公共用地の取得に関する特別措置法
法令番号: 法律第百五十号
公布年月日: 昭和36年6月17日
法令の形式: 法律
公共用地の取得に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年六月十七日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百五十号
公共用地の取得に関する特別措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
特定公共事業の認定(第三条―第十一条)
第三章
土地の収用又は使用に関する特則
第一節
事業の認定(第十二条・第十三条)
第二節
土地細目の公告(第十四条―第十六条)
第三節
裁決及び損失の補償(第十七条―第三十八条)
第四節
土地収用法による事業の認定を受けている事業及び都市計画事業(第三十九条・第四十条)
第四章
雑則(第四十一条―第五十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、土地等を収用し、又は使用することができる事業のうち、公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要する事業に必要な土地等の取得に関し、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の特例等について規定し、これらの事業の円滑な遂行と土地等の取得に伴う損失の適正な補償の確保を図ることを目的とする。
(特定公共事業)
第二条 この法律において「特定公共事業」とは、土地収用法第三条各号の一に該当するものに関する事業又は都市計画法(大正八年法律第三十六号)第十六条第一項に規定する都市計画事業のうち、次の各号の一に該当するものに関する事業で、起業者が第七条(第四十五条において準用する場合を含む。)の規定による建設大臣の認定を受けたものをいう。
一 高速自動車国道若しくは一級国道又は二級国道のうち政令で定める主要な区間
二 日本国有鉄道が設置する幹線鉄道のうち政令で定める主要な区間
三 第一種空港
四 都の特別区の存する区域又は人口五十万以上の市の区域における交通の混雑を緩和するため整備することを要する道路、駅前広場、鉄道又は軌道で政令で定める主要なもの
五 公衆電気通信役務に対する需要の急激な増加に対応するため整備することを要する電話施設のうち、都の特別区の存する区域若しくは人口五十万以上の市の区域に設置する政令で定める主要な施設又は政令で定める主要な市外通話幹線路の中継施設
六 河川法(明治二十九年法律第七十一号)が適用される河川若しくはその河川に設置する政令で定める主要な治水施設又は広域的な用水対策を緊急に講ずる必要のある地域に給水するため設置する政令で定める大規模な利水施設
七 電気に関する臨時措置に関する法律(昭和二十七年法律第三百四十一号)の規定によりその例によるものとされた旧公益事業令(昭和二十五年政令第三百四十三号)による電気事業の用に供する発電施設又は送電変電施設で政令で定める主要なもの
八 前各号の一に掲げるものに関する事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、池井、土石の捨場、材料の置場、職務上常駐を必要とする職員の詰所又は宿舎その他の施設
第二章 特定公共事業の認定
(事業の説明等)
第三条 起業者は、特定公共事業の認定を受けようとするときは、あらかじめ、事業の目的及び内容並びに事業を緊急に施行することを要する理由について、事業を施行しようとする土地が所在する都道府県の知事及び市町村(都の特別区の存する区域にあつては、特別区)の長並びにその土地及びその附近地の住民に説明し、これらの者から意見を聴取する等の措置を講ずることにより、事業の施行についてこれらの者の協力が得られるよう努めなければならない。この場合において、住民に対する説明及びその意見の聴取については、少なくとも建設省令で定める程度の措置を講じなければならない。
2 都道府県知事及び市町村長(都の特別区の存する区域にあつては、特別区長)は、前項の起業者に対し、事業の用に供する土地の取得について協力しなければならない。
(特定公共事業の認定の申請)
第四条 起業者は、特定公共事業の認定を受けようとするときは、建設省令で定める様式に従い、次に掲げる事項を記載した特定公共事業認定申請書を建設大臣に提出しなければならない。
一 起業者の名称
二 事業の種類
三 起業地
四 特定公共事業の認定を申請する理由
2 前項の申請書には、建設省令で定める様式に従い、次に掲げる書類を添附しなければならない。
一 事業計画書
二 起業地及び事業計画を表示する図面
三 起業地内に土地収用法第四条に規定する土地があるときは、その土地に関する調書、図面及び当該土地の管理者の意見書
四 起業地内にある土地の利用について法令の規定による制限があるときは、当該法令の施行について権限を有する行政機関の意見書
五 事業の施行に関して行政機関の免許、許可又は認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があつたことを証明する書類又は当該行政機関の意見書
六 前条第一項の規定により講じた措置の経過説明書
3 前項第三号から第五号までに掲げる意見書は、起業者が意見を求めた日から三週間を経過してもこれを得ることができなかつたときは、添附することを要しない。この場合においては、意見書を得ることができなかつた事情を疎明する書面を添附しなければならない。
(手数料)
第五条 前条第一項の規定によつて特定公共事業の認定を申請する者は、二万円をこえない範囲内において政令で定める額の手数料を国に納めなければならない。ただし、これらの者が国又は都道府県であるときは、この限りでない。
(特定公共事業認定申請書の欠陥の補正及び却下)
第六条 第四条の規定による特定公共事業認定申請書及びその添附書類が同条又は同条に基づく建設省令に規定する方式を欠くときは、建設大臣は、相当な期間を定めて、その欠陥を補正させなければならない。前条の規定による手数料を納めないときも、同様とする。
2 起業者が前項の規定により欠陥の補正を命ぜられたにかかわらず、その定められた期間内に欠陥の補正をしないときは、建設大臣は、特定公共事業認定申請書を却下しなければならない。
(特定公共事業の認定の要件)
第七条 建設大臣は、申請に係る事業が次の各号のすべてに該当するときは、公共用地審議会の議を経て、特定公共事業の認定をすることができる。
一 事業が土地収用法第三条各号の一に該当するものに関する事業又は都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業のうち、第二条各号の一に該当するものに関するものであること。
二 起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。
三 事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること。
四 事業が公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要するものであること。
(特定公共事業の認定の手続)
第八条 土地収用法第二十一条から第二十五条までの規定は、特定公共事業の認定を行なう場合に準用する。この場合において、同法第二十一条第一項中「第十八条第三項」とあるのは「公共用地の取得に関する特別措置法第四条第三項」と、同法第二十四条第一項中「第二十条」とあるのは「公共用地の取得に関する特別措置法第七条」と読み替えるものとする。
(特定公共事業認定申請書の縦覧)
