臨時石炭鉱害復旧法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年八月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百九十五号
臨時石炭鉱害復旧法
目次
第一章
総則(第一條―第三條)
第二章
鉱害復旧事業団
第一節
総則(第四條―第九條)
第二節
設立(第十條―第十四條)
第三節
管理(第十五條―第三十條)
第四節
業務(第三十一條―第三十七條)
第五節
監督(第三十八條―第四十條)
第六節
解散及び清算(第四十一條―第四十七條)
第三章
農地、農業用施設及び公共施設の復旧工事
第一節
復旧基本計画(第四十八條―第五十四條)
第二節
復旧工事の施行(第五十五條―第六十三條)
第三節
納付金等の徴収及び復旧費の支払(第六十四條―第七十二條)
第四節
農地及び農業用施設に関する復旧工事後の措置(第七十三條―第七十九條)
第四章
家屋等の復旧工事に関する協議及び裁定(第八十條―第八十九條)
第五章
補則(第九十條―第九十九條)
第六章
罰則(第百條―第百六條)
附則
第一章 総則
(目的)
第一條 この法律は、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り、あわせて石炭鉱業及び亜炭鉱業の健全な発達に資するため、鉱害を計画的に復旧することを目的とする。
(用語の定義)
第二條 この法律において「鉱害」とは、石炭鉱業又は亜炭鉱業による鉱害(特別鉱害復旧臨時措置法(昭和二十五年法律第百七十六号)第二條第二項の特別鉱害を除く。)をいう。
2 この法律において「復旧工事」とは、鉱害が生じている土地物件が本来有していた効用を回復するように、その土地物件について施行する工事及びこれに附帯する工事をいう。
3 この法律において「復旧費」とは、当該復旧工事のため直接必要な本工事費、附帯工事費、用地費、補償費、機械器具費、工事雑費並びに事務費の合計額をいい、主務大臣が特別の事情があると認める応急工事費、応急工事に使用する材料であつて、復旧工事に使用できるものに要する費用及び仮締切、瀬替その他復旧工事に必要な仮設工事に要する費用を含むものとする。
4 この法律において「鉱業権者」とは、石炭(亜炭を含む。以下同じ。)を目的とする鉱業権者をいい、「租鉱権者」とは、石炭を目的とする租鉱権者をいう。
5 この法律において「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「農業用施設」とは、農地の利用又は保全上必要な施設であつて、左に掲げるものをいう。
一 かんがい排水施設
二 農業用道路
三 農地又は農作物の災害を防止するため必要な施設
6 この法律において「公共施設」とは、左に掲げる施設であつて、政令で定めるもののうち、国の機関、地方公共団体(その機関を含む。以下同じ。)その他政令で定める者が維持管理を行うものをいう。
一 河川
二 海岸
三 砂防設備
四 林地荒廃防止施設
五 道路
六 林道
七 港湾
八 漁港
九 上水道及び下水道
十 鉄道及び軌道
十一 学校並びに公用及び公共用建物
7 この法律において「家屋等」とは、住家、店舗、工場、倉庫その他の建物(農業用施設又は公共施設たるものを除く。)及びこれらの建物の所有の目的に供される土地並びに墓地をいう。
(処分、手続その他の行為の効力)
第三條 この法律の規定によつてした処分及び鉱業権者、租鉱権者、鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者、第五十二條の受益者、復旧工事の施行者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の承継人に対しても、その効力を有する。
2 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする採掘権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の設定又は租鉱区の増加があつたときは、租鉱権の範囲内において、租鉱権者に対しても、その効力を有する。
3 この法律の規定によつてした処分及び租鉱権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の消滅又は租鉱区の減少があつたときは、石炭を目的とする採掘権の範囲内において、石炭を目的とする採掘権者に対しても、その効力を有する。但し、石炭を目的とする採掘権の消滅による租鉱権の消滅の場合は、この限りでない。
第二章 鉱害復旧事業団
第一節 総則
(目的及び法人格)
第四條 鉱害復旧事業団(以下「事業団」という。)は、鉱害の計画的な復旧に関する業務を行うためこの法律の規定に基き設立される法人とする。
(地域)
第五條 事業団は、政令で定める地域により、その地域ごとに一を限り、設立されるものとする。
(名称の独占)
第六條 事業団は、その名称中に鉱害復旧事業団という文字を用いなければならない。
2 事業団でないものは、その名称中に鉱害復旧事業団という文字を用いてはならない。
(登記)
第七條 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(事業年度)
第八條 事業団の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。
(民法の準用)
第九條 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四條(法人の不法行為能力)及び第五十條(法人の住所)の規定は、事業団に準用する。
第二節 設立
(設立の認可)
第十條 事業団を設立するには、第五條の政令で定める地域内の市町村の長、その地域内に石炭の掘採のための事業場を有する鉱業権者及びその地域内に生じている鉱害に係る被害者(都道府県知事の承認を受けた者に限る。)十人以上が発起人となり、定款を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
2 前項に規定する市町村長、鉱業権者又は被害者は、それぞれ同項の発起人の総数の二分の一以上を占めてはならない。
3 第一項の発起人は、同項の認可を申請するには、あらかじめ、定款作成の基本となるべき事項その他通商産業省令で定める事項を公告して、当該地域内の市町村の長及び当該地域内に石炭の掘採のための事業場を有する鉱業権者のそれぞれ三分の一以上の同意を得なければならない。
4 通商産業大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
第十一條 通商産業大臣は、第五條の政令で定める地域について、その地域が同條の政令で定める地域となつた日から三月以内に前條第一項の認可の申請がないか、又はその期間内になされたいずれの申請についても同項の認可をすることができなかつたときは、同項に規定する者十人以上に、同項の発起人となり、定款を作成し、通商産業大臣の指定する期日までに同項の認可を申請すべきことを命ずることができる。
2 前條第三項の規定は、前項の規定により前條第一項の認可を申請する場合には、適用しない。
(設立事務の引継)
第十二條 第十條第一項の認可があつたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を事業団の理事長に引き継がなければならない。
(成立)
第十三條 理事長は、前條の規定による事務の引継を受けたときは、遅滞なく、設立の登記をしなければならない。
2 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。
(設立費用の負担)
第十四條 事業団が成立したときは、その設立費用であつて、通商産業大臣の承認があつた額以内のものは、その事業団の負担とする。
第三節 管理
(定款)
第十五條 事業団の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 地域
四 事務所の所在地
五 役員に関する事項
六 評議員会に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 会計に関する事項
九 公告の方法
(役員)
第十六條 事業団に、役員として、理事長一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
2 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
3 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、事業団の会計を監査する。
第十七條 理事長及び監事は、評議会が推薦した者のうちから、通商産業大臣が任命する。但し、設立当時の理事長及び監事は、第十條第一項の発起人が推薦した者のうちから、通商産業大臣が任命する。
2 理事は、評議員会の同意を得て、理事長が任命する。
3 理事長、理事及び監事の任期は、四年とする。但し、設立当時の理事長及び監事の任期は、二年とする。
4 理事長、理事及び監事は、再任されることができる。
第十八條 理事長は、理事が第二十五條各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、評議員会の同意を得て、これを解任することができる。
(評議員会)
第十九條 事業団に、評議員会を置く。
2 評議員会は、理事長及び十人以上の評議員をもつて組織する。
3 評議員会に議長を置き、理事長をもつてこれに充てる。
4 議長は、評議員会の会務を総理する。
5 評議員会は、あらかじめ、次條第一項第三号に掲げる者のうちから任命された評議員のうちから、議長に事故がある場合に議長の職務を代行する者を定めておかなければならない。
(評議員)
第二十條 評議員は、左に掲げる者のうちから、通商産業大臣が任命する。
一 事業団の地域内に石炭の掘採を目的とする事業場を有する鉱業権者及び租鉱権者
二 事業団の地域内に生じている鉱害に係る被害者であつて、都道府県知事が推薦した者及び事業団の地域内に存する公共施設であつて、鉱害が生じているものの維持管理を行う地方公共団体の職員であつて、その公共施設の維持管理に関する事務に従事するもの
三 事業団の地域の全部又は一部を管轄する地方公共団体の長又はその職員(前号に掲げるものを除く。)及び鉱害の復旧に関し学識経験がある者
2 評議員の任命に当つては、前項各号に掲げる者のうちからそれぞれ任命される評議員の数が評議員の総数の二分の一以上を占めることとなつてはならない。
第二十一條 評議員の任期は、三年とする。
2 評議員は、再任されることができる。
第二十二條 評議員は、報酬を受けない。但し、旅費その他業務の遂行に伴う実費を受けるものとする。
(評議員会の権限)
第二十三條 左の事項は、評議員会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 経費等の賦課徴収の方法
三 業務の方法の決定及び変更
四 借入金の借入及び復旧事業債券の発行
五 会計の処理に関する規程の設定及び変更
六 収支予算及び収支決算
七 復旧基本計画の作成及び変更
2 定款の変更は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(評議員会の議決の方法)
第二十四條 評議員会は、第二十條第一項各号に掲げる者のうちからそれぞれ任命された評議員各一人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 評議員会の議事は、出席した評議員の過半数をもつて決する。可否同数のときは、議長が決する。
(役員等の欠格條項)
第二十五條 左の各号の一に該当する者は、役員又は評議員となることができない。
一 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた後、三年を経過しない者
二 国家公務員(教育公務員たる者及び審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて非常勤のものを除く。)
三 政党の役員
(理事長等の兼職禁止)
第二十六條 理事長及び理事は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(役員等の秘密保持義務)
第二十七條 事業団の役員、評議員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は窃用してはならない。
(経費等の賦課)
第二十八條 事業団は、通商産業大臣の認可を受けて、その設立費用であつて、事業団の負担となるもの、経費(第三十一條第一項第三号に掲げる業務を行うため必要なもの並びに同項第五号及び第六号の支払に充てるべきものを除く。以下「事務経費」という。)及び準備金に充てるため、設立の日の属する事業年度(設立の日が七月一日以降である場合において、通商産業大臣の認可を受けたときは、その設立の日の属する事業年度及びその翌事業年度。以下「当初年度」という。)において、その地域内に生じている鉱害に係る鉱業権者又は租鉱権者に対し、設立の日の前前月以前当初年度と同じ期間(その期間に一月未満の端数があるときは、その端数を控除したもの)内にその鉱害に係る事業場において掘採した石炭の数量一トンにつき五円以内の金額を賦課徴収することができる。
2 事業団は、通商産業大臣の認可を受けて、その事務経費及び準備金に充てるため、当初年度後の毎事業年度において、鉱業権者及び租鉱権者に対し、前事業年度(当初年度の翌事業年度にあつては、当初年度)中にその復旧費の全部又は一部を事業団が負担して施行した復旧工事のうちその鉱業権者又は租鉱権者に係る鉱害の復旧のため必要となつたものの復旧費に、百分の七以内の割合を乗じて得た金額を賦課徴収することができる。
3 事業団は、第一項の規定により賦課徴収した金額に相当する金額を、当初年度の翌事業年度から五年以内に、当該鉱業権者又は租鉱権者に交付しなければならない。
(定款等の備付)
第二十九條 事業団は、定款及び業務の方法を記載した書面を主たる事務所及び従たる事務所に備えて置かなければならない。
2 事業団は、事業団の業務に利害関係がある者から、前項に規定する書類の閲覧の請求があつたときは、正当な事由がある場合を除き、これを拒んではならない。
(民法の準用)
第三十條 民法第五十四條(代表権の制限)及び第五十七條(特別代理人)の規定は、事業団に準用する。
第四節 業務
(業務)
第三十一條 事業団は、第四條の目的を達成するため、左の業務を行う。
一 鉱害(家屋等について生じたものを除く。)の復旧のための復旧基本計画の作成
二 鉱業権者及び租鉱権者の納付金並びに受益者の負担金の徴収
三 事業団が復旧工事の施行者として定められた場合において、その復旧工事の施行
四 第七十七條第二項の規定により引渡を受けたかんがい排水施設及び事業団が復旧工事を施行した場合において同條第一項に規定する同意を得ることができなかつたときにおけるそのかんがい排水施設の維持管理
五 事業団以外の者が施行する復旧工事の復旧費のうち、事業団の負担となるものの支払
六 鉱害に係る農地及び農業用施設に対する補償金並びに復旧工事により新たに設けられるかんがい排水施設の維持管理費の支払
七 地域区の家屋等の復旧工事に要する費用の貸付
八 前各号の業務に附帯する業務
九 前各号に掲げるものの外、第四條の目的を達成するため必要な業務
2 事業団は、前項第九号の業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(業務の方法)
第三十二條 事業団は、業務開始の際、業務の方法を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務の方法には、前條第一項第一号の復旧基本計画の作成の方法、同項第二号の納付金の徴収の時期及び方法、同項第五号の支払の時期及び方法並びに同項第七号の貸付の相手方、限度、方法、利率及び期限を定めておかなければならない。
(予算)
第三十三條 事業団は、事業年度開始前に(設立の日の属する事業年度にあつては、設立後すみやかに)、毎事業年度の収支予算を作成し、これを通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(借入金及び復旧事業債券)
第三十四條 事業団は、その業務を行うため必要があるときは、通商産業大臣の認可を受けて、借入金の借入をすることができる。
2 事業団は、第三十一條第一項第三号に掲げる業務を行うため必要な資金に充てるため、通商産業大臣の認可を受けて、復旧事業債券を発行することができる。
3 前項の復旧事業債券の発行及び償還に関し必要な事項は、政令で定める。
(準備金)
第三十五條 事業団は、定款で定める額に達するまでは、第二十八條第一項又は第二項の規定により徴収した金額の二十分の一以上を準備金として積み立てなければならない。
2 前項の準備金は、通商産業大臣の認可を受けなければ、処分してはならない。
(財産目録等)
第三十六條 事業団は、毎事業年度経過後三月以内に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、これを通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(資料の提出の請求)
第三十七條 事業団は、第三十一條第一項第一号、第二号及び第六号に掲げる業務を行うため必要があるときは、その地域内に石炭の掘採を目的とする事業場を有する鉱業権者若しくは租鉱権者若しくはその鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者、その地域内に生じている鉱害に係る被害者又は第五十二條の受益者となるべき者に対し、資料の提出を求めることができる。
