第六十條 陪審構成ノ手續ハ判事、檢事、裁判所書記、被告人、辯護人及陪審員列席シ公判廷ニ於テ之ヲ行フ
第六十一條 前條第一項ノ手續ハ陪審員二十四人以上出頭スルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
出頭シタル陪審員二十四人ニ達セサルトキハ裁判長ハ之ヲ補充スル爲裁判所所在地又ハ其ノ附近ノ市町村ノ陪審員候補者名簿ヨリ抽籤ヲ以テ必要ナル員數ノ陪審員ヲ選定シ便宜ノ方法ニ依リ之ヲ呼出スヘシ
第六十二條 陪審員二十四人以上出頭シタルトキハ裁判長ハ其ノ氏名、職業及住居地ヲ記載シタル書面ヲ示シ檢事及被告人ニ對シ陪審員中除斥セラルヘキ者アリヤ否ヲ問フヘシ
裁判長ハ陪審員ニ被告人ノ氏名、職業及住居地ヲ告ケ除斥ノ原由アリヤ否ヲ問フヘシ
檢事、被告人及陪審員除斥ノ原由アリトスルトキハ其ノ旨ノ申立ヲ爲スヘシ
第六十三條 出頭シタル陪審員中第十二條乃至第十四條ノ規定ニ依リ陪審員タル資格ヲ有セサル者アリトスルトキハ裁判所ハ決定ヲ爲スヘシ
第六十四條 檢事及被告人ハ陪審ヲ構成スヘキ陪審員及補充陪審員ノ員數ヲ超過スル員數ニ付各其ノ半數ヲ忌避スルコトヲ得忌避スルコトヲ得ヘキ人員奇數ナルトキハ被告人ハ尙一人ヲ忌避スルコトヲ得
被告人數人アルトキハ忌避ハ共同シテ之ヲ行フ共同ノ方法ニ付協議整ハサルトキハ忌避ヲ行ハシムル方法ハ裁判長之ヲ定ム
第六十五條 裁判長ハ陪審員ノ氏名票ヲ抽籤函ニ入レタル後檢事及被告人ノ忌避スルコトヲ得ル員數ヲ告知スヘシ
裁判長ハ氏名票ヲ一票宛抽籤函ヨリ抽出シ之ヲ讀上クヘシ
裁判長氏名ヲ讀上ケタルトキハ檢事及被告人ハ承認又ハ忌避スル旨ヲ陳述スヘシ其ノ順序ハ檢事ヲ先ニシ被告人ヲ後ニス
次ノ氏名票ヲ抽籤函ヨリ抽出ス迄ニ陳述ヲ爲ササルトキハ承認ノ陳述ヲ爲シタルモノト看做ス裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言スル迄陳述ヲ爲ササルトキ亦同シ
陳述ハ次ノ氏名票ヲ抽出シタル後ハ之ヲ取消スコトヲ得ス裁判長抽籤終リタル旨ヲ宣言シタル後亦同シ
第六十六條 前條ノ手續ニ依リ陪審ヲ構成スヘキ陪審員及補充陪審員ノ數ヲ充シタルトキハ裁判長ハ抽籤終リタル旨ヲ宣言スヘシ
第六十七條 陪審ヲ構成スヘキ陪審員ハ初ニ當籤シタル十二人ヲ以テ之ニ充テ補充陪審員ハ其ノ他ノ當籤者ヲ以テ之ニ充ツ
第六十八條 陪審員ハ第六十五條ノ規定ニ依リ爲シタル抽籤ノ順序ニ從ヒ著席スヘシ
第六十九條 裁判長ハ檢事ノ被告事件陳述前陪審員ニ對シ陪審員ノ心得ヲ諭告シ之ヲシテ宣誓ヲ爲サシムヘシ
宣誓書ニハ良心ニ從ヒ公平誠實ニ其ノ職務ヲ行フヘキコトヲ誓フ旨ヲ記載スヘシ
裁判長ハ起立シテ宣誓書ヲ朗讀シ陪審員ヲシテ之ニ署名捺印セシムヘシ
第七十條 裁判長ハ陪席判事ノ一人ヲシテ被告人ノ訊問及證據調ヲ爲サシムルコトヲ得
陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受ケ被告人、證人、鑑定人、通事及翻譯人ヲ訊問スルコトヲ得
第七十一條 證據ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外裁判所ノ直接ニ取調ヘタルモノニ限ル
