半導体集積回路の回路配置に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十年五月三十一日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第四十三号
半導体集積回路の回路配置に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
回路配置利用権の設定の登録(第三条―第九条)
第三章
回路配置利用権等
第一節
回路配置利用権(第十条―第二十一条)
第二節
権利侵害(第二十二条―第二十六条)
第三節
補償金(第二十七条)
第四章
指定登録機関(第二十八条―第四十六条)
第五章
雑則(第四十七条―第五十条)
第六章
罰則(第五十一条―第五十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、半導体集積回路の回路配置の適正な利用の確保を図るための制度を創設することにより、半導体集積回路の開発を促進し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「半導体集積回路」とは、半導体材料若しくは絶縁材料の表面又は半導体材料の内部に、トランジスターその他の回路素子を生成させ、かつ、不可分の状態にした製品であつて、電子回路の機能を有するょうに設計したものをいう。
2 この法律において「回路配置」とは、半導体集積回路における回路素子及びこれらを接続する導線の配置をいう。
3 この法律において回路配置について「利用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 その回路配置を用いて半導体集積回路を製造する行為
二 その回路配置を用いて製造した半導体集積回路(当該半導体集積回路を組み込んだ物品を含む。)を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為
第二章 回路配置利用権の設定の登録
(回路配置利用権の設定の登録)
第三条 回路配置の創作をした者又はその承継人(以下「創作者等」という。)は、その回路配置について回路配置利用権の設定の登録(以下「設定登録」という。)を受けることができる。この場合において、創作者等が二人以上あるときは、これらの者が共同して設定登録を受けなければならない。
2 設定登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を通商産業大臣に提出しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名
二 申請の年月日
三 回路配置について業として前条第三項第二号に掲げる行為をしている場合にあつては、その行為を最初にした年月日
四 回路配置の創作をした者の氏名又は名称及び住所又は居所
五 前各号に掲げるもののほか、通商産業省令で定める事項
3 前項の申請書には、通商産業省令で定めるところにより、申請に係る回路配置を記載した図面又は当該回路配置を現した写真及び申請者が創作者等であることについての説明書その他通商産業省令で定める資料を添付しなければならない。
(申請者の名義の変更)
第四条 申請者の名義は、変更することができる。
2 申請者の名義の変更は、相続その他の一般承継の場合を除き、通商産業省令で定めるところにより、通商産業大臣に届け出なければ、その効力を生じない。
3 相続その他の一般承継により申請者の名義の変更があつたときは、通商産業省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(職務上の回路配置の創作)
第五条 法人その他使用者の業務に従事する者が職務上創作をした回路配置については、その創作の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人その他使用者を当該回路配置の創作をした者とする。
(申請前の回路配置の利用)
第六条 設定登録は、その申請の日から二年さかのぼつた日前に、創作者等又はその許諾を得た者が業として当該申請に係る回路配置について第二条第三項第二号に掲げる行為をしていた場合には、受けることができない。
(設定登録及び公示)
第七条 通商産業大臣は、設定登録の申請があつたときは、次条第一項の規定により申請を却下する場合を除き、設定登録をしなければならない。
2 設定登録は、回路配置原簿に設定登録を受ける者の氏名又は名称及び住所又は居所、設定登録の年月日その他通商産業省令で定める事項を記載してするものとする。
3 通商産業大臣は、第一項の規定による設定登録をしたときは、通商産業省令で定める事項を公示しなければならない。
(設定登録の申請の却下)
第八条 通商産業大臣は、設定登録の申請が次の各号のいずれかに該当することが第三条第二項の申請書及びこれに添付した図面その他の資料から明らかであるときは、設定登録の申請を却下しなければならない。
一 申請者が創作者等でないこと。
二 創作者等が二人以上ある場合において、これらの者が共同して設定登録の申請をしていないこと。
三 申請に係る回路配置が第六条の規定により設定登録を受けることができないものであること。
四 申請書が方式に適合しないことその他の政令で定める事由があること。
2 通商産業大臣は、前項の規定により申請を却下したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を申請者に通知しなければならない。
(設定登録の抹消)
第九条 通商産業大臣は、設定登録の申請が前条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当していたことが明らかとなつたときは、設定登録を抹消しなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の規定により設定登録を抹消しようとするときは、当該設定登録に係る回路配置利用権の登録名義人及び当該回路配置利用権に関する権利の登録名義人に対し、その理由を文書をもつて通知し、相当の期間を指定して、意見を述べる機会を与えなければならない。
3 通商産業大臣は、第一項の規定により設定登録を抹消したときは、その旨を、当該設定登録に係る回路配置利用権の登録名義人に対し通知するとともに、公示しなければならない。
第三章 回路配置利用権等
第一節 回路配置利用権
(回路配置利用権の発生及び存続期間)
第十条 回路配置利用権は、設定登録により発生する。
2 回路配置利用権の存続期間は、設定登録の日から十年とする。
(回路配置利用権の効力)
第十一条 回路配置利用権者は、業として設定登録を受けている回路配置(以下「登録回路配置」という。)を利用する権利を専有する。ただし、その回路配置利用権について専用利用権を設定したときは、専用利用権者がその登録回路配置を利用する権利を専有する範囲については、この限りでない。
(回路配置利用権の効力が及ばない範囲)
第十二条 回路配置利用権の効力は、他人が創作した回路配置の利用には、及ばない。
2 回路配置利用権の効力は、解析又は評価のために登録回路配置を用いて半導体集積回路を製造する行為には、及ばない。
3 回路配置利用権者、専用利用権者又は通常利用権者が登録回路配置を用いて製造した半導体集積回路(当該半導体集積回路を組み込んだ物品を含む。以下この項において同じ。)を譲渡したときは、回路配置利用権の効力は、その譲渡がされた半導体集積回路を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為には、及ばない。
(他人の特許発明等との関係)
第十三条 回路配置利用権者、専用利用権者又は通常利用権者は、その登録回路配置の利用が他人の特許発明又は登録実用新案の実施に当たるときは、業としてその登録回路配置を利用することができない。
(共有に係る回路配置利用権)
第十四条 回路配置利用権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 回路配置利用権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定めをした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその登録回路配置を利用することができる。
3 回路配置利用権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その回路配置利用権について専用利用権を設定し、又は他人に通常利用権を許諾することができない。
(法人が解散した場合等における回路配置利用権の消滅)
第十五条 回路配置利用権は、次に掲げる場合には、消滅する。
一 回路配置利用権者である法人が解散した場合において、その回路配置利用権が民法(明治二十九年法律第八十九号)第七十二条第三項その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
二 回路配置利用権者である個人が死亡した場合において、その回路配置利用権が民法第九百五十九条の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
(専用利用権)
第十六条 回路配置利用権者は、その回路配置利用権について専用利用権を設定することができる。
2 専用利用権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録回路配置を利用する権利を専有する。
3 専用利用権は、回路配置の利用の事業とともにする場合、回路配置利用権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
4 専用利用権者は、回路配置利用権者の承諾を得た場合に限り、その専用利用権について質権を設定し、又は他人に通常利用権を許諾することができる。
5 第十四条の規定は、専用利用権に準用する。
(通常利用権)
第十七条 回路配置利用権者は、その回路配置利用権について他人に通常利用権を許諾することができる。
2 通常利用権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録回路配置を利用する権利を有する。
3 通常利用権は、回路配置の利用の事業とともにする場合、回路配置利用権者(専用利用権についての通常利用権にあつては、回路配置利用権者及び専用利用権者。次項において同じ。)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
4 通常利用権者は、回路配置利用権者の承諾を得た場合に限り、その通常利用権について質権を設定することができる。
5 第十四条第一項及び第二項の規定は、通常利用権に準用する。
(質権)
第十八条 回路配置利用権、専用利用権又は通常利用権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、当該登録回路配置を利用することができない。
第十九条 回路配置利用権、専用利用権又は通常利用権を目的とする質権は、回路配置利用権、専用利用権若しくは通常利用権の対価又は登録回路配置の利用に対しその回路配置利用権者若しくは専用利用権者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行うことができる。ただし、その払渡し又は引渡し前に差押えをしなければならない。
(回路配置利用権等の放棄)
第二十条 回路配置利用権者は、専用利用権者、通常利用権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その回路配置利用権を放棄することができる。
2 専用利用権者は、通常利用権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その専用利用権を放棄することができる。
3 通常利用権者は、質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その通常利用権を放棄することができる。
(登録の効果)
第二十一条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 回路配置利用権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)又は処分の制限
二 専用利用権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は回路配置利用権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
三 通常利用権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は回路配置利用権若しくは専用利用権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
四 回路配置利用権、専用利用権又は通常利用権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2 通常利用権は、その登録をしたときは、その回路配置利用権若しくは専用利用権又はその回路配置利用権についての専用利用権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。
3 前二項の登録は、通商産業大臣が回路配置原簿に記載して行う。
第二節 権利侵害
(差止請求権)
第二十二条 回路配置利用権者又は専用利用権者は、自己の回路配置利用権又は専用利用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 回路配置利用権者又は専用利用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した半導体集積回路又は侵害の行為に供した物の廃棄その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
(侵害とみなす行為)
第二十三条 専ら登録回路配置を模倣するために使用される物を業として生産し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為は、回路配置利用権又は専用利用権を侵害するものとみなす。
(善意者に対する特例)
第二十四条 半導体集積回路(半導体集積回路を組み込んだ物品を含む。以下この条において同じ。)の引渡しを受けた時において、当該半導体集積回路が他人の回路配置利用権又は専用利用権に係る登録回路配置を模倣した回路配置を用いて製造されたものであること(以下「模倣の事実」という。)を知らず、かつ、知らないことにつき過失がない者(以下「善意者」という。)が業として当該半導体集積回路を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為は、当該回路配置利用権又は専用利用権を侵害する行為でないものとみなす。
2 回路配置利用権者又は専用利用権者は、善意者が模倣の事実を知つた後に業としてその半導体集積回路を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する場合には、その者に対し、その登録回路配置の利用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭の支払を請求することができる。
3 善意者が回路配置利用権者又は専用利用権者に対し前項に規定する支払をしたときは、その半導体集積回路は、当該回路配置利用権者又は専用利用権者が譲渡したものとみなす。
4 第二十六条並びに民法第七百十九条第一項及び第七百二十四条の規定は、第二項の規定による請求権を行使する場合に準用する。
(損害の額の推定等)
第二十五条 回路配置利用権者又は専用利用権者が故意又は過失により自己の回路配置利用権又は専用利用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、回路配置利用権者又は専用利用権者が受けた損害の額と推定する。
2 回路配置利用権者又は専用利用権者は、故意又は過失により自己の回路配置利用権又は専用利用権を侵害した者に対し、その登録回路配置の利用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
3 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、回路配置利用権又は専用利用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
(書類の提出)
第二十六条 裁判所は、回路配置利用権又は専用利用権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
第三節 補償金
(補償金)
第二十七条 回路配置の創作者等又はその許諾を得た者が当該回路配置について設定登録前に業として第二条第三項第二号に掲げる行為をした場合において、その行為の後当該回路配置についての設定登録前に当該回路配置を模倣した回路配置(以下この項及び第四項において「模倣回路配置」という。)であることを知つて業として模倣回路配置を利用した者は、当該回路配置の創作者等に対し、当該回路配置について設定登録がされた場合にその利用に対し通常支払うべき金銭の額に相当する額の補償金を支払う責めに任ずる。
2 前項に規定する補償金の請求権は、当該回路配置について設定登録がされた後でなければ、行使することができない。
3 第一項の回路配置について設定登録がされた後第九条の規定により当該設定登録が抹消されたときは、同項に規定する補償金の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。
4 第二十三条及び前条並びに民法第七百十九条第一項及び第七百二十四条の規定は、第一項に規定する補償金の請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が当該回路配置の設定登録前に模倣回路配置の利用の事実及び模倣回路配置を利用した者を知つたときは、民法第七百二十四条中「被害者又ハ其法定代理人ガ損害及ビ加害者ヲ知リタル時」とあるのは、「当該回路配置ノ設定登録ノ日」と読み替えるものとする。
