海上保安庁法
法令番号: 法律第28号
公布年月日: 昭和23年4月27日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

終戦後の日本の海上における航海の安全と治安が危険と不安に晒されているにもかかわらず、これに対処できる制度組織が存在しないため、新たな制度創設が必要である。日本の沿岸水域は海難事故が多く、航海補助施設の整備も不十分である。また船舶や船員の質の低下により海難事故が多発し、救助対策も貧弱である。海軍解体後は海上治安維持力が皆無で、密貿易や不法入国が増加している。現状では各機関が個別に対応しているため非効率的であり、一元的に管理運用する行政機関として海上保安庁の設立が必要である。

参照した発言:
第2回国会 衆議院 治安及び地方制度委員会 第20号

審議経過

第2回国会

衆議院
参議院
(昭和23年4月2日)
衆議院
参議院
衆議院
(昭和23年4月6日)
参議院
(昭和23年4月6日)
(昭和23年4月14日)
(昭和23年4月14日)
衆議院
(昭和23年4月15日)
(昭和23年5月6日)
海上保安廳法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年四月二十七日
内閣総理大臣 芦田均
法律第二十八号
海上保安廳法
第一章 組織
第一條 港、湾、海峡その他の日本國の沿岸水域において海上の安全を確保し、並びに法律の違反を予防し、搜査し、及び鎭圧するため、運輸大臣の管理する外局として海上保安廳を置く。
河川の口にある港と河川との境界は、別に法律でこれを定める。
第二條 海上保安廳は、船舶の安全に関する法令の海上における励行、船舶職員の資格及び定員、海難救助、海難の調査、水先人、海上における犯罪の予防及び鎭圧、海上における犯人の搜査及び逮捕、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帶する事項に関する事務を掌る。
從來運輸大臣官房、運輸省海運総局の長官官房、海運局、船舶局及び船員局、海難審判所の理事官、燈台局、水路部並びにその他の行政機関の所掌に屬する事務で前項の事務に該当するものは、海上保安廳の所掌に移るものとする。
第三條 海上保安廳のすべての職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については、國家公務員法の定めるところによる。
海上保安廳の職員の総数は、一万人を超えてはならない。
第四條 海上保安廳の船舶は、航路標識を維持し、密貿易を防止し、遭難船員に援助を與え、又は海難に際し人命及び財産を保護するのに適当な構造、設備及び性能を有する船舶でなければならない。
海上保安廳の船舶は、港内艇を除いて、その隻数において百二十五隻を超えてはならず、その全トン数において五万総トンを超えてはならず、又、そのいずれも千五百排水トンを超えてはならず、又、十五ノツト以上の速力を有するものであつてはならない。
海上保安廳の船舶は、番号及び他の船舶と明らかに識別し得るような標識を附し、國旗及び海上保安廳の旗を掲げなければならない。
第五條 海上保安廳に長官官房、保安局、水路局及び燈台局を置く。
第六條 長官官房においては、左の事務を掌る。
一 職員の任免、分限、懲戒、教養、訓練その他進退身分に関する事項
二 長官の官印及び廳印の管守に関する事項
三 所管行政に関する調査、企画及び考査一般並びに総合調整に関する事項
四 公文書類の接受、発送、編さん及び保存に関する事項
五 統計報告の調製に関する事項
六 経費及び収入の予算、決算、会計及び会計の監査に関する事項
七 海上保安廳の中他局の所管に屬しない官有財産及び物品に関する事項
第七條 保安局においては、左の事務を掌る。
一 航法及び船舶交通に関する信号に関する事項
二 船舶の安全に関する法令の海上における励行並びに船舶職員の資格及び定員に関する事項
三 船舶交通の障害の除去に関する事項
