朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル辨理士法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月二十九日
內閣總理大臣 原敬
農商務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第百號
辨理士法
第一條 辨理士ハ特許、實用新案、意匠又ハ商標ニ關シ特許局ニ對シ爲スヘキ事項ノ代理ヲ爲スコトヲ業トスルモノトス
第二條 左ノ條件ヲ具フル者ハ辨理士タル資格ヲ有ス
一 帝國臣民又ハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依リ外國ノ國籍ヲ有スル者ニシテ私法上ノ能力者タルコト
二 帝國內ニ住所ヲ有スルコト
三 辨理士試驗ニ合格シタルコト
辨理士試驗ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條第一項第三號ニ規定スル條件ヲ要セスシテ辨理士タル資格ヲ有ス
一 辯護士法ニ依リ辯護士タル資格ヲ有スル者
二 高等試驗ノ行政科試驗若ハ司法科試驗又ハ判事檢事登用試驗ニ合格シタル者
三 特許局ニ於テ高等官ニ在職シテ二年以上審判又ハ審査ノ事務ニ從事シタル者
第四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ辨理士試驗委員ノ銓衡ニ依リ第二條第一項第三號ニ規定スル條件ヲ要セスシテ辨理士タル資格ヲ有ス
一 學位ヲ有スル者
二 帝國大學ノ學部又ハ之ト學科程度同等以上ト認ムル內外國ノ學校ニ於テ定規ノ課業ヲ卒ヘタル者
三 特許局ニ於テ判任以上ノ官ニ在職シテ五年以上審査ノ事務ニ從事シタル者
第五條 左ニ揭クル者ハ辨理士タルコトヲ得ス
一 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者但シ六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者ニシテ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 前號ニ該當スル者ヲ除クノ外第二十二條、特許法第百二十九條、第百三十條、第百三十三條若ハ第百三十五條、實用新案法第二十七條、第二十八條、第三十一條若ハ第三十三條、意匠法第二十六條、第二十七條、第三十條若ハ第三十二條又ハ商標法第三十四條、第三十五條若ハ第三十八條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者但シ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
三 破產若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者又ハ身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者
四 業務停止ノ期間中業務ヲ廢止シ未タ其ノ期間ノ經過セサル者又ハ業務禁止ノ處分アリタル日ヨリ起算シ三年ヲ經過セサル者
第六條 特許局ニ辨理士登錄簿ヲ備ヘ辨理士ニ關スル事項ヲ登錄ス
辨理士タラムトスル者ハ辨理士登錄簿ニ登錄ヲ受クルコトヲ要ス
辨理士ノ登錄ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 辨理士ノ登錄ヲ受ケムトスル者ハ登錄料トシテ二十圓ヲ納付スヘシ
第八條 辨理士ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル事件ニ付其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス
一 相手方ノ代理人トシテ取扱ヒタル事件
二 裁判所又ハ特許局ニ在職中取扱ヒタル事件
第九條 辨理士ハ特許、實用新案、意匠又ハ商標ニ關スル事項ニ付裁判所ニ於テ本人ト共ニ出頭シテ本人ノ爲演述ヲ爲スコトヲ得其ノ演述ハ本人卽時ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキニ限リ本人自ラ之ヲ爲シタルモノト看做ス
前項ノ規定ニ依リ帝國臣民ニ非サル辨理士出頭シテ演述ヲ爲サムトスルトキハ裁判所ノ許可ヲ受クヘシ
第十條 辨理士ハ特許局所在地ニ辨理士會ヲ設立スヘシ
辨理士會ハ支部ヲ設クルコトヲ得
第十一條 辨理士會ハ辨理士ノ風紀ヲ保持シ業務ノ發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第十二條 辨理士會ハ法人トス
第十三條 辨理士會ハ農商務大臣之ヲ監督ス
第十四條 辨理士會ハ會則ヲ設ケ役員ニ關スル事項、會議ニ關スル事項、辨理士ノ風紀保持ニ關スル事項、謝金及手數料ニ關スル事項其ノ他會務ノ處理ニ必要ナル事項ヲ規定スヘシ
會則ハ特許局長官ヲ經由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ會則ノ變更ニ付亦同シ
第十五條 辨理士會ノ設立ノ手續、機關ノ組織及監督ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 辨理士ハ辨理士會ニ加入シタル後ニ非サレハ其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス
第十七條 辨理士本法又ハ辨理士會ノ會則ニ違反スル行爲アルトキハ農商務大臣ハ辨理士懲戒委員會ノ議決ニ依リ之ヲ懲戒スルコトヲ得
辨理士懲戒委員會ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條 辨理士ノ懲戒處分ハ左ノ四種トス
一 譴責
二 五百圓以下ノ過料
三 一年以內業務ノ停止
四 業務ノ禁止
第十九條 辨理士會ハ辨理士ニ對シ懲戒ノ必要アリト認メタルトキハ特許局長官ヲ經由シテ農商務大臣ニ申告スヘシ
第二十條 農商務大臣ハ前條ノ規定ニ依ル辨理士會ノ申告ニ依リ又ハ職權ヲ以テ辨理士懲戒委員會ヲ招集ス
第二十一條 過料ヲ完納セサルトキハ特許局長官ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス
非訟事件手續法第二百八條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル執行ニ付之ヲ準用ス
第二十二條 辨理士又ハ辨理士タリシ者故ナク其ノ業務上知得タル發明者、考案者、特許出願者又ハ登錄出願者ノ發明、考案又ハ事業上ノ祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
附 則
第二十三條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條 特許辨理士令及特許辨理士組合規則ハ之ヲ廢止ス
第二十五條 本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年以上ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
第二十六條 第五條第一號ニ該當スル者ヲ除クノ外舊特許法第九十二條、第九十三條若ハ第九十七條、舊實用新案法第二十二條、第二十三條若ハ第二十七條、舊意匠法第二十四條、第二十五條若ハ第二十九條又ハ舊商標法第二十三條、第二十四條若ハ第二十八條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者ハ辨理士タルコトヲ得ス但シ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十七條 本法施行ノ際現ニ特許辨理士タル資格ヲ有スル者ハ辨理士タル資格ヲ有ス
第二十八條 本法施行ノ際現ニ特許辨理士タル者ハ辨理士ト看做ス
第二十九條 特許辨理士登錄簿ハ辨理士登錄簿ト看做ス
第三十條 第十六條ノ規定ハ本法施行ノ日ヨリ起算シ六月間之ヲ適用セス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル弁理士法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月二十九日
内閣総理大臣 原敬
農商務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第百号
弁理士法
第一条 弁理士ハ特許、実用新案、意匠又ハ商標ニ関シ特許局ニ対シ為スヘキ事項ノ代理ヲ為スコトヲ業トスルモノトス
第二条 左ノ条件ヲ具フル者ハ弁理士タル資格ヲ有ス
一 帝国臣民又ハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依リ外国ノ国籍ヲ有スル者ニシテ私法上ノ能力者タルコト
二 帝国内ニ住所ヲ有スルコト
三 弁理士試験ニ合格シタルコト
弁理士試験ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ前条第一項第三号ニ規定スル条件ヲ要セスシテ弁理士タル資格ヲ有ス
一 弁護士法ニ依リ弁護士タル資格ヲ有スル者
二 高等試験ノ行政科試験若ハ司法科試験又ハ判事検事登用試験ニ合格シタル者
三 特許局ニ於テ高等官ニ在職シテ二年以上審判又ハ審査ノ事務ニ従事シタル者
第四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ弁理士試験委員ノ銓衡ニ依リ第二条第一項第三号ニ規定スル条件ヲ要セスシテ弁理士タル資格ヲ有ス
一 学位ヲ有スル者
二 帝国大学ノ学部又ハ之ト学科程度同等以上ト認ムル内外国ノ学校ニ於テ定規ノ課業ヲ卒ヘタル者
三 特許局ニ於テ判任以上ノ官ニ在職シテ五年以上審査ノ事務ニ従事シタル者
第五条 左ニ掲クル者ハ弁理士タルコトヲ得ス
一 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者但シ六年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者ニシテ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ経過シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 前号ニ該当スル者ヲ除クノ外第二十二条、特許法第百二十九条、第百三十条、第百三十三条若ハ第百三十五条、実用新案法第二十七条、第二十八条、第三十一条若ハ第三十三条、意匠法第二十六条、第二十七条、第三十条若ハ第三十二条又ハ商標法第三十四条、第三十五条若ハ第三十八条ノ罪ヲ犯シ刑ニ処セラレタル者但シ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ経過シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