2 前項の規定により資料の提出を求められた者は、遅滞なく、これを提出しなければならない。
第五節 監督
(監督)
第三十八條 事業団は、通商産業大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、事業団の報告又は第四十條第一項の規定による検査の結果に基き、事業団に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(役員等の解任)
第三十九條 通商産業大臣は、理事長、監事又は評議員が第二十五條各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 通商産業大臣は、理事長、監事若しくは評議員が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長、監事若しくは評議員に職務上の義務違反その他理事長、監事若しくは評議員たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
3 通商産業大臣は、評議員が第二十條第一項の規定による資格を失つたと認めるときは、これを解任することができる。
(報告及び検査)
第四十條 通商産業大臣は、必要があると認めるときは、事業団から報告を徴し、又はその職員に事業団の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六節 解散及び清算
(解散)
第四十一條 事業団は、左の事由によつて解散する。
一 事業団の地域内の市町村の長の三分の二並びにその地域内に石炭の掘採を目的とする事業場を有する鉱業権者及び租鉱権者の三分の二以上の者の請求
二 破産
三 事業団の目的が達成されたと認められる場合における通商産業大臣の解散の命令
2 前項第一号の請求は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつたときは、公聴会を開き、広く一般の意見をきくとともに、事業団の意見をきかなければならない。
4 通商産業大臣は、第一項第三号の命令をしようとするときは、公聴会を開き、広く一般の意見をきかなければならない。
(清算人)
第四十二條 事業団が解散したときは、破産による場合を除いては、理事長がその清算人となる。但し、通商産業大臣が公益上必要があると認めて他の者を選任したときは、この限りでない。
2 清算人が欠けたときは、通商産業大臣が清算人を選任する。
3 通商産業大臣は、公益上必要があると認めるときは、清算人を解任することができる。
(清算事務の監督)
第四十三條 清算人は、就職の後、遅滞なく、事業団の財産の現況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作り、財産処分の方法を定め、これを通商産業大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
(残余財産の処分の制限)
第四十四條 清算人は、事業団の債務を弁済した後でなければ、その残余財産を処分することができない。
(残余財産の帰属)
第四十五條 残余財産は、事業団が第二十八條第二項の規定による賦課徴収をした者に対し、その賦課徴収した額に応じて分配しなければならない。
(決算報告書)
第四十六條 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく、決算報告書を作り、これを通商産業大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 前項の決算報告書には、清算に関する重要な書類、事業団の帳簿及びその業務に関する重要な書類を添附しなければならない。
(民法の準用)
第四十七條 民法第七十三條(清算法人)及び第七十八條から第八十一條まで(清算人の職務権限、債権申出の公告及び催告、債務超過による破産)の規定は、事業団に準用する。
第三章 農地、農業用施設及び公共施設の復旧工事
第一節 復旧基本計画
(復旧基本計画)
第四十八條 事業団は、毎事業年度開始前に、(設立の日の属する事業年度にあつては、設立後すみやかに)、そこに生じている鉱害を復旧することが必要且つ適当であると認められる地区をその事業年度において復旧工事(家屋等の復旧を目的とするものを除く。以下この章において同じ。)に着手すべき地区として選定し、その地区内に生じている鉱害に係る復旧工事の概要、その復旧工事の復旧費、第七十三條第二項の規定により算定されるべき額及びその復旧工事により新たに設けられるかんがい排水施設の維持管理費(以下「復旧費等」という。)並びに復旧費等の負担区分を記載した復旧基本計画を作成し、これを通商産業大臣に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 事業団は、前項の復旧基本計画を作成し、又は変更するには、あらかじめ、都道府県知事の承認を受けなければならない。但し、復旧基本計画の変更について第六十六條第二項の規定により都道府県知事の同意を得たときは、この限りでない。
3 通商産業大臣は、必要があると認めるときは、第一項の認可をする場合においてその申請に係る事項を変更して認可し、又は同項の認可をした事項を変更することができる。
4 通商産業大臣は、第一項の認可又は前項の規定による変更をしようとするときは、主務大臣の同意を得なければならない。
第四十九條 前條第一項の復旧費等の負担区分には、復旧工事ごとに、次條第一項の規定により納付金を納付すべき者及び第五十二條又は第五十三條の規定により復旧費を負担すべき者並びにその見込納付金額及び負担額を記載し、且つ、当該復旧基本計画には、負担区分に関するこれらの者の同意書(その同意を得ることができなかつたときは、その事由を記載した書面)を添附しなければならない。
(賠償義務者の納付金)
第五十條 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第百九條又は鉱業法施行法(昭和二十五年法律第二百九十号)第三十五條第二項若しくは第三項の規定により鉱害を賠償する責に任ずべき者(以下「賠償義務者」という。)であつて、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画(同項後段の規定による変更の認可又は同條第三項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に生じている鉱害に係るものは、その復旧基本計画に記載された復旧工事に係る復旧費等又は第七十九條第一項の規定により事業団が支払う金額に充てるため、事業団に対し、納付金を納付しなければならない。
2 鉱業法第百十條(負担部分と償還請求)の規定は、前項の規定による納付金の納付義務に準用する。
第五十一條 前條第一項の納付金の額は、左に掲げる金額とする。
一 鉱害が生じたことにより効用が減少したため鉱害が生じた後における農作物の収穫高が鉱害が生ずる前の収穫高の十分の三を下るに至つた農地については、土地台帳法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第二百二十七号)による改正前の土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)による賃貸価格であつて、昭和二十五年七月三十日現在のもの(当該賃貸価格がない農地にあつては、その本来有していた効用と同等の効用を有する農地の賃貸価格を参考とし、通商産業大臣の認可を受けて事業団が定める価格とし、当該賃貸価格が鉱害が生じたことにより修正されているためこれによることが不相当と認められる農地にあつては、事業団が通商産業大臣の認可を受けたときは、その修正前のものとする。)(以下「基準賃貸価格」という。)に、二千を下らず五千をこえない範囲内において、都道府県別に政令で定める倍数を乗じて得た金額
二 前号に掲げる農地以外の農地であつて、鉱害が生じたことにより効用が減少したため、鉱害が生じた後における農作物の収穫高が鉱害が生ずる前の収穫高より減少するに至つたものについては、収穫高の減少の割合による区分ごとに、基準賃貸価格に、前号の政令で定める倍数をこえない範囲内において政令で定める倍数を乗じて得た金額
三 前二号の規定にかかわらず、一の復旧工事において復旧の目的となつている農地であつて、これらに係る復旧費等の合計額(その利用又は保全上必要な農業用施設の復旧費等を含み、第五十二條の負担金の額を控除した残額とする。以下この條において同じ。)がこれらについて前二号の規定により算出した額の合計額以下であるものについては、その復旧費等の合計額に、前二号の規定により算出した額のその合計額に対する割合を乗じて得た額
四 鉱害が生じているにかかわらず、これにより農作物の収穫高が減少するに至つていない農業用施設については、その復旧費等の額から国及び都道府県の補助金の額並びに第五十二條の負担金の額を控除した残額
五 農地及び農業用施設以外の土地物件については、その復旧費の額から国の補助金及び負担金並びに第五十二條の負担金を控除した残額
六 第一号の規定にかかわらず、第七十九條第一項に規定する農地については、同項の規定により定められる金額
2 賠償義務者であつて、第四十八條第一項前段の規定による復旧基本計画の認可があるまでに、鉱業法第百九條又は旧鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)第七十四條ノ二の規定による損害の一部を既に賠償している者は、その旨を事業団に申し出ることができる。
3 事業団は、前項の申出を受けた場合において、その申出をした者の納付金の額を減ずることが相当であると認めるときは、第四十八條第一項の復旧費等の負担区分に記載した見込納付金額を変更しなければならない。
(受益者の負担)
第五十二條 復旧工事の施行の結果利益を受ける者があるときは、その受益者は、その利益を受ける限度において、復旧費の一部に充てるため、事業団に対し、負担金を納付しなければならない。
(地方公共団体の負担)
第五十三條 地方公共団体は、第六十六條第二項の同意をした場合において、当該復旧基本計画について第四十八條第一項後段の規定による変更の認可があつたときは、前條の規定による外、その地方公共団体が維持管理を行う公共施設の復旧費について、政令で定める割合を負担しなければならない。
(復旧基本計画の公示等)
第五十四條 通商産業大臣は、第四十八條第一項前段の規定により復旧基本計画の認可をしたときは、当該復旧基本計画に復旧工事に着手すべき地区として記載された地区を公示しなければならない。その地区について同項後段の規定による変更の認可又は同條第三項の規定による変更をしたときも、同様とする。
2 事業団は、第四十八條第一項前段の規定により復旧基本計画の認可を受けたときは、復旧費等の負担区分に記載された見込納付金額又は負担額を、それらの金額を納付し、又は負担すべき者に通知しなければならない。見込納付金額又は負担額について、同項後段の規定による変更の認可又は同條第三項の規定による変更があつたときも、同様とする。
第二節 復旧工事の施行
(復旧工事の施行者)
第五十五條 復旧工事の施行者は、他の法令に定があるときは、それによるものとする。この場合において、主務大臣は、その法令の規定により賠償義務者に復旧工事を施行させることができるときは、その賠償義務者に代えて事業団にその復旧工事を施行させることができる。
2 前項に規定する場合の外、第四十八條第一項の復旧費等の負担区分において一の復旧工事に係る賠償義務者の見込納付金額がその復旧工事に係る復旧費等の額と同額となつている場合において、賠償義務者が前條第二項の規定による通知を受けた日から二月以内に主務大臣に申し出たときは、復旧工事の施行者は、その賠償義務者とする。但し、その施行が他の復旧工事の施行と密接な関係がある場合又はその賠償義務者がその申出をした日から三月以内に復旧工事に着手しない場合において、主務大臣が事業団その他適当と認める者を施行者と定めたときは、この限りでない。
3 前二項に規定する場合の外、復旧工事の施行者は、事業団その他主務大臣が適当と認めて指定する者とする。
(実施計画の認可)
第五十六條 復旧工事(主務大臣が施行する工事を除く。)の施行者(前條第二項本文の規定による復旧工事の施行者を除く。)は、主務大臣が第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基いてする指示に従い、復旧工事の実施計画及びこれに係る復旧費等につき、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の実施計画が農地の復旧を目的とするものである場合においては、当該復旧工事の施行者が当該実施計画を作成するには、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画において復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する農地のうち、第五十一條第一項第一号に掲げる農地に該当するものであつて、その本来有していた効用を回復することが著しく困難なため復旧の目的としない農地があるときは、あらかじめ、その所在地の市町村長の意見を聞かなければならない。
3 前條第二項本文の規定による復旧工事の施行者は、復旧工事に着手する前に、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基いて、復旧工事の実施計画を作成し、遅滞なく、これを主務大臣に届け出るとともに、事業団に通知しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 第一項の実施計画が農地又は農業用施設の復旧を目的とするものであるときは、同項の認可を申請する実施計画には、復旧工事の施行によりその農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復される見込を記載した書面及びその鉱害に係る被害者の同意書(その同意を得ることができなかつたときは、その事由を記載した書面)を添附しなければならない。
第五十七條 主務大臣は、前條第一項前段の認可の申請があつたときは、その旨を公示し、二十日以上の期間を定めて、その申請に係る実施計画を縦覧に供しなければならない。
2 実施計画の基本となつている復旧基本計画に復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する土地物件(家屋等を除く。)であつて、鉱害が生じているものの所有者その他その土地物件に関し権利を有する者及びその地区内に生じている鉱害に係る賠償義務者は、実施計画について異議があるときは、主務大臣に対し、異議の申立をすることができる。但し、前項に規定する縦覧期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
3 主務大臣は、前項の規定による異議の申立があつたときは、第一項に規定する縦覧期間満了後二月以内に決定をしなければならない。
4 主務大臣は、第二項の規定による異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合において、そのすべてについて前項の規定による決定をした後でなければ、前條第一項前段の認可をしてはならない。
第五十八條 主務大臣は、必要があると認めるときは、第五十六條第一項の認可をする場合においてその申請に係る事項を変更して認可し、又は同項の認可をした事項を変更することができる。
2 主務大臣は、前項の規定により申請に係る事項を変更して認可し、又は同項の規定による変更をしようとする場合において、その認可又は変更後における実施計画が第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基かないものとなるときは、通商産業大臣の同意を得なければならない。
3 通商産業大臣は、前項の同意をしたときは、第四十八條第一項の認可をした復旧基本計画について、同條第三項の規定による変更をしなければならない。
第五十九條 主務大臣は、事業団以外の者が施行者となつている復旧工事の実施計画について、第五十六條第一項の認可をしたとき、又は前條第一項の規定による変更をしたときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
(工事施行の義務)
第六十條 第五十六條第一項前段に規定する復旧工事の施行者は、同項前段の認可があつた実施計画(同項後段の規定による変更の認可又は第五十八條第一項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に従つて、復旧工事を施行しなければならない。
2 主務大臣は、第五十六條第一項前段に規定する復旧工事の施行者が同項前段の認可があつた実施計画に従つて復旧工事を施行しない場合において、必要があると認めるときは、同項前段の認可を取り消すことができる。
3 主務大臣は、前項の規定による認可の取消をしたときは、その旨を事業団に通知しなければならない。
(所有者等の協力)
第六十一條 第五十六條第一項前段の認可があつた実施計画において復旧の目的となつている土地物件の所有者及び占有者は、前條第一項の復旧工事の施行者の義務の遂行を妨げてはならない。
(工事完了の届出)
第六十二條 第五十六條第一項前段及び第三項に規定する復旧工事の施行者は、その復旧工事を完了したときは、十日以内に主務大臣にその旨を届け出なければならない。
(主務大臣の施行する復旧工事)