四 海難の際の人命、積荷及び船舶の救助並びに天災事変その他救済を要する場合における必要な援助に関する事項
五 海難の調査に関する事項
六 海難審判所に対する審判の請求及び海難審判所の裁決の執行に関する事項
七 海上保安廳以外の者で海上において人命、積荷及び船舶の救助を行うもの並びに船舶交通に対する障害を除去するものの監督に関する事項
八 旅客又は貨物の海上運送に從事する者に対する海上における保安のため必要な監督に関する事項
九 水先人及び水先業務の監督に関する事項
十 沿岸水域における巡視警戒に関する事項
十一 海上における密貿易、不法入出國その他の犯罪の予防及び鎖圧に関する事項
十二 海上における犯人の搜査及び逮捕に関する事項
十三 海上における暴動及び騷乱の予防及び鎭圧に関する事項
十四 海上保安廳の使用する基地施設、通信施設及び船舶の管理及び運用に関する事項並びに税関、檢疫所その他の行政廳がその職務を行う場合における当該行政廳に対する海上交通の便宜の供與に関する事項
十五 國家地方警察及び市町村警察(以下警察行政廳という。)、税関、檢疫所その他関係行政廳との間における協力、共助及び連絡に関する事項
第八條 水路局においては、左の事務を掌る。
一 水路の測量及び海象の観測に関する事項
二 水路図誌及び航空図誌の調製及び供給に関する事項
三 船舶交通の安全のために必要な事項の通報に関する事項
四 前各号に掲げる事項の調査及び研究に関する事項
第九條 燈台局においては、左の事務を掌る。
一 燈台その他の航路標識の建設、保守、運用及び用品に関する事項
二 燈台その他の航路標識の附屬の設備による氣象の観測に関する事項
三 海上保安廳以外の者で燈台その他の航路標識の建設、保守又は運用を行うものの監督に関する事項
第十條 海上保安廳に長官一人を置く。
海上保安廳長官は、運輸大臣の指揮監督を受け、廳務を統理し、所部の職員を指揮監督する。但し、運輸大臣以外の大臣又は法務総裁の所管に屬する事務については、各々その大臣又は法務総裁の指揮監督を受ける。
第十一條 海上保安廳の各局に局長一人を置く。
局長は、長官の命を受け、局務を掌理し、局中各課の事務を指揮監督する。
第十二條 運輸大臣は、必要と認める地に事務所を置き、海上保安廳の事務を分掌させることができる。
第十三條 海上保安廳水路局長は、水路告示を発することができる。
第十四條 第七條第二号乃至第五号及び第七号乃至第十三号に掲げる職務、水路の測量、海象の観測、燈台その他の航路標識の保守及び運用並びに氣象の観測の業務を行わせるため、海上保安廳に海上保安官を置く。
海上保安官は、第三條又は第三十六條の規定に從い任命された海上保安廳の職員の中から、運輸大臣が、これを命ずる。
第十五條 海上保安官がこの法律の定めるところにより法令の励行に関する事務を行う場合には、その権限については、当該海上保安官は、各々の法令の施行に関する事務を所管する行政官廳の当該官吏とみなされ、当該法令の励行に関する事務に関し行政官廳の制定する規則の適用を受けるものとする。
第十六條 海上保安官は、第七條第四号に掲げる職務を行うため必要があるとき、又は犯人を逮捕するに当り必要があるときは、附近にある人に対し協力を求めることができる。
第十七條 海上保安官は、その職務を行うため必要があるときは、船長又は船長に代つて船舶を指揮する者に対し、法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ、船舶の同一性、船籍港、船長の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積荷の性質又は積荷の有無その他船舶、積荷及び航海に関し重要と認める事項を確かめるため船舶に立入檢査をし、且つ、乘組員及び旅客に対しその職務を行うために必要な質問をすることができる。
海上保安官は、前項の規定により立入檢査をし、又は質問するときは、制服を着用し、又はその身分を示す証票を携帶しなければならない。
