労働組合法
法令番号: 法律第五十一號
公布年月日: 昭和20年12月22日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル勞働組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十年十二月二十一日
內閣總理大臣 男爵 幣原喜重郞
司法大臣 岩田宙造
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
運輸大臣 田中武雄
法律第五十一號
勞働組合法
第一章 總則
第一條 本法ハ團結權ノ保障及團體交涉權ノ保護助成ニ依リ勞働者ノ地位ノ向上ヲ圖リ經濟ノ興隆ニ寄與スルコトヲ以テ目的トス
刑法第三十五條ノ規定ハ勞働組合ノ團體交涉其ノ他ノ行爲ニシテ前項ニ揭グル目的ヲ達成スル爲爲シタル正當ナルモノニ付適用アルモノトス
第二條 本法ニ於テ勞働組合トハ勞働者ガ主體ト爲リテ自主的ニ勞働條件ノ維持改善其ノ他經濟的地位ノ向上ヲ圖ルコトヲ主タル目的トシテ組織スル團體又ハ其ノ聯合團體ヲ謂フ但シ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノハ此ノ限ニ在ラズ
一 使用者又ハ其ノ利益ヲ代表スト認ムベキ者ノ參加ヲ許スモノ
二 主タル經費ヲ使用者ノ補助ニ仰グモノ
三 共濟事業其ノ他福利事業ノミヲ目的トスルモノ
四 主トシテ政治運動又ハ社會運動ヲ目的トスルモノ
第三條 本法ニ於テ勞働者トハ職業ノ種類ヲ問ハズ賃金、給料其ノ他之ニ準ズル收入ニ依リ生活スル者ヲ謂フ
第四條 警察官吏、消防職員及監獄ニ於テ勤務スル者ハ勞働組合ヲ結成シ又ハ勞働組合ニ加入スルコトヲ得ズ
前項ニ規定スルモノノ外官吏、待遇官吏及公吏其ノ他國又ハ公共團體ニ使用セラルル者ニ關シテハ本法ノ適用ニ付命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得但シ勞働組合ノ結成及之ニ加入スルコトノ禁止又ハ制限ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二章 勞働組合
第五條 勞働組合ノ代表者ハ組合設立ノ日ヨリ一週間以內ニ規約竝ニ役員ノ氏名及住所ヲ行政官廳ニ屆出ヅベシ
前項ノ規定ニ依リ屆出デタル事項ニ變更ヲ生ジタルトキハ一週間以內ニ之ヲ行政官廳ニ屆出ヅベシ
第六條 前條第一項ノ屆出アリタル場合ニ於テ當該組合第二條ニ該當セザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ勞働委員會ノ決議ニ依リ行政官廳之ヲ決定ス
前項ノ規定ハ勞働組合トシテ設立シタルモノ第二條ニ該當セザルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス
第七條 規約ニハ少クトモ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 名稱
二 主タル事務所ノ所在地
三 法人タル組合ニ在リテハ法人タルコト
四 目的及事業
五 組合員又ハ構成團體ニ關スル規定
六 會議ニ關スル規定
七 代表者其ノ他役員ニ關スル規定
八 組合費其ノ他會計ニ關スル規定
九 規約ノ變更ニ關スル規定
第八條 規約法令ニ違反スルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ勞働委員會ノ決議ニ依リ行政官廳ハ其ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第九條 勞働組合ハ事務所ニ組合員又ハ構成團體ノ名簿ヲ備付クベシ
第十條 勞働組合ノ代表者又ハ勞働組合ノ委任ヲ受ケタル者ハ組合又ハ組合員ノ爲使用者又ハ其ノ團體ト勞働協約ノ締結其ノ他ノ事項ニ關シ交涉スル權限ヲ有ス
