第九條 海難審判所は、地方海難審判所及び高等海難審判所の二とする。
地方海難審判所の名称、位置及び管轄区域並びに高等海難審判所の位置は、政令でこれを定める。
第十條 各海難審判所に通じて政令の定める員数の海難審判所審判官及び海難審判所事務官を置く。
海難審判所事務官は、上司の命を受けて、海難審判所の事務を掌る。
海難審判所審判官の任命及び敍級の資格に関する事項は、政令でこれを定める。
第十一條 海難審判所審判官は、独立してその職権を行う。
第十二條 運輸大臣は、各海難審判所の海難審判所審判官のうち一人に各海難審判所長を命ずる。
第十三條 各海難審判所に海難審判所書記を置き、海難審判所事務官の中から、高等海難審判所長が、これを補する。
海難審判所書記は、海難審判所審判官の命を受けて、事件に関する書類の作成、保管及び送達に関する事務を掌る。
第十四條 各海難審判所に政令の定める員数の参審員を置き、その職務に必要な学識経驗を有する者の中から、各海難審判所長が、これを命ずる。
参審員は、原因の探究が特に困難な事件の審判に参加する。
審判に参加する参審員の審判手続上の職務及び権限は、審判長以外の審判官と同一とする。
第十五條 地方海難審判所は、第一審の審判所とし、高等海難審判所は、第二審の審判所とする。
第十六條 地方海難審判所は、審判官三名を以て構成する審判所で審判を行う。但し、簡易な事件については、地方海難審判所は、命令の定めるところにより、理事官の請求に基いて、一名の審判官で審判を行う。
高等海難審判所は、審判官五名を以て構成する審判所で審判を行う。
各海難審判所は、命令の定めるところにより、第十四條第二項に規定する事件については、第一項本文又は第二項に規定する審判官及び各海難審判所長の指定する参審員二名を以て構成する審判所で審判を行う。
第一項本文、第二項及び前項の場合においては、審判官のうち一人を審判長とする。
第十七條 各海難審判所に通じて政令の定める員数の海難審判所理事官を置く。
海難審判所理事官は、審判の請求及び裁決の執行に関することを掌る。
海難審判所理事官は、その職務を行うについては、高等海難審判所理事官にあつては運輸大臣、地方海難審判所理事官にあつては、運輸大臣及び高等海難審判所理事官の命を受ける。
海難審判所理事官の任命及び敍級の資格に関する事項は、政令でこれを定める。
第十八條 各海難審判所長は、海難審判所事務官の中から、海難審判所理事官の職務を補助すべき者を命ずる。
前項の者は、その職務を行うについては、海難審判所理事官の命を受ける。
第十九條 審判に附すべき事件の管轄権は、海難の発生した地点を管轄する地方海難審判所に属する。但し、海難の発生した地点が明らかでない場合には、その海難に係る船舶の船籍港を管轄する地方海難審判所に属する。
同一事件が二以上の地方海難審判所に係属するときは、最初に審判開始の申立を受けた地方海難審判所においてこれを審判する。
國外で発生する事件の管轄については、政令の定めるところによる。
第二十條 地方海難審判所は、事件がその管轄に属しないと認めるときは、決定を以てこれを管轄地方海難審判所に移送しなければならない。
前項の規定により移送を受けた地方海難審判所は、更に事件を他の地方海難審判所に移送することはできない。
第一項の場合には、事件は、初から移送を受けた地方海難審判所に係属したものとみなす。
第二十一條 理事官又は受審人は、命令の定めるところにより、高等海難審判所に管轄の移轉を請求することができる。
高等海難審判所は、前項の規定による請求があつた場合において、審判上便益があると認めるときは、決定を以て管轄を移轉することができる。
第二十二條 海難審判所の事務処理に関する事項は、命令でこれを定める。