国会法
法令番号: 法律第七十九号
公布年月日: 昭和22年4月30日
法令の形式: 法律
朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝國議会の協賛を経た國会法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月二十八日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
國務大臣 男爵 幣原喜重郞
司法大臣 木村篤太郎
國務大臣 齋藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
國務大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
内務大臣 植原悦二郎
大藏大臣 石橋湛山
國務大臣 金森徳次郎
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
文部大臣 高橋誠一郎
農林大臣 木村小左衞門
國務大臣 田中萬逸
國務大臣 高瀬莊太郎
法律第七十九号
國会法
第一章 國会の召集及び開会式
第一條 國会の召集詔書は、集会の期日を定めて、これを公布する。
常会の召集詔書は、少くとも二十日前にこれを公布しなければならない。
臨時会及び特別会(日本國憲法第五十四條により召集された國会をいう)の召集詔書の公布は、前項によることを要しない。
第二條 常会は、毎年十二月上旬にこれを召集する。但し、その会期中に議員の任期が満限に達しないようにこれを召集しなければならない。
第三條 臨時会の召集の決定を要求するには、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の議員が連名で、議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない。
第四條 参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定めて、参議院議長にこれを請求しなければならない。
第五條 議員は、召集詔書に指定された期日に、各議院に集会しなければならない。
第六條 各議院において、召集の当日に議長若しくは副議長がないとき、又は議長及び副議長が共にないときは、その選挙を行わなければならない。
第七條 議長及び副議長が選挙されるまでは、事務総長が、議長の職務を行う。
第八條 國会の開会式は、会期の始めにこれを行う。
第九條 開会式においては、衆議院議長が、議長の職務を行う。
衆議院議長に事故があるときは、参議院議長が、議長の職務を行う。
第二章 國会の会期及び休会
第十條 常会の会期は、百五十日間とする。
第十一條 臨時会及び特別会の会期は、両議院一致の議決で、これを定める。
第十二條 國会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。
第十三條 前二條の場合において、両議院一致の議決に至らないときは、衆議院の議決したところによる。
第十四條 國会の会期は、召集の当日からこれを起算する。
第十五條 國会の休会は、両議院一致の議決を必要とする。
各議院は、七日以内においてその院の休会を議決することができる。
各議院は、議長において緊急の必要があると認めたとき、又は総議員の四分の一以上の議員から要求があつたときは、國会の休会中又はその院の休会中でも会議を開くことができる。
第三章 役員及び経費
第十六條 各議院の役員は、左の通りとする。
一 議長
二 副議長
三 仮議長
四 常任委員長
五 事務総長
第十七條 各議院の議長及び副議長は、各ゝ一人とする。
第十八條 各議院の議長及び副議長の任期は、各ゝ議員としての任期による。
第十九條 各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。
第二十條 議長は、委員会に出席し発言することができる。
第二十一條 各議院において、議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは、副議長が、議長の職務を行う。
第二十二條 各議院において、議長及び副議長に共に事故があるときは、仮議長を選挙し議長の職務を行わせる。
議院は、仮議長の選任を議長に委任することができる。
第二十三條 各議院において、議長若しくは副議長が欠けたとき、又は議長及び副議長が共に欠けたときは、直ちにその選挙を行う。
第二十四條 仮議長の選挙の場合及び前條の選挙において議長の職務を行う者がない場合には、事務総長が、議長の職務を行う。
第二十五條 常任委員長は、各議院において各ゝその常任委員の中からこれを選挙する。
第二十六條 各議院に、事務総長一人、参事その他必要な職員を置く。
第二十七條 事務総長は、各議院において國会議員以外の者からこれを選挙する。
参事その他の職員は、事務総長が、議長の同意を得てこれを任免する。
第二十八條 事務総長は、議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する。
参事は、事務総長の命を受け事務を掌理する。
第二十九條 事務総長に事故があるとき又は事務総長が欠けたときは、その予め指定する参事が、事務総長の職務を行う。
第三十條 役員は、議院の許可を得て辞任することができる。但し、閉会中は、議長において役員の辞任を許可することができる。
第三十一條 役員は、官吏と兼ねることができない。
第三十二條 両議院の経費は、独立して、國の予算にこれを計上しなければならない。
前項の経費中には、予備金を設けることを要する。
第四章 議員
第三十三條 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
第三十四條 参議院の緊急集会中、参議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、参議院の許諾がなければ逮捕されない。
参議院の緊急集会前に逮捕された参議院の議員は、参議院の要求があれば、緊急集会中これを釈放しなければならない。
第三十五條 議員は、一般官吏の最高の給料額より少くない歳費を受ける。
第三十六條 議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。
第三十七條 議員は、別に定める規則に從い、会期中及び公務のため自由に國有鉄道に乘車することができる。
第三十八條 議員は、会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなすため、別に定めるところにより手当を受ける。