第六十三條 主務大臣は、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基き復旧工事を施行する場合において、その復旧工事に着手したときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
第三節 納付金等の徴収及び復旧費の支払
(納付金等の納付期日)
第六十四條 賠償義務者又は第五十二條の受益者が第五十條第一項又は第五十二條の規定により納付金又は負担金を納付すべき期日は、第五十九條又は前條の規定による通知(事業団が復旧工事の施行者であるときは、第五十六條第一項前段の認可。以下この條において同じ。)があつた日(第五十九條又は前條の規定による通知があつた日以後に復旧基本計画について第四十八條第一項後段の規定による変更の認可又は同條第三項の規定による変更があつたため新たに第五十條第一項又は第五十二條の規定により納付金又は負担金を納付すべきこととなつた者にあつては、その変更の認可又は変更があつた日)以後において事業団が定める期日とする。
(納付金等を徴収しない場合)
第六十五條 賠償義務者であつて、第五十五條第二項の規定により復旧工事の施行者となつたものは、第五十條第一項の規定にかかわらず、その復旧工事について、同項の納付金を納付することを要しない。
2 第五十二條の受益者たる地方公共団体であつて、その維持管理を行う公共施設について復旧工事を施行するものは、同條の規定にかかわらず、その復旧工事について、同條の負担金を納付することを要しない。
第六十六條 事業団は、賠償義務者若しくは第五十二條の受益者が事業の廃止若しくは休止、災害その他の事由により資力を有しなくなつたため、第五十條第一項の納付金若しくは第五十二條の負担金を納付することが著しく困難であると認められるとき、又は賠償義務者の所在が不分明であるときは、その納付金又は負担金に係る復旧基本計画について、第四十八條第一項後段の規定による変更の認可を申請しなければならない。
2 事業団は、公共施設の復旧費に充てるべき納付金又は負担金について前項の規定による認可の申請をしようとするときは、あらかじめ、その維持管理を行う地方公共団体の同意を得なければならない。
3 第一項の場合において、第四十八條第一項後段の規定による変更の認可があつたときは、当該賠償義務者又は第五十二條の受益者は、第五十條第一項又は第五十二條の規定にかかわらず、その変更後の金額と変更前の金額との差額に相当する納付金又は負担金を納付することを要しない。
(納付金等の返還)
第六十七條 賠償義務者又は第五十二條の受益者が第五十條第一項又は第五十二條の規定により納付金又は負担金を納付した後において復旧基本計画について第四十八條第一項後段の規定による変更の認可又は同條第三項の規定による変更があつたためこれらの者が第五十條第一項又は第五十二條の規定により納付すべき額がその既に納付した額より小となるに至つたときは、事業団は、遅滞なく、これらの者に対しその差額を返還しなければならない。
(復旧費の支払)
第六十八條 事業団は、第五十六條第一項前段の認可を受けた復旧工事の施行者から支払の請求を受けたときは、第三十二條第一項の認可を受けた業務の方法に定めるところに従い、第五十六條第一項前段の認可があつたその復旧工事の復旧費(同項後段の規定による変更の認可又は第五十八條第一項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に充てるべき第五十條第一項の納付金又は第五十二條の負担金として事業団が徴収すべき金額を支払わなければならない。但し、その額がその復旧工事の復旧費に充てるべき第五十條第一項の納付金又は第五十二條の負担金の額のうち、その請求の時までに事業団が徴収した額をこえるときは、そのこえる額については、通商産業大臣の認可を受けた額に限る。
2 事業団は、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基き施行する復旧工事に着手した主務大臣から支払の請求を受けたときは、第三十二條第一項の認可を受けた業務の方法に定めるところに従い、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に記載されているその復旧工事の復旧費に充てるべき第五十條第一項の納付金又は第五十二條の負担金として事業団が徴収すべき金額を支払わなければならない。
3 第一項但書の規定は、前項の場合に準用する。
(復旧費の返還)
第六十九條 第五十六條第一項前段に規定する復旧工事の施行者は、その復旧工事の復旧費に剰余を生じたときは、前條第一項の規定により支払を受けた金額のうち、主務大臣が定める金額を事業団に返還しなければならない。
2 事業団は、第六十條第二項の規定による認可の取消があつたときは、その者に対し、前條第一項の規定により支払つた金額のうち、主務大臣が第六十條第一項の規定に従つて施行された復旧工事に要したものでないと認める金額を返還させることができる。
(強制徴収)
第七十條 事業団は、第二十八條第一項若しくは第二項の規定により賦課徴収する金額(以下「賦課金」という。)、第五十條第一項の納付金、第五十二條の負担金又は前條の規定による返還金を支払うべき者が納期限までにその金額を支払わないときは、期限を指定して、これを督促しなければならない。
2 事業団は、前項の規定により督促をするときは、同項に規定する者に対し、督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。
第七十一條 前條第一項の規定による督促を受けた者(地方公共団体を除く。)がその指定の期限までに賦課金、第五十條第一項の納付金、第五十二條の負担金、第六十九條の規定による返還金その他この法律の規定による徴収金を支払わないときは、市町村(特別区のある地においては、特別区。以下同じ。)は、事業団の請求により、地方税の滞納処分の例により、これを処分する。この場合は、事業団は、その徴収金額の百分の四を市町村に交付しなければならない。
2 市町村が前項の請求を受けた日から一月以内にその処分に着手せず、又は三月以内にこれを終了しないときは、事業団は、地方税の滞納処分の例により、通商産業大臣の認可を受けて、その処分をすることができる。
3 前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、市町村の徴収金に次ぐものとし、その時効については、市町村税の例による。
第七十二條 事業団は、第七十條第一項の規定により督促をしたときは、賦課金、第五十條第一項の納付金、第五十二條の負担金又は第六十九條の規定による返還金の金額百円につき一日八銭の割合で、納期限の翌日からその完納又は財産差押の日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。但し、通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
第四節 農地及び農業用施設に関する復旧工事後の措置
(補償金)
第七十三條 農林大臣は、第五十六條第一項前段の認可があつた実施計画による農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事が完了したときは、二月以内に、その農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されたかどうかについて検査を行わなければならない。
2 農林大臣は、前項の検査を行つた場合において、その農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていると認めるときは、遅滞なく、その旨を公示し、その効用が回復されていないと認めるときは、遅滞なく、農林省令、通商産業省令で定める評価基準に従い、なお回復されていないと認められる効用の価額を算定し、その算定の根拠を附してその額を事業団に通知しなければならない。
3 事業団は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、少くとも三回の公告をもつて、当該農地又は農業用施設に係る被害者に対し、一定の期間内に損害賠償請求権の主張をすべき旨を催告しなければならない。但し、その期間は、一月を下つてはならない。
4 前項の公告には、被害者が同項の期間内に主張をしないときは、その損害賠償請求権は除斥されるべき旨を附記しなければならない。但し、事業団は、知れている被害者を除斥することができない。
5 事業団は、知れている被害者には、損害賠償請求権の主張をすべき旨を各別に催告しなければならない。
6 事業団は、第三項の期間の末日から一月以内に、同項の期間内に主張をした被害者に対し、第二項の規定により通知を受けた額を支払わなければならない。
第七十四條 事業団又は被害者は、前條第一項の規定による検査の後一年を経過した場合において、同條第二項の規定による認定又は同項の規定により算定された額が当該農地又は農業用施設の利用の結果に徴し不当であると認めるときは、一回を限り、農林大臣に対し、その農地又は農業用施設について再検査を行うべきことを請求することができる。但し、同條第一項の規定による検査の後三年を経過したときは、この限りでない。
2 農林大臣は、前項の規定による請求があつたときは、遅滞なく、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されたかどうかについて再検査を行わなければならない。
3 農林大臣は、前項の再検査を行つた場合において、前條第二項の規定による認定又は同項の規定により算定した額を変更する必要がないと認めるときは、遅滞なく、その旨を第一項の規定による請求をした者(その請求をした者が被害者であるときは、その請求をした者及び事業団。以下同じ。)に通知し、前條第二項の規定による認定又は同項の規定により算定した額を変更する必要があると認めるときは、遅滞なく、必要な変更をし、その変更の事由を附してその旨を第一項の規定による請求をした者に通知しなければならない。
4 事業団は、前項の規定による通知を受けた場合において、再検査により当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないと認められたため、新たになお回復されていないと認められる効用の価額の支払を要することとなつたときは、遅滞なく、少くとも三回の公告をもつて、当該農地又は農業用施設に係る被害者に対し、一定の期間内に損害賠償請求権の主張をすべき旨を催告しなければならない。
5 前條第三項但書、第四項及び第五項の規定は、前項の規定による催告に準用する。
6 事業団は、第四項の期間の末日から一月以内に、同項の期間内に主張をした被害者に対し、なお回復されていないと認められる効用の価額であつて、第三項の規定による通知があつたものを支払わなければならない。
7 事業団は、第三項の規定による通知を受けた場合において、その通知に係る変更により、前條第六項の規定により支払つた額に過額若しくは不足額を生じ、又は同項の規定により支払を要しないこととなつたときは、当該被害者から過額を徴収し、若しくは当該被害者に対し不足額を支払い、又は当該被害者から同項の規定により支払つた額を徴収しなければならない。
(鉱害賠償責任との関係)
第七十五條 農地又は農業用施設について生じた鉱害であつて、その農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事に係るものは、それぞれ、左に掲げる時に消滅したものとみなす。
一 第七十三條第一項の検査によりその本来有していた効用が回復されていると認められた場合
イ 検査の後三年以内に前條第一項の規定による再検査の請求がなかつたときは、検査の後三年を経過した時
ロ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三條第二項の規定による認定を変更する必要がないと認められたときは、前條第三項の規定による通知があつた時
ハ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められたときは、同條第六項の規定による支払があつた時
二 第七十三條第一項の規定による検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められた場合において、同條第六項の規定による支払があつたとき。
イ 検査の後三年以内に前條第一項の規定による再検査の請求がなかつたときは、検査の後三年を経過した時
ロ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査によりその本来有していた効用が回復されていると認められたとき、又は第七十三條第六項の規定により支払つた額に過額を生じたときは、前條第三項の規定による通知があつた時
ハ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三條第二項の規定による認定を変更する必要がないと認められたときは、前條第三項の規定による通知があつた時
ニ 前條第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三條第六項の規定により支払つた額に不足額を生じたときは、前條第七項の規定による支払があつた時
第七十六條 前條に規定する鉱害に係る被害者は、当該復旧工事が完了した時から同條各号に規定する時までは、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないことにより生ずる損害について、賠償義務者に対し、賠償の請求をすることができない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 前條第一号ハ又は第二号ニに規定する場合において、第七十四條第三項の規定による通知があつた日から五月以内に同條第六項又は第七項の規定による支払がなかつたとき。
二 第七十三條第一項の検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められた場合において、同條第三項の期間の末日から四月以内に同條第六項の規定による支払がなかつたとき。
2 前項但書第二号に規定する場合において、第七十三條第三項の期間の末日から四月を経過した後に同條第六項の規定による支払があつたときは、当該被害者は、その支払があつた時から前條第二号に規定する時までは、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないことにより生ずる損害について、賠償義務者に対し、賠償の請求をすることができない。但し、前條第二号ニに規定する場合において、第七十四條第三項の規定による通知があつた日から五月以内に同條第七項の規定による支払がなかつたときは、この限りでない。
(かんがい排水施設の引渡等)
第七十七條 復旧工事の施行者は、農地が本来有していた効用を維持するため復旧工事により新たにかんがい排水施設を設けた場合において、その復旧工事について第七十三條第一項の検査を受けたときは、一月以内に、その施設に係る農地の所有者若しくは占有者又はこれらの者の組織する団体その他適当と認められる者のうちから、その同意を得てその施設の維持管理を行う者を定め、その者にその施設を引き渡さなければならない。
2 復旧工事の施行者(事業団を除く。)は、その復旧工事について第七十三條第一項の検査を受けた後一月以内に前項に規定する者の同意を得ることができないときは、直ちに、事業団に同項に規定する施設を引き渡さなければならない。
3 復旧工事の施行者(事業団を除く。)は、第一項に規定する者に同項に規定する施設を引渡したときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
4 事業団は、前項の規定による通知を受けたときは、三月以内に、第一項の規定により同項に規定する施設の引渡を受けた者に対し、その施設の維持管理に要する費用であつて、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に記載されている金額を支払わなければならない。
(天災時における特別助成)
第七十八條 国は、農地が、その復旧工事の完了後において、こう水等不測の天災に際し他の一般の農地に比し特別の被害を受けたときは、当該農地の所有者又は占有者たる被害者に対し、農林大臣の定める金額の範囲内において特別の助成を行うことができる。
(復旧不適地の処理)
第七十九條 事業団は、第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画において復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する農地のうち、第五十一條第一項第一号に掲げる農地に該当するものであつて、その本来有していた効用を回復することが著しく困難なため第五十六條第一項前段の認可があつた実施計画において復旧の目的とならなかつた農地(以下「復旧不適地」という。)がある場合において、農林大臣が農林省令、通商産業省令で定める算定基準に従い、その復旧不適地について支払うべき金額を定めたときは、その復旧不適地の所有者に対し、その定められた金額を支払わなければならない。
2 農林大臣は、前項の規定により復旧不適地について支払うべき金額を定めようとするときは、あらかじめ、当該復旧不適地の所在地の市町村長の意見を聞かなければならない。
3 第一項の規定による支払があつたときは、当該復旧不適地に係る鉱害は、消滅したものとみなす。
第四章 家屋等の復旧工事に関する協議及び裁定
(家屋等の復旧に関する届出等)
第八十條 鉱害が生じている家屋等に係る賠償義務者は、事業年度ごとに、通商産業省令の定めるところにより、当該事業年度において復旧工事を行おうとする家屋等を通商産業局長に届け出なければならない。