第十一條 使用者ハ勞働者ガ勞働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ其ノ他之ニ對シ不利益ナル取扱ヲ爲スコトヲ得ズ
使用者ハ勞働者ガ組合ニ加入セザルコト又ハ組合ヨリ脫退スルコトヲ雇傭條件ト爲スコトヲ得ズ
第十二條 使用者ハ同盟罷業其ノ他ノ爭議行爲ニシテ正當ナルモノニ因リ損害ヲ受ケタルノ故ヲ以テ勞働組合又ハ其ノ組合員ニ對シ賠償ヲ請求スルコトヲ得ズ
第十三條 勞働組合ハ共濟事業其ノ他福利事業ノ爲特設シタル基金ヲ他ノ目的ノ爲ニ流用セントスルトキハ總會ノ決議ヲ經ベシ
第十四條 勞働組合ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 規約ヲ以テ定メタル解散事由ノ發生
二 破產
三 組合員又ハ構成團體ノ四分ノ三以上ノ多數ニ依ル總會ノ決議
四 第六條ノ規定ニ依ル決定
五 第十五條ノ規定ニ依ル解散ノ處分
第十五條 勞働組合屢法令ニ違反シ安寧秩序ヲ紊リタルトキハ勞働委員會ノ申立ニ依リ裁判所ハ勞働組合ノ解散ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル手續ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 勞働組合ハ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ於テ登記ヲ爲スニ因リテ法人タルモノトス
本法ニ規定スルモノノ外勞働組合ノ登記ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
勞働組合ニ關シ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十七條 民法第四十三條、第四十四條、第五十條、第五十二條乃至第五十九條及第七十二條乃至第八十三條竝ニ非訟事件手續法第三十五條、第三十六條、第三十七條ノ二、第百三十六條第一項、第百三十七條及第百三十八條ノ規定ハ法人タル勞働組合ニ之ヲ準用ス
第十八條 法人タル勞働組合ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ所得稅及法人稅ヲ課セズ
第三章 勞働協約
第十九條 勞働組合ト使用者又ハ其ノ團體トノ間ノ勞働條件其ノ他ニ關スル勞働協約ハ書面ニ依リ之ヲ爲スニ因リテ其ノ效力ヲ生ズ
勞働協約ノ當事者ハ勞働協約ヲ其ノ締結ノ日ヨリ一週間以內ニ行政官廳ニ屆出ヅベシ
第二十條 勞働協約ニハ三年ヲ超ユル有效期間ヲ定ムルコトヲ得ズ
第二十一條 勞働協約締結セラレタルトキハ當事者互ニ誠意ヲ以テ之ヲ遵守シ勞働能率ノ增進ト產業平和ノ維持トニ協力スベキモノトス
第二十二條 勞働協約ニ定ムル勞働條件其ノ他ノ勞働者ノ待遇ニ關スル規準(當該勞働協約ニ依リ規準決定ノ爲設置セラレタル機關ノ存スルトキハ其ノ定メタル規準ヲ含ム以下同ジ)ニ違反スル勞働契約ノ部分ハ之ヲ無效トス此ノ場合ニ於テ無效ト爲リタル部分ハ規準ノ定ムル所ニ依ル勞働契約ニ定ナキ部分ニ付亦同ジ
第二十三條 一ノ工場事業場ニ常時使用セラルル同種ノ勞働者ノ數ノ四分ノ三以上ノ數ノ勞働者ガ一ノ勞働協約ノ適用ヲ受クルニ至リタルトキハ當該工場事業場ニ使用セラルル他ノ同種ノ勞働者ニ關シテモ當該勞働協約ノ適用アルモノトス
第二十四條 一ノ地域ニ於テ從業スル同種ノ勞働者ノ大部分ガ一ノ勞働協約ノ適用ヲ受クルニ至リタルトキハ協約當事者ノ雙方又ハ一方ノ申立ニ基キ勞働委員會ノ決議ニ依リ行政官廳ハ當該地域ニ於テ從業スル他ノ同種ノ勞働者及其ノ使用者モ當該勞働協約(第二項ノ規定ニ依リ修正アリタルモノヲ含ム)ノ適用ヲ受クベキコトノ決定ヲ爲スコトヲ得協約當事者ノ申立ナキ場合ト雖モ行政官廳必要アリト認ムルトキ亦同ジ
勞働委員會前項ノ決議ヲ爲スニ付當該勞働協約ニ不適當ナル定アリト認ムルトキハ之ヲ修正スルコトヲ得
