旅行あつ旋業法
法令番号: 法律第239号
公布年月日: 昭和27年7月18日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

戦後の経済復興に伴い、外国人観光客や国内旅行者が増加する中、旅行あっ旋業者も急増している。しかし、旅行費用の詐取や携帯品の着服、外客へのあっ旋強要など、悪質業者による問題が頻発している。このまま放置すれば国内旅行の健全化を阻害するだけでなく、国際観光事業や国際親善にも悪影響を及ぼす恐れがある。また、旅行大衆、学校、交通機関、宿泊業者、さらには旅行あっ旋業者自身からも取締法規の制定が要望されている。そこで本法案により、悪質業者の取締りと業者の指導監督を通じて、旅行あっ旋業の健全な育成を図ろうとするものである。

参照した発言:
第13回国会 参議院 運輸委員会 第23号

審議経過

第13回国会

参議院
(昭和27年5月22日)
(昭和27年5月29日)
衆議院
(昭和27年5月30日)
参議院
(昭和27年6月10日)
(昭和27年6月12日)
(昭和27年6月13日)
衆議院
(昭和27年6月17日)
(昭和27年6月18日)
(昭和27年6月19日)
(昭和27年7月31日)
参議院
(昭和27年7月31日)
旅行あつ旋業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年七月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百三十九号
旅行あつ旋業法
(この法律の目的)
第一條 この法律は、旅行あつ旋業の健全な発達を図り、日本人及び外国人の旅客の接遇の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で「旅行あつ旋」とは、左に掲げる行為であつて、運輸省令で定めるものをいう。
一 日本人(日本の国籍を有する者をいい、外国に住所を有する者を除く。)又は外国人(日本人以外の者をいう。)のために、他人の経営する運送機関、宿泊施設その他の旅行に関する施設の利用について、対価(これらの施設を経営する者から受けるものを含む。以下同じ。)を得て、あつ旋すること。
二 自己の経営する運送機関による日本人又は外国人の運送(これと関連して行う他人の経営する運送機関による運送を含む。)に附随して、対価を得て、宿泊その他の旅行に関するサービスを提供すること。
三 前号に掲げるものの外、対価を得て、他人の経営する運送機関若しくは宿泊施設を利用して、日本人若しくは外国人を運送し若しくは宿泊させ、又はこれらの行為に附随してその他の旅行に関するサービスを提供すること。
2 この法律で「旅行あつ旋業」とは、旅行あつ旋を行う事業をいう。
3 この法律で「一般旅行あつ旋業」とは、外国人又は外国人及び日本人を対象とする旅行あつ旋業をいう。
4 この法律で「邦人旅行あつ旋業」とは、日本人を対象とする旅行あつ旋業をいう。
(登録)
第三條 一般旅行あつ旋業又は邦人旅行あつ旋業を営もうとする者は、運輸大臣の行う登録を受けなければならない。但し、鉄道、軌道、索道若しくは無軌條電車による運輸事業、旅客を運送する一般自動車運送事業、定期航路事業又は航空事業の免許又は特許を受けた者が日本人を対象として前條第一項第二号の行為を行う事業を営む場合は、この限りでない。
(登録の申請)
第四條 前條の登録を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
一 一般旅行あつ旋業又は邦人旅行あつ旋業の別
二 営業所又は代理店の名称及び位置
三 事業の経営上使用する商号があるときはその商号
四 申請者の氏名又は名称及び住所
五 法人である場合においては、その役員の氏名及び住所
2 申請書には、事業の計画その他の運輸省令で定める事項を記載した書類を添附しなければならない。
(登録の実施)
第五條 運輸大臣は、前條の規定による登録の申請があつた場合においては、次條第一項の規定により登録を拒否する場合を除く外、左に掲げる事項を旅行あつ旋業者登録簿に登録しなければならない。
一 前條第一項各号に掲げる事項
二 登録年月日
2 運輸大臣は、前項の規定による登録をした場合においては、直ちにその旨を登録の申請者に通知し、且つ、告示しなければならない。
(登録の拒否)
第六條 運輸大臣は、登録の申請者が左の各号の一に該当する場合には、その登録を拒否しなければならない。
一 第十九條の規定により旅行あつ旋業の登録を取り消され、その取消の日から二年を経過していない者
