第一條 この法律は、勞働組合法と相俟つて、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて經濟の興隆に寄與することを目的とする。
第二條 勞働關係の當事者は、互に勞働關係を適正化するやうに、勞働協約中に、常に勞働關係の調整を圖るための正規の機關の設置及びその運營に關する事項を定めるやうに、且つ勞働爭議が發生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない。
第三條 政府は、勞働關係に關する主張が一致しない場合に、勞働關係の當事者が、これを自主的に調整することに對し助力を與へ、これによつて爭議行爲をできるだけ防止することに努めなければならない。
第四條 この法律は、勞働關係の當事者が、直接の協議又は團體交渉によつて、勞働條件その他勞働關係に關する事項を定め、又は勞働關係に關する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、勞働關係の當事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない。
第五條 この法律によつて勞働關係の調整をなす場合には、當事者及び勞働委員會その他の關係機關は、できるだけ適宜の方法を講じて、事件の迅速な處理を圖らなければならない。
第六條 この法律において勞働爭議とは、勞働關係の當事者間において、勞働關係に關する主張が一致しないで、そのために爭議行爲が發生してゐる状態又は發生する虞がある状態をいふ。
第七條 この法律において爭議行爲とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他勞働關係の當事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行爲及びこれに對抗する行爲であつて、業務の正常な運營を阻害するものをいふ。
第八條 この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に缺くことのできないものをいふ。
主務大臣は、前項の事業の外、中央勞働委員會の決議によつて、業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。
前項の中央勞働委員會の決議においては、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員の各ゝの過半數の同意がなければならない。
主務大臣は、第二項の規定によつて公益事業の指定をしたときは、遲滯なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラヂオ等適宜の方法により、公表しなければならない。
第九條 爭議行爲が發生したときは、その當事者は、直ちにその旨を勞働委員會又は行政官廳に屆け出なければならない。