朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝國議会の協賛を経た会計法を改正する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月三十一日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
國務大臣 男爵 幣原喜重郞
司法大臣 木村篤太郎
國務大臣 齋藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
國務大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
内務大臣 植原悦二郎
大藏大臣 石橋湛山
國務大臣 金森徳次郎
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
文部大臣 高橋誠一郎
農林大臣 木村小左衞門
國務大臣 田中萬逸
國務大臣 高瀬莊太郎
法律第三十五号
会計法目次
第一章
総則
第二章
收入
第三章
支出及び債務の負担
第一節
総則
第二節
債務の負担
第三節
支出
第四節
支拂
第四章
契約
第五章
時効
第六章
國庫金及び有價証券
第七章
出納官吏
第八章
雜則
会計法
第一章 総則
第一條 一会計年度に属する歳入歳出の出納に関する事務は、政令の定めるところにより、翌年度七月三十一日までに完結しなければならない。
歳入及び歳出の会計年度所属の区分については、政令でこれを定める。
第二條 各省各廳の長(財政法第二十條第二項に規定する各省各廳の長をいう。以下同じ。)は、その所掌に属する收入を國庫に納めなければならない。直ちにこれを使用することはできない。
第二章 收入
第三條 租税その他の歳入は、法令の定めるところにより、これを徴收又は收納しなければならない。
第四條 大藏大臣は、歳入の徴收及び收納に関する事務の一般を管理し、各省各廳の長は、その所掌の歳入の徴收及び收納に関する事務を管理する。
第五條 租税その他の歳入は、官吏(國会の職員を含む。以下同じ。)で、法令の定めるところにより、これを徴收する資格を有する者(以下歳入徴收官という。)でなければ、これを徴收することができない。
第六條 歳入徴收官は、租税その他の歳入を徴收するときは、これを調査決定し、債務者に対して納入の告知をしなければならない。
第七條 租税その他の歳入は、出納官吏でなければ、これを收納することができない。但し、出納員に收納の事務を分掌させる場合又は日本銀行に收納の事務を取り扱わせる場合はこの限りでない。
出納官吏又は出納員は、租税その他の歳入の收納をしたときは、遅滯なく、その收納金を日本銀行に拂い込まなければならない。
第八條 歳入の徴收の職務は、現金出納の職務と相兼ねることができない。但し、特別の必要がある場合においては、政令で特例を設けることができる。
第九條 出納の完結した年度に属する收入その他予算外の收入は、すべて現年度の歳入に組み入れなければならない。但し、支出済となつた歳出の返納金は、政令の定めるところにより、各ゝ支拂つた歳出の金額に戻入することができる。
第三章 支出及び債務の負担
第一節 総則
第十條 各省各廳の長は、その所掌に係る債務の負担及び支出に関する事務を管理する。
第二節 債務の負担
第十一條 契約等(財政法第三十四條第一項に規定する契約等をいう。以下同じ。)は、法令又は予算の定めるところに從い、これをしなければならない。
第十二條 各省各廳の長は、財政法第三十一條第一項の規定により配賦された予算に基いて契約等をなすには、同法第三十四條の規定により承認された契約等の計画に定める金額を超えてはならない。
第十三條 各省各廳の長は、他の官吏に委任して、契約等をさせることができる。
第三節 支出
第十四條 各省各廳の長は、その所掌に属する歳出予算に基いて、支出しようとするときは、財政法第三十四條の規定により承認された支拂計画に定める金額を超えてはならない。
第十五條 各省各廳の長は、その所掌に属する歳出予算に基いて支出しようとするときは、現金の交付に代え、日本銀行を支拂人とする小切手を振り出し、又は大藏大臣の定めるところにより、國庫内の移換のための國庫金振替書(以下國庫金振替書という。)を日本銀行に交付しなければならない。
第十六條 各省各廳の長は、債権者のためでなければ小切手を振り出すことはできない。但し、第十七條、第十九條乃至第二十一條の規定により、主任の官吏又は日本銀行に対し資金を交付する場合は、この限りでない。
