最低賃金法
法令番号: 法律第137号
公布年月日: 昭和34年4月15日
法令の形式: 法律

改正対象法令

審議経過

第31回国会

参議院
(昭和33年12月16日)
衆議院
(昭和33年12月17日)
(昭和34年2月4日)
(昭和34年2月17日)
(昭和34年2月19日)
(昭和34年2月24日)
(昭和34年2月26日)
(昭和34年2月26日)
参議院
(昭和34年3月10日)
(昭和34年3月14日)
(昭和34年3月18日)
(昭和34年3月19日)
(昭和34年3月26日)
(昭和34年4月1日)
(昭和34年4月3日)
衆議院
(昭和34年4月7日)
(昭和34年5月2日)
最低賃金法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十四年四月十五日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百三十七号
最低賃金法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
最低賃金(第三条―第十九条)
第三章
最低工賃(第二十条―第二十五条)
第四章
最低賃金審議会(第二十六条―第三十二条)
第五章
雑則(第三十三条―第四十三条)
第六章
罰則(第四十四条―第四十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「労働者」、「使用者」又は「賃金」とは、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条から第十一条までに規定する労働者、使用者又は賃金をいう。
2 この法律で「委託」とは、次に掲げる行為をいう。
一 他人に物品を提供して、その物品を部品、附属品若しくは原材料とする物品の製造又はその物品の加工、改造、修理、浄洗、選別、包装若しくは解体(以下「加工等」という。)を委託すること。
二 他人に物品を売り渡して、その者がその物品を部品、附属品若しくは原材料とする物品を製造した場合又はその物品の加工等をした場合にその製造又は加工等に係る物品を買い受けることを約すること。
3 この法律で「委託者」とは、次に掲げる者をいう。
一 物品の製造、加工等若しくは販売又はこれらの請負を業とする者であつて、その業務の目的物たる物品(物品の半製品、部品、附属品又は原材料を含む。)について委託をするもの
二 前号に規定する者のために行為をするすベての者
4 この法律で「家内労働者」とは、委託者の委託により、物品の製造又は加工等に従事する者であつて、その業務について同居の親族以外の者を常時使用していないものをいう。
5 この法律で「工賃」とは、次に掲げるものをいう。
一 第二項第一号の委託の場合において物品の製造又は加工等の対償として委託者が家内労働者に支払うもの
二 第二項第二号の委託の場合において同号の物品の買受について委託者が家内労働者に支払うものの価額と同号の物品の売渡について家内労働者が委託者に支払うものの価額との差額
第二章 最低賃金
(最低賃金の原則)
第三条 最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
(最低賃金額)
第四条 最低賃金額(最低賃金において定める賃金の額をいう。以下同じ。)は、時間、日、週又は月によつて定めるものとする。
2 賃金が通常出来高払制その他の請負制で定められている場合であつて、前項の規定によることが不適当であると認められるときは、同項の規定にかかわらず、労働省令で定めるところにより最低賃金額を定めることができる。
(最低賃金の効力)
第五条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
3 次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない。
一 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で労働省令で定めるもの
二 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で労働省令で定めるもの
三 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金
4 第一項及び第二項の規定は、労働者がその都合により所定労働時間若しくは所定労働日の労働をしなかつた場合又は使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間又は日に対応する限度で賃金を支払わないことを妨げるものではない。
(現物給与等の評価)
第六条 賃金が通貨以外のもので支払われる場合又は使用者が労働者に提供した食事その他のものの代金を賃金から控除する場合においては、最低賃金の適用について、これらのものは、適正に評価されなければならない。
(最低賃金の競合)
第七条 労働者が二以上の最低賃金の適用を受ける場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最高のものにより第五条の規定を適用する。
(最低賃金の適用除外)
第八条 次に掲げる労働者については、当該最低賃金に別段の定がある場合を除き、労働省令で定めるところにより、使用者が都道府県労働基準局長の許可を受けたときは、第五条の規定は、適用しない。
一 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
二 試の使用期間中の者
三 職業訓練法(昭和三十三年法律第百三十三号)第十五条第一項又は第十六条第一項の認定を受けて行われる職業訓練を受ける者
四 所定労働時間の特に短い者、軽易な業務に従事する者その他の労働省令で定める者
(業者間協定に基く最低賃金)
第九条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、賃金の最低額に関する業者間協定(使用者又は使用者の団体の間における協定をいう。以下同じ。)が締結された場合において、その当事者の全部の合意による申請があつたときは、当該業者間協定における賃金の最低額に関する定に基き、その申請の際の当事者である使用者(当事者である使用者の団体の構成員である使用者を含む。)及びその使用する労働者に適用する最低賃金の決定をすることができる。
2 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、前項の規定による申請に係る業者間協定における賃金の最低額に関する定が適当でないと認められる場合においては、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の意見に基き、当該当事者に対して、その賃金の最低額に関する定を改正して再申請すべきことを勧告することができる。