第一項ノ決定ハ公吿ニ依リテ之ヲ爲ス
第二十五條 勞働協約ニ當該勞働協約ニ關シ紛爭アル場合調停又ハ仲裁ニ付スルコトノ定アルトキハ調停又ハ仲裁成ラザル場合ノ外同盟罷業、作業所閉鎖其ノ他ノ爭議行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第四章 勞働委員會
第二十六條 使用者ヲ代表スル者、勞働者ヲ代表スル者及第三者各同數ヨリ成ル勞働委員會ヲ設ク
使用者ヲ代表スル者ハ使用者團體ノ推薦ニ基キ、勞働者ヲ代表スル者ハ勞働組合ノ推薦ニ基キ、第三者ハ使用者ヲ代表スル者及勞働者ヲ代表スル者ノ同意ヲ得テ行政官廳之ヲ委囑スベキモノトス
勞働委員會ハ中央勞働委員會及地方勞働委員會トス特別ノ必要アルトキハ一定ノ地區又ハ事項ニ付特別勞働委員會ヲ設クルコトヲ得
勞働委員會ノ委員及命令ヲ以テ定ムル職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
勞働委員會ニ關スル事項ハ本法ニ定ムルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條 勞働委員會ハ第六條、第八條、第十五條、第二十四條及第三十三條ニ規定スルモノノ外左ノ事務ヲ掌ル
一 勞働爭議ニ關スル統計ノ作成其ノ他勞働事情ノ調查
二 團體交涉ノ斡旋其ノ他勞働爭議ノ豫防
三 勞働爭議ノ調停及仲裁
勞働委員會ハ勞働條件ノ改善ニ關シ關係行政廳ニ建議スルコトヲ得
第二十八條 勞働委員會ハ公益上必要アリト認ムルトキ又ハ關係者ノ請求アルトキハ其ノ會議ヲ公開スルコトヲ得
第二十九條 勞働委員會其ノ事務ヲ行フ爲必要アルトキハ使用者又ハ其ノ團體、勞働組合其ノ他ノ關係者ニ對シ出頭ヲ求メ、報吿ヲ徵シ若ハ必要ナル帳簿書類ノ提出ヲ求メ又ハ委員若ハ第二十六條第四項ノ命令ヲ以テ定ムル職員(以下職員ト稱ス)ヲシテ關係工場事業場ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢查セシムルコトヲ得
第三十條 勞働委員會ノ委員若ハ委員タリシ者又ハ職員若ハ職員タリシ者ハ其ノ職務ニ關シ知得シタル秘密ヲ漏泄スルコトヲ得ズ
第三十一條 第三章ノ規定ハ勞働委員會ノ關與シタル勞働條件其ノ他ノ勞働者ノ待遇ニ關スル規準ニ關スル協定ニシテ勞働組合其ノ當事者タラザルモノニ付之ヲ準用ス
第三十二條 一定ノ勞働者ノ勞働條件其ノ他ノ待遇特ニ適切ナラザルトキハ勞働委員會ハ其ノ實情ヲ調查シ改善ノ具體案ヲ作成シテ行政官廳ニ建議スルコトヲ得
前項ノ建議アリタル場合ニ於テ行政官廳必要アリト認ムルトキハ關係使用者ニ對シ勞働條件其ノ他ノ待遇ニ關スル規準ヲ指示スルコトヲ得
使用者前項ノ指示ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク之ヲ勞働者ニ周知セシムルコトヲ要ス
第二項ノ規定ニ依リ指示アリタル規準ハ關係使用者及關係勞働者ニ付勞働協約ト同一ノ效力ヲ有ス
第五章 罰則
第三十三條 第十一條ノ規定ノ違反アリタル場合ニ於テハ其ノ行爲ヲ爲シタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ハ勞働委員會ノ請求ヲ待テ之ヲ論ズ
第三十四條 第三十條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十五條 第二十九條ノ規定ニ違反シ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ若ハ帳簿書類ノ提出ヲ爲サズ又ハ同條ノ規定ニ違反シ出頭ヲ爲サズ若ハ同條ノ規定ニ依ル檢查ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十六條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ前條前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
