朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國民貯蓄組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十二日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 河田烈
法律第六十四號
國民貯蓄組合法
第一條 本法ニ於テ國民貯蓄組合トハ左ノ各號ノ一ニ揭グル者ヲ以テ組織シ戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム)ニ於ケル國民貯蓄ノ增强ニ資スル爲組合員ノ貯蓄ノ斡旋ヲ爲スモノヲ謂フ
一 市町村(町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノ)ノ一部ニシテ命令ヲ以テ定ムル區域內ニ居住スル者
二 官公署、學校、事務所、營業所、工場、事業場又ハ之ニ準ズベキモノニ勤務スル者
三 產業組合、商業組合、工業組合其ノ他同業者ノ組織スル團體ノ構成員
四 前各號ニ揭グル者ノ外命令ヲ以テ定ムル者
第二條 國民貯蓄組合ノ斡旋ヲ爲ス貯蓄ハ左ノ方法ニ依ルベシ
一 郵便貯金又ハ郵便年金ノ掛金若ハ簡易生命保險ノ保險料ノ拂込
二 銀行ヘノ預ケ金又ハ定期積金
三 信託會社ヘノ金錢信託
四 產業組合其ノ他命令ヲ以テ定ムル產業團體ヘノ貯金
五 無盡會社ヘノ無盡ノ掛金ノ拂込
六 生命保險ノ保險料ノ拂込
七 國債、貯蓄債券又ハ報國債券ノ買入
八 其ノ他主務大臣ノ指定スルモノ
前項ノ貯蓄ノ斡旋ノ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 國民貯蓄組合ヲ組織シタルトキハ組合ノ代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合規約ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ組合規約ヲ變更シタルトキ亦同ジ
國民貯蓄組合解散シタルトキハ組合ノ代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
第四條 國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル銀行預金又ハ合同運用信託ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ元本ガ三千圓ヲ超エザルトキハ其ノ利子又ハ利益ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ甲種ノ配當利子所得ニ對スル分類所得稅ヲ免除ス國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依リ買入レ命令ノ定ムル所ニ依リ郵便官署ニ保管ヲ委託シ又ハ登錄ヲ爲シタル國債ニシテ額面金額三千圓ヲ超エザルモノノ利子ニ付亦同ジ
國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル銀行貯蓄預金、產業組合貯金其ノ他ノ預金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ元本ガ五千圓ヲ超エザルトキハ其ノ利子ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ甲種ノ配當利子所得ニ對スル分類所得稅ヲ免除ス
前二項ノ場合ニ於テ預金又ハ合同運用信託ガ組合ノ代表者ノ名義ヲ以テ爲サルルトキハ元本ハ組合員每ニ其ノ預金又ハ合同運用信託ニ付之ヲ計算ス
前項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ於テ國債ノ保管ノ委託又ハ登錄ガ組合ノ代表者ノ名義ヲ以テ爲サルル場合ノ額面金額ノ計算ニ之ヲ準用ス
前四項ノ元本及額面金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第五條 政府ハ豫算ノ範圍內ニ於テ國民貯蓄組合ニ補助金又ハ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
第六條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ第一條各號ノ一ニ揭グル者ニ對シ國民貯蓄組合ヲ組織スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第七條 主務大臣ハ國民貯蓄組合ノ代表者ニ對シ貯蓄ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲シ又ハ組合ノ代表者ノ改任其ノ他監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第八條 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ定ムル職權ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
地方長官ハ前項ノ規定ニ依リ委任ヲ受ケタル職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ市町村長(市制第六條及第八十二條第三項ノ市ニ在リテハ區長、町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノ)ヲシテ取扱ハシムルコトヲ得
第九條 貯蓄銀行ニ非ザル銀行ハ貯蓄銀行法第一條ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所ニ依リ國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル場合ニ限リ同法第一條第一項第一號又ハ第三號ニ揭グル業務ヲ營ムコトヲ得
第四條第二項及第三項竝ニ所得稅法第十一條、第二十一條及第二十九條中銀行貯蓄預金ニ關スル規定ハ前項ノ規定ニ依リ受入レタル預金ニハ之ヲ適用セズ
第十條 貯蓄銀行ニ非ザル銀行ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條第一項ノ規定ニ依リ受入レタル金額ノ三分ノ一以上ノ金額ニ相當スル國債ヲ供託スベシ
前條第二項ノ預金ヲ爲シタル者ハ其ノ預金ニ關シテハ前項ノ規定ニ依リテ供託シタル國債ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ規定ニ依リ優先辨濟ヲ受クル範圍ハ預金額ヲ限度トス
第十一條 國民貯蓄組合ノ代表者本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ三百圓以下ノ過料ニ處ス
第十二條 本法ニ規定スルモノノ外國民貯蓄組合ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ存スル團體ニシテ第一條各號ノ一ニ揭グル者ヲ以テ組織シ戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム)ニ於ケル國民貯蓄ノ增强ニ資スル爲第二條ニ揭グル貯蓄ノ斡旋ヲ爲スモノハ之ヲ本法ノ國民貯蓄組合ト看做ス
前項ノ國民貯蓄組合ノ代表者ハ本法施行後三月以內ニ第三條第一項ノ規定ニ準ジ組合規約ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第九號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
