戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法
法令番号: 法律第109号
公布年月日: 昭和41年7月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

戦傷病者等の妻は、夫の日常生活上の介助や看護、家庭の維持等の大きな負担に耐えながら生活してきた特別な事情があることから、その精神的痛苦に対して国として慰謝する必要があるとの考えに基づき、特別給付金を支給することとした。具体的には、日華事変以後に公務上の負傷・疾病により重度の障害を負い、恩給や障害年金等を受給している戦傷病者等の妻に対し、10万円の特別給付金を10年償還の無利子記名国債として交付する。支給対象は約3万3千件を見込んでおり、給付金の権利は譲渡禁止だが相続は認められる。

参照した発言:
第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第41号

審議経過

第51回国会

参議院
(昭和41年3月17日)
衆議院
(昭和41年6月1日)
(昭和41年6月2日)
(昭和41年6月8日)
(昭和41年6月9日)
(昭和41年6月16日)
(昭和41年6月17日)
(昭和41年6月21日)
(昭和41年6月23日)
参議院
(昭和41年6月25日)
(昭和41年6月27日)
(昭和41年6月27日)
戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十一年七月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百九号
戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法
(この法律の趣旨)
第一条 この法律は、戦傷病者等の妻に対する特別給付金の支給に関し必要な事項を規定するものとする。
(定義)
第二条 この法律において「戦傷病者等」とは、昭和十二年七月七日以後に負傷し、又は疾病にかかり、これにより不具廃疾となつたことを事由として、昭和三十八年四月一日において次の各号に掲げる給付を受けていた者で、同日において当該給付に係る不具廃疾の程度が、恩給法(大正十二年法律第四十八号)別表第一号表ノ二の特別項症から第五項症までに該当したものをいう。
一 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号。以下「遺族援護法」という。)第二条第一項第一号に規定する者であつたことにより支給される恩給法第四十六条に規定する増加恩給
二 恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第二十九条の二の規定の適用により支給される恩給法第四十六条に規定する増加恩給
三 遺族援護法第七条の規定により支給される障害年金
四 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法(昭和二十五年法律第二百五十六号)第三条の規定により承継した義務に基づいて国家公務員共済組合連合会が支給する年金たる給付のうち、公務による不具廃疾を支給事由とするもの
五 遺族援護法第二条第一項第二号に規定する者で同法第三条第一項第二号に規定する在職期間内における負傷又は疾病により不具廃疾となつたものに対し、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第三条の規定に基づく郵政省共済組合又は公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)第三条第一項に規定する国鉄共済組合若しくは日本電信電話公社共済組合が支給する年金たる給付のうち、公務による不具廃疾を支給事由とするもの
(特別給付金の支給及び権利の裁定)
第三条 昭和三十八年四月一日において戦傷病者等の妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつたと認められる者を含み、離婚の届出をしていないが、事実上離婚したと同様の事情にあつたと認められる者を除く。)であつて同日において日本の国籍を有していた者には、特別給付金を支給する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、支給しない。
一 昭和三十八年四月二日以後昭和四十一年四月一日前に日本の国籍を失つた者
二 前号の期間内に離婚(離婚の届出をしていないが、事実上離婚したと同様の事情に入つていると認められる場合を含む。)により当該戦傷病者等との婚姻を解消し、又は当該婚姻の取り消しをした者
三 禁錮以上の刑に処せられ、昭和四十一年四月一日においてその刑の執行を終わらず、又は執行を受けることがなくなつていない者(刑の執行猶予の言渡しを受けた者で同日においてその言渡しを取り消されていないものを除く。)
四 当該戦傷病者等が昭和四十一年四月一日前に死亡した場合において、その死亡後同日前に婚姻(屈出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情に入つていると認められる場合を含む。)をし、又は当該戦傷病者等の父母、祖父母及び兄弟姉妹以外の者の養子となつた者
2 特別給付金を受ける権利の裁定は、これを受けようとする者の請求に基づいて厚生大臣が行なう。
(特別給付金の額及び記名国債の交付)
第四条 特別給付金の額は、十万円とし、十年以内に償還すべき記名国債をもつて交付する。
2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3 前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 前四項に定めるもののほか、第二項の規定によつて発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
(特別給付金を受ける権利の受継)
第五条 特別給付金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、死亡した者がその死亡前に特別給付金の請求をしていなかつたときは、死亡した者の相続人は、自己の名で、死亡した者の特別給付金を請求することができる。
2 前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした特別給付金の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別給付金を受ける権利の裁定は、全員に対してしたものとみなす。
3 前条第一項に規定する国債の記名者が死亡した場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした当該死亡した者の死亡前に支払うべきであつた同項に規定する国債の償還金の請求又は同項に規定する国債の記名変更の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした同項に規定する国債の償還金の支払又は同項に規定する国債の記名変更は、全員に対してしたものとみなす。
(時効)
第六条 特別給付金を受ける権利は、三年間行なわないときは、時効によつて消滅する。
(時効の中断)
第七条 特別給付金に関する処分についての行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立ては、時効の中断については、裁判上の請求とみなす。
(譲渡又は担保の禁止)
第八条 特別給付金を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
(差押えの禁止)
第九条 特別給付金を受ける権利及び第四条第一項に規定する国債は、差し押えることができない。
(非課税)
第十条 租税その他の公課は、特別給付金を標準として、課することができない。
2 特別給付金に関する書類及び第四条第一項に規定する国債の譲渡又は当該国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。
(国債の償還金の支払)
第十一条 第四条第一項に規定する国債の償還金の支払に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。
2 郵政大臣は、前項の規定により取り扱う事務を処理する場合において、特に必要があるときは、同項の規定にかかわらず、その事務の一部を政令で定める者に委託して取り扱わせることができる。
3 前項の場合においては、郵政大臣は、同項の政令で定める者に対し、その支払に必要な資金を交付することができる。
4 第二項の規定による支払事務の委託事項及び前項の規定による資金交付の手続は、郵政大臣が大蔵大臣と協議して定める。
5 前三項に定めるもののほか、第一項の規定により郵政大臣が取り扱う事務について必要な事項は、郵政省令で定める。
(権限の委任)
第十二条 この法律により厚生大臣に属する権限は、政令で定めるところにより、都道府県知事その他政令で定める者にその一部を委任することができる。
(省令への委任)
第十三条 この法律に特別の規定がある場合を除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和四十一年四月一日から適用する。
(特別給付金の支給の特例)
2 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律(昭和三十八年法律第七十四号)による遺族援護法第二条及び第四条第四項の規定の改正並びに戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第百五十九号)による遺族援護法第二条第一項第一号及び第四条第二項の規定の改正により昭和十二年七月七日以後に負傷し、又は疾病にかかつたことによる同法第七条に規定する障害年金を受けるに至つた者は、第二条の規定の適用については、昭和三十八年四月一日において同条第三号の給付を受けていた者とみなす。
(国債の発行の日)
3 第四条第二項に規定する国債の発行の日は、昭和四十一年五月十六日とする。
(厚生省設置法の一部改正)
4 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第六十三号の四の次に次の一号を加える。
六十三の五 戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法(昭和四十一年法律第百九号)の定めるところにより、特別給付金を受ける権利を裁定すること。
第十四条の三第四号の四の次に次の一号を加える。
四の五 戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法を施行すること。
法務大臣 石井光次郎
大蔵大臣 福田赳夫
厚生大臣 鈴木善幸
郵政大臣 郡祐一
自治大臣 永山忠則
内閣総理大臣 佐藤栄作