3 第一項の規定による最低賃金は、同項の申請があつた後に当該業者間協定に参加した使用者(参加した使用者の団体の構成員である使用者を含む。)及び当該業者間協定の当事者である使用者の団体に加入した使用者並びにこれらの者の使用する労働者についても適用があるものとする。
(業者間協定に基く地域的最低賃金)
第十条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の大部分が前条第一項の規定による一の最低賃金の適用を受ける場合又は同項の規定による二以上の最低賃金で最低賃金額について実質的に内容を同じくするもののいずれかの適用を受ける場合において、これらの最低賃金の適用を受ける使用者の大部分の者の合意による申請があつたときは、これらの最低賃金に基き、その一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の全部に適用する最低賃金の決定をすることができる。
(労働協約に基く地域的最低賃金)
第十一条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の大部分が賃金の最低額に関する定を含む一の労働協約の適用を受ける場合又は賃金の最低額について実質的に内容を同じくする定を含む二以上の労働協約のいずれかの適用を受ける場合において、当該労働協約の当事者である労働組合又は使用者(使用者の団体を含む。)の全部の合意による申請があつたときは、これらの賃金の最低額に関する定に基き、その一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者の全部に適用する最低賃金の決定をすることができる。
(異議の申出)
第十二条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第十条又は前条の申請があつたときは、労働省令で定めるところにより、その申請の要旨を公示しなければならない。
2 第十条又は前条に規定する同種の労働者又はこれを使用する使用者で申請に係る最低賃金又は労働協約の適用を受けていないものは、前項の規定による公示があつた日から三十日以内に、労働大臣又は都道府県労働基準局長に、異議を申し出ることができる。
3 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、前項の規定による申出があつたときは、その申出について、最低賃金審議会に意見を求めなければならない。
4 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第一項の規定による公示の日から三十日を経過するまでは、第十条又は前条の決定をすることができない。第二項の規定による申出があつた場合において、前項の規定による最低賃金審議会の意見が提出されるまでも、同様とする。
5 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第十条又は前条の決定をする場合において、第二項の規定による申出があつたときは、第三項の規定による最低賃金審議会の意見に基き、当該最低賃金において、一定の範囲の事業について、その適用を一定の期間を限つて猶予し、又は最低賃金額について別段の定をすることができる。
(最低賃金の改正等)
第十三条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第九条第一項、第十条又は第十一条の規定による最低賃金について、これらの最低賃金の決定の例により、改正又は廃止の決定をすることができる。
2 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第九条第一項、第十条又は第十一条の規定による最低賃金が著しく不適当となつたと認めるときは、その最低賃金の改正又は廃止の決定をすることができる。
(業者間協定の締結等の勧告)
第十四条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図るため必要があると認めるときは、使用者又はその団体に対し、賃金の最低額に関する業者間協定の締結又は改正を勧告することができる。
(最低賃金審議会への諮問)
第十五条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第九条第一項、第十条、第十一条若しくは第十三条第一項若しくは第二項の決定又は前条の勧告については、あらかじめ最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重してこれをしなければならない。
2 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、第九条第二項、第十二条第五項又は前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を附して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。
(最低賃金審議会の調査審議に基く最低賃金)
第十六条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、一定の事業、職業又は地域について、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図るため必要があると認める場合において、第九条第一項、第十条、第十一条又は第十三条第一項の規定により最低賃金を決定することが困難又は不適当と認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を尊重して、最低賃金の決定をすることができる。
2 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、前項の規定により決定した最低賃金について必要があると認めるときは、同項の決定の例により、その改正又は廃止の決定をすることができる。
3 前条第二項の規定は、前二項の決定について準用する。
(公示及び発効)
第十七条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、最低賃金に関する決定をしたときは、労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない。
2 第十条、第十一条及び前条第一項の決定並びにこれらの規定による最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その他の最低賃金に関する決定は、同項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる。
