相互銀行法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月五日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十九号
相互銀行法
(目的)
第一條 この法律は、国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資するため、相互銀行について必要な規定を定め、金融業務の公共性にかんがみ、その監督の適正を期するとともに信用の維持と預金者等の保護に資することを目的とする。
(相互銀行の業務)
第二條 相互銀行は、左の業務及びこれに附随する業務を営むことができる。
一 一定の期間を定め、その中途又は満了のときにおいて一定の金額の給付をすることを約して行う当該期間内における掛金の受入
二 預金又は定期積金の受入
三 資金の貸付又は手形の割引
四 有価証券、貴金属その他の物品の保護預り
五 有価証券の拂込金の受入又はその元利金若しくは配当金の支拂の取扱
2 貯蓄銀行法(大正十年法律第七十四号)第一條第二項本文(業務の制限)の規定は、相互銀行には適用しない。
(営業の免許)
第三條 相互銀行業は、大蔵大臣の免許を受けなければ、これを営むことができない。
2 前項の免許を受けようとする者は、申請書に定款、業務の種類及び方法を記載した書面並びに事業計画書を添附して大蔵大臣に提出しなければならない。
(相互銀行以外の者の営業の禁止)
第四條 前條の規定により大蔵大臣の免許を受けた相互銀行以外の者は、第二條第一項第一号に規定する業務を営んではならない。
(資本金)
第五條 相互銀行業は、資本金が左の各号に定める金額以上の株式会社でなければ、これを営むことができない。
一 東京都又は大蔵大臣の指定する人口五十万以上の市に本店を有する相互銀行にあつては三千万円
二 前号に規定する相互銀行以外の相互銀行にあつては二千万円
(商号)
第六條 相互銀行は、その商号中に相互銀行という文字を用いなければならない。
2 相互銀行以外の者は、その商号中に相互銀行であることを示すような文字を用いることができない。
3 銀行法(昭和二年法律第二十一号)第四條第二項(商号)の規定は、相互銀行には適用しない。
(他業の禁止)
第七條 相互銀行は、第二條に規定する業務以外の業務を営むことができない。
(営業区域)
第八條 相互銀行は、定款をもつて、その営業区域を定めなければならない。
2 相互銀行は、その営業区域外で、業務を営むことができない。
3 相互銀行は、その営業区域を変更しようとするときは、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
(基本事項の変更等の認可)
第九條 相互銀行は、左の場合においては、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
一 商号を変更しようとするとき。
二 資本金を変更しようとするとき。
三 業務の種類及び方法を変更しようとするとき。
四 支店その他の営業所を設置しようとするとき。
五 本店その他の営業所の位置を変更しようとするとき。
六 支店以外の営業所を支店に変更しようとするとき。
(一人に対する給付等の制限)
第十條 相互銀行は、同一人に対する第二條第一項第一号の契約に基いて給付した金額から既に受け入れた掛金額を控除した金額と貸付(手形の割引を含む。以下同じ。)の金額との合計額が、その資本金及び準備金(準備金、積立金、基金その他名称の如何を問わず利益のうちから積み立てられたものであつて、且つ、株主勘定に属するものをいう。)の合計額の百分の十に相当する金額をこえることとなるときは、当該人に対し給付又は貸付をしてはならない。
第十一條 相互銀行は、第二條第一項第一号の契約に基く給付をしようとする場合においては、その給付後における当該契約に基く掛金の受入が確実に保障される場合でなければ給付をしてはならない。
(給付金の総額の限度)
第十二條 第二條第一項第一号の契約に基く相互銀行の給付金の総額は、同号の契約に因つて受け入れた掛金の総額と当該銀行の定期性預金の総額の百分の五十に相当する金額との合計額をこえてはならない。
(預金の支拂準備)
第十三條 相互銀行は、預金の支拂準備として、その定期性預金の総額の百分の十に相当する金額と定期性預金以外の預金の総額の百分の三十に相当する金額との合計額以上に相当するものを、現金、他の銀行への預け金若しくは貸付金又は国債、地方債その他大蔵大臣の指定する有価証券をもつて保有しなければならない。
(定期性預金の範囲)