第三十九條 議員は、その任期中別に法律で定めた場合を除いては、官吏又は地方公共團体の吏員となることができない。
議員は、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、嘱託その他これに準ずる職務に就くことができない。但し、法律で定めた場合又は國会の議決に基く場合は、この限りでない。
第五章 委員及び委員会
第四十條 各議院の委員は、常任委員及び特別委員とする。
第四十一條 常任委員は、会期の始めに議院において選任し、議員の任期中その任にあるものとする。
議員は、少くとも一箇の常任委員となる。但し、同時に三箇を超える常任委員となることができない。
第四十二條 各議院の常任委員会は、左の通りとし、その部門に属する議案、請願、陳情書その他を審査する。
一 外務委員会
二 治安及び地方制度委員会
三 國土計画委員会
四 司法委員会
五 文教委員会
六 文化委員会
七 厚生委員会
八 労働委員会
九 農林委員会
十 水產委員会
十一 商業委員会
十二 鉱工業委員会
十三 電氣委員会
十四 運輸及び交通委員会
十五 通信委員会
十六 財政及び金融委員会
十七 予算委員会
十八 決算委員会
十九 議院運営委員会
二十 図書館運営委員会
二十一 懲罰委員会
各議院は、両院法規委員会の勧告に基いて前項各号の常任委員会を増減し又は併合することができる。
第四十三條 各常任委員会には、少くとも二人の國会議員でない專門の知識を有する職員(これを專門調査員という)及び書記を常置する。但し、議院において不必要と認めたものについては、この限りでない。
專門調査員は、相当額の報酬を受け、他の職務を兼ねることができない。
專門調査員は、その職を辞した後二年間は、内閣行政各部における、いかなる職務にも就くことができない。
第四十四條 各議院の常任委員会は、他の議院の常任委員会と協議して合同審査会を開くことができる。
第四十五條 特別委員は、常任委員会の所管に属しない特定の事件を審査するため、議院において選任し、その委員会に付託された事件が、その院で議決されるまでその任にあるものとする。
特別委員長は、その委員がこれを互選する。
第四十六條 常任委員及び特別委員は、各派の所属議員数の比率により、これを各派に割当て選任する。
第四十七條 常任委員会及び特別委員会は、会期中に限り付託された事件を審査する。
常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された事件については、閉会中もなお、これを審査することができる。
第四十八條 委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。
第四十九條 委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第五十條 委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
第五十一條 委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聽会を開き、眞に利害関係を有する者又は学識経驗者等から意見を聽くことができる。
総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聽会を開かなければならない。
第五十二條 委員会は、議員の外、委員長の許可を得た者が、これを傍聽することができる。但し、その委員会の決議により祕密会とすることができる。
委員長は、秩序保持のため、傍聽人の退場を命ずることができる。
第五十三條 委員長は、委員会の経過及び結果を議院に報告しなければならない。
第五十四條 委員会において廃棄された少数意見は、委員長の報告に次いで少数意見者がこれを議院に報告することができる。
議長は、少数意見の報告につき時間を制限することができる。
少数意見者が簡明な少数意見の報告書を議長に提出したときは、委員会の報告書と共にこれを会議録に掲載する。
第六章 会議
第五十五條 各議院の議長は、議事日程を定め、予めこれを議院に報告する。
第五十六條 すべて議員は、議案を発議することができる。
議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて七日以内に議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる。
前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。
第五十七條 議案に対する修正の動議を議題とするには、二十人以上の賛成を要する。
第五十八條 内閣は、一の議院に議案を提出したときは、予備審査のため、その翌日以後五日以内に他の議院に同一の案を送付しなければならない。
第五十九條 内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となつた議案を修正し又は撤回するには、その院の承諾を要する。
第六十條 各議院が提出した議案については、その委員長(その代理者を含む)又は発議者は、他の議院において、提案の理由を説明することができる。
第六十一條 各議院の議長は、質疑、討論その他の発言につき、特に議院の議決があつた場合を除いて、時間を制限することができる。
議員が時間制限のため発言を終らなかつた部分につき特に議院の議決があつた場合を除いては、議長の認める範囲内において、これを会議録に掲載する。
第六十二條 各議院の会議は、議長又は議員十人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の議決があつたときは、公開を停めることができる。
第六十三條 祕密会議の記録中、特に祕密を要するものとその院において議決した部分は、これを公表しないことができる。
第六十四條 内閣は、内閣総理大臣が欠けたとき、又は辞表を提出したときは、直ちにその旨を両議院に通知しなければならない。
第六十五條 両議院の議決を要する議案について、最後の議決があつた場合、及び衆議院の議決が國会の議決となつた場合には、衆議院議長から、その公布を要するものは、これを内閣を経由して奏上し、その他のものは、これを内閣に送付する。
内閣総理大臣の指名については、衆議院議長から、内閣を経由してこれを奏上する。
第六十六條 法律は、奏上の日から三十日以内にこれを公布しなければならない。
第六十七條 一の地方公共團体のみに適用される特別法については、國会において最後の可決があつた場合は、別に法律で定めるところにより、その地方公共團体の住民の投票に付し、その過半数の同意を得たときに、さきの國会の議決が、確定して法律となる。