九ノ二 國民貯蓄組合ノ代表者カ組合ノ業務ニ關シ發スル金錢ノ寄託若ハ信託行爲ニ關スル證書若ハ通帳又ハ委任狀
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国民貯蓄組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十二日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 河田烈
法律第六十四号
国民貯蓄組合法
第一条 本法ニ於テ国民貯蓄組合トハ左ノ各号ノ一ニ掲グル者ヲ以テ組織シ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム)ニ於ケル国民貯蓄ノ増強ニ資スル為組合員ノ貯蓄ノ斡旋ヲ為スモノヲ謂フ
一 市町村(町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノ)ノ一部ニシテ命令ヲ以テ定ムル区域内ニ居住スル者
二 官公署、学校、事務所、営業所、工場、事業場又ハ之ニ準ズベキモノニ勤務スル者
三 産業組合、商業組合、工業組合其ノ他同業者ノ組織スル団体ノ構成員
四 前各号ニ掲グル者ノ外命令ヲ以テ定ムル者
第二条 国民貯蓄組合ノ斡旋ヲ為ス貯蓄ハ左ノ方法ニ依ルベシ
一 郵便貯金又ハ郵便年金ノ掛金若ハ簡易生命保険ノ保険料ノ払込
二 銀行ヘノ預ケ金又ハ定期積金
三 信託会社ヘノ金銭信託
四 産業組合其ノ他命令ヲ以テ定ムル産業団体ヘノ貯金
五 無尽会社ヘノ無尽ノ掛金ノ払込
六 生命保険ノ保険料ノ払込
七 国債、貯蓄債券又ハ報国債券ノ買入
八 其ノ他主務大臣ノ指定スルモノ
前項ノ貯蓄ノ斡旋ノ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 国民貯蓄組合ヲ組織シタルトキハ組合ノ代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合規約ヲ主務大臣ニ届出ヅベシ組合規約ヲ変更シタルトキ亦同ジ
国民貯蓄組合解散シタルトキハ組合ノ代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ主務大臣ニ届出ヅベシ
第四条 国民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル銀行預金又ハ合同運用信託ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ元本ガ三千円ヲ超エザルトキハ其ノ利子又ハ利益ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ甲種ノ配当利子所得ニ対スル分類所得税ヲ免除ス国民貯蓄組合ノ斡旋ニ依リ買入レ命令ノ定ムル所ニ依リ郵便官署ニ保管ヲ委託シ又ハ登録ヲ為シタル国債ニシテ額面金額三千円ヲ超エザルモノノ利子ニ付亦同ジ
国民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル銀行貯蓄預金、産業組合貯金其ノ他ノ預金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ元本ガ五千円ヲ超エザルトキハ其ノ利子ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ甲種ノ配当利子所得ニ対スル分類所得税ヲ免除ス
前二項ノ場合ニ於テ預金又ハ合同運用信託ガ組合ノ代表者ノ名義ヲ以テ為サルルトキハ元本ハ組合員毎ニ其ノ預金又ハ合同運用信託ニ付之ヲ計算ス
前項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ於テ国債ノ保管ノ委託又ハ登録ガ組合ノ代表者ノ名義ヲ以テ為サルル場合ノ額面金額ノ計算ニ之ヲ準用ス
前四項ノ元本及額面金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第五条 政府ハ予算ノ範囲内ニ於テ国民貯蓄組合ニ補助金又ハ奨励金ヲ交付スルコトヲ得
第六条 主務大臣必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ第一条各号ノ一ニ掲グル者ニ対シ国民貯蓄組合ヲ組織スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第七条 主務大臣ハ国民貯蓄組合ノ代表者ニ対シ貯蓄ニ関シ報告ヲ為サシメ、帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ為シ又ハ組合ノ代表者ノ改任其ノ他監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第八条 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ定ムル職権ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
地方長官ハ前項ノ規定ニ依リ委任ヲ受ケタル職権ニ属スル事務ノ一部ヲ市町村長(市制第六条及第八十二条第三項ノ市ニ在リテハ区長、町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノ)ヲシテ取扱ハシムルコトヲ得
第九条 貯蓄銀行ニ非ザル銀行ハ貯蓄銀行法第一条ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所ニ依リ国民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル場合ニ限リ同法第一条第一項第一号又ハ第三号ニ掲グル業務ヲ営ムコトヲ得
第四条第二項及第三項並ニ所得税法第十一条、第二十一条及第二十九条中銀行貯蓄預金ニ関スル規定ハ前項ノ規定ニ依リ受入レタル預金ニハ之ヲ適用セズ
第十条 貯蓄銀行ニ非ザル銀行ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前条第一項ノ規定ニ依リ受入レタル金額ノ三分ノ一以上ノ金額ニ相当スル国債ヲ供託スベシ
前条第二項ノ預金ヲ為シタル者ハ其ノ預金ニ関シテハ前項ノ規定ニ依リテ供託シタル国債ニ付他ノ債権者ニ先チ弁済ヲ受クルノ権利ヲ有ス
前項ノ規定ニ依リ優先弁済ヲ受クル範囲ハ預金額ヲ限度トス
第十一条 国民貯蓄組合ノ代表者本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ三百円以下ノ過料ニ処ス
第十二条 本法ニ規定スルモノノ外国民貯蓄組合ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ存スル団体ニシテ第一条各号ノ一ニ掲グル者ヲ以テ組織シ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム)ニ於ケル国民貯蓄ノ増強ニ資スル為第二条ニ掲グル貯蓄ノ斡旋ヲ為スモノハ之ヲ本法ノ国民貯蓄組合ト看做ス
前項ノ国民貯蓄組合ノ代表者ハ本法施行後三月以内ニ第三条第一項ノ規定ニ準ジ組合規約ヲ主務大臣ニ届出ヅベシ
印紙税法中左ノ通改正ス
第五条第九号ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
九ノ二 国民貯蓄組合ノ代表者カ組合ノ業務ニ関シ発スル金銭ノ寄託若ハ信託行為ニ関スル証書若ハ通帳又ハ委任状