第十七條 各省各廳の長は、交通通信の不便な地方で支拂う経費、廳中常用の雜費その他経費の性質上主任の官吏をして現金支拂をなさしめなければ事務の取扱に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、当該官吏をして現金支拂をなさしめるため、政令の定めるところにより、必要な資金を交付することができる。
第十八條 各省各廳の長は、前條に規定する経費で政令で定めるものに充てる場合に限り、必要已むを得ないときは大藏大臣の承認を経て、会計年度開始前、主任の官吏に対し同條の規定により資金を交付することができる。
大藏大臣は、前項の規定による承認をしたときは、日本銀行及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十九條 大藏大臣は、日本銀行をして國債の元利拂の事務を取り扱わしめるため、必要な資金を日本銀行に交付することができる。
第二十條 各省各廳の長は、政令の定めるところにより、現金支拂をなさしめるため、逓信官署その他の官署の当該官吏をしてその保管に係る歳入金、歳出金又は歳入歳出外現金を繰り替え使用せしめることができる。
各省各廳の長は、前項の規定により、歳出金に繰り替え使用した現金を補填するため、その補填の資金を当該官吏に交付することができる。
第二十一條 各省各廳の長は、隔地者に支拂をしようとするときは、必要な資金を日本銀行に交付して、支拂をなさしめることができる。
前項の規定は、隔地の出納官吏に対し第十七條又は前條第二項の規定により資金を交付しようとする場合に、これを準用する。
第二十二條 各省各廳の長は、運賃、傭船料、旅費その他経費の性質上前金又は概算を以て支拂をしなければ事務に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、前金拂又は概算拂をすることができる。
第二十三條 各省各廳の長は、逓信官署その他特殊の経理を必要とする官署で政令で定めるものの事務費については、政令の定めるところにより、その全部又は一部を主任の官吏に渡切を以て支給することができる。
第二十四條 各省各廳の長は、他の官吏に委任してその所掌に属する歳出金を支出するため小切手を振り出さしめ又は國庫金振替書を発せしめることができる。
第二十五條 各省各廳の長又はその委任を受けた官吏(以下支出官という。)は、政令の定めるところにより、小切手又は國庫金振替書につき大藏大臣又はその指定する官吏の認証を受けなければならない。
第二十六條 歳出の支出の職務は、現金出納の職務と相兼ねることができない。
第二十七條 過年度に属する経費は、現年度の歳出の金額からこれを支出しなければならない。但し、財政法第三十五條第三項但書の規定により大藏大臣の指定する経費の外、その経費所属年度の毎項金額中不用となつた金額を超過してはならない。
第四節 支拂
第二十八條 日本銀行は、支出官の振り出した小切手の提示を受けた場合において、その小切手が振出日附から十日以上を経過しているものであつても一年を経過しないものであるときは、その支拂をしなければならない。
日本銀行は、第二十一條の規定により、資金の交付を受けた場合においては、支出官がその資金の交付のために振り出した小切手の振出日附から一年を経過した後は、債権者又は出納官吏に対し支拂をすることができない。
第四章 契約
第二十九條 各省各廳において、賣買、貸借、請負その他の契約をなす場合においては、すべて公告して競爭に付さなければならない。但し、各省各廳の長は、競爭に付することを不利と認める場合その他政令で定める場合においては、大藏大臣に協議して、指名競爭に付し又は隨意契約にすることができる。
第五章 時効
第三十條 金銭の給付を目的とする國の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、五年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。國に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同樣とする。
第三十一條 金銭の給付を目的とする國の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項に関し、適用すべき他の法律の規定がないときは、民法の規定を準用する。國に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同樣とする。
第三十二條 法令の規定により、國がなす納入の告知は、民法第百五十三條(前條において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。