第六十八條 会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。
第七章 國務大臣及び政府委員
第六十九條 内閣は、國会において國務大臣を補佐するため、両議院の議長の承認を得て政府委員を任命することができる。
第七十條 國務大臣及び政府委員が、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告しなければならない。
第七十一條 委員会は、議長を経由して國務大臣及び政府委員の出席を求めることができる。
第七十二條 委員会は、議長を経由して会計檢査院の長及び檢査官の出席説明を求めることができる。
第七十三條 議院の会議及び委員会に関する報告は、議員に配付すると同時に、これを國務大臣及び政府委員に送付する。
第八章 質問及び自由討議
第七十四條 各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。
質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。
議長の承認しなかつた質問について、その議員から異議の申立があつたときは、議長は、これを承認するかどうかを議院に諮らなければならない。
議長又は議院の承認しなかつた質問について、その議員から要求があつたときは、議長は、その主意書を会議録に掲載する。
第七十五條 議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に轉送する。
内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をしないときは、理由を明示することを要する。
第七十六條 質問が、緊急を要するときは、議院の議決により口頭で質問することができる。
第七十七條 質問に対する内閣の答弁に関し、議員の動議により、討論又は表決に付することができる。
第七十八條 各議院は、國政に関し議員に自由討議の機会を與えるため、少くとも、二週間に一回その会議を開くことを要する。
自由討議の問題につき、議員の動議により、議院の表決に付することができる。
自由討議における発言の時間は、特に議院の議決があつた場合を除いては、議長がこれを定める。
第九章 請願
第七十九條 各議院に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第八十條 請願は、各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
第八十一條 各議院において採択した請願で、内閣において措置するを適当と認めたものは、これを内閣に送付する。
内閣は、前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。
第八十二條 各議院は、各別に請願を受け互に干預しない。
第十章 両議院関係
第八十三條 國会の議決を要する議案を甲議院において可決し、又は修正したときは、これを乙議院に送付し、否決したときは、その旨を乙議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案に同意し、又はこれを否決したときは、その旨を甲議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案を修正したときは、これを甲議院に回付する。
甲議院において乙議院の回付案に同意し、又は同意しなかつたときは、その旨を乙議院に通知する。
第八十四條 法律案について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決し及び衆議院の回付案に同意しなかつたときは、衆議院は、両院協議会を求めることができる。
参議院は、衆議院の回付案に同意しなかつたときに限り前項の規定にかかわらず、その通知と同時に両院協議会を求めることができる。但し、衆議院は、この両院協議会の請求を拒むことができる。
第八十五條 予算及び衆議院先議の條約について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決したときは、衆議院は、両院協議会を求めなければならない。
参議院先議の條約について、参議院において衆議院の回付案に同意しなかつたとき、又は衆議院において参議院の送付案を否決したときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十六條 各議院において、内閣総理大臣の指名を議決したときは、これを他の議院に通知する。
内閣総理大臣の指名について、両議院の議決が一致しないときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十七條 前三條に規定したものを除いて、國会の議決を要する事件について、後議の議院が先議の議院の議決に同意しないときは、先議の議院は、両院協議会を求めることができる。
第八十八條 第八十四條第二項但書の場合を除いては、一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。
第八十九條 両院協議会は、各議院において選挙された各ゝ十人の委員でこれを組織する。
第九十條 両院協議会の議長には、各議院の協議委員において夫々互選された議長が、毎会更代してこれに当る。その初会の議長は、くじでこれを定める。
第九十一條 両院協議会は、各議院の協議委員の各ゝ三分の二以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第九十二條 両院協議会においては、協議案が出席協議委員の三分の二以上の多数で議決されたとき成案となる。
両院協議会の議事は、前項の場合を除いては、出席協議委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第九十三條 両院協議会の成案は、両院協議会を求めた議院において先ずこれを議し、他の議院にこれを送付する。
成案については、更に修正することができない。
第九十四條 両院協議会において、成案を得なかつたときは、各議院の協議委員議長は、各ゝその旨を議院に報告しなければならない。
第九十五條 各議院の議長は、両院協議会に出席して意見を述べることができる。
第九十六條 両院協議会は、國務大臣及び政府委員の出席を要求することができる。
第九十七條 両院協議会は、傍聽を許さない。
第九十八條 この法律に定めるものの外、両院協議会に関する規程は、両議院の議決によりこれを定める。
第十一章 両院法規委員会
第九十九條 両院法規委員会は、両議院及び内閣に対し、新立法の提案並びに現行の法律及び政令に関して勧告し、且つ、國会関係法規を調査研究して、両議院に対し、その改正につき勧告する。
