朕商法施行條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十四年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年八月七日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
法律第五十九號
商法施行條例
第一條 商法第二十六條、第二十九條及ヒ第二百十條ニ定メタル一地域トハ各市町村ノ一區域ヲ謂ヒ市町村制ヲ行ハサル地方ニ在テハ從來ノ宿驛町村等ノ一區域ヲ謂フ
一地域內ニ二箇以上ノ區裁判所アルトキハ其內一箇所ヲ以テ登記簿ヲ取扱フ所トス其裁判所ハ司法大臣之ヲ指定ス
第二條 會社ニ非スシテ商業ヲ營ム者ハ其商號ニ會社ノ文字ヲ用ユルコトヲ得ス又從來之ヲ用ユル者ハ商法實施ノ日ヨリ三个月內ニ之ヲ改ム可シ
前項ノ規定ニ違フ者ハ地方裁判所ノ命令ヲ以テ二十圓以下ノ過料ニ處ス
第三條 商法第百五十九條、第百六十六條、第百六十八條、第二百二十二條ノ規定ニ依リテ官廳ニ差出ス書類及ヒ展閱ニ供スル書類ハ公證人ノ認證ヲ受ケタル謄本ヲ以テスルコトヲ得
公證人謄本認證ノ依賴ヲ受ケタルトキハ一件ニ付キ金拾錢ノ手數料若シ認證ト共ニ謄寫ノ依賴ヲ受ケタルトキハ公證人規則第六十五條ノ謄本手數料ヲ受クルコトヲ得
第四條 商法第二百二十二條ニ依リ諸書類ノ展閱ヲ求ムル者アルトキハ其請求者ヨリ一人ニ付一日五十錢以下ノ手數料ヲ受クルコトヲ得
第五條 本條例發布前ヨリ既ニ設立シタル各會社ハ商法實施ノ日ヨリ六个月內ニ商法第七十八條、第百三十八條、第百六十八條ニ準シテ登記ヲ受ク可シ之ヲ怠リタルトキハ商法第二百五十六條ノ過料ニ處シ且地方裁判所ノ命令ヲ以テ其營業ヲ差止ム但其命令ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第六條 前條ノ期限內ニ登記ヲ受ケサル既設會社ハ其期限經過ノ時ヨリ第三者ニ對シテ會社タル効ヲ失フ
第七條 商法第八十一條及ヒ第八十二條ノ規定ハ既設會社ニ之ヲ適用セス
第八條 既設會社ハ從來ノ商號ヲ續用スルコトヲ得但商法第百十三條及ヒ第百三十九條第二項ノ規定ハ商法實施ノ日ヨリ三个月ノ後既設會社ノ商號ニモ之ヲ適用ス
既設會社ノ商號ニハ其會社ノ種類ニ從ヒ合名會社合資會社又ハ株式會社ノ文字ヲ附ス可シ
第九條 既設合名會社ハ其社員ノ數商法第七十四條ノ定員ニ超ユルモ其現社員ノ數ニ依ルコトヲ得但定員以下ニ減シタル場合ニ於テハ更ニ增員シテ其定員ニ超ユルコトヲ得ス
第十條 既設株式會社ハ商法第百五十六條ノ免許ヲ受クルコトヲ要セス
既設株式會社ハ商法實施ノ日ヨリ六个月內ニ地方長官ヲ經由シテ定款ヲ主務省ニ差出シ其定款ノ認可ヲ受ク可シ但其定款ニ法律命令ニ反スル事ヲ揭ケタルモノハ之ヲ改正スルニ非サレハ認可スルノ限ニ在ラス
從來官許ヲ得テ設立シタル株式會社ニハ前項ノ規定ヲ適用セス但聞置又ハ人民ノ相對ニ任ス等ノ指令ヲ得テ設立シタルモノハ此限ニ在ラス
