朕は、帝國議會の協贊を經た勞働關係調整法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月二十六日
内閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
法律第二十五號
勞働關係調整法
第一章 總則
第一條 この法律は、勞働組合法と相俟つて、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて經濟の興隆に寄與することを目的とする。
第二條 勞働關係の當事者は、互に勞働關係を適正化するやうに、勞働協約中に、常に勞働關係の調整を圖るための正規の機關の設置及びその運營に關する事項を定めるやうに、且つ勞働爭議が發生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない。
第三條 政府は、勞働關係に關する主張が一致しない場合に、勞働關係の當事者が、これを自主的に調整することに對し助力を與へ、これによつて爭議行爲をできるだけ防止することに努めなければならない。
第四條 この法律は、勞働關係の當事者が、直接の協議又は團體交渉によつて、勞働條件その他勞働關係に關する事項を定め、又は勞働關係に關する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、勞働關係の當事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない。
第五條 この法律によつて勞働關係の調整をなす場合には、當事者及び勞働委員會その他の關係機關は、できるだけ適宜の方法を講じて、事件の迅速な處理を圖らなければならない。
第六條 この法律において勞働爭議とは、勞働關係の當事者間において、勞働關係に關する主張が一致しないで、そのために爭議行爲が發生してゐる状態又は發生する虞がある状態をいふ。
第七條 この法律において爭議行爲とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他勞働關係の當事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行爲及びこれに對抗する行爲であつて、業務の正常な運營を阻害するものをいふ。
第八條 この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に缺くことのできないものをいふ。
一 運輸事業
二 郵便、電信又は電話の事業
三 水道、電氣又は瓦斯供給の事業
四 醫療又は公衆衞生の事業
主務大臣は、前項の事業の外、中央勞働委員會の決議によつて、業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。
前項の中央勞働委員會の決議においては、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員の各ゝの過半數の同意がなければならない。
主務大臣は、第二項の規定によつて公益事業の指定をしたときは、遲滯なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラヂオ等適宜の方法により、公表しなければならない。
第九條 爭議行爲が發生したときは、その當事者は、直ちにその旨を勞働委員會又は行政官廳に屆け出なければならない。
第二章 斡旋
第十條 勞働委員會は、斡旋員候補者を委囑し、その名簿を作製して置かなければならない。
第十一條 斡旋員候補者は、學識經驗を有する者で、この章の規定に基いて勞働爭議の解決につき援助を與へることができる者でなければならないが、その勞働委員會の管轄區域内に住んでゐる者でなくても差し支へない。
第十二條 勞働爭議が發生したときは、勞働委員會の會長は、關係當事者の双方若しくは一方の申請又は職權に基いて、斡旋員名簿に記されてゐる者の中から、斡旋員を指名しなければならない。但し、勞働委員會の同意を得れば、斡旋員名簿に記されてゐない者を臨時の斡旋員に委囑することもできる。
第十三條 斡旋員は、關係當事者間を斡旋し、双方の主張の要點を確め、事件が解決されるやうに努めなければならない。
第十四條 斡旋員は、自分の手では事件が解決される見込がないときは、その事件から手を引き、事件の要點を勞働委員會に報告しなければならない。
第十五條 斡旋員候補者に關する事項は、この章に定めるものの外命令でこれを定める。
第十六條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の斡旋方法によつて、事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第三章 調停
第十七條 勞働組合法第二十七條第一項第三號の規定による勞働委員會による勞働爭議の調停は、この章の定めるところによる。
第十八條 勞働委員會は、左の各號の一に該當する場合に、調停を行ふ。
一 關係當事者の双方から、勞働委員會に對して、調停の申請がなされたとき。
二 關係當事者の双方又は一方から、勞働協約の定に基いて、勞働委員會に對して調停の申請がなされたとき。
三 公益事業に關する事件につき、關係當事者の一方から、勞働委員會に對して、調停の申請がなされ、勞働委員會が、調停を行ふ必要があると決議したとき。
四 公益事業に關する事件につき、勞働委員會が職權に基いて、調停を行ふ必要があると決議したとき。
五 公益事業に關する事件又はその事件が規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に關するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、行政官廳から、勞働委員會に對して、調停の請求がなされたとき。
前項の規定によつて地方勞働委員會又は特別勞働委員會の行つた調停が成らなかつたときは、中央勞働委員會は、關係當事者の双方若しくは一方からの申請又は職權に基いて、その事件の調停を行ふことができる。
前項の規定によつて中央勞働委員會が職權に基いて行ふ調停は、第一項第五號の事件に限る。
第十九條 勞働委員會による勞働爭議の調停は、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員から成る調停委員會を設け、これによつて行ふ。
第二十條 調停委員會の、使用者を代表する委員と勞働者を代表する委員とは、同數でなければならない。
第二十一條 調停委員會の委員は、勞働委員會の委員の中から、勞働委員會の會長がこれを指名する。但し、左の場合には勞働委員會の會長は、勞働委員會の委員以外の者を、調停委員會の委員に委囑することができる。
一 勞働委員會の委員以外の者を、使用者を代表する調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の使用者を代表する委員の同意を得たとき。
二 勞働委員會の委員以外の者を、勞働者を代表する調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の勞働者を代表する委員の同意を得たとき。
三 勞働委員會の委員以外の者を、第三者である調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員の各ゝの過半數の同意を得たとき。
前項但書の規定によつて委囑された委員は、これを法令によつて公務に從事する職員とみなす。
第二十二條 調停委員會に、委員長を置く。委員長は、調停委員會で、第三者である委員の中から、これを選擧する。
第二十三條 調停委員會は、委員長がこれを招集し、その議事は、出席者の過半數でこれを決する。
調停委員會は、使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員が出席しなければ、會議を開くことはできない。
第二十四條 調停委員會は、期日を定めて、關係當事者の出頭を求め、その意見を徴さなければならない。
第二十五條 調停をなす場合には、調停委員會は、關係當事者及び參考人以外の者の出席を禁止することができる。
第二十六條 調停委員會は、調停案を作成して、これを關係當事者に示し、その受諾を勸告するとともに、その調停案は理由を附してこれを公表することができる。この場合必要があるときは、新聞又はラヂオによる協力を請求することができる。
第二十七條 公益事業に關する事件の調停については、特に迅速に處理するために、必要な優先的取扱がなされなければならない。
第二十八條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の調停方法によつて事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第四章 仲裁
第二十九條 勞働組合法第二十七條第一項第三號の規定による勞働委員會による勞働爭議の仲裁は、この章の定めるところによる。
第三十條 勞働委員會は、左の各號の一に該當する場合に、仲裁を行ふ。
一 關係當事者の双方から、勞働委員會に對して、仲裁の申請がなされたとき。
二 勞働協約に、勞働委員會による仲裁の申請をなさなければならない旨の定がある場合に、その定に基いて、關係當事者の双方又は一方から、勞働委員會に對して、仲裁の申請がなされたとき。
第三十一條 勞働委員會による勞働爭議の仲裁は、特別の委員會を設けることなくこれを行ふ。但し、事件の事實調査のため、小委員會を設けることは差し支へない。小委員會は、勞働委員會の請求があつたときは、これに對し、仲裁裁定案を提出しなければならない。
第三十二條 仲裁をなす場合には、勞働委員會は、關係當事者及び參考人以外の者の出席を禁止することができる。
第三十三條 仲裁裁定は、書面に作成してこれを行ふ。その書面には效力發生の期日も記さなければならない。
第三十四條 仲裁裁定は、勞働協約と同一の效力を有する。
第三十五條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の仲裁方法によつて事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第五章 爭議行爲の制限禁止等
