朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル監獄法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年三月二十七日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
司法大臣 男爵 千家尊福
法律第二十八號
監獄法
第一章 總則
第一條 監獄ハ之ヲ左ノ四種トス
一 懲役監 懲役ニ處セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
二 禁錮監 禁錮ニ處セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
三 拘留場 拘留ニ處セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
四 拘置監 刑事被吿人及ヒ死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ヲ拘禁スル所トス
拘置監ニハ懲役、禁錮又ハ拘留ニ處セラレタル者ヲ一時拘禁スルコトヲ得
警察官署ニ附屬スル留置場ハ之ヲ監獄ニ代用スルコトヲ得但懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者ヲ一月以上繼續シテ拘禁スルコトヲ得ス
第二條 二月以上ノ懲役ニ處セラレタル十八歲未滿ノ者ハ特ニ設ケタル監獄又ハ監獄內ニ於テ特ニ分界ヲ設ケタル場所ニ之ヲ拘禁ス
前項ノ規定ニ依ル者ハ滿二十歲ニ至ルマテ又滿二十歲ニ至リタル後三月內ニ刑期終了ス可キ者ハ其殘刑期間仍ホ繼續シテ之ヲ拘禁スルコトヲ得
心身發育ノ狀況ニ因リ必要ト認ムル者ハ前二項ノ適用ニ付キ年齡ニ拘ハラサルコトヲ得
第三條 監獄ニ男監及ヒ女監ヲ設ケ之ヲ分隔ス
懲役監、禁錮監、拘留場及ヒ拘置監ノ同一區劃內ニ在ルモノハ之ヲ分界ス
第四條 主務大臣ハ少クトモ二年每ニ一囘官吏ヲシテ監獄ヲ巡閱セシム可シ
判事及ヒ檢事ハ監獄ヲ巡視スルコトヲ得
第五條 監獄ノ參觀ヲ請フ者アルトキハ學術ノ硏究其他正當ノ理由アリト認ムル場合ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得
第六條 本法ニ依リ沒入シ又ハ國庫ニ歸屬シタル物ハ之ヲ監獄慈惠ノ用ニ充ツ
第七條 在監者監獄ノ處置ニ對シ不服アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣又ハ巡閱官吏ニ情願ヲ爲スコトヲ得
第八條 勞役場ハ之ヲ監獄ニ附設ス
前五條ノ規定ハ之ヲ勞役場ニ準用ス
第九條 本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被吿人ニ適用ス可キ規定ハ死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用シ懲役囚ニ適用ス可キ規定ハ勞役場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十條 本法ハ陸海軍ニ屬スル監獄ニ之ヲ適用セス
第二章 收監
第十一條 新ニ入監スル者アルトキハ令狀又ハ判決書及ヒ執行指揮書其他適法ノ文書ヲ査閱シタル後入監セシム可シ
第十二條 新ニ入監スル婦女其子ヲ携帶センコトヲ請フトキハ必要ト認ムル場合ニ限リ滿一歲ニ至ルマテ之ヲ許スコトヲ得
監獄ニ於テ分娩シタル子ニ付テモ亦前項ノ例ニ依ル
第十三條 新ニ入監スル者傳染病豫防法ニ依リ豫防方法ノ施行ヲ必要トスル傳染病ニ罹リタルモノナルトキハ之ヲ入監セシメサルコトヲ得
第十四條 新ニ入監スル者アルトキハ其身體及ヒ衣類ノ檢査ヲ爲ス可シ在監中ノ者ニ付キ必要ト認ムルトキ亦同シ
第三章 拘禁
第十五條 在監者ハ心身ノ狀況ニ因リ不適當ト認ムルモノヲ除ク外之ヲ獨居拘禁ニ付スルコトヲ得
第十六條 雜居拘禁ニ在テハ在監者ノ罪質、性格、犯數、年齡等ヲ斟酌シテ其監房ヲ別異ス