三 破産若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復権セサル者又ハ身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者
四 業務停止ノ期間中業務ヲ廃止シ未タ其ノ期間ノ経過セサル者又ハ業務禁止ノ処分アリタル日ヨリ起算シ三年ヲ経過セサル者
第六条 特許局ニ弁理士登録簿ヲ備ヘ弁理士ニ関スル事項ヲ登録ス
弁理士タラムトスル者ハ弁理士登録簿ニ登録ヲ受クルコトヲ要ス
弁理士ノ登録ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 弁理士ノ登録ヲ受ケムトスル者ハ登録料トシテ二十円ヲ納付スヘシ
第八条 弁理士ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル事件ニ付其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス
一 相手方ノ代理人トシテ取扱ヒタル事件
二 裁判所又ハ特許局ニ在職中取扱ヒタル事件
第九条 弁理士ハ特許、実用新案、意匠又ハ商標ニ関スル事項ニ付裁判所ニ於テ本人ト共ニ出頭シテ本人ノ為演述ヲ為スコトヲ得其ノ演述ハ本人即時ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキニ限リ本人自ラ之ヲ為シタルモノト看做ス
前項ノ規定ニ依リ帝国臣民ニ非サル弁理士出頭シテ演述ヲ為サムトスルトキハ裁判所ノ許可ヲ受クヘシ
第十条 弁理士ハ特許局所在地ニ弁理士会ヲ設立スヘシ
弁理士会ハ支部ヲ設クルコトヲ得
第十一条 弁理士会ハ弁理士ノ風紀ヲ保持シ業務ノ発達ヲ図ルヲ以テ目的トス
第十二条 弁理士会ハ法人トス
第十三条 弁理士会ハ農商務大臣之ヲ監督ス
第十四条 弁理士会ハ会則ヲ設ケ役員ニ関スル事項、会議ニ関スル事項、弁理士ノ風紀保持ニ関スル事項、謝金及手数料ニ関スル事項其ノ他会務ノ処理ニ必要ナル事項ヲ規定スヘシ
会則ハ特許局長官ヲ経由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ会則ノ変更ニ付亦同シ
第十五条 弁理士会ノ設立ノ手続、機関ノ組織及監督ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 弁理士ハ弁理士会ニ加入シタル後ニ非サレハ其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス
第十七条 弁理士本法又ハ弁理士会ノ会則ニ違反スル行為アルトキハ農商務大臣ハ弁理士懲戒委員会ノ議決ニ依リ之ヲ懲戒スルコトヲ得
弁理士懲戒委員会ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八条 弁理士ノ懲戒処分ハ左ノ四種トス
一 譴責
二 五百円以下ノ過料
三 一年以内業務ノ停止
四 業務ノ禁止
第十九条 弁理士会ハ弁理士ニ対シ懲戒ノ必要アリト認メタルトキハ特許局長官ヲ経由シテ農商務大臣ニ申告スヘシ
第二十条 農商務大臣ハ前条ノ規定ニ依ル弁理士会ノ申告ニ依リ又ハ職権ヲ以テ弁理士懲戒委員会ヲ招集ス
第二十一条 過料ヲ完納セサルトキハ特許局長官ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス
非訟事件手続法第二百八条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル執行ニ付之ヲ準用ス
第二十二条 弁理士又ハ弁理士タリシ者故ナク其ノ業務上知得タル発明者、考案者、特許出願者又ハ登録出願者ノ発明、考案又ハ事業上ノ秘密ヲ漏泄シ又ハ窃用シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
附 則
第二十三条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四条 特許弁理士令及特許弁理士組合規則ハ之ヲ廃止ス
第二十五条 本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六号布告刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年以上ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス
第二十六条 第五条第一号ニ該当スル者ヲ除クノ外旧特許法第九十二条、第九十三条若ハ第九十七条、旧実用新案法第二十二条、第二十三条若ハ第二十七条、旧意匠法第二十四条、第二十五条若ハ第二十九条又ハ旧商標法第二十三条、第二十四条若ハ第二十八条ノ罪ヲ犯シ刑ニ処セラレタル者ハ弁理士タルコトヲ得ス但シ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ起算シ三年ヲ経過シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十七条 本法施行ノ際現ニ特許弁理士タル資格ヲ有スル者ハ弁理士タル資格ヲ有ス
第二十八条 本法施行ノ際現ニ特許弁理士タル者ハ弁理士ト看做ス
第二十九条 特許弁理士登録簿ハ弁理士登録簿ト看做ス
第三十条 第十六条ノ規定ハ本法施行ノ日ヨリ起算シ六月間之ヲ適用セス