第一條 左ニ揭クル事業ニ於テ勞働爭議發生シタルトキハ行政官廳ハ當事者ノ請求ニ依リ調停委員會ヲ開設スルコトヲ得當事者ノ請求ナキ場合ト雖行政官廳ニ於テ必要アリト認メタルトキ亦同シ
一 蒸氣、電氣其ノ他ノ動力ヲ使用スル鐵道、軌道又ハ船舶ニ依リ公衆ノ需要ニ應スル運輸事業
三 公衆ノ需要ニ應スル水道、電氣又ハ瓦斯供給ノ事業
四 第一號乃至第三號ノ事業ニ電氣ヲ供給スル事業ニシテ其ノ休止カ第一號乃至第三號ノ事業ノ進行ヲ著シク阻害スルモノ
五 其ノ他公衆ノ日常生活ニ直接關係アル事業ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノ
六 陸軍又ハ海軍ノ直營ニ係ル兵器艦船ノ製造修理ノ事業ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノ
前項ニ揭クル以外ノ事業ニ於テ勞働爭議發生シタルトキハ行政官廳ハ當事者雙方ノ請求ニ依リ調停委員會ヲ開設スルコトヲ得
第二條 調停委員會ヲ開設セムトスルトキハ行政官廳ハ當事者雙方ニ之ヲ通知スヘシ
第三條 調停委員會ハ九人ノ委員ヲ以テ之ヲ組織ス委員ノ中六人ハ勞働爭議ノ當事者ヲシテ各同數ヲ選定セシメ他ノ三人ハ當事者ノ選定シタル委員ヲシテ爭議ニ直接利害關係ヲ有セサル者ニ就キ選定セシメ行政官廳之ヲ囑託ス
前項ノ規定ニ依リ囑託セラレタル委員ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ辭スルコトヲ得ス
第四條 勞働爭議ノ當事者第二條ノ規定ニ依ル通知ヲ受ケタルトキハ三日內ニ前條第一項ノ規定ニ依リ其ノ選定シタル委員ヲ行政官廳ニ屆出ツルコトヲ要ス
當事者前項ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲ササルトキハ行政官廳ハ當事者ニ代リ委員ヲ選定ス此ノ委員ハ當事者ノ選定シタルモノト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル手續終リタルトキハ行政官廳ハ直ニ前條第一項ノ規定ニ依リ當事者ノ選定シタル委員ニ於テ選定スヘキ委員ノ選定ヲ要求スヘシ此ノ場合ニ於テハ當事者ノ選定シタル委員ハ四日內ニ之ヲ選定シ行政官廳ニ屆出ツルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依ル屆出ナキトキハ行政官廳ハ當事者ノ選定シタル委員ニ代リ前項ノ規定ニ依リ選定スヘキ委員ヲ選定ス此ノ委員ハ當事者ノ選定シタル委員ニ於テ選定シタルモノト看做ス
第五條 委員中缺員ヲ生シタルトキハ前二條ノ手續ニ準シ之ヲ補充ス
第六條 委員定リタルトキハ行政官廳ハ直ニ調停委員會ヲ招集シ之ヲ開會スヘシ
第七條 調停委員會ニ議長及其ノ代理者ヲ置ク議長及其ノ代理者ハ當事者ノ選定ニ係ル委員ニ於テ選定シタル委員ノ互選ニ依リ投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ之ニ充ツ多數ヲ得タル者ナキトキハ抽籤ニ依ル
第八條 調停委員會ハ勞働爭議ノ解決ニ必要ナル調查審理ヲ爲シ其ノ調停ヲ爲スモノトス
第九條 調停委員會ハ開會ノ日ヨリ十五日內ニ調停手續ヲ結了スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ當事者ノ選定シタル委員全員ノ同意アリタルトキハ之ヲ延長スルコトヲ得
第十條 調停委員會ハ議長又ハ其ノ代理者及各當事者ノ選定シタル委員各二名以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第十一條 調停委員會ノ議事ハ本法中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
行政官廳ハ調停委員會ノ承認ヲ得テ當該官吏ヲシテ會議ニ臨席セシムルコトヲ得
第十三條 調停委員會ハ調停ニ必要ナル範圍ニ於テ當事者又ハ其ノ代表者其ノ他利害關係人又ハ參考人ニ對シ出席說明ヲ求メ又ハ說明書類ノ提示ヲ求ムルコトヲ得
第十四條 調停委員會ハ調停ニ必要ナル範圍ニ於テ委員ヲシテ作業所其ノ他爭議ノ關係場所ニ立入リ、作業若ハ設備ヲ視察シ又ハ關係者ニ質問セシムルコトヲ得但シ軍事上祕密ヲ要スル場所ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 委員又ハ委員タリシ者ハ故ナク前二條ノ場合ニ知得タル祕密ヲ漏洩スルコトヲ得ス
第十六條 第九條ニ規定スル調停手續ノ結了ノ場合ニ於テハ調停委員會ハ其ノ顚末ヲ行政官廳ニ報告スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ勞働爭議解決スルニ至ラサリシトキハ調停委員會ハ其ノ報告ニ委員會ノ決議セル爭議調停案及之ニ關スル少數意見ヲ表示スルコトヲ要ス
第十七條 行政官廳ハ前條ノ規定ニ依ル報告ノ要旨ヲ公表スヘシ但シ勞働爭議解決シタル場合ニ於テ當事者一方ノ選定シタル委員全員カ豫メ反對ノ意思ヲ表示シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十八條 委員及第十三條ニ規定スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
第十九條 第一條第一項ニ揭クル事業ニ於ケル勞働爭議ニ關シ第二條ノ規定ニ依ル通知アリタルトキハ現ニ其ノ爭議ニ關係アル使用者及勞働者竝其ノ屬スル使用者團體及勞働者團體ノ役員及事務員以外ノ者ハ第九條ニ規定スル調停手續ノ結了ニ至ル迄左ニ揭クル目的ヲ以テ其ノ爭議ニ關係アル使用者又ハ勞働者ヲ誘惑若ハ煽動スルコトヲ得ス
一 使用者ヲシテ勞働爭議ニ關シ作業所ヲ閉鎖シ、作業ヲ中止シ、雇傭關係ヲ破毀シ又ハ勞務繼續ノ申込ヲ拒絕セシムルコト
二 勞働者ノ集團ヲシテ勞働爭議ニ關シ勞務ヲ中止シ、作業ノ進行ヲ阻害シ、雇傭關係ヲ破毀シ又ハ雇傭繼續ノ申込ヲ拒絕セシムルコト
第二十條 故ナク第十三條ニ規定スル出席說明又ハ說明書類ノ提示ヲ爲ササル者ハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第二十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
二 故ナク第十四條ノ規定ニ依ル立入、視察ヲ拒ミ若ハ之ヲ妨ケ又ハ質問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第二十二條 第十九條ノ規定ニ違反シタル者ハ三月以下ノ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス