朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル刑法施行法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年三月二十七日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
司法大臣 男爵 千家尊福
法律第二十九號
刑法施行法
第一條 本法ニ於テ舊刑法ト稱スルハ明治十三年第三十六號布吿刑法ヲ謂ヒ他ノ法律ト稱スルハ刑法施行前ニ公布シタル法律及ヒ勅令、布吿ニシテ法律ト同一ノ效力ヲ有スルモノヲ謂フ
第二條 刑法施行前ニ舊刑法ノ罪又ハ他ノ法律ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ左ノ例ニ從ヒ刑法ノ主刑ト舊刑法ノ主刑トヲ對照シ刑法第十條ノ規定ニ依リ其輕重ヲ定ム
刑法ノ刑 舊刑法ノ刑
死刑 死刑
無期懲役 無期徒刑
無期禁錮 無期流刑
有期懲役 有期徒刑、重懲役、輕懲役、重禁錮
有期禁錮 有期流刑、重禁獄、輕禁獄、輕禁錮
罰金 罰金
拘留 拘留
科料 科料
第三條 法律ニ依リ刑ヲ加重減輕ス可キトキ又ハ酌量減輕ヲ爲ス可キトキハ加重又ハ減輕ヲ爲シタル後刑ノ對照ヲ爲ス可シ
數罪ヲ犯シタル者ニ付テハ併合罪又ハ數罪俱發ニ關スル規定ヲ適用シタル後刑ノ對照ヲ爲ス可シ
一罪ニ付キ二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ又ハ二個以上ノ主刑中其一個ヲ科ス可キトキハ其中ニテ重キ刑ノミニ付キ對照ヲ爲ス可シ併合罪又ハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リ數罪ノ主刑ヲ併科ス可キトキ亦同シ
第四條 刑法施行前舊刑法又ハ他ノ法律ノ規定ニ依リ吿訴ヲ待テ論ス可キ罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ吿訴ヲ要セサルモノト雖モ吿訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス
第五條 刑法第六條ニ依リ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スル場合ニ於テハ剝奪公權、停止公權、監視又ハ罰金ヲ附加ス可キトキト雖モ之ヲ附加セス
第六條 刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付キ刑法施行ノ前又ハ後ニ確定裁判アリタル後刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付キ裁判ヲ爲ストキハ左ノ例ニ依ル
一 確定裁判アリタル罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ニ於テハ其罪ト餘罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
二 確定裁判アリタル罪ニ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ヲ適用シタルトキト雖モ舊刑法又ハ他ノ法律ニ於テハ其罪ト餘罪トニ付キ數罪俱發ニ關スル規定ニ依ル
第七條 左ニ記載シタル者刑法施行前更ニ刑法ノ有期懲役ニ相當スル刑ニ該ル罪ヲ犯シ刑法施行後其罪ニ付キ裁判ヲ爲ストキハ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ニ於テハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
一 舊刑法又ハ他ノ法律ニ依リ刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ處セラレタル者
二 舊刑法又ハ他ノ法律ニ依リ刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ因リ死刑ニ處セラレ其執行ノ免除ヲ得又ハ減刑ニ因リ懲役ニ相當スル刑ニ減輕セラレタル者
刑法第五十六條第三項ノ規定ハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リ處斷セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第八條 刑法施行前ニ犯シタル一罪ト刑法施行後ニ犯シタル一罪又ハ數罪トニ付キ同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ刑法施行前ノ罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用ス可キトキト雖モ其罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第九條 刑法施行前ニ犯シタル數罪ト刑法施行後ニ犯シタル一罪又ハ數罪トニ付キ同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テ刑法施行前ノ罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用ス可キトキハ數罪俱發ニ關スル規定ニ依リテ定マリタル一ノ重キ罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ刑法施行前ノ罪ニ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ヲ適用ス可キトキハ其數罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ適用ス