第一條第二項及ヒ第三項ノ場合ニ於テハ在監者ノ種類ニ依リ其監房ヲ別異ス
十八歲未滿ノ者ハ第二條第二項ノ場合ヲ除ク外十八歲以上ノ者ト其監房ヲ別異ス但心身發育ノ狀況ニ因リ其必要ナシト認ムルトキハ此限ニ在ラス
前三項ノ規定ハ工場ニ於ケル就業ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十七條 刑事被吿人ニシテ被吿事件ノ相關連スルモノハ互ニ其監房ヲ別異シ監房外ニ於テモ其交通ヲ遮斷ス
第十八條 懲役監、禁錮監、拘留場、拘置監及ヒ勞役場ノ同一區劃內ニ在ル場合ニ於テハ同性者ニ付キ同一ノ病監又ハ敎誨堂ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ在監者ノ種類ニ因リ監房若クハ座席又ハ診察若クハ敎誨ノ時間ヲ異ニス
病監ニ在テハ第二條及ヒ第十六條ヲ適用セサルコトヲ得
第四章 戒護
第十九條 在監者逃走、暴行若クハ自殺ノ虞アルトキ又ハ監外ニ在ルトキハ戒具ヲ使用スルコトヲ得
戒具ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十條 法令ニ依リ監獄官吏ノ携帶スル劒又ハ銃ハ左ノ各號ノ一ニ該ル場合ニ限リ在監者ニ對シ之ヲ使用スルコトヲ得
一 人ノ身體ニ對シテ危險ナル暴行ヲ爲シ又ハ爲ス可キ脅迫ヲ加フルトキ
二 危險ナル暴行ノ用ニ供シ得可キ物ヲ所持シ其放棄ヲ肯セサルトキ
三 逃走ノ目的ヲ以テ多衆騷擾スルトキ
四 逃走ヲ企テタル者暴行ヲ爲シテ捕拿ヲ免カレントシ又ハ制止ニ從ハスシテ逃走セントスルトキ
第二十一條 天災事變ニ際シ必要ト認ムルトキハ在監者ヲシテ應急ノ用務ニ就カシムルコトヲ得
前項ノ用務ニ就キタル者ニハ第二十八條ノ規定ヲ準用ス
第二十二條 天災事變ニ際シ監獄內ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ在監者ヲ他所ニ護送ス可シ若シ護送スルノ遑ナキトキハ一時之ヲ解放スルコトヲ得
解放セラレタル者ハ監獄又ハ警察官署ニ出頭ス可シ解放後二十四時間內ニ出頭セサルトキハ刑法第九十七條ニ依リ處斷ス
第二十三條 在監者逃走シタルトキハ監獄官吏ハ逃走後四十八時間內ニ限リ之ヲ逮捕スルコトヲ得
前項ノ規定ハ刑事訴訟法第六十條ノ適用ヲ妨ケス
第五章 作業
第二十四條 作業ハ衞生、經濟及ヒ在監者ノ刑期、健康、技能、職業、將來ノ生計等ヲ斟酌シテ之ヲ課ス
十八歲未滿ノ者ニ課ス可キ作業ニ付テハ前項ノ外特ニ敎養ニ關スル事項ヲ斟酌ス
第二十五條 大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ就業ヲ免ス
父母ノ訃ニ接シタル者ハ三日間其就業ヲ免ス
主務大臣ハ必要ト認ムルトキハ臨時就業ヲ免スルコトヲ得
炊事、洒掃、看護其他監獄ノ經理ニ關シ必要ナル作業ニ就ク者ニ付テハ就業ヲ免セサルコトヲ得
第二十六條 刑事被吿人、拘留囚又ハ禁錮囚作業ニ就カンコトヲ請フトキハ其選擇スルモノニ就キ之ヲ許スコトヲ得
第二十七條 作業ノ收入ハ總テ國庫ノ所得トス
在監者ニシテ作業ニ就クモノニハ命令ノ定ムル所ニ依リ作業賞與金ヲ給スルコトヲ得
作業賞與金ハ行狀、作業ノ成績等ヲ斟酌シテ其額ヲ定ム
第二十八條 在監者就業ニ因リ創傷ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之カ爲メニ死亡シ又ハ業務ヲ營ミ難キニ至リタルトキハ情狀ニ因リ手當金ヲ給スルコトヲ得
前項ノ手當金ハ釋放ノ際本人ニ之ヲ給シ死亡ノ場合ニ於テハ死亡者ノ父、母、配偶者又ハ子ニ之ヲ給ス
第六章 敎誨及ヒ敎育
第二十九條 受刑者ニハ敎誨ヲ施ス可シ其他ノ在監者敎誨ヲ請フトキハ之ヲ許スコトヲ得
第三十條 十八歲未滿ノ受刑者ニハ敎育ヲ施ス可シ其他ノ受刑者ニシテ特ニ必要アリト認ムルモノニハ年齡ニ拘ハラス敎育ヲ施スコトヲ得
第三十一條 在監者文書、圖畫ノ閱讀ヲ請フトキハ之ヲ許ス
文書、圖畫ノ閱讀ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 給養