二 三年の懲役又は禁この刑以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過していない者
三 登録の申請前二年間に旅行あつ旋に関し不正な行為をした者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
六 法人であつて、その役員のうちに第一号から第三号まで又は前号の一に該当する者があるもの
七 一般旅行あつ旋業の登録にあつては、申請者又はその使用人その他の従業者が外国人を対象とする旅行あつ旋に関し相当の経験又は能力を有しないもの
2 運輸大臣は、前項の規定による登録の拒否をした場合においては、理由を附して、その旨を申請者に通知しなければならない。
(営業保証金)
第七條 旅行あつ旋業の登録を受けた者(以下「旅行あつ旋業者」という。)は、営業保証金を供託しなければならない。
2 旅行あつ旋業者は、営業保証金の供託をしたときは、供託物受入の記載ある供託書の写を添附して、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
3 旅行あつ旋業者は、前項の届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない。
4 運輸大臣は、旅行あつ旋業の登録をした場合において、登録の告示をした日から四十日以内に旅行あつ旋業者が第二項の届出をしないときは、当該旅行あつ旋業の登録を取り消すことができる。
(変更登録の申請)
第八條 旅行あつ旋業者は、第四條第一項第二号から第五号までに掲げる事項について変更があつたときは、その日から三十日以内に、その旨の変更の登録を運輸大臣に申請しなければならない。
2 第五條及び第六條の規定は、前項の規定による変更の登録の申請があつた場合に準用する。
(営業保証金の額等)
第九條 第七條第一項の規定による営業保証金の額は、一般旅行あつ旋業の登録を受けた者(以下「一般旅行あつ旋業者」という。)の主たる営業所につき二十万円、その他の営業所につき営業所ごとに五万円、邦人旅行あつ旋業の登録を受けた者(以下「邦人旅行あつ旋業者」という。)の主たる営業所につき五万円、その他の営業所につき営業所ごとに二万円の割合による金額の合計とする。但し、その額は、一般旅行あつ旋業者については五十万円、邦人旅行あつ旋業者については二十万円をそれぞれこえないものとする。
2 第七條第一項の規定による営業保証金は、運輸省令で定めるところにより、国債証券をもつて、これに充てることができる。
3 第七條第一項の規定による営業保証金の供託は、運輸大臣の指定する供託所にこれをしなければならない。
(営業所新設の場合の営業保証金)
第十條 旅行あつ旋業者は、事業の開始後、新たに営業所を設置したときは、当該営業所につき前條第一項本文に規定する割合の金額の営業保証金を供託しなければならない。但し、その者が供託する営業保証金の総額が、その者が一般旅行あつ旋業者である場合において五十万円をこえ、又はその者が邦人旅行あつ旋業者である場合において二十万円をこえることとなるときは、その超過分については、この限りでない。
2 第七條第二項から第四項まで並びに前條第二項及び第三項の規定は、前項の規定により供託をする場合に準用する。
(代理店)
第十一條 前二條及び第二十一條の規定の適用については、旅行あつ旋業者の代理店は、営業所とみなす。
(料金)
第十二條 旅行あつ旋業を営む者は、運輸省令で定めるところにより、旅行あつ旋の料金を定め、その実施前に運輸大臣に届け出なければならない。これを変更する場合も同様とする。
2 運輸大臣は、前項の料金が左の各号の一に該当すると認めるときは、旅行あつ旋業を営む者に対し、その変更を命ずることができる。
一 能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものをこえるものであるとき。
二 特定の者に対して不当な差別的取扱をするものであるとき。
(不正行為の禁止)
第十三條 旅行あつ旋業を営む者は、前條の規定による料金の届出をしないで料金を収受し、又は届け出た料金をこえて料金を収受し、その他旅行あつ旋に関し不正な行為をしてはならない。
(名義利用等の禁止)
第十四條 旅行あつ旋業を営む者は、その名義を他人に旅行あつ旋業のため利用させてはならない。
2 旅行あつ旋業を営む者は、営業の貸渡その他いかなる方法をもつてするかを問わず、旅行あつ旋業を他人にその名において経営させてはならない。
(事業の廃止等)
第十五條 旅行あつ旋業者は、その事業を廃止し、又は事業の全部を譲渡したときは、その日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