第十四條 前二條において定期性預金とは、拂戻について期限の定めがある預金又はこれに準ずべきものであつて、大蔵大臣の指定するものをいう。
(合併、営業等の讓渡又は讓受)
第十五條 相互銀行の合併又は営業の全部若しくは一部の讓渡若しくは讓受は、大蔵大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 相互銀行は、前項に定める場合の外、大蔵大臣の認可を受けて、信用金庫又は信用協同組合から、その事業の全部又は一部を讓り受けることができる。
(営業等の全部の讓渡又は讓受の手続)
第十六條 相互銀行が営業の全部の讓渡若しくは讓受又は信用金庫若しくは信用協同組合の事業の全部の讓受の決議をしたときは、その決議の日から二週間以内に、決議の要旨及びその債権者で営業又は事業の全部の讓渡又は讓受に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、預金者及び掛金者以外の知れている債権者には、各別に催告しなければならない。但し、その期間は、一月を下つてはならない。
2 債権者が前項の期間内に異議を述べなかつたときは、営業又は事業の全部の讓渡又は讓受を承認したものとみなす。
3 第一項の期間内に債権者が異議を述べたときは、営業又は事業の全部の讓渡又は讓受をしようとする相互銀行は、弁済し、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託業務を営む銀行に相当の財産を信託しなければならない。
第十七條 相互銀行がその営業の全部の讓渡をしたときは、遅滯なく、その旨を公告しなければならない。
2 前項の公告があつたときは、営業の全部の讓渡をした相互銀行の預金者及び掛金者に対して民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百六十七條(指名債権讓渡の対抗要件)の規定による確定日附のある証書による通知があつたものとみなす。この場合においては、その公告の日附をもつて確定日附とする。
(営業免許又は認可の失効)
第十八條 相互銀行が、営業の免許を受けた日から六月以内に、営業を開始しないときは、その免許は効力を失う。
2 相互銀行が、この法律の規定による認可を受けた日から六月以内に、その認可を受けた事項を実行しないときは、その認可は効力を失う。
3 やむをえない事由がある場合において、あらかじめ大蔵大臣の承認を受けた場合においては、前二項の規定を適用しない。
(届出事項)
第十九條 相互銀行が営業を開始したとき及びこの法律により大蔵大臣の認可を受けた事項を実行したときは、遅滯なく、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。
(銀行法の準用)
第二十條 銀行法第八條から第十三條まで(準備金、営業年度、財務諸表、役員の兼職制限)、第十五條(合併異議の催告)、第十六條(合併の手続)、第十八條から第三十一條まで(休日及び休業、拂戻の停止、大蔵大臣及び裁判所の監督権限等)及び第三十七條(公告)の規定は、相互銀行について準用する。この場合において、同法第十五條中「預金者」とあるのは「預金者及び掛金者」と読み替えるものとする。
(実施規定)
第二十一條 大蔵大臣は、この法律による免許又は認可に関する申請、届出、業務報告書その他の書類の提出その他に関しこの法律を実施するため必要な手続を定めることができる。
(権限の一部の代行)
第二十二條 大蔵大臣は、この法律による権限の一部を地方支分部局の長に行わせることができる。
(罰則)
第二十三條 大蔵大臣の免許を受けないで相互銀行業を営んだ者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十四條 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした相互銀行の役員、支配人その他の職員を一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十條において準用する銀行法(以下本條及び第二十五條中「銀行法」という。)第十條の規定による業務報告書又は銀行法第十二條の規定による監査書の不実の記載その他の方法により官庁又は公衆を欺もうしたとき。
二 銀行法第二十一條の規定による検査に際し、帳簿書類の隠ぺい、不実の申立その他の方法により検査を妨げたとき。
第二十五條 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした相互銀行の役員又は支配人を一万円以下の過料に処する。
一 第七條の規定に違反したとき。
