外国艦船乗組員ノ逮捕留置ニ関スル援助法
法令番号: 法律第六十八號
公布年月日: 明治32年3月16日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル外國艦船乘組員ノ逮捕留置ニ關スル援助法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
外務大臣 子爵 靑木周藏
司法大臣 淸浦奎吾
法律第六十八號
外國艦船乘組員ノ逮捕留置ニ關スル援助法
第一條 外國艦船乘組員ノ逮捕留置ニ關シ締盟各國トノ通商航海條約又ハ領事職務條約ニ依リテ爲スヘキ援助ハ當該領事官ノ請求ニ依リ檢事之ヲ行フ
第二條 左ノ場合ニ於テハ檢事ハ逮捕又ハ留置ニ關スル援助ノ請求ニ應スルコトヲ得ス
第一 逮捕又ハ留置スヘキ者カ帝國臣民ナルトキ
第二 逮捕又ハ留置スヘキ者カ帝國ニ於テ重罪輕罪ノ刑ニ該ルヘキ犯罪ニ付訴追ヲ受ケ又ハ處刑中ナルトキ
第三 第八條ニ依リ放免シタル艦船乘組員ニ對シ更ニ同一ノ事件ニ付請求アリタルトキ
第四 領事官カ援助ノ請求書ニ船舶登錄簿及艦船乘組員名簿ノ正當ナル拔萃又ハ乘組員タルコトヲ證明スルニ足ルヘキ公文書ヲ添付セサリシトキ
第五 領事官カ援助ニ關スル費用ノ支辨ヲ保證セサリシトキ
第三條 檢事カ領事官ヨリ逮捕又ハ留置ニ關スル援助ノ請求ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ請求ヲ正當ナリト認メタルトキハ速ニ其ノ手續ヲ爲スヘシ
第四條 檢事カ艦船乘組員ノ逮捕ヲ命スヘキ場合ニ於テハ逮捕狀ヲ發スヘシ
第五條 逮捕狀執行ノ命ヲ受ケタル者カ其ノ指定シタル者ヲ逮捕シタルトキハ逮捕狀ヲ發シタル檢事ニ引致スヘシ
第六條 前條ノ場合ニ於テハ檢事ハ直ニ之ヲ訊問シ人違ナシト認メタルトキハ速ニ當該領事官ニ引渡スヘシ
第七條 逮捕シタル艦船乘組員ニ付領事官ヨリ留置ノ請求アリタルトキハ檢事ハ之ヲ監獄ニ留置セシムヘシ
第八條 留置シタル艦船乘組員ニ付領事官ヨリ放免ノ請求アリタルトキ又ハ逮捕ノ日ヨリ六箇月以內ニ於テ引渡ノ請求ナキトキハ之ヲ放免スヘシ
第九條 逮捕狀ノ發付及其ノ執行ニ付テハ刑事訴訟法中勾留狀ニ關スル規定ヲ準用ス
第十條 援助ニ關スル費用ハ檢事ニ於テ當該領事官ニ對シ其ノ實費額ノ請求ヲ爲スヘシ
第十一條 檢事ハ領事官ヨリ逮捕又ハ留置ニ關スル援助ノ請求ヲ受ケタルトキハ直ニ司法大臣ニ報吿スヘシ其ノ援助ヲ爲スヘキモノニ非スト認メタルトキ又ハ援助ノ手續ヲ終リタルトキ亦同シ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル外国艦船乗組員ノ逮捕留置ニ関スル援助法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
外務大臣 子爵 青木周蔵
司法大臣 清浦奎吾
法律第六十八号
外国艦船乗組員ノ逮捕留置ニ関スル援助法
第一条 外国艦船乗組員ノ逮捕留置ニ関シ締盟各国トノ通商航海条約又ハ領事職務条約ニ依リテ為スヘキ援助ハ当該領事官ノ請求ニ依リ検事之ヲ行フ
第二条 左ノ場合ニ於テハ検事ハ逮捕又ハ留置ニ関スル援助ノ請求ニ応スルコトヲ得ス
第一 逮捕又ハ留置スヘキ者カ帝国臣民ナルトキ
第二 逮捕又ハ留置スヘキ者カ帝国ニ於テ重罪軽罪ノ刑ニ該ルヘキ犯罪ニ付訴追ヲ受ケ又ハ処刑中ナルトキ
第三 第八条ニ依リ放免シタル艦船乗組員ニ対シ更ニ同一ノ事件ニ付請求アリタルトキ
第四 領事官カ援助ノ請求書ニ船舶登録簿及艦船乗組員名簿ノ正当ナル抜萃又ハ乗組員タルコトヲ証明スルニ足ルヘキ公文書ヲ添付セサリシトキ
第五 領事官カ援助ニ関スル費用ノ支弁ヲ保証セサリシトキ
第三条 検事カ領事官ヨリ逮捕又ハ留置ニ関スル援助ノ請求ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ請求ヲ正当ナリト認メタルトキハ速ニ其ノ手続ヲ為スヘシ
第四条 検事カ艦船乗組員ノ逮捕ヲ命スヘキ場合ニ於テハ逮捕状ヲ発スヘシ
第五条 逮捕状執行ノ命ヲ受ケタル者カ其ノ指定シタル者ヲ逮捕シタルトキハ逮捕状ヲ発シタル検事ニ引致スヘシ
第六条 前条ノ場合ニ於テハ検事ハ直ニ之ヲ訊問シ人違ナシト認メタルトキハ速ニ当該領事官ニ引渡スヘシ
第七条 逮捕シタル艦船乗組員ニ付領事官ヨリ留置ノ請求アリタルトキハ検事ハ之ヲ監獄ニ留置セシムヘシ
第八条 留置シタル艦船乗組員ニ付領事官ヨリ放免ノ請求アリタルトキ又ハ逮捕ノ日ヨリ六箇月以内ニ於テ引渡ノ請求ナキトキハ之ヲ放免スヘシ
第九条 逮捕状ノ発付及其ノ執行ニ付テハ刑事訴訟法中勾留状ニ関スル規定ヲ準用ス
第十条 援助ニ関スル費用ハ検事ニ於テ当該領事官ニ対シ其ノ実費額ノ請求ヲ為スヘシ
第十一条 検事ハ領事官ヨリ逮捕又ハ留置ニ関スル援助ノ請求ヲ受ケタルトキハ直ニ司法大臣ニ報告スヘシ其ノ援助ヲ為スヘキモノニ非スト認メタルトキ又ハ援助ノ手続ヲ終リタルトキ亦同シ