2 旅行あつ旋業者たる法人が左の各号の一に掲げる場合に該当することとなつたときは、当該各号に掲げる者は、その日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
一 法人が合併により消滅した場合においては、その業務を執行する役員であつた者
二 法人が合併又は破産以外の事由により解散した場合においては、その清算人
三 法人が破産により解散した場合においては、その破産管財人
3 旅行あつ旋業者が死亡したときは、相続人は、被相続人の死亡を知つた日から三十日以内にその旨を運輸大臣に届け出なければならない。
4 旅行あつ旋業者が死亡した場合において、相続人が被相続人の死亡後六十日以内に登録の申請をしたときは、相続人は、被相続人の死亡の日からその登録があつた旨又は登録を拒否する旨の通知を受ける日まで引き続き旅行あつ旋業を営むことができるものとし、この間の営業については、被相続人の受けた旅行あつ旋業の登録は、相続人が受けたものとみなし、被相続人の供託した営業保証金は、相続人が供託したものとみなす。
(営業保証金についての権利の承継等)
第十六條 旅行あつ旋業者が死亡し、旅行あつ旋業者たる法人が合併により消滅し、又は旅行あつ旋業者がその事業の全部を譲渡したため、第二十條の規定による登録のまつ消があつた場合において、その日から六箇月以内に、その相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又はその事業の譲受人が旅行あつ旋業の登録を受け、且つ、第七條第一項、第十條第一項及び第十八條第一項の規定により旅行あつ旋業者であつた者が供託した営業保証金につき権利を承継した旨の届出を運輸大臣にしたときは、その営業保証金は、新たに旅行あつ旋業者となつた者が第七條第一項の規定により供託した営業保証金とみなす。
2 前項の届出をする場合には、供託物受入の記載ある供託書の写及びその営業保証金につき権利を承継した事実を証明する書面を添附しなければならない。
3 第一項の届出は、第七條第三項及び第四項の規定の適用については、同條第二項の規定による届出とみなす。
4 第一項の場合において、その営業保証金につき、旅行あつ旋業者であつた者との取引によつて生じた債権に関し、次條第一項の権利を有する者があるときは、同條同項の権利の実行については、その債権は、新たに旅行あつ旋業者となつた者との取引によつて生じた債権とみなす。
(営業保証金の還付)
第十七條 旅行あつ旋業者と旅行あつ旋に関し取引をした者は、その取引によつて生じた債権に関し、第七條第一項、第十條第一項及び次條第一項の規定により供託された営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。
2 前項の権利の実行に関し必要な事項は、省令で定める。
(営業保証金の不足額の供託)
第十八條 旅行あつ旋業者は、前條第一項の権利を有する者がその権利を実行したため、営業保証金が第九條第一項に規定する額に不足することとなつたときは、省令で定める日から三十日以内に、その不足額を供託しなければならない。
2 第七條第二項及び第四項並びに第九條第二項及び第三項の規定は、前項の規定により供託する場合に準用する。この場合において、第七條第四項中「登録の告示をした日から四十日以内」とあるのは「第十八條第一項の省令で定める日から三十日以内」と読み替える。
(登録の取消等)
第十九條 運輸大臣は、旅行あつ旋業を営む者が左の各号の一に該当するときは、六箇月以内の期間を定めて業務の停止を命じ、又は登録を取り消すことができる。
一 この法律又はこれに基く処分に違反したとき。
二 第六條第一項第二号若しくは第四号から第七号までの一に掲げる者に該当することとなつたとき、又は登録当時第六條第一項各号の一に掲げる者に該当していたことが判明したとき。
三 不正の手段により第五條の規定による登録を受けたとき。
2 第六條第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(登録のまつ消)
第二十條 運輸大臣は、第七條第四項(第十條第二項又は第十八條第二項において準用する場合を含む。)若しくは前條第一項の規定による登録の取消をしたとき、又は第十五條の規定による届出があつたときは、当該旅行あつ旋業の登録をまつ消し、且つ、その旨を告示しなければならない。
(営業保証金の取りもどし)
第二十一條 前條の規定による登録のまつ消があつたときは、旅行あつ旋業者であつた者又はその承継人は、供託した営業保証金を取りもどすことができる。旅行あつ旋業者が一部の営業所を廃止した場合において、営業保証金の額が第九條第一項に規定する額をこえることとなつたときにおけるその超過額についても、また同様とする。