第十條 刑法施行後ニ犯シタル罪ニ付キ確定裁判アリタル後刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付キ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ其罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ確定裁判アリタル罪ト其罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十一條 刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付キ刑法施行後確定裁判アリタル後刑法施行後ニ犯シタル餘罪ニ付キ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ確定裁判アリタル罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ其罪ト餘罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十二條 第七條第一項各號ニ記載シタル者刑法施行後有期懲役ニ該ル罪ヲ犯シタルトキハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
第七條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三條 刑法施行後ハ舊刑法又ハ舊刑法施行前ノ法令ノ刑ニ處セラレタル者ト雖モ刑ノ執行、假出獄及ヒ時效ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス但罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル者ヲ勞役場ニ留置スル場合ニ於テハ檢事ノ請求ニ依リ裁判所決定ヲ以テ其言渡ヲ爲ス可シ
前項ノ場合ニ於テハ第二條及ヒ明治十四年第八十一號布吿第一條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲ス可シ
舊刑法ノ刑ニ處セラレタル者ノ刑法施行前ニ於ケル時效期間ノ起算及ヒ時效ノ中斷ニ付テハ期滿免除ニ關スル規定ニ從フ
第十四條 刑法施行後ハ舊刑法ノ刑ニ處ス可キ者ト雖モ刑ノ執行猶豫ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ第二條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲ス可シ
第十五條 刑法施行前假出獄ヲ許サレタル者及ヒ幽閉ヲ免セラレタル者ニ付テハ刑法施行ノ日ヨリ刑法ノ假出獄ニ關スル規定ヲ準用ス
刑法施行前罰金又ハ科料ヲ納完セサル爲メ輕禁錮又ハ拘留ニ換ヘラレタル者ニ付テハ刑法施行ノ日ヨリ刑法第十八條及ヒ第三十條ノ規定ヲ準用ス但留置ノ日數ハ其執行ノ日ヨリ起算シ刑法第十八條ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六條 懲治場留置ノ執行ハ刑法施行後ト雖モ從前ノ例ニ從フ但司法大臣ハ何時ニテモ其留置ヲ解キ又ハ感化院ニ入院セシムルコトヲ得
第十七條 闕席判決ヲ以テ言渡シタル刑ノ時效期間ハ其言渡ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第十八條 剝奪公權、停止公權、監視及附加ノ罰金ノ言渡ハ刑法施行ノ日ヨリ其效力ヲ失フ但旣ニ徵收シタル附加ノ罰金ハ之ヲ還付セス
附加ノ罰金ヲ納完セサル爲メ換ヘラレタル禁錮ニ付キ亦前項ニ同シ
第十九條 他ノ法律ニ定メタル主刑ハ第二條ノ例ニ準シ刑法ノ刑ニ對照シテ之ヲ刑法ノ刑名ニ變更ス但單ニ禁錮トアルハ之ヲ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ變更ス
他ノ法律ノ規定中剝奪公權、停止公權、監視及ヒ附加ノ罰金ニ處ス可キ旨ヲ定メタルモノハ之ヲ廢止ス
第二十條 他ノ法律ニ定メタル刑ニ付テハ其期間又ハ金額ヲ變更セス但他ノ法律中特ニ期間又ハ金額ヲ定メサル刑ニ付テハ仍ホ舊刑法總則中期間又ハ金額ニ關スル規定ニ從フ
第二十一條 他ノ法律ニ定メタル刑ヲ加重又ハ減輕ス可キ場合ニ於テハ第二十三條ノ場合ヲ除ク外舊刑法ノ加減例ニ關スル規定ニ依ル
第二十二條 他ノ法律中舊刑法ノ規定ヲ揭ケ又ハ舊刑法ノ規定ニ依リ若クハ之ニ依ラサルコトヲ定メタル場合ニ付キ刑法中其規定ニ相當スル規定アルモノハ刑法ノ規定ニ變更ス
爆發物取締罰則第十條ハ之ヲ廢止ス
第二十三條 前條ノ規定ニ依リ刑法ノ刑ヲ適用ス可キ場合ニ於テハ他ノ法律中刑ノ加重ニ關スル特別ノ規定ハ之ヲ適用セス刑ノ減輕ノ方法ニ付テハ刑法ノ加減例ニ關スル規定ニ從フ
第二十四條 明治二十二年法律第二十八號及ヒ明治二十三年法律第九十九號ハ之ヲ廢止ス
第二十五條 左ニ記載シタル舊刑法ノ規定ハ當分ノ內刑法施行前ト同一ノ效力ヲ有ス
一 第二編第三章第五節
二 第百九十八條乃至第二百條
三 第二編第四章第七節及ヒ第九節
四 第二編第五章第三節
五 第三編第二章第四節
刑法第八條ノ規定及ヒ本法中他ノ法律ニ關スル規定ハ之ヲ前項ノ規定ニ準用ス
第二十六條 左ニ記載シタル罪ハ刑法第二條ノ例ニ從フ
一 軍機保護法ニ揭ケタル罪
二 徵兵令ニ揭ケタル罪
三 明治三十八年法律第六十六號ニ揭ケタル罪
四 通貨及證券模造取締法ニ揭ケタル罪
五 船舶法ニ揭ケタル罪
六 船員法ニ揭ケタル罪
七 船舶職員法ニ揭ケタル罪
八 船舶檢査法ニ揭ケタル罪
九 戶籍法ニ揭ケタル罪
十 郵便法ニ揭ケタル罪
十一 舊刑法中印紙ノ僞造、變造及ヒ其知情使用ニ關スル罪
第二十七條 左ニ記載シタル罪ハ刑法第三條ノ例ニ從フ
一 著作權法ニ揭ケタル罪
二 重要物產同業組合法ニ揭ケタル罪
三 移民保護法ニ揭ケタル罪
第二十八條 人ノ資格其他ノ事項ニ關シ舊刑法ノ刑名又ハ罪別ヲ揭ケタル他ノ法律ノ規定ハ刑法施行ノ爲メ變更セラルルコトナシ
第二十九條 死刑、無期又ハ短期一年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重罪ト看做ス
第三十條 前條ニ該當セサル懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕罪ト看做ス
前條ニ該當セサル懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ禁錮ニ該ル罪ト看做ス
前條ニ該當セサル懲役ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重禁錮ニ該ル罪ト看做ス
前條ニ該當セサル禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕禁錮ニ該ル罪ト看做ス
第三十一條 拘留又ハ科料ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ違警罪ト看做ス
第三十二條 他ノ法律ニ定メタル罪ニシテ死刑、無期又ハ短期六年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ルモノノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第三十三條 死刑、無期又ハ六年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタルモノト看做ス
第三十四條 前條ニ記載シタル者及ヒ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ公權ヲ剝奪セラレタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ復權ヲ得タル者ニハ之ヲ適用セス
第三十五條 六年未滿ノ懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕罪ノ刑ニ處セラレタルモノト看做ス
六年未滿ノ懲役ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重禁錮ニ處セラレタルモノト看做ス
六年未滿ノ禁錮ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕禁錮ニ處セラレタルモノト看做ス
第三十六條 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者及ヒ舊刑法ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ヲ受クルコトナキニ至ルマテ公權ヲ停止セラレタルモノト看做ス
第三十七條 他ノ法律中舊刑法第三十一條又ハ第三十三條ノ規定アル爲メ人ノ資格ニ關シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ舊刑法第三十一條及ヒ第三十三條ノ規定ハ人ノ資格ニ關シ刑法施行前ト同一ノ效力ヲ有ス
第三十八條 
刑事訴訟法第八條ヲ左ノ如ク改ム
第八條 公訴ノ時效ハ左ノ期間ヲ經過スルニ因テ完成ス
一 死刑ニ該ル罪ニ付テハ十五年
二 無期又ハ長期十年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ニ付テハ十年
三 長期十年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ニ付テハ七年
四 長期五年未滿ノ懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ該ル罪ニ付テハ三年
五 刑法第百八十五條ノ罪ニ付テハ一年
六 拘留又ハ科料ニ該ル罪ニ付テハ六月
第三十九條 
刑事訴訟法第六十二條第三號ヲ左ノ如ク改ム
第三 區裁判所ノ管轄ニ屬スル罪ト思料シタル事件ニ付テハ證據書類ニ意見書ヲ添ヘ之ヲ區裁判所檢事ニ送致ス可シ
第四十條 
刑事訴訟法第百二十五條第二號ヲ左ノ如ク改ム
第二 醫師、藥劑師、藥種商、產婆、辯護士、辯護人、公證人又ハ此等ノ職ニ在リシ者及ヒ宗敎若クハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リシ者其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル事實ニシテ默祕ス可キモノニ關スルトキ
第四十一條 
刑事訴訟法第百二十六條第一項中「刑法第百八十條ニ從ヒ罰金」ヲ「四十圓以下ノ罰金又ハ科料」ニ改メ同條第二項中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
同法第百三十八條中「刑法第百七十九條ニ從ヒ罰金」ヲ「四十圓以下ノ罰金又ハ科料」ニ改ム
同法第百四十四條第一項中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第四十二條 
刑事訴訟法第百六十七條第一項ヲ左ノ如ク改メ第三項ヲ削ル
被吿事件其裁判所ノ管轄ニ屬スルモノト思料シタルトキハ公判ニ付スル言渡ヲ爲ス可シ
第四十三條 
刑事訴訟法第百七十二條ヲ左ノ如ク改ム
第百七十二條 檢事ハ免訴又ハ管轄違ノ決定ニ對シ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第四十四條 
刑事訴訟法第二百三十六條中「輕罪、重罪ノ」ヲ削ル
第四十五條 
刑事訴訟法第二百四十一條ヲ左ノ如ク改ム
第二百四十一條 裁判所ニ於テ輕罪トシテ受理シタル事件ヲ重罪ナリトスルトキハ其事件ヲ豫審判事ニ送付スル決定ヲ爲ス可シ檢事ノ請求アルトキ亦同シ
被吿事件豫審ヲ經タルトキハ公判ヲ止メ受命判事ヲシテ其事件ノ取調ヲ爲シ報吿ヲ爲サシムヘシ
受命判事ハ豫審判事ニ屬スル處分ヲ爲スコトヲ得
第四十六條 
刑事訴訟法第二百六十四條中「更ニ重罪事件トシテ裁判ス可キ旨ノ決定ヲ爲シ」ヲ削ル
第四十七條 
刑事訴訟法第三百十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
監獄ニ於テ執行ス可キ二個以上ノ主刑ノ執行ハ其重キモノヲ先ニス但特別ノ事由アルトキハ檢事ハ重キ刑ノ執行ヲ停止シ他ノ刑ノ執行ヲ爲サシムルコトヲ得
第四十八條 
刑事訴訟法第三百十八條ノ次ニ左ノ二條ヲ加フ
第三百十八條ノ二 死刑ノ執行ハ檢事及ヒ裁判所書記ノ立會ニテ之ヲ爲ス可シ
死刑ノ執行ニ關スル者ノ外刑場ニ入ルコトヲ得ス但檢事又ハ監獄ノ長ノ許可ヲ得タル者ハ此限ニ在ラス
第三百十八條ノ三 死刑ノ言渡ヲ受ケタル者心神喪失シタルトキハ司法大臣ノ命令ニ因リ其痊癒ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
死刑ノ言渡ヲ受ケタル婦女懷胎ナルトキハ分娩後司法大臣ノ命令アルニ非サレハ執行ヲ爲スコトヲ得ス
第四十九條 
刑事訴訟法第三百十九條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
懲役、禁錮又ハ拘留ノ言渡ヲ受ケタル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其事故ノ止ムマテ刑ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
一 心神喪失ノ狀態ニ在ルトキ
二 刑ノ執行ニ因リ生命ヲ保ツコト能ハサル虞アルトキ
三 受胎後七月以上ナルトキ
四 分娩後一月ヲ經過セサルトキ
第五十條 
刑事訴訟法第三百二十條中「之ヲ爲ス可シ」ノ下ニ「刑ノ執行ノ停止ニ付キ亦同シ」ヲ加ヘ第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ徵收ニ付テハ非訟事件手續法第二百八條ノ規定ヲ準用ス
第五十一條 
刑事訴訟法第二十四條、第六十三條、第百六十八條、第百七十三條及ヒ第百七十四條但書ハ之ヲ削ル
第五十二條 刑事訴訟法中復權及ヒ特赦ニ關スル規定ハ之ヲ削ル
第五十三條 刑法第五十二條又ハ第五十八條ノ規定ニ依リ刑ヲ定ム可キ場合ニ於テハ其犯罪事實ニ付キ最終ノ判決ヲ爲シタル裁判所ノ檢事其裁判所ニ請求ヲ爲ス可シ
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ被吿人又ハ其代理人ノ意見ヲ聽キ決定ヲ爲ス可シ此決定ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第五十四條 刑ノ執行猶豫ハ裁判所ニ於テ檢事ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ刑ノ言渡ト同時ニ判決ヲ以テ之ヲ言渡ス可シ
第五十五條 刑ノ執行猶豫ノ言渡ハ上訴ニ因リ其效力ヲ失フコトナシ但原判決ヲ取消シ又ハ破毀シタル場合ハ此限ニ在ラス
上訴裁判所ハ新ニ執行猶豫ノ言渡ヲ爲スコトヲ得
第五十六條 刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消ス可キ場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ノ所在地又ハ最後ノ住所地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其裁判所ニ請求ヲ爲ス可シ
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ被吿人又ハ其代理人ノ意見ヲ聽キ決定ヲ爲ス可シ此決定ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第五十七條 第五十三條及ヒ前條ノ裁判及ヒ抗吿ニ付テハ刑事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
第五十八條 明治三十八年法律第七十號ニ依リ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケ仍ホ猶豫ノ期間ヲ經過セサル者ハ刑法ニ依リ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタルモノト看做ス
第五十九條 明治三十九年法律第五十四號ハ之ヲ廢止ス
第六十條 私訴ハ公訴ニ附帶スルトキハ民事訴訟ノ方式ニ依ラス書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第六十一條 贓物犯人ノ手ニ在ルトキハ被害者ノ請求ナシト雖モ之ヲ還付スル言渡ヲ爲ス可シ
第六十二條 左ニ記載シタルモノヲ以テ公訴ニ關スル訴訟費用トス
一 豫審、公判ニ付キ呼出シタル證人、鑑定人及ヒ通事ニ給與ス可キ日當、旅費及ヒ止宿料
二 第六十六條ニ記載シタル費用
第六十三條 證人、鑑定人及ヒ通事ノ日當ハ左ノ範圍內ニ於テ豫審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム
一 證人ノ日當ハ出頭一度ニ付金二十錢乃至金五十錢但止宿料ヲ給與スル場合ニ於テハ日當ヲ給與セス
二 鑑定人及ヒ通事ノ日當ハ出頭一度ニ付キ金三十錢乃至金五圓
第六十四條 證人、鑑定人及ヒ通事ノ旅費ハ海陸路一里ニ付キ金五錢乃至金二十錢ノ範圍內ニ於テ豫審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム但通路兩線以上アルトキハ最近ノ通路ヲ以テ旅費ヲ算定ス
前項ニ揭ケタル者ノ止宿料ハ一日ニ付キ金二十錢乃至金一圓ノ範圍內ニ於テ豫審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム但八里以上ノ地ヨリ來リ滯在スルトキニ非サレハ之ヲ給與セス
第六十五條 證人、鑑定人及ヒ通事ノ日當、旅費及ヒ止宿料ハ豫審ニ於テハ其終結前、公判ニ於テハ其判決前ニ本人ヨリ請求スルニ非サレハ之ヲ給與セス
第六十六條 鑑定、通譯ニ付キ數多ノ時間又ハ特別ノ技能若クハ費用ヲ要スルトキハ日當ノ外別ニ相當ノ金額ヲ給與スルコトヲ得
第六十七條 共犯ノ訴訟費用ハ共犯人ノ連帶負擔トス
附 則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
刑法附則其他舊刑法施行ノ爲メ公布シタル法令ハ之ヲ廢止ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル刑法施行法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年三月二十七日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
司法大臣 男爵 千家尊福
法律第二十九号
刑法施行法
第一条 本法ニ於テ旧刑法ト称スルハ明治十三年第三十六号布告刑法ヲ謂ヒ他ノ法律ト称スルハ刑法施行前ニ公布シタル法律及ヒ勅令、布告ニシテ法律ト同一ノ効力ヲ有スルモノヲ謂フ
第二条 刑法施行前ニ旧刑法ノ罪又ハ他ノ法律ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ左ノ例ニ従ヒ刑法ノ主刑ト旧刑法ノ主刑トヲ対照シ刑法第十条ノ規定ニ依リ其軽重ヲ定ム
刑法ノ刑 旧刑法ノ刑
死刑 死刑
無期懲役 無期徒刑
無期禁錮 無期流刑
有期懲役 有期徒刑、重懲役、軽懲役、重禁錮
有期禁錮 有期流刑、重禁獄、軽禁獄、軽禁錮
罰金 罰金
拘留 拘留
科料 科料
第三条 法律ニ依リ刑ヲ加重減軽ス可キトキ又ハ酌量減軽ヲ為ス可キトキハ加重又ハ減軽ヲ為シタル後刑ノ対照ヲ為ス可シ
数罪ヲ犯シタル者ニ付テハ併合罪又ハ数罪俱発ニ関スル規定ヲ適用シタル後刑ノ対照ヲ為ス可シ
一罪ニ付キ二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ又ハ二個以上ノ主刑中其一個ヲ科ス可キトキハ其中ニテ重キ刑ノミニ付キ対照ヲ為ス可シ併合罪又ハ数罪俱発ニ関スル規定ニ依リ数罪ノ主刑ヲ併科ス可キトキ亦同シ
第四条 刑法施行前旧刑法又ハ他ノ法律ノ規定ニ依リ告訴ヲ待テ論ス可キ罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス
第五条 刑法第六条ニ依リ旧刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スル場合ニ於テハ剥奪公権、停止公権、監視又ハ罰金ヲ附加ス可キトキト雖モ之ヲ附加セス
第六条 刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付キ刑法施行ノ前又ハ後ニ確定裁判アリタル後刑法施行前ニ犯シタル余罪ニ付キ裁判ヲ為ストキハ左ノ例ニ依ル
一 確定裁判アリタル罪ニ旧刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ニ於テハ其罪ト余罪トニ付キ併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
二 確定裁判アリタル罪ニ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ヲ適用シタルトキト雖モ旧刑法又ハ他ノ法律ニ於テハ其罪ト余罪トニ付キ数罪俱発ニ関スル規定ニ依ル
第七条 左ニ記載シタル者刑法施行前更ニ刑法ノ有期懲役ニ相当スル刑ニ該ル罪ヲ犯シ刑法施行後其罪ニ付キ裁判ヲ為ストキハ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ニ於テハ累犯ニ関スル規定ヲ準用ス
一 旧刑法又ハ他ノ法律ニ依リ刑法ノ懲役ニ相当スル刑ニ処セラレタル者
二 旧刑法又ハ他ノ法律ニ依リ刑法ノ懲役ニ相当スル刑ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ因リ死刑ニ処セラレ其執行ノ免除ヲ得又ハ減刑ニ因リ懲役ニ相当スル刑ニ減軽セラレタル者
刑法第五十六条第三項ノ規定ハ数罪俱発ニ関スル規定ニ依リ処断セラレタル者ニ之ヲ準用ス
第八条 刑法施行前ニ犯シタル一罪ト刑法施行後ニ犯シタル一罪又ハ数罪トニ付キ同時ニ裁判ヲ為ス場合ニ於テハ刑法施行前ノ罪ニ旧刑法又ハ他ノ法律ヲ適用ス可キトキト雖モ其罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ数罪トニ付キ併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
第九条 刑法施行前ニ犯シタル数罪ト刑法施行後ニ犯シタル一罪又ハ数罪トニ付キ同時ニ裁判ヲ為ス場合ニ於テ刑法施行前ノ罪ニ旧刑法又ハ他ノ法律ヲ適用ス可キトキハ数罪俱発ニ関スル規定ニ依リテ定マリタル一ノ重キ罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ数罪トニ付キ併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ刑法施行前ノ罪ニ刑法又ハ刑法ノ刑名ニ依リ刑ヲ定メタル法令ヲ適用ス可キトキハ其数罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ数罪トニ付キ併合罪ニ関スル規定ヲ適用ス
第十条 刑法施行後ニ犯シタル罪ニ付キ確定裁判アリタル後刑法施行前ニ犯シタル余罪ニ付キ裁判ヲ為ス場合ニ於テハ其罪ニ旧刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ確定裁判アリタル罪ト其罪トニ付キ併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
第十一条 刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付キ刑法施行後確定裁判アリタル後刑法施行後ニ犯シタル余罪ニ付キ裁判ヲ為ス場合ニ於テハ確定裁判アリタル罪ニ旧刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ其罪ト余罪トニ付キ併合罪ニ関スル規定ヲ準用ス
第十二条 第七条第一項各号ニ記載シタル者刑法施行後有期懲役ニ該ル罪ヲ犯シタルトキハ累犯ニ関スル規定ヲ準用ス
第七条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三条 刑法施行後ハ旧刑法又ハ旧刑法施行前ノ法令ノ刑ニ処セラレタル者ト雖モ刑ノ執行、仮出獄及ヒ時効ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス但罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル者ヲ労役場ニ留置スル場合ニ於テハ検事ノ請求ニ依リ裁判所決定ヲ以テ其言渡ヲ為ス可シ
前項ノ場合ニ於テハ第二条及ヒ明治十四年第八十一号布告第一条ノ例ニ依リ主刑ノ対照ヲ為ス可シ
旧刑法ノ刑ニ処セラレタル者ノ刑法施行前ニ於ケル時効期間ノ起算及ヒ時効ノ中断ニ付テハ期満免除ニ関スル規定ニ従フ
第十四条 刑法施行後ハ旧刑法ノ刑ニ処ス可キ者ト雖モ刑ノ執行猶予ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ第二条ノ例ニ依リ主刑ノ対照ヲ為ス可シ
第十五条 刑法施行前仮出獄ヲ許サレタル者及ヒ幽閉ヲ免セラレタル者ニ付テハ刑法施行ノ日ヨリ刑法ノ仮出獄ニ関スル規定ヲ準用ス
刑法施行前罰金又ハ科料ヲ納完セサル為メ軽禁錮又ハ拘留ニ換ヘラレタル者ニ付テハ刑法施行ノ日ヨリ刑法第十八条及ヒ第三十条ノ規定ヲ準用ス但留置ノ日数ハ其執行ノ日ヨリ起算シ刑法第十八条ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六条 懲治場留置ノ執行ハ刑法施行後ト雖モ従前ノ例ニ従フ但司法大臣ハ何時ニテモ其留置ヲ解キ又ハ感化院ニ入院セシムルコトヲ得
第十七条 闕席判決ヲ以テ言渡シタル刑ノ時効期間ハ其言渡ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第十八条 剥奪公権、停止公権、監視及附加ノ罰金ノ言渡ハ刑法施行ノ日ヨリ其効力ヲ失フ但既ニ徴収シタル附加ノ罰金ハ之ヲ還付セス
附加ノ罰金ヲ納完セサル為メ換ヘラレタル禁錮ニ付キ亦前項ニ同シ
第十九条 他ノ法律ニ定メタル主刑ハ第二条ノ例ニ準シ刑法ノ刑ニ対照シテ之ヲ刑法ノ刑名ニ変更ス但単ニ禁錮トアルハ之ヲ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ変更ス
他ノ法律ノ規定中剥奪公権、停止公権、監視及ヒ附加ノ罰金ニ処ス可キ旨ヲ定メタルモノハ之ヲ廃止ス
第二十条 他ノ法律ニ定メタル刑ニ付テハ其期間又ハ金額ヲ変更セス但他ノ法律中特ニ期間又ハ金額ヲ定メサル刑ニ付テハ仍ホ旧刑法総則中期間又ハ金額ニ関スル規定ニ従フ
第二十一条 他ノ法律ニ定メタル刑ヲ加重又ハ減軽ス可キ場合ニ於テハ第二十三条ノ場合ヲ除ク外旧刑法ノ加減例ニ関スル規定ニ依ル
第二十二条 他ノ法律中旧刑法ノ規定ヲ掲ケ又ハ旧刑法ノ規定ニ依リ若クハ之ニ依ラサルコトヲ定メタル場合ニ付キ刑法中其規定ニ相当スル規定アルモノハ刑法ノ規定ニ変更ス
爆発物取締罰則第十条ハ之ヲ廃止ス
第二十三条 前条ノ規定ニ依リ刑法ノ刑ヲ適用ス可キ場合ニ於テハ他ノ法律中刑ノ加重ニ関スル特別ノ規定ハ之ヲ適用セス刑ノ減軽ノ方法ニ付テハ刑法ノ加減例ニ関スル規定ニ従フ
第二十四条 明治二十二年法律第二十八号及ヒ明治二十三年法律第九十九号ハ之ヲ廃止ス
第二十五条 左ニ記載シタル旧刑法ノ規定ハ当分ノ内刑法施行前ト同一ノ効力ヲ有ス
一 第二編第三章第五節
二 第百九十八条乃至第二百条
三 第二編第四章第七節及ヒ第九節
四 第二編第五章第三節
五 第三編第二章第四節
刑法第八条ノ規定及ヒ本法中他ノ法律ニ関スル規定ハ之ヲ前項ノ規定ニ準用ス
第二十六条 左ニ記載シタル罪ハ刑法第二条ノ例ニ従フ
一 軍機保護法ニ掲ケタル罪
二 徴兵令ニ掲ケタル罪
三 明治三十八年法律第六十六号ニ掲ケタル罪
四 通貨及証券模造取締法ニ掲ケタル罪
五 船舶法ニ掲ケタル罪
六 船員法ニ掲ケタル罪
七 船舶職員法ニ掲ケタル罪
八 船舶検査法ニ掲ケタル罪
九 戸籍法ニ掲ケタル罪
十 郵便法ニ掲ケタル罪
十一 旧刑法中印紙ノ偽造、変造及ヒ其知情使用ニ関スル罪
第二十七条 左ニ記載シタル罪ハ刑法第三条ノ例ニ従フ
一 著作権法ニ掲ケタル罪
二 重要物産同業組合法ニ掲ケタル罪
三 移民保護法ニ掲ケタル罪
第二十八条 人ノ資格其他ノ事項ニ関シ旧刑法ノ刑名又ハ罪別ヲ掲ケタル他ノ法律ノ規定ハ刑法施行ノ為メ変更セラルルコトナシ
第二十九条 死刑、無期又ハ短期一年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ重罪ト看做ス
第三十条 前条ニ該当セサル懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ軽罪ト看做ス
前条ニ該当セサル懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ禁錮ニ該ル罪ト看做ス
前条ニ該当セサル懲役ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ重禁錮ニ該ル罪ト看做ス
前条ニ該当セサル禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ軽禁錮ニ該ル罪ト看做ス
第三十一条 拘留又ハ科料ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ違警罪ト看做ス
第三十二条 他ノ法律ニ定メタル罪ニシテ死刑、無期又ハ短期六年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ルモノノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第三十三条 死刑、無期又ハ六年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタルモノト看做ス
第三十四条 前条ニ記載シタル者及ヒ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ公権ヲ剥奪セラレタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ復権ヲ得タル者ニハ之ヲ適用セス
第三十五条 六年未満ノ懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ軽罪ノ刑ニ処セラレタルモノト看做ス
六年未満ノ懲役ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ重禁錮ニ処セラレタルモノト看做ス
六年未満ノ禁錮ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ軽禁錮ニ処セラレタルモノト看做ス
第三十六条 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者及ヒ旧刑法ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ヲ受クルコトナキニ至ルマテ公権ヲ停止セラレタルモノト看做ス
第三十七条 他ノ法律中旧刑法第三十一条又ハ第三十三条ノ規定アル為メ人ノ資格ニ関シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ旧刑法第三十一条及ヒ第三十三条ノ規定ハ人ノ資格ニ関シ刑法施行前ト同一ノ効力ヲ有ス
第三十八条 
刑事訴訟法第八条ヲ左ノ如ク改ム
第八条 公訴ノ時効ハ左ノ期間ヲ経過スルニ因テ完成ス
一 死刑ニ該ル罪ニ付テハ十五年
二 無期又ハ長期十年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ニ付テハ十年
三 長期十年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ニ付テハ七年
四 長期五年未満ノ懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ該ル罪ニ付テハ三年
五 刑法第百八十五条ノ罪ニ付テハ一年
六 拘留又ハ科料ニ該ル罪ニ付テハ六月
第三十九条 
刑事訴訟法第六十二条第三号ヲ左ノ如ク改ム
第三 区裁判所ノ管轄ニ属スル罪ト思料シタル事件ニ付テハ証拠書類ニ意見書ヲ添ヘ之ヲ区裁判所検事ニ送致ス可シ
第四十条 
刑事訴訟法第百二十五条第二号ヲ左ノ如ク改ム
第二 医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁護人、公証人又ハ此等ノ職ニ在リシ者及ヒ宗教若クハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リシ者其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル事実ニシテ黙秘ス可キモノニ関スルトキ
第四十一条 
刑事訴訟法第百二十六条第一項中「刑法第百八十条ニ従ヒ罰金」ヲ「四十円以下ノ罰金又ハ科料」ニ改メ同条第二項中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
同法第百三十八条中「刑法第百七十九条ニ従ヒ罰金」ヲ「四十円以下ノ罰金又ハ科料」ニ改ム
同法第百四十四条第一項中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第四十二条 
刑事訴訟法第百六十七条第一項ヲ左ノ如ク改メ第三項ヲ削ル
被告事件其裁判所ノ管轄ニ属スルモノト思料シタルトキハ公判ニ付スル言渡ヲ為ス可シ
第四十三条 
刑事訴訟法第百七十二条ヲ左ノ如ク改ム
第百七十二条 検事ハ免訴又ハ管轄違ノ決定ニ対シ抗告ヲ為スコトヲ得
第四十四条 
刑事訴訟法第二百三十六条中「軽罪、重罪ノ」ヲ削ル
第四十五条 
刑事訴訟法第二百四十一条ヲ左ノ如ク改ム
第二百四十一条 裁判所ニ於テ軽罪トシテ受理シタル事件ヲ重罪ナリトスルトキハ其事件ヲ予審判事ニ送付スル決定ヲ為ス可シ検事ノ請求アルトキ亦同シ
被告事件予審ヲ経タルトキハ公判ヲ止メ受命判事ヲシテ其事件ノ取調ヲ為シ報告ヲ為サシムヘシ
受命判事ハ予審判事ニ属スル処分ヲ為スコトヲ得
第四十六条 
刑事訴訟法第二百六十四条中「更ニ重罪事件トシテ裁判ス可キ旨ノ決定ヲ為シ」ヲ削ル
第四十七条 
刑事訴訟法第三百十七条ニ左ノ一項ヲ加フ
監獄ニ於テ執行ス可キ二個以上ノ主刑ノ執行ハ其重キモノヲ先ニス但特別ノ事由アルトキハ検事ハ重キ刑ノ執行ヲ停止シ他ノ刑ノ執行ヲ為サシムルコトヲ得
第四十八条 
刑事訴訟法第三百十八条ノ次ニ左ノ二条ヲ加フ