2 通商産業局長は、特に必要があると認めるときは、鉱害が生じている家屋等に係る賠償義務者に対し、家屋等の復旧を目的とする復旧工事に関する復旧計画の提出を命ずることができる。
(被害者の申出)
第八十一條 鉱害が生じている家屋等の所有者又は占有者たる被害者は、その鉱害により家屋等の効用が著しく阻害されている場合又は第四十八條第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基く復旧工事の施行に伴い家屋等の復旧を目的とする復旧工事を施行することが必要となつた場合においては、通商産業省令の定めるところにより、その家屋等の復旧を目的とする復旧工事に関し、その家屋等の所在地の市町村長を経由して、通商産業局長に対し、賠償義務者との協議のあつ旋を申し出ることができる。但し、その家屋等に生じている鉱害の賠償に関し、確定判決があつたとき、又は訴訟が係属し、若しくは調停手続が行われているときは、この限りでない。
2 鉱害が生じている家屋等の占有者が前項の申出をするには、あらかじめ、その家屋等の所有者の同意を得なければならない。
3 第一項の規定により市町村長を経由する場合において、当該市町村長は、その家屋等の復旧を目的とする復旧工事を特に必要と認めるときは、その理由を記載した意見書を附さなければならない。
(協議命令及び協議のあつ旋)
第八十二條 通商産業局長は、前條の規定による申出があつた場合において、当該申出に係る家屋等の復旧工事が第八十條第一項の規定による届出があつた家屋等に係るものについては、すみやかに、当事者に対し、期限を定めて、当該復旧工事の施行に関し協議すべき旨を命ずることができる。
2 通商産業局長は、前條の規定による申出があつた場合において、当該申出に係る家屋等の復旧工事が第八十條第一項の規定による届出があつた家屋等に係るものでないものについても、特に必要があると認めるときは、当該賠償義務者と当該申出者のために、当該申出に係る家屋等の復旧工事の施行に関し協議のあつ旋をしなければならない。
3 通商産業局長は、前項の場合において、当該賠償義務者の当該家屋等の復旧工事の施行についての同意があつたとき又は金銭をもつてする賠償の額に比し著しく多額の費用を要しないで復旧工事により原状の回復をすることができると認めるときは、当事者に対し、期限を定めて、当該復旧工事の施行に関し協議すべき旨を命ずることができる。
(裁定の申請)
第八十三條 前條第一項又は第三項の規定による命令を受けた者は、定められた期限内に協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、通商産業局長の裁定を申請することができる。
2 第八十一條第一項但書の規定は、前項の場合に準用する。
3 通商産業局長は、第一項の規定による裁定の申請があつた場合において、申請に係る事案が第八十一條第一項但書の場合に該当するに至つたときは、その申請を却下しなければならない。
(聴聞)
第八十四條 通商産業局長は、前條第一項の規定による裁定の申請があつたときは、その申請書の副本を他の当事者に交付するとともに、当事者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
2 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
3 聴聞に際しては、当事者及び利害関係人に対し、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(裁定)
第八十五條 通商産業局長は、聴聞の結果に基き裁定を行う。
2 前項の裁定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
3 通商産業局長は、第一項の裁定をしたときは、裁定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
第八十六條 通商産業局長は、第八十三條第一項の規定による裁定の申請を受けた場合において、石炭の掘採のための掘さくによる土地の陥落又はたい積した捨石の崩壊が停止していると認められる場合においては、金銭をもつてする賠償の額に比し著しく多額の費用を要しないで復旧工事により原状の回復をすることができると認めるときは、復旧工事を施行すべき旨の裁定をしなければならない。
2 通商産業局長は、復旧工事を施行すべき旨の裁定をするときは、その裁定において復旧工事の概要並びにその着手及び完了の時期を定めなければならない。
3 通商産業局長は、前項の場合において、損害の発生に関し被害者の責に帰すべき事由があつたと認めるとき、又は復旧工事によりその家屋等が鉱害により減少した効用以上の効用が回復されるため被害者が著しく利益を受けると認めるときは、損害の発生に関し被害者の責に帰すべき事由又は被害者が利益を受ける限度をしんしやくして、被害者が負担すべき復旧工事に要する費用の額及び支払の時期を定めなければならない。
第八十七條 通商産業局長は、第八十三條第一項の規定による裁定の申請を受けた場合において、石炭の掘採のための掘さくによる土地の陥落又はたい積した捨石の崩壊が停止していないと認められる場合においては、必要且つ適当であると認めるときは、家屋等の効用を維持するために必要な仮工事を施行すべき旨の裁定をすることができる。
2 前條第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(裁定の効果)
第八十八條 第八十五條の裁定があつたときは、鉱害が生じている家屋等の復旧を目的とする復旧工事又はその効用を維持するために必要な仮工事の施行に関し家屋等の所有者又は占有者たる被害者と賠償義務者との間に、協議がととのつたものとみなす。
(裁定の失効)
第八十九條 第八十六條第一項の裁定があつた場合において、被害者が支払の時期までにその負担すべき復旧工事に要する費用を支払わないときは、裁定は、その効力を失う。
第五章 補則
(異議の申立)
第九十條 この法律又はこの法律に基く命令の規定による行政庁の処分に対し異議のある者は、その旨を記載した書面をもつて、主務大臣に対し、異議の申立をすることができる。
第九十一條 主務大臣は、前條の異議の申立を受理したときは、その申立をした者に対し、相当な期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、異議の申立をした者及び利害関係人に対し、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
第九十二條 主務大臣は、当該事案について、文書をもつて決定をし、その写を異議の申立をした者及び利害関係人に送付しなければならない。
第九十三條 異議の申立、予告、聴聞及び決定の手続について必要な事項は、政令で定める。
(国及び都道府県の補助)
第九十四條 国は、その予算の範囲内において、農地、農業用施設又は公共施設の復旧を目的とする復旧工事について第五十六條第一項前段の認可を受けた者に対し、補助金を交付することができる。
2 都道府県は、国が前項の規定により補助金を交付する農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事について第五十六條第一項前段の認可を受けた者に対し、補助金を交付する。
3 前二項の規定により農地又は農業用施設(第五十一條第一項第四号に掲げるものを除く。)の復旧を目的とする復旧工事の施行者に対し国及び都道府県が交付する補助金の合計額は、その復旧工事に係る復旧費等から第五十條第一項の納付金及び第五十二條の負担金を控除した残額とし、国及び都道府県が交付する補助金の額の割合は、政令で定める。
第九十五條 国は、前條第一項の規定により補助金を交付した公共施設の復旧を目的とする復旧工事が完了したときは、その公共施設に係る賠償義務者に対し、政令で定めるところにより、その交付した補助金の額以内の額を支払わせることができる。
(補助金の返還)
第九十六條 第九十四條第一項又は第二項の規定により補助金の交付を受けた者は、その復旧工事の復旧費に剰余を生じたときは、政令で定めるところにより、その交付を受けた補助金の全部又は一部を国又は都道府県に返還しなければならない。
2 主務大臣又は都道府県知事は、第六十條第二項の規定による認可の取消があつたときは、その者に対し、第九十四條第一項又は第二項の規定により交付した補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる。
(地方公共団体及び復旧工事の施行者の事業団に対する事務経費の負担)
第九十七條 地方公共団体は、事業団の事業年度ごとに、事業団に対し、その事務経費の一部を補助するため、前事業年度中にその復旧費の全部又は一部を事業団が負担して施行された復旧工事であつて、その地方公共団体が維持管理を行う公共施設の復旧を目的とするものの復旧費に百分の四以内において政令で定める割合を乗じて得た金額を交付しなければならない。
2 第五十六條第一項前段に規定する復旧工事の施行者は、第九十四條第一項の規定により補助金の交付を受けたときは、政令で定めるところにより、事業団に対し、その事務経費の一部に充てるため、交付を受けた補助金であつて、第二條第三項に規定する事務費に対するものの一部に相当する額を交付しなければならない。
(報告及び立入検査)
第九十八條 主務大臣は、第四十八條第一項の復旧基本計画、復旧工事の施行又は復旧工事後の措置の適正を図るため特に必要があると認めるときは、鉱業権者、租鉱権者、鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者、復旧工事の施行者、被害者若しくは第五十二條の受益者から報告を徴し、又はその職員に左に掲げる場所に立ち入り、鉱害若しくは復旧工事の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
一 石炭鉱業又は亜炭鉱業の事業場
二 鉱害が生じている場所
三 復旧工事の作業場又はその附属材料置場
四 鉱業権者、租鉱権者、鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者又は復旧工事の施行者の事務所又は営業所
2 第四十條第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査に準用する。
(主務大臣の権限の委任)
第九十九條 この法律の規定による主務大臣の権限であつて、政令で定めるものは、地方支分部局の長又は都道府県知事が行う。
第六章 罰則
第百條 事業団の役員、評議員又は職員がその職務に関して、賄ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、二年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、収受した賄ろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
3 第一項の賄ろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第百一條 第六十條第一項の規定に違反して、第五十六條第一項前段の認可があつた実施計画に従つて、復旧工事を施行しなかつた者は、五万円以下の罰金に処する。
第百二條 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第四十條第一項又は第九十八條第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第六十二條の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三 第九十八條第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第百三條 左の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした事業団の役員、職員又は清算人は、三万円以下の罰金に処する。
一 第二十八條第一項若しくは第二項、第三十一條第二項、第三十二條第一項、第三十四條第一項若しくは第二項、第三十五條第二項、第六十八條第一項但書(同條第三項において準用する場合を含む。)又は第七十一條第二項の規定により通商産業大臣の認可を受けてしなければならない事項を認可を受けないでしたとき。
二 第三十一條第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
三 第三十三條、第三十六條、第四十三條又は第四十六條第一項の規定により通商産業大臣の承認を受けてしなければならない事項を承認を受けないでしたとき。
四 第三十五條第一項の規定に違反して、同項に規定する準備金を積み立てなかつたとき。
五 第三十八條第二項の規定による通商産業大臣の命令に違反したとき。
六 第四十條第一項の規定による報告もせず、又は虚偽の報告をしたとき。
七 第四十四條又は第四十五條の規定に違反して、残余財産を処分し、又は分配したとき。
第百四條 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第六條第二項の規定に違反した者
二 第二十七條の規定に違反して、取得した秘密を漏らし、又は窃用した者
三 第三十七條第一項の規定による資料を提出せず、又は虚偽の資料を提出した者
第百五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、第百一條、第百二條又は前條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第百六條 左の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした事業団の役員、職員又は清算人を一万円以下の過料に処する。
一 第七條第一項の規定による政令に違反して、登記することを怠り、又は不実の登記をしたとき。
二 第二十九條第一項又は第二項の規定に違反したとき。
三 第三十六條、第四十三條又は第四十六條に規定する書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、施行の日から十年以内に廃止するものとする。
3 特別鉱害復旧臨時措置法の一部を次のように改正する。
第四條を次のように改める。
(処分、手続その他の行為の効力)
第四條 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする鉱業権者若しくは租鉱権者、被指定者、復旧工事の施行者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の承継人に対しても、その効力を有する。
2 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする採掘権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の設定又は租鉱区の増加があつたときは、租鉱権の範囲内において、石炭を目的とする租鉱権者に対しても、その効力を有する。
3 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする租鉱権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の消滅又は租鉱区の減少があつたときは、石炭を目的とする採掘権の範囲内において、石炭を目的とする採掘権者に対しても、その効力を有する。但し、石炭を目的とする採掘権の消滅による租鉱権の消滅の場合は、この限りでない。
第十一條の見出し中「被指定者」を「被指定者等」に改める。
第二十四條第一項中「石炭を目的とする鉱業権者」の下に「(租鉱権者を含む。以下同じ。)」を加え、同條第二項但書中「被指定者が現に」を「納付義務者が現に」に、「被指定者について」を「納付義務者について」に改める。
4 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九條第七号中「日本放送協会、」の下に「鉱害復旧事業団、」を、「放送法、」の下に「臨時石炭鉱害復旧法、」を加える。
5 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五條第六号の十の次に次の一号を加える。
六ノ十一 鉱害復旧事業団ノ発スル証書、帳簿
6 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三條第十号中「及び日本放送協会」を「、日本放送協会及び鉱害復旧事業団」に改める。
7 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五條第一項第六号の次に次の一号を加える。
七 鉱害復旧事業団
8 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第二十四條第三号及び第三百四十八條第一項中「及び日本放送協会」を「、日本放送協会及び鉱害復旧事業団」に改める。
第七百四條中「及び日本電信電話公社」を「、日本電信電話公社及び鉱害復旧事業団」に改める。
第七百四十三條第三号中「及び一般放送事業者」を「、一般放送事業者及び鉱害復旧事業団」に改める。
9 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第三條第五号中「又は土地改良区(土地改良区連合を含む。以下同じ。)」を「、土地改良区(土地改良区連合を含む。以下同じ。)又は鉱害復旧事業団」に改め、同條第六号の次に次の一号を加える。
六の二 地方公共団体又は鉱害復旧事業団が臨時石炭鉱害復旧法(昭和二十七年法律第二百九十五号)によつて行う客土事業又は復旧工事の施行に伴い設置する用排水機若しくは地下水源の利用に関する設備