第六章 國庫金及び有價証券
第三十三條 各省各廳の長は、法律又は政令の規定によるのでなければ、公有若しくは私有の現金又は有價証券を保管することができない。
第三十四條 日本銀行は、政令の定めるところにより、國庫金出納の事務を取り扱わなければならない。
前項の規定により日本銀行において受け入れた國庫金は、政令の定めるところにより、國の預金とする。
第三十五條 國は、その所有又は保管に係る有價証券の取扱を日本銀行に命ずることができる。
第三十六條 日本銀行は、その取り扱つた國庫金の出納、國債の発行による收入金の收支、第十九條又は第二十一條の規定により交付を受けた資金の收支及び前條の規定により取り扱つた有價証券の受拂に関して、会計檢査院の檢査を受けなければならない。
第三十七條 日本銀行が、國のために取り扱う現金又は有價証券の出納保管に関し、國に損害を與えた場合の日本銀行の賠償責任については、民法及び商法の適用があるものとする。
第七章 出納官吏
第三十八條 出納官吏とは、現金又は物品の出納保管を掌る官吏をいう。
出納官吏は、法令の定めるところにより、現金又は物品を出納保管しなければならない。
第三十九條 出納官吏は、各省各廳の長又はその委任を受けた官吏が、これを命ずる。
各省各廳の長又はその委任を受けた官吏が必要があると認めるときは、前項の出納官吏の事務の全部を代理する代理出納官吏又はその事務の一部を分掌する分任出納官吏を命ずることができる。
第四十條 各省各廳の長は、特に必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、各省各廳の事務員をして現金又は物品の出納保管を分掌せしめることができる。
前項の規定により現金又は物品の出納保管に関する事務の分掌を命ぜられた事務員は、これを出納員という。
第四十一條 出納官吏が、その保管に係る現金又は物品を亡失毀損した場合において、善良な管理者の注意を怠つたときは、弁償の責を免れることができない。但し、各省各廳の長の定めた規程により各省各廳の職員の使用に供した物品の亡失毀損について、合規の監督を怠らなかつたことを証明した場合は、その責に任じない。
出納官吏は、單に自ら事務を執らないことを理由としてその責を免れることができない。但し、代理出納官吏、分任出納官吏又は出納員の行爲については、この限りでない。
第四十二條 各省各廳の長は、出納官吏がその保管に係る現金又は物品について、これを亡失毀損したときは、遅滯なく、これを大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第四十三條 各省各廳の長は、出納官吏の保管に係る現金又は物品の亡失毀損があつた場合においては、会計檢査院の檢定前においても、その出納官吏に対して弁償を命ずることができる。
前項の場合において、会計檢査院が出納官吏に対し弁償の責がないと檢定したときは、その既納に係る弁償金は、直ちに還付しなければならない。
第四十四條 代理出納官吏、分任出納官吏及び出納員は、その行爲については、自らその責に任ずる。
第四十五條 出納官吏に関する規定は、出納員について、これを準用する。
第八章 雜則
第四十六條 大藏大臣は、予算の執行の適正を期するため、各省各廳に対して、收支の実績若しくは見込について報告を徴し、予算の執行状況について実地監査を行い、又は必要に應じ、閣議の決定を経て、予算の執行について必要な指示をなすことができる。
大藏大臣は、予算の執行の適正を期するため、自ら又は各省各廳の長に委任して、工事の請負契約者、物品の納入者、補助金の交付を受けた者(補助金の終局の受領者を含む。)又は調査、試驗、研究等の委託を受けた者に対して、その状況を監査し又は報告を徴することができる。
第四十七條 大藏省、歳入徴收官、各省各廳の長、第十三條の規定により契約等を行うことを委任された官吏、支出官、出納官吏及び出納員並びに日本銀行は、政令の定めるところにより、帳簿を備え、且つ、報告書及び計算書を作製し、これを大藏省又は会計檢査院に送付しなければならない。
出納官吏、出納員及び日本銀行は、政令の定めるところにより、その出納した歳入金又は歳出金について、歳入徴收官又は支出官に報告しなければならない。
第四十八條 國は、政令の定めるところにより、その歳入、歳出及び契約等に関する事務を、都道府縣の吏員をして取り扱わしめることができる。
前項の規定により、歳入、歳出及び契約等に関する事務を取り扱う都道府縣の吏員については、歳入徴收官、支出官、第十三條の規定により契約等を行うことを委任された官吏及び出納官吏に関する規定を準用する。