第四章 指定登録機関
(指定登録機関の指定等)
第二十八条 通商産業大臣は、通商産業省令で定めるところにより、その指定する者(以下「指定登録機関」という。)に、設定登録、第二十一条第一項及び第二項の登録並びに第四十八条第二項に規定する請求に基づき行われる事務(以下「登録事務」という。)の全部又は一部を行わせることができる。
2 前項の指定は、通商産業省令で定めるところにより、登録事務を行おうとする者の申請により行う。
3 通商産業大臣は、第一項の指定をしたときは、当該指定登録機関が行う登録事務を行わないものとする。
4 指定登録機関が登録事務を行う場合における第三条第二項、第四条第二項及び第三項、第七条第一項及び第三項、第八条、第九条、第二十一条第三項並びに第四十八条第二項の規定の適用については、これらの規定(第四十八条第二項を除く。)中「通商産業大臣」とあるのは「指定登録機関」と、同項中「通商産業大臣に対し」とあるのは「指定登録機関に対し」とする。
(欠格条項)
第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、前条第一項の指定を受けることができない。
一 この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
二 第四十一条の規定により指定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
三 その業務を行う役員のうちに、次のいずれかに該当する者がある者
イ 第一号に該当する者
ロ 第三十七条の規定による命令により解任され、解任の日から二年を経過しない者
(指定の基準)
第三十条 通商産業大臣は、第二十八条第一項の指定の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、その指定をしてはならない。
一 通商産業省令で定める条件に適合する知識経験を有する者が登録事務を実施し、その数が通商産業省令で定める数以上であること。
二 登録事務を適確かつ円滑に行うに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること。
三 民法第三十四条の規定により設立された法人であつて、その役員又は職員の構成が登録事務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。
四 登録事務以外の業務を行つているときは、その業務を行うことによつて登録事務が不公正になるおそれがないものであること。
五 その指定をすることによつて登録事務の適確かつ円滑な実施を阻害することとならないこと。
(設定登録等の実施義務等)
第三十一条 指定登録機関は、設定登録並びに第二十一条第一項及び第二項の登録をすべきことを求められたときは、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、設定登録及び同条の登録を行わなければならない。
2 指定登録機関は、登録事務を行うときは、前条第一号に規定する者(以下「登録事務実施者」という。)に実施させなければならない。
(事務所の変更)
第三十二条 指定登録機関は、登録事務を行う事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、通商産業大臣に届け出なければならない。
(登録事務規程)
第三十三条 指定登録機関は、登録事務に関する規程(以下「登録事務規程」という。)を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 登録事務規程で定めるべき事項は、通商産業省令で定める。
3 通商産業大臣は、第一項の認可をした登録事務規程が登録事務の公正な遂行上不適当となつたと認めるときは、指定登録機関に対し、登録事務規程を変更すべきことを命ずることができる。
(登録事務の休廃止)
第三十四条 指定登録機関は、通商産業大臣の許可を受けなければ、登録事務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
(事業計画等)
第三十五条 指定登録機関は、毎事業年度開始前に(第二十八条第一項の指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後遅滞なく)、その事業年度の事業計画及び収支予算を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 指定登録機関は、毎事業年度経過後三月以内に、その事業年度の事業報告書及び収支決算書を作成し、通商産業大臣に提出しなければならない。
(役員等の選任及び解任)
第三十六条 指定登録機関の役員又は登録事務実施者の選任及び解任は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(解任命令)
第三十七条 通商産業大臣は、指定登録機関の役員又は登録事務実施者が、この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは登録事務規程に違反したとき、又は登録事務に関し著しく不適当な行為をしたときは、指定登録機関に対し、その役員又は登録事務実施者を解任すべきことを命ずることができる。
(秘密保持義務等)
第三十八条 指定登録機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、登録事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 登録事務に従事する指定登録機関の役員又は職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
(報告及び立入検査)