前條前段ノ規定ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十七條 左ノ場合ニ於テハ勞働組合ノ代表者又ハ淸算人ヲ五十圓以下ノ過料ニ處ス
一 第五條又ハ第十九條第二項(第三十一條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違反シ屆出ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シタルトキ
二 第九條ノ規定ニ違反シ名簿ノ備付ヲ爲サザルトキ
三 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
四 第十七條ニ於テ準用スル民法第七十九條又ハ第八十一條ノ規定ニ違反シ公吿ヲ爲サズ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタルトキ
五 第十七條ニ於テ準用スル民法第八十一條ノ規定ニ違反シ破產宣吿ノ請求ヲ爲サザルトキ
六 第十七條ニ於テ準用スル民法第八十二條又ハ非訟事件手續法第三十六條ノ規定ニ依ル裁判所ノ檢查ヲ妨ゲタルトキ
第十九條第二項(第三十一條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違反シ屆出ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シタルトキハ勞働組合以外ノ勞働協約ノ當事者(當事者團體ナルトキハ其ノ代表者トス)ヲ五十圓以下ノ過料ニ處ス
使用者第三十二條第三項ノ規定ニ違反シタルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ存スル勞働組合ハ本法施行ノ日ヨリ一週間以內ニ第五條第一項ノ規定ニ準ジ屆出ヲ爲スベシ
登錄稅法中左ノ通改正ス
第十九條第七號中「產業組合聯合會」ヲ「產業組合聯合會、勞働組合」ニ、「產業組合法」ヲ「產業組合法、勞働組合法」ニ改ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル労働組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十年十二月二十一日
内閣総理大臣 男爵 幣原喜重郎
司法大臣 岩田宙造
厚生大臣 芦田均
大蔵大臣 子爵 渋沢敬三
運輸大臣 田中武雄
法律第五十一号
労働組合法
第一章 総則
第一条 本法ハ団結権ノ保障及団体交渉権ノ保護助成ニ依リ労働者ノ地位ノ向上ヲ図リ経済ノ興隆ニ寄与スルコトヲ以テ目的トス
刑法第三十五条ノ規定ハ労働組合ノ団体交渉其ノ他ノ行為ニシテ前項ニ掲グル目的ヲ達成スル為為シタル正当ナルモノニ付適用アルモノトス
第二条 本法ニ於テ労働組合トハ労働者ガ主体ト為リテ自主的ニ労働条件ノ維持改善其ノ他経済的地位ノ向上ヲ図ルコトヲ主タル目的トシテ組織スル団体又ハ其ノ連合団体ヲ謂フ但シ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ此ノ限ニ在ラズ
一 使用者又ハ其ノ利益ヲ代表スト認ムベキ者ノ参加ヲ許スモノ
二 主タル経費ヲ使用者ノ補助ニ仰グモノ
三 共済事業其ノ他福利事業ノミヲ目的トスルモノ
四 主トシテ政治運動又ハ社会運動ヲ目的トスルモノ
第三条 本法ニ於テ労働者トハ職業ノ種類ヲ問ハズ賃金、給料其ノ他之ニ準ズル収入ニ依リ生活スル者ヲ謂フ
第四条 警察官吏、消防職員及監獄ニ於テ勤務スル者ハ労働組合ヲ結成シ又ハ労働組合ニ加入スルコトヲ得ズ