第三十二條 受刑者ニハ一定ノ衣類臥具ヲ著用セシム但拘留囚ニハ自衣ノ著用ヲ許シ其他ノ者ニハ襯衣ノ自辨ヲ許スコトヲ得
第三十三條 刑事被吿人及ヒ勞役場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ノ衣類臥具ハ自辨トシ其自辨スルコト能ハサル者ニハ之ヲ貸與ス
自辨ノ衣類臥具ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條 在監者ニハ其體質、健康、年齡、作業等ヲ斟酌シテ必要ナル糧食及ヒ飮料ヲ給ス
第三十五條 刑事被吿人ニハ糧食ノ自辨ヲ許スコトヲ得
第八章 衞生及ヒ醫療
第三十六條 在監者ノ頭髮鬚髯ハ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得但刑事被吿人ノ頭髮鬚髯ハ衞生上特ニ必要アリト認ムル場合ヲ除ク外其意思ニ反シテ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得ス
第三十七條 在監者ハ其拘禁セラルル監房ノ淸潔ヲ保ツニ必要ナル用務ニ服ス可シ
第三十八條 在監者ニハ其健康ヲ保ツニ必要ナル運動ヲ爲サシム
第三十九條 在監者ニハ種痘其他傳染病豫防ニ必要ト認ムル醫術ヲ行フコトヲ得
第四十條 在監者疾病ニ罹リタルトキハ醫師ヲシテ治療セシメ必要アルトキハ之ヲ病監ニ收容ス
第四十一條 傳染病者ハ嚴ニ之ヲ離隔シ健康者及ヒ他ノ病者ニ接近セシムルコトヲ得ス伹懲役囚ヲシテ看護セシムルハ此限ニ在ラス
第四十二條 病者醫師ヲ指定シ自費ヲ以テ治療ヲ補助セシメンコトヲ請フトキハ情狀ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第四十三條 精神病、傳染病其他ノ疾病ニ罹リ監獄ニ在テ適當ノ治療ヲ施スコト能ハスト認ムル病者ハ情狀ニ因リ假ニ之ヲ病院ニ移送スルコトヲ得
前項ニ依リ病院ニ移送シタル者ハ之ヲ在監者ト看做ス
第四十四條 妊婦、產婦、老衰者及ヒ不具者ハ之ヲ病者ニ準スルコトヲ得
第九章 接見及ヒ信書
第四十五條 在監者ニ接見センコトヲ請フ者アルトキハ之ヲ許ス
受刑者ニハ其親族ニ非サル者ト接見ヲ爲サシムルコトヲ得ス但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス
第四十六條 在監者ニハ信書ヲ發シ又ハ之ヲ受クルコトヲ許ス
受刑者ニハ其親族ニ非サル者ト信書ノ發受ヲ爲サシムルコトヲ得ス但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス
第四十七條 受刑者ニ係ル信書ニシテ不適當ト認ムルモノハ其發受ヲ許サス
前項ニ依リ發受ヲ許ササル信書ハ二年ヲ經過シタル後之ヲ廢棄スルコトヲ得
第四十八條 裁判所其他ノ公務所ヨリ在監者ニ宛テタル文書ハ披閱シテ之ヲ本人ニ交付ス
第四十九條 在監者ニ交付シタル信書及ヒ前條ノ文書ハ本人閱讀ノ後之ヲ領置ス
第五十條 接見ノ立會、信書ノ檢閱其他接見及ヒ信書ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十章 領置
第五十一條 在監者ノ携有スル物ハ㸃檢シテ之ヲ領置ス
保存ノ價値ナク又ハ保存ニ不適當ト認ムル物ハ其領置ヲ爲サス又ハ之ヲ解クコトヲ得
領置ヲ爲サス又ハ之ヲ解キタル物ニ付キ在監者相當ノ處分ヲ爲ササルトキハ之ヲ廢棄スルコトヲ得
第五十二條 在監者領置物ヲ以テ其父、母、配偶者又ハ子ノ扶助其他正當ノ用途ニ充テンコトヲ請フトキハ情狀ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第五十三條 在監者ニ差入ヲ爲サンコトヲ請フ者アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得
在監者ニ宛テ送致シ來リタル物ニシテ其差出人ノ氏名若クハ居所不明ナルトキ、其差入ヲ許ス可カラスト認ムルトキ又ハ在監者ニ於テ其受領ヲ拒ミタルトキハ之ヲ沒入又ハ廢棄スルコトヲ得