本條第二項ニ依リ認可ヲ受ク可キ株式會社ニ在テハ第五條ノ登記期限ハ其認可ヲ得タル日ヨリ起算ス
右ノ認可ヲ得タル日ヨリ六个月內ニ登記ヲ受ケサルトキハ其認可ハ効力ヲ失フ
第十一條 既設株式會社ハ其株券ノ金額商法第百七十五條ノ規定ニ反スルモ其定款ノ定ニ依ルコトヲ得
第十二條 既設株式會社ハ其定款ニ於テ第一囘ノ株金拂込ヲ四分一以下ニ定メタルトキハ商法第百六十七條第二項ノ規定ニ反スルモ其定款ノ定ニ依ルコトヲ得
第十三條 既設株式會社ノ創業ニ付テノ義務及ヒ出費ニシテ會社ノ承認ヲ經タルモノハ第五條ノ登記ヲ受ケサル前ニ於テモ商法第百七十一條ノ規定ニ抅ハラス會社ニ於テ之ヲ負擔ス
第十四條 既設株式會社ノ既ニ發行シタル株券ハ商法第百七十六條ニ反スルモノ有ルモ之ヲ改ムルコトヲ要セス
第十五條 既設株式會社ニ於テ株金全額ノ拂込前ニ發行シタル株券ハ其全額拂込ニ至ルマテハ之ヲ假株券ト看做ス
第十六條 既設株式會社ノ株券ニシテ商法實施前ヨリ株式取引所又ハ取引所ニ於テ既ニ賣買シ來リタルモノ及ヒ既ニ債權ノ擔保ニ供シタルモノニ付テハ商法第百八十條ノ規定ヲ適用セス
第十七條 既設株式會社ノ株式ノ讓渡人ニ付テハ商法第百八十二條ノ規定ハ商法實施ノ日ヨリ二个年間之ヲ適用セス
第十八條 既設株式會社ニ於テ既ニ其定款ヲ以テ株主ノ議決權ニ制限ヲ立テタルモノハ商法第二百四條ノ規定ニ反スルモ其定款ニ從フコトヲ得
第十九條 商法第七十七條第一項ノ規定ハ既設會社ニ之ヲ適用セス
第二十條 商法及ヒ本條例ニ依リ發スル命令書ヲ送達スル場合ニ於テハ其手續ハ民事訴訟法ノ手續ニ從フ
第二十一條 商法第六十七條第二項、第八十一條、第百二十七條、第百三十一條、第二百三十三條、第二百五十條及ヒ第二百六十一條竝ニ本條例第二條及ヒ第五條ニ依リ裁判所ニ於テ命令ヲ發スルトキハ當事者ヲシテ說明ヲ爲サシムル爲メ之ヲ裁判所ニ呼出スヲ通例トス但當事者缺席スルモ命令書ハ之ヲ發スルコトヲ得
第二十二條 商法第六十七條第二項、第八十一條、第百二十七條及ヒ第二百六十一條竝ニ本條例第二條及ヒ第五條ニ依リ命令ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所ハ豫メ其旨ヲ檢事ニ通知ス可シ
檢事ハ口頭又ハ書面ヲ以テ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十三條 檢事ハ前條第一項ノ場合ニ於ケル命令ニ付キ其執行ノ責ニ任ス
第二十四條 商法及ヒ本條例ニ依リ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ其期間ハ裁判書ノ送達ヲ受ケタル日ノ翌日又ハ裁判ノ言渡ヲ受ケタル日ノ翌日ヨリ起算シテ七日トス
第二十五條 前條ニ揭ケタルモノノ外抗吿ニ關スル手續ニ付テハ民事訴訟法第四百五十五條、第四百六十條第一項第二項、第四百六十五條及ヒ第四百六十六條第一項第二項第四項ヲ除ク外總テ同法第三編第三章ノ規定ヲ準用ス
第二十六條 外國ニ於テ支拂ヲ爲ス可キ手形ニハ捺印スルコトヲ要セス
