海上警備隊は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため緊急の必要がある場合において、海上で必要な行動をするための機関とする。
第二十五條の三 海上警備隊は、総監部及び地方監部をもつて組織する。
地方監部の名称、位置及び内部組織は、運輸省令で定める。
第二十五條の四 海上警備隊に、海上警備官その他の職員を置く。
第二十五條の五 海上警備隊の職員(以下本章において、「隊員」という。)の定員は、六千三十八人とする。
第二十五條の六 隊員は、国家公務員法第二條の特別職の職員とする。
第二十五條の七 隊員の任用、免職、叙級、休職、復職及び職務指定は、海上保安庁長官が行う。
第二十五條の八 左の各号の一に該当する者は、隊員となることができない。
二 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
三 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
第二十五條の九 隊員の任用は、試験によるものとする。但し、試験以外の能力の実証に基く選考によることを妨げない。
前項の試験及び選考その他隊員の任用の方法及び手続に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第二十五條の十 海上警備官の階級は、別表第二の通りとする。
海上警備官の階級の上下は、別表第二の列記の順序による。
第二十五條の十一 新たに任用される海上警備官の叙級は、試験によるものとする。但し、試験以外の能力の実証に基く選考によることを妨げない。
海上警備官の進級は、その階級より下位の階級にある海上警備官の間における試験によるものとする。但し、勤務成績に基く選考によることを妨げない。
前二項の試験及び選考その他海上警備官の叙級の方法及び手続に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
前三項の規定は、海上警備官以外の隊員の叙級に準用する。
第二十五條の十二 隊員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、降級され、又は免職されることがない。
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合の外、その職務に必要な適格性を欠く場合
四 組織若しくは定員の改廃又は予算の減少により、階級若しくは等級の廃止又は過員を生じた場合
前項の規定は、新たに任用された隊員であつて、その勤務した期間が任用の日から起算して六月に満たないもの(以下「新任隊員」という。)には、適用しない。
第二十五條の十三 隊員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、休職にされることがない。
前項第一号の規定による休職の期間は、三年をこえない範囲内において、休養を要する程度に応じ、海上保安庁長官が定める。
第一項第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。
休職者は、隊員としての身分及び階級又は等級を保有するが、職務に従事しない。
休職者には、法令で別段の定をする場合を除き、給与を支給しない。
海上保安庁長官は、休職者について休職の事由が消滅したときは、すみやかにその者を復職させなければならない。
休職者の員数は、第二十五條の五に定める定員に含まれないものとする。
第二十五條の十四 隊員は、第二十五條の八各号の一に該当するに至つたときは、運輸省令で定める場合を除き、当然失職する。
第二十五條の十五 海上警備官は、その階級ごとに政令で定める年齢に達したときは、当然失職する。
第二十五條の十六 海上保安庁長官は、隊員が左の各号の一に該当する場合には、懲戒処分として、戒告、減給、降級、停職又は免職の処分をすることができる。
減給は、一年以内の期間、俸給の三分の一以下を減ずるものとする。
降級は、当該処分に係る隊員の階級又は等級の一級又は二級だけ下位の階級又は等級に叙級するものとする。
停職の期間は、一年以内とする。停職者は、隊員としての身分及び階級又は等級を保有するが、特に命ぜられた場合を除き、職務に従事しない。停職者には、法令で別段の定をする場合を除き、給与を支給しない。
第二十五條の十七 何人も、隊員の任用、叙級、休職、復職、免職、懲戒処分その他の人事に関する行為を不正に実現し、又は不正にその実現を妨げる目的をもつて、金銭その他の利益を授受し、提供し、若しくはその授受を要求し、若しくは約束し、脅迫、強制その他これに類する方法を用い、又は公の地位を利用し、若しくはその利用を提供し、要求し、若しくは約束し、あるいはこれらの行為に関与してはならない。
第二十五條の十八 隊員は、法令に従い、誠実にその職務を遂行しなければならない。
隊員は、その職務の遂行に当つては、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。但し、その命令に対して意見を述べることができる。
隊員は、海上警備隊の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
第二十五條の十九 海上警備官は、その職務の遂行に当つては、制服を着用しなければならない。
第十七條第三項の規定は、海上警備官の服制に準用する。
第二十五條の二十 隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も同様とする。
隊員は、法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合には、海上保安庁長官の許可を受けなければならない。その職を退いた後も同様とする。
前項の許可は、法令に別段の定がある場合を除き、拒むことができない。
第二十五條の二十一 海上警備官は、海上保安庁長官が運輸省令で定めるところに従い指定する場所に居住しなければならない。
第二十五條の二十二 隊員は、法令に別段の定がある場合を除き、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用いなければならない。
第二十五條の二十三 隊員は、法令に別段の定がある場合を除き、海上警備隊以外の国家機関の職又は地方公共団体の機関の職に就くことができない。
隊員は、自己の職務以外の海上警備隊の職務を行い、又は海上警備隊以外の国家機関の職若しくは地方公共団体の機関の職に就く場合においても、これに対して給与を受けることができない。