2 前項の営業保証金の取りもどしは、当該営業保証金につき第十七條第一項の権利を有する者に対し六箇月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内にその申出がなかつた場合でなければ、これをすることができない。但し、営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から十年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の公告その他営業保証金の取りもどしに関し必要な事項は、省令で定める。
(登録手数料)
第二十二條 第四條の規定による登録の申請をする者は、千円以下の範囲内において、政令で定める額の手数料を納めなければならない。
(聴聞)
第二十三條 運輸大臣は、第七條第四項(第十條第二項又は第十八條第二項において準用する場合を含む。)、第十二條第二項又は第十九條第一項の処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、あらかじめ期日及び場所を通知して、公開による聴聞をしなければならない。当該処分に係る者又はその代理人は、聴聞の場所において意見を述べ、及び証拠を提出することができる。
(職権の委任)
第二十四條 この法律に規定する運輸大臣の職権の一部は、政令で定める行政庁に行わせることができる。
(訴願)
第二十五條 この法律の規定により行政庁のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
(報告)
第二十六條 運輸大臣は、第一條の目的を達成するため必要があると認めるときは、旅行あつ旋業を営む者又はこれらの者の組織する団体に、運輸省令で定める手続に従い、その業務に関し、報告をさせることができる。
(適用の除外)
第二十七條 この法律の規定は、国の行う事業には、適用しない。
(罰則)
第二十八條 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第三條第一項の規定に違反して一般旅行あつ旋業を営んだ者
二 第七條第三項(第十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反してその事業を開始した一般旅行あつ旋業者
三 第八條第一項の規定による変更の登録を受けないで新たに設置した営業所若しくは代理店においてその事業を開始した一般旅行あつ旋業者
四 第十四條の規定に違反してその名義を他人に利用させ、又は旅行あつ旋業を他人に経営させた一般旅行あつ旋業者
第二十九條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第三條第一項の規定に違反して邦人旅行あつ旋業を営んだ者
二 第七條第三項(第十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反してその事業を開始した邦人旅行あつ旋業者
三 第八條第一項の規定による変更の登録を受けないで新たに設置した営業所若しくは代理店においてその事業を開始した邦人旅行あつ旋業者
四 第十二條第一項の規定による料金の届出をしないで料金を収受し、又は届け出た料金をこえて料金を収受した者
五 第十二條第二項の規定による命令に違反した者
六 第十四條の規定に違反してその名義を他人に利用させ、又は旅行あつ旋業を他人に経営させた邦人旅行あつ旋業者
七 第十九條第一項の規定による業務の停止の命令に違反した者
第三十條 第八條第一項の規定に違反して変更の登録を申請しなかつた者は、一万円以下の罰金に処する。
第三十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員がその法人又は人の業務に関し第二十八條から前條までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第三十二條 左の各号の一に該当する者(法人である場合はその代表者)は、一万円以下の過料に処する。
一 第十五條第一項から第三項までの規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第二十六條の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して九十日をこえない期間内において、政令で定める。
(経過規定)