第二十七條 商法第七百九十條ニ揭ケタル裁判所役員ハ執達吏トス
第二十八條 商法第八百二十五條ニ揭ケタル十五噸以上ノ船舶中ニハ日本形船舶百五十石以上ノモノヲ包含ス
第二十九條 商法實施前ヨリ既ニ航海ノ用ニ供スル船舶ハ商法實施ノ日ヨリ一个年內ニ商法第八百二十五條ノ手續ヲ爲ス可シ
第三十條 商法第四百九十三條及ヒ第五百十七條ニ國內水上ト稱スルハ川湖港灣ヲ謂フ
第三十一條 遞信大臣ハ其地ノ形狀ト危險ノ程度トニ應シテ適宜ニ港灣ノ區域ヲ定ムルコトヲ得
第三十二條 商法第八百六十七條及ヒ第九百六十六條ニ沿岸航海ト稱スルハ專ラ本邦海岸ニ沿フテ航行シ外國ニ至ラサルモノヲ謂フ但本邦ノ版圖ニ屬スル諸島地トノ航行ハ亦沿岸航海ニ屬ス
第三十三條 商法第九百三十六條ニ揭ケタル沿岸小航海ノ區域ハ從來ノ慣習ト海上危險ノ程度トヲ酌量シテ遞信大臣之ヲ定ムルコトヲ得
第三十四條 商法第八百三十六條及ヒ第九百三十四條ニ官ト稱スルハ內國ニ於テハ區裁判所外國ニ於テハ日本領事若シ領事ナキトキハ其地ノ官廳トス
第三十五條 司法大臣ハ各地方裁判所ノ意見ヲ聽キ其所轄地方ノ需用ニ應シテ破產管財人ヲ命シ地方裁判所ハ之ニ依リ破產管財人名簿ヲ作ル可シ
第三十六條 破產管財人タルノ命ヲ受ケタル者ハ正當ノ理由アルニ非サレハ之ヲ辭スルコトヲ得ス
第三十七條 破產管財人ノ任期ハ三个年トス但再任セラルルコトヲ得
第三十八條 名簿中ノ破產管財人破產裁判所ヨリ選定セラレタルトキハ正當ノ理由アルニ非サレハ之ヲ辭スルコトヲ得ス
第三十九條 破產管財人ハ其職務ニ著手スル前公平誠實ニ其職務ヲ執ルコトヲ誓フ可シ
第四十條 破產管財人ハ其擔任スル破產手續中任期滿ツルモ之ヲ終結スルマテ解任スルコトヲ得ス
第四十一條 破產裁判所ハ忌避其他該事件ニ不適當ナルノ理由アリテ名簿中ノ破產管財人ヲ選定ス可カラスト認ムルトキハ他ニ破產管財人ヲ選定スルコトヲ得此場合ニ於テハ直チニ其旨ヲ司法大臣ニ上申ス可シ
前項ノ破產管財人モ名簿中ノ破產管財人ト同一ノ權利及ヒ義務ヲ有ス
第四十二條 職務執行ノ不當又ハ不正ノ爲メ管財人ノ職ヲ解クトキハ破產裁判所ノ公廷ニ於テ其理由ヲ付シテ之ヲ言渡ス可シ
第四十三條 管財人ノ報酬ハ一破產手續ノ全體ニ付キ又ハ收入シタル價額ノ割合ニ應シテ之ヲ定メ財團ノ配當アル每ニ其步割ヲ以テ之ヲ支拂フ可シ
第四十四條 第三十六條及ヒ第三十八條ノ規定ニ違フ者ハ刑法第百七十九條ノ罰金ニ處ス
第四十五條 商法第千二條ニ依リ裁判所ニ於テ債務者ヲ勾留若クハ監守セントスルトキハ其命令書ヲ檢事ニ送致シ檢事ハ其勾留ニ係ル者ハ之ヲ所屬留置場ニ送致セシメ監守ニ係ル者ハ債務者ノ住所ヲ管轄スル警察官署ニ命シ其處分ヲ爲サシム
第四十六條 警察官廳ニ於テ債權者ノ申立ニ因リ債務者ヲ勾留若クハ監守セントスルトキハ命令書ヲ發シテ之ヲ所屬留置場ニ送致セシメ又ハ監守ノ處分ヲ爲サシム此場合ニ於テハ警察官廳ハ同時ニ事由ヲ具シテ其旨ヲ管轄地方裁判所ニ通知ス可シ
第四十七條 司獄官吏債務者ヲ受取リタルトキハ刑事被吿人ヲ受取リタル手續ニ準シ之ヲ留置場ニ入ル可シ其他債務者ノ取扱ハ總テ刑事被吿人ニ異ナルコト無シ
勾留中債務者ノ食料其他ノ費用ハ商法第千三十二條ニ從ヒ破產財團ノ現額ヨリ之ヲ支拂ヒ不足アルトキハ留置場之ヲ負擔ス前條ノ場合ニ於テ債務者破產ニ至ラサルトキハ其申立人之ヲ支辨ス但申立人ハ申立ノ際右ノ費用ニ當ル金額ヲ豫納ス可シ
第四十八條 監守ヲ爲ストキハ警察官吏ヲシテ債務者ノ住所ニ就キ其逃走若クハ財產ノ隱匿ヲ豫防シ且其債務者ノ外人ト面接若クハ通信スルヲ禁セシム
第四十九條 商法第千三條第二項ニ依リ債務者ヲ引致スルトキハ特ニ作リタル引致狀ヲ以テ之ヲ執行ス但其執行ハ刑事訴訟法ニ定メタル勾引狀執行ノ手續ニ準ス
第五十條 商法第千四條ニ依リ裁判所ニ於テ債務者ヲ釋放スルトキハ決定書ヲ檢事ニ送致シ其執行ヲ爲サシム
第五十一條 商法中非訟事件ニ關スル裁判所管轄ハ裁判所構成法ニ定ムルモノノ外第二百五十四條、第三百七十一條、第四百四十一條、第四百九十九條、第五百十四條、第八百五十六條、第九百二條ノ事件ニ付テハ區裁判所トシ其他ノ事件ニ付テハ地方裁判所トス
第五十二條 明治十七年第九號布吿質屋取締條例ニ依リ管轄廳ノ免許ヲ得タル質屋營業人ニハ商法第一編第七章第九節ノ規定ヲ適用セス
第五十三條 明治六年第二百十五號布吿代人規則ハ商事ニ付テハ商法實施ノ日ヨリ之ヲ適用セス
明治十年第六十六號布吿利息制限法第三條及ヒ第五條ハ商事ニ付テハ商法實施ノ日ヨリ之ヲ適用セス
明治十五年第五十七號布吿爲替手形約束手形條例ハ商法實施ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
朕商法施行条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十四年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年八月七日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
法律第五十九号
商法施行条例
第一条 商法第二十六条、第二十九条及ヒ第二百十条ニ定メタル一地域トハ各市町村ノ一区域ヲ謂ヒ市町村制ヲ行ハサル地方ニ在テハ従来ノ宿駅町村等ノ一区域ヲ謂フ
一地域内ニ二箇以上ノ区裁判所アルトキハ其内一箇所ヲ以テ登記簿ヲ取扱フ所トス其裁判所ハ司法大臣之ヲ指定ス
第二条 会社ニ非スシテ商業ヲ営ム者ハ其商号ニ会社ノ文字ヲ用ユルコトヲ得ス又従来之ヲ用ユル者ハ商法実施ノ日ヨリ三个月内ニ之ヲ改ム可シ
前項ノ規定ニ違フ者ハ地方裁判所ノ命令ヲ以テ二十円以下ノ過料ニ処ス
第三条 商法第百五十九条、第百六十六条、第百六十八条、第二百二十二条ノ規定ニ依リテ官庁ニ差出ス書類及ヒ展閲ニ供スル書類ハ公証人ノ認証ヲ受ケタル謄本ヲ以テスルコトヲ得
公証人謄本認証ノ依頼ヲ受ケタルトキハ一件ニ付キ金拾銭ノ手数料若シ認証ト共ニ謄写ノ依頼ヲ受ケタルトキハ公証人規則第六十五条ノ謄本手数料ヲ受クルコトヲ得