第九条 市町村長(土地収用法第百四十条の規定が適用される場合においては、各場合に応じて、それぞれ、特別区長、市の区長又は町村組合の管理者。以下この条及び第十八条において同じ。)が前条において準用する同法第二十四条第一項の書類を受け取つた日から二週間を経過しても、前条において準用する同法第二十四条第二項の規定による手続を行なわないときは、起業地を管轄する都道府県知事は、起業者の申請により、当該市町村長に代わつてその手続を行なうことができる。
2 前項の規定により、都道府県知事が市町村長に代わつて手続を行なおうとするときは、あらかじめ、その旨を当該市町村長に通知しなければならない。
3 前項の規定による都道府県知事の通知を受けた後においては、市町村長は、当該事件につき、前条において準用する土地収用法第二十四条第二項の規定による手続を行なうことができない。
(特定公共事業の認定の告示)
第十条 建設大臣は、第七条の規定によつて特定公共事業の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知するとともに、起業者の名称、事業の種類及び起業地を官報で告示しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定による告示をしたときは、直ちに、関係都道府県知事にその旨を通知しなければならない。
3 特定公共事業の認定は、第一項の規定による告示があつた日から、その効力を生ずる。
(特定公共事業の認定の拒否の通知)
第十一条 建設大臣は、特定公共事業の認定を拒否したときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知しなければならない。
第三章 土地の収用又は使用に関する特則
第一節 事業の認定
(特定公共事業の認定と事業の認定との関係)
第十二条 特定公共事業の用に供する土地の収用又は使用については、特定公共事業の認定又は第十条第一項の規定による告示があつたときは、それぞれ、土地収用法第二十条の規定による事業の認定又は同法第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつたものとみなす。
2 前項の規定によりあつたものとみなされた土地収用法第二十条の規定による事業の認定が、同法第二十九条又は第三十条第四項の規定によりその効力を失つたときは、特定公共事業の認定も、将来に向かつて、その効力を失う。
(事業の認定の失効)
第十三条 特定公共事業については、土地収用法第二十九条中「三年」とあるのは、「一年」とする。
第二節 土地細目の公告
(あつせん継続中の土地細目の公告の申請)
第十四条 特定公共事業については、土地収用法第三十一条第二項の規定は、第十二条第一項の規定によりあつたものとみなされた同法第二十条の規定による事業の認定が同法第二十九条の規定によりその効力を失う前二週間においては、適用しない。
(土地調書及び物件調書の作成)
第十五条 特定公共事業の起業者は、土地所有者、関係人その他の者が正当な理由がないのに土地収用法第三十五条第一項の規定による同法第三十六条第一項に規定する土地調書又は物件調書の作成のための立入りを拒み、又は妨げたため、同法第三十五条第一項の規定により測量又は調査をすることが著しく困難であるときは、他の方法により知ることができる程度でこれらの調書を作成すれば足りるものとする。この場合においては、調書にその旨を附記しなければならない。
(土地細目の公告の失効等)
第十六条 特定公共事業については、土地収用法第三十九条、第四十一条及び第百十六条第一項中「一年」とあるのは、「六月」とする。
第三節 裁決及び損失の補償
(裁決申請書)
第十七条 第十五条に規定する場合においては、土地収用法第四十二条第一項第二号の書類に記載すべき同号ロに掲げる事項のうち、収用し、又は使用しようとする土地の面積以外の事項については、同法第三十五条第一項の規定による方法以外の方法により知ることができる程度で記載すれば足りるものとする。この場合においては、その書類にその旨を附記しなければならない。
(裁決申請書の縦覧)
第十八条 第九条の規定は、市町村長が特定公共事業に係る土地収用法第四十四条第一項の書類を受け取つた日から二週間を経過しても同条第二項の規定による手続を行なわない場合に準用する。この場合において、同条第一項中「起業地」とあるのは、「裁決の申請に係る土地」と読み替えるものとする。
2 都道府県知事は、収用委員会に対して前項の規定により土地収用法第四十四条第二項の規定による公衆の縦覧に供しなければならない書類の送付を求めることができる。
3 都道府県知事は、第一項の規定により土地収用法第四十四条第二項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、公告の日を収用委員会に通知しなければならない。
(却下の裁決)
第十九条 特定公共事業については、土地収用法第四十七条第二号中「第十八条第二項第一号」とあるのは「公共用地の取得に関する特別措置法第四条第二項第一号」と、「事業認定申請書」とあるのは「特定公共事業認定申請書」とする。
(緊急裁決)
第二十条 収用委員会は、特定公共事業に係る収用又は使用の裁決が遅延することによつて事業の施行に支障を及ぼすおそれがある場合において、起業者の申立てがあつたときは、土地収用法第四十八条第一項各号に掲げる事項のうち、損失の補償に関するものでまだ審理を尽くしていないものがある場合においても、同項の規定による裁決をすることができる。
2 前項の規定による申立ては、建設省令で定める様式に従い、書面でしなければならない。
3 第一項の規定による申立てがあつたときは、収用委員会は、その旨を土地所有者及び関係人に通知しなければならない。
第二十一条 前条第一項の裁決(以下「緊急裁決」という。)においては、土地収用法第四十八条第一項各号に掲げる事項のうち、損失の補償に関するものについては、裁決の時までに収用委員会の審理に現われた意見書、鑑定の結果その他の資料に基づいて判断することができる程度において裁決すれば足りるものとする。ただし、損失の補償をすべきものと認められるにかかわらず、補償の方法又は金額について審理を尽くしていないものについては、概算見積りによる仮補償金を定めなければならない。
2 前項ただし書に規定するもののほか、なお審理を要すると認める事項については、裁決書の理由において、その旨を記載しなければならない。
(物件の収用請求権)
第二十二条 第二十条第一項の規定による申立てに係る土地にある物件の所有者は、その物件の収用を請求することができる。
(仮住居による補償)
第二十三条 第二十条第一項の規定による申立てに係る土地に現に居住の用に供している建物がある場合において、その建物の居住者が仮住居を必要とするときは、仮住居に要する費用に充てるべき補償金に代えて、起業者が仮住居を提供することを収用委員会に要求することができる。
2 収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、仮住居の位置、構造、規模、提供期間その他必要な事項を定めて裁決することができる。
(前二条の請求又は要求の期限)
第二十四条 収用委員会は、前二条の規定により請求又は要求をすることができる者に対し第二十条第三項の規定による通知をするときは、あわせて土地収用法第六十五条第一項第一号の規定に基づき、それらの請求又は要求について一定の期限までに意見書を提出すべき旨を命じなければならない。この場合において、その期限は、通知の到達した日から一週間を経過した日以後でなければならない。
(緊急裁決前の措置)
第二十五条 収用委員会は、緊急裁決をしようとするときは、あらかじめ、収用後又は使用後においても補償金額を適正に算定することができるように、土地及び物件の状況について必要な調査をしておかなければならない。ただし、土地所有者、関係人その他の者が正当な理由がないのにその調査を拒み、又は妨げたときは、この限りでない。