前項ニ規定スルモノノ外官吏、待遇官吏及公吏其ノ他国又ハ公共団体ニ使用セラルル者ニ関シテハ本法ノ適用ニ付命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得但シ労働組合ノ結成及之ニ加入スルコトノ禁止又ハ制限ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二章 労働組合
第五条 労働組合ノ代表者ハ組合設立ノ日ヨリ一週間以内ニ規約並ニ役員ノ氏名及住所ヲ行政官庁ニ届出ヅベシ
前項ノ規定ニ依リ届出デタル事項ニ変更ヲ生ジタルトキハ一週間以内ニ之ヲ行政官庁ニ届出ヅベシ
第六条 前条第一項ノ届出アリタル場合ニ於テ当該組合第二条ニ該当セザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ労働委員会ノ決議ニ依リ行政官庁之ヲ決定ス
前項ノ規定ハ労働組合トシテ設立シタルモノ第二条ニ該当セザルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス
第七条 規約ニハ少クトモ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 名称
二 主タル事務所ノ所在地
三 法人タル組合ニ在リテハ法人タルコト
四 目的及事業
五 組合員又ハ構成団体ニ関スル規定
六 会議ニ関スル規定
七 代表者其ノ他役員ニ関スル規定
八 組合費其ノ他会計ニ関スル規定
九 規約ノ変更ニ関スル規定
第八条 規約法令ニ違反スルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ労働委員会ノ決議ニ依リ行政官庁ハ其ノ変更ヲ命ズルコトヲ得
第九条 労働組合ハ事務所ニ組合員又ハ構成団体ノ名簿ヲ備付クベシ
第十条 労働組合ノ代表者又ハ労働組合ノ委任ヲ受ケタル者ハ組合又ハ組合員ノ為使用者又ハ其ノ団体ト労働協約ノ締結其ノ他ノ事項ニ関シ交渉スル権限ヲ有ス
第十一条 使用者ハ労働者ガ労働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ其ノ他之ニ対シ不利益ナル取扱ヲ為スコトヲ得ズ
使用者ハ労働者ガ組合ニ加入セザルコト又ハ組合ヨリ脱退スルコトヲ雇傭条件ト為スコトヲ得ズ
第十二条 使用者ハ同盟罷業其ノ他ノ争議行為ニシテ正当ナルモノニ因リ損害ヲ受ケタルノ故ヲ以テ労働組合又ハ其ノ組合員ニ対シ賠償ヲ請求スルコトヲ得ズ
第十三条 労働組合ハ共済事業其ノ他福利事業ノ為特設シタル基金ヲ他ノ目的ノ為ニ流用セントスルトキハ総会ノ決議ヲ経ベシ
第十四条 労働組合ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 規約ヲ以テ定メタル解散事由ノ発生
二 破産
三 組合員又ハ構成団体ノ四分ノ三以上ノ多数ニ依ル総会ノ決議
四 第六条ノ規定ニ依ル決定
五 第十五条ノ規定ニ依ル解散ノ処分
第十五条 労働組合屡法令ニ違反シ安寧秩序ヲ紊リタルトキハ労働委員会ノ申立ニ依リ裁判所ハ労働組合ノ解散ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル手続ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 労働組合ハ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スニ因リテ法人タルモノトス
本法ニ規定スルモノノ外労働組合ノ登記ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
労働組合ニ関シ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十七条 民法第四十三条、第四十四条、第五十条、第五十二条乃至第五十九条及第七十二条乃至第八十三条並ニ非訟事件手続法第三十五条、第三十六条、第三十七条ノ二、第百三十六条第一項、第百三十七条及第百三十八条ノ規定ハ法人タル労働組合ニ之ヲ準用ス