第四条 商法第二百二十二条ニ依リ諸書類ノ展閲ヲ求ムル者アルトキハ其請求者ヨリ一人ニ付一日五十銭以下ノ手数料ヲ受クルコトヲ得
第五条 本条例発布前ヨリ既ニ設立シタル各会社ハ商法実施ノ日ヨリ六个月内ニ商法第七十八条、第百三十八条、第百六十八条ニ準シテ登記ヲ受ク可シ之ヲ怠リタルトキハ商法第二百五十六条ノ過料ニ処シ且地方裁判所ノ命令ヲ以テ其営業ヲ差止ム但其命令ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第六条 前条ノ期限内ニ登記ヲ受ケサル既設会社ハ其期限経過ノ時ヨリ第三者ニ対シテ会社タル効ヲ失フ
第七条 商法第八十一条及ヒ第八十二条ノ規定ハ既設会社ニ之ヲ適用セス
第八条 既設会社ハ従来ノ商号ヲ続用スルコトヲ得但商法第百十三条及ヒ第百三十九条第二項ノ規定ハ商法実施ノ日ヨリ三个月ノ後既設会社ノ商号ニモ之ヲ適用ス
既設会社ノ商号ニハ其会社ノ種類ニ従ヒ合名会社合資会社又ハ株式会社ノ文字ヲ附ス可シ
第九条 既設合名会社ハ其社員ノ数商法第七十四条ノ定員ニ超ユルモ其現社員ノ数ニ依ルコトヲ得但定員以下ニ減シタル場合ニ於テハ更ニ増員シテ其定員ニ超ユルコトヲ得ス
第十条 既設株式会社ハ商法第百五十六条ノ免許ヲ受クルコトヲ要セス
既設株式会社ハ商法実施ノ日ヨリ六个月内ニ地方長官ヲ経由シテ定款ヲ主務省ニ差出シ其定款ノ認可ヲ受ク可シ但其定款ニ法律命令ニ反スル事ヲ掲ケタルモノハ之ヲ改正スルニ非サレハ認可スルノ限ニ在ラス
従来官許ヲ得テ設立シタル株式会社ニハ前項ノ規定ヲ適用セス但聞置又ハ人民ノ相対ニ任ス等ノ指令ヲ得テ設立シタルモノハ此限ニ在ラス
本条第二項ニ依リ認可ヲ受ク可キ株式会社ニ在テハ第五条ノ登記期限ハ其認可ヲ得タル日ヨリ起算ス
右ノ認可ヲ得タル日ヨリ六个月内ニ登記ヲ受ケサルトキハ其認可ハ効力ヲ失フ
第十一条 既設株式会社ハ其株券ノ金額商法第百七十五条ノ規定ニ反スルモ其定款ノ定ニ依ルコトヲ得
第十二条 既設株式会社ハ其定款ニ於テ第一回ノ株金払込ヲ四分一以下ニ定メタルトキハ商法第百六十七条第二項ノ規定ニ反スルモ其定款ノ定ニ依ルコトヲ得
第十三条 既設株式会社ノ創業ニ付テノ義務及ヒ出費ニシテ会社ノ承認ヲ経タルモノハ第五条ノ登記ヲ受ケサル前ニ於テモ商法第百七十一条ノ規定ニ拘ハラス会社ニ於テ之ヲ負担ス
第十四条 既設株式会社ノ既ニ発行シタル株券ハ商法第百七十六条ニ反スルモノ有ルモ之ヲ改ムルコトヲ要セス
第十五条 既設株式会社ニ於テ株金全額ノ払込前ニ発行シタル株券ハ其全額払込ニ至ルマテハ之ヲ仮株券ト看做ス
第十六条 既設株式会社ノ株券ニシテ商法実施前ヨリ株式取引所又ハ取引所ニ於テ既ニ売買シ来リタルモノ及ヒ既ニ債権ノ担保ニ供シタルモノニ付テハ商法第百八十条ノ規定ヲ適用セス
第十七条 既設株式会社ノ株式ノ譲渡人ニ付テハ商法第百八十二条ノ規定ハ商法実施ノ日ヨリ二个年間之ヲ適用セス
第十八条 既設株式会社ニ於テ既ニ其定款ヲ以テ株主ノ議決権ニ制限ヲ立テタルモノハ商法第二百四条ノ規定ニ反スルモ其定款ニ従フコトヲ得
第十九条 商法第七十七条第一項ノ規定ハ既設会社ニ之ヲ適用セス