(担保の提供)
第二十六条 収用委員会は、緊急裁決をする場合において、損失の補償の義務の履行を確保するため必要があると認めるときは、起業者が担保を提供しなければならない旨の裁決をすることができる。
2 土地収用法第八十三条第四項から第七項までの規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第五項及び第六項中「工事を完了」とあるのは「損失の補償の義務を履行」と、同条第五項中「耕地の造成による損失の補償の義務」とあるのは「損失の補償の義務」と読み替えるものとする。
(仮補償金の払渡し等)
第二十七条 第二十一条第一項ただし書の規定による仮補償金は、土地収用法第九十五条第一項及び第二項(第三号を除く。)、第九十九条第三項及び第四項、第百条並びに第百四条の規定の適用については、同法第四十八条第一項の規定による裁決に係る補償金とみなす。
(担保の供託)
第二十八条 緊急裁決があつた場合においては、土地収用法第九十六条中「第八十四条第三項」とあるのは、「第八十四条第三項及び公共用地の取得に関する特別措置法第二十六条第二項」とする。
(仮住居の提供)
第二十九条 起業者は、第二十三条第二項の規定に基づく仮住居の提供を裁決で定められた提供期間の始期までにしなければならない。
2 起業者は、第二十三条第二項の規定に基づく仮住居の提供を受けるべき者が仮住居への入居を拒んだときは、建設省令で定めるところにより、その仮住居が裁決で定められた条件に適合し、かつ、相当なものであることについて収用委員会の確認を受けなければならない。
3 起業者から裁決で定められた提供期間の始期までに仮住居の提供を受けなかつた者又は仮住居への入居を拒んだ者が居住の用に供している建物については、それぞれ、その提供を受けるまで又は前項の確認があるまでは、土地収用法第九十八条の規定は、適用しない。
(補償裁決)
第三十条 収用委員会は、損失の補償に関する事項で緊急裁決の時までに審理を尽くさなかつたものについては、なお引続き審理し、遅滞なく裁決しなければならない。
2 前項の規定による裁決(以下「補償裁決」という。)に関しては、この法律に特別の定めのあるものを除き、土地収用法中同法第四十八条第一項の規定による裁決に関する規定の適用があるものとする。ただし、同法第七章の規定は、補償裁決のうち、その裁決で認められた同法第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求に基づく収用に係る部分に関してのみ適用があるものとする。
(残地収用等の場合における補償額算定の時期)
第三十一条 補償裁決において土地収用法第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求を認める場合における土地所有者及び関係人の損失(同条第三項第三号に規定する損失を含む。)は、その裁決の時の価格によつて算定して補償しなければならない。
(土地収用法第百四条の規定による権利者がある場合の替地等の要求)
第三十二条 土地所有者又は関係人は、仮補償金に対し土地収用法第百四条の規定による権利を有する者がある場合においては、その権利を有する者の同意を得て、建設省令で定めるところによりその旨を収用委員会に届け出なければ、補償金の全部又は一部に代えて替地の提供、工事の代行その他の給付をすべき旨の要求をすることができない。
(清算)
第三十三条 補償裁決で定められた補償金額と緊急裁決で定められた仮補償金の額とに差額があるとき、及び補償裁決により補償金の全部又は一部に代えて替地の提供、工事の代行その他の給付をすべき旨が定められたときは、起業者及び土地所有者又は関係人は、金銭をもつて清算しなければならない。
2 起業者又は土地所有者若しくは関係人は、補償裁決で定められた補償金額と緊急裁決で定められた仮補償金の額との差額につき、収用又は使用の時期から前項の規定による清算金の支払の期限(その差額のうち、補償金の全部又は一部に代えて、替地が提供されるべき部分についてはその提供の期限、替地以外の給付がされるべき部分については補償裁決の時)までの期間について、年六分の利率により算定した利息を支払わなければならない。
(補償裁決で定める事項)
第三十四条 補償裁決においては、第三十条第二項ただし書に規定するものを除き、前条の規定による清算金及び利息の額並びに裁決に基づく起業者、土地所有者又は関係人の義務を履行すべき期限を定めなければならない。
2 補償裁決においては、起業者が裁決に基づく義務の履行を怠つた場合に支払うべき過怠金を定めることができる。
(物上代位)
第三十五条 先取特権、質権又は抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合において、補償裁決で定められた補償金額が緊急裁決で定められた仮補償金の額をこえるときは、これらの権利は、第三十三条第一項の規定による清算金に対しても行なうことができる。ただし、その払渡し前に差押えをしなければならない。
(同時履行)
第三十六条 起業者が補償金の全部又は一部に代えて替地の提供、工事の代行その他の給付をすべき場合において、土地所有者又は関係人が第三十三条の規定により支払うべき清算金及び利息があるときは、起業者又は土地所有者若しくは関係人は、相手方がその義務を履行するまでは、自己の義務の履行を拒むことができる。
(強制執行)
第三十七条 補償裁決に対する土地収用法第百三十三条第一項の規定による訴の提起がなかつたときは、その裁決は、第三十三条の規定による清算金及び利息又は第三十四条第二項の規定による過怠金を請求する権利の強制執行に関しては、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第五百五十九条第三号の規定による債務名義とみなす。
2 土地収用法第九十四条第十一項及び第十二項の規定は、前項の場合に準用する。
(建物による補償)
第三十八条 特定公共事業の用に供する土地にある建物の所有者は、その建物が収用される場合において、土地収用法第八十二条第一項の規定による要求をするときは、その建物に対する補償金の全部又は一部に代えて、その要求に基づいて提供される土地にある建物をもつて、損失を補償することを収用委員会に要求することができる。
2 特定公共事業の用に供する土地にある建物の賃借人(一時使用のため建物を賃借りした者を除く。)は、その建物が収用されるときは、その建物の賃借権に対する補償金の全部又は一部に代えて建物の賃借権をもつて、損失を補償することを収用委員会に要求することができる。
3 前二項の規定による要求及びその要求に基づいて提供される建物又は建物の賃借権に関しては、土地収用法第八十二条第一項の規定による要求及びその要求に基づいて提供される同項に規定する替地の例による。
第四節 土地収用法による事業の認定を受けている事業及び都市計画事業
(土地収用法による事業の認定を受けている事業及び都市計画事業)
第三十九条 土地収用法第二十条の規定による事業の認定を受けている事業又は都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業に係る特定公共事業の認定については、第四条第二項第三号から第五号まで及び第三項、第八条、第九条並びに第十二条の規定は、適用しない。
2 土地収用法第二十条の規定による事業の認定を受けている事業で特定公共事業の認定を受けたものについては、第十三条の規定にかかわらず、同法第二十九条中「第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から三年」とあるのは、「公共用地の取得に関する特別措置法第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつた日から一年」とする。