二 第八條第二項の規定に違反して営業区域外で業務を営んだとき。
三 第九條の規定に違反したとき。
四 第十五條第二項の規定に違反して事業の全部又は一部を讓り受けたとき。
五 第十六條第一項若しくは第十七條第一項又は銀行法第十六條若しくは第十九條の規定による公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
六 第十六條第三項の規定に違反したとき。
七 銀行法第八條の規定に違反したとき。
八 この法律により相互銀行に備えて置くべき書類を備えて置かず、若しくは大蔵大臣に提出すべき書類の提出を怠り、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたとき。
九 銀行法第十三條の規定に違反して他の会社の常務に従事したとき。
十 銀行法第二十二條、第二十三條、第二十六條又は第二十九條の規定により大蔵大臣又は裁判所のした命令に違反したとき。
第二十六條 第六條第二項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
第二十七條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第二十三條又は第二十四條の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 無盡業法(昭和六年法律第四十二号)の一部を次のように改正する。
第一條第一項中「金銭ノ給付ヲ為スヲ謂フ無盡類似ノ方法ニ依リ金銭、有価証券其ノ他ノ財産ノ給付ヲ為スモノ」を「金銭以外ノ財産ノ給付ヲ為スヲ謂フ無盡類似ノ方法ニ依リ金銭以外ノ財産ノ給付ヲ為スモノ」に改め、同條第二項を削る。
第五條第一項を次のように改め、第二項を削り、第三項を第二項とする。
無盡会社ハ其ノ商号中ニ無盡ナル文字及給付ヲ為ス主タル財産ノ種類ヲ示スベキ文字ヲ用フベシ
第十條第一項第六号中「金銭及有価証券以外ノ財産」を「金銭以外ノ財産」に改める。
第十條第一項中第一号から第三号までを削り、第四号を第一号とし、以下順次繰り上げ、第二項及び第三項を削る。
第四十條中「第五條第三項」を「第五條第二項」に改める。
3 この法律施行の際、現に改正前の無盡業法(以下「旧法」という。)の規定により、営業の免許を受けている無盡会社(金銭以外の財産の給付をする無盡会社を除く。以下「既存無盡会社」という。)については、旧法は、この法律施行後三年を限り、なおその効力を有し、この法律第四條の規定は、これを適用しない。
4 大蔵大臣は、既存無盡会社が前項の期間内に第三條の規定により営業免許申請書を提出した場合において、その会社が、相互銀行業を営むのに適当なものであると認めたときは、これを免許しなければならない。
5 相互銀行は、既存無盡会社の営業の全部又は一部を讓り受けることができる。但し、大蔵大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
6 既存無盡会社であつて相互銀行業の免許を受けたものについては、旧法の規定(同法に基く命令を含む。附則第七項中において同じ。)によつてなされた認可、承認、命令、処分その他の行為は、この法律(第二十條において準用する銀行法の規定を含む。以下同じ。)中これに相当する規定のある場合においては、この法律の規定によりなされたものとみなす。
7 旧法の規定によつてなされた認可又は承認であつて、前項の規定により、この法律の規定によりなされたものとみなされるものについて、この法律において当該認可又は承認の有効期間を定めたものの期間は、旧法の規定によつてなされた認可又は承認の日から起算する。
8 国民貯蓄組合法(昭和十六年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。
第二條第一項第二号の次に次の一号を加える。
二ノ二 相互銀行ヘノ預ケ金、定期積金又ハ掛金ノ拂込
第四條第一項中「貯蓄銀行預金、」の下に「相互銀行預金、」を加える。
9 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四條第三十七号及び第十二條第一項第八号中「銀行業、」の下に「相互銀行業、」を加える。
10 この法律施行前(既存無盡会社については、附則第三項の規定により効力を有する旧法の失効前)にした行為に対する罰則の適用については、この法律施行後(既存無盡会社については、附則第三項の規定により効力を有する旧法の失効後)でも、なお従前の例による。
法務総裁 大橋武夫
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂
相互銀行法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月五日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十九号
相互銀行法
(目的)
第一条 この法律は、国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資するため、相互銀行について必要な規定を定め、金融業務の公共性にかんがみ、その監督の適正を期するとともに信用の維持と預金者等の保護に資することを目的とする。
(相互銀行の業務)
第二条 相互銀行は、左の業務及びこれに附随する業務を営むことができる。
一 一定の期間を定め、その中途又は満了のときにおいて一定の金額の給付をすることを約して行う当該期間内における掛金の受入
二 預金又は定期積金の受入
三 資金の貸付又は手形の割引
四 有価証券、貴金属その他の物品の保護預り
五 有価証券の払込金の受入又はその元利金若しくは配当金の支払の取扱
2 貯蓄銀行法(大正十年法律第七十四号)第一条第二項本文(業務の制限)の規定は、相互銀行には適用しない。
(営業の免許)
第三条 相互銀行業は、大蔵大臣の免許を受けなければ、これを営むことができない。
2 前項の免許を受けようとする者は、申請書に定款、業務の種類及び方法を記載した書面並びに事業計画書を添附して大蔵大臣に提出しなければならない。
(相互銀行以外の者の営業の禁止)
第四条 前条の規定により大蔵大臣の免許を受けた相互銀行以外の者は、第二条第一項第一号に規定する業務を営んではならない。
(資本金)
第五条 相互銀行業は、資本金が左の各号に定める金額以上の株式会社でなければ、これを営むことができない。
一 東京都又は大蔵大臣の指定する人口五十万以上の市に本店を有する相互銀行にあつては三千万円
二 前号に規定する相互銀行以外の相互銀行にあつては二千万円
(商号)
第六条 相互銀行は、その商号中に相互銀行という文字を用いなければならない。
2 相互銀行以外の者は、その商号中に相互銀行であることを示すような文字を用いることができない。
3 銀行法(昭和二年法律第二十一号)第四条第二項(商号)の規定は、相互銀行には適用しない。
(他業の禁止)
第七条 相互銀行は、第二条に規定する業務以外の業務を営むことができない。
(営業区域)
第八条 相互銀行は、定款をもつて、その営業区域を定めなければならない。
2 相互銀行は、その営業区域外で、業務を営むことができない。
3 相互銀行は、その営業区域を変更しようとするときは、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
(基本事項の変更等の認可)
第九条 相互銀行は、左の場合においては、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
一 商号を変更しようとするとき。
二 資本金を変更しようとするとき。
三 業務の種類及び方法を変更しようとするとき。
四 支店その他の営業所を設置しようとするとき。
五 本店その他の営業所の位置を変更しようとするとき。
六 支店以外の営業所を支店に変更しようとするとき。
(一人に対する給付等の制限)
第十条 相互銀行は、同一人に対する第二条第一項第一号の契約に基いて給付した金額から既に受け入れた掛金額を控除した金額と貸付(手形の割引を含む。以下同じ。)の金額との合計額が、その資本金及び準備金(準備金、積立金、基金その他名称の如何を問わず利益のうちから積み立てられたものであつて、且つ、株主勘定に属するものをいう。)の合計額の百分の十に相当する金額をこえることとなるときは、当該人に対し給付又は貸付をしてはならない。
第十一条 相互銀行は、第二条第一項第一号の契約に基く給付をしようとする場合においては、その給付後における当該契約に基く掛金の受入が確実に保障される場合でなければ給付をしてはならない。
(給付金の総額の限度)
第十二条 第二条第一項第一号の契約に基く相互銀行の給付金の総額は、同号の契約に因つて受け入れた掛金の総額と当該銀行の定期性預金の総額の百分の五十に相当する金額との合計額をこえてはならない。
(預金の支払準備)
第十三条 相互銀行は、預金の支払準備として、その定期性預金の総額の百分の十に相当する金額と定期性預金以外の預金の総額の百分の三十に相当する金額との合計額以上に相当するものを、現金、他の銀行への預け金若しくは貸付金又は国債、地方債その他大蔵大臣の指定する有価証券をもつて保有しなければならない。
(定期性預金の範囲)
