(目的)
第一条 この法律は、労働力を確保するために中小企業者が行う雇用管理の改善に係る措置を促進することにより、中小企業の振興及びその労働者の福祉の増進を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号の一に該当するものをいう。
一 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人で、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人で、小売業又はサービス業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が三千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人で、卸売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人で、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
六 事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会で、政令で定めるもの
2 この法律において「事業協同組合等」とは、前項第六号に掲げる者及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された社団法人で中小企業者を直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とするもの(政令で定める要件に該当するものに限る。)をいう。
(基本指針)
第三条 通商産業大臣及び労働大臣は、労働力の確保を図るために中小企業者が行う雇用管理の改善に係る措置に関し、基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針に定める事項は、次のとおりとする。
一 中小企業における経営及び雇用の動向に関する事項
二 中小企業者が行う雇用管理の改善に係る措置の内容に関する事項
三 その他中小企業者が雇用管理の改善に係る措置を行うに当たって配慮すべき重要事項
3 通商産業大臣及び労働大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、通商産業大臣にあっては中小企業近代化審議会の意見を、労働大臣にあっては中央職業安定審議会の意見をそれぞれ聴かなければならない。
4 通商産業大臣及び労働大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(改善計画の認定)
第四条 事業協同組合等は、その構成員たる中小企業者の労働力の確保を図るための労働環境の改善、福利厚生の充実、募集方法の改善その他の雇用管理の改善に関する事業(以下「改善事業」という。)についての計画(以下「改善計画」という。)を作成し、これをその主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事に提出して、その改善計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 改善計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
四 改善事業を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
五 事業協同組合等が第十三条第二項の規定により労働者の募集に従事しようとする場合にあっては、当該募集に係る労働条件その他の募集の内容
3 都道府県知事は、第一項の認定の申請があった場合において、その改善計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
一 前項第一号から第三号までに掲げる事項が基本指針に照らして適切なものであること。
二 前項第二号から第四号までに掲げる事項が同項第一号に掲げる改善事業の目標を確実に達成するために適切なものであること。
三 事業協同組合等が第十三条第二項の規定により労働者の募集に従事しようとする場合にあっては、前項第五号に掲げる事項が適切であり、かつ、労働者の利益に反しないものであること。
四 その他政令で定める基準に適合するものであると認められること。
(改善計画の変更等)
第五条 前条第一項の認定を受けた事業協同組合等(以下「認定組合等」という。)は、当該認定に係る改善計画を変更しようとするときは、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事の認定を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前条第一項の認定に係る改善計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)が同条第三項各号に掲げる要件に適合しなくなったと認めるとき、又は認定組合等若しくはその構成員が認定計画に従って改善事業を実施していないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
3 前条第三項の規定は、第一項の認定について準用する。
(資金の確保)
第六条 国は、認定計画に従って改善事業を実施するために必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるものとする。
(雇用福祉事業としての助成及び援助)
第七条 政府は、認定計画に係る改善事業の実施を促進するため、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第六十四条の雇用福祉事業として、次の事業を行うものとする。
一 雇用管理の改善に関する調査研究、指導その他の事業を行う認定組合等に対して、必要な助成及び援助を行うこと。
二 前号の助成を受けた認定組合等の構成員たる中小企業者であって、必要な設備及び福祉施設の設置又は整備を行い、認定計画の目標を達成したものに対して、必要な助成及び援助を行うこと。
(雇用促進事業団の業務)
第八条 雇用促進事業団は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号。以下「事業団法」という。)第十九条に規定する業務のほか、この法律の目的を達成するため、認定計画に従って、その構成員たる中小企業者の雇用する労働者の福祉を増進するための施設(政令で定めるものに限る。)の設置又は整備を行う認定組合等に対し、その設置又は整備に要する資金を貸し付ける業務を行う。
2 前項の規定により雇用促進事業団の業務が行われる場合には、事業団法第十九条の二第一項中「規定する業務」とあるのは「規定する業務並びに中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善の促進に関する法律(以下「中小企業労働力確保法」という。)第八条第一項に規定する業務」と、事業団法第二十条第一項中「第十九条第一項及び第三項」とあるのは「第十九条第一項及び第三項並びに中小企業労働力確保法第八条第一項」と、事業団法第二十二条第二項中「認可」とあるのは「認可(中小企業労働力確保法第八条第一項に規定する業務に係るものを除く。)」と、事業団法第二十四条第三項中「承認」とあるのは「承認(中小企業労働力確保法第八条第一項に規定する業務に係るものを除く。)」と、事業団法第三十二条第二項中「この法律」とあるのは「この法律又は中小企業労働力確保法」と、事業団法第三十七条第二項中「同条第三項に規定する業務」とあるのは「同条第三項に規定する業務若しくは中小企業労働力確保法第八条第一項に規定する業務」と、事業団法第四十条第三号中「第十九条」とあるのは「第十九条及び中小企業労働力確保法第八条第一項」とする。
第九条 雇用促進事業団は、通常通勤することができる地域以外の地域から第十三条第二項の規定による募集に応じて認定組合等の構成員たる中小企業者に就職する者で、宿舎の確保を図ることが特に必要であると公共職業安定所長が認めるものに、事業団法第十九条第一項第三号の宿舎を貸与することができる。この場合においては、同条第五項の規定は、適用しない。
(中小企業信用保険法の特例)