第五十四條 在監者ノ私ニ所持スル物ハ之ヲ沒入又ハ廢棄スルコトヲ得
第五十五條 領置物ハ釋放ノ際之ヲ交付ス
第五十六條 死亡者ノ遺留物ハ請求ニ因リ相續人、家族又ハ親族ニ之ヲ交付ス
第五十七條 死亡者ノ遺留物ハ死亡ノ日ヨリ一年內ニ前條ニ揭ケタル者ノ請求ナキトキハ國庫ニ歸屬ス
逃走者ノ遺留物ニシテ逃走ノ日ヨリ一年內ニ居所分明セサルトキ亦同シ
第十一章 賞罰
第五十八條 受刑者改悛ノ狀アルトキハ賞遇ヲ爲スコトヲ得
賞遇ノ種類及ヒ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條 在監者紀律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ處ス
第六十條 懲罰ハ左ノ如シ
一 叱責
二 賞遇ノ三月以內ノ停止
三 賞遇ノ廢止
四 文書、圖畫閱讀ノ三月以內ノ禁止
五 請願作業ノ十日以內ノ停止
六 自辨ニ係ル衣類臥具著用ノ十五日以內ノ停止
七 糧食自辨ノ十五日以內ノ停止
八 運動ノ五日以內ノ停止
九 作業賞與金計算高ノ一部又ハ全部減削
十 七日以內ノ減食
十一 二月以內ノ輕屛禁
十二 七日以內ノ重屛禁
屛禁ハ受罰者ヲ罰室內ニ晝夜屛居セシメ情狀ニ因リ就業セシメサルコトヲ得重屛禁ニ在テハ仍ホ罰室ヲ暗クシ臥具ヲ禁ス
第一項各號ノ懲罰ハ之ヲ併科スルコトヲ得
第六十一條 前條第一項第十號ノ懲罰ハ刑事被吿人及ヒ十八歲未滿ノ在監者ニ之ヲ科セス
第六十二條 懲罰ニ處セラレタル者疾病其他特別ノ事由アルトキハ其懲罰ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
懲罰ニ處セラレタル者改悛ノ狀著シキトキハ其懲罰ヲ免除スルコトヲ得
第十二章 釋放
第六十三條 在監者ノ釋放ハ恩赦、職權アル者ノ命令又ハ刑期ノ終了ニ因リ關係文書ヲ査閱シテ其手續ヲ爲ス可シ
第六十四條 恩赦ヲ受ケ又ハ假出獄若クハ假出場ヲ許サレタル者ハ其裁可狀又ハ許可書ノ監獄ニ達シタル後二十四時間內ニ之ヲ釋放ス
第六十五條 前條ノ場合ヲ除ク外命令ニ因リ釋放ヲ爲ス可キ者ハ命令書ノ監獄ニ達シタル後十時間內ニ之ヲ釋放ス
第六十六條 假出獄又ハ假出場ヲ許サレタル者ヲ釋放スルトキハ之ニ證票ヲ交付ス
第六十七條 假出獄ヲ許サレタル者ハ其期間左ノ規定ヲ遵守ス可シ
一 正業ニ就キ善行ヲ保ツコト
二 警察官署ノ監督ヲ受クルコト但警察官署ハ監獄ノ意見ヲ聽キ他ニ其監督ヲ委任スルコトヲ得
三 住居ヲ轉移シ又ハ十日以上旅行ヲ爲サントスルトキハ監督者ノ許可ヲ請フコト
主務大臣ハ假出獄ヲ許サレタル者ノ帝國外ニ旅行ヲ爲スヲ許スコトヲ得
第六十八條 滿期ノ者ハ其刑期終了ノ翌日午後六時マテニ之ヲ釋放ス
第六十九條 釋放セラル可キ者重キ疾病ニ罹リ監獄ニ於テ醫療中ナルトキハ其請求ニ因リ仍ホ在監セシムルコトヲ得
第七十條 釋放セラル可キ者歸住旅費若クハ相當ノ衣類ヲ有セサルトキ又ハ監獄行政ノ便宜ニ因リ移監セシメタルカ爲メ歸住旅費ノ增加ヲ要スルニ至リタルトキハ衣類又ハ旅費ヲ給與スルコトヲ得
第十三章 死亡
第七十一條 死刑ノ執行ハ監獄內ノ刑場ニ於テ之ヲ爲ス
大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ死刑ヲ執行セス
第七十二條 死刑ヲ執行スルトキハ絞首ノ後死相ヲ檢シ仍ホ五分時ヲ經ルニ非サレハ絞繩ヲ解クコトヲ得ス
第七十三條 在監者死亡シタルトキハ之ヲ假葬ス
死體ハ必要ト認ムルトキハ之ヲ火葬スルコトヲ得
死體又ハ遺骨ハ假葬後二年ヲ經テ之ヲ合葬スルコトヲ得
第七十四條 死亡者ノ親族故舊ニシテ死體又ハ遺骨ヲ請フ者アルトキハ何時ニテモ之ヲ交付スルコトヲ得但合葬後ハ此限ニ在ラス
第七十五條 受刑者ノ死體ハ命令ノ定ムル所ニ依リ解剖ノ爲メ病院、學校又ハ其他ノ公務所ニ之ヲ送付スルコトヲ得
附 則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