第十八條 海上保安官は、その職務を行うため四囲の情況から眞にやむを得ないときは、その職務の執行につき他の法令に定のあるものの外、左に掲げる処分をすることができる。
一 船舶の進行を停止させ、又はその出発を差し止めること。
二 航路を変更させ、又は指定する港に回航させること。
三 乘組員、旅客その他船内にある者を下船させ、又はその下船を制限し、若しくは禁止すること。
四 積荷を陸揚させ、又は積荷の陸揚を制限し、若しくは禁止すること。
五 船舶が檢疫若しくは調査を受けるとき、又は抑留され若しくは人命に対し危險であるとき、当該船舶と他船又は陸地との交通を制限し、又は禁止すること。
第十九條 海上保安官は、その職務を行うため、武器を携帶することができる。
第二十條 海上保安官は、その職務を行うに当り、特に自己又は他人の生命又は身体の保護に関し、やむを得ない必要がある場合を除いては、武器を使用してはならない。
第二十一條 運輸大臣は、第三條又は第三十六條の規定に從い任命された海上保安廳の職員の中から、港長を命ずる。
港長は、海上保安廳長官の指揮監督を受け、港則に関する法令に規定する事務を掌る。
第二十二條 運輸大臣は、第三條又は第三十六條の規定に從い任命された海上保安廳の職員の中から、海難審判理事官を命ずる。
海難審判理事官は、海上保安廳長官の指揮監督を受け、第七條第六号の事務を掌る。
第二十三條 海上保安廳の職員の服務に関する規則は、國家公務員に関する法令に触れない範囲内で、運輸大臣が、これを定める。
第二十四條 航路標識を維持し、密貿易を防止し、及び遭難船員に援助を與えるため、海上保安廳長官は、必要に應じ船舶の基地及び担任区域を定める。
第二十五條 この法律のいかなる規定も海上保安廳又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。
第二章 海上保安委員会
第二十六條 海上保安制度の運用及び改善に関する事項を審議するため、海上保安廳に海上保安委員会を置く。
海上保安委員会は、これを中央海上保安委員会及び地方海上保安委員会とする。
中央海上保安委員会及び地方海上保安委員会は、海上保安廳長官の諮問に應ずる外、海上保安制度の運用及び改善に関し海上保安廳長官に建議することができる。
第三章 共助
第二十七條 海上保安廳及び警察行政廳、税関その他の関係行政廳は、連絡を保たなければならず、又、犯罪の予防若しくは鎭圧又は犯人の搜査及び逮捕のため必要があると認めるときは、相互に協議し、且つ、関係職員の派遣その他必要な協力を求めることができる。
前項の規定による協力を求められた海上保安廳、警察行政廳、税関その他の関係行政廳は、できるだけその求に應じなければならない。
第二十八條 前條の場合において派遣された職員は、その派遣を求めた行政廳の指揮を受けなければならない。
第四章 補則
第二十九條 海上保安廳長官は、その職権の一部を所部の職員に委任することができる。
第三十條 海上保安廳長官に事故のあるとき、又は、海上保安廳長官が欠けたときは、海上保安廳の職員が、予め運輸大臣の定める順序により、臨時に海上保安廳長官の職務を行う。
第三十一條 二級の運輸事務官又は運輸技官を以て充てられた海上保安官は、海上における犯罪につき刑事訴訟法第二百四十八條に規定する司法警察官の職務を行い、三級の運輸事務官又は運輸技官を以て充てられた海上保安官は、海上の犯罪につき同法第二百四十九條に規定する司法警察吏の職務を行う。
第三十二條 巡視警戒に任ずる船舶の乘組員は、労働組合法第四條第一項及び労働関係調整法第三十八條の規定の適用については、これを警察官吏とみなす。
第三十三條 この法律に定めるものの外、海上保安廳の職員の種類及び所掌事項、海上保安委員会の組織、委員の資格及び任期その他海上保安廳の職員及び海上保安委員会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第三十四條 この法律施行の期日は、政令でこれを定める。但し、その期日は、昭和二十三年五月一日後であつてはならない。