第十八条 法人タル労働組合ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ所得税及法人税ヲ課セズ
第三章 労働協約
第十九条 労働組合ト使用者又ハ其ノ団体トノ間ノ労働条件其ノ他ニ関スル労働協約ハ書面ニ依リ之ヲ為スニ因リテ其ノ効力ヲ生ズ
労働協約ノ当事者ハ労働協約ヲ其ノ締結ノ日ヨリ一週間以内ニ行政官庁ニ届出ヅベシ
第二十条 労働協約ニハ三年ヲ超ユル有効期間ヲ定ムルコトヲ得ズ
第二十一条 労働協約締結セラレタルトキハ当事者互ニ誠意ヲ以テ之ヲ遵守シ労働能率ノ増進ト産業平和ノ維持トニ協力スベキモノトス
第二十二条 労働協約ニ定ムル労働条件其ノ他ノ労働者ノ待遇ニ関スル規準(当該労働協約ニ依リ規準決定ノ為設置セラレタル機関ノ存スルトキハ其ノ定メタル規準ヲ含ム以下同ジ)ニ違反スル労働契約ノ部分ハ之ヲ無効トス此ノ場合ニ於テ無効ト為リタル部分ハ規準ノ定ムル所ニ依ル労働契約ニ定ナキ部分ニ付亦同ジ
第二十三条 一ノ工場事業場ニ常時使用セラルル同種ノ労働者ノ数ノ四分ノ三以上ノ数ノ労働者ガ一ノ労働協約ノ適用ヲ受クルニ至リタルトキハ当該工場事業場ニ使用セラルル他ノ同種ノ労働者ニ関シテモ当該労働協約ノ適用アルモノトス
第二十四条 一ノ地域ニ於テ従業スル同種ノ労働者ノ大部分ガ一ノ労働協約ノ適用ヲ受クルニ至リタルトキハ協約当事者ノ双方又ハ一方ノ申立ニ基キ労働委員会ノ決議ニ依リ行政官庁ハ当該地域ニ於テ従業スル他ノ同種ノ労働者及其ノ使用者モ当該労働協約(第二項ノ規定ニ依リ修正アリタルモノヲ含ム)ノ適用ヲ受クベキコトノ決定ヲ為スコトヲ得協約当事者ノ申立ナキ場合ト雖モ行政官庁必要アリト認ムルトキ亦同ジ
労働委員会前項ノ決議ヲ為スニ付当該労働協約ニ不適当ナル定アリト認ムルトキハ之ヲ修正スルコトヲ得
第一項ノ決定ハ公告ニ依リテ之ヲ為ス
第二十五条 労働協約ニ当該労働協約ニ関シ紛争アル場合調停又ハ仲裁ニ付スルコトノ定アルトキハ調停又ハ仲裁成ラザル場合ノ外同盟罷業、作業所閉鎖其ノ他ノ争議行為ヲ為スコトヲ得ズ
第四章 労働委員会
第二十六条 使用者ヲ代表スル者、労働者ヲ代表スル者及第三者各同数ヨリ成ル労働委員会ヲ設ク
使用者ヲ代表スル者ハ使用者団体ノ推薦ニ基キ、労働者ヲ代表スル者ハ労働組合ノ推薦ニ基キ、第三者ハ使用者ヲ代表スル者及労働者ヲ代表スル者ノ同意ヲ得テ行政官庁之ヲ委嘱スベキモノトス
労働委員会ハ中央労働委員会及地方労働委員会トス特別ノ必要アルトキハ一定ノ地区又ハ事項ニ付特別労働委員会ヲ設クルコトヲ得
労働委員会ノ委員及命令ヲ以テ定ムル職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス
労働委員会ニ関スル事項ハ本法ニ定ムルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七条 労働委員会ハ第六条、第八条、第十五条、第二十四条及第三十三条ニ規定スルモノノ外左ノ事務ヲ掌ル
一 労働争議ニ関スル統計ノ作成其ノ他労働事情ノ調査
二 団体交渉ノ斡旋其ノ他労働争議ノ予防
三 労働争議ノ調停及仲裁
労働委員会ハ労働条件ノ改善ニ関シ関係行政庁ニ建議スルコトヲ得
第二十八条 労働委員会ハ公益上必要アリト認ムルトキ又ハ関係者ノ請求アルトキハ其ノ会議ヲ公開スルコトヲ得
第二十九条 労働委員会其ノ事務ヲ行フ為必要アルトキハ使用者又ハ其ノ団体、労働組合其ノ他ノ関係者ニ対シ出頭ヲ求メ、報告ヲ徴シ若ハ必要ナル帳簿書類ノ提出ヲ求メ又ハ委員若ハ第二十六条第四項ノ命令ヲ以テ定ムル職員(以下職員ト称ス)ヲシテ関係工場事業場ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
第三十条 労働委員会ノ委員若ハ委員タリシ者又ハ職員若ハ職員タリシ者ハ其ノ職務ニ関シ知得シタル秘密ヲ漏泄スルコトヲ得ズ