監獄則ハ之ヲ廢止ス但懲治人ニ關スル規定ハ當分ノ內仍ホ其效力ヲ有ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル監獄法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年三月二十七日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
司法大臣 男爵 千家尊福
法律第二十八号
監獄法
第一章 総則
第一条 監獄ハ之ヲ左ノ四種トス
一 懲役監 懲役ニ処セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
二 禁錮監 禁錮ニ処セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
三 拘留場 拘留ニ処セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
四 拘置監 刑事被告人及ヒ死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ヲ拘禁スル所トス
拘置監ニハ懲役、禁錮又ハ拘留ニ処セラレタル者ヲ一時拘禁スルコトヲ得
警察官署ニ附属スル留置場ハ之ヲ監獄ニ代用スルコトヲ得但懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者ヲ一月以上継続シテ拘禁スルコトヲ得ス
第二条 二月以上ノ懲役ニ処セラレタル十八歳未満ノ者ハ特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ニ於テ特ニ分界ヲ設ケタル場所ニ之ヲ拘禁ス
前項ノ規定ニ依ル者ハ満二十歳ニ至ルマテ又満二十歳ニ至リタル後三月内ニ刑期終了ス可キ者ハ其残刑期間仍ホ継続シテ之ヲ拘禁スルコトヲ得
心身発育ノ状況ニ因リ必要ト認ムル者ハ前二項ノ適用ニ付キ年齢ニ拘ハラサルコトヲ得
第三条 監獄ニ男監及ヒ女監ヲ設ケ之ヲ分隔ス
懲役監、禁錮監、拘留場及ヒ拘置監ノ同一区画内ニ在ルモノハ之ヲ分界ス
第四条 主務大臣ハ少クトモ二年毎ニ一回官吏ヲシテ監獄ヲ巡閲セシム可シ
判事及ヒ検事ハ監獄ヲ巡視スルコトヲ得
第五条 監獄ノ参観ヲ請フ者アルトキハ学術ノ研究其他正当ノ理由アリト認ムル場合ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得
第六条 本法ニ依リ没入シ又ハ国庫ニ帰属シタル物ハ之ヲ監獄慈恵ノ用ニ充ツ
第七条 在監者監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ為スコトヲ得
第八条 労役場ハ之ヲ監獄ニ附設ス
前五条ノ規定ハ之ヲ労役場ニ準用ス
第九条 本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被告人ニ適用ス可キ規定ハ死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用シ懲役囚ニ適用ス可キ規定ハ労役場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十条 本法ハ陸海軍ニ属スル監獄ニ之ヲ適用セス
第二章 収監
第十一条 新ニ入監スル者アルトキハ令状又ハ判決書及ヒ執行指揮書其他適法ノ文書ヲ査閲シタル後入監セシム可シ
第十二条 新ニ入監スル婦女其子ヲ携帯センコトヲ請フトキハ必要ト認ムル場合ニ限リ満一歳ニ至ルマテ之ヲ許スコトヲ得
監獄ニ於テ分娩シタル子ニ付テモ亦前項ノ例ニ依ル
第十三条 新ニ入監スル者伝染病予防法ニ依リ予防方法ノ施行ヲ必要トスル伝染病ニ罹リタルモノナルトキハ之ヲ入監セシメサルコトヲ得
第十四条 新ニ入監スル者アルトキハ其身体及ヒ衣類ノ検査ヲ為ス可シ在監中ノ者ニ付キ必要ト認ムルトキ亦同シ
第三章 拘禁
第十五条 在監者ハ心身ノ状況ニ因リ不適当ト認ムルモノヲ除ク外之ヲ独居拘禁ニ付スルコトヲ得
第十六条 雑居拘禁ニ在テハ在監者ノ罪質、性格、犯数、年齢等ヲ斟酌シテ其監房ヲ別異ス