第三十五條 海上保安廳は、当分の間旧海軍艦船の保管に関する事務を掌る。
前項の事務は、海上保安廳保安局の所掌とする。
第三十六條 海上保安廳の職員に関する人事委員会規則が制定されるまでは、海上保安廳のすべての職員の人事管理に関する事項については、第三條第一項の規定にかかわらず、なお政府職員に関する從前の例による。
第三十七條 この法律のいかなる規定も、予算がないのに、この法律に規定する機能及び活動を行うために、その際の職員の定員を超えて職員を採用することを認めるものとこれを解釈してはならない。
第三十八條 燈台補給船第十八日正丸(二千五総トン)及び水路測量船宗谷(二千二百七総トン)は、第四條第二項の規定にかかわらず、その存する間に限り、その一隻当りトン数において千五百排水トンを超えることができる。
第三十九條 この法律施行の際現に存する法令(連合國最高司令官の指示に從い制定された法令を除く。)の規定でこの法律の規定に反するものは、その効力を失う。
第四十條 運輸省官制の一部を次のように改正する。
第一條中「運輸大臣ハ」の下に「海上保安廳ノ所掌ニ屬スル事項ヲ除クノ外」を加える。
第二條中「(海運総局ノ主管ニ屬スルモノヲ除ク)」を削る。
第五條第一号中「、水路、航路標識」及び同條第四号を削り、同條第五号を第四号とする。
第四十一條 海運局官制の一部を次のように改正する。
第一條第一号中「、航路其ノ他ノ水運ニ関スル事項但シ航路標識ニ関スル事項ヲ除ク」を「其ノ他ノ水運ニ関スル事項但シ海上保安廳ノ所掌ニ屬スル事項ヲ除ク」に改め、同條中第二号を削り、第三号を第二号とし、第四号を第三号とする。
第五條を削り、第六條を第五條とする。
第四十二條 海難審判法の一部を次のように改正する。
第十七條及び第十八條 削除
第二十八條中「地方海難審判所」の下に「の所在地を管轄する海上保安廳法第十二條に規定する海上保安廳の事務所(以下單に海上保安廳の事務所という。)」を加える。
第二十九條中「高等海難審判所」を「海上保安廳保安局」に改める。
第三十條中「地方海難審判所」を「海上保安廳の事務所」に改める。
第五十四條中「高等海難審判所の理事官」を「海上保安廳保安局の理事官」に改める。
第五十八條 高等海難審判所の裁決は、海上保安廳保安局の理事官が、地方海難審判所の裁決は、当該地方海難審判所の所在地を管轄する海上保安廳の事務所の理事官が、これを執行する。
第四十三條 燈台局官制及び水路部官制は、これを廃止する。
大藏大臣 北村徳太郎
法務総裁 鈴木義男
厚生大臣 竹田儀一
農林大臣 永江一夫
運輸大臣 岡田勢一
内閣総理大臣 芦田均
海上保安庁法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年四月二十七日
内閣総理大臣 芦田均
法律第二十八号
海上保安庁法
第一章 組織
第一条 港、湾、海峡その他の日本国の沿岸水域において海上の安全を確保し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため、運輸大臣の管理する外局として海上保安庁を置く。
河川の口にある港と河川との境界は、別に法律でこれを定める。
第二条 海上保安庁は、船舶の安全に関する法令の海上における励行、船舶職員の資格及び定員、海難救助、海難の調査、水先人、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を掌る。
従来運輸大臣官房、運輸省海運総局の長官官房、海運局、船舶局及び船員局、海難審判所の理事官、灯台局、水路部並びにその他の行政機関の所掌に属する事務で前項の事務に該当するものは、海上保安庁の所掌に移るものとする。
第三条 海上保安庁のすべての職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については、国家公務員法の定めるところによる。
海上保安庁の職員の総数は、一万人を超えてはならない。