第三十九条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定登録機関に対し、その業務若しくは経理の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、指定登録機関の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項に規定する立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(適合命令等)
第四十条 通商産業大臣は、指定登録機関が第三十条第一号から第四号までに適合しなくなつたと認めるときは、その指定登録機関に対し、これらの規定に適合するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
2 通商産業大臣は、前項に定めるもののほか、この法律を施行するため必要があると認めるときは、指定登録機関に対し、登録事務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(指定の取消し等)
第四十一条 通商産業大臣は、指定登録機関が次の各号のいずれかに該当するときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて登録事務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 この章の規定に違反したとき。
二 第二十九条第一号又は第三号に該当するに至つたとき。
三 第三十三条第一項の認可を受けた登録事務規程によらないで登録事務を行つたとき。
四 第三十三条第三項、第三十七条又は前条の規定による命令に違反したとき。
五 不正の手段により指定を受けたとき。
(帳簿の記載)
第四十二条 指定登録機関は、帳簿を備え、登録事務に関し通商産業省令で定める事項を記載しなければならない。
2 前項の帳簿は、通商産業省令で定めるところにより、保存しなければならない。
(聴聞)
第四十三条 通商産業大臣は、第三十七条又は第四十一条の規定による処分をする場合においては、当該処分に係る者に対し、相当な期間を置いて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対し、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(指定登録機関がした処分等に係る不服申立て)
第四十四条 指定登録機関が行う登録事務に係る処分又はその不作為について不服がある者は、通商産業大臣に対し、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による審査請求をすることができる。
(通商産業大臣による登録事務の実施等)
第四十五条 通商産業大臣は、指定登録機関が第三十四条の許可を受けて登録事務の全部若しくは一部を休止したとき、第四十一条の規定により指定登録機関に対し登録事務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、又は指定登録機関が天災その他の事由により登録事務の全部若しくは一部を実施することが困難となつた場合において必要があると認めるときは、当該登録事務の全部又は一部を自ら行うものとする。
2 通商産業大臣が前項の規定により登録事務の全部又は一部を自ら行う場合、指定登録機関が第三十四条の許可を受けて登録事務の全部若しくは一部を廃止する場合又は第四十一条の規定により通商産業大臣が指定登録機関の指定を取り消した場合における登録事務の引継ぎその他の必要な事項については、通商産業省令で定める。
(公示)
第四十六条 通商産業大臣は、次の場合には、その旨を官報に公示しなければならない。
一 第二十八条第一項の指定をしたとき。
二 第三十二条の規定による届出があつたとき。
三 第三十四条の許可をしたとき。
四 第四十一条の規定により指定を取り消し、又は登録事務の全部若しくは一部の停止を命じたとき。
五 前条第一項の規定により通商産業大臣が登録事務の全部若しくは一部を自ら行うこととするとき、又は自ら行つていた登録事務の全部若しくは一部を行わないこととするとき。
第五章 雑則
(在外者の裁判籍)
第四十七条 日本国内に住所又は居所(法人にあつては、営業所)を有しない者の回路配置利用権その他回路配置利用権に関する権利については、通商産業省の所在地をもつて民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第八条の財産の所在地とみなす。
(回路配置原簿等)
第四十八条 回路配置原簿は、その全部又は一部を磁気テープ(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含む。以下同じ。)をもつて調製することができる。
2 何人も、通商産業大臣に対し、回路配置原簿の謄本若しくは抄本若しくは回路配置原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付又は回路配置原簿若しくは第三条第二項の申請書若しくはこれに添付した図面その他の資料(通商産業大臣が秘密を保持する必要があると認めるものを除く。)の閲覧若しくは謄写を請求することができる。
(手数料等)
第四十九条 次に掲げる者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国(指定登録機関が登録事務を行う場合にあつては、指定登録機関)に納付しなければならない。
一 設定登録を受けようとする者
二 第二十一条第一項又は第二項の登録を受けようとする者
三 前条第二項の規定により回路配置原簿の謄本若しくは抄本又は回路配置原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付を請求しようとする者
四 前条第二項の規定により回路配置原簿又は申請書若しくはこれに添付した図面その他の資料の閲覧又は謄写を請求しようとする者
2 前項(第一号及び第二号に掲げる者に係る部分に限る。)の規定は、通商産業大臣が設定登録又は第二十一条第一項若しくは第二項の登録を行う場合については、適用しない。
3 第一項の規定は、手数料を納付すべき者が国であるときは、適用しない。
4 第一項の規定により指定登録機関に納められた手数料は、指定登録機関の収入とする。