第百條 両院法規委員会は、衆議院から選挙された十人の委員及び参議院から選挙された八人の委員でこれを組織し、その委員長は、委員会でこれを互選する。
委員の任期は、議員としての任期による。
第百一條 両院法規委員会は、両議院において特に議決のない限り閉会中は、これを開くことができない。
第百二條 両院法規委員会に関するその他の規定は、両議院の議決によりこれを定める。
第十二章 議院と國民及び官廳との関係
第百三條 各議院は、審査又は調査のため、議員を派遣することができる。
第百四條 各議院から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに應じなければならない。
第百五條 内閣及び各省は、その刊行物を國会図書館に送付しなければならない。
図書館運営委員会において必要と認めたものについては、内閣及び各省をしてこれを各議員に配付させることができる。
第百六條 各議院は、議案その他の審査又は國政に関する調査のため、証人の出頭を求めたときは、別に定めるところにより旅費及び日当を支給する。
第十三章 辞職、退職、補欠及び資格爭訟
第百七條 各議院は、その議員の辞職を許可することができる。但し、閉会中は、議長においてこれを許可をすることができる。
第百八條 各議院の議員が、他の議院の議員となり、又は法律により議員たることのできない職務に任ぜられたときは、退職者となる。
第百九條 各議院の議員が、法律に定めた被選の資格を失つたときは、退職者となる。
第百十條 各議院の議員に欠員が生じたときは、その院の議長は、内務大臣に通知しなければならない。
第百十一條 各議院において、その議員の資格につき爭訟があるときは、委員会の審査を経た後これを議決する。
前項の爭訟は、その院の議員から文書でこれを議長に提起しなければならない。
第百十二條 資格爭訟を提起された議員は、二人以内の弁護人を依頼することができる。
前項の弁護人の中一人の費用は、國費でこれを支弁する。
第百十三條 議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない。但し、自己の資格爭訟に関する会議において弁明はできるが、その表決に加わることができない。
第十四章 紀律及び警察
第百十四條 國会の会期中各議院の紀律を保持するため、内部警察の権は、この法律及び各議院の定める規則に從い、議長が、これを行う。
参議院の緊急集会中は、前項の規定を準用する。
第百十五條 各議院において、必要とする警察官吏は、議長の要求により内閣がこれを派出し、議長の指揮を受ける。
第百十六條 会議中議員がこの法律又は議事規則に違いその他議場の秩序をみだし又は議院の品位を傷けるときは、議長は、これを警戒し、又は制止し、又は発言を取り消させる。命に從わないときは、議長は、当日の会議を終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
第百十七條 議長は、議場を整理し難いときは、休憩を宣告し、又は散会することができる。
第百十八條 傍聽人が議場の妨害をするときは、議長は、これを退場させ、必要な場合は、これを警察官廳に引渡すことができる。
傍聽席が騷がしいときは、議長は、すべての傍聽人を退場させることができる。
第百十九條 各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
第百二十條 議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。
第十五章 懲罰
第百二十一條 各議院において懲罰事犯があるときは、議長は、先ずこれを懲罰委員会に付し審査させ、議院の議を経てこれを宣告する。
委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。
議員は、二十人以上の賛成で懲罰の動議を提出することができる。この動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。
第百二十二條 懲罰は、左の通りとする。
一 公開議場における戒告
二 公開議場における陳謝
三 一定期間の登院停止
四 除名
第百二十三條 両議院は、除名された議員で再び当選した者を拒むことができない。
第百二十四條 議員が正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に應じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎたため、議長が、特に招状を発し、その招状を受け取つた日から七日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する。
第十六章 彈劾裁判所
第百二十五條 裁判官の彈劾は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する彈劾裁判所がこれを行う。
彈劾裁判所の裁判長は、裁判員がこれを互選する。
第百二十六條 裁判官の罷免の訴追は、衆議院においてその議員の中から選挙された訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行う。
訴追委員会の委員長は、その委員がこれを互選する。
第百二十七條 彈劾裁判所の裁判員は、同時に訴追委員となることができない。
第百二十八條 各議院において裁判員を選挙する際及び衆議院において訴追委員を選挙する際、その予備員を選挙する。
第百二十九條 この法律に定めるものの外、彈劾裁判所及び訴追委員会に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第十七章 國会図書館及び議員会館
第百三十條 議員の調査研究に資するため、國会に國会図書館を置く。
國会図書館は、一般にこれを利用させることができる。
第百三十一條 議員の法制に関する立案に資するため、各議院に法制部を置く。
第百三十二條 議員の職務遂行の便に供するため、議員会館を設け事務室を提供し、及び各議員に一人の事務補助員を付する。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
議院法は、これを廃止する。
この法律施行の際現に在職する衆議院の議長及び副議長は、この法律により衆議院の議長及び副議長が選挙されるまで、その地位にあるものとする。
この法律施行の際現に在職する衆議院及び貴族院の書記官長は、この法律により衆議院及び参議院の事務総長が選挙されるまで、夫々事務総長としての地位にあるものとする。