(最低賃金の効力の存続)
第十八条 第九条第一項、第十条又は第十一条の規定による最低賃金の基礎となつた業者間協定又は労働協約の変更又は消滅は、当該最低賃金の効力に影響を及ぼすものではない。
(周知義務)
第十九条 最低賃金の適用を受ける使用者は、労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見易い場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない。
第三章 最低工賃
(最低工賃の決定)
第二十条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する使用者が第十条、第十一条又は第十六条第一項の規定による最低賃金の適用を受ける場合において、その地域内に営業所を有する委託者で当該使用者と同一又は類似の事業を営むものに係る家内労働者であつて、当該労働者と同一又は類似の業務に従事するものの労働条件の改善を図り、及び当該最低賃金の有効な実施を確保するため必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を尊重して、当該委託者及び家内労働者に適用する最低工賃の決定をすることができる。
2 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、前項の決定をする場合において、必要があると認めるときは、当該最低工賃において、当該地域内の家内労働者で同項に規定する家内労働者と同種の業務に従事するもの及びこれに対して委託をする委託者で同項に規定する委託者と同種の事業を営むものに、当該最低工賃を適用すべきことの定をすることができる。
3 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、最低工賃について必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をすることができる。
4 第十五条第二項の規定は、第一項及び前項の決定について準用する。
(公示及び発効)
第二十一条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、最低工賃に関する決定をしたときは、労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない。
2 最低工賃の決定及びその改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、最低工賃の廃止の決定は、同項の規定による公示の日から、その効力を生ずる。
(最低工賃額等)
第二十二条 最低工賃は、当該最低賃金との均衡を考慮して定められなければならない。
2 最低工賃額(最低工賃において定める工賃の額をいう。以下同じ。)は、家内労働者の製造又は加工等に係る物品の一定の単位によつて定めるものとする。
3 最低工賃においては、その適用を受ける家内労働者の範囲及び工賃の支払の期限を定めるものとする。
(最低工賃の効力)
第二十三条 最低工賃の適用を受ける委託者は、当該最低工賃の適用を受ける家内労働者に対して委託をする場合は、その家内労働者に対し、最低工賃額以上の工賃を支払わなければならない。
2 最低工賃の適用を受ける家内労働者と委託者との間の委託の契約で最低工賃額に達しない工賃を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低工賃と同様の定をしたものとみなす。
3 第六条の規定は、最低工賃の適用について準用する。
(最低工賃等の明示)
第二十四条 最低工賃の適用を受ける委託者は、当該最低工賃の適用を受ける家内労働者に委託をするときは、工賃の額及び工賃の支払の期限を定め、当該最低工賃額及び当該最低工賃において定める支払の期限とともにこれを明示しなければならない。
(帳簿の備付)
第二十五条 最低工賃の適用を受ける委託者は、労働省令で定めるところにより、当該最低工賃の適用を受ける家内労働者で委託に係るものに関し、その氏名、工賃の額その他の事項を記入した帳簿を営業所に備え付けて置かなければならない。
第四章 最低賃金審議会
(設置)
第二十六条 労働省に中央最低賃金審議会を、都道府県労働基準局に地方最低賃金審議会を置く。
(権限)
第二十七条 最低賃金審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項をつかさどるほか、労働大臣又は都道府県労働基準局長の諮問に応じて、最低賃金又は最低工賃に関する重要事項を調査審議し、及びこれらに関し必要と認める事項を労働大臣又は都道府県労働基準局長に建議することができる。
(組織)
第二十八条 最低賃金審議会は、政令で定めるところにより、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。
2 最低賃金審議会には、委員のほか、特別委員を置くことができる。
3 特別委員は、議決に加わることができない。
(委員及び特別委員)
第二十九条 委員は、政令で定めるところにより、労働大臣又は都道府県労働基準局長が任命する。
2 委員の任期は、一年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまでその職務を行うものとする。
4 特別委員は、関係行政機関の職員のうちから、労働大臣又は都道府県労働基準局長が任命する。
5 委員及び特別委員は、非常勤とする。
(会長)
第三十条 最低賃金審議会に会長を置く。
2 会長は、公益を代表する委員のうちから、委員が選挙する。
3 会長は、会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめ第二項の規定の例により選挙された者が会長の職務を代理する。
(専門部会等)
第三十一条 最低賃金審議会に、必要に応じ、一定の事業又は職業について専門の事項を調査審議させるため、専門部会を置くことができる。
2 最低賃金審議会は、第十六条第一項の規定による最低賃金の決定若しくは最低工賃の決定又はこれらの改正の決定について調査審議を求められたときは、専門部会を置かなければならない。
3 専門部会は、政令で定めるところにより、関係労働者を代表する委員、関係使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。
4 最低工賃に関して置かれる専門部会は、前項に規定する委員のほか、関係家内労働者を代表する委員、関係委託者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。