2 この法律の施行の際、現に旅行あつ旋業を営んでいる者は、この法律の施行の日から九十日間は、第三條又は第十二條第一項の規定にかかわらず、登録を受けず、又は料金の届出をしないでも旅行あつ旋業を営むことができる。
3 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四條第一項第十四号の十三の次に次の一号を加える。
十四の十四 旅行あつ旋業を登録すること。
第二十二條第一項第二十三号の次に次の一号を加える。
二十三の二 旅行あつ旋業の登録に関すること。
法務総裁 木村篤太郎
運輸大臣 村上義一
内閣総理大臣 吉田茂
旅行あつ旋業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年七月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百三十九号
旅行あつ旋業法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、旅行あつ旋業の健全な発達を図り、日本人及び外国人の旅客の接遇の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「旅行あつ旋」とは、左に掲げる行為であつて、運輸省令で定めるものをいう。
一 日本人(日本の国籍を有する者をいい、外国に住所を有する者を除く。)又は外国人(日本人以外の者をいう。)のために、他人の経営する運送機関、宿泊施設その他の旅行に関する施設の利用について、対価(これらの施設を経営する者から受けるものを含む。以下同じ。)を得て、あつ旋すること。
二 自己の経営する運送機関による日本人又は外国人の運送(これと関連して行う他人の経営する運送機関による運送を含む。)に附随して、対価を得て、宿泊その他の旅行に関するサービスを提供すること。
三 前号に掲げるものの外、対価を得て、他人の経営する運送機関若しくは宿泊施設を利用して、日本人若しくは外国人を運送し若しくは宿泊させ、又はこれらの行為に附随してその他の旅行に関するサービスを提供すること。
2 この法律で「旅行あつ旋業」とは、旅行あつ旋を行う事業をいう。
3 この法律で「一般旅行あつ旋業」とは、外国人又は外国人及び日本人を対象とする旅行あつ旋業をいう。
4 この法律で「邦人旅行あつ旋業」とは、日本人を対象とする旅行あつ旋業をいう。
(登録)
第三条 一般旅行あつ旋業又は邦人旅行あつ旋業を営もうとする者は、運輸大臣の行う登録を受けなければならない。但し、鉄道、軌道、索道若しくは無軌条電車による運輸事業、旅客を運送する一般自動車運送事業、定期航路事業又は航空事業の免許又は特許を受けた者が日本人を対象として前条第一項第二号の行為を行う事業を営む場合は、この限りでない。
(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
一 一般旅行あつ旋業又は邦人旅行あつ旋業の別
二 営業所又は代理店の名称及び位置
三 事業の経営上使用する商号があるときはその商号
四 申請者の氏名又は名称及び住所
五 法人である場合においては、その役員の氏名及び住所
2 申請書には、事業の計画その他の運輸省令で定める事項を記載した書類を添附しなければならない。
(登録の実施)
第五条 運輸大臣は、前条の規定による登録の申請があつた場合においては、次条第一項の規定により登録を拒否する場合を除く外、左に掲げる事項を旅行あつ旋業者登録簿に登録しなければならない。
一 前条第一項各号に掲げる事項
二 登録年月日
2 運輸大臣は、前項の規定による登録をした場合においては、直ちにその旨を登録の申請者に通知し、且つ、告示しなければならない。
(登録の拒否)
第六条 運輸大臣は、登録の申請者が左の各号の一に該当する場合には、その登録を拒否しなければならない。
一 第十九条の規定により旅行あつ旋業の登録を取り消され、その取消の日から二年を経過していない者
二 三年の懲役又は禁この刑以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過していない者
三 登録の申請前二年間に旅行あつ旋に関し不正な行為をした者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
六 法人であつて、その役員のうちに第一号から第三号まで又は前号の一に該当する者があるもの
七 一般旅行あつ旋業の登録にあつては、申請者又はその使用人その他の従業者が外国人を対象とする旅行あつ旋に関し相当の経験又は能力を有しないもの
2 運輸大臣は、前項の規定による登録の拒否をした場合においては、理由を附して、その旨を申請者に通知しなければならない。