内閣総理大臣 吉田茂
法務大臣 木村篤太郎
大蔵大臣 池田勇人
文部大臣 天野貞祐
厚生大臣 吉武恵市
農林大臣 広川弘禅
通商産業大臣 高橋龍太郎
運輸大臣 村上義一
建設大臣 野田卯一
臨時石炭鉱害復旧法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年八月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百九十五号
臨時石炭鉱害復旧法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
鉱害復旧事業団
第一節
総則(第四条―第九条)
第二節
設立(第十条―第十四条)
第三節
管理(第十五条―第三十条)
第四節
業務(第三十一条―第三十七条)
第五節
監督(第三十八条―第四十条)
第六節
解散及び清算(第四十一条―第四十七条)
第三章
農地、農業用施設及び公共施設の復旧工事
第一節
復旧基本計画(第四十八条―第五十四条)
第二節
復旧工事の施行(第五十五条―第六十三条)
第三節
納付金等の徴収及び復旧費の支払(第六十四条―第七十二条)
第四節
農地及び農業用施設に関する復旧工事後の措置(第七十三条―第七十九条)
第四章
家屋等の復旧工事に関する協議及び裁定(第八十条―第八十九条)
第五章
補則(第九十条―第九十九条)
第六章
罰則(第百条―第百六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り、あわせて石炭鉱業及び亜炭鉱業の健全な発達に資するため、鉱害を計画的に復旧することを目的とする。
(用語の定義)
第二条 この法律において「鉱害」とは、石炭鉱業又は亜炭鉱業による鉱害(特別鉱害復旧臨時措置法(昭和二十五年法律第百七十六号)第二条第二項の特別鉱害を除く。)をいう。
2 この法律において「復旧工事」とは、鉱害が生じている土地物件が本来有していた効用を回復するように、その土地物件について施行する工事及びこれに附帯する工事をいう。
3 この法律において「復旧費」とは、当該復旧工事のため直接必要な本工事費、附帯工事費、用地費、補償費、機械器具費、工事雑費並びに事務費の合計額をいい、主務大臣が特別の事情があると認める応急工事費、応急工事に使用する材料であつて、復旧工事に使用できるものに要する費用及び仮締切、瀬替その他復旧工事に必要な仮設工事に要する費用を含むものとする。
4 この法律において「鉱業権者」とは、石炭(亜炭を含む。以下同じ。)を目的とする鉱業権者をいい、「租鉱権者」とは、石炭を目的とする租鉱権者をいう。
5 この法律において「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「農業用施設」とは、農地の利用又は保全上必要な施設であつて、左に掲げるものをいう。
一 かんがい排水施設
二 農業用道路
三 農地又は農作物の災害を防止するため必要な施設
6 この法律において「公共施設」とは、左に掲げる施設であつて、政令で定めるもののうち、国の機関、地方公共団体(その機関を含む。以下同じ。)その他政令で定める者が維持管理を行うものをいう。
一 河川
二 海岸
三 砂防設備
四 林地荒廃防止施設
五 道路
六 林道
七 港湾
八 漁港
九 上水道及び下水道
十 鉄道及び軌道
十一 学校並びに公用及び公共用建物
7 この法律において「家屋等」とは、住家、店舗、工場、倉庫その他の建物(農業用施設又は公共施設たるものを除く。)及びこれらの建物の所有の目的に供される土地並びに墓地をいう。
(処分、手続その他の行為の効力)
第三条 この法律の規定によつてした処分及び鉱業権者、租鉱権者、鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者、第五十二条の受益者、復旧工事の施行者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の承継人に対しても、その効力を有する。
2 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする採掘権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の設定又は租鉱区の増加があつたときは、租鉱権の範囲内において、租鉱権者に対しても、その効力を有する。
3 この法律の規定によつてした処分及び租鉱権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の消滅又は租鉱区の減少があつたときは、石炭を目的とする採掘権の範囲内において、石炭を目的とする採掘権者に対しても、その効力を有する。但し、石炭を目的とする採掘権の消滅による租鉱権の消滅の場合は、この限りでない。
第二章 鉱害復旧事業団
第一節 総則
(目的及び法人格)
第四条 鉱害復旧事業団(以下「事業団」という。)は、鉱害の計画的な復旧に関する業務を行うためこの法律の規定に基き設立される法人とする。
(地域)
第五条 事業団は、政令で定める地域により、その地域ごとに一を限り、設立されるものとする。
(名称の独占)
第六条 事業団は、その名称中に鉱害復旧事業団という文字を用いなければならない。
2 事業団でないものは、その名称中に鉱害復旧事業団という文字を用いてはならない。
(登記)
第七条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(事業年度)
第八条 事業団の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。
(民法の準用)
第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団に準用する。
第二節 設立
(設立の認可)
第十条 事業団を設立するには、第五条の政令で定める地域内の市町村の長、その地域内に石炭の掘採のための事業場を有する鉱業権者及びその地域内に生じている鉱害に係る被害者(都道府県知事の承認を受けた者に限る。)十人以上が発起人となり、定款を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
2 前項に規定する市町村長、鉱業権者又は被害者は、それぞれ同項の発起人の総数の二分の一以上を占めてはならない。
3 第一項の発起人は、同項の認可を申請するには、あらかじめ、定款作成の基本となるべき事項その他通商産業省令で定める事項を公告して、当該地域内の市町村の長及び当該地域内に石炭の掘採のための事業場を有する鉱業権者のそれぞれ三分の一以上の同意を得なければならない。
4 通商産業大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
第十一条 通商産業大臣は、第五条の政令で定める地域について、その地域が同条の政令で定める地域となつた日から三月以内に前条第一項の認可の申請がないか、又はその期間内になされたいずれの申請についても同項の認可をすることができなかつたときは、同項に規定する者十人以上に、同項の発起人となり、定款を作成し、通商産業大臣の指定する期日までに同項の認可を申請すべきことを命ずることができる。
2 前条第三項の規定は、前項の規定により前条第一項の認可を申請する場合には、適用しない。
(設立事務の引継)
第十二条 第十条第一項の認可があつたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を事業団の理事長に引き継がなければならない。
(成立)
第十三条 理事長は、前条の規定による事務の引継を受けたときは、遅滞なく、設立の登記をしなければならない。
2 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。
(設立費用の負担)
第十四条 事業団が成立したときは、その設立費用であつて、通商産業大臣の承認があつた額以内のものは、その事業団の負担とする。
第三節 管理
(定款)
第十五条 事業団の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 地域
四 事務所の所在地
五 役員に関する事項
六 評議員会に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 会計に関する事項
九 公告の方法
(役員)
第十六条 事業団に、役員として、理事長一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
2 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
3 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、事業団の会計を監査する。
第十七条 理事長及び監事は、評議会が推薦した者のうちから、通商産業大臣が任命する。但し、設立当時の理事長及び監事は、第十条第一項の発起人が推薦した者のうちから、通商産業大臣が任命する。
2 理事は、評議員会の同意を得て、理事長が任命する。
3 理事長、理事及び監事の任期は、四年とする。但し、設立当時の理事長及び監事の任期は、二年とする。
4 理事長、理事及び監事は、再任されることができる。
第十八条 理事長は、理事が第二十五条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、評議員会の同意を得て、これを解任することができる。
(評議員会)
第十九条 事業団に、評議員会を置く。
2 評議員会は、理事長及び十人以上の評議員をもつて組織する。
3 評議員会に議長を置き、理事長をもつてこれに充てる。
4 議長は、評議員会の会務を総理する。
5 評議員会は、あらかじめ、次条第一項第三号に掲げる者のうちから任命された評議員のうちから、議長に事故がある場合に議長の職務を代行する者を定めておかなければならない。
(評議員)
第二十条 評議員は、左に掲げる者のうちから、通商産業大臣が任命する。
一 事業団の地域内に石炭の掘採を目的とする事業場を有する鉱業権者及び租鉱権者
二 事業団の地域内に生じている鉱害に係る被害者であつて、都道府県知事が推薦した者及び事業団の地域内に存する公共施設であつて、鉱害が生じているものの維持管理を行う地方公共団体の職員であつて、その公共施設の維持管理に関する事務に従事するもの
三 事業団の地域の全部又は一部を管轄する地方公共団体の長又はその職員(前号に掲げるものを除く。)及び鉱害の復旧に関し学識経験がある者
2 評議員の任命に当つては、前項各号に掲げる者のうちからそれぞれ任命される評議員の数が評議員の総数の二分の一以上を占めることとなつてはならない。
第二十一条 評議員の任期は、三年とする。
2 評議員は、再任されることができる。
第二十二条 評議員は、報酬を受けない。但し、旅費その他業務の遂行に伴う実費を受けるものとする。
(評議員会の権限)
第二十三条 左の事項は、評議員会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 経費等の賦課徴収の方法
三 業務の方法の決定及び変更
四 借入金の借入及び復旧事業債券の発行
五 会計の処理に関する規程の設定及び変更
六 収支予算及び収支決算
七 復旧基本計画の作成及び変更
2 定款の変更は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(評議員会の議決の方法)
第二十四条 評議員会は、第二十条第一項各号に掲げる者のうちからそれぞれ任命された評議員各一人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 評議員会の議事は、出席した評議員の過半数をもつて決する。可否同数のときは、議長が決する。
(役員等の欠格条項)
第二十五条 左の各号の一に該当する者は、役員又は評議員となることができない。
一 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた後、三年を経過しない者
二 国家公務員(教育公務員たる者及び審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて非常勤のものを除く。)
三 政党の役員
(理事長等の兼職禁止)
第二十六条 理事長及び理事は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(役員等の秘密保持義務)
第二十七条 事業団の役員、評議員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は窃用してはならない。
(経費等の賦課)
第二十八条 事業団は、通商産業大臣の認可を受けて、その設立費用であつて、事業団の負担となるもの、経費(第三十一条第一項第三号に掲げる業務を行うため必要なもの並びに同項第五号及び第六号の支払に充てるべきものを除く。以下「事務経費」という。)及び準備金に充てるため、設立の日の属する事業年度(設立の日が七月一日以降である場合において、通商産業大臣の認可を受けたときは、その設立の日の属する事業年度及びその翌事業年度。以下「当初年度」という。)において、その地域内に生じている鉱害に係る鉱業権者又は租鉱権者に対し、設立の日の前前月以前当初年度と同じ期間(その期間に一月未満の端数があるときは、その端数を控除したもの)内にその鉱害に係る事業場において掘採した石炭の数量一トンにつき五円以内の金額を賦課徴収することができる。
2 事業団は、通商産業大臣の認可を受けて、その事務経費及び準備金に充てるため、当初年度後の毎事業年度において、鉱業権者及び租鉱権者に対し、前事業年度(当初年度の翌事業年度にあつては、当初年度)中にその復旧費の全部又は一部を事業団が負担して施行した復旧工事のうちその鉱業権者又は租鉱権者に係る鉱害の復旧のため必要となつたものの復旧費に、百分の七以内の割合を乗じて得た金額を賦課徴収することができる。
3 事業団は、第一項の規定により賦課徴収した金額に相当する金額を、当初年度の翌事業年度から五年以内に、当該鉱業権者又は租鉱権者に交付しなければならない。
(定款等の備付)
第二十九条 事業団は、定款及び業務の方法を記載した書面を主たる事務所及び従たる事務所に備えて置かなければならない。
2 事業団は、事業団の業務に利害関係がある者から、前項に規定する書類の閲覧の請求があつたときは、正当な事由がある場合を除き、これを拒んではならない。
(民法の準用)
第三十条 民法第五十四条(代表権の制限)及び第五十七条(特別代理人)の規定は、事業団に準用する。
第四節 業務
(業務)
第三十一条 事業団は、第四条の目的を達成するため、左の業務を行う。
一 鉱害(家屋等について生じたものを除く。)の復旧のための復旧基本計画の作成
二 鉱業権者及び租鉱権者の納付金並びに受益者の負担金の徴収
三 事業団が復旧工事の施行者として定められた場合において、その復旧工事の施行
四 第七十七条第二項の規定により引渡を受けたかんがい排水施設及び事業団が復旧工事を施行した場合において同条第一項に規定する同意を得ることができなかつたときにおけるそのかんがい排水施設の維持管理
五 事業団以外の者が施行する復旧工事の復旧費のうち、事業団の負担となるものの支払
六 鉱害に係る農地及び農業用施設に対する補償金並びに復旧工事により新たに設けられるかんがい排水施設の維持管理費の支払
七 地域区の家屋等の復旧工事に要する費用の貸付
八 前各号の業務に附帯する業務
九 前各号に掲げるものの外、第四条の目的を達成するため必要な業務
2 事業団は、前項第九号の業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(業務の方法)
第三十二条 事業団は、業務開始の際、業務の方法を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務の方法には、前条第一項第一号の復旧基本計画の作成の方法、同項第二号の納付金の徴収の時期及び方法、同項第五号の支払の時期及び方法並びに同項第七号の貸付の相手方、限度、方法、利率及び期限を定めておかなければならない。
(予算)
第三十三条 事業団は、事業年度開始前に(設立の日の属する事業年度にあつては、設立後すみやかに)、毎事業年度の収支予算を作成し、これを通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(借入金及び復旧事業債券)
第三十四条 事業団は、その業務を行うため必要があるときは、通商産業大臣の認可を受けて、借入金の借入をすることができる。
2 事業団は、第三十一条第一項第三号に掲げる業務を行うため必要な資金に充てるため、通商産業大臣の認可を受けて、復旧事業債券を発行することができる。
3 前項の復旧事業債券の発行及び償還に関し必要な事項は、政令で定める。
(準備金)
第三十五条 事業団は、定款で定める額に達するまでは、第二十八条第一項又は第二項の規定により徴収した金額の二十分の一以上を準備金として積み立てなければならない。
2 前項の準備金は、通商産業大臣の認可を受けなければ、処分してはならない。
(財産目録等)
第三十六条 事業団は、毎事業年度経過後三月以内に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、これを通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(資料の提出の請求)