第十四条 前二条において定期性預金とは、払戻について期限の定めがある預金又はこれに準ずべきものであつて、大蔵大臣の指定するものをいう。
(合併、営業等の譲渡又は譲受)
第十五条 相互銀行の合併又は営業の全部若しくは一部の譲渡若しくは譲受は、大蔵大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 相互銀行は、前項に定める場合の外、大蔵大臣の認可を受けて、信用金庫又は信用協同組合から、その事業の全部又は一部を譲り受けることができる。
(営業等の全部の譲渡又は譲受の手続)
第十六条 相互銀行が営業の全部の譲渡若しくは譲受又は信用金庫若しくは信用協同組合の事業の全部の譲受の決議をしたときは、その決議の日から二週間以内に、決議の要旨及びその債権者で営業又は事業の全部の譲渡又は譲受に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、預金者及び掛金者以外の知れている債権者には、各別に催告しなければならない。但し、その期間は、一月を下つてはならない。
2 債権者が前項の期間内に異議を述べなかつたときは、営業又は事業の全部の譲渡又は譲受を承認したものとみなす。
3 第一項の期間内に債権者が異議を述べたときは、営業又は事業の全部の譲渡又は譲受をしようとする相互銀行は、弁済し、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託業務を営む銀行に相当の財産を信託しなければならない。
第十七条 相互銀行がその営業の全部の譲渡をしたときは、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
2 前項の公告があつたときは、営業の全部の譲渡をした相互銀行の預金者及び掛金者に対して民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百六十七条(指名債権譲渡の対抗要件)の規定による確定日附のある証書による通知があつたものとみなす。この場合においては、その公告の日附をもつて確定日附とする。
(営業免許又は認可の失効)
第十八条 相互銀行が、営業の免許を受けた日から六月以内に、営業を開始しないときは、その免許は効力を失う。
2 相互銀行が、この法律の規定による認可を受けた日から六月以内に、その認可を受けた事項を実行しないときは、その認可は効力を失う。
3 やむをえない事由がある場合において、あらかじめ大蔵大臣の承認を受けた場合においては、前二項の規定を適用しない。
(届出事項)
第十九条 相互銀行が営業を開始したとき及びこの法律により大蔵大臣の認可を受けた事項を実行したときは、遅滞なく、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。
(銀行法の準用)
第二十条 銀行法第八条から第十三条まで(準備金、営業年度、財務諸表、役員の兼職制限)、第十五条(合併異議の催告)、第十六条(合併の手続)、第十八条から第三十一条まで(休日及び休業、払戻の停止、大蔵大臣及び裁判所の監督権限等)及び第三十七条(公告)の規定は、相互銀行について準用する。この場合において、同法第十五条中「預金者」とあるのは「預金者及び掛金者」と読み替えるものとする。
(実施規定)
第二十一条 大蔵大臣は、この法律による免許又は認可に関する申請、届出、業務報告書その他の書類の提出その他に関しこの法律を実施するため必要な手続を定めることができる。
(権限の一部の代行)
第二十二条 大蔵大臣は、この法律による権限の一部を地方支分部局の長に行わせることができる。
(罰則)
第二十三条 大蔵大臣の免許を受けないで相互銀行業を営んだ者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十四条 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした相互銀行の役員、支配人その他の職員を一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十条において準用する銀行法(以下本条及び第二十五条中「銀行法」という。)第十条の規定による業務報告書又は銀行法第十二条の規定による監査書の不実の記載その他の方法により官庁又は公衆を欺もうしたとき。
二 銀行法第二十一条の規定による検査に際し、帳簿書類の隠ぺい、不実の申立その他の方法により検査を妨げたとき。
第二十五条 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした相互銀行の役員又は支配人を一万円以下の過料に処する。