第一条第二項及ヒ第三項ノ場合ニ於テハ在監者ノ種類ニ依リ其監房ヲ別異ス
十八歳未満ノ者ハ第二条第二項ノ場合ヲ除ク外十八歳以上ノ者ト其監房ヲ別異ス但心身発育ノ状況ニ因リ其必要ナシト認ムルトキハ此限ニ在ラス
前三項ノ規定ハ工場ニ於ケル就業ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十七条 刑事被告人ニシテ被告事件ノ相関連スルモノハ互ニ其監房ヲ別異シ監房外ニ於テモ其交通ヲ遮断ス
第十八条 懲役監、禁錮監、拘留場、拘置監及ヒ労役場ノ同一区画内ニ在ル場合ニ於テハ同性者ニ付キ同一ノ病監又ハ教誨堂ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ在監者ノ種類ニ因リ監房若クハ座席又ハ診察若クハ教誨ノ時間ヲ異ニス
病監ニ在テハ第二条及ヒ第十六条ヲ適用セサルコトヲ得
第四章 戒護
第十九条 在監者逃走、暴行若クハ自殺ノ虞アルトキ又ハ監外ニ在ルトキハ戒具ヲ使用スルコトヲ得
戒具ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十条 法令ニ依リ監獄官吏ノ携帯スル剣又ハ銃ハ左ノ各号ノ一ニ該ル場合ニ限リ在監者ニ対シ之ヲ使用スルコトヲ得
一 人ノ身体ニ対シテ危険ナル暴行ヲ為シ又ハ為ス可キ脅迫ヲ加フルトキ
二 危険ナル暴行ノ用ニ供シ得可キ物ヲ所持シ其放棄ヲ肯セサルトキ
三 逃走ノ目的ヲ以テ多衆騒擾スルトキ
四 逃走ヲ企テタル者暴行ヲ為シテ捕拿ヲ免カレントシ又ハ制止ニ従ハスシテ逃走セントスルトキ
第二十一条 天災事変ニ際シ必要ト認ムルトキハ在監者ヲシテ応急ノ用務ニ就カシムルコトヲ得
前項ノ用務ニ就キタル者ニハ第二十八条ノ規定ヲ準用ス
第二十二条 天災事変ニ際シ監獄内ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ在監者ヲ他所ニ護送ス可シ若シ護送スルノ遑ナキトキハ一時之ヲ解放スルコトヲ得
解放セラレタル者ハ監獄又ハ警察官署ニ出頭ス可シ解放後二十四時間内ニ出頭セサルトキハ刑法第九十七条ニ依リ処断ス
第二十三条 在監者逃走シタルトキハ監獄官吏ハ逃走後四十八時間内ニ限リ之ヲ逮捕スルコトヲ得
前項ノ規定ハ刑事訴訟法第六十条ノ適用ヲ妨ケス
第五章 作業
第二十四条 作業ハ衛生、経済及ヒ在監者ノ刑期、健康、技能、職業、将来ノ生計等ヲ斟酌シテ之ヲ課ス
十八歳未満ノ者ニ課ス可キ作業ニ付テハ前項ノ外特ニ教養ニ関スル事項ヲ斟酌ス
第二十五条 大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ就業ヲ免ス
父母ノ訃ニ接シタル者ハ三日間其就業ヲ免ス
主務大臣ハ必要ト認ムルトキハ臨時就業ヲ免スルコトヲ得
炊事、洒掃、看護其他監獄ノ経理ニ関シ必要ナル作業ニ就ク者ニ付テハ就業ヲ免セサルコトヲ得
第二十六条 刑事被告人、拘留囚又ハ禁錮囚作業ニ就カンコトヲ請フトキハ其選択スルモノニ就キ之ヲ許スコトヲ得
第二十七条 作業ノ収入ハ総テ国庫ノ所得トス
在監者ニシテ作業ニ就クモノニハ命令ノ定ムル所ニ依リ作業賞与金ヲ給スルコトヲ得
作業賞与金ハ行状、作業ノ成績等ヲ斟酌シテ其額ヲ定ム
第二十八条 在監者就業ニ因リ創傷ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之カ為メニ死亡シ又ハ業務ヲ営ミ難キニ至リタルトキハ情状ニ因リ手当金ヲ給スルコトヲ得
前項ノ手当金ハ釈放ノ際本人ニ之ヲ給シ死亡ノ場合ニ於テハ死亡者ノ父、母、配偶者又ハ子ニ之ヲ給ス
第六章 教誨及ヒ教育
第二十九条 受刑者ニハ教誨ヲ施ス可シ其他ノ在監者教誨ヲ請フトキハ之ヲ許スコトヲ得
第三十条 十八歳未満ノ受刑者ニハ教育ヲ施ス可シ其他ノ受刑者ニシテ特ニ必要アリト認ムルモノニハ年齢ニ拘ハラス教育ヲ施スコトヲ得
第三十一条 在監者文書、図画ノ閲読ヲ請フトキハ之ヲ許ス
文書、図画ノ閲読ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 給養
