散ニ因リ法律上豫約出版ヲ廢絕スルノ已ムヲ得サルニ至リタルトキハ十日以內ニ內務大臣ニ屆出ツヘシ
前項ノ屆出ハ書面ヲ以テシ發行者又ハ其ノ法定代理人、其ノ死亡ニ係ルトキハ相續人、相續人定マラス又ハ相續人ナキトキハ戶主若ハ同居ノ親族、法人ノ合併ニ因ル解散ニ係ルトキハ其ノ法人ノ權利及義務ヲ承繼シタル法人、破產ニ因ル解散ニ係ルトキハ破產管財人ヨリ管轄地方官廳ニ之ヲ差出スヘシ
第六條 法律上已ムヲ得サルニ非サル豫約出版ノ廢絕又ハ第二條第一項第一號乃至第五號ノ事項ノ變更及死亡若ハ解散ニ因ラサル發行者ノ變更ハ新舊發行者又ハ其ノ法定代理人ヨリ其ノ事由ヲ具シタル書面ヲ以テ豫メ管轄地方官廳ヲ經由シ內務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
前項ノ許可ハ豫約當事者ノ解除權行使ヲ妨ケラルルコトナシ
第七條 相續人又ハ法人ノ合併ニ因リ其ノ權利及義務ヲ承繼シタル法人ハ豫約出版ニ關スル權利及義務ヲ承繼ス
第八條 保證金ニ對スル權利及義務ハ發行者變更ノ場合ニ於テ承繼發行者之ヲ承繼ス
第九條 保證金ハ適法ニ豫約出版ヲ廢絕シ又ハ完全ニ豫約ヲ履行シタル後ニ非サレハ其ノ還付ヲ請求シ又ハ其ノ債權ヲ讓渡スルコトヲ得ス但シ國稅徵收法及之ヲ準用スル法令ヲ適用シ又ハ豫約解除若ハ豫約不履行ニ因リ代金返還若ハ損害賠償ヲ命スル判決ヲ執行スルハ此ノ限ニ在ラス
第十一條ノ罰金又ハ刑事訴訟費用ヲ完納セサルトキハ檢事ハ保證金ノ全部又ハ一部ヲ之ニ充ツルコトヲ得
第十條 發行者又ハ其ノ法定代理人ハ保證金ノ闕額ヲ生シタル場合ニ於テ之ヲ塡補スヘシ
第十一條 第二條、第四條ノ規定ニ依ラスシテ豫約手續ニ著手シ又ハ第六條若ハ第九條ニ違反シ又ハ管轄地方官廳ノ督促ヲ受ケタル後七日以內ニ保證金ヲ塡補セサル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三條又ハ第五條ニ違反シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 明治三十三年法律第五十二號ハ前條ノ犯罪ニ之ヲ準用ス
第十三條 本法ハ新聞紙、出版法第二條但書ニ依ル雜誌及官廳ニ於テ出版スル文書圖畫ニ之ヲ適用セス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル予約出版法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年四月十五日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
内務大臣 法学博士 男爵 平田東助
法律第五十五号
予約出版法
第一条 代金ノ全部又ハ一部ヲ前収シ文書図画ノ頒布ヲ予約スル出版ニ対シテハ出版法ニ依ルノ外尚本法ヲ適用ス
第二条 発行者ハ左ノ事項ヲ記載シ内務大臣ニ届出ツヘシ
一 題号
二 発行ノ年月日及順次発行ノ場合ハ其ノ予定年月日
三 著作者ノ氏名
四 内容、製本及紙数ノ概要
五 予約定価及代金前収ノ方法
六 発行所
七 発行者ノ氏名、生年月日、法人ナルトキハ其ノ名称及代表者ノ氏名
前項ノ届出ハ書面ヲ以テシ発行者又ハ其ノ法定代理人ヨリ予約手続ニ著手ノ日ヨリ十日以前ニ管轄地方官庁ニ之ヲ差出スヘシ
第三条 予約出版物ニ付出版法ニ依リテ為ス出版届書ニハ第二条ニ依リテ届出ヲ為シタルコト及其ノ年月日ヲ記載スヘシ
第四条 発行者又ハ其ノ法定代理人ハ第二条ノ届出ト同時ニ保証金トシテ管轄地方官庁ニ左ノ金額ヲ納ムヘシ
一 予約定価十円未満ハ金五百円
二 予約定価十円以上ハ金千円
保証金ハ命令ヲ以テ定ムル種類ノ有価証券ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第五条 発行所、発行者ノ法定代理人、発行者法人ナルトキハ其ノ名称及代表者ニ変更アリ又ハ発行者能力ヲ失ヒ、死亡若ハ解散シ又ハ死亡若ハ解散ニ因リ法律上予約出版ヲ廃絶スルノ已ムヲ得サルニ至リタルトキハ十日以内ニ内務大臣ニ届出ツヘシ
前項ノ届出ハ書面ヲ以テシ発行者又ハ其ノ法定代理人、其ノ死亡ニ係ルトキハ相続人、相続人定マラス又ハ相続人ナキトキハ戸主若ハ同居ノ親族、法人ノ合併ニ因ル解散ニ係ルトキハ其ノ法人ノ権利及義務ヲ承継シタル法人、破産ニ因ル解散ニ係ルトキハ破産管財人ヨリ管轄地方官庁ニ之ヲ差出スヘシ
第六条 法律上已ムヲ得サルニ非サル予約出版ノ廃絶又ハ第二条第一項第一号乃至第五号ノ事項ノ変更及死亡若ハ解散ニ因ラサル発行者ノ変更ハ新旧発行者又ハ其ノ法定代理人ヨリ其ノ事由ヲ具シタル書面ヲ以テ予メ管轄地方官庁ヲ経由シ内務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
前項ノ許可ハ予約当事者ノ解除権行使ヲ妨ケラルルコトナシ
第七条 相続人又ハ法人ノ合併ニ因リ其ノ権利及義務ヲ承継シタル法人ハ予約出版ニ関スル権利及義務ヲ承継ス
第八条 保証金ニ対スル権利及義務ハ発行者変更ノ場合ニ於テ承継発行者之ヲ承継ス
第九条 保証金ハ適法ニ予約出版ヲ廃絶シ又ハ完全ニ予約ヲ履行シタル後ニ非サレハ其ノ還付ヲ請求シ又ハ其ノ債権ヲ譲渡スルコトヲ得ス但シ国税徴収法及之ヲ準用スル法令ヲ適用シ又ハ予約解除若ハ予約不履行ニ因リ代金返還若ハ損害賠償ヲ命スル判決ヲ執行スルハ此ノ限ニ在ラス
第十一条ノ罰金又ハ刑事訴訟費用ヲ完納セサルトキハ検事ハ保証金ノ全部又ハ一部ヲ之ニ充ツルコトヲ得
第十条 発行者又ハ其ノ法定代理人ハ保証金ノ闕額ヲ生シタル場合ニ於テ之ヲ填補スヘシ
第十一条 第二条、第四条ノ規定ニ依ラスシテ予約手続ニ著手シ又ハ第六条若ハ第九条ニ違反シ又ハ管轄地方官庁ノ督促ヲ受ケタル後七日以内ニ保証金ヲ填補セサル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第三条又ハ第五条ニ違反シタル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 明治三十三年法律第五十二号ハ前条ノ犯罪ニ之ヲ準用ス
第十三条 本法ハ新聞紙、出版法第二条但書ニ依ル雑誌及官庁ニ於テ出版スル文書図画ニ之ヲ適用セス