第十条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条第一項に規定する普通保険(以下「普通保険」という。)、同法第三条の二第一項に規定する無担保保険(以下「無担保保険」という。)又は同法第三条の三第一項に規定する特別小口保険(以下「特別小口保険」という。)の保険関係であって、労働力確保関連保証(同法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証であって、認定組合等又はその構成員たる中小企業者が認定計画に従って改善事業を実施するために必要な資金に係るものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての次の表の上欄に掲げる同法の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
第三条第一項 |
保険価額の合計額が |
中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善の促進に関する法律第十条第一項に規定する労働力確保関連保証(以下「労働力確保関連保証」という。)に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ |
第三条の二第一項、第三条の三第一項 |
保険価額の合計額が |
労働力確保関連保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ |
第三条の二第三項、第三条の三第二項 |
当該保証をした |
労働力確保関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした |
当該債務者 |
労働力確保関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者 |
2 普通保険の保険関係であって、労働力確保関連保証に係るものについての中小企業信用保険法第三条第二項及び第五条の規定の適用については、同法第三条第二項中「百分の七十」とあり、及び同法第五条中「百分の七十(無担保保険、特別小口保険、公害防止保険、エネルギー対策保険、海外投資関係保険及び新事業開拓保険にあつては、百分の八十)」とあるのは、「百分の八十」とする。
3 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であって、労働力確保関連保証に係るものについての保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。
(中小企業近代化資金等助成法の特例)
第十一条 中小企業近代化資金等助成法(昭和三十一年法律第百十五号)第三条第一項に規定する中小企業設備近代化資金の貸付事業に係る貸付金であって、認定組合等の構成員たる中小企業者が認定計画に従って改善事業を実施するために必要な設備(通商産業省令で定めるものに限る。)に係るものについては、同法第五条の規定にかかわらず、その償還期間は、七年を超えない範囲内で政令で定める期間とする。
(中小企業投資育成株式会社法の特例)
第十二条 中小企業投資育成株式会社は、中小企業投資育成株式会社法(昭和三十八年法律第百一号)第五条第一項各号に掲げる事業のほか、認定組合等の構成員たる中小企業者のうち資本の額が一億円を超える株式会社が認定計画に従って改善事業を実施するために必要な資金の調達を図るために発行する新株、転換社債又は新株引受権付社債の引受け及び当該引受けに係る株式、転換社債(その転換により発行された株式を含む。)又は新株引受権付社債の保有を行うことができる。
2 前項の規定による新株、転換社債又は新株引受権付社債の引受け及び当該引受けに係る株式、転換社債(その転換により発行された株式を含む。)又は新株引受権付社債の保有は、中小企業投資育成株式会社法の適用については、同法第五条第一項第二号の事業とみなす。
(委託募集の特例法)
第十三条 認定組合等の構成員たる中小企業者が当該認定組合等をして労働者の募集を行わせようとする場合において、当該認定組合等が認定計画に従って当該募集に従事しようとするときは、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三十七条第一項の規定は、当該構成員たる中小企業者については、適用しない。
2 前項の認定組合等は、当該募集に従事しようとするときは、労働省令で定めるところにより、募集時期、募集人員、募集地域その他の労働者の募集に関する事項で労働省令で定めるものを労働大臣に届け出なければならない。
3 職業安定法第三十八条第二項の規定は前項の規定による届出があった場合について、同法第四十条及び第四十一条の規定は同項の規定により労働者の募集に従事する者について、同法第四十九条第一項及び第五十条第一項から第三項までの規定は前項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者について、同法第四十九条第二項の規定は前項の規定の実施状況の調査について、同条第三項の規定はこの項において準用する同条第一項及び第二項に規定する職権を行う場合について準用する。この場合において、同法第三十八条第二項中「労働者の募集を行おうとする者」とあるのは「中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善の促進に関する法律(以下「中小企業労働力確保法」という。)第十三条第二項の届出をして労働者の募集に従事しようとする者」と、同法第四十一条中「第三十六条又は第三十七条第一項」とあるのは「中小企業労働力確保法第十三条第二項」と、「同条第二項」とあるのは「第三十七条第二項」と読み替えるものとする。
4 前二項に定める労働大臣の権限は、政令で定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。
第十四条 公共職業安定所は、前条第二項の規定により労働者の募集に従事する認定組合等に対して、雇用情報、職業に関する調査研究の成果等を提供し、かつ、これに基づき当該募集の内容又は方法について指導することにより、当該募集の効果的かつ適切な実施の促進に努めなければならない。
(指導及び助言)
第十五条 国及び都道府県は、認定組合等及びその構成員たる中小企業者に対し、認定計画に係る改善事業の的確な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。
(国及び地方公共団体の施策)
第十六条 国は、中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善を促進するために必要な施策を総合的に推進するように努めるものとする。
2 地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずるように努めるものとする。
(報告の徴収)
第十七条 都道府県知事は、認定組合等に対し、認定計画に係る改善事業の実施状況について報告を求めることができる。
(船員に対する適用除外)
第十八条 この法律は、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員については、適用しない。
(罰則)
第十九条 第十三条第三項において準用する職業安定法第五十条第一項の規定による業務の停止の命令に違反して、労働者の募集に従事した者は、一年以下の徴役又は二十万円以下の罰金に処する。
第二十条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の徴役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条第二項の規定による届出をしないで、労働者の募集に従事した者
二 第十三条第三項において準用する職業安定法第三十八条第二項の規定による指示に従わなかった者
三 第十三条第三項において準用する職業安定法第四十条又は第四十一条の規定に違反した者
第二十一条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条第三項において準用する職業安定法第四十九条第一項又は第二項の規定に違反して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査若しくは調査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
二 第十七条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第二十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。