(営業保証金)
第七条 旅行あつ旋業の登録を受けた者(以下「旅行あつ旋業者」という。)は、営業保証金を供託しなければならない。
2 旅行あつ旋業者は、営業保証金の供託をしたときは、供託物受入の記載ある供託書の写を添附して、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
3 旅行あつ旋業者は、前項の届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない。
4 運輸大臣は、旅行あつ旋業の登録をした場合において、登録の告示をした日から四十日以内に旅行あつ旋業者が第二項の届出をしないときは、当該旅行あつ旋業の登録を取り消すことができる。
(変更登録の申請)
第八条 旅行あつ旋業者は、第四条第一項第二号から第五号までに掲げる事項について変更があつたときは、その日から三十日以内に、その旨の変更の登録を運輸大臣に申請しなければならない。
2 第五条及び第六条の規定は、前項の規定による変更の登録の申請があつた場合に準用する。
(営業保証金の額等)
第九条 第七条第一項の規定による営業保証金の額は、一般旅行あつ旋業の登録を受けた者(以下「一般旅行あつ旋業者」という。)の主たる営業所につき二十万円、その他の営業所につき営業所ごとに五万円、邦人旅行あつ旋業の登録を受けた者(以下「邦人旅行あつ旋業者」という。)の主たる営業所につき五万円、その他の営業所につき営業所ごとに二万円の割合による金額の合計とする。但し、その額は、一般旅行あつ旋業者については五十万円、邦人旅行あつ旋業者については二十万円をそれぞれこえないものとする。
2 第七条第一項の規定による営業保証金は、運輸省令で定めるところにより、国債証券をもつて、これに充てることができる。
3 第七条第一項の規定による営業保証金の供託は、運輸大臣の指定する供託所にこれをしなければならない。
(営業所新設の場合の営業保証金)
第十条 旅行あつ旋業者は、事業の開始後、新たに営業所を設置したときは、当該営業所につき前条第一項本文に規定する割合の金額の営業保証金を供託しなければならない。但し、その者が供託する営業保証金の総額が、その者が一般旅行あつ旋業者である場合において五十万円をこえ、又はその者が邦人旅行あつ旋業者である場合において二十万円をこえることとなるときは、その超過分については、この限りでない。
2 第七条第二項から第四項まで並びに前条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により供託をする場合に準用する。
(代理店)
第十一条 前二条及び第二十一条の規定の適用については、旅行あつ旋業者の代理店は、営業所とみなす。
(料金)
第十二条 旅行あつ旋業を営む者は、運輸省令で定めるところにより、旅行あつ旋の料金を定め、その実施前に運輸大臣に届け出なければならない。これを変更する場合も同様とする。
2 運輸大臣は、前項の料金が左の各号の一に該当すると認めるときは、旅行あつ旋業を営む者に対し、その変更を命ずることができる。
一 能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものをこえるものであるとき。
二 特定の者に対して不当な差別的取扱をするものであるとき。
(不正行為の禁止)
第十三条 旅行あつ旋業を営む者は、前条の規定による料金の届出をしないで料金を収受し、又は届け出た料金をこえて料金を収受し、その他旅行あつ旋に関し不正な行為をしてはならない。
(名義利用等の禁止)
第十四条 旅行あつ旋業を営む者は、その名義を他人に旅行あつ旋業のため利用させてはならない。
2 旅行あつ旋業を営む者は、営業の貸渡その他いかなる方法をもつてするかを問わず、旅行あつ旋業を他人にその名において経営させてはならない。
(事業の廃止等)
第十五条 旅行あつ旋業者は、その事業を廃止し、又は事業の全部を譲渡したときは、その日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
2 旅行あつ旋業者たる法人が左の各号の一に掲げる場合に該当することとなつたときは、当該各号に掲げる者は、その日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
一 法人が合併により消滅した場合においては、その業務を執行する役員であつた者
二 法人が合併又は破産以外の事由により解散した場合においては、その清算人
三 法人が破産により解散した場合においては、その破産管財人
3 旅行あつ旋業者が死亡したときは、相続人は、被相続人の死亡を知つた日から三十日以内にその旨を運輸大臣に届け出なければならない。
4 旅行あつ旋業者が死亡した場合において、相続人が被相続人の死亡後六十日以内に登録の申請をしたときは、相続人は、被相続人の死亡の日からその登録があつた旨又は登録を拒否する旨の通知を受ける日まで引き続き旅行あつ旋業を営むことができるものとし、この間の営業については、被相続人の受けた旅行あつ旋業の登録は、相続人が受けたものとみなし、被相続人の供託した営業保証金は、相続人が供託したものとみなす。
(営業保証金についての権利の承継等)
第十六条 旅行あつ旋業者が死亡し、旅行あつ旋業者たる法人が合併により消滅し、又は旅行あつ旋業者がその事業の全部を譲渡したため、第二十条の規定による登録のまつ消があつた場合において、その日から六箇月以内に、その相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又はその事業の譲受人が旅行あつ旋業の登録を受け、且つ、第七条第一項、第十条第一項及び第十八条第一項の規定により旅行あつ旋業者であつた者が供託した営業保証金につき権利を承継した旨の届出を運輸大臣にしたときは、その営業保証金は、新たに旅行あつ旋業者となつた者が第七条第一項の規定により供託した営業保証金とみなす。
2 前項の届出をする場合には、供託物受入の記載ある供託書の写及びその営業保証金につき権利を承継した事実を証明する書面を添附しなければならない。
3 第一項の届出は、第七条第三項及び第四項の規定の適用については、同条第二項の規定による届出とみなす。
4 第一項の場合において、その営業保証金につき、旅行あつ旋業者であつた者との取引によつて生じた債権に関し、次条第一項の権利を有する者があるときは、同条同項の権利の実行については、その債権は、新たに旅行あつ旋業者となつた者との取引によつて生じた債権とみなす。
(営業保証金の還付)
第十七条 旅行あつ旋業者と旅行あつ旋に関し取引をした者は、その取引によつて生じた債権に関し、第七条第一項、第十条第一項及び次条第一項の規定により供託された営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。
2 前項の権利の実行に関し必要な事項は、省令で定める。
(営業保証金の不足額の供託)
第十八条 旅行あつ旋業者は、前条第一項の権利を有する者がその権利を実行したため、営業保証金が第九条第一項に規定する額に不足することとなつたときは、省令で定める日から三十日以内に、その不足額を供託しなければならない。
2 第七条第二項及び第四項並びに第九条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により供託する場合に準用する。この場合において、第七条第四項中「登録の告示をした日から四十日以内」とあるのは「第十八条第一項の省令で定める日から三十日以内」と読み替える。
(登録の取消等)
第十九条 運輸大臣は、旅行あつ旋業を営む者が左の各号の一に該当するときは、六箇月以内の期間を定めて業務の停止を命じ、又は登録を取り消すことができる。
一 この法律又はこれに基く処分に違反したとき。
二 第六条第一項第二号若しくは第四号から第七号までの一に掲げる者に該当することとなつたとき、又は登録当時第六条第一項各号の一に掲げる者に該当していたことが判明したとき。
三 不正の手段により第五条の規定による登録を受けたとき。
2 第六条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(登録のまつ消)
第二十条 運輸大臣は、第七条第四項(第十条第二項又は第十八条第二項において準用する場合を含む。)若しくは前条第一項の規定による登録の取消をしたとき、又は第十五条の規定による届出があつたときは、当該旅行あつ旋業の登録をまつ消し、且つ、その旨を告示しなければならない。
(営業保証金の取りもどし)
第二十一条 前条の規定による登録のまつ消があつたときは、旅行あつ旋業者であつた者又はその承継人は、供託した営業保証金を取りもどすことができる。旅行あつ旋業者が一部の営業所を廃止した場合において、営業保証金の額が第九条第一項に規定する額をこえることとなつたときにおけるその超過額についても、また同様とする。
2 前項の営業保証金の取りもどしは、当該営業保証金につき第十七条第一項の権利を有する者に対し六箇月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内にその申出がなかつた場合でなければ、これをすることができない。但し、営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から十年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の公告その他営業保証金の取りもどしに関し必要な事項は、省令で定める。
