鉄道抵当法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第63号
公布年月日: 昭和31年4月2日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

明治38年に施行された鉄道抵当法は、約50年間にわたり制度的な改正がほとんどなく、運用上の不便が生じている。近年の同法利用増加に伴い、金融の円滑化を図るため改正を行う。主な改正点は、①鉄道財団を抵当権消滅後も6ヶ月間存続させる、②鉄道延長時の財団拡張制度を設ける、③鉄道財団の分割・合併制度を設ける、の3点である。また、第三者保護規定の整備や鉄道財団成立の登録制度の新設、過料額の適正化等も行う。

参照した発言:
第24回国会 衆議院 運輸委員会 第3号

審議経過

第24回国会

衆議院
(昭和31年2月8日)
参議院
(昭和31年2月14日)
(昭和31年3月1日)
(昭和31年3月5日)
衆議院
(昭和31年3月8日)
(昭和31年3月9日)
参議院
(昭和31年3月16日)
衆議院
(昭和31年6月3日)
鉄道抵当法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年四月二日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第六十三号
鉄道抵当法の一部を改正する法律
鉄道抵当法(明治三十八年法律第五十三号)の一部を次のように改正する。
第二条第四項を削る。
第二条の次に次の一条を加える。
第二条ノ二 鉄道財団ハ抵当権設定ノ認可アリタルトキニ成立ス
鉄道財団ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
一 抵当権ノ登録ガ全部抹消セラレタル後又ハ抵当権ガ第十三条ノ三第二項ノ規定ニ依リ消滅シタル後六箇月内ニ新ナル抵当権ノ設定ノ登録ヲ受ケザルトキ
二 第三十四条ノ二ノ規定ニ依ル登録ヲ為シタルトキ
三 第七十条ノ競売ニ付セラレタル場合ニ於テ抵当権ガ消滅シタルトキ
第三条第一項第二号中「変圧所」を「変電所」に改め、同条第二項を削る。
第八条に次の一項を加える。
第一項又ハ第二項ノ公告アリタルトキハ会社ハ直ニ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ公告アリタル事項ヲ公告スベシ
第九条中「公告」を「公告ノ申請」に改める。
第十条第一項中「第八条」を「第八条第一項又ハ第二項」に改める。
第十条の次に次の一条を加える。
第十条ノ二 第八条第一項又ハ第二項ニ依ル公告ヲ為シタル場合ニ於テ公告シタル期間内ニ権利ノ申出アリタルトキハ監督官庁ハ遅滞ナク其ノ旨ヲ会社ニ通知スベシ
公告シタル期間満了後三週間内ニ権利ノ申出ノ取消アラザルトキ又ハ其ノ申出ノ理由ナキコトノ証明アラザルトキハ監督官庁ハ抵当権ノ設定認可ノ申請ヲ却下シ又ハ第八条第二項ニ依ル公告ヲ取消スベシ
第十一条第一項中「第三条第一項」を「第三条」に改め、同条第三項中「前二項」を「前項」に改め、「不動産ニ関スルモノノ登記」の下に「又ハ自動車ノ抵当権ノ登録」を、「動産ニ関スルモノ」の下に「(自動車ノ抵当権ヲ除ク)」を加え、「若ハ」を「又ハ」に改め、同条第二項及び第四項ただし書を削る。
第十三条の次に次の六条を加える。
第十三条ノ二 会社ハ鉄道ノ他ノ部分ニ付鉄道財団ヲ拡張スルコトヲ得
第十三条ノ三 会社ハ一箇ノ鉄道財団ヲ分割シテ数箇ノ鉄道財団ト為スコトヲ得
抵当権ノ目的タル甲鉄道財団ヲ分割シテ其ノ一部ヲ乙鉄道財団ト為シタルトキハ其ノ抵当権ハ乙鉄道財団ニ付消滅ス
前項ノ場合ニ於ケル鉄道財団ノ分割ハ抵当権者ガ乙鉄道財団ニ付抵当権ノ消滅ヲ承諾スルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第十三条ノ四 会社ハ数箇ノ鉄道財団ヲ合併シテ一箇ノ鉄道財団ト為スコトヲ得但シ左ノ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