第三十七条 事業団は、第三十一条第一項第一号、第二号及び第六号に掲げる業務を行うため必要があるときは、その地域内に石炭の掘採を目的とする事業場を有する鉱業権者若しくは租鉱権者若しくはその鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者、その地域内に生じている鉱害に係る被害者又は第五十二条の受益者となるべき者に対し、資料の提出を求めることができる。
2 前項の規定により資料の提出を求められた者は、遅滞なく、これを提出しなければならない。
第五節 監督
(監督)
第三十八条 事業団は、通商産業大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、事業団の報告又は第四十条第一項の規定による検査の結果に基き、事業団に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(役員等の解任)
第三十九条 通商産業大臣は、理事長、監事又は評議員が第二十五条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 通商産業大臣は、理事長、監事若しくは評議員が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長、監事若しくは評議員に職務上の義務違反その他理事長、監事若しくは評議員たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
3 通商産業大臣は、評議員が第二十条第一項の規定による資格を失つたと認めるときは、これを解任することができる。
(報告及び検査)
第四十条 通商産業大臣は、必要があると認めるときは、事業団から報告を徴し、又はその職員に事業団の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六節 解散及び清算
(解散)
第四十一条 事業団は、左の事由によつて解散する。
一 事業団の地域内の市町村の長の三分の二並びにその地域内に石炭の掘採を目的とする事業場を有する鉱業権者及び租鉱権者の三分の二以上の者の請求
二 破産
三 事業団の目的が達成されたと認められる場合における通商産業大臣の解散の命令
2 前項第一号の請求は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつたときは、公聴会を開き、広く一般の意見をきくとともに、事業団の意見をきかなければならない。
4 通商産業大臣は、第一項第三号の命令をしようとするときは、公聴会を開き、広く一般の意見をきかなければならない。
(清算人)
第四十二条 事業団が解散したときは、破産による場合を除いては、理事長がその清算人となる。但し、通商産業大臣が公益上必要があると認めて他の者を選任したときは、この限りでない。
2 清算人が欠けたときは、通商産業大臣が清算人を選任する。
3 通商産業大臣は、公益上必要があると認めるときは、清算人を解任することができる。
(清算事務の監督)
第四十三条 清算人は、就職の後、遅滞なく、事業団の財産の現況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作り、財産処分の方法を定め、これを通商産業大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
(残余財産の処分の制限)
第四十四条 清算人は、事業団の債務を弁済した後でなければ、その残余財産を処分することができない。
(残余財産の帰属)
第四十五条 残余財産は、事業団が第二十八条第二項の規定による賦課徴収をした者に対し、その賦課徴収した額に応じて分配しなければならない。
(決算報告書)
第四十六条 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく、決算報告書を作り、これを通商産業大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 前項の決算報告書には、清算に関する重要な書類、事業団の帳簿及びその業務に関する重要な書類を添附しなければならない。
(民法の準用)
第四十七条 民法第七十三条(清算法人)及び第七十八条から第八十一条まで(清算人の職務権限、債権申出の公告及び催告、債務超過による破産)の規定は、事業団に準用する。
第三章 農地、農業用施設及び公共施設の復旧工事
第一節 復旧基本計画
(復旧基本計画)
第四十八条 事業団は、毎事業年度開始前に、(設立の日の属する事業年度にあつては、設立後すみやかに)、そこに生じている鉱害を復旧することが必要且つ適当であると認められる地区をその事業年度において復旧工事(家屋等の復旧を目的とするものを除く。以下この章において同じ。)に着手すべき地区として選定し、その地区内に生じている鉱害に係る復旧工事の概要、その復旧工事の復旧費、第七十三条第二項の規定により算定されるべき額及びその復旧工事により新たに設けられるかんがい排水施設の維持管理費(以下「復旧費等」という。)並びに復旧費等の負担区分を記載した復旧基本計画を作成し、これを通商産業大臣に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 事業団は、前項の復旧基本計画を作成し、又は変更するには、あらかじめ、都道府県知事の承認を受けなければならない。但し、復旧基本計画の変更について第六十六条第二項の規定により都道府県知事の同意を得たときは、この限りでない。
3 通商産業大臣は、必要があると認めるときは、第一項の認可をする場合においてその申請に係る事項を変更して認可し、又は同項の認可をした事項を変更することができる。
4 通商産業大臣は、第一項の認可又は前項の規定による変更をしようとするときは、主務大臣の同意を得なければならない。
第四十九条 前条第一項の復旧費等の負担区分には、復旧工事ごとに、次条第一項の規定により納付金を納付すべき者及び第五十二条又は第五十三条の規定により復旧費を負担すべき者並びにその見込納付金額及び負担額を記載し、且つ、当該復旧基本計画には、負担区分に関するこれらの者の同意書(その同意を得ることができなかつたときは、その事由を記載した書面)を添附しなければならない。
(賠償義務者の納付金)
第五十条 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第百九条又は鉱業法施行法(昭和二十五年法律第二百九十号)第三十五条第二項若しくは第三項の規定により鉱害を賠償する責に任ずべき者(以下「賠償義務者」という。)であつて、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画(同項後段の規定による変更の認可又は同条第三項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に生じている鉱害に係るものは、その復旧基本計画に記載された復旧工事に係る復旧費等又は第七十九条第一項の規定により事業団が支払う金額に充てるため、事業団に対し、納付金を納付しなければならない。
2 鉱業法第百十条(負担部分と償還請求)の規定は、前項の規定による納付金の納付義務に準用する。
第五十一条 前条第一項の納付金の額は、左に掲げる金額とする。
一 鉱害が生じたことにより効用が減少したため鉱害が生じた後における農作物の収穫高が鉱害が生ずる前の収穫高の十分の三を下るに至つた農地については、土地台帳法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第二百二十七号)による改正前の土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)による賃貸価格であつて、昭和二十五年七月三十日現在のもの(当該賃貸価格がない農地にあつては、その本来有していた効用と同等の効用を有する農地の賃貸価格を参考とし、通商産業大臣の認可を受けて事業団が定める価格とし、当該賃貸価格が鉱害が生じたことにより修正されているためこれによることが不相当と認められる農地にあつては、事業団が通商産業大臣の認可を受けたときは、その修正前のものとする。)(以下「基準賃貸価格」という。)に、二千を下らず五千をこえない範囲内において、都道府県別に政令で定める倍数を乗じて得た金額
二 前号に掲げる農地以外の農地であつて、鉱害が生じたことにより効用が減少したため、鉱害が生じた後における農作物の収穫高が鉱害が生ずる前の収穫高より減少するに至つたものについては、収穫高の減少の割合による区分ごとに、基準賃貸価格に、前号の政令で定める倍数をこえない範囲内において政令で定める倍数を乗じて得た金額
三 前二号の規定にかかわらず、一の復旧工事において復旧の目的となつている農地であつて、これらに係る復旧費等の合計額(その利用又は保全上必要な農業用施設の復旧費等を含み、第五十二条の負担金の額を控除した残額とする。以下この条において同じ。)がこれらについて前二号の規定により算出した額の合計額以下であるものについては、その復旧費等の合計額に、前二号の規定により算出した額のその合計額に対する割合を乗じて得た額
四 鉱害が生じているにかかわらず、これにより農作物の収穫高が減少するに至つていない農業用施設については、その復旧費等の額から国及び都道府県の補助金の額並びに第五十二条の負担金の額を控除した残額
五 農地及び農業用施設以外の土地物件については、その復旧費の額から国の補助金及び負担金並びに第五十二条の負担金を控除した残額
六 第一号の規定にかかわらず、第七十九条第一項に規定する農地については、同項の規定により定められる金額
2 賠償義務者であつて、第四十八条第一項前段の規定による復旧基本計画の認可があるまでに、鉱業法第百九条又は旧鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)第七十四条ノ二の規定による損害の一部を既に賠償している者は、その旨を事業団に申し出ることができる。
3 事業団は、前項の申出を受けた場合において、その申出をした者の納付金の額を減ずることが相当であると認めるときは、第四十八条第一項の復旧費等の負担区分に記載した見込納付金額を変更しなければならない。
(受益者の負担)
第五十二条 復旧工事の施行の結果利益を受ける者があるときは、その受益者は、その利益を受ける限度において、復旧費の一部に充てるため、事業団に対し、負担金を納付しなければならない。
(地方公共団体の負担)
第五十三条 地方公共団体は、第六十六条第二項の同意をした場合において、当該復旧基本計画について第四十八条第一項後段の規定による変更の認可があつたときは、前条の規定による外、その地方公共団体が維持管理を行う公共施設の復旧費について、政令で定める割合を負担しなければならない。
(復旧基本計画の公示等)
第五十四条 通商産業大臣は、第四十八条第一項前段の規定により復旧基本計画の認可をしたときは、当該復旧基本計画に復旧工事に着手すべき地区として記載された地区を公示しなければならない。その地区について同項後段の規定による変更の認可又は同条第三項の規定による変更をしたときも、同様とする。
2 事業団は、第四十八条第一項前段の規定により復旧基本計画の認可を受けたときは、復旧費等の負担区分に記載された見込納付金額又は負担額を、それらの金額を納付し、又は負担すべき者に通知しなければならない。見込納付金額又は負担額について、同項後段の規定による変更の認可又は同条第三項の規定による変更があつたときも、同様とする。
第二節 復旧工事の施行
(復旧工事の施行者)
第五十五条 復旧工事の施行者は、他の法令に定があるときは、それによるものとする。この場合において、主務大臣は、その法令の規定により賠償義務者に復旧工事を施行させることができるときは、その賠償義務者に代えて事業団にその復旧工事を施行させることができる。
2 前項に規定する場合の外、第四十八条第一項の復旧費等の負担区分において一の復旧工事に係る賠償義務者の見込納付金額がその復旧工事に係る復旧費等の額と同額となつている場合において、賠償義務者が前条第二項の規定による通知を受けた日から二月以内に主務大臣に申し出たときは、復旧工事の施行者は、その賠償義務者とする。但し、その施行が他の復旧工事の施行と密接な関係がある場合又はその賠償義務者がその申出をした日から三月以内に復旧工事に着手しない場合において、主務大臣が事業団その他適当と認める者を施行者と定めたときは、この限りでない。
3 前二項に規定する場合の外、復旧工事の施行者は、事業団その他主務大臣が適当と認めて指定する者とする。
(実施計画の認可)
第五十六条 復旧工事(主務大臣が施行する工事を除く。)の施行者(前条第二項本文の規定による復旧工事の施行者を除く。)は、主務大臣が第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基いてする指示に従い、復旧工事の実施計画及びこれに係る復旧費等につき、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の実施計画が農地の復旧を目的とするものである場合においては、当該復旧工事の施行者が当該実施計画を作成するには、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画において復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する農地のうち、第五十一条第一項第一号に掲げる農地に該当するものであつて、その本来有していた効用を回復することが著しく困難なため復旧の目的としない農地があるときは、あらかじめ、その所在地の市町村長の意見を聞かなければならない。
3 前条第二項本文の規定による復旧工事の施行者は、復旧工事に着手する前に、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基いて、復旧工事の実施計画を作成し、遅滞なく、これを主務大臣に届け出るとともに、事業団に通知しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 第一項の実施計画が農地又は農業用施設の復旧を目的とするものであるときは、同項の認可を申請する実施計画には、復旧工事の施行によりその農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復される見込を記載した書面及びその鉱害に係る被害者の同意書(その同意を得ることができなかつたときは、その事由を記載した書面)を添附しなければならない。
第五十七条 主務大臣は、前条第一項前段の認可の申請があつたときは、その旨を公示し、二十日以上の期間を定めて、その申請に係る実施計画を縦覧に供しなければならない。
2 実施計画の基本となつている復旧基本計画に復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する土地物件(家屋等を除く。)であつて、鉱害が生じているものの所有者その他その土地物件に関し権利を有する者及びその地区内に生じている鉱害に係る賠償義務者は、実施計画について異議があるときは、主務大臣に対し、異議の申立をすることができる。但し、前項に規定する縦覧期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
3 主務大臣は、前項の規定による異議の申立があつたときは、第一項に規定する縦覧期間満了後二月以内に決定をしなければならない。
4 主務大臣は、第二項の規定による異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合において、そのすべてについて前項の規定による決定をした後でなければ、前条第一項前段の認可をしてはならない。
第五十八条 主務大臣は、必要があると認めるときは、第五十六条第一項の認可をする場合においてその申請に係る事項を変更して認可し、又は同項の認可をした事項を変更することができる。
2 主務大臣は、前項の規定により申請に係る事項を変更して認可し、又は同項の規定による変更をしようとする場合において、その認可又は変更後における実施計画が第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基かないものとなるときは、通商産業大臣の同意を得なければならない。
3 通商産業大臣は、前項の同意をしたときは、第四十八条第一項の認可をした復旧基本計画について、同条第三項の規定による変更をしなければならない。
第五十九条 主務大臣は、事業団以外の者が施行者となつている復旧工事の実施計画について、第五十六条第一項の認可をしたとき、又は前条第一項の規定による変更をしたときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
(工事施行の義務)
第六十条 第五十六条第一項前段に規定する復旧工事の施行者は、同項前段の認可があつた実施計画(同項後段の規定による変更の認可又は第五十八条第一項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に従つて、復旧工事を施行しなければならない。
2 主務大臣は、第五十六条第一項前段に規定する復旧工事の施行者が同項前段の認可があつた実施計画に従つて復旧工事を施行しない場合において、必要があると認めるときは、同項前段の認可を取り消すことができる。
3 主務大臣は、前項の規定による認可の取消をしたときは、その旨を事業団に通知しなければならない。
(所有者等の協力)
第六十一条 第五十六条第一項前段の認可があつた実施計画において復旧の目的となつている土地物件の所有者及び占有者は、前条第一項の復旧工事の施行者の義務の遂行を妨げてはならない。
(工事完了の届出)
第六十二条 第五十六条第一項前段及び第三項に規定する復旧工事の施行者は、その復旧工事を完了したときは、十日以内に主務大臣にその旨を届け出なければならない。
