(補償金)
第七十三條 農林大臣は、第五十六條第一項前段の認可があつた実施計画による農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事が完了したときは、二月以内に、その農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されたかどうかについて検査を行わなければならない。
2 農林大臣は、前項の検査を行つた場合において、その農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていると認めるときは、遅滞なく、その旨を公示し、その効用が回復されていないと認めるときは、遅滞なく、農林省令、通商産業省令で定める評価基準に従い、なお回復されていないと認められる効用の価額を算定し、その算定の根拠を附してその額を事業団に通知しなければならない。
3 事業団は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、少くとも三回の公告をもつて、当該農地又は農業用施設に係る被害者に対し、一定の期間内に損害賠償請求権の主張をすべき旨を催告しなければならない。但し、その期間は、一月を下つてはならない。
4 前項の公告には、被害者が同項の期間内に主張をしないときは、その損害賠償請求権は除斥されるべき旨を附記しなければならない。但し、事業団は、知れている被害者を除斥することができない。
5 事業団は、知れている被害者には、損害賠償請求権の主張をすべき旨を各別に催告しなければならない。
6 事業団は、第三項の期間の末日から一月以内に、同項の期間内に主張をした被害者に対し、第二項の規定により通知を受けた額を支払わなければならない。
第七十四條 事業団又は被害者は、前條第一項の規定による検査の後一年を経過した場合において、同條第二項の規定による認定又は同項の規定により算定された額が当該農地又は農業用施設の利用の結果に徴し不当であると認めるときは、一回を限り、農林大臣に対し、その農地又は農業用施設について再検査を行うべきことを請求することができる。但し、同條第一項の規定による検査の後三年を経過したときは、この限りでない。
2 農林大臣は、前項の規定による請求があつたときは、遅滞なく、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されたかどうかについて再検査を行わなければならない。
3 農林大臣は、前項の再検査を行つた場合において、前條第二項の規定による認定又は同項の規定により算定した額を変更する必要がないと認めるときは、遅滞なく、その旨を第一項の規定による請求をした者(その請求をした者が被害者であるときは、その請求をした者及び事業団。以下同じ。)に通知し、前條第二項の規定による認定又は同項の規定により算定した額を変更する必要があると認めるときは、遅滞なく、必要な変更をし、その変更の事由を附してその旨を第一項の規定による請求をした者に通知しなければならない。
4 事業団は、前項の規定による通知を受けた場合において、再検査により当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないと認められたため、新たになお回復されていないと認められる効用の価額の支払を要することとなつたときは、遅滞なく、少くとも三回の公告をもつて、当該農地又は農業用施設に係る被害者に対し、一定の期間内に損害賠償請求権の主張をすべき旨を催告しなければならない。
5 前條第三項但書、第四項及び第五項の規定は、前項の規定による催告に準用する。
6 事業団は、第四項の期間の末日から一月以内に、同項の期間内に主張をした被害者に対し、なお回復されていないと認められる効用の価額であつて、第三項の規定による通知があつたものを支払わなければならない。
7 事業団は、第三項の規定による通知を受けた場合において、その通知に係る変更により、前條第六項の規定により支払つた額に過額若しくは不足額を生じ、又は同項の規定により支払を要しないこととなつたときは、当該被害者から過額を徴収し、若しくは当該被害者に対し不足額を支払い、又は当該被害者から同項の規定により支払つた額を徴収しなければならない。
(鉱害賠償責任との関係)
第七十五條 農地又は農業用施設について生じた鉱害であつて、その農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事に係るものは、それぞれ、左に掲げる時に消滅したものとみなす。
一 第七十三條第一項の検査によりその本来有していた効用が回復されていると認められた場合
イ 検査の後三年以内に前條第一項の規定による再検査の請求がなかつたときは、検査の後三年を経過した時
ロ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三條第二項の規定による認定を変更する必要がないと認められたときは、前條第三項の規定による通知があつた時
ハ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められたときは、同條第六項の規定による支払があつた時