第三百十八条ノ二 死刑ノ執行ハ検事及ヒ裁判所書記ノ立会ニテ之ヲ為ス可シ
死刑ノ執行ニ関スル者ノ外刑場ニ入ルコトヲ得ス但検事又ハ監獄ノ長ノ許可ヲ得タル者ハ此限ニ在ラス
第三百十八条ノ三 死刑ノ言渡ヲ受ケタル者心神喪失シタルトキハ司法大臣ノ命令ニ因リ其痊癒ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
死刑ノ言渡ヲ受ケタル婦女懐胎ナルトキハ分娩後司法大臣ノ命令アルニ非サレハ執行ヲ為スコトヲ得ス
第四十九条 
刑事訴訟法第三百十九条第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
懲役、禁錮又ハ拘留ノ言渡ヲ受ケタル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其事故ノ止ムマテ刑ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
一 心神喪失ノ状態ニ在ルトキ
二 刑ノ執行ニ因リ生命ヲ保ツコト能ハサル虞アルトキ
三 受胎後七月以上ナルトキ
四 分娩後一月ヲ経過セサルトキ
第五十条 
刑事訴訟法第三百二十条中「之ヲ為ス可シ」ノ下ニ「刑ノ執行ノ停止ニ付キ亦同シ」ヲ加ヘ第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ徴収ニ付テハ非訟事件手続法第二百八条ノ規定ヲ準用ス
第五十一条 
刑事訴訟法第二十四条、第六十三条、第百六十八条、第百七十三条及ヒ第百七十四条但書ハ之ヲ削ル
第五十二条 刑事訴訟法中復権及ヒ特赦ニ関スル規定ハ之ヲ削ル
第五十三条 刑法第五十二条又ハ第五十八条ノ規定ニ依リ刑ヲ定ム可キ場合ニ於テハ其犯罪事実ニ付キ最終ノ判決ヲ為シタル裁判所ノ検事其裁判所ニ請求ヲ為ス可シ
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ被告人又ハ其代理人ノ意見ヲ聴キ決定ヲ為ス可シ此決定ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得
第五十四条 刑ノ執行猶予ハ裁判所ニ於テ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ刑ノ言渡ト同時ニ判決ヲ以テ之ヲ言渡ス可シ
第五十五条 刑ノ執行猶予ノ言渡ハ上訴ニ因リ其効力ヲ失フコトナシ但原判決ヲ取消シ又ハ破毀シタル場合ハ此限ニ在ラス
上訴裁判所ハ新ニ執行猶予ノ言渡ヲ為スコトヲ得
第五十六条 刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消ス可キ場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ノ所在地又ハ最後ノ住所地ヲ管轄スル地方裁判所ノ検事其裁判所ニ請求ヲ為ス可シ
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ被告人又ハ其代理人ノ意見ヲ聴キ決定ヲ為ス可シ此決定ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得
第五十七条 第五十三条及ヒ前条ノ裁判及ヒ抗告ニ付テハ刑事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
第五十八条 明治三十八年法律第七十号ニ依リ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケ仍ホ猶予ノ期間ヲ経過セサル者ハ刑法ニ依リ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタルモノト看做ス
第五十九条 明治三十九年法律第五十四号ハ之ヲ廃止ス
第六十条 私訴ハ公訴ニ附帯スルトキハ民事訴訟ノ方式ニ依ラス書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第六十一条 贓物犯人ノ手ニ在ルトキハ被害者ノ請求ナシト雖モ之ヲ還付スル言渡ヲ為ス可シ
第六十二条 左ニ記載シタルモノヲ以テ公訴ニ関スル訴訟費用トス
一 予審、公判ニ付キ呼出シタル証人、鑑定人及ヒ通事ニ給与ス可キ日当、旅費及ヒ止宿料
二 第六十六条ニ記載シタル費用
第六十三条 証人、鑑定人及ヒ通事ノ日当ハ左ノ範囲内ニ於テ予審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム
一 証人ノ日当ハ出頭一度ニ付金二十銭乃至金五十銭但止宿料ヲ給与スル場合ニ於テハ日当ヲ給与セス
二 鑑定人及ヒ通事ノ日当ハ出頭一度ニ付キ金三十銭乃至金五円
第六十四条 証人、鑑定人及ヒ通事ノ旅費ハ海陸路一里ニ付キ金五銭乃至金二十銭ノ範囲内ニ於テ予審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム但通路両線以上アルトキハ最近ノ通路ヲ以テ旅費ヲ算定ス
前項ニ掲ケタル者ノ止宿料ハ一日ニ付キ金二十銭乃至金一円ノ範囲内ニ於テ予審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム但八里以上ノ地ヨリ来リ滞在スルトキニ非サレハ之ヲ給与セス
第六十五条 証人、鑑定人及ヒ通事ノ日当、旅費及ヒ止宿料ハ予審ニ於テハ其終結前、公判ニ於テハ其判決前ニ本人ヨリ請求スルニ非サレハ之ヲ給与セス
第六十六条 鑑定、通訳ニ付キ数多ノ時間又ハ特別ノ技能若クハ費用ヲ要スルトキハ日当ノ外別ニ相当ノ金額ヲ給与スルコトヲ得
第六十七条 共犯ノ訴訟費用ハ共犯人ノ連帯負担トス
附 則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
刑法附則其他旧刑法施行ノ為メ公布シタル法令ハ之ヲ廃止ス