参議院成立当初における参議院の会議その他の手続及び内部の規律に関しては、参議院において規則を定めるまでは、衆議院規則の例による。
朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た国会法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月二十八日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
国務大臣 男爵 幣原喜重郎
司法大臣 木村篤太郎
国務大臣 斎藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
国務大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
内務大臣 植原悦二郎
大蔵大臣 石橋湛山
国務大臣 金森徳次郎
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
文部大臣 高橋誠一郎
農林大臣 木村小左衛門
国務大臣 田中万逸
国務大臣 高瀬荘太郎
法律第七十九号
国会法
第一章 国会の召集及び開会式
第一条 国会の召集詔書は、集会の期日を定めて、これを公布する。
常会の召集詔書は、少くとも二十日前にこれを公布しなければならない。
臨時会及び特別会(日本国憲法第五十四条により召集された国会をいう)の召集詔書の公布は、前項によることを要しない。
第二条 常会は、毎年十二月上旬にこれを召集する。但し、その会期中に議員の任期が満限に達しないようにこれを召集しなければならない。
第三条 臨時会の召集の決定を要求するには、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の議員が連名で、議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない。
第四条 参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定めて、参議院議長にこれを請求しなければならない。
第五条 議員は、召集詔書に指定された期日に、各議院に集会しなければならない。
第六条 各議院において、召集の当日に議長若しくは副議長がないとき、又は議長及び副議長が共にないときは、その選挙を行わなければならない。
第七条 議長及び副議長が選挙されるまでは、事務総長が、議長の職務を行う。
第八条 国会の開会式は、会期の始めにこれを行う。
第九条 開会式においては、衆議院議長が、議長の職務を行う。
衆議院議長に事故があるときは、参議院議長が、議長の職務を行う。
第二章 国会の会期及び休会
第十条 常会の会期は、百五十日間とする。
第十一条 臨時会及び特別会の会期は、両議院一致の議決で、これを定める。
第十二条 国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。
第十三条 前二条の場合において、両議院一致の議決に至らないときは、衆議院の議決したところによる。
第十四条 国会の会期は、召集の当日からこれを起算する。
第十五条 国会の休会は、両議院一致の議決を必要とする。
各議院は、七日以内においてその院の休会を議決することができる。
各議院は、議長において緊急の必要があると認めたとき、又は総議員の四分の一以上の議員から要求があつたときは、国会の休会中又はその院の休会中でも会議を開くことができる。
第三章 役員及び経費
第十六条 各議院の役員は、左の通りとする。
一 議長
二 副議長
三 仮議長
四 常任委員長
五 事務総長
第十七条 各議院の議長及び副議長は、各ゝ一人とする。
第十八条 各議院の議長及び副議長の任期は、各ゝ議員としての任期による。
第十九条 各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。
第二十条 議長は、委員会に出席し発言することができる。
第二十一条 各議院において、議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは、副議長が、議長の職務を行う。
第二十二条 各議院において、議長及び副議長に共に事故があるときは、仮議長を選挙し議長の職務を行わせる。
議院は、仮議長の選任を議長に委任することができる。
第二十三条 各議院において、議長若しくは副議長が欠けたとき、又は議長及び副議長が共に欠けたときは、直ちにその選挙を行う。
第二十四条 仮議長の選挙の場合及び前条の選挙において議長の職務を行う者がない場合には、事務総長が、議長の職務を行う。
第二十五条 常任委員長は、各議院において各ゝその常任委員の中からこれを選挙する。
第二十六条 各議院に、事務総長一人、参事その他必要な職員を置く。
第二十七条 事務総長は、各議院において国会議員以外の者からこれを選挙する。
参事その他の職員は、事務総長が、議長の同意を得てこれを任免する。
第二十八条 事務総長は、議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する。
参事は、事務総長の命を受け事務を掌理する。
第二十九条 事務総長に事故があるとき又は事務総長が欠けたときは、その予め指定する参事が、事務総長の職務を行う。
第三十条 役員は、議院の許可を得て辞任することができる。但し、閉会中は、議長において役員の辞任を許可することができる。
第三十一条 役員は、官吏と兼ねることができない。
第三十二条 両議院の経費は、独立して、国の予算にこれを計上しなければならない。
前項の経費中には、予備金を設けることを要する。
第四章 議員
第三十三条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
第三十四条 参議院の緊急集会中、参議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、参議院の許諾がなければ逮捕されない。
参議院の緊急集会前に逮捕された参議院の議員は、参議院の要求があれば、緊急集会中これを釈放しなければならない。
第三十五条 議員は、一般官吏の最高の給料額より少くない歳費を受ける。
第三十六条 議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。
第三十七条 議員は、別に定める規則に従い、会期中及び公務のため自由に国有鉄道に乗車することができる。
第三十八条 議員は、会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなすため、別に定めるところにより手当を受ける。