一 合併セムトスル鉄道財団ニ付競売手続開始又ハ強制管理開始ノ決定アリタルトキ
二 合併セムトスル数箇ノ鉄道財団ノ内二箇以上ノ鉄道財団ガ抵当権ノ目的タルトキ
合併セムトスル甲鉄道財団ヲ目的トスル抵当権ノ甲鉄道財団ニ於ケル順位ト同一ノ順位ヲ合併セムトスル乙鉄道財団ニ付有スル他ノ抵当権(甲鉄道財団ヲ目的トスル抵当権ト他ノ抵当権ガ合併セムトスル鉄道財団ノ内其ノ目的トスル鉄道財団ヲ共通ニスル場合ノ他ノ抵当権ヲ除ク)ガ存セザルトキハ前項第二号ノ規定ニ拘ラズ鉄道財団ヲ合併スルコトヲ得
鉄道財団ヲ合併シタルトキハ抵当権ハ合併後ノ鉄道財団ノ全部ニ及ブ
第十三条ノ五 鉄道財団ノ拡張、分割又ハ合併ハ監督官庁ノ認可ヲ受クルニ因リテ其ノ効力ヲ生ズ
第十三条ノ六 鉄道財団拡張ノ認可ヲ申請スルニハ拡張セムトスル鉄道ノ部分ニ関スルモノニシテ第三条ニ掲ゲタルモノノ目録ヲ差出スベシ
鉄道財団ノ拡張ニ関シテハ第四条第三項、第八条第一項、第四項及第九条乃至第十二条ノ規定ヲ準用ス
第十三条ノ七 鉄道財団分割ノ認可ヲ申請スルニハ分割後抵当権ノ消滅スル鉄道財団ヲ明ニシ且分割後ノ鉄道財団毎ノ鉄道財団目録ヲ差出スベシ
第二十条を次のように改める。
第二十条 会社ハ鉄道財団ニ属スルモノヲ鉄道財団ヨリ分離セムトスルトキハ抵当権者ノ同意ヲ求ムベシ
会社ガ抵当権者ノ為競売手続開始又ハ強制管理開始ノ決定アル前ニ於テ正当ナル事由ニ因リ前項ノ同意ヲ求メタルトキハ抵当権者ハ其ノ同意ヲ拒ムコトヲ得ズ
第二十一条を次のように改める。
第二十一条 削除
第二十六条ノ二中「勅令ノ」を「別ニ」に改める。
第二十八条の次に次の二条を加える。
第二十八条ノ二 鉄道財団ガ成立シタルトキハ監督官庁ハ鉄道財団成立ノ登録ヲ為スベシ
鉄道財団成立ノ登録ハ鉄道抵当原簿ニ左ノ事項ヲ記載スルニ依リテ之ヲ為ス
一 鉄道財団ニ属スル線路ノ表示
二 鉄道財団ノ所有者ノ名称及住所
三 登録ノ年月日
第二十八条ノ三 監督官庁ハ鉄道財団ノ拡張、分割又ハ合併ヲ認可シタルトキハ鉄道財団ノ拡張、分割又ハ合併ノ登録ヲ為スベシ
拡張ノ登録ハ鉄道財団ノ用紙中鉄道財団ニ属スル線路ノ表示ヲ変更シ且拡張ニ因リテ登録スル旨及登録ノ年月日ヲ記載スルニ依リテ之ヲ為ス
甲鉄道財団ヲ分割シテ其ノ一部ヲ乙鉄道財団ト為ス場合ニ於テハ分割ノ登録ハ甲鉄道財団ノ用紙中鉄道財団ニ属スル線路ノ表示ヲ変更シ且分割ニ因リテ登録スル旨及登録ノ年月日ヲ記載シ並乙鉄道財団ニ付鉄道抵当原簿ニ前条各号ニ掲ゲタル事項及分割ニ因リテ登録スル旨ヲ記載スルニ依リテ之ヲ為ス
甲鉄道財団ト乙鉄道財団トヲ合併スル場合ニ於テハ合併ノ登録ハ甲鉄道財団(合併セムトスル鉄道財団ノ内抵当権ノ目約タルモノアルトキハ設定セラレタル抵当権ノ数ノ最モ多キモノ)ノ用紙中鉄道財団ニ属スル線路ノ表示ヲ変更シ且合併ニ因リテ登録スル旨及登録ノ年月日ヲ記載シ並乙鉄道財団ノ用紙中鉄道財団ニ関スル表示ヲ朱抹シ且其ノ事由及年月日ヲ記載スルニ依リテ之ヲ為ス
第二十九条を次のように改める。
第二十九条 抵当権設定ノ登録申請書ニハ抵当権ノ設定ニ関スル証書ヲ添附スベシ
第三十条第一項第一号から第三号までを次のように改める。
一 抵当権者及債務者ノ名称及住所
二 第七条第二項第三号乃至第五号ニ掲ゲタル事項
三 前号ニ掲ゲタルモノノ外抵当権ノ設定ニ関スル証書ニ記載シタル事項ニシテ抵当権ニ関スルモノ
第三十条第二項を削る。
第三十条ノ二第一項後段を削り、同項第一号を次のように改める。
一 前条第一号、第四号及第五号ニ掲ゲタル事項
第三十条ノ二第一項中第五号を削り、第二号から第四号までを一号ずつ繰り下げ、第一号の次に次の一号を加える。
二 抵当権ノ順位
第三十三条中「抵当権ノ設定ヲ登録シ」を「鉄道財団成立ノ登録ヲ為シ」に改め、同条に次の一項を加える。