第三十六條 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廢し、又はこれを妨げる行爲は、爭議行爲としてでもこれをなすことはできない。
第三十七條 公益事業に關し、關係當事者が爭議行爲をなすには、第十八條第一項第一號乃至第三號の規定によつて調停の申請をなしその申請をなした日又は同項第四號の決議若しくは同項第五號の請求がなされた日から、三十日を經過した後でなければならない。但し、爭議行爲の發生中にその事業が第八條第二項の規定によつて公益事業として指定されてもその爭議行爲については、この限りでない。
第三十八條 警察官吏、消防職員、監獄において勤務する者その他國又は公共團體の現業以外の行政又は司法の事務に從事する官吏その他の者は、爭議行爲をなすことはできない。
第三十九條 前二條の規定の違反があつた場合においては、その違反行爲について責任のある使用者若しくはその團體、勞働者の團體又はその他の者若しくはその團體は、これを一萬圓以下の罰金に處する。
前項の規定は、そのものが、法人であるときは、理事、取締役その他法人の業務を執行する役員に、法人でない團體であるときは、代表者その他業務を執行する役員にこれを適用する。
一個の爭議行爲に關し科する罰金の總額は、一萬圓を超えることはできない。
法人、法人でない使用者又は勞働者の組合、爭議團等の團體であつて解散したものに、第一項の規定を適用するについては、その團體は、なほ存續するものとみなす。
第四十條 使用者は、この法律による勞働爭議の調整をなす場合において勞働者がなした發言又は勞働者が爭議行爲をなしたことを理由として、その勞働者を解雇し、その他これに對し不利益な取扱をすることはできない。但し、勞働委員會の同意があつたときは、この限りでない。
第四十一條 前條の規定の違反があつた場合においては、その行爲をなした者は、これを六箇月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處する。
第四十二條 第三十九條及び前條の罪は、勞働委員會の請求を待つてこれを論ずる。
第四十三條 調停又は仲裁をなす場合において、その公正な進行を妨げる者に對しては、調停委員會の委員長又は勞働委員會の會長は、これに退場を命ずることができる。
第六章 費用辨償
第四十四條 勞働委員會の委員、第十二條の斡旋員及び第二十一條第一項但書の調停委員會の委員竝びに勞働委員會による勞働爭議の調停又は仲裁のため出頭を求められた者は、勅令の定めるところにより、費用の辨償を受ける。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
勞働爭議調停法は、これを廢止する。
勞働組合法の一部を次のやうに改正する。
勞働組合法第十一條第一項を次のやうに改める。
使用者ハ勞働者ガ勞働組合ノ組合員ナルコト、勞働組合ヲ結成セントシ若ハ之ニ加入セントスルコト又ハ勞働組合ノ正當ナル行爲ヲ爲シタルコトノ故ヲ以テ其ノ勞働者ヲ解雇シ其ノ他之ニ對シ不利益ナル取扱ヲ爲スコトヲ得ズ
朕は、帝国議会の協賛を経た労働関係調整法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月二十六日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
法律第二十五号
労働関係調整法
第一章 総則
第一条 この法律は、労働組合法と相俟つて、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて経済の興隆に寄与することを目的とする。
第二条 労働関係の当事者は、互に労働関係を適正化するやうに、労働協約中に、常に労働関係の調整を図るための正規の機関の設置及びその運営に関する事項を定めるやうに、且つ労働争議が発生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない。
第三条 政府は、労働関係に関する主張が一致しない場合に、労働関係の当事者が、これを自主的に調整することに対し助力を与へ、これによつて争議行為をできるだけ防止することに努めなければならない。
第四条 この法律は、労働関係の当事者が、直接の協議又は団体交渉によつて、労働条件その他労働関係に関する事項を定め、又は労働関係に関する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、労働関係の当事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない。
第五条 この法律によつて労働関係の調整をなす場合には、当事者及び労働委員会その他の関係機関は、できるだけ適宜の方法を講じて、事件の迅速な処理を図らなければならない。
第六条 この法律において労働争議とは、労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生してゐる状態又は発生する虞がある状態をいふ。