第三十九条 議員は、その任期中別に法律で定めた場合を除いては、官吏又は地方公共団体の吏員となることができない。
議員は、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、嘱託その他これに準ずる職務に就くことができない。但し、法律で定めた場合又は国会の議決に基く場合は、この限りでない。
第五章 委員及び委員会
第四十条 各議院の委員は、常任委員及び特別委員とする。
第四十一条 常任委員は、会期の始めに議院において選任し、議員の任期中その任にあるものとする。
議員は、少くとも一箇の常任委員となる。但し、同時に三箇を超える常任委員となることができない。
第四十二条 各議院の常任委員会は、左の通りとし、その部門に属する議案、請願、陳情書その他を審査する。
一 外務委員会
二 治安及び地方制度委員会
三 国土計画委員会
四 司法委員会
五 文教委員会
六 文化委員会
七 厚生委員会
八 労働委員会
九 農林委員会
十 水産委員会
十一 商業委員会
十二 鉱工業委員会
十三 電気委員会
十四 運輸及び交通委員会
十五 通信委員会
十六 財政及び金融委員会
十七 予算委員会
十八 決算委員会
十九 議院運営委員会
二十 図書館運営委員会
二十一 懲罰委員会
各議院は、両院法規委員会の勧告に基いて前項各号の常任委員会を増減し又は併合することができる。
第四十三条 各常任委員会には、少くとも二人の国会議員でない専門の知識を有する職員(これを専門調査員という)及び書記を常置する。但し、議院において不必要と認めたものについては、この限りでない。
専門調査員は、相当額の報酬を受け、他の職務を兼ねることができない。
専門調査員は、その職を辞した後二年間は、内閣行政各部における、いかなる職務にも就くことができない。
第四十四条 各議院の常任委員会は、他の議院の常任委員会と協議して合同審査会を開くことができる。
第四十五条 特別委員は、常任委員会の所管に属しない特定の事件を審査するため、議院において選任し、その委員会に付託された事件が、その院で議決されるまでその任にあるものとする。
特別委員長は、その委員がこれを互選する。
第四十六条 常任委員及び特別委員は、各派の所属議員数の比率により、これを各派に割当て選任する。
第四十七条 常任委員会及び特別委員会は、会期中に限り付託された事件を審査する。
常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された事件については、閉会中もなお、これを審査することができる。
第四十八条 委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。
第四十九条 委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第五十条 委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
第五十一条 委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験者等から意見を聴くことができる。
総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなければならない。
第五十二条 委員会は、議員の外、委員長の許可を得た者が、これを傍聴することができる。但し、その委員会の決議により秘密会とすることができる。
委員長は、秩序保持のため、傍聴人の退場を命ずることができる。
第五十三条 委員長は、委員会の経過及び結果を議院に報告しなければならない。
第五十四条 委員会において廃棄された少数意見は、委員長の報告に次いで少数意見者がこれを議院に報告することができる。
議長は、少数意見の報告につき時間を制限することができる。
少数意見者が簡明な少数意見の報告書を議長に提出したときは、委員会の報告書と共にこれを会議録に掲載する。
第六章 会議
第五十五条 各議院の議長は、議事日程を定め、予めこれを議院に報告する。
第五十六条 すべて議員は、議案を発議することができる。
議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて七日以内に議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる。
前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。
第五十七条 議案に対する修正の動議を議題とするには、二十人以上の賛成を要する。
第五十八条 内閣は、一の議院に議案を提出したときは、予備審査のため、その翌日以後五日以内に他の議院に同一の案を送付しなければならない。
第五十九条 内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となつた議案を修正し又は撤回するには、その院の承諾を要する。
第六十条 各議院が提出した議案については、その委員長(その代理者を含む)又は発議者は、他の議院において、提案の理由を説明することができる。
第六十一条 各議院の議長は、質疑、討論その他の発言につき、特に議院の議決があつた場合を除いて、時間を制限することができる。
議員が時間制限のため発言を終らなかつた部分につき特に議院の議決があつた場合を除いては、議長の認める範囲内において、これを会議録に掲載する。
第六十二条 各議院の会議は、議長又は議員十人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の議決があつたときは、公開を停めることができる。
第六十三条 秘密会議の記録中、特に秘密を要するものとその院において議決した部分は、これを公表しないことができる。
第六十四条 内閣は、内閣総理大臣が欠けたとき、又は辞表を提出したときは、直ちにその旨を両議院に通知しなければならない。
第六十五条 両議院の議決を要する議案について、最後の議決があつた場合、及び衆議院の議決が国会の議決となつた場合には、衆議院議長から、その公布を要するものは、これを内閣を経由して奏上し、その他のものは、これを内閣に送付する。
内閣総理大臣の指名については、衆議院議長から、内閣を経由してこれを奏上する。
第六十六条 法律は、奏上の日から三十日以内にこれを公布しなければならない。
第六十七条 一の地方公共団体のみに適用される特別法については、国会において最後の可決があつた場合は、別に法律で定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票に付し、その過半数の同意を得たときに、さきの国会の議決が、確定して法律となる。