第三十一条 第三章ノ規定ハ労働委員会ノ関与シタル労働条件其ノ他ノ労働者ノ待遇ニ関スル規準ニ関スル協定ニシテ労働組合其ノ当事者タラザルモノニ付之ヲ準用ス
第三十二条 一定ノ労働者ノ労働条件其ノ他ノ待遇特ニ適切ナラザルトキハ労働委員会ハ其ノ実情ヲ調査シ改善ノ具体案ヲ作成シテ行政官庁ニ建議スルコトヲ得
前項ノ建議アリタル場合ニ於テ行政官庁必要アリト認ムルトキハ関係使用者ニ対シ労働条件其ノ他ノ待遇ニ関スル規準ヲ指示スルコトヲ得
使用者前項ノ指示ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク之ヲ労働者ニ周知セシムルコトヲ要ス
第二項ノ規定ニ依リ指示アリタル規準ハ関係使用者及関係労働者ニ付労働協約ト同一ノ効力ヲ有ス
第五章 罰則
第三十三条 第十一条ノ規定ノ違反アリタル場合ニ於テハ其ノ行為ヲ為シタル者ハ六月以下ノ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ハ労働委員会ノ請求ヲ待テ之ヲ論ズ
第三十四条 第三十条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十五条 第二十九条ノ規定ニ違反シ報告ヲ為サズ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シ若ハ帳簿書類ノ提出ヲ為サズ又ハ同条ノ規定ニ違反シ出頭ヲ為サズ若ハ同条ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十六条 法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条前段ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
前条前段ノ規定ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十七条 左ノ場合ニ於テハ労働組合ノ代表者又ハ清算人ヲ五十円以下ノ過料ニ処ス
一 第五条又ハ第十九条第二項(第三十一条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違反シ届出ヲ為サズ又ハ虚偽ノ届出ヲ為シタルトキ
二 第九条ノ規定ニ違反シ名簿ノ備付ヲ為サザルトキ
三 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル登記ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
四 第十七条ニ於テ準用スル民法第七十九条又ハ第八十一条ノ規定ニ違反シ公告ヲ為サズ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ
五 第十七条ニ於テ準用スル民法第八十一条ノ規定ニ違反シ破産宣告ノ請求ヲ為サザルトキ
六 第十七条ニ於テ準用スル民法第八十二条又ハ非訟事件手続法第三十六条ノ規定ニ依ル裁判所ノ検査ヲ妨ゲタルトキ
第十九条第二項(第三十一条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違反シ届出ヲ為サズ又ハ虚偽ノ届出ヲ為シタルトキハ労働組合以外ノ労働協約ノ当事者(当事者団体ナルトキハ其ノ代表者トス)ヲ五十円以下ノ過料ニ処ス
使用者第三十二条第三項ノ規定ニ違反シタルトキハ五十円以下ノ過料ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ存スル労働組合ハ本法施行ノ日ヨリ一週間以内ニ第五条第一項ノ規定ニ準ジ届出ヲ為スベシ
登録税法中左ノ通改正ス
第十九条第七号中「産業組合連合会」ヲ「産業組合連合会、労働組合」ニ、「産業組合法」ヲ「産業組合法、労働組合法」ニ改ム