第四十九條 第十五條の規定は、各省各廳の長又はその委任を受けた官吏が、歳出金の支出によらない國庫金の拂出をする場合について、これを準用する。
第五十條 この法律施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第七章及び第四十八條の規定は、日本國憲法施行の日から、これを施行し、第十二條、第十四條及び第二十五條の規定並びにこの法律中國庫金振替書に関する規定施行の日は、各規定について、政令でこれを定める。
第二條 この法律中「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これを「勅令」と読み替えるものとす。
第三條 從前の第一條又は第六條の規定は、昭和二十一年度に属する歳入歳出の出納に関する事務の完結並びに同年度に属する大藏省証券の発行、借入金の借入及びこれらの償還に関しては、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
第四條 從前の第三十五條乃至第三十七條の規定は、日本國憲法施行の日まで、なお、その効力を有する。
第五條 昭和二十年度歳入歳出の決算については、次の会期において國会に提出することができる。
第六條 國の会計経理に関する事項を調査審議しその結果に基いて会計経理に関する必要な改善措置を内閣に建議させるため、臨時に内閣に会計制度調査会を設置する。
調査会は、会長一人及び委員六人以内で、これを組織する。
会長は大藏次官を以てこれに充て、委員は会計檢査院の官吏の中から一人、各省の官吏の中から二人及び学識経驗のある者の中から三人以内を内閣において命ずる。
調査会の事務を整理するため、調査会に、書記若干人を置く。
調査会は各省各廳に対し、その会計経理に関する資料の提出を求め又は報告をさせることができる。
内閣は、第一項の規定により調査会の建議を受けたときは、その建議に基いて、必要な法律案を國会に提出するものとする。この場合においては、調査会の建議に関する文書を参考として添附しなければならない。
調査会の廃止を必要とすることとなつた場合に関し、必要な事項は、法律でこれを定める。
前各項(第六項を除く。)に定めるものの外、調査会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た会計法を改正する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月三十一日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
国務大臣 男爵 幣原喜重郎
司法大臣 木村篤太郎
国務大臣 斎藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
国務大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
内務大臣 植原悦二郎
大蔵大臣 石橋湛山
国務大臣 金森徳次郎
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
文部大臣 高橋誠一郎
農林大臣 木村小左衛門
国務大臣 田中万逸
国務大臣 高瀬荘太郎
法律第三十五号
会計法目次
第一章
総則
第二章
収入
第三章
支出及び債務の負担
第一節
総則
第二節
債務の負担
第三節
支出
第四節
支払
第四章
契約
第五章
時効
第六章
国庫金及び有価証券
第七章
出納官吏
第八章
雑則
会計法
第一章 総則
第一条 一会計年度に属する歳入歳出の出納に関する事務は、政令の定めるところにより、翌年度七月三十一日までに完結しなければならない。
歳入及び歳出の会計年度所属の区分については、政令でこれを定める。
第二条 各省各庁の長(財政法第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)は、その所掌に属する収入を国庫に納めなければならない。直ちにこれを使用することはできない。
第二章 収入
第三条 租税その他の歳入は、法令の定めるところにより、これを徴収又は収納しなければならない。
第四条 大蔵大臣は、歳入の徴収及び収納に関する事務の一般を管理し、各省各庁の長は、その所掌の歳入の徴収及び収納に関する事務を管理する。
第五条 租税その他の歳入は、官吏(国会の職員を含む。以下同じ。)で、法令の定めるところにより、これを徴収する資格を有する者(以下歳入徴収官という。)でなければ、これを徴収することができない。