第六十八条 会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。
第七章 国務大臣及び政府委員
第六十九条 内閣は、国会において国務大臣を補佐するため、両議院の議長の承認を得て政府委員を任命することができる。
第七十条 国務大臣及び政府委員が、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告しなければならない。
第七十一条 委員会は、議長を経由して国務大臣及び政府委員の出席を求めることができる。
第七十二条 委員会は、議長を経由して会計検査院の長及び検査官の出席説明を求めることができる。
第七十三条 議院の会議及び委員会に関する報告は、議員に配付すると同時に、これを国務大臣及び政府委員に送付する。
第八章 質問及び自由討議
第七十四条 各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。
質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。
議長の承認しなかつた質問について、その議員から異議の申立があつたときは、議長は、これを承認するかどうかを議院に諮らなければならない。
議長又は議院の承認しなかつた質問について、その議員から要求があつたときは、議長は、その主意書を会議録に掲載する。
第七十五条 議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に転送する。
内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をしないときは、理由を明示することを要する。
第七十六条 質問が、緊急を要するときは、議院の議決により口頭で質問することができる。
第七十七条 質問に対する内閣の答弁に関し、議員の動議により、討論又は表決に付することができる。
第七十八条 各議院は、国政に関し議員に自由討議の機会を与えるため、少くとも、二週間に一回その会議を開くことを要する。
自由討議の問題につき、議員の動議により、議院の表決に付することができる。
自由討議における発言の時間は、特に議院の議決があつた場合を除いては、議長がこれを定める。
第九章 請願
第七十九条 各議院に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第八十条 請願は、各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
第八十一条 各議院において採択した請願で、内閣において措置するを適当と認めたものは、これを内閣に送付する。
内閣は、前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。
第八十二条 各議院は、各別に請願を受け互に干預しない。
第十章 両議院関係
第八十三条 国会の議決を要する議案を甲議院において可決し、又は修正したときは、これを乙議院に送付し、否決したときは、その旨を乙議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案に同意し、又はこれを否決したときは、その旨を甲議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案を修正したときは、これを甲議院に回付する。
甲議院において乙議院の回付案に同意し、又は同意しなかつたときは、その旨を乙議院に通知する。
第八十四条 法律案について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決し及び衆議院の回付案に同意しなかつたときは、衆議院は、両院協議会を求めることができる。
参議院は、衆議院の回付案に同意しなかつたときに限り前項の規定にかかわらず、その通知と同時に両院協議会を求めることができる。但し、衆議院は、この両院協議会の請求を拒むことができる。
第八十五条 予算及び衆議院先議の条約について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決したときは、衆議院は、両院協議会を求めなければならない。
参議院先議の条約について、参議院において衆議院の回付案に同意しなかつたとき、又は衆議院において参議院の送付案を否決したときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十六条 各議院において、内閣総理大臣の指名を議決したときは、これを他の議院に通知する。
内閣総理大臣の指名について、両議院の議決が一致しないときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十七条 前三条に規定したものを除いて、国会の議決を要する事件について、後議の議院が先議の議院の議決に同意しないときは、先議の議院は、両院協議会を求めることができる。
第八十八条 第八十四条第二項但書の場合を除いては、一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。
第八十九条 両院協議会は、各議院において選挙された各ゝ十人の委員でこれを組織する。
第九十条 両院協議会の議長には、各議院の協議委員において夫々互選された議長が、毎会更代してこれに当る。その初会の議長は、くじでこれを定める。
第九十一条 両院協議会は、各議院の協議委員の各ゝ三分の二以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第九十二条 両院協議会においては、協議案が出席協議委員の三分の二以上の多数で議決されたとき成案となる。
両院協議会の議事は、前項の場合を除いては、出席協議委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第九十三条 両院協議会の成案は、両院協議会を求めた議院において先ずこれを議し、他の議院にこれを送付する。
成案については、更に修正することができない。
第九十四条 両院協議会において、成案を得なかつたときは、各議院の協議委員議長は、各ゝその旨を議院に報告しなければならない。
第九十五条 各議院の議長は、両院協議会に出席して意見を述べることができる。
第九十六条 両院協議会は、国務大臣及び政府委員の出席を要求することができる。
第九十七条 両院協議会は、傍聴を許さない。
第九十八条 この法律に定めるものの外、両院協議会に関する規程は、両議院の議決によりこれを定める。
第十一章 両院法規委員会