第七条 この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常な運営を阻害するものをいふ。
第八条 この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に欠くことのできないものをいふ。
一 運輸事業
二 郵便、電信又は電話の事業
三 水道、電気又は瓦斯供給の事業
四 医療又は公衆衛生の事業
主務大臣は、前項の事業の外、中央労働委員会の決議によつて、業務の停廃が国民経済を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。
前項の中央労働委員会の決議においては、使用者を代表する委員、労働者を代表する委員及び第三者である委員の各ゝの過半数の同意がなければならない。
主務大臣は、第二項の規定によつて公益事業の指定をしたときは、遅滞なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラヂオ等適宜の方法により、公表しなければならない。
第九条 争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を労働委員会又は行政官庁に届け出なければならない。
第二章 斡旋
第十条 労働委員会は、斡旋員候補者を委嘱し、その名簿を作製して置かなければならない。
第十一条 斡旋員候補者は、学識経験を有する者で、この章の規定に基いて労働争議の解決につき援助を与へることができる者でなければならないが、その労働委員会の管轄区域内に住んでゐる者でなくても差し支へない。
第十二条 労働争議が発生したときは、労働委員会の会長は、関係当事者の双方若しくは一方の申請又は職権に基いて、斡旋員名簿に記されてゐる者の中から、斡旋員を指名しなければならない。但し、労働委員会の同意を得れば、斡旋員名簿に記されてゐない者を臨時の斡旋員に委嘱することもできる。
第十三条 斡旋員は、関係当事者間を斡旋し、双方の主張の要点を確め、事件が解決されるやうに努めなければならない。
第十四条 斡旋員は、自分の手では事件が解決される見込がないときは、その事件から手を引き、事件の要点を労働委員会に報告しなければならない。
第十五条 斡旋員候補者に関する事項は、この章に定めるものの外命令でこれを定める。
第十六条 この章の規定は、労働争議の当事者が、双方の合意又は労働協約の定により、別の斡旋方法によつて、事件の解決を図ることを妨げるものではない。
第三章 調停
第十七条 労働組合法第二十七条第一項第三号の規定による労働委員会による労働争議の調停は、この章の定めるところによる。
第十八条 労働委員会は、左の各号の一に該当する場合に、調停を行ふ。
一 関係当事者の双方から、労働委員会に対して、調停の申請がなされたとき。
二 関係当事者の双方又は一方から、労働協約の定に基いて、労働委員会に対して調停の申請がなされたとき。
三 公益事業に関する事件につき、関係当事者の一方から、労働委員会に対して、調停の申請がなされ、労働委員会が、調停を行ふ必要があると決議したとき。
四 公益事業に関する事件につき、労働委員会が職権に基いて、調停を行ふ必要があると決議したとき。
五 公益事業に関する事件又はその事件が規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、行政官庁から、労働委員会に対して、調停の請求がなされたとき。
前項の規定によつて地方労働委員会又は特別労働委員会の行つた調停が成らなかつたときは、中央労働委員会は、関係当事者の双方若しくは一方からの申請又は職権に基いて、その事件の調停を行ふことができる。
前項の規定によつて中央労働委員会が職権に基いて行ふ調停は、第一項第五号の事件に限る。
第十九条 労働委員会による労働争議の調停は、使用者を代表する委員、労働者を代表する委員及び第三者である委員から成る調停委員会を設け、これによつて行ふ。
第二十条 調停委員会の、使用者を代表する委員と労働者を代表する委員とは、同数でなければならない。
第二十一条 調停委員会の委員は、労働委員会の委員の中から、労働委員会の会長がこれを指名する。但し、左の場合には労働委員会の会長は、労働委員会の委員以外の者を、調停委員会の委員に委嘱することができる。
一 労働委員会の委員以外の者を、使用者を代表する調停委員会の委員に委嘱することにつき、労働委員会の使用者を代表する委員の同意を得たとき。
二 労働委員会の委員以外の者を、労働者を代表する調停委員会の委員に委嘱することにつき、労働委員会の労働者を代表する委員の同意を得たとき。
三 労働委員会の委員以外の者を、第三者である調停委員会の委員に委嘱することにつき、労働委員会の使用者を代表する委員及び労働者を代表する委員の各ゝの過半数の同意を得たとき。
前項但書の規定によつて委嘱された委員は、これを法令によつて公務に従事する職員とみなす。
第二十二条 調停委員会に、委員長を置く。委員長は、調停委員会で、第三者である委員の中から、これを選挙する。
第二十三条 調停委員会は、委員長がこれを招集し、その議事は、出席者の過半数でこれを決する。