二 第七十三條第一項の規定による検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められた場合において、同條第六項の規定による支払があつたとき。
イ 検査の後三年以内に前條第一項の規定による再検査の請求がなかつたときは、検査の後三年を経過した時
ロ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査によりその本来有していた効用が回復されていると認められたとき、又は第七十三條第六項の規定により支払つた額に過額を生じたときは、前條第三項の規定による通知があつた時
ハ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三條第二項の規定による認定を変更する必要がないと認められたときは、前條第三項の規定による通知があつた時
ニ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三條第六項の規定により支払つた額に不足額を生じたときは、前條第七項の規定による支払があつた時
第七十六條 前條に規定する鉱害に係る被害者は、当該復旧工事が完了した時から同條各号に規定する時までは、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないことにより生ずる損害について、賠償義務者に対し、賠償の請求をすることができない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 前條第一号ハ又は第二号ニに規定する場合において、第七十四條第三項の規定による通知があつた日から五月以内に同條第六項又は第七項の規定による支払がなかつたとき。
二 第七十三條第一項の検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められた場合において、同條第三項の期間の末日から四月以内に同條第六項の規定による支払がなかつたとき。
2 前項但書第二号に規定する場合において、第七十三條第三項の期間の末日から四月を経過した後に同條第六項の規定による支払があつたときは、当該被害者は、その支払があつた時から前條第二号に規定する時までは、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないことにより生ずる損害について、賠償義務者に対し、賠償の請求をすることができない。但し、前條第二号ニに規定する場合において、第七十四條第三項の規定による通知があつた日から五月以内に同條第七項の規定による支払がなかつたときは、この限りでない。
(かんがい排水施設の引渡等)
第七十七條 復旧工事の施行者は、農地が本来有していた効用を維持するため復旧工事により新たにかんがい排水施設を設けた場合において、その復旧工事について第七十三條第一項の検査を受けたときは、一月以内に、その施設に係る農地の所有者若しくは占有者又はこれらの者の組織する団体その他適当と認められる者のうちから、その同意を得てその施設の維持管理を行う者を定め、その者にその施設を引き渡さなければならない。
2 復旧工事の施行者(事業団を除く。)は、その復旧工事について第七十三條第一項の検査を受けた後一月以内に前項に規定する者の同意を得ることができないときは、直ちに、事業団に同項に規定する施設を引き渡さなければならない。
3 復旧工事の施行者(事業団を除く。)は、第一項に規定する者に同項に規定する施設を引渡したときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
4 事業団は、前項の規定による通知を受けたときは、三月以内に、第一項の規定により同項に規定する施設の引渡を受けた者に対し、その施設の維持管理に要する費用であつて、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に記載されている金額を支払わなければならない。
(天災時における特別助成)
第七十八條 国は、農地が、その復旧工事の完了後において、こう水等不測の天災に際し他の一般の農地に比し特別の被害を受けたときは、当該農地の所有者又は占有者たる被害者に対し、農林大臣の定める金額の範囲内において特別の助成を行うことができる。
(復旧不適地の処理)
第七十九條 事業団は、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画において復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する農地のうち、第五十一條第一項第一号に掲げる農地に該当するものであつて、その本来有していた効用を回復することが著しく困難なため第五十六條第一項前段の認可があつた実施計画において復旧の目的とならなかつた農地(以下「復旧不適地」という。)がある場合において、農林大臣が農林省令、通商産業省令で定める算定基準に従い、その復旧不適地について支払うべき金額を定めたときは、その復旧不適地の所有者に対し、その定められた金額を支払わなければならない。
2 農林大臣は、前項の規定により復旧不適地について支払うべき金額を定めようとするときは、あらかじめ、当該復旧不適地の所在地の市町村長の意見を聞かなければならない。
3 第一項の規定による支払があつたときは、当該復旧不適地に係る鉱害は、消滅したものとみなす。