第三十二条 受刑者ニハ一定ノ衣類臥具ヲ著用セシム但拘留囚ニハ自衣ノ著用ヲ許シ其他ノ者ニハ襯衣ノ自弁ヲ許スコトヲ得
第三十三条 刑事被告人及ヒ労役場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ノ衣類臥具ハ自弁トシ其自弁スルコト能ハサル者ニハ之ヲ貸与ス
自弁ノ衣類臥具ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四条 在監者ニハ其体質、健康、年齢、作業等ヲ斟酌シテ必要ナル糧食及ヒ飲料ヲ給ス
第三十五条 刑事被告人ニハ糧食ノ自弁ヲ許スコトヲ得
第八章 衛生及ヒ医療
第三十六条 在監者ノ頭髪鬚髯ハ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得但刑事被告人ノ頭髪鬚髯ハ衛生上特ニ必要アリト認ムル場合ヲ除ク外其意思ニ反シテ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得ス
第三十七条 在監者ハ其拘禁セラルル監房ノ清潔ヲ保ツニ必要ナル用務ニ服ス可シ
第三十八条 在監者ニハ其健康ヲ保ツニ必要ナル運動ヲ為サシム
第三十九条 在監者ニハ種痘其他伝染病予防ニ必要ト認ムル医術ヲ行フコトヲ得
第四十条 在監者疾病ニ罹リタルトキハ医師ヲシテ治療セシメ必要アルトキハ之ヲ病監ニ収容ス
第四十一条 伝染病者ハ厳ニ之ヲ離隔シ健康者及ヒ他ノ病者ニ接近セシムルコトヲ得ス但懲役囚ヲシテ看護セシムルハ此限ニ在ラス
第四十二条 病者医師ヲ指定シ自費ヲ以テ治療ヲ補助セシメンコトヲ請フトキハ情状ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第四十三条 精神病、伝染病其他ノ疾病ニ罹リ監獄ニ在テ適当ノ治療ヲ施スコト能ハスト認ムル病者ハ情状ニ因リ仮ニ之ヲ病院ニ移送スルコトヲ得
前項ニ依リ病院ニ移送シタル者ハ之ヲ在監者ト看做ス
第四十四条 妊婦、産婦、老衰者及ヒ不具者ハ之ヲ病者ニ準スルコトヲ得
第九章 接見及ヒ信書
第四十五条 在監者ニ接見センコトヲ請フ者アルトキハ之ヲ許ス
受刑者ニハ其親族ニ非サル者ト接見ヲ為サシムルコトヲ得ス但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス
第四十六条 在監者ニハ信書ヲ発シ又ハ之ヲ受クルコトヲ許ス
受刑者ニハ其親族ニ非サル者ト信書ノ発受ヲ為サシムルコトヲ得ス但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス
第四十七条 受刑者ニ係ル信書ニシテ不適当ト認ムルモノハ其発受ヲ許サス
前項ニ依リ発受ヲ許ササル信書ハ二年ヲ経過シタル後之ヲ廃棄スルコトヲ得
第四十八条 裁判所其他ノ公務所ヨリ在監者ニ宛テタル文書ハ披閲シテ之ヲ本人ニ交付ス
第四十九条 在監者ニ交付シタル信書及ヒ前条ノ文書ハ本人閲読ノ後之ヲ領置ス
第五十条 接見ノ立会、信書ノ検閲其他接見及ヒ信書ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十章 領置
第五十一条 在監者ノ携有スル物ハ点検シテ之ヲ領置ス
保存ノ価値ナク又ハ保存ニ不適当ト認ムル物ハ其領置ヲ為サス又ハ之ヲ解クコトヲ得
領置ヲ為サス又ハ之ヲ解キタル物ニ付キ在監者相当ノ処分ヲ為ササルトキハ之ヲ廃棄スルコトヲ得
第五十二条 在監者領置物ヲ以テ其父、母、配偶者又ハ子ノ扶助其他正当ノ用途ニ充テンコトヲ請フトキハ情状ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第五十三条 在監者ニ差入ヲ為サンコトヲ請フ者アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得
在監者ニ宛テ送致シ来リタル物ニシテ其差出人ノ氏名若クハ居所不明ナルトキ、其差入ヲ許ス可カラスト認ムルトキ又ハ在監者ニ於テ其受領ヲ拒ミタルトキハ之ヲ没入又ハ廃棄スルコトヲ得