3 前項に規定する事業については、土地収用法第二十条の規定による事業の認定が同法第二十九条又は第三十条第四項の規定によりその効力を失つたときは、特定公共事業の認定も、将来に向かつて、その効力を失う。
4 都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業についてした特定公共事業の認定は、起業者が第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつた日から一年以内に土地収用法第三十一条の規定による土地細目の公告の申請をしないときは、期間満了の日の翌日から将来に向かつて、その効力を失う。
5 土地収用法第三十一条第二項の規定は、第二項に規定する事業については、同法第二十条の規定による事業の認定が同法第二十九条の規定によりその効力を失う前二週間、都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業で特定公共事業の認定を受けたものについては、その認定が前項の規定によりその効力を失う前二週間においては、適用しない。
6 土地収用法第二十条の規定による事業の認定を受けている事業又は都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業で、土地収用法第三十三条の規定による土地細目の公告がその効力を有する期間中に第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつたものの当該土地細目の公告に関しては、第十六条の規定にかかわらず、同法第三十九条、第四十一条及び第百十六条第一項中「一年」とあるのは、「一年以内で公共用地の取得に関する特別措置法第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつた日から六月」とする。
第四十条 都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業で、同法第二十条第一項の規定による裁定の申請前に第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつたものについては、同法第二十条の規定は、適用しない。
第四章 雑則
(土地収用法第百二十三条の規定の不適用)
第四十一条 特定公共事業については、土地収用法第百二十三条の規定は、適用しない。
(訴願及び訴訟)
第四十二条 第二十二条の規定による請求に係る裁決があつた場合における土地収用法第百二十九条第二項の規定の適用については、その裁決は、同法第七十八条の規定による請求に係る裁決とみなす。
2 緊急裁決のうち、仮補償金及び第二十一条第二項の規定により裁決書に記載された事項については、損失の補償に関する訴を提起することができない。
(期間の計算及び通知の方法)
第四十三条 土地収用法第百三十五条の規定は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による期間の計算方法及び通知の方法について準用する。
(手続の承継等)
第四十四条 土地収用法第九条、第十条、第百二十七条及び第百三十六条の規定は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による起業者並びに土地所有者及び関係人の権利義務及び手続その他の行為について準用する。
(権利、物件及び土石砂れきの収用又は使用に関する準用規定)
第四十五条 第二章、第三章(第三十一条を除く。)、第四十一条、第四十二条及び前条の規定は、土地収用法第五条に掲げる権利若しくは同法第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、若しくは使用する場合又は同法第七条に規定する土石砂れきを収用する場合に準用する。この場合において必要な技術的読替えは、政令で定める。
(現物給付)
第四十六条 特定公共事業に必要な土地等を提供する者がその対償として土地又は建物の提供、耕地又は宅地の造成その他金銭以外の方法による給付を要求した場合において、その要求が相当であると認められるときは、特定公共事業を施行する者は、事情の許す限り、その要求に応ずるよう努めなければならない。
(生活再建等のための措置)
第四十七条 特定公共事業に必要な土地等を提供することによつて生活の基礎を失うこととなる者は、前条の規定による要求をする場合において必要があるとき、又はその受ける対償と相まつて実施されることを必要とする場合においては、生活再建又は環境整備のための措置で次の各号に掲げるものの実施のあつせんを都道府県知事に申し出ることができる。
一 宅地、開発して農地とすることが適当な土地その他の土地の取得に関すること。
二 住宅、店舗その他の建物の取得に関すること。
三 職業の紹介、指導又は訓練に関すること。
四 他に適当な土地がなかつたため環境が著しく不良な土地に住居を移した場合における環境の整備に関すること。
2 前項の規定による申出は、政令で定めるところにより、書面でしなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による申出があつた場合において、その申出が相当であると認めるときは、関係行政機関、関係市町村長(都の特別区の存する区域にあっては、関係特別区長)、その申出をした者又はその代表者及び特定公共事業を施行する者と協議して、生活再建計画を作成するものとする。
4 特定公共事業を施行する者は、生活再建計画のうち、特定公共事業に必要な土地等を提供する者に対する対償となる事項を実施しなければならない。
5 国及び地方公共団体は、法令及び予算の範囲内において、事情の許す限り、生活再建計画の実施に努めなければならない。
(公共用地審議会)
第四十八条 特定公共事業の認定に関する事項を審議させるため、建設省の附属機関として公共用地審議会(以下「審議会」という。)を置く。
第四十九条 審議会は、委員七人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣の承認を得て建設大臣が任命する。
3 委員の任期は、三年とする。ただし、再任を妨げない。
4 委員は、非常勤とする。
5 審議会に会長を置く。会長は、委員が互選する。
6 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
(政令への委任)
第五十条 この法律に規定するもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項その他この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(建設省設置法の一部改正)
2 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第十条第一項の表中公共用地取得制度調査会の項を次のように改める。
公共用地審議会
公共用地の取得に関する特別措置法(昭和三十六年法律第百五十号)に基づく特定公共事業の認定に関する事項を審議すること。
第二十二条を次のように改める。
第二十二条 公共用地審議会は、第十条第一項に規定する事項のほか、昭和三十七年三月三十一日までの間に限り、建設大臣の諮問に応じて公共用地の取得に伴う損失の補償の基準その他公共用地取得制度に関する重要事項を調査審議し、又は当該事項について建設大臣に意見を述べることができる。
内閣総理大臣 池田勇人
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
厚生大臣 古井喜實
農林大臣 周東英雄
通商産業大臣 椎名悦三郎