第九十九条 両院法規委員会は、両議院及び内閣に対し、新立法の提案並びに現行の法律及び政令に関して勧告し、且つ、国会関係法規を調査研究して、両議院に対し、その改正につき勧告する。
第百条 両院法規委員会は、衆議院から選挙された十人の委員及び参議院から選挙された八人の委員でこれを組織し、その委員長は、委員会でこれを互選する。
委員の任期は、議員としての任期による。
第百一条 両院法規委員会は、両議院において特に議決のない限り閉会中は、これを開くことができない。
第百二条 両院法規委員会に関するその他の規定は、両議院の議決によりこれを定める。
第十二章 議院と国民及び官庁との関係
第百三条 各議院は、審査又は調査のため、議員を派遣することができる。
第百四条 各議院から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。
第百五条 内閣及び各省は、その刊行物を国会図書館に送付しなければならない。
図書館運営委員会において必要と認めたものについては、内閣及び各省をしてこれを各議員に配付させることができる。
第百六条 各議院は、議案その他の審査又は国政に関する調査のため、証人の出頭を求めたときは、別に定めるところにより旅費及び日当を支給する。
第十三章 辞職、退職、補欠及び資格争訟
第百七条 各議院は、その議員の辞職を許可することができる。但し、閉会中は、議長においてこれを許可をすることができる。
第百八条 各議院の議員が、他の議院の議員となり、又は法律により議員たることのできない職務に任ぜられたときは、退職者となる。
第百九条 各議院の議員が、法律に定めた被選の資格を失つたときは、退職者となる。
第百十条 各議院の議員に欠員が生じたときは、その院の議長は、内務大臣に通知しなければならない。
第百十一条 各議院において、その議員の資格につき争訟があるときは、委員会の審査を経た後これを議決する。
前項の争訟は、その院の議員から文書でこれを議長に提起しなければならない。
第百十二条 資格争訟を提起された議員は、二人以内の弁護人を依頼することができる。
前項の弁護人の中一人の費用は、国費でこれを支弁する。
第百十三条 議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない。但し、自己の資格争訟に関する会議において弁明はできるが、その表決に加わることができない。
第十四章 紀律及び警察
第百十四条 国会の会期中各議院の紀律を保持するため、内部警察の権は、この法律及び各議院の定める規則に従い、議長が、これを行う。
参議院の緊急集会中は、前項の規定を準用する。
第百十五条 各議院において、必要とする警察官吏は、議長の要求により内閣がこれを派出し、議長の指揮を受ける。
第百十六条 会議中議員がこの法律又は議事規則に違いその他議場の秩序をみだし又は議院の品位を傷けるときは、議長は、これを警戒し、又は制止し、又は発言を取り消させる。命に従わないときは、議長は、当日の会議を終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
第百十七条 議長は、議場を整理し難いときは、休憩を宣告し、又は散会することができる。
第百十八条 傍聴人が議場の妨害をするときは、議長は、これを退場させ、必要な場合は、これを警察官庁に引渡すことができる。
傍聴席が騒がしいときは、議長は、すべての傍聴人を退場させることができる。
第百十九条 各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
第百二十条 議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。
第十五章 懲罰
第百二十一条 各議院において懲罰事犯があるときは、議長は、先ずこれを懲罰委員会に付し審査させ、議院の議を経てこれを宣告する。
委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。
議員は、二十人以上の賛成で懲罰の動議を提出することができる。この動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。
第百二十二条 懲罰は、左の通りとする。
一 公開議場における戒告
二 公開議場における陳謝
三 一定期間の登院停止
四 除名
第百二十三条 両議院は、除名された議員で再び当選した者を拒むことができない。
第百二十四条 議員が正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎたため、議長が、特に招状を発し、その招状を受け取つた日から七日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する。
第十六章 弾劾裁判所
第百二十五条 裁判官の弾劾は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する弾劾裁判所がこれを行う。
弾劾裁判所の裁判長は、裁判員がこれを互選する。
第百二十六条 裁判官の罷免の訴追は、衆議院においてその議員の中から選挙された訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行う。
訴追委員会の委員長は、その委員がこれを互選する。
第百二十七条 弾劾裁判所の裁判員は、同時に訴追委員となることができない。
第百二十八条 各議院において裁判員を選挙する際及び衆議院において訴追委員を選挙する際、その予備員を選挙する。
第百二十九条 この法律に定めるものの外、弾劾裁判所及び訴追委員会に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第十七章 国会図書館及び議員会館
第百三十条 議員の調査研究に資するため、国会に国会図書館を置く。
国会図書館は、一般にこれを利用させることができる。
第百三十一条 議員の法制に関する立案に資するため、各議院に法制部を置く。
第百三十二条 議員の職務遂行の便に供するため、議員会館を設け事務室を提供し、及び各議員に一人の事務補助員を付する。
附 則
この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
議院法は、これを廃止する。
この法律施行の際現に在職する衆議院の議長及び副議長は、この法律により衆議院の議長及び副議長が選挙されるまで、その地位にあるものとする。
この法律施行の際現に在職する衆議院及び貴族院の書記官長は、この法律により衆議院及び参議院の事務総長が選挙されるまで、夫々事務総長としての地位にあるものとする。
参議院成立当初における参議院の会議その他の手続及び内部の規律に関しては、参議院において規則を定めるまでは、衆議院規則の例による。