第四条 海上保安庁の船舶は、航路標識を維持し、密貿易を防止し、遭難船員に援助を与え、又は海難に際し人命及び財産を保護するのに適当な構造、設備及び性能を有する船舶でなければならない。
海上保安庁の船舶は、港内艇を除いて、その隻数において百二十五隻を超えてはならず、その全トン数において五万総トンを超えてはならず、又、そのいずれも千五百排水トンを超えてはならず、又、十五ノツト以上の速力を有するものであつてはならない。
海上保安庁の船舶は、番号及び他の船舶と明らかに識別し得るような標識を附し、国旗及び海上保安庁の旗を掲げなければならない。
第五条 海上保安庁に長官官房、保安局、水路局及び灯台局を置く。
第六条 長官官房においては、左の事務を掌る。
一 職員の任免、分限、懲戒、教養、訓練その他進退身分に関する事項
二 長官の官印及び庁印の管守に関する事項
三 所管行政に関する調査、企画及び考査一般並びに総合調整に関する事項
四 公文書類の接受、発送、編さん及び保存に関する事項
五 統計報告の調製に関する事項
六 経費及び収入の予算、決算、会計及び会計の監査に関する事項
七 海上保安庁の中他局の所管に属しない官有財産及び物品に関する事項
第七条 保安局においては、左の事務を掌る。
一 航法及び船舶交通に関する信号に関する事項
二 船舶の安全に関する法令の海上における励行並びに船舶職員の資格及び定員に関する事項
三 船舶交通の障害の除去に関する事項
四 海難の際の人命、積荷及び船舶の救助並びに天災事変その他救済を要する場合における必要な援助に関する事項
五 海難の調査に関する事項
六 海難審判所に対する審判の請求及び海難審判所の裁決の執行に関する事項
七 海上保安庁以外の者で海上において人命、積荷及び船舶の救助を行うもの並びに船舶交通に対する障害を除去するものの監督に関する事項
八 旅客又は貨物の海上運送に従事する者に対する海上における保安のため必要な監督に関する事項
九 水先人及び水先業務の監督に関する事項
十 沿岸水域における巡視警戒に関する事項
十一 海上における密貿易、不法入出国その他の犯罪の予防及び鎖圧に関する事項
十二 海上における犯人の捜査及び逮捕に関する事項
十三 海上における暴動及び騒乱の予防及び鎮圧に関する事項
十四 海上保安庁の使用する基地施設、通信施設及び船舶の管理及び運用に関する事項並びに税関、検疫所その他の行政庁がその職務を行う場合における当該行政庁に対する海上交通の便宜の供与に関する事項
十五 国家地方警察及び市町村警察(以下警察行政庁という。)、税関、検疫所その他関係行政庁との間における協力、共助及び連絡に関する事項
第八条 水路局においては、左の事務を掌る。
一 水路の測量及び海象の観測に関する事項
二 水路図誌及び航空図誌の調製及び供給に関する事項
三 船舶交通の安全のために必要な事項の通報に関する事項
四 前各号に掲げる事項の調査及び研究に関する事項
第九条 灯台局においては、左の事務を掌る。
一 灯台その他の航路標識の建設、保守、運用及び用品に関する事項
二 灯台その他の航路標識の附属の設備による気象の観測に関する事項
三 海上保安庁以外の者で灯台その他の航路標識の建設、保守又は運用を行うものの監督に関する事項
第十条 海上保安庁に長官一人を置く。
海上保安庁長官は、運輸大臣の指揮監督を受け、庁務を統理し、所部の職員を指揮監督する。但し、運輸大臣以外の大臣又は法務総裁の所管に属する事務については、各々その大臣又は法務総裁の指揮監督を受ける。
第十一条 海上保安庁の各局に局長一人を置く。
局長は、長官の命を受け、局務を掌理し、局中各課の事務を指揮監督する。
第十二条 運輸大臣は、必要と認める地に事務所を置き、海上保安庁の事務を分掌させることができる。
第十三条 海上保安庁水路局長は、水路告示を発することができる。
第十四条 第七条第二号乃至第五号及び第七号乃至第十三号に掲げる職務、水路の測量、海象の観測、灯台その他の航路標識の保守及び運用並びに気象の観測の業務を行わせるため、海上保安庁に海上保安官を置く。