第二十条 商法及ヒ本条例ニ依リ発スル命令書ヲ送達スル場合ニ於テハ其手続ハ民事訴訟法ノ手続ニ従フ
第二十一条 商法第六十七条第二項、第八十一条、第百二十七条、第百三十一条、第二百三十三条、第二百五十条及ヒ第二百六十一条並ニ本条例第二条及ヒ第五条ニ依リ裁判所ニ於テ命令ヲ発スルトキハ当事者ヲシテ説明ヲ為サシムル為メ之ヲ裁判所ニ呼出スヲ通例トス但当事者欠席スルモ命令書ハ之ヲ発スルコトヲ得
第二十二条 商法第六十七条第二項、第八十一条、第百二十七条及ヒ第二百六十一条並ニ本条例第二条及ヒ第五条ニ依リ命令ヲ為ス場合ニ於テハ裁判所ハ予メ其旨ヲ検事ニ通知ス可シ
検事ハ口頭又ハ書面ヲ以テ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十三条 検事ハ前条第一項ノ場合ニ於ケル命令ニ付キ其執行ノ責ニ任ス
第二十四条 商法及ヒ本条例ニ依リ即時抗告ヲ為スコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ其期間ハ裁判書ノ送達ヲ受ケタル日ノ翌日又ハ裁判ノ言渡ヲ受ケタル日ノ翌日ヨリ起算シテ七日トス
第二十五条 前条ニ掲ケタルモノノ外抗告ニ関スル手続ニ付テハ民事訴訟法第四百五十五条、第四百六十条第一項第二項、第四百六十五条及ヒ第四百六十六条第一項第二項第四項ヲ除ク外総テ同法第三編第三章ノ規定ヲ準用ス
第二十六条 外国ニ於テ支払ヲ為ス可キ手形ニハ捺印スルコトヲ要セス
第二十七条 商法第七百九十条ニ掲ケタル裁判所役員ハ執達吏トス
第二十八条 商法第八百二十五条ニ掲ケタル十五噸以上ノ船舶中ニハ日本形船舶百五十石以上ノモノヲ包含ス
第二十九条 商法実施前ヨリ既ニ航海ノ用ニ供スル船舶ハ商法実施ノ日ヨリ一个年内ニ商法第八百二十五条ノ手続ヲ為ス可シ
第三十条 商法第四百九十三条及ヒ第五百十七条ニ国内水上ト称スルハ川湖港湾ヲ謂フ
第三十一条 逓信大臣ハ其地ノ形状ト危険ノ程度トニ応シテ適宜ニ港湾ノ区域ヲ定ムルコトヲ得
第三十二条 商法第八百六十七条及ヒ第九百六十六条ニ沿岸航海ト称スルハ専ラ本邦海岸ニ沿フテ航行シ外国ニ至ラサルモノヲ謂フ但本邦ノ版図ニ属スル諸島地トノ航行ハ亦沿岸航海ニ属ス
第三十三条 商法第九百三十六条ニ掲ケタル沿岸小航海ノ区域ハ従来ノ慣習ト海上危険ノ程度トヲ酌量シテ逓信大臣之ヲ定ムルコトヲ得
第三十四条 商法第八百三十六条及ヒ第九百三十四条ニ官ト称スルハ内国ニ於テハ区裁判所外国ニ於テハ日本領事若シ領事ナキトキハ其地ノ官庁トス
第三十五条 司法大臣ハ各地方裁判所ノ意見ヲ聴キ其所轄地方ノ需用ニ応シテ破産管財人ヲ命シ地方裁判所ハ之ニ依リ破産管財人名簿ヲ作ル可シ
第三十六条 破産管財人タルノ命ヲ受ケタル者ハ正当ノ理由アルニ非サレハ之ヲ辞スルコトヲ得ス
第三十七条 破産管財人ノ任期ハ三个年トス但再任セラルルコトヲ得
第三十八条 名簿中ノ破産管財人破産裁判所ヨリ選定セラレタルトキハ正当ノ理由アルニ非サレハ之ヲ辞スルコトヲ得ス