第五十条 この法律に定めるもののほか、設定登録並びに第二十一条第一項及び第二項の登録に関し必要な事項は、政令で定める。
第六章 罰則
第五十一条 回路配置利用権又は専用利用権を侵害した者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴をまつて論ずる。
第五十二条 詐欺の行為により設定登録を受けた者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第五十三条 第三十八条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第五十四条 第四十一条の規定による登録事務の停止の命令に違反したときは、その違反行為をした指定登録機関の役員又は職員は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第五十五条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした指定登録機関の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第三十四条の許可を受けないで登録事務の全部を廃止したとき。
二 第三十九条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。
三 第四十二条第一項の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は同条第二項の規定に違反して帳簿を保存しなかつたとき。
第五十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五十一条第一項又は第五十二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二十八条から第三十条まで、第三十二条、第三十三条、第三十五条、第三十六条、第三十八条から第四十三条まで、第四十六条、第五十三条及び第五十五条(第一号を除く。)の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の日前二年以内に、創作者等又はその許諾を得た者が最初に業として第二条第三項第二号に掲げる行為をした回路配置について、この法律の施行の日から六月を経過する日までの間に設定登録の申請がされたときは、その設定登録については、第六条の規定は、適用しない。
第三条 回路配置利用権の効力は、この法律の施行の際現に存する半導体集積回路(当該半導体集積回路を組み込んだ物品を含む。次条において同じ。)をこの法律の施行後二年以内に譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為には、及ばない。
第四条 第二十七条第一項の規定は、この法律の施行前にされた回路配置の利用及びこの法律の施行の際現に存する半導体集積回路をこの法律の施行後二年以内に譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、又は輸入する行為には、適用しない。
(破産法の一部改正)
第五条 破産法(大正十一年法律第七十一号)の一部を次のように改正する。
第百九十七条第二号中「実用新案権」の下に「、回路配置利用権」を加える。
(相続税法の一部改正)
第六条 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の一部を次のように改正する。
第十条第一項第八号中「これらのもの」を「これら」に、「又は商標権」を「、商標権又は回路配置利用権若しくはその利用権で登録されているもの」に改める。
(印紙税法の一部改正)
第七条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の定義の欄中「意匠権」の下に「、回路配置利用権」を加える。
(登録免許税法の一部改正)
第八条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
第十一条第一項中「商標権」の下に「、回路配置利用権」を加える。
別表第一第十四号の次に次の一号を加える。
十四の二 回路配置利用権の登録(回路配置利用権の信託の登録を含む。)
 (一) 回路配置利用権の設定の登録
回路配置利用権の件数
一件につき一万八千円
 (二) 回路配置利用権の移転の登録
  イ 相続又は法人の合併による移転の登録
回路配置利用権の件数
一件につき三千円
  ロ その他の原因による移転の登録
回路配置利用権の件数
一件につき九千円
 (三) 専用利用権又は通常利用権の設定の登録
専用利用権又は通常利用権の件数
一件につき九千円
 (四) 回路配置利用権、専用利用権若しくは通常利用権を目的とする質権の設定又は回路配置利用権、専用利用権、通常利用権若しくは当該質権の処分の制限の登録
債権金額
千分の四
 (五) 専用利用権若しくは通常利用権の移転又はこれらの権利若しくは回路配置利用権を目的とする質権の移転の登録
  イ 相続又は法人の合併による移転の登録
回路配置利用権、専用利用権又は通常利用権(以下この号において「回路配置利用権等」という。)の件数
一件につき千五百円
  ロ その他の原因による移転の登録
回路配置利用権等の件数
一件につき三千円
 (六) 信託の登録
回路配置利用権等の件数
一件につき三千円
 (七) 付記登録、仮登録、抹消した登録の回復の登録又は登録の更正若しくは変更の登録(これらの登録のうち(一)から(六)までの登録に該当するものを除く。)
回路配置利用権等の件数
一件につき千円
 (八) 登録の抹消
回路配置利用権等の件数
一件につき千円
(通商産業省設置法の一部改正)
第九条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第五条第三十号の次に次の一号を加える。
三十の二 回路配置利用権その他回路配置利用権に関する権利を登録すること。
法務大臣 嶋崎均
大蔵大臣 竹下登
通商産業大臣 村田敬次郎
内閣総理大臣 中曽根康弘