海上保安官は、第三条又は第三十六条の規定に従い任命された海上保安庁の職員の中から、運輸大臣が、これを命ずる。
第十五条 海上保安官がこの法律の定めるところにより法令の励行に関する事務を行う場合には、その権限については、当該海上保安官は、各々の法令の施行に関する事務を所管する行政官庁の当該官吏とみなされ、当該法令の励行に関する事務に関し行政官庁の制定する規則の適用を受けるものとする。
第十六条 海上保安官は、第七条第四号に掲げる職務を行うため必要があるとき、又は犯人を逮捕するに当り必要があるときは、附近にある人に対し協力を求めることができる。
第十七条 海上保安官は、その職務を行うため必要があるときは、船長又は船長に代つて船舶を指揮する者に対し、法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ、船舶の同一性、船籍港、船長の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積荷の性質又は積荷の有無その他船舶、積荷及び航海に関し重要と認める事項を確かめるため船舶に立入検査をし、且つ、乗組員及び旅客に対しその職務を行うために必要な質問をすることができる。
海上保安官は、前項の規定により立入検査をし、又は質問するときは、制服を着用し、又はその身分を示す証票を携帯しなければならない。
第十八条 海上保安官は、その職務を行うため四囲の情況から真にやむを得ないときは、その職務の執行につき他の法令に定のあるものの外、左に掲げる処分をすることができる。
一 船舶の進行を停止させ、又はその出発を差し止めること。
二 航路を変更させ、又は指定する港に回航させること。
三 乗組員、旅客その他船内にある者を下船させ、又はその下船を制限し、若しくは禁止すること。
四 積荷を陸揚させ、又は積荷の陸揚を制限し、若しくは禁止すること。
五 船舶が検疫若しくは調査を受けるとき、又は抑留され若しくは人命に対し危険であるとき、当該船舶と他船又は陸地との交通を制限し、又は禁止すること。
第十九条 海上保安官は、その職務を行うため、武器を携帯することができる。
第二十条 海上保安官は、その職務を行うに当り、特に自己又は他人の生命又は身体の保護に関し、やむを得ない必要がある場合を除いては、武器を使用してはならない。
第二十一条 運輸大臣は、第三条又は第三十六条の規定に従い任命された海上保安庁の職員の中から、港長を命ずる。
港長は、海上保安庁長官の指揮監督を受け、港則に関する法令に規定する事務を掌る。
第二十二条 運輸大臣は、第三条又は第三十六条の規定に従い任命された海上保安庁の職員の中から、海難審判理事官を命ずる。
海難審判理事官は、海上保安庁長官の指揮監督を受け、第七条第六号の事務を掌る。
第二十三条 海上保安庁の職員の服務に関する規則は、国家公務員に関する法令に触れない範囲内で、運輸大臣が、これを定める。
第二十四条 航路標識を維持し、密貿易を防止し、及び遭難船員に援助を与えるため、海上保安庁長官は、必要に応じ船舶の基地及び担任区域を定める。
第二十五条 この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。
第二章 海上保安委員会
第二十六条 海上保安制度の運用及び改善に関する事項を審議するため、海上保安庁に海上保安委員会を置く。
海上保安委員会は、これを中央海上保安委員会及び地方海上保安委員会とする。
中央海上保安委員会及び地方海上保安委員会は、海上保安庁長官の諮問に応ずる外、海上保安制度の運用及び改善に関し海上保安庁長官に建議することができる。
第三章 共助
第二十七条 海上保安庁及び警察行政庁、税関その他の関係行政庁は、連絡を保たなければならず、又、犯罪の予防若しくは鎮圧又は犯人の捜査及び逮捕のため必要があると認めるときは、相互に協議し、且つ、関係職員の派遣その他必要な協力を求めることができる。
前項の規定による協力を求められた海上保安庁、警察行政庁、税関その他の関係行政庁は、できるだけその求に応じなければならない。