5 第二十八条第二項及び第三項、第二十九条第一項、第四項及び第五項並びに前条の規定は、専門部会について準用する。
6 最低賃金審議会は、審議に際し必要と認める場合においては、関係労働者、関係使用者その他の関係者の意見をきくものとする。
(政令への委任)
第三十二条 この法律に規定するもののほか、最低賃金審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
第五章 雑則
(援助)
第三十三条 政府は、使用者、労働者、委託者及び家内労働者に対し、関係資料の提供その他最低賃金制度の円滑な実施に必要な援助に努めなければならない。
(調査)
第三十四条 労働大臣は、賃金、工賃その他労働者又は家内労働者の実情について必要な調査を行い、最低賃金制度が円滑に実施されるように努めなければならない。
(報告)
第三十五条 労働大臣及び都道府県労働基準局長は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、労働省令で定めるところにより、使用者、労働者、委託者又は家内労働者に対し、賃金又は工賃に関する事項の報告をさせることができる。
(職権等)
第三十六条 第九条第一項及び第二項、第十条、第十一条、第十三条、第十四条、第十六条第一項及び第二項並びに第二十条第一項及び第三項に規定する労働大臣又は都道府県労働基準局長の職権は、二以上の都道府県労働基準局の管轄区域にわたる事案及び一の都道府県労働基準局の管轄区域内のみに係る事案で労働大臣が全国的に関連があると認めて労働省令で定めるところにより指定するものについては、労働大臣が行い、一の都道府県労働基準局の管轄区域内のみに係る事案(労働大臣の職権に属する事案を除く。)については、当該都道府県労働基準局長が行う。
2 労働大臣は、都道府県労働基準局長が決定した最低賃金又は最低工賃が著しく不適当となつたと認めるときは、その改正又は廃止の決定をなすべきことを都道府県労働基準局長に命ずることができる。
3 第十五条の規定は、労働大臣が前項の規定による命令をしようとする場合について準用する。
(労働基準監督署長及び労働基準監督官)
第三十七条 労働基準監督署長及び労働基準監督官は、労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどる。
(労働基準監督官の権限)
第三十八条 労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者又は委託者の事業場又は営業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。
2 前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第三十九条 労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行う。
(船員に関する特例)
第四十条 船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員(以下「船員」という。)に関しては、この法律に規定する労働大臣、都道府県労働基準局長又は労働基準監督官の権限に属する事項は、運輸大臣、海運局長又は船員労務官が行うものとし、この法律中「労働省令」とあるのは、「運輸省令」と、「都道府県労働基準局の管轄区域」とあるのは「海運局の管轄区域」と読み替えるものとする。
第四十一条 船員に関しては、この法律に規定する最低賃金審議会の権限に属する事項は、船員中央労働委員会又は船員地方労働委員会(以下「船員労働委員会」という。)が行う。
2 船員労働委員会には、前項の規定によりその権限に属させられた事項を調査審議させるため、委員のほか、特別委員を置くことができる。
3 特別委員は、関係行政機関の職員のうちから、運輸大臣が任命する。
4 第二十八条第三項及び第二十九条第五項の規定は、第二項の特別委員について準用する。
第四十二条 船員労働委員会に、必要に応じ、一定の事業又は職業について専門の事項を調査審議させるため、最低賃金専門部会を置くことができる。
2 船員労働委員会は、第十六条第一項の規定による最低賃金の決定又はその改正の決定について調査審議を求められたときは、最低賃金専門部会を置かなければならない。
3 最低賃金専門部会の委員は、政令で定めるところにより、運輸大臣が任命する。
4 最低賃金専門部会には、委員のほか、特別委員を置くことができる。
5 第二十八条第三項、第二十九条第五項及び前条第三項の規定は前項の特別委員について、第三十一条第三項の規定は最低賃金専門部会について、準用する。
6 第三十一条第六項の規定は、船員労働委員会について準用する。
(省令への委任)
第四十三条 この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、労働省令で定める。
第六章 罰則
第四十四条 第五条第一項又は第二十三条第一項の規定に違反した者は、一万円以下の罰金に処する。
第四十五条 次の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。
一 第十九条、第二十四条又は第二十五条の規定に違反した者
二 第三十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第三十八条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して虚偽の陳述をした者
第四十六条 前二条の違反行為をした者が、法人又は人のために行為した法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者であるときは、その法人又は人に対しても各本条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律の施行期日は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において、各規定につき、政令で定める。
(労働基準法の一部改正)
第二条 労働基準法の一部を次のように改正する。
第二十八条を次のように改める。
(最低賃金)
第二十八条 賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。
第二十九条から第三十一条までを次のように改める。
第二十九条から第三十一条まで 削除
第百条第一項中「、中央賃金審議会」を削り、同条第三項中「、労働基準審議会及び地方賃金審議会」を「及び労働基準審議会」に改める。
第百十四条及び第百十九条第一号中「、第三十一条」を削る。
(国会職員法の一部改正)
第三条 国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。