一 第七条の規定に違反したとき。
二 第八条第二項の規定に違反して営業区域外で業務を営んだとき。
三 第九条の規定に違反したとき。
四 第十五条第二項の規定に違反して事業の全部又は一部を譲り受けたとき。
五 第十六条第一項若しくは第十七条第一項又は銀行法第十六条若しくは第十九条の規定による公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
六 第十六条第三項の規定に違反したとき。
七 銀行法第八条の規定に違反したとき。
八 この法律により相互銀行に備えて置くべき書類を備えて置かず、若しくは大蔵大臣に提出すべき書類の提出を怠り、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたとき。
九 銀行法第十三条の規定に違反して他の会社の常務に従事したとき。
十 銀行法第二十二条、第二十三条、第二十六条又は第二十九条の規定により大蔵大臣又は裁判所のした命令に違反したとき。
第二十六条 第六条第二項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第二十三条又は第二十四条の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 無尽業法(昭和六年法律第四十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第一項中「金銭ノ給付ヲ為スヲ謂フ無尽類似ノ方法ニ依リ金銭、有価証券其ノ他ノ財産ノ給付ヲ為スモノ」を「金銭以外ノ財産ノ給付ヲ為スヲ謂フ無尽類似ノ方法ニ依リ金銭以外ノ財産ノ給付ヲ為スモノ」に改め、同条第二項を削る。
第五条第一項を次のように改め、第二項を削り、第三項を第二項とする。
無尽会社ハ其ノ商号中ニ無尽ナル文字及給付ヲ為ス主タル財産ノ種類ヲ示スベキ文字ヲ用フベシ
第十条第一項第六号中「金銭及有価証券以外ノ財産」を「金銭以外ノ財産」に改める。
第十条第一項中第一号から第三号までを削り、第四号を第一号とし、以下順次繰り上げ、第二項及び第三項を削る。
第四十条中「第五条第三項」を「第五条第二項」に改める。
3 この法律施行の際、現に改正前の無尽業法(以下「旧法」という。)の規定により、営業の免許を受けている無尽会社(金銭以外の財産の給付をする無尽会社を除く。以下「既存無尽会社」という。)については、旧法は、この法律施行後三年を限り、なおその効力を有し、この法律第四条の規定は、これを適用しない。
4 大蔵大臣は、既存無尽会社が前項の期間内に第三条の規定により営業免許申請書を提出した場合において、その会社が、相互銀行業を営むのに適当なものであると認めたときは、これを免許しなければならない。
5 相互銀行は、既存無尽会社の営業の全部又は一部を譲り受けることができる。但し、大蔵大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
6 既存無尽会社であつて相互銀行業の免許を受けたものについては、旧法の規定(同法に基く命令を含む。附則第七項中において同じ。)によつてなされた認可、承認、命令、処分その他の行為は、この法律(第二十条において準用する銀行法の規定を含む。以下同じ。)中これに相当する規定のある場合においては、この法律の規定によりなされたものとみなす。
7 旧法の規定によつてなされた認可又は承認であつて、前項の規定により、この法律の規定によりなされたものとみなされるものについて、この法律において当該認可又は承認の有効期間を定めたものの期間は、旧法の規定によつてなされた認可又は承認の日から起算する。
8 国民貯蓄組合法(昭和十六年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項第二号の次に次の一号を加える。
二ノ二 相互銀行ヘノ預ケ金、定期積金又ハ掛金ノ払込
第四条第一項中「貯蓄銀行預金、」の下に「相互銀行預金、」を加える。
9 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十七号及び第十二条第一項第八号中「銀行業、」の下に「相互銀行業、」を加える。
10 この法律施行前(既存無尽会社については、附則第三項の規定により効力を有する旧法の失効前)にした行為に対する罰則の適用については、この法律施行後(既存無尽会社については、附則第三項の規定により効力を有する旧法の失効後)でも、なお従前の例による。
法務総裁 大橋武夫
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