運輸大臣 木暮武太夫
郵政大臣 小金義照
労働大臣臨時代理 国務大臣 古井喜實
建設大臣 中村梅吉
自治大臣 安井謙
公共用地の取得に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年六月十七日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百五十号
公共用地の取得に関する特別措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
特定公共事業の認定(第三条―第十一条)
第三章
土地の収用又は使用に関する特則
第一節
事業の認定(第十二条・第十三条)
第二節
土地細目の公告(第十四条―第十六条)
第三節
裁決及び損失の補償(第十七条―第三十八条)
第四節
土地収用法による事業の認定を受けている事業及び都市計画事業(第三十九条・第四十条)
第四章
雑則(第四十一条―第五十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、土地等を収用し、又は使用することができる事業のうち、公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要する事業に必要な土地等の取得に関し、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の特例等について規定し、これらの事業の円滑な遂行と土地等の取得に伴う損失の適正な補償の確保を図ることを目的とする。
(特定公共事業)
第二条 この法律において「特定公共事業」とは、土地収用法第三条各号の一に該当するものに関する事業又は都市計画法(大正八年法律第三十六号)第十六条第一項に規定する都市計画事業のうち、次の各号の一に該当するものに関する事業で、起業者が第七条(第四十五条において準用する場合を含む。)の規定による建設大臣の認定を受けたものをいう。
一 高速自動車国道若しくは一級国道又は二級国道のうち政令で定める主要な区間
二 日本国有鉄道が設置する幹線鉄道のうち政令で定める主要な区間
三 第一種空港
四 都の特別区の存する区域又は人口五十万以上の市の区域における交通の混雑を緩和するため整備することを要する道路、駅前広場、鉄道又は軌道で政令で定める主要なもの
五 公衆電気通信役務に対する需要の急激な増加に対応するため整備することを要する電話施設のうち、都の特別区の存する区域若しくは人口五十万以上の市の区域に設置する政令で定める主要な施設又は政令で定める主要な市外通話幹線路の中継施設
六 河川法(明治二十九年法律第七十一号)が適用される河川若しくはその河川に設置する政令で定める主要な治水施設又は広域的な用水対策を緊急に講ずる必要のある地域に給水するため設置する政令で定める大規模な利水施設
七 電気に関する臨時措置に関する法律(昭和二十七年法律第三百四十一号)の規定によりその例によるものとされた旧公益事業令(昭和二十五年政令第三百四十三号)による電気事業の用に供する発電施設又は送電変電施設で政令で定める主要なもの
八 前各号の一に掲げるものに関する事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、池井、土石の捨場、材料の置場、職務上常駐を必要とする職員の詰所又は宿舎その他の施設
第二章 特定公共事業の認定
(事業の説明等)
第三条 起業者は、特定公共事業の認定を受けようとするときは、あらかじめ、事業の目的及び内容並びに事業を緊急に施行することを要する理由について、事業を施行しようとする土地が所在する都道府県の知事及び市町村(都の特別区の存する区域にあつては、特別区)の長並びにその土地及びその附近地の住民に説明し、これらの者から意見を聴取する等の措置を講ずることにより、事業の施行についてこれらの者の協力が得られるよう努めなければならない。この場合において、住民に対する説明及びその意見の聴取については、少なくとも建設省令で定める程度の措置を講じなければならない。
2 都道府県知事及び市町村長(都の特別区の存する区域にあつては、特別区長)は、前項の起業者に対し、事業の用に供する土地の取得について協力しなければならない。
(特定公共事業の認定の申請)
第四条 起業者は、特定公共事業の認定を受けようとするときは、建設省令で定める様式に従い、次に掲げる事項を記載した特定公共事業認定申請書を建設大臣に提出しなければならない。
一 起業者の名称
二 事業の種類
三 起業地
四 特定公共事業の認定を申請する理由
2 前項の申請書には、建設省令で定める様式に従い、次に掲げる書類を添附しなければならない。
一 事業計画書
二 起業地及び事業計画を表示する図面
三 起業地内に土地収用法第四条に規定する土地があるときは、その土地に関する調書、図面及び当該土地の管理者の意見書
四 起業地内にある土地の利用について法令の規定による制限があるときは、当該法令の施行について権限を有する行政機関の意見書
五 事業の施行に関して行政機関の免許、許可又は認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があつたことを証明する書類又は当該行政機関の意見書
六 前条第一項の規定により講じた措置の経過説明書
3 前項第三号から第五号までに掲げる意見書は、起業者が意見を求めた日から三週間を経過してもこれを得ることができなかつたときは、添附することを要しない。この場合においては、意見書を得ることができなかつた事情を疎明する書面を添附しなければならない。
(手数料)
第五条 前条第一項の規定によつて特定公共事業の認定を申請する者は、二万円をこえない範囲内において政令で定める額の手数料を国に納めなければならない。ただし、これらの者が国又は都道府県であるときは、この限りでない。
(特定公共事業認定申請書の欠陥の補正及び却下)
第六条 第四条の規定による特定公共事業認定申請書及びその添附書類が同条又は同条に基づく建設省令に規定する方式を欠くときは、建設大臣は、相当な期間を定めて、その欠陥を補正させなければならない。前条の規定による手数料を納めないときも、同様とする。
2 起業者が前項の規定により欠陥の補正を命ぜられたにかかわらず、その定められた期間内に欠陥の補正をしないときは、建設大臣は、特定公共事業認定申請書を却下しなければならない。
(特定公共事業の認定の要件)
第七条 建設大臣は、申請に係る事業が次の各号のすべてに該当するときは、公共用地審議会の議を経て、特定公共事業の認定をすることができる。
一 事業が土地収用法第三条各号の一に該当するものに関する事業又は都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業のうち、第二条各号の一に該当するものに関するものであること。
二 起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。
三 事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること。
四 事業が公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要するものであること。
(特定公共事業の認定の手続)
第八条 土地収用法第二十一条から第二十五条までの規定は、特定公共事業の認定を行なう場合に準用する。この場合において、同法第二十一条第一項中「第十八条第三項」とあるのは「公共用地の取得に関する特別措置法第四条第三項」と、同法第二十四条第一項中「第二十条」とあるのは「公共用地の取得に関する特別措置法第七条」と読み替えるものとする。
(特定公共事業認定申請書の縦覧)