第六条 歳入徴収官は、租税その他の歳入を徴収するときは、これを調査決定し、債務者に対して納入の告知をしなければならない。
第七条 租税その他の歳入は、出納官吏でなければ、これを収納することができない。但し、出納員に収納の事務を分掌させる場合又は日本銀行に収納の事務を取り扱わせる場合はこの限りでない。
出納官吏又は出納員は、租税その他の歳入の収納をしたときは、遅滞なく、その収納金を日本銀行に払い込まなければならない。
第八条 歳入の徴収の職務は、現金出納の職務と相兼ねることができない。但し、特別の必要がある場合においては、政令で特例を設けることができる。
第九条 出納の完結した年度に属する収入その他予算外の収入は、すべて現年度の歳入に組み入れなければならない。但し、支出済となつた歳出の返納金は、政令の定めるところにより、各ゝ支払つた歳出の金額に戻入することができる。
第三章 支出及び債務の負担
第一節 総則
第十条 各省各庁の長は、その所掌に係る債務の負担及び支出に関する事務を管理する。
第二節 債務の負担
第十一条 契約等(財政法第三十四条第一項に規定する契約等をいう。以下同じ。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。
第十二条 各省各庁の長は、財政法第三十一条第一項の規定により配賦された予算に基いて契約等をなすには、同法第三十四条の規定により承認された契約等の計画に定める金額を超えてはならない。
第十三条 各省各庁の長は、他の官吏に委任して、契約等をさせることができる。
第三節 支出
第十四条 各省各庁の長は、その所掌に属する歳出予算に基いて、支出しようとするときは、財政法第三十四条の規定により承認された支払計画に定める金額を超えてはならない。
第十五条 各省各庁の長は、その所掌に属する歳出予算に基いて支出しようとするときは、現金の交付に代え、日本銀行を支払人とする小切手を振り出し、又は大蔵大臣の定めるところにより、国庫内の移換のための国庫金振替書(以下国庫金振替書という。)を日本銀行に交付しなければならない。
第十六条 各省各庁の長は、債権者のためでなければ小切手を振り出すことはできない。但し、第十七条、第十九条乃至第二十一条の規定により、主任の官吏又は日本銀行に対し資金を交付する場合は、この限りでない。
第十七条 各省各庁の長は、交通通信の不便な地方で支払う経費、庁中常用の雑費その他経費の性質上主任の官吏をして現金支払をなさしめなければ事務の取扱に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、当該官吏をして現金支払をなさしめるため、政令の定めるところにより、必要な資金を交付することができる。
第十八条 各省各庁の長は、前条に規定する経費で政令で定めるものに充てる場合に限り、必要已むを得ないときは大蔵大臣の承認を経て、会計年度開始前、主任の官吏に対し同条の規定により資金を交付することができる。
大蔵大臣は、前項の規定による承認をしたときは、日本銀行及び会計検査院に通知しなければならない。
第十九条 大蔵大臣は、日本銀行をして国債の元利払の事務を取り扱わしめるため、必要な資金を日本銀行に交付することができる。
第二十条 各省各庁の長は、政令の定めるところにより、現金支払をなさしめるため、逓信官署その他の官署の当該官吏をしてその保管に係る歳入金、歳出金又は歳入歳出外現金を繰り替え使用せしめることができる。
各省各庁の長は、前項の規定により、歳出金に繰り替え使用した現金を補填するため、その補填の資金を当該官吏に交付することができる。
第二十一条 各省各庁の長は、隔地者に支払をしようとするときは、必要な資金を日本銀行に交付して、支払をなさしめることができる。
前項の規定は、隔地の出納官吏に対し第十七条又は前条第二項の規定により資金を交付しようとする場合に、これを準用する。
第二十二条 各省各庁の長は、運賃、傭船料、旅費その他経費の性質上前金又は概算を以て支払をしなければ事務に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、前金払又は概算払をすることができる。
第二十三条 各省各庁の長は、逓信官署その他特殊の経理を必要とする官署で政令で定めるものの事務費については、政令の定めるところにより、その全部又は一部を主任の官吏に渡切を以て支給することができる。
第二十四条 各省各庁の長は、他の官吏に委任してその所掌に属する歳出金を支出するため小切手を振り出さしめ又は国庫金振替書を発せしめることができる。