調停委員会は、使用者を代表する委員及び労働者を代表する委員が出席しなければ、会議を開くことはできない。
第二十四条 調停委員会は、期日を定めて、関係当事者の出頭を求め、その意見を徴さなければならない。
第二十五条 調停をなす場合には、調停委員会は、関係当事者及び参考人以外の者の出席を禁止することができる。
第二十六条 調停委員会は、調停案を作成して、これを関係当事者に示し、その受諾を勧告するとともに、その調停案は理由を附してこれを公表することができる。この場合必要があるときは、新聞又はラヂオによる協力を請求することができる。
第二十七条 公益事業に関する事件の調停については、特に迅速に処理するために、必要な優先的取扱がなされなければならない。
第二十八条 この章の規定は、労働争議の当事者が、双方の合意又は労働協約の定により、別の調停方法によつて事件の解決を図ることを妨げるものではない。
第四章 仲裁
第二十九条 労働組合法第二十七条第一項第三号の規定による労働委員会による労働争議の仲裁は、この章の定めるところによる。
第三十条 労働委員会は、左の各号の一に該当する場合に、仲裁を行ふ。
一 関係当事者の双方から、労働委員会に対して、仲裁の申請がなされたとき。
二 労働協約に、労働委員会による仲裁の申請をなさなければならない旨の定がある場合に、その定に基いて、関係当事者の双方又は一方から、労働委員会に対して、仲裁の申請がなされたとき。
第三十一条 労働委員会による労働争議の仲裁は、特別の委員会を設けることなくこれを行ふ。但し、事件の事実調査のため、小委員会を設けることは差し支へない。小委員会は、労働委員会の請求があつたときは、これに対し、仲裁裁定案を提出しなければならない。
第三十二条 仲裁をなす場合には、労働委員会は、関係当事者及び参考人以外の者の出席を禁止することができる。
第三十三条 仲裁裁定は、書面に作成してこれを行ふ。その書面には効力発生の期日も記さなければならない。
第三十四条 仲裁裁定は、労働協約と同一の効力を有する。
第三十五条 この章の規定は、労働争議の当事者が、双方の合意又は労働協約の定により、別の仲裁方法によつて事件の解決を図ることを妨げるものではない。
第五章 争議行為の制限禁止等
第三十六条 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。
第三十七条 公益事業に関し、関係当事者が争議行為をなすには、第十八条第一項第一号乃至第三号の規定によつて調停の申請をなしその申請をなした日又は同項第四号の決議若しくは同項第五号の請求がなされた日から、三十日を経過した後でなければならない。但し、争議行為の発生中にその事業が第八条第二項の規定によつて公益事業として指定されてもその争議行為については、この限りでない。
第三十八条 警察官吏、消防職員、監獄において勤務する者その他国又は公共団体の現業以外の行政又は司法の事務に従事する官吏その他の者は、争議行為をなすことはできない。
第三十九条 前二条の規定の違反があつた場合においては、その違反行為について責任のある使用者若しくはその団体、労働者の団体又はその他の者若しくはその団体は、これを一万円以下の罰金に処する。
前項の規定は、そのものが、法人であるときは、理事、取締役その他法人の業務を執行する役員に、法人でない団体であるときは、代表者その他業務を執行する役員にこれを適用する。
一個の争議行為に関し科する罰金の総額は、一万円を超えることはできない。
法人、法人でない使用者又は労働者の組合、争議団等の団体であつて解散したものに、第一項の規定を適用するについては、その団体は、なほ存続するものとみなす。
第四十条 使用者は、この法律による労働争議の調整をなす場合において労働者がなした発言又は労働者が争議行為をなしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対し不利益な取扱をすることはできない。但し、労働委員会の同意があつたときは、この限りでない。
第四十一条 前条の規定の違反があつた場合においては、その行為をなした者は、これを六箇月以下の禁錮又は五百円以下の罰金に処する。
第四十二条 第三十九条及び前条の罪は、労働委員会の請求を待つてこれを論ずる。
第四十三条 調停又は仲裁をなす場合において、その公正な進行を妨げる者に対しては、調停委員会の委員長又は労働委員会の会長は、これに退場を命ずることができる。
第六章 費用弁償
第四十四条 労働委員会の委員、第十二条の斡旋員及び第二十一条第一項但書の調停委員会の委員並びに労働委員会による労働争議の調停又は仲裁のため出頭を求められた者は、勅令の定めるところにより、費用の弁償を受ける。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
労働争議調停法は、これを廃止する。
労働組合法の一部を次のやうに改正する。
労働組合法第十一条第一項を次のやうに改める。
使用者ハ労働者ガ労働組合ノ組合員ナルコト、労働組合ヲ結成セントシ若ハ之ニ加入セントスルコト又ハ労働組合ノ正当ナル行為ヲ為シタルコトノ故ヲ以テ其ノ労働者ヲ解雇シ其ノ他之ニ対シ不利益ナル取扱ヲ為スコトヲ得ズ