第五十四条 在監者ノ私ニ所持スル物ハ之ヲ没入又ハ廃棄スルコトヲ得
第五十五条 領置物ハ釈放ノ際之ヲ交付ス
第五十六条 死亡者ノ遺留物ハ請求ニ因リ相続人、家族又ハ親族ニ之ヲ交付ス
第五十七条 死亡者ノ遺留物ハ死亡ノ日ヨリ一年内ニ前条ニ掲ケタル者ノ請求ナキトキハ国庫ニ帰属ス
逃走者ノ遺留物ニシテ逃走ノ日ヨリ一年内ニ居所分明セサルトキ亦同シ
第十一章 賞罰
第五十八条 受刑者改悛ノ状アルトキハ賞遇ヲ為スコトヲ得
賞遇ノ種類及ヒ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九条 在監者紀律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ処ス
第六十条 懲罰ハ左ノ如シ
一 叱責
二 賞遇ノ三月以内ノ停止
三 賞遇ノ廃止
四 文書、図画閲読ノ三月以内ノ禁止
五 請願作業ノ十日以内ノ停止
六 自弁ニ係ル衣類臥具著用ノ十五日以内ノ停止
七 糧食自弁ノ十五日以内ノ停止
八 運動ノ五日以内ノ停止
九 作業賞与金計算高ノ一部又ハ全部減削
十 七日以内ノ減食
十一 二月以内ノ軽屏禁
十二 七日以内ノ重屏禁
屏禁ハ受罰者ヲ罰室内ニ昼夜屏居セシメ情状ニ因リ就業セシメサルコトヲ得重屏禁ニ在テハ仍ホ罰室ヲ暗クシ臥具ヲ禁ス
第一項各号ノ懲罰ハ之ヲ併科スルコトヲ得
第六十一条 前条第一項第十号ノ懲罰ハ刑事被告人及ヒ十八歳未満ノ在監者ニ之ヲ科セス
第六十二条 懲罰ニ処セラレタル者疾病其他特別ノ事由アルトキハ其懲罰ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
懲罰ニ処セラレタル者改悛ノ状著シキトキハ其懲罰ヲ免除スルコトヲ得
第十二章 釈放
第六十三条 在監者ノ釈放ハ恩赦、職権アル者ノ命令又ハ刑期ノ終了ニ因リ関係文書ヲ査閲シテ其手続ヲ為ス可シ
第六十四条 恩赦ヲ受ケ又ハ仮出獄若クハ仮出場ヲ許サレタル者ハ其裁可状又ハ許可書ノ監獄ニ達シタル後二十四時間内ニ之ヲ釈放ス
第六十五条 前条ノ場合ヲ除ク外命令ニ因リ釈放ヲ為ス可キ者ハ命令書ノ監獄ニ達シタル後十時間内ニ之ヲ釈放ス
第六十六条 仮出獄又ハ仮出場ヲ許サレタル者ヲ釈放スルトキハ之ニ証票ヲ交付ス
第六十七条 仮出獄ヲ許サレタル者ハ其期間左ノ規定ヲ遵守ス可シ
一 正業ニ就キ善行ヲ保ツコト
二 警察官署ノ監督ヲ受クルコト但警察官署ハ監獄ノ意見ヲ聴キ他ニ其監督ヲ委任スルコトヲ得
三 住居ヲ転移シ又ハ十日以上旅行ヲ為サントスルトキハ監督者ノ許可ヲ請フコト
主務大臣ハ仮出獄ヲ許サレタル者ノ帝国外ニ旅行ヲ為スヲ許スコトヲ得
第六十八条 満期ノ者ハ其刑期終了ノ翌日午後六時マテニ之ヲ釈放ス
第六十九条 釈放セラル可キ者重キ疾病ニ罹リ監獄ニ於テ医療中ナルトキハ其請求ニ因リ仍ホ在監セシムルコトヲ得
第七十条 釈放セラル可キ者帰住旅費若クハ相当ノ衣類ヲ有セサルトキ又ハ監獄行政ノ便宜ニ因リ移監セシメタルカ為メ帰住旅費ノ増加ヲ要スルニ至リタルトキハ衣類又ハ旅費ヲ給与スルコトヲ得
第十三章 死亡
第七十一条 死刑ノ執行ハ監獄内ノ刑場ニ於テ之ヲ為ス
大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ死刑ヲ執行セス
第七十二条 死刑ヲ執行スルトキハ絞首ノ後死相ヲ検シ仍ホ五分時ヲ経ルニ非サレハ絞縄ヲ解クコトヲ得ス
第七十三条 在監者死亡シタルトキハ之ヲ仮葬ス
死体ハ必要ト認ムルトキハ之ヲ火葬スルコトヲ得
死体又ハ遺骨ハ仮葬後二年ヲ経テ之ヲ合葬スルコトヲ得
第七十四条 死亡者ノ親族故旧ニシテ死体又ハ遺骨ヲ請フ者アルトキハ何時ニテモ之ヲ交付スルコトヲ得但合葬後ハ此限ニ在ラス
第七十五条 受刑者ノ死体ハ命令ノ定ムル所ニ依リ解剖ノ為メ病院、学校又ハ其他ノ公務所ニ之ヲ送付スルコトヲ得
附 則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
監獄則ハ之ヲ廃止ス但懲治人ニ関スル規定ハ当分ノ内仍ホ其効力ヲ有ス