第二十五条 各省各庁の長又はその委任を受けた官吏(以下支出官という。)は、政令の定めるところにより、小切手又は国庫金振替書につき大蔵大臣又はその指定する官吏の認証を受けなければならない。
第二十六条 歳出の支出の職務は、現金出納の職務と相兼ねることができない。
第二十七条 過年度に属する経費は、現年度の歳出の金額からこれを支出しなければならない。但し、財政法第三十五条第三項但書の規定により大蔵大臣の指定する経費の外、その経費所属年度の毎項金額中不用となつた金額を超過してはならない。
第四節 支払
第二十八条 日本銀行は、支出官の振り出した小切手の提示を受けた場合において、その小切手が振出日附から十日以上を経過しているものであつても一年を経過しないものであるときは、その支払をしなければならない。
日本銀行は、第二十一条の規定により、資金の交付を受けた場合においては、支出官がその資金の交付のために振り出した小切手の振出日附から一年を経過した後は、債権者又は出納官吏に対し支払をすることができない。
第四章 契約
第二十九条 各省各庁において、売買、貸借、請負その他の契約をなす場合においては、すべて公告して競争に付さなければならない。但し、各省各庁の長は、競争に付することを不利と認める場合その他政令で定める場合においては、大蔵大臣に協議して、指名競争に付し又は随意契約にすることができる。
第五章 時効
第三十条 金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、五年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
第三十一条 金銭の給付を目的とする国の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項に関し、適用すべき他の法律の規定がないときは、民法の規定を準用する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
第三十二条 法令の規定により、国がなす納入の告知は、民法第百五十三条(前条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。
第六章 国庫金及び有価証券
第三十三条 各省各庁の長は、法律又は政令の規定によるのでなければ、公有若しくは私有の現金又は有価証券を保管することができない。
第三十四条 日本銀行は、政令の定めるところにより、国庫金出納の事務を取り扱わなければならない。
前項の規定により日本銀行において受け入れた国庫金は、政令の定めるところにより、国の預金とする。
第三十五条 国は、その所有又は保管に係る有価証券の取扱を日本銀行に命ずることができる。
第三十六条 日本銀行は、その取り扱つた国庫金の出納、国債の発行による収入金の収支、第十九条又は第二十一条の規定により交付を受けた資金の収支及び前条の規定により取り扱つた有価証券の受払に関して、会計検査院の検査を受けなければならない。
第三十七条 日本銀行が、国のために取り扱う現金又は有価証券の出納保管に関し、国に損害を与えた場合の日本銀行の賠償責任については、民法及び商法の適用があるものとする。
第七章 出納官吏
第三十八条 出納官吏とは、現金又は物品の出納保管を掌る官吏をいう。
出納官吏は、法令の定めるところにより、現金又は物品を出納保管しなければならない。
第三十九条 出納官吏は、各省各庁の長又はその委任を受けた官吏が、これを命ずる。
各省各庁の長又はその委任を受けた官吏が必要があると認めるときは、前項の出納官吏の事務の全部を代理する代理出納官吏又はその事務の一部を分掌する分任出納官吏を命ずることができる。
第四十条 各省各庁の長は、特に必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、各省各庁の事務員をして現金又は物品の出納保管を分掌せしめることができる。
前項の規定により現金又は物品の出納保管に関する事務の分掌を命ぜられた事務員は、これを出納員という。
第四十一条 出納官吏が、その保管に係る現金又は物品を亡失毀損した場合において、善良な管理者の注意を怠つたときは、弁償の責を免れることができない。但し、各省各庁の長の定めた規程により各省各庁の職員の使用に供した物品の亡失毀損について、合規の監督を怠らなかつたことを証明した場合は、その責に任じない。
出納官吏は、単に自ら事務を執らないことを理由としてその責を免れることができない。但し、代理出納官吏、分任出納官吏又は出納員の行為については、この限りでない。