第三十九条 破産管財人ハ其職務ニ著手スル前公平誠実ニ其職務ヲ執ルコトヲ誓フ可シ
第四十条 破産管財人ハ其担任スル破産手続中任期満ツルモ之ヲ終結スルマテ解任スルコトヲ得ス
第四十一条 破産裁判所ハ忌避其他該事件ニ不適当ナルノ理由アリテ名簿中ノ破産管財人ヲ選定ス可カラスト認ムルトキハ他ニ破産管財人ヲ選定スルコトヲ得此場合ニ於テハ直チニ其旨ヲ司法大臣ニ上申ス可シ
前項ノ破産管財人モ名簿中ノ破産管財人ト同一ノ権利及ヒ義務ヲ有ス
第四十二条 職務執行ノ不当又ハ不正ノ為メ管財人ノ職ヲ解クトキハ破産裁判所ノ公廷ニ於テ其理由ヲ付シテ之ヲ言渡ス可シ
第四十三条 管財人ノ報酬ハ一破産手続ノ全体ニ付キ又ハ収入シタル価額ノ割合ニ応シテ之ヲ定メ財団ノ配当アル毎ニ其歩割ヲ以テ之ヲ支払フ可シ
第四十四条 第三十六条及ヒ第三十八条ノ規定ニ違フ者ハ刑法第百七十九条ノ罰金ニ処ス
第四十五条 商法第千二条ニ依リ裁判所ニ於テ債務者ヲ勾留若クハ監守セントスルトキハ其命令書ヲ検事ニ送致シ検事ハ其勾留ニ係ル者ハ之ヲ所属留置場ニ送致セシメ監守ニ係ル者ハ債務者ノ住所ヲ管轄スル警察官署ニ命シ其処分ヲ為サシム
第四十六条 警察官庁ニ於テ債権者ノ申立ニ因リ債務者ヲ勾留若クハ監守セントスルトキハ命令書ヲ発シテ之ヲ所属留置場ニ送致セシメ又ハ監守ノ処分ヲ為サシム此場合ニ於テハ警察官庁ハ同時ニ事由ヲ具シテ其旨ヲ管轄地方裁判所ニ通知ス可シ
第四十七条 司獄官吏債務者ヲ受取リタルトキハ刑事被告人ヲ受取リタル手続ニ準シ之ヲ留置場ニ入ル可シ其他債務者ノ取扱ハ総テ刑事被告人ニ異ナルコト無シ
勾留中債務者ノ食料其他ノ費用ハ商法第千三十二条ニ従ヒ破産財団ノ現額ヨリ之ヲ支払ヒ不足アルトキハ留置場之ヲ負担ス前条ノ場合ニ於テ債務者破産ニ至ラサルトキハ其申立人之ヲ支弁ス但申立人ハ申立ノ際右ノ費用ニ当ル金額ヲ予納ス可シ
第四十八条 監守ヲ為ストキハ警察官吏ヲシテ債務者ノ住所ニ就キ其逃走若クハ財産ノ隠匿ヲ予防シ且其債務者ノ外人ト面接若クハ通信スルヲ禁セシム
第四十九条 商法第千三条第二項ニ依リ債務者ヲ引致スルトキハ特ニ作リタル引致状ヲ以テ之ヲ執行ス但其執行ハ刑事訴訟法ニ定メタル勾引状執行ノ手続ニ準ス
第五十条 商法第千四条ニ依リ裁判所ニ於テ債務者ヲ釈放スルトキハ決定書ヲ検事ニ送致シ其執行ヲ為サシム
第五十一条 商法中非訟事件ニ関スル裁判所管轄ハ裁判所構成法ニ定ムルモノノ外第二百五十四条、第三百七十一条、第四百四十一条、第四百九十九条、第五百十四条、第八百五十六条、第九百二条ノ事件ニ付テハ区裁判所トシ其他ノ事件ニ付テハ地方裁判所トス
第五十二条 明治十七年第九号布告質屋取締条例ニ依リ管轄庁ノ免許ヲ得タル質屋営業人ニハ商法第一編第七章第九節ノ規定ヲ適用セス
第五十三条 明治六年第二百十五号布告代人規則ハ商事ニ付テハ商法実施ノ日ヨリ之ヲ適用セス
明治十年第六十六号布告利息制限法第三条及ヒ第五条ハ商事ニ付テハ商法実施ノ日ヨリ之ヲ適用セス
明治十五年第五十七号布告為替手形約束手形条例ハ商法実施ノ日ヨリ之ヲ廃止ス