第九条 市町村長(土地収用法第百四十条の規定が適用される場合においては、各場合に応じて、それぞれ、特別区長、市の区長又は町村組合の管理者。以下この条及び第十八条において同じ。)が前条において準用する同法第二十四条第一項の書類を受け取つた日から二週間を経過しても、前条において準用する同法第二十四条第二項の規定による手続を行なわないときは、起業地を管轄する都道府県知事は、起業者の申請により、当該市町村長に代わつてその手続を行なうことができる。
2 前項の規定により、都道府県知事が市町村長に代わつて手続を行なおうとするときは、あらかじめ、その旨を当該市町村長に通知しなければならない。
3 前項の規定による都道府県知事の通知を受けた後においては、市町村長は、当該事件につき、前条において準用する土地収用法第二十四条第二項の規定による手続を行なうことができない。
(特定公共事業の認定の告示)
第十条 建設大臣は、第七条の規定によつて特定公共事業の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知するとともに、起業者の名称、事業の種類及び起業地を官報で告示しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定による告示をしたときは、直ちに、関係都道府県知事にその旨を通知しなければならない。
3 特定公共事業の認定は、第一項の規定による告示があつた日から、その効力を生ずる。
(特定公共事業の認定の拒否の通知)
第十一条 建設大臣は、特定公共事業の認定を拒否したときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知しなければならない。
第三章 土地の収用又は使用に関する特則
第一節 事業の認定
(特定公共事業の認定と事業の認定との関係)
第十二条 特定公共事業の用に供する土地の収用又は使用については、特定公共事業の認定又は第十条第一項の規定による告示があつたときは、それぞれ、土地収用法第二十条の規定による事業の認定又は同法第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつたものとみなす。
2 前項の規定によりあつたものとみなされた土地収用法第二十条の規定による事業の認定が、同法第二十九条又は第三十条第四項の規定によりその効力を失つたときは、特定公共事業の認定も、将来に向かつて、その効力を失う。
(事業の認定の失効)
第十三条 特定公共事業については、土地収用法第二十九条中「三年」とあるのは、「一年」とする。
第二節 土地細目の公告
(あつせん継続中の土地細目の公告の申請)
第十四条 特定公共事業については、土地収用法第三十一条第二項の規定は、第十二条第一項の規定によりあつたものとみなされた同法第二十条の規定による事業の認定が同法第二十九条の規定によりその効力を失う前二週間においては、適用しない。
(土地調書及び物件調書の作成)
第十五条 特定公共事業の起業者は、土地所有者、関係人その他の者が正当な理由がないのに土地収用法第三十五条第一項の規定による同法第三十六条第一項に規定する土地調書又は物件調書の作成のための立入りを拒み、又は妨げたため、同法第三十五条第一項の規定により測量又は調査をすることが著しく困難であるときは、他の方法により知ることができる程度でこれらの調書を作成すれば足りるものとする。この場合においては、調書にその旨を附記しなければならない。
(土地細目の公告の失効等)
第十六条 特定公共事業については、土地収用法第三十九条、第四十一条及び第百十六条第一項中「一年」とあるのは、「六月」とする。
第三節 裁決及び損失の補償
(裁決申請書)
第十七条 第十五条に規定する場合においては、土地収用法第四十二条第一項第二号の書類に記載すべき同号ロに掲げる事項のうち、収用し、又は使用しようとする土地の面積以外の事項については、同法第三十五条第一項の規定による方法以外の方法により知ることができる程度で記載すれば足りるものとする。この場合においては、その書類にその旨を附記しなければならない。
(裁決申請書の縦覧)
第十八条 第九条の規定は、市町村長が特定公共事業に係る土地収用法第四十四条第一項の書類を受け取つた日から二週間を経過しても同条第二項の規定による手続を行なわない場合に準用する。この場合において、同条第一項中「起業地」とあるのは、「裁決の申請に係る土地」と読み替えるものとする。
2 都道府県知事は、収用委員会に対して前項の規定により土地収用法第四十四条第二項の規定による公衆の縦覧に供しなければならない書類の送付を求めることができる。
3 都道府県知事は、第一項の規定により土地収用法第四十四条第二項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、公告の日を収用委員会に通知しなければならない。
(却下の裁決)
第十九条 特定公共事業については、土地収用法第四十七条第二号中「第十八条第二項第一号」とあるのは「公共用地の取得に関する特別措置法第四条第二項第一号」と、「事業認定申請書」とあるのは「特定公共事業認定申請書」とする。
(緊急裁決)
第二十条 収用委員会は、特定公共事業に係る収用又は使用の裁決が遅延することによつて事業の施行に支障を及ぼすおそれがある場合において、起業者の申立てがあつたときは、土地収用法第四十八条第一項各号に掲げる事項のうち、損失の補償に関するものでまだ審理を尽くしていないものがある場合においても、同項の規定による裁決をすることができる。
2 前項の規定による申立ては、建設省令で定める様式に従い、書面でしなければならない。
3 第一項の規定による申立てがあつたときは、収用委員会は、その旨を土地所有者及び関係人に通知しなければならない。
第二十一条 前条第一項の裁決(以下「緊急裁決」という。)においては、土地収用法第四十八条第一項各号に掲げる事項のうち、損失の補償に関するものについては、裁決の時までに収用委員会の審理に現われた意見書、鑑定の結果その他の資料に基づいて判断することができる程度において裁決すれば足りるものとする。ただし、損失の補償をすべきものと認められるにかかわらず、補償の方法又は金額について審理を尽くしていないものについては、概算見積りによる仮補償金を定めなければならない。
2 前項ただし書に規定するもののほか、なお審理を要すると認める事項については、裁決書の理由において、その旨を記載しなければならない。
(物件の収用請求権)
第二十二条 第二十条第一項の規定による申立てに係る土地にある物件の所有者は、その物件の収用を請求することができる。
(仮住居による補償)
第二十三条 第二十条第一項の規定による申立てに係る土地に現に居住の用に供している建物がある場合において、その建物の居住者が仮住居を必要とするときは、仮住居に要する費用に充てるべき補償金に代えて、起業者が仮住居を提供することを収用委員会に要求することができる。
2 収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、仮住居の位置、構造、規模、提供期間その他必要な事項を定めて裁決することができる。
(前二条の請求又は要求の期限)
第二十四条 収用委員会は、前二条の規定により請求又は要求をすることができる者に対し第二十条第三項の規定による通知をするときは、あわせて土地収用法第六十五条第一項第一号の規定に基づき、それらの請求又は要求について一定の期限までに意見書を提出すべき旨を命じなければならない。この場合において、その期限は、通知の到達した日から一週間を経過した日以後でなければならない。
(緊急裁決前の措置)
第二十五条 収用委員会は、緊急裁決をしようとするときは、あらかじめ、収用後又は使用後においても補償金額を適正に算定することができるように、土地及び物件の状況について必要な調査をしておかなければならない。ただし、土地所有者、関係人その他の者が正当な理由がないのにその調査を拒み、又は妨げたときは、この限りでない。
