(目的)
第一条 この法律は、ダム又は湖沼水位調節施設の建設によりその基礎条件が著しく変化する地域について、生活環境、産業基盤等を整備し、あわせて湖沼の水質を保全するため、水源地域整備計画を策定し、その実施を推進する等特別の措置を講ずることにより関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もつてダム及び湖沼水位調節施設の建設を促進し、水資源の開発と国土の保全に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「指定ダム等」とは、指定ダム及び指定湖沼水位調節施設をいう。
2 この法律において「指定ダム」とは、国、地方公共団体、水資源開発公団又は電源開発株式会社が建設するダムのうちその建設により相当数の住宅又は相当の面積の農地が水没するダムで政令で指定するものをいう。
3 この法律において「指定湖沼水位調節施設」とは、国、地方公共団体又は水資源開発公団が建設する次の各号に該当する湖沼水位調節施設で政令で指定するものをいう。
一 その建設により湖沼及び湖沼の周辺地域の生産機能又は生活環境に著しい影響が及ぶこと。
二 その建設により二以上の都府県が著しい利益を受けること。
(水源地域の指定等)
第三条 内閣総理大臣は、都道府県知事の申出に基づき、関係行政機関の長に協議して、指定ダム等により河川の流水が貯留される土地の区域の全部又は一部をその区域に含む市町村の区域のうち、指定ダム等の建設によりその基礎条件が著しく変化すると認められる地域を水源地域として指定することができる。
2 前項の申出は、あらかじめ関係市町村長の意見をきき、かつ、総理府令で定めるところにより、指定ダム等の建設事業を所管する行政機関の長(以下「所管行政機関の長」という。)を通じてしなければならない。
3 内閣総理大臣は、水源地域を指定したときは、その旨を公示しなければならない。
4 前三項の規定は、水源地域を変更する場合について準用する。
(水源地域整備計画の決定及び変更)
第四条 都道府県知事は、前条第三項の公示があつたときは、遅滞なく、水源地域整備計画の案を作成し、これを所管行政機関の長を通じて内閣総理大臣に提出しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の水源地域整備計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、水源地域整備計画に基づく事業(以下「整備事業」という。)を実施することとなるべき者(国を除く。)、関係地方公共団体の長及び政令で定める者の意見をきかなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定により提出された案に基づき、関係行政機関の長に協議して、水源地域整備計画を決定するものとする。
4 内閣総理大臣は、水源地域整備計画を決定したときは、これを関係行政機関の長及び当該水源地域整備計画の案を提出した都道府県知事に送付するとともに、総理府令で定めるところにより公示しなければならない。
5 前各項の規定は、水源地域整備計画を変更する場合について準用する。
(水源地域整備計画の内容)
第五条 水源地域整備計画は、水源地域ごとに、次の各号に掲げる水源地域の区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる事業(指定ダム等の建設に伴う損失の補償として実施される事業を除く。)で当該水源地域内において実施するものの概要及び経費の概算について定めるものとする。ただし、特に必要があると認められるときは、これらの事業で当該水源地域外において実施するものについて定めることができる。
一 指定ダムに係る水源地域 土地改良事業、治山事業、治水事業、道路、簡易水道、下水道、義務教育施設又は診療所の整備に関する事業その他政令で定める事業のうち、当該水源地域の基礎条件の著しい変化による影響を緩和するため必要と認められる事業
二 指定湖沼水位調節施設に係る水源地域 土地改良事業、河川又は下水道の整備に関する事業その他政令で定める事業のうち、当該水源地域の基礎条件の著しい変化による影響を緩和し、又は湖沼の水質を保全するため必要と認められる事業
(事業の実施)
第六条 整備事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。
(協力)
第七条 関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、指定ダム等の建設及び水源地域整備計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。
(生活再建のための措置)
第八条 関係行政機関の長、関係地方公共団体、指定ダム等を建設する者及び整備事業を実施する者は、指定ダム等の建設又は整備事業の実施に伴い生活の基礎を失うこととなる者について、次に掲げる生活再建のための措置が実施されることを必要とするときは、その者の申出に基づき、協力して、当該生活再建のための措置のあつせんに努めるものとする。
一 宅地、開発して農地とすることが適当な土地その他の土地の取得に関すること。
四 他に適当な土地がなかつたため環境が著しく不良な土地に住居を移した場合における環境の整備に関すること。
(国の負担又は補助の割合の特例)
第九条 次の各号の一に該当する指定ダムで政令で指定するものの建設に対応する整備事業のうち、別表第一に掲げる事業で都道府県知事又は地方公共団体が実施するものに係る経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、他の法令の規定にかかわらず、同表に定める割合の範囲内で政令で定める割合とする。
二 その建設により水没する農地の面積が特に大きいダム
三 前二号に掲げるもののほか、その建設により水源地域の基礎条件が特に著しく変化し、かつ、当該水源地域をその区域に含まない都府県が著しく利益を受けるダム
2 指定湖沼水位調節施設の建設に対応する整備事業のうち、別表第二に掲げる事業で都府県知事又は地方公共団体が実施するものに係る経費に対する国の負担割合は、他の法令の規定にかかわらず、同表に定める割合の範囲内で政令で定める割合とする。
3 前二項に規定する事業に係る経費に対する他の法令の規定による国の負担割合が、前二項の政令で定める割合をこえるときは、当該事業に係る経費に対する国の負担割合については、これらの規定にかかわらず、当該他の法令の定める割合による。
4 第一項又は第二項に規定する事業に係る経費につき、前三項の規定による国の負担割合により国が負担し、又は補助する場合における国の負担金又は補助金(以下「国庫負担金」という。)の交付については、他の法令の規定にかかわらず、政令で、必要な特例を定めることができる。
(国の普通財産の譲渡)
第十条 国は、整備事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業に係る経費を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。
(国の財政上及び金融上の援助)
第十一条 国は、前二条に定めるもののほか、水源地域整備計画を達成するために必要があると認めるときは、整備事業を実施する者に対し、財政上及び金融上の援助を与えるものとする。
(整備事業についての負担の調整等)
第十二条 整備事業がその区域内において実施される地方公共団体で当該事業に係る経費の全部又は一部を負担するものは、政令で定めるところにより、次に掲げる者と協議し、その協議によりその負担する経費の一部をこれに負担させることができる。
一 指定ダム等を利用して河川の流水を水道、工業用水道又は発電の用に供することが予定されている者
二 次に掲げる区域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体(イからハまでに掲げる区域については、前号に該当する地方公共団体を除く。)
イ 指定ダム等を利用して河川の流水をその用に供することが予定されている水道で水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第二項に規定する水道事業の用に供するものの給水区域
ロ 指定ダム等を利用して河川の流水をその用に供することが予定されている水道で水道法第三条第四項に規定する水道用水供給事業の用に供するものの給水対象事業者が設置する水道の給水区域
ハ 指定ダム等を利用して河川の流水をその用に供することが予定されている工業用水道で工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第四項に規定する工業用水道事業の用に供するものの給水区域
ニ 指定ダム等を利用して河川の流水をかんがいの用に供する土地の区域
ホ 指定ダム等の建設により洪水等による災害の発生が防止され、又は洪水等による災害が軽減される地域
2 関係行政機関の長は、前項の規定による負担に関し、関係当事者のうち一以上の申出に基づき、あつせんをすることができる。