第四十一条第一項中「及び労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」を「、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)」に改める。
(船員法の一部改正)
第四条 船員法の一部を次のように改正する。
第五十九条を次のように改める。
(最低報酬)
第五十九条 給料その他の報酬の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。
第七十一条第一号中「船員労働委員会」を「労働組合法による労働委員会(以下船員労働委員会という。)」に改める。
第百十六条第一項中「、第五十九条第二項」及び「(第五十九条第二項の場合には同条の規定による報酬の最低額と契約で定められた報酬の額との差額)」を削る。
第百三十条中「、第五十九条第二項」を削る。
(国家公務員法の一部改正)
第五条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の一部を次のように改正する。
附則第十六条中「及び船員法(昭和二十二年法律第百号)」を「、船員法(昭和二十二年法律第百号)及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)」に改める。
(運輸省設置法の一部改正)
第六条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第二十三号を次のように改める。
二十三 船員の最低賃金並びにその改正及び廃止の決定をすること。
第二十五条第一項第四号の次に次の一号を加える。
四の二 船員の最低賃金に関すること。
第四十条第一項第十三号の次に次の一号を加える。
十三の二 船員の最低賃金に関すること。
第五十七条を次のように改める。
(船員労働委員会)
第五十七条 船員労働委員会の組織、所掌事務及び権限は、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)、船員法、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)並びにこれらに基く命令の定めるところによる。
(労働省設置法の一部改正)
第七条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十一号を次のように改める。
二十一 削除
第四条第三十二号の五の次に次の二号を加える。
三十二の六 最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)に基いて、最低賃金並びにその改正及び廃止の決定をすること。
三十二の七 最低賃金法に基いて、最低工賃並びにその改正及び廃止の決定をすること。
第八条第一項第六号の四の次に次の一号を加える。
六の五 最低賃金及び最低工賃に関すること。
第八条第一項第十一号中「及びけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法」を「、けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法及び最低賃金法」に改める。
第十三条第一項の表中
中央賃金審議会
労働大臣の求に応じ、最低賃金に関する事項を調査審議して意見を提出すること。
を削り、
けい肺審議会
けい肺に関する重要事項を調査審議すること。
けい肺審議会
けい肺に関する重要事項を調査審議すること。
中央最低賃金審議会
労働大臣の諮問に応じ、最低賃金及び最低工賃に関する事項を調査審議すること。
に改める。
第十五条第一項中「及びけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(これに基く命令を含む。)」を「、けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(これに基く命令を含む。)及び最低賃金法(これに基く命令を含む。)」に改める。
第十六条第一項の表を次のように改める。
名称
目的
地方労働基準審議会
都道府県労働基準局長の諮問に応じ、労働基準法の施行及び改正に関する事項を審議すること。
地方最低賃金審議会
都道府県労働基準局長の諮問に応じ、最低賃金及び最低工賃に関する事項を調査審議すること。
第十七条第一項中「及びけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(これに基く命令を含む。)」を「、けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法(これに基く命令を含む。)及び最低賃金法(これに基く命令を含む。)」に改める。
(労働組合法の一部改正)
第八条 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)の一部を次のように改正する。
第十八条に次の一項を加える。
4 第一項の申立に係る労働協約が最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第十一条に規定する労働協約に該当するものであると認めるときは、労働大臣又は都道府県知事は、同項の決定をするについては、賃金に関する部分に関し、あらかじめ、中央最低賃金審議会又は都道府県労働基準局長の意見を聞かなければならない。この場合において、都道府県労働基準局長が意見を提出するについては、あらかじめ、地方最低賃金審議会の意見を聞かなければならない。
第十九条第二十二項中「この法律」の下に「(第十八条第四項の規定を除く。)」を加える。
(地方公務員法の一部改正)
第九条 地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第五十八条第一項中「及び労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)」を、「、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)」に改める。
(自衛隊法の一部改正)
第十条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第百八条中「及び船員法」を「、船員法」に、「並びにこれらに基く命令」を「及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)並びにこれらに基く命令」に改める。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 愛知揆一
運輸大臣 永野護
労働大臣 倉石忠雄