(担保の提供)
第二十六条 収用委員会は、緊急裁決をする場合において、損失の補償の義務の履行を確保するため必要があると認めるときは、起業者が担保を提供しなければならない旨の裁決をすることができる。
2 土地収用法第八十三条第四項から第七項までの規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第五項及び第六項中「工事を完了」とあるのは「損失の補償の義務を履行」と、同条第五項中「耕地の造成による損失の補償の義務」とあるのは「損失の補償の義務」と読み替えるものとする。
(仮補償金の払渡し等)
第二十七条 第二十一条第一項ただし書の規定による仮補償金は、土地収用法第九十五条第一項及び第二項(第三号を除く。)、第九十九条第三項及び第四項、第百条並びに第百四条の規定の適用については、同法第四十八条第一項の規定による裁決に係る補償金とみなす。
(担保の供託)
第二十八条 緊急裁決があつた場合においては、土地収用法第九十六条中「第八十四条第三項」とあるのは、「第八十四条第三項及び公共用地の取得に関する特別措置法第二十六条第二項」とする。
(仮住居の提供)
第二十九条 起業者は、第二十三条第二項の規定に基づく仮住居の提供を裁決で定められた提供期間の始期までにしなければならない。
2 起業者は、第二十三条第二項の規定に基づく仮住居の提供を受けるべき者が仮住居への入居を拒んだときは、建設省令で定めるところにより、その仮住居が裁決で定められた条件に適合し、かつ、相当なものであることについて収用委員会の確認を受けなければならない。
3 起業者から裁決で定められた提供期間の始期までに仮住居の提供を受けなかつた者又は仮住居への入居を拒んだ者が居住の用に供している建物については、それぞれ、その提供を受けるまで又は前項の確認があるまでは、土地収用法第九十八条の規定は、適用しない。
(補償裁決)
第三十条 収用委員会は、損失の補償に関する事項で緊急裁決の時までに審理を尽くさなかつたものについては、なお引続き審理し、遅滞なく裁決しなければならない。
2 前項の規定による裁決(以下「補償裁決」という。)に関しては、この法律に特別の定めのあるものを除き、土地収用法中同法第四十八条第一項の規定による裁決に関する規定の適用があるものとする。ただし、同法第七章の規定は、補償裁決のうち、その裁決で認められた同法第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求に基づく収用に係る部分に関してのみ適用があるものとする。
(残地収用等の場合における補償額算定の時期)
第三十一条 補償裁決において土地収用法第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求を認める場合における土地所有者及び関係人の損失(同条第三項第三号に規定する損失を含む。)は、その裁決の時の価格によつて算定して補償しなければならない。
(土地収用法第百四条の規定による権利者がある場合の替地等の要求)
第三十二条 土地所有者又は関係人は、仮補償金に対し土地収用法第百四条の規定による権利を有する者がある場合においては、その権利を有する者の同意を得て、建設省令で定めるところによりその旨を収用委員会に届け出なければ、補償金の全部又は一部に代えて替地の提供、工事の代行その他の給付をすべき旨の要求をすることができない。
(清算)
第三十三条 補償裁決で定められた補償金額と緊急裁決で定められた仮補償金の額とに差額があるとき、及び補償裁決により補償金の全部又は一部に代えて替地の提供、工事の代行その他の給付をすべき旨が定められたときは、起業者及び土地所有者又は関係人は、金銭をもつて清算しなければならない。
2 起業者又は土地所有者若しくは関係人は、補償裁決で定められた補償金額と緊急裁決で定められた仮補償金の額との差額につき、収用又は使用の時期から前項の規定による清算金の支払の期限(その差額のうち、補償金の全部又は一部に代えて、替地が提供されるべき部分についてはその提供の期限、替地以外の給付がされるべき部分については補償裁決の時)までの期間について、年六分の利率により算定した利息を支払わなければならない。
(補償裁決で定める事項)
第三十四条 補償裁決においては、第三十条第二項ただし書に規定するものを除き、前条の規定による清算金及び利息の額並びに裁決に基づく起業者、土地所有者又は関係人の義務を履行すべき期限を定めなければならない。
2 補償裁決においては、起業者が裁決に基づく義務の履行を怠つた場合に支払うべき過怠金を定めることができる。
(物上代位)
第三十五条 先取特権、質権又は抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合において、補償裁決で定められた補償金額が緊急裁決で定められた仮補償金の額をこえるときは、これらの権利は、第三十三条第一項の規定による清算金に対しても行なうことができる。ただし、その払渡し前に差押えをしなければならない。
(同時履行)
第三十六条 起業者が補償金の全部又は一部に代えて替地の提供、工事の代行その他の給付をすべき場合において、土地所有者又は関係人が第三十三条の規定により支払うべき清算金及び利息があるときは、起業者又は土地所有者若しくは関係人は、相手方がその義務を履行するまでは、自己の義務の履行を拒むことができる。
(強制執行)
第三十七条 補償裁決に対する土地収用法第百三十三条第一項の規定による訴の提起がなかつたときは、その裁決は、第三十三条の規定による清算金及び利息又は第三十四条第二項の規定による過怠金を請求する権利の強制執行に関しては、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第五百五十九条第三号の規定による債務名義とみなす。
2 土地収用法第九十四条第十一項及び第十二項の規定は、前項の場合に準用する。
(建物による補償)
第三十八条 特定公共事業の用に供する土地にある建物の所有者は、その建物が収用される場合において、土地収用法第八十二条第一項の規定による要求をするときは、その建物に対する補償金の全部又は一部に代えて、その要求に基づいて提供される土地にある建物をもつて、損失を補償することを収用委員会に要求することができる。
2 特定公共事業の用に供する土地にある建物の賃借人(一時使用のため建物を賃借りした者を除く。)は、その建物が収用されるときは、その建物の賃借権に対する補償金の全部又は一部に代えて建物の賃借権をもつて、損失を補償することを収用委員会に要求することができる。
3 前二項の規定による要求及びその要求に基づいて提供される建物又は建物の賃借権に関しては、土地収用法第八十二条第一項の規定による要求及びその要求に基づいて提供される同項に規定する替地の例による。
第四節 土地収用法による事業の認定を受けている事業及び都市計画事業
(土地収用法による事業の認定を受けている事業及び都市計画事業)
第三十九条 土地収用法第二十条の規定による事業の認定を受けている事業又は都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業に係る特定公共事業の認定については、第四条第二項第三号から第五号まで及び第三項、第八条、第九条並びに第十二条の規定は、適用しない。
2 土地収用法第二十条の規定による事業の認定を受けている事業で特定公共事業の認定を受けたものについては、第十三条の規定にかかわらず、同法第二十九条中「第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から三年」とあるのは、「公共用地の取得に関する特別措置法第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつた日から一年」とする。