(登録手数料)
第二十二条 第四条の規定による登録の申請をする者は、千円以下の範囲内において、政令で定める額の手数料を納めなければならない。
(聴聞)
第二十三条 運輸大臣は、第七条第四項(第十条第二項又は第十八条第二項において準用する場合を含む。)、第十二条第二項又は第十九条第一項の処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、あらかじめ期日及び場所を通知して、公開による聴聞をしなければならない。当該処分に係る者又はその代理人は、聴聞の場所において意見を述べ、及び証拠を提出することができる。
(職権の委任)
第二十四条 この法律に規定する運輸大臣の職権の一部は、政令で定める行政庁に行わせることができる。
(訴願)
第二十五条 この法律の規定により行政庁のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
(報告)
第二十六条 運輸大臣は、第一条の目的を達成するため必要があると認めるときは、旅行あつ旋業を営む者又はこれらの者の組織する団体に、運輸省令で定める手続に従い、その業務に関し、報告をさせることができる。
(適用の除外)
第二十七条 この法律の規定は、国の行う事業には、適用しない。
(罰則)
第二十八条 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して一般旅行あつ旋業を営んだ者
二 第七条第三項(第十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反してその事業を開始した一般旅行あつ旋業者
三 第八条第一項の規定による変更の登録を受けないで新たに設置した営業所若しくは代理店においてその事業を開始した一般旅行あつ旋業者
四 第十四条の規定に違反してその名義を他人に利用させ、又は旅行あつ旋業を他人に経営させた一般旅行あつ旋業者
第二十九条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して邦人旅行あつ旋業を営んだ者
二 第七条第三項(第十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反してその事業を開始した邦人旅行あつ旋業者
三 第八条第一項の規定による変更の登録を受けないで新たに設置した営業所若しくは代理店においてその事業を開始した邦人旅行あつ旋業者
四 第十二条第一項の規定による料金の届出をしないで料金を収受し、又は届け出た料金をこえて料金を収受した者
五 第十二条第二項の規定による命令に違反した者
六 第十四条の規定に違反してその名義を他人に利用させ、又は旅行あつ旋業を他人に経営させた邦人旅行あつ旋業者
七 第十九条第一項の規定による業務の停止の命令に違反した者
第三十条 第八条第一項の規定に違反して変更の登録を申請しなかつた者は、一万円以下の罰金に処する。
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員がその法人又は人の業務に関し第二十八条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第三十二条 左の各号の一に該当する者(法人である場合はその代表者)は、一万円以下の過料に処する。
一 第十五条第一項から第三項までの規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第二十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して九十日をこえない期間内において、政令で定める。
(経過規定)
2 この法律の施行の際、現に旅行あつ旋業を営んでいる者は、この法律の施行の日から九十日間は、第三条又は第十二条第一項の規定にかかわらず、登録を受けず、又は料金の届出をしないでも旅行あつ旋業を営むことができる。
3 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十四号の十三の次に次の一号を加える。
十四の十四 旅行あつ旋業を登録すること。
第二十二条第一項第二十三号の次に次の一号を加える。
二十三の二 旅行あつ旋業の登録に関すること。
法務総裁 木村篤太郎
運輸大臣 村上義一
内閣総理大臣 吉田茂