第二十五條の二十四 隊員は、営利を目的とする会社その他の団体の役員若しくは顧問の地位その他これらに相当する地位に就き、又は自ら営利企業を営んではならない。
隊員は、その離職後二年間は、営利を目的とする会社その他の団体の地位で、離職前五年以内に従事していた職務と密接な関係のあるものに就いてはならない。但し、運輸省令で定める基準に従い行う海上保安庁長官の許可を受けた場合には、この限りでない。
第二十五條の二十五 隊員は、報酬を受けて、第二十五條の二十三第一項に規定する国家機関の職若しくは地方公共団体の機関の職又は前條第一項の地位以外の職又は地位に就き、あるいは営利企業以外の事業を行う場合には、運輸省令で定める基準に従い行う海上保安庁長官の許可を受けなければならない。
第二十五條の二十六 隊員は、勤務條件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。
隊員は、同盟罷業、怠業その他業務の正常な運営を阻害する争議的行為をしてはならない。
何人も、前項の行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし若しくはあおつてはならない。
第二十五條の二十七 隊員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、政令で定める政治的行為をしてはならない。
隊員は、公選による公職の候補者となることができない。
隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
第二十五條の二十八 隊員は、その意に反して、免職、休職、降級又は懲戒の処分を受けた場合には、海上保安庁長官に対してその審査を請求することができる。
海上保安庁長官は、前項の審査の請求を受けた場合には、これを公正審査会に付議しなければならない。
海上保安庁長官は、前項の規定により付議した処分に対する公正審査会の判定があつたときは、その判定に従つて必要な措置をとらなければならない。
審査の請求の手続並びに公正審査会の組織及び運営は、運輸省令で定める。
第二十五條の二十九 第十六條、第十七條第一項及び第二項並びに第十八條の規定は、三等海上警備士補の階級以上の階級を有する海上警備官に準用する。但し、海上警備隊が海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため緊急の必要がある場合において海上で行動する場合に限る。
第十九條及び第二十條の規定は、海上警備官に準用する。
第二十五條の三十 海上警備官のうち部内の秩序維持の職務に従事するものは、左に掲げる犯罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察職員として職務を行う。
一 隊員の犯した犯罪又は職務に従事中の隊員に対する犯罪その他隊員の職務に関し隊員以外の者の犯した犯罪
二 海上警備隊の使用する船舶、庁舎、宿舎その他の施設内における犯罪
海上警備官は、刑事訴訟法の規定による司法警察職員として、現行犯人の外、同法第二百十條の規定により被疑者を逮捕することができる。但し、海上警備隊が海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため緊急の必要がある場合において海上で行動する場合に限る。
海上警備官は、前項の規定により現行犯人又は被疑者を逮捕した場合には、これをすみやかに(被疑者については、刑事訴訟法第二百十條第一項の規定による逮捕状を得た後すみやかに)海上保安官又は海上保安官補に引き渡さなければならない。但し、これを引き渡すことのできないやむを得ない事情のある場合には、なお引き続き当該現行犯人又は被疑者に係る当該事件の継続処理に必要な限度において司法警察職員として職務を行うことができる。
前三項の規定により司法警察職員として職務を行う海上警備官のうち、三等海上警備士補の階級以上の階級を有するものは、司法警察員とし、その他のものは司法巡査とする。
第二十五條の三十一 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)及び船員法(昭和二十三年法律第百号、第一條、第二條、第五條、第七條から第十八條まで、第二十條、第二十五條から第二十七條まで、第百二十二條から第百二十五條まで、第百二十六條(第六号及び第七号を除く。)、第百二十七條、第百二十八條(第三号を除く。)及び第百三十四條並びにこれらに関する第百二十條の規定を除く。)の規定は、海上警備隊の使用する船舶及び隊員に関しては、適用しない。
第二十五條の三十二 船舶安全法(昭和八年法律第十一号)の規定は、海上警備隊の使用する船舶には、適用しない。
第二十五條の三十三 船舶職員法(昭和二十六年法律第百四十九号)の規定は、海上警備隊の使用する船舶及びこれに乗り組んで船舶職員の業務に従事する隊員には、適用しない。
第二十五條の三十四 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規定のうち、無線局の免許及び検査並びに無線従事者に関するものは、海上警備隊の使用する移動無線局及び当該無線局の無線設備の操作に従事する隊員には、適用しない。
海上保安庁長官は、海上警備隊の使用する移動無線局の使用しようとする周波数については、電波監理委員会の承認を受けなければならない。
第二十五條の三十五 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第二十五條の二十の規定に違反して、秘密を漏らした者
二 第二十五條の二十四第一項又は第二項の規定に違反して、会社その他の団体の地位に就き、又は自ら営利企業を営んだ者
第二十五條の三十六 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第二十五條の十七の規定に違反して、同條に規定する人事に関する不正行為をした者
二 第二十五條の二十六第一項の規定に違反して、組合その他の団体を結成した者
三 第二十五條の二十六第二項に規定する行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者
四 第二十五條の二十七第一項の規定に違反して、同項の行為をした者
第二十五條の三十七 第二十五條の三十五第一号又は前條第二号に掲げる行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし、又はそのほう助をした者は、それぞれ各本條の刑に処する。