前項ノ規定ハ鉄道財団ノ拡張、分割又ハ合併ノ登録ヲ為シタルトキニ之ヲ準用ス
第三十四条の次に次の一条を加える。
第三十四条ノ二 鉄道財団ニ付抵当権ノ登録ガ全部抹消セラレタルトキ又ハ抵当権ガ第十三条ノ三第二項ノ規定ニ依リ消滅シタルトキハ会社ハ鉄道財団消滅ノ登録ヲ申請スルコトヲ得
第三十五条を次のように改める。
第三十五条 抵当権設定ノ認可ガ効力ヲ失ヒタルトキ又ハ鉄道財団ガ消滅シタルトキハ監督官庁ハ鉄道財団ノ用紙ヲ閉鎖スベシ第二十八条ノ三第四項ノ規定ニ依リ鉄道財団ニ関スル表示ヲ朱抹シタル用紙ニ付亦同ジ
第三十六条第一項第一号を次のように改める。
一 鉄道財団成立ノ登録ヲ為シタルトキ
第三十六条第一項第四号を次のように改める。
四 鉄道財団ノ用紙ヲ閉鎖シタルトキ(前条後段ノ場合ヲ除ク)
第四十二条中「区裁判所」を「地方裁判所」に改める。
第四十五条第二項中「判事」を「裁判官」に改める。
第六十八条第三項第二号中「管轄登記所」の下に「又ハ管轄陸運局長」を、「不動産」の下に「又ハ自動車」を、「登記」の下に「又ハ登録」を加える。
第八十三条第三項中「執達吏」を「執行吏」に改める。
第八十八条を次のように改める。
第八十八条 管理人ハ毎営業年度及其ノ業務施行ノ終了後債務者、鉄道財団ノ所有者、抵当権者、監督官庁及裁判所ニ計算書ヲ差出スベシ
債務者、鉄道財団ノ所有者及抵当権者ハ計算書ノ送付アリタル日ヨリ一週間内ニ裁判所ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ期間内ニ異議ノ申立ヲ為サザリシ者ハ計算ヲ承認シタルモノト看做ス
異議ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ管理人ヲ審訊シ且監督官庁ノ意見ヲ聴キタル後之ヲ裁判スベシ
第八十九条第一項中「裁定」を「裁判」に改める。
第九十二条中「十円以上千円以下」を「十万円以下」に改め、同条第一号を次のように改める。
一 第八条第四項ノ公告ヲ為サザルトキ
第九十二条第三号を次のように改める。
三 第二十条ノ同意ヲ得ズシテ鉄道財団ニ属スルモノヲ鉄道財団ヨリ分離シタルトキ
第九十二条第七号中「計算報告書」を「計算書」に、「報告ヲ為シ」を「計算書ヲ差出シ」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
2 この法律による改正後の鉄道抵当法(以下「新法」という。)第八条第四項及び第十条ノ二の規定は、この法律の施行前に抵当権の設定認可の申請又はこの法律による改正前の鉄道抵当法(以下「旧法」という。)第八条第二項の規定による申請があつた場合については、適用しない。
3 この法律の施行前に旧法第二十条第一項の規定による催告又は旧法第二十一条第一項の規定による催告の命令があつた場合については、この法律の施行後も、なお旧法第二十条又は第二十一条の規定を適用する。
4 この法律の施行の際現に未登録の第一順位の抵当権が存する場合には、監督官庁は、ただちに鉄道財団成立の登録をしなければならない。
5 旧法第三十条第一項第二号に掲げる事項の登録は、その効力を失う。
6 この法律の施行前に抵当権の消滅によりすでに消滅した鉄道財団の用紙の閉鎖については、なお従前の例による。
7 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
8 第二項から前項までの規定は、軌道財団及び運河財団について、前三項の規定は、自動車交通事業財団について準用する。
(軌道の抵当に関する法律の改正)
9 軌道の抵当に関する法律(明治四十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項第二号中「変圧所」を「変電所」に改め、同条第二項を削る。
第四条中「勅令ノ」を「別ニ」に改める。
法務大臣 牧野良三
運輸大臣 吉野信次
建設大臣 馬場元治
内閣総理大臣 鳩山一郎