(主務大臣の施行する復旧工事)
第六十三条 主務大臣は、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基き復旧工事を施行する場合において、その復旧工事に着手したときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
第三節 納付金等の徴収及び復旧費の支払
(納付金等の納付期日)
第六十四条 賠償義務者又は第五十二条の受益者が第五十条第一項又は第五十二条の規定により納付金又は負担金を納付すべき期日は、第五十九条又は前条の規定による通知(事業団が復旧工事の施行者であるときは、第五十六条第一項前段の認可。以下この条において同じ。)があつた日(第五十九条又は前条の規定による通知があつた日以後に復旧基本計画について第四十八条第一項後段の規定による変更の認可又は同条第三項の規定による変更があつたため新たに第五十条第一項又は第五十二条の規定により納付金又は負担金を納付すべきこととなつた者にあつては、その変更の認可又は変更があつた日)以後において事業団が定める期日とする。
(納付金等を徴収しない場合)
第六十五条 賠償義務者であつて、第五十五条第二項の規定により復旧工事の施行者となつたものは、第五十条第一項の規定にかかわらず、その復旧工事について、同項の納付金を納付することを要しない。
2 第五十二条の受益者たる地方公共団体であつて、その維持管理を行う公共施設について復旧工事を施行するものは、同条の規定にかかわらず、その復旧工事について、同条の負担金を納付することを要しない。
第六十六条 事業団は、賠償義務者若しくは第五十二条の受益者が事業の廃止若しくは休止、災害その他の事由により資力を有しなくなつたため、第五十条第一項の納付金若しくは第五十二条の負担金を納付することが著しく困難であると認められるとき、又は賠償義務者の所在が不分明であるときは、その納付金又は負担金に係る復旧基本計画について、第四十八条第一項後段の規定による変更の認可を申請しなければならない。
2 事業団は、公共施設の復旧費に充てるべき納付金又は負担金について前項の規定による認可の申請をしようとするときは、あらかじめ、その維持管理を行う地方公共団体の同意を得なければならない。
3 第一項の場合において、第四十八条第一項後段の規定による変更の認可があつたときは、当該賠償義務者又は第五十二条の受益者は、第五十条第一項又は第五十二条の規定にかかわらず、その変更後の金額と変更前の金額との差額に相当する納付金又は負担金を納付することを要しない。
(納付金等の返還)
第六十七条 賠償義務者又は第五十二条の受益者が第五十条第一項又は第五十二条の規定により納付金又は負担金を納付した後において復旧基本計画について第四十八条第一項後段の規定による変更の認可又は同条第三項の規定による変更があつたためこれらの者が第五十条第一項又は第五十二条の規定により納付すべき額がその既に納付した額より小となるに至つたときは、事業団は、遅滞なく、これらの者に対しその差額を返還しなければならない。
(復旧費の支払)
第六十八条 事業団は、第五十六条第一項前段の認可を受けた復旧工事の施行者から支払の請求を受けたときは、第三十二条第一項の認可を受けた業務の方法に定めるところに従い、第五十六条第一項前段の認可があつたその復旧工事の復旧費(同項後段の規定による変更の認可又は第五十八条第一項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)に充てるべき第五十条第一項の納付金又は第五十二条の負担金として事業団が徴収すべき金額を支払わなければならない。但し、その額がその復旧工事の復旧費に充てるべき第五十条第一項の納付金又は第五十二条の負担金の額のうち、その請求の時までに事業団が徴収した額をこえるときは、そのこえる額については、通商産業大臣の認可を受けた額に限る。
2 事業団は、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基き施行する復旧工事に着手した主務大臣から支払の請求を受けたときは、第三十二条第一項の認可を受けた業務の方法に定めるところに従い、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に記載されているその復旧工事の復旧費に充てるべき第五十条第一項の納付金又は第五十二条の負担金として事業団が徴収すべき金額を支払わなければならない。
3 第一項但書の規定は、前項の場合に準用する。
(復旧費の返還)
第六十九条 第五十六条第一項前段に規定する復旧工事の施行者は、その復旧工事の復旧費に剰余を生じたときは、前条第一項の規定により支払を受けた金額のうち、主務大臣が定める金額を事業団に返還しなければならない。
2 事業団は、第六十条第二項の規定による認可の取消があつたときは、その者に対し、前条第一項の規定により支払つた金額のうち、主務大臣が第六十条第一項の規定に従つて施行された復旧工事に要したものでないと認める金額を返還させることができる。
(強制徴収)
第七十条 事業団は、第二十八条第一項若しくは第二項の規定により賦課徴収する金額(以下「賦課金」という。)、第五十条第一項の納付金、第五十二条の負担金又は前条の規定による返還金を支払うべき者が納期限までにその金額を支払わないときは、期限を指定して、これを督促しなければならない。
2 事業団は、前項の規定により督促をするときは、同項に規定する者に対し、督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。
第七十一条 前条第一項の規定による督促を受けた者(地方公共団体を除く。)がその指定の期限までに賦課金、第五十条第一項の納付金、第五十二条の負担金、第六十九条の規定による返還金その他この法律の規定による徴収金を支払わないときは、市町村(特別区のある地においては、特別区。以下同じ。)は、事業団の請求により、地方税の滞納処分の例により、これを処分する。この場合は、事業団は、その徴収金額の百分の四を市町村に交付しなければならない。
2 市町村が前項の請求を受けた日から一月以内にその処分に着手せず、又は三月以内にこれを終了しないときは、事業団は、地方税の滞納処分の例により、通商産業大臣の認可を受けて、その処分をすることができる。
3 前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、市町村の徴収金に次ぐものとし、その時効については、市町村税の例による。
第七十二条 事業団は、第七十条第一項の規定により督促をしたときは、賦課金、第五十条第一項の納付金、第五十二条の負担金又は第六十九条の規定による返還金の金額百円につき一日八銭の割合で、納期限の翌日からその完納又は財産差押の日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。但し、通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
第四節 農地及び農業用施設に関する復旧工事後の措置
(補償金)
第七十三条 農林大臣は、第五十六条第一項前段の認可があつた実施計画による農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事が完了したときは、二月以内に、その農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されたかどうかについて検査を行わなければならない。
2 農林大臣は、前項の検査を行つた場合において、その農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていると認めるときは、遅滞なく、その旨を公示し、その効用が回復されていないと認めるときは、遅滞なく、農林省令、通商産業省令で定める評価基準に従い、なお回復されていないと認められる効用の価額を算定し、その算定の根拠を附してその額を事業団に通知しなければならない。
3 事業団は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、少くとも三回の公告をもつて、当該農地又は農業用施設に係る被害者に対し、一定の期間内に損害賠償請求権の主張をすべき旨を催告しなければならない。但し、その期間は、一月を下つてはならない。
4 前項の公告には、被害者が同項の期間内に主張をしないときは、その損害賠償請求権は除斥されるべき旨を附記しなければならない。但し、事業団は、知れている被害者を除斥することができない。
5 事業団は、知れている被害者には、損害賠償請求権の主張をすべき旨を各別に催告しなければならない。
6 事業団は、第三項の期間の末日から一月以内に、同項の期間内に主張をした被害者に対し、第二項の規定により通知を受けた額を支払わなければならない。
第七十四条 事業団又は被害者は、前条第一項の規定による検査の後一年を経過した場合において、同条第二項の規定による認定又は同項の規定により算定された額が当該農地又は農業用施設の利用の結果に徴し不当であると認めるときは、一回を限り、農林大臣に対し、その農地又は農業用施設について再検査を行うべきことを請求することができる。但し、同条第一項の規定による検査の後三年を経過したときは、この限りでない。
2 農林大臣は、前項の規定による請求があつたときは、遅滞なく、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されたかどうかについて再検査を行わなければならない。
3 農林大臣は、前項の再検査を行つた場合において、前条第二項の規定による認定又は同項の規定により算定した額を変更する必要がないと認めるときは、遅滞なく、その旨を第一項の規定による請求をした者(その請求をした者が被害者であるときは、その請求をした者及び事業団。以下同じ。)に通知し、前条第二項の規定による認定又は同項の規定により算定した額を変更する必要があると認めるときは、遅滞なく、必要な変更をし、その変更の事由を附してその旨を第一項の規定による請求をした者に通知しなければならない。
4 事業団は、前項の規定による通知を受けた場合において、再検査により当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないと認められたため、新たになお回復されていないと認められる効用の価額の支払を要することとなつたときは、遅滞なく、少くとも三回の公告をもつて、当該農地又は農業用施設に係る被害者に対し、一定の期間内に損害賠償請求権の主張をすべき旨を催告しなければならない。
5 前条第三項但書、第四項及び第五項の規定は、前項の規定による催告に準用する。
6 事業団は、第四項の期間の末日から一月以内に、同項の期間内に主張をした被害者に対し、なお回復されていないと認められる効用の価額であつて、第三項の規定による通知があつたものを支払わなければならない。
7 事業団は、第三項の規定による通知を受けた場合において、その通知に係る変更により、前条第六項の規定により支払つた額に過額若しくは不足額を生じ、又は同項の規定により支払を要しないこととなつたときは、当該被害者から過額を徴収し、若しくは当該被害者に対し不足額を支払い、又は当該被害者から同項の規定により支払つた額を徴収しなければならない。
(鉱害賠償責任との関係)
第七十五条 農地又は農業用施設について生じた鉱害であつて、その農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事に係るものは、それぞれ、左に掲げる時に消滅したものとみなす。
一 第七十三条第一項の検査によりその本来有していた効用が回復されていると認められた場合
イ 検査の後三年以内に前条第一項の規定による再検査の請求がなかつたときは、検査の後三年を経過した時
ロ 前条第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三条第二項の規定による認定を変更する必要がないと認められたときは、前条第三項の規定による通知があつた時
ハ 前条第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められたときは、同条第六項の規定による支払があつた時
二 第七十三条第一項の規定による検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められた場合において、同条第六項の規定による支払があつたとき。
イ 検査の後三年以内に前条第一項の規定による再検査の請求がなかつたときは、検査の後三年を経過した時
ロ 前条第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査によりその本来有していた効用が回復されていると認められたとき、又は第七十三条第六項の規定により支払つた額に過額を生じたときは、前条第三項の規定による通知があつた時
ハ 前条第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三条第二項の規定による認定を変更する必要がないと認められたときは、前条第三項の規定による通知があつた時
ニ 前条第一項の規定による再検査の請求があつた場合において、再検査により第七十三条第六項の規定により支払つた額に不足額を生じたときは、前条第七項の規定による支払があつた時
第七十六条 前条に規定する鉱害に係る被害者は、当該復旧工事が完了した時から同条各号に規定する時までは、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないことにより生ずる損害について、賠償義務者に対し、賠償の請求をすることができない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。
一 前条第一号ハ又は第二号ニに規定する場合において、第七十四条第三項の規定による通知があつた日から五月以内に同条第六項又は第七項の規定による支払がなかつたとき。
二 第七十三条第一項の検査によりその本来有していた効用が回復されていないと認められた場合において、同条第三項の期間の末日から四月以内に同条第六項の規定による支払がなかつたとき。
2 前項但書第二号に規定する場合において、第七十三条第三項の期間の末日から四月を経過した後に同条第六項の規定による支払があつたときは、当該被害者は、その支払があつた時から前条第二号に規定する時までは、当該農地又は農業用施設が本来有していた効用が回復されていないことにより生ずる損害について、賠償義務者に対し、賠償の請求をすることができない。但し、前条第二号ニに規定する場合において、第七十四条第三項の規定による通知があつた日から五月以内に同条第七項の規定による支払がなかつたときは、この限りでない。
(かんがい排水施設の引渡等)
第七十七条 復旧工事の施行者は、農地が本来有していた効用を維持するため復旧工事により新たにかんがい排水施設を設けた場合において、その復旧工事について第七十三条第一項の検査を受けたときは、一月以内に、その施設に係る農地の所有者若しくは占有者又はこれらの者の組織する団体その他適当と認められる者のうちから、その同意を得てその施設の維持管理を行う者を定め、その者にその施設を引き渡さなければならない。
2 復旧工事の施行者(事業団を除く。)は、その復旧工事について第七十三条第一項の検査を受けた後一月以内に前項に規定する者の同意を得ることができないときは、直ちに、事業団に同項に規定する施設を引き渡さなければならない。
3 復旧工事の施行者(事業団を除く。)は、第一項に規定する者に同項に規定する施設を引渡したときは、遅滞なく、その旨を事業団に通知しなければならない。
4 事業団は、前項の規定による通知を受けたときは、三月以内に、第一項の規定により同項に規定する施設の引渡を受けた者に対し、その施設の維持管理に要する費用であつて、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に記載されている金額を支払わなければならない。
(天災時における特別助成)
第七十八条 国は、農地が、その復旧工事の完了後において、こう水等不測の天災に際し他の一般の農地に比し特別の被害を受けたときは、当該農地の所有者又は占有者たる被害者に対し、農林大臣の定める金額の範囲内において特別の助成を行うことができる。
(復旧不適地の処理)
第七十九条 事業団は、第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画において復旧工事に着手すべき地区として記載された地区内に所在する農地のうち、第五十一条第一項第一号に掲げる農地に該当するものであつて、その本来有していた効用を回復することが著しく困難なため第五十六条第一項前段の認可があつた実施計画において復旧の目的とならなかつた農地(以下「復旧不適地」という。)がある場合において、農林大臣が農林省令、通商産業省令で定める算定基準に従い、その復旧不適地について支払うべき金額を定めたときは、その復旧不適地の所有者に対し、その定められた金額を支払わなければならない。
2 農林大臣は、前項の規定により復旧不適地について支払うべき金額を定めようとするときは、あらかじめ、当該復旧不適地の所在地の市町村長の意見を聞かなければならない。
3 第一項の規定による支払があつたときは、当該復旧不適地に係る鉱害は、消滅したものとみなす。
第四章 家屋等の復旧工事に関する協議及び裁定
(家屋等の復旧に関する届出等)
第八十条 鉱害が生じている家屋等に係る賠償義務者は、事業年度ごとに、通商産業省令の定めるところにより、当該事業年度において復旧工事を行おうとする家屋等を通商産業局長に届け出なければならない。
2 通商産業局長は、特に必要があると認めるときは、鉱害が生じている家屋等に係る賠償義務者に対し、家屋等の復旧を目的とする復旧工事に関する復旧計画の提出を命ずることができる。