第四十二条 各省各庁の長は、出納官吏がその保管に係る現金又は物品について、これを亡失毀損したときは、遅滞なく、これを大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。
第四十三条 各省各庁の長は、出納官吏の保管に係る現金又は物品の亡失毀損があつた場合においては、会計検査院の検定前においても、その出納官吏に対して弁償を命ずることができる。
前項の場合において、会計検査院が出納官吏に対し弁償の責がないと検定したときは、その既納に係る弁償金は、直ちに還付しなければならない。
第四十四条 代理出納官吏、分任出納官吏及び出納員は、その行為については、自らその責に任ずる。
第四十五条 出納官吏に関する規定は、出納員について、これを準用する。
第八章 雑則
第四十六条 大蔵大臣は、予算の執行の適正を期するため、各省各庁に対して、収支の実績若しくは見込について報告を徴し、予算の執行状況について実地監査を行い、又は必要に応じ、閣議の決定を経て、予算の執行について必要な指示をなすことができる。
大蔵大臣は、予算の執行の適正を期するため、自ら又は各省各庁の長に委任して、工事の請負契約者、物品の納入者、補助金の交付を受けた者(補助金の終局の受領者を含む。)又は調査、試験、研究等の委託を受けた者に対して、その状況を監査し又は報告を徴することができる。
第四十七条 大蔵省、歳入徴収官、各省各庁の長、第十三条の規定により契約等を行うことを委任された官吏、支出官、出納官吏及び出納員並びに日本銀行は、政令の定めるところにより、帳簿を備え、且つ、報告書及び計算書を作製し、これを大蔵省又は会計検査院に送付しなければならない。
出納官吏、出納員及び日本銀行は、政令の定めるところにより、その出納した歳入金又は歳出金について、歳入徴収官又は支出官に報告しなければならない。
第四十八条 国は、政令の定めるところにより、その歳入、歳出及び契約等に関する事務を、都道府県の吏員をして取り扱わしめることができる。
前項の規定により、歳入、歳出及び契約等に関する事務を取り扱う都道府県の吏員については、歳入徴収官、支出官、第十三条の規定により契約等を行うことを委任された官吏及び出納官吏に関する規定を準用する。
第四十九条 第十五条の規定は、各省各庁の長又はその委任を受けた官吏が、歳出金の支出によらない国庫金の払出をする場合について、これを準用する。
第五十条 この法律施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一条 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第七章及び第四十八条の規定は、日本国憲法施行の日から、これを施行し、第十二条、第十四条及び第二十五条の規定並びにこの法律中国庫金振替書に関する規定施行の日は、各規定について、政令でこれを定める。
第二条 この法律中「政令」とあるのは、日本国憲法施行の日までは、これを「勅令」と読み替えるものとす。
第三条 従前の第一条又は第六条の規定は、昭和二十一年度に属する歳入歳出の出納に関する事務の完結並びに同年度に属する大蔵省証券の発行、借入金の借入及びこれらの償還に関しては、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
第四条 従前の第三十五条乃至第三十七条の規定は、日本国憲法施行の日まで、なお、その効力を有する。
第五条 昭和二十年度歳入歳出の決算については、次の会期において国会に提出することができる。
第六条 国の会計経理に関する事項を調査審議しその結果に基いて会計経理に関する必要な改善措置を内閣に建議させるため、臨時に内閣に会計制度調査会を設置する。
調査会は、会長一人及び委員六人以内で、これを組織する。
会長は大蔵次官を以てこれに充て、委員は会計検査院の官吏の中から一人、各省の官吏の中から二人及び学識経験のある者の中から三人以内を内閣において命ずる。
調査会の事務を整理するため、調査会に、書記若干人を置く。
調査会は各省各庁に対し、その会計経理に関する資料の提出を求め又は報告をさせることができる。
内閣は、第一項の規定により調査会の建議を受けたときは、その建議に基いて、必要な法律案を国会に提出するものとする。この場合においては、調査会の建議に関する文書を参考として添附しなければならない。
調査会の廃止を必要とすることとなつた場合に関し、必要な事項は、法律でこれを定める。
前各項(第六項を除く。)に定めるものの外、調査会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。