3 前項に規定する事業については、土地収用法第二十条の規定による事業の認定が同法第二十九条又は第三十条第四項の規定によりその効力を失つたときは、特定公共事業の認定も、将来に向かつて、その効力を失う。
4 都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業についてした特定公共事業の認定は、起業者が第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつた日から一年以内に土地収用法第三十一条の規定による土地細目の公告の申請をしないときは、期間満了の日の翌日から将来に向かつて、その効力を失う。
5 土地収用法第三十一条第二項の規定は、第二項に規定する事業については、同法第二十条の規定による事業の認定が同法第二十九条の規定によりその効力を失う前二週間、都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業で特定公共事業の認定を受けたものについては、その認定が前項の規定によりその効力を失う前二週間においては、適用しない。
6 土地収用法第二十条の規定による事業の認定を受けている事業又は都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業で、土地収用法第三十三条の規定による土地細目の公告がその効力を有する期間中に第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつたものの当該土地細目の公告に関しては、第十六条の規定にかかわらず、同法第三十九条、第四十一条及び第百十六条第一項中「一年」とあるのは、「一年以内で公共用地の取得に関する特別措置法第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつた日から六月」とする。
第四十条 都市計画法第十六条第一項に規定する都市計画事業で、同法第二十条第一項の規定による裁定の申請前に第十条第一項の規定による特定公共事業の認定の告示があつたものについては、同法第二十条の規定は、適用しない。
第四章 雑則
(土地収用法第百二十三条の規定の不適用)
第四十一条 特定公共事業については、土地収用法第百二十三条の規定は、適用しない。
(訴願及び訴訟)
第四十二条 第二十二条の規定による請求に係る裁決があつた場合における土地収用法第百二十九条第二項の規定の適用については、その裁決は、同法第七十八条の規定による請求に係る裁決とみなす。
2 緊急裁決のうち、仮補償金及び第二十一条第二項の規定により裁決書に記載された事項については、損失の補償に関する訴を提起することができない。
(期間の計算及び通知の方法)
第四十三条 土地収用法第百三十五条の規定は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による期間の計算方法及び通知の方法について準用する。
(手続の承継等)
第四十四条 土地収用法第九条、第十条、第百二十七条及び第百三十六条の規定は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による起業者並びに土地所有者及び関係人の権利義務及び手続その他の行為について準用する。
(権利、物件及び土石砂れきの収用又は使用に関する準用規定)
第四十五条 第二章、第三章(第三十一条を除く。)、第四十一条、第四十二条及び前条の規定は、土地収用法第五条に掲げる権利若しくは同法第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、若しくは使用する場合又は同法第七条に規定する土石砂れきを収用する場合に準用する。この場合において必要な技術的読替えは、政令で定める。
(現物給付)
第四十六条 特定公共事業に必要な土地等を提供する者がその対償として土地又は建物の提供、耕地又は宅地の造成その他金銭以外の方法による給付を要求した場合において、その要求が相当であると認められるときは、特定公共事業を施行する者は、事情の許す限り、その要求に応ずるよう努めなければならない。
(生活再建等のための措置)
第四十七条 特定公共事業に必要な土地等を提供することによつて生活の基礎を失うこととなる者は、前条の規定による要求をする場合において必要があるとき、又はその受ける対償と相まつて実施されることを必要とする場合においては、生活再建又は環境整備のための措置で次の各号に掲げるものの実施のあつせんを都道府県知事に申し出ることができる。
一 宅地、開発して農地とすることが適当な土地その他の土地の取得に関すること。
二 住宅、店舗その他の建物の取得に関すること。
三 職業の紹介、指導又は訓練に関すること。
四 他に適当な土地がなかつたため環境が著しく不良な土地に住居を移した場合における環境の整備に関すること。
2 前項の規定による申出は、政令で定めるところにより、書面でしなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による申出があつた場合において、その申出が相当であると認めるときは、関係行政機関、関係市町村長(都の特別区の存する区域にあっては、関係特別区長)、その申出をした者又はその代表者及び特定公共事業を施行する者と協議して、生活再建計画を作成するものとする。
4 特定公共事業を施行する者は、生活再建計画のうち、特定公共事業に必要な土地等を提供する者に対する対償となる事項を実施しなければならない。
5 国及び地方公共団体は、法令及び予算の範囲内において、事情の許す限り、生活再建計画の実施に努めなければならない。
(公共用地審議会)
第四十八条 特定公共事業の認定に関する事項を審議させるため、建設省の附属機関として公共用地審議会(以下「審議会」という。)を置く。
第四十九条 審議会は、委員七人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣の承認を得て建設大臣が任命する。
3 委員の任期は、三年とする。ただし、再任を妨げない。
4 委員は、非常勤とする。
5 審議会に会長を置く。会長は、委員が互選する。
6 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
(政令への委任)
第五十条 この法律に規定するもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項その他この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(建設省設置法の一部改正)
2 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第十条第一項の表中公共用地取得制度調査会の項を次のように改める。
公共用地審議会
公共用地の取得に関する特別措置法(昭和三十六年法律第百五十号)に基づく特定公共事業の認定に関する事項を審議すること。
第二十二条を次のように改める。
第二十二条 公共用地審議会は、第十条第一項に規定する事項のほか、昭和三十七年三月三十一日までの間に限り、建設大臣の諮問に応じて公共用地の取得に伴う損失の補償の基準その他公共用地取得制度に関する重要事項を調査審議し、又は当該事項について建設大臣に意見を述べることができる。
内閣総理大臣 池田勇人
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
厚生大臣 古井喜実
農林大臣 周東英雄
通商産業大臣 椎名悦三郎
運輸大臣 木暮武太夫
郵政大臣 小金義照
労働大臣臨時代理 国務大臣 古井喜実
建設大臣 中村梅吉
自治大臣 安井謙