第七十二條 左ニ揭クル書類圖畫ハ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
二 檢證、押收又ハ搜索ノ調書及之ヲ補充スル書類圖畫
三 公務員ノ職務ヲ以テ證明スルコトヲ得ヘキ事實ニ付公務員ノ作リタル書類
四 前號ノ事實ニ付外國ノ公務員ノ作リタル書類ニシテ其ノ眞正ナルコトノ證明アルモノ
第七十三條 裁判所、豫審判事、受命判事、受託判事其ノ他法令ニ依リ特別ニ裁判權ヲ有スル官署、檢事、司法警察官又ハ訴訟上ノ共助ヲ爲ス外國ノ官署ノ作リタル訊問調書及之ヲ補充スル書類圖畫ハ左ノ場合ニ限リ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
一 共同被告人若ハ證人死亡シタルトキ又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ之ヲ召喚シ難キトキ
二 被告人又ハ證人公判外ノ訊問ニ對シテ爲シタル供述ノ重要ナル部分ヲ公判ニ於テ變更シタルトキ
第七十四條 前二條ノ場合ノ外裁判外ニ於テ被告人其ノ他ノ者ノ供述ヲ錄取シタル書類又ハ裁判外ニ於テ作成シタル書類圖畫ハ供述者若ハ作成者死亡シタルトキ又ハ疾病其ノ他ノ事由ニ因リ召喚シ難キトキニ限リ之ヲ證據ト爲スコトヲ得
第七十五條 證據ト爲スコトニ付訴訟關係人ノ異議ナキ書類圖畫ハ前三條ノ規定ニ拘ラス之ヲ證據ト爲スコトヲ得
第七十六條 證據調終リタル後檢事、被告人及辯護人ハ犯罪ノ構成要素ニ關スル事實上及法律上ノ問題ノミニ付意見ヲ陳述スヘシ
辯護人數人アル場合ニ於テ被告人ノ爲ニスル意見ノ陳述ハ重複シテ之ヲ爲スコトヲ得ス
第七十七條 前條ノ辯論終結後裁判長ハ陪審ニ對シ犯罪ノ構成ニ關シ法律上ノ論點及問題ト爲ルヘキ事實竝證據ノ要領ヲ說示シ犯罪構成事實ノ有無ヲ問ヒ評議ノ結果ヲ答申スヘキ旨ヲ命スヘシ但シ證據ノ信否及罪責ノ有無ニ關シ意見ヲ表示スルコトヲ得ス
第七十八條 裁判長ノ說示ニ對シテハ異議ヲ申立ツルコトヲ得ス
第七十九條 裁判長ノ問ハ主問ト補問トニ區別シ陪審ニ於テ然リ又ハ然ラスト答ヘ得ヘキ文言ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
主問ハ公判ニ付セラレタル犯罪構成事實ノ有無ヲ評議セシムル爲之ヲ爲スモノトス
補問ハ公判ニ付セラレタルモノト異リタル犯罪構成事實ノ有無ヲ評議セシムル必要アリト認ムル場合ニ於テ之ヲ爲スモノトス
犯罪ノ成立ヲ阻却スル原由ト爲ルヘキ事實ノ有無ヲ評議セシムル必要アリト認ムルトキハ其ノ問ハ他ノ問ト分別シテ之ヲ爲スヘシ
第八十條 陪審員、檢事、被告人及辯護人ハ問ノ變更ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第八十一條 裁判長ハ問書ニ署名捺印シ之ヲ陪審ニ交付スヘシ
第八十二條 裁判長ハ評議ヲ爲サシムル爲陪審員ヲシテ評議室ニ退カシムヘシ
裁判長ハ公判廷ニ於テ示シタル證據物及證據書類ヲ陪審ニ交付スルコトヲ得
第八十三條 陪審員ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレハ評議ヲ了ル前評議室ヲ出テ又ハ他人ト交通スルコトヲ得ス
陪審員ニ非サル者ハ裁判長ノ許可ヲ受クルニ非サレハ評議室ニ入ルコトヲ得ス
第八十四條 陪審ノ答申前陪審員ヲシテ裁判所ヲ退出セシムル場合ニ於テハ裁判長ハ陪審員ニ對シ滯留ノ場所及他人トノ交通ニ關シ遵守スヘキ事項ヲ指示スヘシ
第八十五條 陪審員第八十三條第一項ノ規定ニ違反シタルトキ又ハ前條ノ規定ニ依リ指示セラレタル事項ヲ遵守セサルトキハ裁判所ハ其ノ陪審員ニ對シ職務ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得
第八十七條 陪審ハ評議ヲ了ル前更ニ說示ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ公判廷ニ於テ其ノ申立ヲ爲スヘシ
第八十八條 答申ハ問ニ對シ然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ之ヲ爲スヘシ但シ問ニ揭クル事實ノ一部ヲ肯定又ハ否定スルトキハ之ニ付然リ又ハ然ラスノ語ヲ以テ答申スヘシ
主問ヲ否定シタル場合ニ於テ補問アルトキハ之ニ付評議ヲ爲スヘシ
第九十一條 犯罪構成事實ヲ肯定スルニハ陪審員ノ過半數ノ意見ニ依ルコトヲ要ス
犯罪構成事實ヲ肯定スル陪審員ノ意見其ノ過半數ニ達セサルトキハ之ヲ否定シタルモノトス
第九十二條 答申ハ問書ニ記載シ陪審長署名捺印シテ之ヲ裁判長ニ提出スヘシ
答申ニ不備又ハ齟齬アルトキハ裁判長ハ問書ヲ返付シ更ニ評議ヲ爲シ答申ヲ訂正スヘキ旨ヲ命スヘシ
第九十三條 裁判長ハ公判廷ニ於テ裁判所書記ヲシテ問及之ニ對スル陪審ノ答申ヲ朗讀セシムヘシ
第九十四條 前條ノ手續終リタルトキハ裁判長ハ陪審員ヲ退廷セシムヘシ
第九十五條 裁判所陪審ノ答申ヲ不當ト認ムルトキハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス決定ヲ以テ事件ヲ更ニ他ノ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ得
第九十六條 陪審犯罪構成事實ヲ肯定スルノ答申ヲ爲シタル場合ニ於テ裁判所前條ノ決定ヲ爲ササルトキハ檢事ハ適用スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳述スヘシ
第九十七條 陪審ノ答申ヲ採擇シテ判決ノ言渡ヲ爲スニハ裁判所ハ陪審ノ評議ニ付シテ事實ノ判斷ヲ爲シタル旨ヲ示スヘシ
有罪ノ言渡ヲ爲スニハ罪ト爲ルヘキ事實及法令ノ適用ヲ示スヘシ刑ノ加重減免ノ原由タル事實上ノ主張アリタルトキハ之ニ對スル判斷ヲ示スヘシ
無罪ノ言渡ヲ爲スニハ犯罪構成事實ヲ認メサルコト又ハ被告事件罪ト爲ラサルコトヲ示スヘシ
第九十八條 引續キ七日以上開廷セサリシ場合ニ於テハ公判手續ヲ更新スヘシ
陪審ヲ構成スヘキ陪審員疾病其ノ他ノ事由ニ因リ職務ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ補充陪審員ナキトキ亦前項ニ同シ
第九十九條 裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス公訴棄却、管轄違又ハ免訴ノ裁判ヲ爲スヘキ原由アルコトヲ認メタル場合ニ於テハ陪審ノ評議ニ付セスシテ審判ヲ爲スヘシ
第百條 裁判所書記ハ陪審員ノ氏名、陪審ノ構成其ノ他陪審ニ關スル訴訟手續及裁判長ノ說示ノ要領ヲ公判調書ニ記載スヘシ