第二十八条 前条の場合において派遣された職員は、その派遣を求めた行政庁の指揮を受けなければならない。
第四章 補則
第二十九条 海上保安庁長官は、その職権の一部を所部の職員に委任することができる。
第三十条 海上保安庁長官に事故のあるとき、又は、海上保安庁長官が欠けたときは、海上保安庁の職員が、予め運輸大臣の定める順序により、臨時に海上保安庁長官の職務を行う。
第三十一条 二級の運輸事務官又は運輸技官を以て充てられた海上保安官は、海上における犯罪につき刑事訴訟法第二百四十八条に規定する司法警察官の職務を行い、三級の運輸事務官又は運輸技官を以て充てられた海上保安官は、海上の犯罪につき同法第二百四十九条に規定する司法警察吏の職務を行う。
第三十二条 巡視警戒に任ずる船舶の乗組員は、労働組合法第四条第一項及び労働関係調整法第三十八条の規定の適用については、これを警察官吏とみなす。
第三十三条 この法律に定めるものの外、海上保安庁の職員の種類及び所掌事項、海上保安委員会の組織、委員の資格及び任期その他海上保安庁の職員及び海上保安委員会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第三十四条 この法律施行の期日は、政令でこれを定める。但し、その期日は、昭和二十三年五月一日後であつてはならない。
第三十五条 海上保安庁は、当分の間旧海軍艦船の保管に関する事務を掌る。
前項の事務は、海上保安庁保安局の所掌とする。
第三十六条 海上保安庁の職員に関する人事委員会規則が制定されるまでは、海上保安庁のすべての職員の人事管理に関する事項については、第三条第一項の規定にかかわらず、なお政府職員に関する従前の例による。
第三十七条 この法律のいかなる規定も、予算がないのに、この法律に規定する機能及び活動を行うために、その際の職員の定員を超えて職員を採用することを認めるものとこれを解釈してはならない。
第三十八条 灯台補給船第十八日正丸(二千五総トン)及び水路測量船宗谷(二千二百七総トン)は、第四条第二項の規定にかかわらず、その存する間に限り、その一隻当りトン数において千五百排水トンを超えることができる。
第三十九条 この法律施行の際現に存する法令(連合国最高司令官の指示に従い制定された法令を除く。)の規定でこの法律の規定に反するものは、その効力を失う。
第四十条 運輸省官制の一部を次のように改正する。
第一条中「運輸大臣ハ」の下に「海上保安庁ノ所掌ニ属スル事項ヲ除クノ外」を加える。
第二条中「(海運総局ノ主管ニ属スルモノヲ除ク)」を削る。
第五条第一号中「、水路、航路標識」及び同条第四号を削り、同条第五号を第四号とする。
第四十一条 海運局官制の一部を次のように改正する。
第一条第一号中「、航路其ノ他ノ水運ニ関スル事項但シ航路標識ニ関スル事項ヲ除ク」を「其ノ他ノ水運ニ関スル事項但シ海上保安庁ノ所掌ニ属スル事項ヲ除ク」に改め、同条中第二号を削り、第三号を第二号とし、第四号を第三号とする。
第五条を削り、第六条を第五条とする。
第四十二条 海難審判法の一部を次のように改正する。
第十七条及び第十八条 削除
第二十八条中「地方海難審判所」の下に「の所在地を管轄する海上保安庁法第十二条に規定する海上保安庁の事務所(以下単に海上保安庁の事務所という。)」を加える。
第二十九条中「高等海難審判所」を「海上保安庁保安局」に改める。
第三十条中「地方海難審判所」を「海上保安庁の事務所」に改める。
第五十四条中「高等海難審判所の理事官」を「海上保安庁保安局の理事官」に改める。
第五十八条 高等海難審判所の裁決は、海上保安庁保安局の理事官が、地方海難審判所の裁決は、当該地方海難審判所の所在地を管轄する海上保安庁の事務所の理事官が、これを執行する。
第四十三条 灯台局官制及び水路部官制は、これを廃止する。
大蔵大臣 北村徳太郎
法務総裁 鈴木義男
厚生大臣 竹田儀一
農林大臣 永江一夫
運輸大臣 岡田勢一
内閣総理大臣 芦田均