(被害者の申出)
第八十一条 鉱害が生じている家屋等の所有者又は占有者たる被害者は、その鉱害により家屋等の効用が著しく阻害されている場合又は第四十八条第一項前段の認可があつた復旧基本計画に基く復旧工事の施行に伴い家屋等の復旧を目的とする復旧工事を施行することが必要となつた場合においては、通商産業省令の定めるところにより、その家屋等の復旧を目的とする復旧工事に関し、その家屋等の所在地の市町村長を経由して、通商産業局長に対し、賠償義務者との協議のあつ旋を申し出ることができる。但し、その家屋等に生じている鉱害の賠償に関し、確定判決があつたとき、又は訴訟が係属し、若しくは調停手続が行われているときは、この限りでない。
2 鉱害が生じている家屋等の占有者が前項の申出をするには、あらかじめ、その家屋等の所有者の同意を得なければならない。
3 第一項の規定により市町村長を経由する場合において、当該市町村長は、その家屋等の復旧を目的とする復旧工事を特に必要と認めるときは、その理由を記載した意見書を附さなければならない。
(協議命令及び協議のあつ旋)
第八十二条 通商産業局長は、前条の規定による申出があつた場合において、当該申出に係る家屋等の復旧工事が第八十条第一項の規定による届出があつた家屋等に係るものについては、すみやかに、当事者に対し、期限を定めて、当該復旧工事の施行に関し協議すべき旨を命ずることができる。
2 通商産業局長は、前条の規定による申出があつた場合において、当該申出に係る家屋等の復旧工事が第八十条第一項の規定による届出があつた家屋等に係るものでないものについても、特に必要があると認めるときは、当該賠償義務者と当該申出者のために、当該申出に係る家屋等の復旧工事の施行に関し協議のあつ旋をしなければならない。
3 通商産業局長は、前項の場合において、当該賠償義務者の当該家屋等の復旧工事の施行についての同意があつたとき又は金銭をもつてする賠償の額に比し著しく多額の費用を要しないで復旧工事により原状の回復をすることができると認めるときは、当事者に対し、期限を定めて、当該復旧工事の施行に関し協議すべき旨を命ずることができる。
(裁定の申請)
第八十三条 前条第一項又は第三項の規定による命令を受けた者は、定められた期限内に協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、通商産業局長の裁定を申請することができる。
2 第八十一条第一項但書の規定は、前項の場合に準用する。
3 通商産業局長は、第一項の規定による裁定の申請があつた場合において、申請に係る事案が第八十一条第一項但書の場合に該当するに至つたときは、その申請を却下しなければならない。
(聴聞)
第八十四条 通商産業局長は、前条第一項の規定による裁定の申請があつたときは、その申請書の副本を他の当事者に交付するとともに、当事者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
2 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
3 聴聞に際しては、当事者及び利害関係人に対し、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(裁定)
第八十五条 通商産業局長は、聴聞の結果に基き裁定を行う。
2 前項の裁定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
3 通商産業局長は、第一項の裁定をしたときは、裁定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
第八十六条 通商産業局長は、第八十三条第一項の規定による裁定の申請を受けた場合において、石炭の掘採のための掘さくによる土地の陥落又はたい積した捨石の崩壊が停止していると認められる場合においては、金銭をもつてする賠償の額に比し著しく多額の費用を要しないで復旧工事により原状の回復をすることができると認めるときは、復旧工事を施行すべき旨の裁定をしなければならない。
2 通商産業局長は、復旧工事を施行すべき旨の裁定をするときは、その裁定において復旧工事の概要並びにその着手及び完了の時期を定めなければならない。
3 通商産業局長は、前項の場合において、損害の発生に関し被害者の責に帰すべき事由があつたと認めるとき、又は復旧工事によりその家屋等が鉱害により減少した効用以上の効用が回復されるため被害者が著しく利益を受けると認めるときは、損害の発生に関し被害者の責に帰すべき事由又は被害者が利益を受ける限度をしんしやくして、被害者が負担すべき復旧工事に要する費用の額及び支払の時期を定めなければならない。
第八十七条 通商産業局長は、第八十三条第一項の規定による裁定の申請を受けた場合において、石炭の掘採のための掘さくによる土地の陥落又はたい積した捨石の崩壊が停止していないと認められる場合においては、必要且つ適当であると認めるときは、家屋等の効用を維持するために必要な仮工事を施行すべき旨の裁定をすることができる。
2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(裁定の効果)
第八十八条 第八十五条の裁定があつたときは、鉱害が生じている家屋等の復旧を目的とする復旧工事又はその効用を維持するために必要な仮工事の施行に関し家屋等の所有者又は占有者たる被害者と賠償義務者との間に、協議がととのつたものとみなす。
(裁定の失効)
第八十九条 第八十六条第一項の裁定があつた場合において、被害者が支払の時期までにその負担すべき復旧工事に要する費用を支払わないときは、裁定は、その効力を失う。
第五章 補則
(異議の申立)
第九十条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による行政庁の処分に対し異議のある者は、その旨を記載した書面をもつて、主務大臣に対し、異議の申立をすることができる。
第九十一条 主務大臣は、前条の異議の申立を受理したときは、その申立をした者に対し、相当な期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、異議の申立をした者及び利害関係人に対し、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
第九十二条 主務大臣は、当該事案について、文書をもつて決定をし、その写を異議の申立をした者及び利害関係人に送付しなければならない。
第九十三条 異議の申立、予告、聴聞及び決定の手続について必要な事項は、政令で定める。
(国及び都道府県の補助)
第九十四条 国は、その予算の範囲内において、農地、農業用施設又は公共施設の復旧を目的とする復旧工事について第五十六条第一項前段の認可を受けた者に対し、補助金を交付することができる。
2 都道府県は、国が前項の規定により補助金を交付する農地又は農業用施設の復旧を目的とする復旧工事について第五十六条第一項前段の認可を受けた者に対し、補助金を交付する。
3 前二項の規定により農地又は農業用施設(第五十一条第一項第四号に掲げるものを除く。)の復旧を目的とする復旧工事の施行者に対し国及び都道府県が交付する補助金の合計額は、その復旧工事に係る復旧費等から第五十条第一項の納付金及び第五十二条の負担金を控除した残額とし、国及び都道府県が交付する補助金の額の割合は、政令で定める。
第九十五条 国は、前条第一項の規定により補助金を交付した公共施設の復旧を目的とする復旧工事が完了したときは、その公共施設に係る賠償義務者に対し、政令で定めるところにより、その交付した補助金の額以内の額を支払わせることができる。
(補助金の返還)
第九十六条 第九十四条第一項又は第二項の規定により補助金の交付を受けた者は、その復旧工事の復旧費に剰余を生じたときは、政令で定めるところにより、その交付を受けた補助金の全部又は一部を国又は都道府県に返還しなければならない。
2 主務大臣又は都道府県知事は、第六十条第二項の規定による認可の取消があつたときは、その者に対し、第九十四条第一項又は第二項の規定により交付した補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる。
(地方公共団体及び復旧工事の施行者の事業団に対する事務経費の負担)
第九十七条 地方公共団体は、事業団の事業年度ごとに、事業団に対し、その事務経費の一部を補助するため、前事業年度中にその復旧費の全部又は一部を事業団が負担して施行された復旧工事であつて、その地方公共団体が維持管理を行う公共施設の復旧を目的とするものの復旧費に百分の四以内において政令で定める割合を乗じて得た金額を交付しなければならない。
2 第五十六条第一項前段に規定する復旧工事の施行者は、第九十四条第一項の規定により補助金の交付を受けたときは、政令で定めるところにより、事業団に対し、その事務経費の一部に充てるため、交付を受けた補助金であつて、第二条第三項に規定する事務費に対するものの一部に相当する額を交付しなければならない。
(報告及び立入検査)
第九十八条 主務大臣は、第四十八条第一項の復旧基本計画、復旧工事の施行又は復旧工事後の措置の適正を図るため特に必要があると認めるときは、鉱業権者、租鉱権者、鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者、復旧工事の施行者、被害者若しくは第五十二条の受益者から報告を徴し、又はその職員に左に掲げる場所に立ち入り、鉱害若しくは復旧工事の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
一 石炭鉱業又は亜炭鉱業の事業場
二 鉱害が生じている場所
三 復旧工事の作業場又はその附属材料置場
四 鉱業権者、租鉱権者、鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者又は復旧工事の施行者の事務所又は営業所
2 第四十条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査に準用する。
(主務大臣の権限の委任)
第九十九条 この法律の規定による主務大臣の権限であつて、政令で定めるものは、地方支分部局の長又は都道府県知事が行う。
第六章 罰則
第百条 事業団の役員、評議員又は職員がその職務に関して、賄ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、二年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、収受した賄ろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
3 第一項の賄ろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第百一条 第六十条第一項の規定に違反して、第五十六条第一項前段の認可があつた実施計画に従つて、復旧工事を施行しなかつた者は、五万円以下の罰金に処する。
第百二条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第四十条第一項又は第九十八条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第六十二条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三 第九十八条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第百三条 左の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした事業団の役員、職員又は清算人は、三万円以下の罰金に処する。
一 第二十八条第一項若しくは第二項、第三十一条第二項、第三十二条第一項、第三十四条第一項若しくは第二項、第三十五条第二項、第六十八条第一項但書(同条第三項において準用する場合を含む。)又は第七十一条第二項の規定により通商産業大臣の認可を受けてしなければならない事項を認可を受けないでしたとき。
二 第三十一条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
三 第三十三条、第三十六条、第四十三条又は第四十六条第一項の規定により通商産業大臣の承認を受けてしなければならない事項を承認を受けないでしたとき。
四 第三十五条第一項の規定に違反して、同項に規定する準備金を積み立てなかつたとき。
五 第三十八条第二項の規定による通商産業大臣の命令に違反したとき。
六 第四十条第一項の規定による報告もせず、又は虚偽の報告をしたとき。
七 第四十四条又は第四十五条の規定に違反して、残余財産を処分し、又は分配したとき。
第百四条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第六条第二項の規定に違反した者
二 第二十七条の規定に違反して、取得した秘密を漏らし、又は窃用した者
三 第三十七条第一項の規定による資料を提出せず、又は虚偽の資料を提出した者
第百五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、第百一条、第百二条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第百六条 左の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした事業団の役員、職員又は清算人を一万円以下の過料に処する。
一 第七条第一項の規定による政令に違反して、登記することを怠り、又は不実の登記をしたとき。
二 第二十九条第一項又は第二項の規定に違反したとき。
三 第三十六条、第四十三条又は第四十六条に規定する書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、施行の日から十年以内に廃止するものとする。
3 特別鉱害復旧臨時措置法の一部を次のように改正する。
第四条を次のように改める。
(処分、手続その他の行為の効力)
第四条 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする鉱業権者若しくは租鉱権者、被指定者、復旧工事の施行者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の承継人に対しても、その効力を有する。
2 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする採掘権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の設定又は租鉱区の増加があつたときは、租鉱権の範囲内において、石炭を目的とする租鉱権者に対しても、その効力を有する。
3 この法律の規定によつてした処分及び石炭を目的とする租鉱権者がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、租鉱権の消滅又は租鉱区の減少があつたときは、石炭を目的とする採掘権の範囲内において、石炭を目的とする採掘権者に対しても、その効力を有する。但し、石炭を目的とする採掘権の消滅による租鉱権の消滅の場合は、この限りでない。
第十一条の見出し中「被指定者」を「被指定者等」に改める。
第二十四条第一項中「石炭を目的とする鉱業権者」の下に「(租鉱権者を含む。以下同じ。)」を加え、同条第二項但書中「被指定者が現に」を「納付義務者が現に」に、「被指定者について」を「納付義務者について」に改める。
4 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「日本放送協会、」の下に「鉱害復旧事業団、」を、「放送法、」の下に「臨時石炭鉱害復旧法、」を加える。
5 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号の十の次に次の一号を加える。
六ノ十一 鉱害復旧事業団ノ発スル証書、帳簿
6 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第十号中「及び日本放送協会」を「、日本放送協会及び鉱害復旧事業団」に改める。
7 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第六号の次に次の一号を加える。
七 鉱害復旧事業団
8 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第二十四条第三号及び第三百四十八条第一項中「及び日本放送協会」を「、日本放送協会及び鉱害復旧事業団」に改める。
第七百四条中「及び日本電信電話公社」を「、日本電信電話公社及び鉱害復旧事業団」に改める。
第七百四十三条第三号中「及び一般放送事業者」を「、一般放送事業者及び鉱害復旧事業団」に改める。
9 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第三条第五号中「又は土地改良区(土地改良区連合を含む。以下同じ。)」を「、土地改良区(土地改良区連合を含む。以下同じ。)又は鉱害復旧事業団」に改め、同条第六号の次に次の一号を加える。
六の二 地方公共団体又は鉱害復旧事業団が臨時石炭鉱害復旧法(昭和二十七年法律第二百九十五号)によつて行う客土事業又は復旧工事の施行に伴い設置する用排水機若しくは地下水源の利用に関する設備
内閣総理大臣 吉田茂
法務大臣 木村篤太郎
大蔵大臣 池田勇人
文部大臣 天野貞祐
厚生大臣 吉武恵市
農林大臣 広川弘禅
通商産業大臣 高橋龍太郎
運輸大臣 村上義一
建設大臣 野田卯一